説明

真珠様色彩を呈する織物及びその製造方法

【課題】神秘的玉虫様色彩を呈する織物とその製造方法の提供。
【解決手段】異色に染着された織物の経糸A又は緯糸B1,B2の色が相互に補色関係又は等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸A及び緯糸B1,B2で構成されてなる真珠様色彩を呈する織物及びその製造方法。異色に染着された織物の経糸A又は緯糸B1,B2の色が相互に等色相差の関係にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂真珠の色彩を呈する神秘的色彩を有する織物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玉虫色の色彩を有する織物の製造技術としては、本出願人が特許第3463167号とし
て開示されている。即ち、異色に染着された紡績糸又はマルチフィラメントヤーンで構成された玉虫様色彩を呈する織物の組織点において、前記織物の経糸又は緯糸の2本の糸が並列配置されて同一組織に反復して繰り返され、前記2本の糸の組に使用する二色の色が、相互に補色関係になく、色相差が60〜120であって、その組み合わせがHSV法による50〜100の彩度であって且つ80〜100の明度を有し、且つ、前記経糸にシアンと黄、シアンとマゼンタ、黄とマゼンタ、緑と黄、緑とシアン、青とマゼンタ、赤と黄、前記緯糸に任意の色相を有する紡績糸又はマルチフィラメントヤーンで構成されてなる玉虫様色彩を呈する織物が公知である(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、異色繊維の組合せにおける織物構成組織設定に基づく玉虫様色彩の付与は可能であるが、光輝性はあるが、光沢と見る角度によって異なる干渉色が相俟って真珠のような落ち着いた神秘性のあるパール様光沢のある真珠様色彩を呈する織物を得ることができなかった。
【0004】
そこで、パール様光沢を織物の表面に押し出すことにより、単一色の織物とは趣の異なる織物を提供するために、屈折率の異なる2種類のポリマーの交互性層体からなる光干渉性モノフィラメントを構成単位とするマルチフィラメント糸と光干渉性がなく非着色状態の繊維とを混用した織物を得ることが開発されている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特許第3463167号
【特許文献2】特開2000−290857公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されたパール様光沢を有している織物は、光干渉性モノフィラメントを構成単位とするマルチフィラメント糸と光干渉性がなく非着色状態の繊維とを混用した織物からなるため、一見真珠の色合いに見えるだけで、淡い色合いの中にもピンクや黄色、ブルーなど複雑な色の表現ができず、実際の真珠のような奥深く趣のある色合いは表現できないので、高級感に欠け神秘性のある真珠色織物を得ることができなかった。
【0007】
真珠の色彩を呈する神秘的色彩を有する織物を製造するためには、実際の真珠のように、ホワイト系、淡いグレー系、淡いピンク系等、無彩色に近似して見える必要がある。そして、単に一見真珠の色合いに見えるだけでなく、淡い色合いの中にもピンクや黄、ブルーなどの複雑な色の変化を表現できなければ、実際の真珠のように奥深く、趣のある色合いが表現できない。
【0008】
本出願人は、真珠のように奥深く、趣のある色合いを表現すべく、鋭意研究した結果、有彩色の糸を使用した織物を製織して真珠様色彩を呈するには、混合色が無彩色になる組み合わせが必須であることが判明した。
即ち、2色の糸を使用して製織する場合、色相環における補色関係にあることが必須であり、3色の糸を使用して製織する場合、等色相差の関係にある3色を選択した場合にのみ、混合色が無彩色になることに到達した。
【0009】
上記のように、3色の有彩色を使用して並置混色して混合色が無彩色になる組み合わせは、それぞれの色が色相環における等色相差(120度の差)の関係にある色を選択した場合にのみ、混合色が無彩色になる。即ち、等色相差の関係にない色を選択した場合、混合色が無彩色になる色の組み合わせは絶対に発生しない。そして、等色相差の関係にある色を選択した場合、織物における占有面積が同一で並置混色した同彩度の色を有する経糸及び緯糸を使用した場合にのみ混合色が無彩色になることが判明した。
【0010】
ここで、3色の有彩色を使用して並置混色して混合色が無彩色になるような織物を製造する場合、例えば、経糸にマゼンタ、緯糸に黄色とシアンを使用して、経糸、 緯糸とも同密度で平織を製織した場合、各色の糸の占有面積は、マゼンタ2に対して、黄色とシアンは各1の比率になる。ここで経糸、 緯糸とも同彩度の色を使用した場合、経糸に使用したマゼンタの占有面積が大きいため、その混合色はマゼンタに偏った色となり、到底無彩色にならない。
【0011】
そこで、経糸に使用したマゼンタの彩度を低くして、混合色が無彩色になるように調節する。例えば、淡いパール調織物の場合、彩度を50以下の色を使用する必要がある。平織、綾織等、織物組織により、経糸、 緯糸とも同密度であっても織物表面に現出する経糸、 緯糸の占有率が変化するので、並置混色において混合色が無彩色になるように経糸、緯糸に使用する色の彩度を適宜調節する必要がある。
【0012】
経糸、緯糸に使用する特定の糸の色の彩度をあげると、彩度をあげた色のパール色が表現できる。例えば、経糸、緯糸に使用するピンクの彩度だけをあげると、全体がピンク系の色に偏り、ピンク系のパール色が表現できる。同様に、 経糸、緯糸に使用する黄色の彩度をあげると、全体が黄色系の色に偏り、黄色系のパール色が表現できる。
【0013】
全体が暗い色調のパール調織物を要求する場合、例えばブラックパール調織物を製織する場合は、明度の低い色を選択する。
【0014】
織物の表面を見る方向により、別の色を認識させたい場合は、上記条件に加え、織物の組織点において、経糸及び緯糸の2本の糸の色が並列配置させて同一組織を反復して製織する。
例えば、図6及び該織物のa−a’断面組織図の図7に示すように、該織物に対し、上面垂直方向から視線イで見ると経糸A1,A2及び緯糸B1の持つ色の混合した色が感知認識されるが、該織物を構成する経糸方向に対して垂直方向で、且つ織物平面に対し斜めの傾斜角を持つ視線方向ロ1、ロ2より見ると、織物平面に対する視線の傾斜角が小さくなるほど視線方向ロ1では、経糸A1,A2の混合色から経糸A1の単色までA1の色を強く認識するようになり、視線方向ロ2では経糸A1,A2の混合色から経糸A2の単色までA2の色を強く認識するようになる。
【0015】
また、図6及び該織物のb−b’断面組織図の図8に示すように、織物を構成する緯糸方向に対し垂直方向で、且つ織物平面に対し斜めの傾斜角を持つ視線方向ハ1、ハ2で見ると、緯糸B1、B2の色をより強く認識し、かかる構成の織物では見る方向・視線角度により織物の色が異なって認識されるのである。
即ち、織物の組織点表面で2本の異色の緯糸B1,B2を並列配置させた緯糸と、該緯糸B1,B2と異なる色の経糸A1とで織物を形成させれば、図6及び該織物のb−b’
断面組織図の図8に示すように、同様の機構により、織物を構成する緯糸方向に対し垂直方向で、且つ織物平面に対し斜めの傾斜角を持つ視線方向ハ1、ハ2より見ると、該視線方向の織物平面となす角度の織物平面に対する傾斜角が小さくなるほど視線方向ハ1では、緯糸B1,B2の混合色から緯糸B1の単色までB1の色を強く認識するようになり、視線方向ハ2では、緯糸B1,B2の混合色から緯糸B2の単色までB2の色を強く認識する織物を得ることができるのである。
【0016】
有彩色4色の糸を使用して混合色が無彩色になる組み合わせは、一対の2色が色相環における等色相差の関係又は補色関係にあり、他の2色が色相環における等色相差の関係又は補色関係にあることが必須であり、混合色が無彩色になる。
【0017】
ここで、色の表示方法として、HSV方法は、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)で色を表示するものであり、色相は0〜359の360段階で色循環を表示する。即ち、赤(0)−橙(30)−黄(60)−黄緑(90)−緑(120)−青緑(150)−シアン(180)−スカイブルー(210)−青(240)−紫(270)−マゼンダ(300)−赤紫(330)−赤(0)である。彩度(飽和度)は0(=無彩色)〜100(純色:各色相の最大飽和度)により色合いが濃くなる。明度は0(=黒)〜100(純色:各色相の最大飽和度を示す明度)により色合いが明るくなる。
【0018】
代表的6色の色相の部分に関してHSV方法で表示すると下記のようになる。

【0019】
前記の色の色相は、許容値も含めて、HSV方法で表示すると下記の範囲にある色とすることができる。

各色の色相の範囲は40であるが、好ましくは30、更に好ましくは20、最も好ましく
は10である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、これらの従来の問題点を解消し生産性の高い汎用技術に立脚し且つ神秘性に優れた真珠様色彩に優れた織物を提供するものである。
【0021】
上記課題を解決するための手段として、
1.異色に染着された織物の経糸及び緯糸の色が相互に補色関係又は等色相差の関係あり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸で構成されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物。
2.異色に染着された織物の経糸及び緯糸の三色の色が等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸で構成されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物。
3.異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する四色の色において、各二色の色が、相互に補色関係にある請求項1に記載の真珠様色彩を呈する織物。
4.異色に染着された織物の経糸及び緯糸の組織点において、前記織物の経糸及び緯糸が並列配置されて同一組織に反復して繰り返され、前記糸に使用する色が等色相差の関係にある請求項1乃至請求項3に記載の真珠様色彩を呈する織物。
5.異色に染着された織物の組織点において、前記織物の経糸の2本及び緯糸の2本の糸が並列配置されて同一組織に反復して繰り返され、前記2本の糸の組に使用する二色の色が、相互に補色関係にある請求項1乃至請求項3に記載の真珠様色彩を呈する織物。
を構成するものである。
【0022】
6.更に、異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する色が相互に補色関係又は等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸を用いて製織されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物の製造方法。
7.異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する三色の色が、等色相差の関係。
8.異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する四色の色において、各二色の色が、相互に補色関係にある請求項6に記載の真珠様色彩を呈する織物の製造方法。
を構成するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の真珠様色彩を呈する織物は、1.異色に染着された織物の経糸及び緯糸の色が相互に補色関係又は等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸で構成されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物。
2.異色に染着された織物の経糸及び緯糸の三色の色が等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸で構成されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物。
3.異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する四色の色において、各二色の色が、相互に補色関係にある請求項1に記載の真珠様色彩を呈する織物。
4.異色に染着された織物の経糸及び緯糸の組織点において、前記織物の経糸及び緯糸が並列配置されて同一組織に反復して繰り返され、前記糸に使用する色が等色相差の関係にある請求項1乃至請求項3に記載の真珠様色彩を呈する織物。
5.異色に染着された織物の組織点において、前記織物の経糸の2本及び緯糸の2本の糸が並列配置されて同一組織に反復して繰り返され、前記2本の糸の組に使用する二色の色が、相互に補色関係ある請求項1乃至請求項3に記載の真珠様色彩を呈する織物。
を構成するように製織して構成させた構造を有するため、従来公知の玉虫様色彩の織物に比べて天然色に近似する落ち着いた神秘性のある真珠様色彩を醸し出すことができる。
【0024】
更に、6.異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する色が相互に補色関係又は等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸を用いて製織されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物の製造方法。
7.異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する三色の色が、等色相差の関係8.異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する四色の色において、各二色の色が、相互に補色関係にある請求項6に記載の真珠様色彩を呈する織物の製造方法。
では、玉虫様色彩効果を超越した真珠様色彩効果を、容易に生産できる汎用天然繊維、合成繊維を用いて提供することができる。そして更に、その真珠様色彩効果も、織物の組織点表面において並列配置させる入射光を反射・散乱・拡散するマルチフィラメントヤーンの単繊維デニールなど選択することにより、望む真珠様色彩効果の織物に仕立てる選択性も有するのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に実施例に基づいて、更に具体的に本発明の技術内容と実施態様を開示する。
[実施例1]
経糸Aに、赤色に染色した40番手綿単糸を用い、緯糸Bに40番手綿単糸のシアンに染色した紡績糸を用い、通常の織機を用い、平織り組織の織物を構成する織物を製織した。
赤色に染色した経糸とシアンに染色した緯糸は、相互に補色関係にあり、その組み合わせがHSV法による70の彩度であって且つ80の明度を有するもの構成された。
得られた織物は、織物垂直方向上面より見れば無彩色で見る角度により赤、シアンの勝った色調の優雅な真珠様色彩を示し、かかる織物を用いて作製した品物は、極めて神秘的な真珠様色彩に富む品物を得ることができた。
【0026】
[実施例2]
使用する3色の内1色に無彩色(白、グレイ、黒)を使用し、残り2色を補色関係にある色(色相還上における対極の位置にある色。 等色相差(180度)の位置にある色)を選択した場合
図1に示すように、経糸Aに白(V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸B-1に赤(H=0、S=60、V=100)、緯糸B-2にシアン(H=180、S=60、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸はB-1(赤)B-2(シアン)対の組み合わせで、通常の織機を用い、図1に示された組織点表面で、B-1,B-2
が並列配置され、経糸Aとにより平織組織の織物(経、緯とも同密度120本/インチ)
を製織した。
各色の占有面積は、経糸に使用した白が2に対して、緯糸に使用した赤、シアンは各1の比率である。使用した2色の有彩色の占有面積が同じであるため、それぞれ同彩度の色を使用して、混合色が無彩色に見えるように調節した。
得られた織物は、織物の垂直方向上面より見れば、無彩色(淡いグレイ系)の色合いであるが、見る角度により、白、赤、シアンの勝った色調の優雅なパール色様色彩を示した。
なお、経糸に無彩色を使用し、緯糸に使用する2色の各色の占有面積が同じであるので、同彩度の色を使用した。
また経糸に黒を使用した場合は、全体の色合いが黒に偏り、ブラックパールのような色彩を表現することができる。
【0027】
[実施例3]
ホワイトパール系、グレイパール系織物を製織する場合
図2に示すように、経糸Aにマゼンタ(H=300、S=20、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸B-1に黄(H=60、S=40、V=100)、緯糸B-2にシアン(H=180、S=40、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸はB-1(黄)B-2(シアン)対の組み合わせで、通常の織機を用い、図2に示された組織点表面で、B-1,B-2が並列配置され、経糸Aとにより平織組織の織物(経、緯とも
同密度120本/インチ)を製織した。
各色の占有面積は、経糸に使用したマゼンタが2に対して、緯糸に使用した黄、シアンは各1の比率となる。そこで緯糸に使用した黄、シアンの彩度を40とし、経糸に使用したマゼンタの彩度を20とし、(緯糸に使用した色の彩度の半分)3色の混合色が灰色(無彩色)に見えるように調節した。
得られた織物は、織物の垂直方向上面より見れば、無彩色(淡いグレイ系)の色合いであるが、見る角度により、マゼンタ、黄、シアンの勝った色調の優雅なパール色様色彩を示した。
なお、3色とも有彩色を使用しているため、実施例1の織物に比べると、色の変化が多様で、より深みのあるものに仕上つた。色の変化度合いという点では、使用した色同士の色相差が大きい程変化に富む。実施例1の使用した色同士の色相差が180度差が最大となるが、3色を使用する場合は色相が120度差(等色相差)の色を選択すると、色の変化度が最大となる。
なお、使用した3色が灰色(無彩色)に見えるように、彩度を調節するには、使用する3
色の色の占有面積が同じである場合、それぞれ同彩度(同飽和度)の色を使用すれば、混合色が灰色(無彩色)に見える。これを基本として、使用したそれぞれの色の占有面積の比率に、反比例したパーセントの彩度(飽和度)の色を用いることにより、無彩色に見えるように調節することができる。例えば実施例3の要件のうち、緯糸に使用したシアンの彩度を60とした場合、若干シアン(ブルー系)に偏ったブルーパール系織物を作成することもできる。
【0028】
[実施例4]
グレイパール系織物を製織する場合
図3に示すように、経糸Aに橙(H=30、S=20、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸B-1に青緑(H=150、S=80、V=100)、緯糸B-2に紫(H=270、S=80、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸はB-1(青緑)B-2(紫)対の組み合わせで、通常の織機を用い、図3に示された組織点表面で、B-1,B-2が並列配置され、経糸Aとにより綾織り組織(2/1綾)の織物(経、緯とも同密度120本/インチ)を製織した。
各色の占有面積は、経糸に使用した橙が4に対して、緯糸に使用した青緑、紫は各1の比率となる。そこで緯糸に使用した色の彩度を80とし、経糸に使用した橙の彩度を20として(緯糸に使用した色の彩度の4分の1)3色の混合色が灰色(無彩色)に見えるように調節した。
得られた織物は、織物の垂直方向上面より見れば、無彩色(グレイ系)の色合いであるが、見る角度により、橙、青緑、紫の勝った色調の優雅なパール色様色彩を示す。
【0029】
[実施例5]
ピンクパール系織物を製織する場合
図4に示すように、経糸Aにマゼンタ(H=300、S=50、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸B-1に黄(H=60、S=60、V=100)、緯糸B-2にシアン(H=180、S=60、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸はB-1(黄)B-2(シアン)対の組み合わせで、通常の織機を用い、図4に示された組織点表面で、B-1,B-2が並列配置され、経糸Aとにより平織組織の織物(経、緯とも同密度120本/インチ)を製織した。
各色の占有面積は、経糸に使用したマゼンタが2に対して、黄、シアンは各1の比率となる。そこで経糸に使用したマゼンタの彩度を50として、3色の混合色が若干マゼンタ系に偏った色に見えるように調節した。
得られた織物は、織物の垂直方向上面より見れば、淡いマゼンタ(ピンク)系の色合いであるが、見る角度により、マゼンタ、黄、シアンの勝った色調の優雅なパール色様色彩を示す。
このように、全体の色のイメージをある色に偏らせたい場合は、使用した色の占有面積比を考慮した上で、彩度を決定する必要がある。
経糸、緯糸に関わらず使用したある1色の彩度(飽和度)を突出させることによって、(
無彩色に見えるように、彩度を調節した組み合わせの中で、偏らせたい色のみの彩度を突出させる)その色に偏らせた色の生地を作成できる。(彩度を突出させた色系の織物が作成できる。)
【0030】
[実施例6]
ブラックパール系織物を製織する場合
図5に示すように、経糸Aに赤(H=0、S=40、V=60)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸B-1に緑(H=120、S=80、V=60)、緯糸B-2に青(H=240、S=80、V=60)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸はB-1(緑)B-2(青)対の組み合わせで、通常の織機を用い、図5に示された組織点表面で、B-1,B-2が並列配置され、経糸Aとにより平織組織の織物(経、緯とも同密度120本/インチ)を製織した。
各色の占有面積は、経糸に使用した赤が2に対して、緑、青、は各1の比率となる。そこで緯糸に使用した色の彩度を80とし、経糸に使用した赤の彩度を40として(緯糸に使用した色の彩度の半分)3色の混合色が暗い灰色(無彩色)に見えるように調節した。
得られた織物は、織物の垂直方向上面より見れば、無彩色(暗いグレイ系)の色合いであるが、見る角度により、暗い赤、暗い緑、暗い青の勝った色調の優雅なブラックパール色様色彩を示す。
なお、ブラックパール色を表現するには、黒の要素が必要になってくるので、使用する3色にはそれぞれ暗みの要素(明度60)を加味した。
暗さを加味する方法は、経糸のみとする方法、緯糸のみとする方法など要求によって自由に変化を加えられる。
【0031】
[実施例7]
グレイパール系織物を製織する場合
有彩色4色を使用し、色相環上において、それぞれが等色相差(90度)の関係にある色を使用した場合。
図6に示すように、経糸A-1に赤(H=0、S=40、V=100)経糸A-2に黄緑(H=90、S=40、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、A-1(赤)A-2(黄緑)対の組み合わせで、A-1、A-2、A-1、A-2、・・・・・・となるように、並列配置させて整経し、緯糸B-1にシアン(H=180、S=40、V=100)、緯糸B-2に紫(H=270、S=40、V=100)に染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸はB-1(シアン)B-2(紫)対の組み合わせで、通常の織機を用い、図6に示された組織点表面で、B-1,B-2が並列配置され、経糸A-1、A-2とにより平織組織の織物(経、緯とも同密度120本/インチ)を製織した。
出来上がった織物の各色の占有面積比は、経糸A-1に使用した赤が1、経糸A-2に使用した黄緑が1、緯糸B-1に使用したシアンが1、緯糸B-2に使用した紫が1、となり4色とも同一面積となる。よって同彩度の色を使用すれば混合色が無彩色(グレイ系)の色となる。
得られた織物は、織物の垂直方向上面より見れば、無彩色(グレイ系)の色合いであるが、見る角度により、赤、黄緑、シアン、紫、の勝った色調の優雅なパール色様色彩を示す。
なお、4色を使用した場合は、等色相差の関係(90度差)にある4色(赤 S=0、黄緑S=90、シアン S=180、紫 S=270)を選択すれば、無彩色に見え、色の変化(色相差)も最大の組み合わせとなる。
しかしながら、4色の場合は、2色の組み合わせがそれぞれ補色関係であれば、無彩色に見えるので、その組み合わせは多数発生します。例えば4色(赤 S=0、シアン S=180、橙 S=30、スカイブルー S=210、)を使用した場合も無彩色に見えるが、色相差(30)が少ないので、折角4色を使用しても、色の変化度という点では、2色使い(S=15、S=195を使用したもの)のものと大差のない織物にしかならない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の真珠様色彩を呈する織物は、平織、綾織のみならず、朱子織等にも適用でき、糸材料として、綿糸、羊毛糸、絹糸等の天然繊維のみならず合成繊維も広く適用できる。また、等色相差の関係にある色同士を選択し糸に適用した織物にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例2における経糸に白に染色したポリエステル糸を使用し、緯糸に赤、シアンに染色したポリエステル糸を使用し、緯糸は赤、シアン対の組み合わせで、緯糸が並列配置された平織組織の織物の組織図である。
【図2】本発明の実施例3における経糸にマゼンタに染色したポリエステル糸を使用し、緯糸に黄、シアンに染色したポリエステル糸を使用し、緯糸は黄、シアン対の組み合わせで、緯糸が並列配置された平織組織の織物の組織図である。
【図3】本発明の実施例4における経糸に橙に染色したポリエステル糸を使用し、緯糸は青緑、紫の対の組み合わせで、緯糸が並列配置されたり綾織り組織の織物の組織図である。
【図4】本発明の実施例5における経糸マゼンタに染色した75デニールのポリエステル糸を使用し、緯糸に黄、シアンに染色したポリエステル糸を使用し、緯糸は黄、シアンの対の組み合わせで、緯糸が並列配置された平織組織の織物の組織図である。
【図5】本発明の実施例6における経糸に赤に染色したポリエステル糸を使用し、緯糸に緑、青に染色したポリエステル糸を使用し、緯糸は緑、青の対の組み合わせで、並列配置された平織組織の織物の組織図である。
【図6】本発明の実施例7における経糸に赤、黄緑に染色したポリエステル糸を使用し、赤、黄緑の対の組み合わせで並列配置させ、緯糸にシアン、紫に染色したポリエステル糸を使用し、シアン、紫の対の組み合わせで並列配置された平織組織の織物の組織図である。
【図7】図6に示す織物のa−a‘断面図である。
【図8】図6に示す織物のb−b‘断面図である。
【符号の説明】
【0034】
A 経糸
A−1,A−2 経糸
B−1,B−2 緯糸








【特許請求の範囲】
【請求項1】
異色に染着された織物の経糸及び緯糸の色が相互に補色関係又は等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸で構成されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物。
【請求項2】
異色に染着された織物の経糸及び緯糸の三色の色が等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸で構成されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物。
【請求項3】
異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する四色の色において、各二色の色が、相互に補色関係にある請求項1に記載の真珠様色彩を呈する織物。
【請求項4】
異色に染着された織物の経糸及び緯糸の組織点において、前記織物の経糸及び緯糸が並列配置されて同一組織に反復して繰り返され、前記糸に使用する色が等色相差の関係にある請求項1乃至請求項3に記載の真珠様色彩を呈する織物。
【請求項5】
異色に染着された織物の組織点において、前記織物の経糸の2本及び緯糸の2本の糸が並列配置されて同一組織に反復して繰り返され、前記2本の糸の組に使用する二色の色が、相互に補色関係にある請求項1乃至請求項3に記載の真珠様色彩を呈する織物。
【請求項6】
異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する色が相互に補色関係又は等色相差の関係にあり、前記経糸及び緯糸の織物における占有面積に応じて前記織物の垂直方向から見た色が無彩色に見えるように彩度を調節した経糸及び緯糸を用いて製織されてなることを特徴とする真珠様色彩を呈する織物の製造方法。
【請求項7】
異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する三色の色が、等色相差の関係にある請求項6に記載の真珠様色彩を呈する織物の製造方法。
【請求項8】
異色に染着された織物の経糸及び緯糸に使用する四色の色において、各二色の色が、相互に補色関係にある請求項6に記載の真珠様色彩を呈する織物の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229513(P2012−229513A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108891(P2011−108891)
【出願日】平成23年5月14日(2011.5.14)
【出願人】(592249485)サンコーセンイ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】