説明

真空アーク放電による表面疵処理方法

【目的】 連続送給される被処理材の疵表面を検出して真空中でアーク放電し、歩留りの高い表面処理方法を提供する。
【構成】 本発明は1〜10-3Torrの真空中に被処理材を連続送給し、被処理材の幅方向に多分割した複数電極を設け、かつ被処理材の長さ方向に多段列に設け、被処理材の表面疵を検出し、該疵位置の単位電極に演算等により選択された放電モードを入力して疵加工することを特徴とする真空アーク放電による表面疵処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は真空アーク放電による表面疵処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼や高張力鋼等の高級鋼では圧延中にエッヂ近傍に伸びの不均一から来ると思われるしわが発生し、そこに酸化物が埋まり込み非常に除去の困難な疵となる。又板表面に疵の発生が経験されるが従来技術ではショットブラスト処理をした後、硝酸、弗酸、硫酸、塩酸等の酸で処理してもなお疵が残存するため、ベルトグラインダー等で削り落として無害化するか、エッヂの疵部をトリミングして採寸する方法がとられていた。これでは非常にコストがかかり又歩留りロスが大きい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は歩留りが高い真空アーク放電による表面疵処理方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は1〜10-3Torrの真空中に被処理材を連続送給し、被処理材の幅方向に多分割した複数電極を設け、かつ被処理材の長さ方向に多段列に設け、被処理材の表面疵を検出し、該疵位置の単位電極に演算等により選択された放電モードを入力して疵加工することを特徴とする真空アーク放電による表面疵処理方法である。
【0005】本発明は鉄、非鉄等の被処理材(以下ストリップという)の表面疵を除去するが、1〜10-3Torrの真空中でストリップと電極との間のアーク放電によりストリップの表層にある金属酸化物を除去する。
【0006】真空放電アークは、まずスーケル(金属酸化物)のある所から放電が始まり、電撃的蒸発作用によりスケールが除去され金属表面が現れると、アークは金属表面には飛ばず、仕事関数の小さいスケール部に移り放電が始まる。
【0007】大気圧放電や水中放電では輝点(アークポット)は陰極と陽極に1個しかできないが、真空中では陰極に多数の非常に小さいアークポットが発生し、これらが激しくランダムに動きまわる故スケール除去が急速に行われる。
【0008】即ち本発明においては1〜10-3Torrの真空中で電極をストリップの間のアーク放電により、表面の疵部にもぐりこんでいる酸化物を蒸発させ除去するが、電極をストリップの幅方向に多分割し、単位電極の放電モードを遠隔操作で変更できるようにする。
【0009】前記放電モードは電流、電圧、磁界の強さ、方向を予め制御系に記憶せしめ、疵の性状、特に疵の深さの情報を得て制御系で演算して適正な放電モードを選択し、疵の真上又は真下の単位電極に入力するものとする。
【0010】以下本発明を図面について説明する。図1R>1,2において真空処理室30は入側及び出側に真空調整室31,31が設けられ、常時1−30-3Torrの真空に維持される。真空処理室30は電極9とコンダクタロール6とがストリップのパスラインを挟んで対設され電極−コンダクタロールは交互に配設される。
【0011】電極9は多分割された電極をストリップの幅方向に1列に配設され、各単位電極はそれぞれ選択的に放電モードを付与される。分割電極9の各単位電極は制御器33、計算器34からなる制御系と導通する。
【0012】又本発明はペイオフリール21の下流で、ストリップのパスラインに検出器32を設け、検出情報を制御系に入力する。検出器としては非接触探傷器が用いられ、格別限定されない。
【0013】従って本発明によるときはペイオフリール21からストリップ20を通しながら板の疵を検出し、制御器33で電極9のうち板疵部の真上、又は真下にある単位電極の放電モードを変更する。前記放電モードはあらかじめ材質別に設定された値とし、計算機の指令に基づいて単位電極に入力可能である。
【0014】即ち疵部にくい込んだ酸化物が放電アークによって蒸発し、除去され、その後で後列の単位電極の放電モードにより除去されたクレーター部が溶融し融合する。
【0015】図3は、ストリップ疵部を模式的に示すが、ストリップ20のスケール21は、本発明の放電加工によって蒸発して凹部22となる。凹部22は更に放電モードの選択により溶融されて平滑化される。同様にシーム疵23は放電加工によって凹部22を形成するが、放電モードの選択により平滑される。
【0016】
【実施例】板幅15mmのマルテンサイト系13Crステンレス鋼のエッヂ加工の例を以下に示す。真空度10-2Torrの真空槽において主電極の放電モードを25V×500A、補助電極の放電モードを27V×400Aに設定した。
【0017】ストリップの送給速度を20mpm とし、疵検出器としてフォトセルを設けた。図4はエッヂ疵加工の結果を写真で示すが、完全なスケールの除去を得た。
【0018】
【発明の効果】本発明は分割された単位電極に選択された放電モードを入力し、検出されたストリップの疵を放電加工するので、トリミング量が減少し歩留りが向上する。
【0019】又電気による処理なので被処理物によって酸の種類の選択、その濃度を変更することなく、いかなる材質のマテリアルの処理が可能であり、酸による処理をなくし公害がなくせる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の説明図である。
【図2】本発明の要部の拡大図である。
【図3】(a)は被処理材の疵の説明図であり、(b)はストリップのシーム疵の拡大図である。
【図4】スケール除去部の写真である。
【符号の説明】
6 コンダクタロール
9 電極
20 ストリップ
30 真空処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】 1〜10-3Torrの真空中に被処理材を連続送給し、被処理材の幅方向に多分割した複数電極を設け、かつ被処理材の長さ方向に多段列に設け、被処理材の表面疵を検出し、該疵位置の単位電極に演算等により選択された放電モードを入力して疵加工することを特徴とする真空アーク放電による表面疵処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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