説明

真空スイッチおよびその製造方法

【課題】 注型により形成された真空絶縁容器内に接離自在の接点を収納する真空スイッチを得る。
【解決手段】 エポキシ樹脂のような絶縁樹脂材料で形成された筒状の真空絶縁容器1と、真空絶縁容器1の内面に塗布乾燥により設けられたセラミックス層9と、真空絶縁容器1の一方端開口面に封着された固定側接点5、固定側通電軸4を有する固定側封着金具2と、真空絶縁容器1の他方端開口面に封着された可動側接点6、可動側通電軸7、ベローズ8を有する可動側封着金具3とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁樹脂材料で形成された真空絶縁容器内に接離自在の一対の接点を収納した真空スイッチおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の真空スイッチは、接点を収納する真空絶縁容器がアルミナ磁器やガラスなどの絶縁材料から形成されている。そして、真空スイッチの外部絶縁耐力を向上させるため、真空絶縁容器の外周にエポキシ樹脂のような絶縁樹脂材料を注型し、絶縁層を形成するものがある。
【0003】
しかしながら、真空絶縁容器と絶縁層との熱膨張係数の違いから、絶縁層にクラックが発生する可能性がある。このため、真空絶縁容器と絶縁層との間に、熱応力を吸収するシリコンゴムのような可撓性材料からなる緩衝層を設けるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−285430号公報 (第4〜5ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の真空スイッチにおいては、次のような問題がある。真空絶縁容器の外周に絶縁層を設けるものでは、絶縁層にクラックが発生する可能性がある。これを解決するために、真空絶縁容器と絶縁層との間に緩衝層を設けるのもでは、製造工程が増え作業が困難となっていた。更には、異種絶縁材料の多層構造となるので、互いの層の接着不良から隙間が形成され、部分放電が発生することがある。
【0005】
真空スイッチが大容量化していくと、真空絶縁容器が太径となったり、軸方向が長くなったりし、熱応力が増大する傾向にあり、クラックが発生し易くなることなどから絶縁層を設けることは困難となっている。このため、外部絶縁耐力を向上させることのできるエポキシ樹脂のような絶縁樹脂材料で直接、真空絶縁容器を形成し、接離自在の一対の接点を収納することのできるものが望まれていた。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、注型により形成された真空絶縁容器内に接離自在の一対の接点を収納した真空スイッチおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の真空スイッチは、絶縁樹脂材料で形成された筒状の真空絶縁容器と、前記真空絶縁容器の内面に設けられたセラミックス層と、前記真空絶縁容器の一方端開口面に封着された固定側部材と、前記真空絶縁容器の他方端開口面に封着された可動側部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、真空絶縁容器を絶縁樹脂材料により形成し、内面にセラミックス層を設けているので、外部絶縁耐力を向上させることができ、部分放電の発生、およびクラックの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
先ず、本発明の実施例1に係る真空スイッチを図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る真空スイッチの構成を示す断面図、図2は、本発明の実施例1に係る真空スイッチの製造方法を説明する工程図、図3は、本発明の実施例1に係る真空スイッチの真空絶縁容器を示す断面図、図4は、本発明の実施例1に係る真空スイッチのろう付け方法を説明する断面図である。
【0011】
図1に示すように、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂のような絶縁樹脂材料を注型して形成した筒状の真空絶縁容器1の両端開口面には、固定側封着金具2および可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2には、一方の電路となる固定側通電軸4が貫通固定され、その端部に固定側接点5が設けられている。固定側接点5と対向して接離自在の可動側接点6が他方の電路となる可動側通電軸7端部に設けられている。可動側通電軸7の中間部には、伸縮自在のベローズ8の一方端が気密に取り付けられ、他方端が可動側封着金具3の中央開口部に気密に取り付けられている。
【0012】
ここで、真空絶縁容器1の内面には、フェライト、炭化ケイ素、アルミナのような無機質材料の固体粉末にバインダーを混合したインク状の絶縁材料を、例えばスプレー塗装で塗布し、乾燥させたセラミックス層9が設けられている。そして、セラミックス層9の両端面には、金属を薄膜に伸ばしたメタライズ層10が設けられ、固定側封着金具2および可動側封着金具3がろう付けで固定されている。
【0013】
以下、このような真空スイッチの製造方法を図2乃至図4を参照して説明する。
【0014】
先ず、図2に示すように、絶縁樹脂材料のエポキシ樹脂を注型して筒状の真空絶縁容器1を形成する(注型工程)(st1)。絶縁厚さは、所定の絶縁耐力に耐え得るように、数mm〜数10mmとする。そして、真空絶縁容器1の内面を脱脂清掃し、例えばホーニング処理を施し、接着し易い表面にした後、セラミックス層9を形成する。セラミックス層9は、無機質材料の固体粉末にバインダーを混合したものを数回重ね塗りし、数10μm〜数mmの厚さとする(塗布工程)(st2)。
【0015】
その後、セラミックス層9を乾燥させる(乾燥工程)(st3)。乾燥は、無機質材料の固体粉末に混合させたバインダーや水分を除去するものであり、エポキシ樹脂の熱変形温度以下の温度で数10時間の加熱乾燥を行う。これにより、図3に示すような、セラミックス層9を有する真空絶縁容器1を得ることができる。
【0016】
次に、図4に示すように、予め組み立てておいた固定側封着金具2、固定側通電軸4、固定側接点5からなる固定側部材、および可動側封着金具3、可動側通電軸7、可動側接点6、ベローズ8からなる可動側部材を低温のろう材でろう付けする(封着工程)(st4、st5)。ろう付け部は、固定側封着金具2とメタライズ層10間、および可動側封着金具3とメタライズ層10間であり、気密性を向上させることができる。ろう付け後、例えば固定側封着金具2に設けた図示しない排気孔から真空絶縁容器1内を真空引きし、接点5、6などに付着しているガス分を取り除く(排気工程)(st6)。
【0017】
ガス分の取り除きにおいては、真空絶縁容器1内をエポキシ樹脂の熱変形温度以上に加熱することができないので、真空引きを長時間行うものとする。なお、例えば付着物を選択的に除去する電磁波共鳴による脱ガスを行うと短時間で真空引きをすることができる。真空絶縁容器1内が圧力10−2Pa以下の所定の真空に達すると、前記排気孔を封じきる。なお、セラミックス層9沿面を有する真空絶縁容器1、固定側部材および可動側部材の全体を真空炉に搬入し、ろう付けを行ってもよい。
【0018】
これにより、真空絶縁容器1を注型で形成することができるので、外部絶縁耐力の優れたものにすることができる。また、真空絶縁容器1の内面に、セラミックス層9を形成しているので、接点5、6間で発生するアークなどに耐え得るものとすることができる。なお、セラミックス層9を金属蒸気から保護するため、接点5、6を包囲するようなアークシールドを設けてもよい。更には、真空絶縁容器1の内面にセラミックス層9を塗布、乾燥させて設けているので、良好な接着を得ることができ、これらの界面での部分放電の発生、および異種絶縁材料の接着に伴う熱応力によるクラックの発生を抑制することができる。
【0019】
上記実施例1の真空スイッチによれば、真空絶縁容器1を絶縁樹脂材料で注型して形成し、内面にセラミックス層9を設けているので、外部絶縁耐力を向上させることができ、真空絶縁容器1とセラミックス層9間での部分放電の発生、およびクラックの発生を抑制することができる。
【0020】
上記実施例1では、メタライズ層10をセラミックス層9の両端面に設けて説明したが、真空絶縁容器1の両端面までメタライズ層10を設けて、固定側封着金具2および可動側封着金具3とろう付けを行ってもよい。ろう付け部の面積が増大し、安定した固定ができる。
【実施例2】
【0021】
次に、本発明の実施例2に係る真空スイッチを図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施例2に係る真空スイッチのろう付け方法を説明する断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、ろう付け部である。図5において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0022】
図5に示すように、メタライズ層10をセラミックス層9の内周両端部に設けている。固定側封着金具2および可動側封着金具3は外周を断面L字状に折曲し、その外径をメタライズ層10の内径よりも僅かに小さくしている。そして、固定側封着金具2および可動側封着金具3の外径部とメタライズ層10とをろう付けし固定している。
【0023】
ここで、上記のようにメタライズ層10をセラミックス層9の内周両端部に設けているものと、実施例1のセラミックス層9端面に設けているものとを併せて、セラミックス層9の両端部にメタライズ層10を設けると定義する。
【0024】
上記実施例2の真空スイッチによれば、実施例1による効果のほかに、ろう付け部の面積が増大し、固定側封着金具2および可動側封着金具3をより確実に固定することができる。
【実施例3】
【0025】
次に、本発明の実施例3に係る真空スイッチを図6を参照して説明する。図6は、本発明の実施例3に係る真空スイッチの真空絶縁容器を示す断面図である。なお、この実施例3が実施例1と異なる点は、真空絶縁容器の形状である。図6において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0026】
図6に示すように、真空絶縁容器1の両端開口面には、半径方向に突出した四角体状のフランジ部1aが形成されている。フランジ部1aの内周は円錐状に窪んだ界面接続部1bになっており、また、四角体状の四隅には、シリコンゴムのような可撓性絶縁物11を介して他の電気機器12との接続固定を行うボルト貫通孔1cが設けられている。
【0027】
これにより、真空スイッチを他の電気機器12と接続固定することができる。また、真空絶縁容器1を絶縁樹脂材料の注型により形成しているので、所定の外形形状を容易に得ることができる。
【0028】
上記実施例3の真空スイッチによれば、実施例1による効果のほかに、真空スイッチを他の電気機器12と接続固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る真空スイッチの構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る真空スイッチの製造方法を説明する工程図。
【図3】本発明の実施例1に係る真空スイッチの真空絶縁容器を示す断面図。
【図4】本発明の実施例1に係る真空スイッチのろう付け方法を説明する断面図。
【図5】本発明の実施例2に係る真空スイッチのろう付け方法を説明する断面図
【図6】本発明の実施例3に係る真空スイッチの真空絶縁容器を示す断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 真空絶縁容器
1a フランジ部
1b 界面接続部
1c ボルト貫通孔
2 固定側封着金具
3 可動側封着金具
4 固定側通電軸
5 固定側接点
6 可動側接点
7 可動側通電軸
8 ベローズ
9 セラミックス層
10 メタライズ層
11 可撓性絶縁物
12 他の電気機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂材料で形成された筒状の真空絶縁容器と、
前記真空絶縁容器の内面に設けられたセラミックス層と、
前記真空絶縁容器の一方端開口面に封着された固定側部材と、
前記真空絶縁容器の他方端開口面に封着された可動側部材と
を備えたことを特徴とする真空スイッチ。
【請求項2】
前記セラミックス層の両端部にメタライズ層を設け、前記固定側部材の固定側封着金具、および前記可動側部材の可動側封着金具をろう付けしたことを特徴とする請求項1に記載の真空スイッチ。
【請求項3】
前記真空絶縁容器の両端開口面に、他の電気機器を接続する円錐状の界面接続部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空スイッチ。
【請求項4】
筒状の真空絶縁容器を絶縁樹脂材料で注型する注型工程と、
前記真空絶縁容器の内面に無機質材料を塗布する塗布工程と、
前記無機質材料に含まれているバインダーと水分とを除去する乾燥工程と、
前記真空絶縁容器の両端開口面に固定側部材および可動側部材をろう付けする封着工程と、
前記真空絶縁容器内を真空にする排気工程と
を備えたことを特徴とする真空スイッチの製造方法。
【請求項5】
前記排気工程において、付着物を選択的に除去する電磁波共鳴による脱ガスを行うことを特徴とする請求項4に記載の真空スイッチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−48842(P2009−48842A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213151(P2007−213151)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】