説明

真空下水道システムの空気取入装置

【課題】真空下水道管路の最上流部まで真空弁の動作及び汚水の搬送に必要とされる真空圧を常に維持出来る真空下水道システムの空気取入装置を提供する。
【解決手段】空気取入部10側の真空下水支管2の末端2a近傍には、真空下水管路内の圧力を検出可能な取入弁側圧力センサ15が設けられていて、電気的に弁制御部12に接続されることにより、取入弁側圧力センサ15で検出された管内圧力値を電気信号に変換して出力する。
弁制御部12では、取入弁側圧力センサ15で検出された管内圧力値を用いて、空気取入弁を開放する開放出力信号を出力部12aから送信する。
そして、この弁制御部12には、開放から一定時間経過後に、空気取入弁11を閉塞する閉塞出力信号を出力部12aから送信させるタイマ部12bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空圧を用いて流体を搬送する真空下水道システムで、主に汚水の搬送に用いられる真空圧を最上流部まで到達させることが出来る真空下水道システムの空気取入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然流下式下水道システムに代わって、真空下水道システムの採用が増加しつつある。この真空下水道システムは、真空圧を利用して、汚水枡に溜まった汚水を吸引収集するものである(例えば、特許文献1乃至3等参照)。
【0003】
図2に示すこのような真空下水道システムでは、各建築物8…からの排水を一時貯留する汚水枡9…には、図示省略の真空弁が、各々設けられている。
【0004】
これらの真空弁からは、真空下水管路としての真空下水支管2,3…及び真空下水本管4を介して、真空ステーション5に設けられた集水タンク5aに接続されている。
【0005】
そして、汚水枡内の汚水が、一定量に達すると、各真空弁1…が開放されて、下流側に接続された真空下水支管2,3及び真空下水本管4を通じて、真空ステーション5に設けられた真空ポンプ6が生じる真空圧により集水タンク5aに移送される。
【0006】
また、このような従来の真空下水道システムでは、真空下水支管2,3…の末端にタイマーを用いて予め所定時間で開閉される空気取入弁7,7が、各々設けられている(図7参照)。
【0007】
すなわち、汚水の集中等で、真空下水支管2,3及び真空下水本管4内に汚水が滞留すると、末端まで真空圧が届かなくなるが、前記空気取入弁7,7では、タイマーが用いられて予め設定された所定時間で開閉される。
【0008】
このため、各真空下水支管2,3…の末端に溜まっていた汚水は、一掃されて、再び真空弁1の開閉に必要とされる負圧を末端近傍まで行き渡らせることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2546718号
【特許文献2】特許第3872865号
【特許文献3】特許第4101950号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の真空下水道システムでは、前記タイマーが用いられて、予め設定された所定時間で空気取入弁7が、開放される。
【0011】
このため、実際に各真空下水支管2,3…内に汚水が溜まっていない場合でも、空気取入弁7が開放されてしまうことがあり、真空下水道システム全体の真空度に影響を与えてしまう虞があった。
【0012】
そこで、この発明は、真空下水道管路の最上流部まで真空弁の動作及び汚水の搬送に必要とされる真空圧を常に維持出来る真空下水道システムの空気取入装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、真空圧により汚水升内の汚水を下流側の真空ステーションへ移送する真空下水管路の上流端に、大気を真空下水管路内に導入する空気取入部を設けた真空下水道システムの空気取入装置であって、前記空気取入部は、開放又は閉塞により大気を真空下水管路内に導入又は遮断可能な空気取入弁と、該空気取入部側の真空下水管路の末端近傍に設けられて、真空下水管路内の圧力を検出可能な取入弁側圧力センサと、該取入弁側圧力センサで検出された管内圧力値を用いて、空気取入弁を開放する弁制御部とを有し、開放から一定時間経過後に、空気取入弁を閉塞するタイマ部を設けた真空下水道システムの空気取入装置を特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載されたものは、前記タイマ部では、該取入弁側圧力センサで検出された管内圧力値を用いて、空気取入弁を開放する際に、猶予時間が予め真空下水管路の道程に合わせて設定された設定猶予時間を経過した場合とする請求項1記載の真空下水道システムの空気取入装置を特徴としている。
【0015】
更に、請求項3に記載されたものは、前記真空ステーションには、真空下水管路内の圧力を検出可能なステーション側圧力センサが設けられて、該ステーション側圧力センサで検出された真空下水本管4の内部及び、前記取入弁側圧力センサで検出された末端圧力値を比較して、前記弁制御部では空気取入弁を開放する請求項1又は2記載の真空下水道システムの空気取入装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1記載のものによれば、管内圧力が、基準圧力値以上となると、取入弁側圧力センサで検出された管内圧力値が用いられて、空気取入弁が弁制御部によって開放される。
【0017】
このため、汚水の吸い込みが集中して、真空下水管路内に滞留しても、この末端に設けられた空気取入部から導入された空気によって、真空ステーション方向へ押し流されて、一掃される。
【0018】
しかも、タイマ部によって、予め設定された時間で、空気取入弁が閉塞されるので、開放されたままで、真空下水道システム全体の圧力が上昇してしまう虞が無く、真空ポンプの運転効率を良好なものとすることが出来る。
【0019】
また、請求項2に記載されたものは、取入弁側圧力センサで検出された管内圧力値が、基準圧力値以上に上昇しても、猶予時間が予め真空下水管路の道程に合わせて設定された設定猶予時間を経過した場合にのみ、空気取入弁が開放される。
【0020】
この為、真空弁が開放されたままで、真空下水管路全体の内部圧力が、充分な真空度に到達していない場合は、空気取入弁が開放されない。
【0021】
従って、真空下水管路の末端で、一時的な圧力変動の影響により、弁制御部によって空気取入弁が開放されることが無く、設定猶予時間以上継続して真空度が低下している場合のみ、汚水が滞留等していると判断して、空気取入弁を開放して、空気を導入し真空ステーション方向へ押し流すことが出来、更に真空ポンプの運転効率を良好なものとして、真空弁の動作及び汚水の搬送に必要とされる真空圧を常に維持出来る。
【0022】
更に、請求項3に記載されたものは、前記真空ステーションに設けられたステーション側圧力センサが、真空下水管路内の圧力を検出して、弁制御部では、真空下水本管の内部圧力値及び、前記取入弁側圧力センサで検出された末端圧力値が比較されて、空気取入弁が開放される。
【0023】
真空下水支管の末端の内部圧力値が、基準圧力値以上で、且つ真空下水管路の内部圧力が、設定圧力以下であると判断されている場合のみに、空気取入弁が開放される。
【0024】
このため、真空弁が開放されたままで、真空下水管路全体の内部圧力が、充分な真空度に到達していない場合は、空気取入弁が開放されない。
【0025】
従って、真空下水管路の末端に真空圧が届かず、他の真空式下水道システムは正常に機能している場合のみ、汚水が末端近傍で滞留している状態であると判断して、大気圧の空気が、空気取入部によって導入されて、汚水を真空ステーション方向へ押し流すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の真空下水道システムの空気取入装置で、模式的な要部の拡大図である。
【図2】実施の形態の真空下水道システムで、全体の構成を説明する一部断面図である。
【図3】実施の形態の真空下水道システムの空気取入装置で、動作順序を説明するフローチャート図である。
【図4】実施の形態の実施例1の真空下水道システムの空気取入装置で、動作順序を説明するフローチャート図である。
【図5】実施の形態の実施例2の真空下水道システムの空気取入装置で、動作順序を説明するフローチャート図である。
【図6】実施の形態の実施例3の真空下水道システムの空気取入装置で、模式的な要部の断面図である。
【図7】従来例の真空下水道システムの模式的なレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1乃至図6は、この発明の実施の形態の真空下水道システムの空気取入装置を示すものである。
【0028】
まず、構成から説明すると、この実施の形態の真空下水道システムの空気取入装置では、図2に示す様に各建築物8からの排水を一時貯留する汚水枡9には、各々真空弁1が、設けられている。
【0029】
これらの真空弁は、真空下水支管2,3…及び真空下水本管4を介して、下流側の真空ステーション5に設けられた真空ポンプ6に接続されている。
【0030】
そして、汚水枡9内の汚水が、一定量に達すると、各真空弁1が開放されて、下流側に接続された真空下水支管2,3及び真空下水本管4を通じて、真空ステーション5に設けられた真空ポンプ6が発生させる真空圧により移送される。
【0031】
このうち、真空下水支管2のように比較的長い道程を有する真空下水管路の末端2aには、空気取入部10が真空下水管路の上流端に位置するように設けられている。
【0032】
この空気取入部10では、図1に示す様に、主に開放又は閉塞により大気を真空下水支管2内に導入又は遮断可能な空気取入弁11と、この空気取入弁11の開閉制御を行う弁制御部12とが、地中に埋設されている。
【0033】
また、空気取入弁11の開放口側が、エルボ管13及び直管状の空気取入管14を介して、地表GLから上方へ向けて突設されていて、大気圧の空気を前記空気取入弁11方向に導入可能としている。
【0034】
また、空気取入部10側の真空下水支管2の末端2a近傍には、真空下水管路内の圧力を検出可能な取入弁側圧力センサ15が設けられている。
【0035】
この取入弁側圧力センサ15は、電気的に弁制御部12に接続されていて、この取入弁側圧力センサ15で検出された管内圧力値を電気信号に変換して弁制御部12に出力するように構成されている。
【0036】
この弁制御部12では、取入弁側圧力センサ15で検出された管内圧力値を用いて、空気取入弁を開放する開放出力信号を出力部12aから送信するように構成されている。
【0037】
そして、この弁制御部12には、開放から一定時間経過後に、空気取入弁11を閉塞する閉塞出力信号を出力部12aから送信させるタイマ部12bが設けられている。
【0038】
次に、図3に示すフローチャートの制御フロー順序に沿って、この実施の形態の真空下水道システムの空気取入装置の作用効果を説明する。
【0039】
この実施の形態の真空下水道システムでは、Step1で制御フローがスタートすると、Step2では、弁制御部12に電気的に接続されている取入弁側圧力センサ15が、空気取入部側の真空下水支管2の末端2a近傍の真空下水管路内の圧力を検出して、管内圧力値として、前記弁制御部12に出力する。
【0040】
Step3では、この管内圧力値を用いて、空気取入弁11の開閉塞動作が制御される。 すなわち、検出された管内圧力値が、基準圧力値(例えば−25kPa)以上となれば、次のStep4に進んで、空気取入弁11を開放する開放出力信号を出力部12aから送信する。
【0041】
また、検出された管内圧力値が、基準圧力値に満たない場合は、Step2に戻る。
【0042】
Step4で、出力部12aから送信された開放出力信号は、空気取入弁11を開放して、前記空気取入管14から大気圧の空気が、真空下水支管2内に導入される。
【0043】
このため、汚水の吸い込みが集中して、真空下水管路内に汚水が滞留しても、導入された空気によって、これらの滞留した汚水が、真空ステーション5方向へ押し流されて、一掃される。
【0044】
Step5では、前記タイマ部12bによって、予め真空下水管路の道程に合わせて設定された時間を経過したか否かが判定される。
【0045】
予め設定された時間を経過した場合には、Step6に進み、前記空気取入弁11を閉塞する閉塞出力信号を出力部12aから送信させる。
【0046】
また、予め設定された時間がまだ経過していない場合には、Step4に戻る。
【0047】
Step6では、出力部12aから送信された閉塞出力信号によって、一定時間経過後、空気取入弁11が閉塞されると、前記空気取入管14から導入されていた空気が停止されて、真空下水支管2内の空気が、真空ステーション5の真空ポンプ6によって引かれて低下する。
【0048】
このため、再度各汚水枡9に設けられた真空弁が開放される際に、汚水を搬送する為に必要な真空度が得られて、真空弁の動作を確実に行わせることが出来る。
【0049】
このように、汚水の吸い込みが集中して、真空下水管路内に汚水が滞留しても、この末端2aに設けられた空気取入部10から導入された空気によって、真空ステーション5方向へ押し流されて、一掃される。
【0050】
しかも、タイマ部12bによって、予め設定された時間で、空気取入弁11が閉塞されるので、開放されたままによる真空下水道システム全体の圧力が上昇してしまう虞が無く、真空ポンプ6の運転効率を良好なものとすることが出来る。
【実施例1】
【0051】
図4に示すフローチャートは、この発明の実施の形態の実施例1の弁制御部12の動作を示すものである。
【0052】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0053】
この実施例1の真空下水道システムの空気取入装置では、Step10で、前記空気取入弁11の開閉制御を開始すると、Step11では、弁制御部12に電気的に接続されている取入弁側圧力センサ15が、空気取入部側の真空下水支管2の末端2a近傍の真空下水管路内の圧力を検出して、管内圧力値として、前記弁制御部12に出力する。
【0054】
Step12では、この管内圧力値を用いて、空気取入弁11の開閉塞動作が制御される。
【0055】
すなわち、検出された管内圧力値が、基準圧力値(例えば−25kPa)以上となれば、次のStep13に進み、また検出された管内圧力値が、基準圧力値に満たない場合は、Step11に戻る。
【0056】
Step13では、前記タイマ部12bが用いられて、予め真空下水管路の道程に合わせて設定された設定猶予時間(例えばこの実施例1では、3分間の設定猶予時間)を経過したか否かが判定される。
【0057】
設定された3分間、基準圧力値以上であれば、次のStep14に進み、基準圧力値が設定された3分間保たれない場合はStep11に戻る。
【0058】
Step14では、空気取入弁11を開放する開放出力信号が、出力部12aから送信されて、この出力部12aから送信された開放出力信号によって、空気取入弁11が開放される。
【0059】
この空気取入弁11の開放により、前記空気取入管14から大気圧の空気が、真空下水支管2内に導入される。
【0060】
このため、汚水の吸い込みが集中して、真空下水管路内に汚水が滞留しても、導入された空気によって、これらの滞留した汚水が、真空ステーション5方向へ押し流されて、一掃される。
【0061】
Step15では、前記タイマ部12bによって、予め真空下水管路の道程に合わせて設定された時間を経過したか否かが判定される。
【0062】
予め設定された時間を経過した場合には、Step16に進み、前記空気取入弁11を閉塞する閉塞出力信号を出力部12aから送信させる。
【0063】
また、予め設定された時間がまだ経過していない場合には、Step15を繰り返す。
【0064】
Step16では、出力部12aから送信された閉塞出力信号によって、一定時間経過後、空気取入弁11が閉塞されると、前記空気取入管14から導入されていた空気が停止されて、真空下水支管2内の空気が、真空ステーション5の真空ポンプ6で引かれて低下する。
【0065】
Step17では、予め設定された時間を経過しなければ、Step11に戻らないように、予め設定された続行時間を、経過したか否かが、タイマ部12bで判定される。
【0066】
予め設定された続行時間を、経過した場合はStep11に戻り、再び開閉制御を開始すると共に、タイマ部12bの判定で、経過していないと判断された場合は、このStep17に戻り、経過するまでループを巡回する。
【0067】
このため、空気取入部10では、空気取入弁11を一度開くと、予め設定された続行時間を経過しなければ再度、開放されない。
【0068】
よって、真空下水管路内に空気取入部10から空気が入りすぎることで、真空下水道システム全体の真空度に影響が出ないようにすることが出来る。
【0069】
この実施例1では、前記実施の形態の作用効果に加えて、更に、Step13で、タイマ部12bが用いられて、予め真空下水管路の道程に合わせて設定された時間(例えばこの実施例1では、3分間)を経過したか否かが判定されている。
【0070】
このため、前記真空下水支管2の末端2aで、一時的な圧力変動の影響により、弁制御部12によって空気取入弁11が開放されることが無く、3分間以上継続して真空度が低下している場合のみ、汚水が管内に滞留閉塞していると判断して、空気取入弁11を開放して、空気を導入し真空ステーション5方向へ押し流すことが出来る。
【実施例2】
【0071】
図5は、この発明の実施の形態の実施例2の真空下水道システムの空気取入装置を示すものである。
【0072】
なお、前記実施の形態及び実施例1の真空下水道システムの空気取入装置と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0073】
まず、この実施例2の構成上の相違点を中心に説明すると、この実施例2の真空下水道システムの空気取入装置では、図1中二点鎖線に示す様に、前記空気取入管14に沿って直立されたアンテナ部16が、レシーバ17を介して、弁制御部12に接続されている。
【0074】
また、図2に示す様に、前記真空ステーション5には、真空下水本管4内の圧力を検出可能なステーション側圧力センサ20が設けられている。
【0075】
このステーション側圧力センサ20では、検出された真空下水本管4の内部を電気的信号に変換して、送信アンテナ19から送信するように構成されている。
【0076】
そして、前記取入弁側圧力センサ15で検出された末端圧力値と、この送信アンテナ19及びアンテナ部16間で送受信された真空下水本管4の内部とが、前記弁制御部12で比較されて、空気取入弁11の開放又は閉塞が行われるように構成されている。
【0077】
次に、図5に示すフローチャートの制御フロー順序に沿って、この実施例2の空気取入装置の作用効果について説明する。
【0078】
この実施例2の真空下水道システム開閉弁装置の弁体構造では、まず、Step20で、前記空気取入弁11の開閉制御を開始すると、Step21では、弁制御部12に電気的に接続されている取入弁側圧力センサ15によって、空気取入部側の真空下水支管2の末端2a近傍の真空下水管路内の圧力が検出されて、管内圧力値として、前記弁制御部12に出力される。
【0079】
Step22では、この管内圧力値を用いて、空気取入弁11の開閉塞動作が制御される。
【0080】
すなわち、検出された管内圧力値が、基準圧力値(例えば−25kPa)以上となれば、次のStep23に進み、また検出された管内圧力値が、基準圧力値に満たない場合は、Step21に戻る。
【0081】
Step23では、前記タイマ部12bが用いられて、予め真空下水管路の道程に合わせて設定された猶予時間が、経過したか否かが判定される。
【0082】
設定された猶予時間の間、基準圧力値以上であれば、次のStep24に進み、基準圧力値が設定された猶予時間の間、保たれない場合はStep21に戻る。
【0083】
Step24では、真空ステーション5のステーション側圧力センサ20によって検知された真空下水本管4の内部圧力が、前記送信アンテナ19及びアンテナ部16間で送受信されて、弁制御部12に取り込まれる。
【0084】
Step25では、ステーション側圧力センサ20によって検知された真空下水本管4の内部圧力が、設定圧力(この実施例2では、−60kPa)以下であるか否かが判断される。
【0085】
内部圧力が設定圧力以下になった場合には、次のStep26に進み、設定圧力以下にならない場合には、Step21に戻る。
【0086】
Step26では、真空下水支管2の末端2aの内部圧力値が、基準圧力値以上で、真空下水本管4の内部圧力が、設定圧力以下であると判断されているので、空気取入弁11を開放する開放出力信号が、出力部12aから送信されて、この開放出力信号によって、空気取入弁11が開放される。
【0087】
この空気取入弁11の開放により、前記空気取入管14から大気圧の空気が、真空下水支管2内に導入される。
【0088】
このため、汚水の吸い込みが集中して、真空下水管路内に汚水が滞留しても、導入された空気によって、これらの滞留した汚水が、真空ステーション5方向へ押し流されて、一掃される。
【0089】
Step27では、前記タイマ部12bによって、予め真空下水管路の道程に合わせて設定された時間を経過したか否かが判定される。
【0090】
予め設定された時間を経過した場合には、Step28に進み、前記空気取入弁11を閉塞する閉塞出力信号を出力部12aから送信させる。
【0091】
また、予め設定された時間がまだ経過していない場合には、Step26に戻る。
【0092】
Step28では、出力部12aから送信された閉塞出力信号によって、一定時間経過後、空気取入弁11が閉塞される。
【0093】
このため、前記空気取入管14から導入されていた空気が停止されて、真空下水支管2内の空気が、真空ステーション5の真空ポンプ6で引かれて低下し、再び、Step21に戻り、再び開閉制御が行われる。
【0094】
この実施例2では、前記実施の形態及び実施例1の作用効果に加えて、更に、図2で示す様に、ステーション側圧力センサ20で検出された真空下水本管4の内部が電気的信号に変換されて、各空気取入部10…に設けられたアンテナ部16…へ送信されて、個別に空気取入弁11の開閉制御が判断される。
【0095】
そして、真空下水支管2の末端2aの内部圧力値が、基準圧力値以上で、且つ真空下水本管4の内部圧力が、設定圧力以下であると判断されている場合のみに、空気取入弁11が開放される。
【0096】
また、真空弁1が開放されたままで、真空下水管路全体の内部圧力が、充分な真空度に到達していない場合は、空気取入弁11が開放されない。
【0097】
従って、真空下水支管2の末端2aに真空圧が届かず、他の真空式下水道システムは正常に機能している場合のみ、汚水が末端2a近傍で滞留している状態であると判断して、大気圧の空気を、空気取入部10によって導入して、真空下水管路内に滞留した汚水を、真空ステーション5方向へ押し流すことが出来る。
【実施例3】
【0098】
図6は、この発明の実施の形態の実施例3の真空下水道システムの空気取入装置を示すものである。
【0099】
なお、前記実施の形態及び実施例1,2の真空下水道システムの空気取入装置と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0100】
まず、この実施例3の構成上の相違点を中心に説明すると、この実施例3の真空下水道システムの空気取入装置では、図6に示す様に、地中の真空下水支管2の末端部には、エルボ管13を介して、直管状の空気取入管14が地表GLから、上方に向けて直立されている。
【0101】
この空気取入管14の端部14aには、空気取入弁11が設けられていて、この端部14a近傍には、取入弁側圧力センサ15が設けられている。
【0102】
この取入弁側圧力センサ15は、地表GLに配置された弁制御部22に電気的に接続されていて、この取入弁側圧力センサ15で検出された管内圧力値が、電気信号に変換されて弁制御部12に出力されるように構成されている。
【0103】
このように構成された実施例3の真空下水道システムの空気取入装置では、空気取入弁11及び弁制御部22が、地表GLから上方に露出しているので、メンテナンス性が良好である。
【0104】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1,2と略同様であるので説明を省略する。
【0105】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態の真空下水道システムの空気取入装置を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の真空下水道システムの空気取入装置に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0106】
例えば、前記実施の形態では、弁制御部12にタイマ部12bを設けて、設定時間を過ぎると、空気取入弁11を閉塞するように構成されているが、例えば、開放から一定時間を経過すると機構的に空気取入弁11を閉塞する等、開放から一定時間経過後に、空気取入弁を閉塞するタイマ部であれば、電気的な構成に限らず、機械的な構成で空気取入弁11に直接設けられていても良く、形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【0107】
また、空気取入弁11も、電動ボール弁によって構成されているが、例えば、電動バタフライ弁等、短時間で開閉側出来るものであれば良く、弁機構の形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【0108】
更に、前記実施例2では、真空下水本管4の内部が、送信アンテナ19及びアンテナ部16間で、無線により送受信されているが、特にこれに限らず、例えば、真空下水道管路に沿って配索された有線配線を用いて、真空下水本管4の内部の送受信を行う等、送受信形式の方法、数量及びタイミング等が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0109】
1 真空弁
2,3 真空下水支管
2a 末端
4 真空下水本管
5 真空ステーション
8 建築物
9 汚水枡
10 空気取入部
11 空気取入弁
12 弁制御部
12a 出力部
12b タイマ部
15 取入弁側圧力センサ
20 ステーション側圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空圧により汚水升内の汚水を下流側の真空ステーションへ移送する真空下水管路の上流端に、大気を真空下水管路内に導入する空気取入部を設けた真空下水道システムの空気取入装置であって、
前記空気取入部は、開放又は閉塞により大気を真空下水管路内に導入又は遮断可能な空気取入弁と、該空気取入部側の真空下水管路の末端近傍に設けられて、真空下水管路内の圧力を検出可能な取入弁側圧力センサと、該取入弁側圧力センサで検出された管内圧力値を用いて、空気取入弁を開放する弁制御部とを有し、開放から一定時間経過後に、空気取入弁を閉塞するタイマ部を設けたことを特徴とする真空下水道システムの空気取入装置。
【請求項2】
前記タイマ部では、該取入弁側圧力センサで検出された管内圧力値を用いて、空気取入弁を開放する際の猶予時間を予め真空下水管路の道程に合わせて設定された設定猶予時間を経過した場合とすることを特徴とする請求項1記載の真空下水道システムの空気取入装置。
【請求項3】
前記真空ステーションには、真空下水管路内の圧力を検出可能なステーション側圧力センサが設けられて、該ステーション側圧力センサで検出された真空下水本管の内部及び、前記取入弁側圧力センサで検出された末端圧力値を比較して、前記弁制御部では空気取入弁を開放することを特徴とする請求項1又は2記載の真空下水道システムの空気取入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225033(P2012−225033A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92666(P2011−92666)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】