説明

真空断熱パネル及びそれを用いた冷蔵庫

【課題】断熱性能を向上して省エネルギー化を図ることのできる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】外箱31と内箱32間に発泡断熱材41を充填した断熱箱体10と、外箱31の内面側に配される放熱パイプ33と、芯材14を外被材15で覆って内部が減圧されるとともに放熱パイプ33が嵌められる溝部11を設けた真空断熱パネル13とを備えた冷蔵庫において、真空断熱パネル13は、溝部11を形成した面の裏面に溝部11に対向して形成されるとともに溝部11よりも長手方向に垂直な方向の幅が広い凸部12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を減圧して断熱する真空断熱パネルに関する。また本発明は、断熱箱体内に真空断熱パネルを備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫は特許文献1、2に開示されている。この冷蔵庫は外箱と内箱間に発泡断熱材を充填した断熱箱体により本体部の筐体が構成され、冷却室が区分けして形成される。外箱の内面側には放熱用の放熱パイプが設けられ、発泡断熱材に埋設されている。放熱パイプには内部を減圧した真空断熱パネルが接して設けられる。これにより、放熱パイプと冷却室との間の断熱性を向上することができる。
【0003】
また、真空断熱パネルの一面には放熱パイプが嵌められる溝部が設けられる。これにより、放熱パイプの突出を防止し、断熱箱体の断熱壁を薄く形成して冷蔵庫の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−90810号公報(第3頁−第6頁、第7図)
【特許文献2】特開2005−233506号公報(第4頁−第8頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の冷蔵庫によると、真空断熱パネルは溝部を設けた部分の厚みが薄くなる。真空断熱パネルは発泡断熱材に比して熱伝導率が1/10程度であるため、真空断熱パネルの断熱性能が低下して省エネルギー化の妨げになる問題があった。特に、冷蔵庫の容積効率向上のため真空断熱パネルを薄型化した場合に断熱性能の低下が著しい。
【0006】
本発明は、断熱性能を向上して省エネルギー化を図ることのできる冷蔵庫を提供することを目的とする。また本発明は冷蔵庫の断熱性能を向上できる真空断熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の冷蔵庫は、外箱と内箱間に発泡断熱材を充填した断熱箱体と、前記外箱の内面側に配される放熱パイプと、芯材を外被材で覆って内部が減圧されるとともに前記放熱パイプが嵌められる溝部を設けて前記放熱パイプに対して前記内箱側に配された真空断熱パネルとを備え、前記真空断熱パネルは、前記溝部を形成した面の裏面に前記溝部に対向して形成されるとともに前記溝部よりも長手方向に垂直な方向の幅が広い凸部を有し、前記凸部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴としている。
【0008】
この構成によると、外箱と内箱との間に発泡断熱材を充填した断熱箱体により冷却室が区分けされ、放熱パイプが発泡断熱材に埋設される。真空断熱パネルは放熱パイプを溝部に嵌めて放熱パイプよりも冷却室側に配され、冷却室との間を断熱する。真空断熱パネルの溝部の形成面と反対側の面には溝部に対向する凸部が設けられる。凸部は溝部よりも長手方向に垂直な方向の幅が広いため真空断熱パネルは溝部近傍で厚みが薄く成らず、一様な厚みで形成される。
【0009】
また本発明は、上記構成の冷蔵庫において、前記溝部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の冷蔵庫において、放熱パイプは前記溝部に接して取り付けられることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の冷蔵庫において、前記外被材は端部を接着して封止され、前記凸部が配される側にアルムニウム箔を含むことを特徴としている。この構成によると、芯材の両面を覆う外被材の端部を接着して芯材が封入される。凸部が配される側の外被材にはアルムニウム箔が含まれてバリア性が確保される。溝部が配される側の外被材にはアルムニウム箔が含まれず、アルミニウム蒸着したフィルム等によってバリア性が確保される。
【0012】
また本発明は、芯材を外被材で覆って内部が減圧される真空断熱パネルにおいて、一面に設けられる溝部と、前記溝部を形成した面の裏面に前記溝部に対向して形成されるとともに前記溝部よりも長手方向に垂直な方向の幅が広い凸部とを有し、前記凸部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の真空断熱パネルにおいて、前記溝部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、真空断熱パネルは放熱パイプが嵌められる溝部と、溝部に対向して溝部よりも長手方向に垂直な方向の幅が広い凸部とを有するので、溝部近傍の真空断熱パネルを厚く形成することができる。従って、真空断熱パネルを薄型化しても冷蔵庫の断熱性能を向上して省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
また本発明によると、放熱パイプが溝部に接して取り付けられるため、溝部の深さを放熱パイプの径と同じにすることができる。従って、真空断熱パネルの厚みを必要以上の厚くする必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0016】
また本発明によると、外被材は凸部が配される側にアルムニウム箔を含むので、外被材のバリア性を保持するとともに高温となる放熱パイプとアルミニウム箔とを離して配置することができる。従って、真空断熱パネルの内部に伝熱されるヒートブリッジを低減し、断熱性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の冷蔵庫を示す分解斜視図
【図2】本発明の実施形態の冷蔵庫の真空断熱パネルを示す斜視図
【図3】本発明の実施形態の冷蔵庫の真空断熱パネルを示す断面図
【図4】本発明の実施形態の冷蔵庫の断熱箱体の側壁を示す上面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は一実施形態の冷蔵庫の断熱箱体を示す分解斜視図である。冷蔵庫の断熱箱体10は前面が開口する箱状を成している。断熱箱体10の外面は外箱31により形成され、内面は内箱32により形成される。外箱31は鉄板等の金属から成る天板31a、側面板31b、背面板31c及び底面板(不図示)により前面を開口した箱型に形成される。内箱32は樹脂成形品から成り、前面を開口した複数の冷却室8、9を区分けして形成される。
【0019】
外箱31と内箱32との間には発泡ウレタン等の発泡断熱材41(図3参照)が充填されている。側面板31bの内面側には放熱用の放熱パイプ33がアルミニウム箔等の粘着テープにより貼り付けられ、発泡断熱材41に埋設されている。放熱パイプ33は上下方向に延び、上下端で屈曲して蛇行する。放熱パイプ33の内面側には真空断熱パネル13が配される。
【0020】
図2は真空断熱パネル13を示す斜視図である。真空断熱パネル13の一面には複数の溝部11が並設される。溝部11は上下に延びて形成され、蛇行した放熱パイプ33が各溝部11に嵌められるようになっている。真空断熱パネル13の溝部11が形成された面の裏面には溝部11に対向する凸部12が設けられている。
【0021】
図3は真空断熱パネル13を示す断面図である。真空断熱パネル13は袋状の外被材15内にガラス繊維等の芯材14を内包する。真空断熱パネル13は外被材15の内部が5〜6分間の真空引きにより芯材14がスペーサとなって減圧され、端部15cを密着して封止されている。
【0022】
真空引きされた真空断熱パネル13は上金型16及び下金型17によってプレス加工される。上金型16には複数の凸部16aが並設されており、下金型17には凸部16aに対向する複数の溝部17aが並設されている。これにより、真空断熱パネル13には断面形状が台形の溝部11及び凸部12が形成される。溝部11及び凸部12の断面形状を矩形や円弧状にしてもよい。
【0023】
外被材15は端部が接着される積層フィルム15a、15bから成っている。積層フィルム15a、15bは表面保護層、中間層、接着層を積層して形成されている。表面保護層はナイロン等から成り、最外層に配されて外被材15の表面を保護する。接着層は高密度ポリエチレン(HDPE)等から成り、熱溶着により積層フィルム15a、15bの端部を密着させる。
【0024】
溝部11側の積層フィルム15aの中間層は第1、第2バリア層を積層して形成される。第1バリア層はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)から成る基台上にアルミニウム蒸着を施した面にポリ塩化ビニル(PVC)系樹脂をコーティングして形成されている。これにより、二酸化炭素やシクロペンタン等のガスを遮蔽することができる。また、第2バリア層はアルミニウム蒸着を施したポリエステル(PET)から成り、前述のように水蒸気等のガスを遮蔽する。これにより高いバリア性が保持されている。
【0025】
凸部12側の積層フィルム15bの中間層は第1、第2バリア層を積層して形成されている。第1バリア層はアルミニウム箔から成り、水蒸気、二酸化炭素及びシクロペンタン等のガスを遮蔽する。第2バリア層はアルミニウム蒸着を施したポリエステル(PET)から成り、水蒸気等のガスを遮蔽する。これにより高いバリア性が保持されている。
【0026】
凸部12の長手方向に垂直な方向の幅L2は溝部11の長手方向に垂直な方向の幅L1よりも広く形成されている。これにより、溝部11近傍の真空断熱パネル13が薄くならず、厚く形成することができる。
【0027】
溝部11及び凸部12の断面形状が矩形または台形で側壁の傾斜角が同じ場合は、以下の式(1)を満足すると溝部11近傍を含む真空断熱パネル13の厚みが均一になる。ここで、溝部11の深さをa、真空断熱パネル13の厚みをd、凸部12及び溝部11の側壁の傾斜角をθとしている。また、凸部12の上面の長手方向に垂直な方向の幅をL3とすると、式(2)の関係が得られる。
【0028】
L2=2d(1−cosθ)/sinθ+L1 (1)
L3=L2−2a/tanθ (2)
【0029】
溝部11及び凸部12の断面形状が矩形(傾斜角θ=90゜)の場合は凸部12の幅L2を2d+L1にすると、溝部11近傍の厚みが均一になる。従って、凸部12の幅L2を2d+L1よりも広くすることで、溝部11近傍の厚みを厚く確保することができる。尚、溝部11及び凸部12の断面形状に依らず、凸部12の幅L2を概略2d+L1よりも広くすると溝部11近傍の厚みを確保できる。
【0030】
図4は断熱箱体1の側壁を示す上面断面図である。真空断熱パネル13は外箱31の側面板31bに接して設けられ、真空断熱パネル13の溝部11内には放熱パイプ33が接するように取り付けられる。これにより、溝部11の深さを深く形成する必要がなく、凸部12の突出量を小さくして省スペース化を図ることができる。
【0031】
真空断熱パネル13の冷却室8、9(図1参照)側には発泡断熱材41が配される。従って、放熱パイプ33の放熱は真空断熱パネル13及び発泡断熱材41によって断熱され、冷却室8、9への熱漏洩が抑制される。真空断熱パネル13は凸部12によって溝部11近傍で厚みが薄くならないため、高い断熱性能が確保される。
【0032】
本実施形態によると、真空断熱パネル13は放熱パイプ33が嵌められる溝部11と、溝部11に対向して溝部11よりも長手方向に垂直な幅が広い凸部12とを有するので、溝部11近傍の真空断熱パネル13を厚く形成することができる。従って、真空断熱パネル13を薄型化しても冷蔵庫の断熱性能を向上して省エネルギー化を図ることができる。
【0033】
また、外被材15の凸部12側の積層フィルム15bがアルムニウム箔を含み、溝部11側の積層フィルム15aがアルミニウム箔を含まないので、外被材15のバリア性を保持するとともに高温となる放熱パイプ33とアルミニウム箔とを離して配置することができる。従って、真空断熱パネル13の内部に伝熱されるヒートブリッジを低減し、断熱性能の低下を抑制することができる。
【0034】
本実施形態において、断熱箱体10の側壁に真空断熱パネル13を配置しているが、背壁、天井壁または底壁に配置してもよい。即ち、放熱パイプ33が配置される壁面に真空断熱パネル13を配置することにより、冷蔵庫の断熱性能を向上して省エネルギー化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によると、断熱箱体内に真空断熱パネルを備えた冷蔵庫に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 断熱箱体
11 溝部
12 凸部
13 真空断熱パネル
14 芯材
15 外被材
31 外箱
32 内箱
33 放熱パイプ
41 発泡断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と内箱間に発泡断熱材を充填した断熱箱体と、前記外箱の内面側に配される放熱パイプと、芯材を外被材で覆って内部が減圧されるとともに前記放熱パイプが嵌められる溝部を設けて前記放熱パイプに対して前記内箱側に配された真空断熱パネルとを備え、
前記真空断熱パネルは、前記溝部を形成した面の裏面に前記溝部に対向して形成されるとともに前記溝部よりも長手方向に垂直な方向の幅が広い凸部を有し、
前記凸部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記溝部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記放熱パイプは前記溝部に接して取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記外被材は端部を接着して封止され、前記凸部が配される側にアルムニウム箔を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷蔵庫。
【請求項5】
芯材を外被材で覆って内部が減圧される真空断熱パネルにおいて、
一面に設けられる溝部と、前記溝部を形成した面の裏面に前記溝部に対向して形成されるとともに前記溝部よりも長手方向に垂直な方向の幅が広い凸部とを有し、
前記凸部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴とする真空断熱パネル。
【請求項6】
前記溝部の長手方向に垂直な方向の断面形状は円弧状であることを特徴とする請求項5に記載の真空断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156542(P2010−156542A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90554(P2010−90554)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【分割の表示】特願2006−239189(P2006−239189)の分割
【原出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】