説明

真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫

【課題】断熱性の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】繊維積層体の芯材51と、該芯材51を収納する外被材とを有し、前記外被材内を減圧した真空断熱材50fにおいて、前記芯材51は第一の積層体51bと、該第一の積層体51b上に所定間隔で配置した第二の積層体51c及び第三の積層体51dと、を有し、前記第一の積層体51bは前記第二の積層体51c及び前記第三の積層体51dの空間を埋めるように変形し、前記第一の積層体51b側に凹所58aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2008−64323号公報(特許文献1)がある。この公報には、「外箱と内箱間に発泡断熱材を充填した断熱箱体と、外箱の内面側に配される放熱パイプと、芯材を外包材で覆って内部が減圧されるとともに放熱パイプが嵌められる溝部を設けた真空断熱パネルとを備えた冷蔵庫において、真空断熱パネルは、溝部を形成した面の裏面に溝部に対向して形成されるとともに溝部よりも長手方向に垂直な幅が広い凸部を有することを特徴としている」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−64323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、真空引きされた真空断熱パネルが、上金型及び下金型によってプレス加工されて、放熱パイプが嵌められる溝部及び凸部を形成している。プレス加工によって溝部及び凸部を形成する場合、例えば、プレス加工時に、金型に埃などが付着していると真空断熱材が傷付けられ、リークする場合がある。また、プレス加工により芯材が切断されて、断熱性能が低下する。
【0005】
また、溝部を形成した面の裏面に溝部に対向して形成されるとともに溝部よりも長手方向に垂直な幅が広い凸部を有するため、凸部で外包材が大きく伸ばされて、クラックなどが発生して信頼性が低下する。
【0006】
そこで本発明は、断熱性能の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。一例として、繊維積層体の芯材と、該芯材を収納する外被材とを有し、前記外被材内を減圧した真空断熱材において、前記芯材は第一の積層体と、該第一の積層体上に所定間隔で配置した第二の積層体及び第三の積層体と、を有し、前記第一の積層体は前記第二の積層体及び前記第三の積層体の空間を埋めるように変形し、前記第一の積層体側に凹所が形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、断熱性能の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面図。
【図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の縦断面図(図1のA−A断面図)。
【図3】本発明の実施形態に係る真空断熱材の概略断面図。
【図4】(a)は実施例1の真空断熱材の芯材配置説明図、(b)は図4(a)を矢印Cから目視した図、(c)は実施例1の真空断熱材の概略断面図。
【図5】(a)は実施例2の真空断熱材の芯材配置説明図、(b)は実施例2の真空断熱材の概略断面図。
【図6】(a)は実施例3の真空断熱材の芯材配置説明図、(b)は実施例3の真空断熱材の概略断面図。
【図7】実施例4に係る放熱パイプ及び真空断熱材の配置の説明図。
【図8】(a)は実施例5の真空断熱材の芯材配置説明図、(b)は実施例5の芯材断面図(図8(a)のD−D断面図)、(c)は実施例5の真空断熱材の概略断面図、(d)は実施例5の真空断熱材の配置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。図1は本実施形態に係る冷蔵庫の正面図であり、図2は図1のA−A断面図を示している。また、図3は本実施形態の真空断熱材の断面概略図を示したものである。
【0011】
冷蔵庫1は、図2に示すように、上から冷蔵室2,製氷室3a及び上段冷凍室3b,下段冷凍室4,野菜室5を有している。各貯蔵室は、前面開口を開閉する扉を備える。冷蔵室2には、ヒンジ10を中心に回動する回転式の冷蔵室扉6a,6bを備える。冷蔵室扉6a,6b以外は、引き出し式の扉であり、製氷室扉7a,上段冷凍室扉7b,下段冷凍室扉8,野菜室扉9を配置する。これらの引き出し式扉を引き出すと、各貯蔵室の収納容器が扉と共に引き出されてくる。各扉には、冷蔵庫1と密閉して開口を閉塞するためのパッキン11が、各扉の貯蔵室側の外側縁に取り付けられている。
【0012】
また、冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3bとの間を区画断熱するために断熱仕切り12を配置している。また、下段冷凍室4と野菜室5の間には、区画断熱するための断熱仕切り14を設けている。
【0013】
製氷室3a,上段冷凍室3b及び下段冷凍室4は、温度帯が同じであるため、断熱区画する仕切り断熱壁ではなく、パッキン11の受面を有する仕切り部材13を設けている。
【0014】
基本的に冷蔵,冷凍等の貯蔵温度帯の異なる部屋の仕切りには、断熱仕切りを設置している。
【0015】
なお、各貯蔵室の配置については、特にこれに限定するものではない。また、冷蔵室扉6a,6b,製氷室扉7a,上段冷凍室扉7b,下段冷凍室扉8,野菜室扉9に関しても、開閉可能であれば、回転扉又は引き出し扉以外であってもよく、扉の分割数等、特に限定するものではない。
【0016】
箱体20は、外箱21と内箱22とを備え、外箱21と内箱22とによって形成される空間に断熱部を設けており、箱体20内の各貯蔵室と外部とを断熱している。この外箱21と内箱22の間の空間には、真空断熱材50(50a,50b,50c,50d)を配置し、真空断熱材50以外の空間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填している。
【0017】
また、冷蔵庫1の各貯蔵室を所定の温度に冷却するために、冷凍温度帯室(製氷室3a,上段冷凍室3b,下段冷凍室4)の背面には、冷却器収納室28a内に冷却器28が備えられている。また、野菜室5の後方には、機械室30aが設けられており、機械室30a内に圧縮機30及び凝縮器31が配置されている。冷却器28,圧縮機30,凝縮機31及び図示しないキャピラリーチューブを冷媒配管で接続して、冷凍サイクルを構成している。
【0018】
冷却器28の上方には、冷却器28にて冷却された冷気を冷蔵庫1の各貯蔵室内に循環して所定の温度を保持する送風機27が設けられている。
【0019】
また、冷蔵庫1の冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3b,冷凍室4と野菜室5をそれぞれ断熱区画する断熱仕切り12,14は、発泡ポリスチレン33と真空断熱材50cを備えている。なお、特に発泡ポリスチレン33に限定するものではなく、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23と真空断熱材50cであってもよい。
【0020】
また、箱体20の上面壁21a後方部には、冷蔵庫1の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品41を収納するための凹部40が形成されている。さらに凹部40には、電気部品41を覆うカバー42が設けられている。カバー42の高さは、外観意匠性と内容積確保を考慮して、外箱21の上面壁21aとほぼ同じ高さになるように配置している。特に限定するものではないが、カバー42の高さが外箱21の上面壁21aよりも突出する場合は、10mm以内の範囲に収めることが望ましい。これに伴い、凹部40は発泡断熱材23側に電気部品41を収納する空間だけ窪んだ状態で配置される。そのため、断熱厚さ分、必然的に内容積が犠牲になってしまう。一方、内容積をより大きくしようとすると、凹部40と内箱22間の断熱厚さが薄くなってしまう。そこで、発泡断熱材23中には、上面壁21aの凹部40に沿うように、略Z形状に折り曲げた真空断熱材50aを配置して、断熱性能を確保,強化している。なお、カバー42は耐熱性を考慮して鋼板製としている。
【0021】
また、箱体20の背面壁21b下部に位置する機械室30aには、発熱の大きい部品である圧縮機30や凝縮機31が配置される。そのため、貯蔵室内への熱侵入を防止するため、底面壁21d側には機械室30aの形状に沿って折り曲げた真空断熱材50dを配置している。
【0022】
また、箱体20の背面壁21b及び側面壁(図示せず)にも、真空断熱材50bをそれぞれ配置しており、断熱性能を向上している。さらに、各扉にも発泡断熱材とともに真空断熱材50eをそれぞれ配置すれば、断熱性能はさらに向上する。
【0023】
次に、真空断熱材50について、図3を用いてその基本構成を説明する。真空断熱材50は、芯材51、該芯材51を圧縮状態に保持するための内包材52、内包材52で圧縮状態に保持した芯材51を被覆するガスバリヤ層を有する外被材53、及び吸着剤54を有する構成である。
【0024】
外被材53は、真空断熱材50の外郭として配置され、同じ大きさのラミネートフィルムの稜線から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせた袋状で構成されている。
【0025】
芯材51は、バインダー等で接着や結着していない柔軟性を有する無機繊維の積層体として、平均繊維径4μmのグラスウールを用いた。なお、芯材51に、無機系繊維材料の積層体を使用することにより、アウトガスが少なくなるため、断熱性能的に有利であるが、特にこれに限定するものではない。例えば、セラミック繊維やロックウール、グラスウール以外のガラス繊維等の無機繊維等でもよい。なお、芯材51の種類によっては内包材52が不要の場合もある。
【0026】
また、芯材51については、無機系繊維材料の他に、有機系樹脂繊維材料を用いることができる。有機系樹脂繊維の場合、耐熱温度等の使用条件を満たしていれば、特に使用に際しては制約されるものではない。具体的には、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレン等をメルトブローン法やスパンボンド法で1〜30μm程度の繊維径になるように繊維化するのが一般的であるが、繊維化できる有機系樹脂や繊維化方法であれば特に問うものではない。
【0027】
外被材53のラミネート構成については、ガスバリヤ性を有し、熱溶着可能であれば特に限定するものではないが、本実施形態においては、表面保護層,ガスバリヤ層,熱溶着層の少なくとも3層を有するラミネートフィルムとしている。
【0028】
表面保護層は、突き刺し等の外的衝撃から減圧状態を保護する役割を持つ樹脂フィルムとする。
【0029】
ガスバリヤ層は、樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、さらに金属蒸着層同士に向かい合うように酸素バリヤ性の高い樹脂フィルムに金属蒸着層を設けて貼り合わせている。
【0030】
熱溶着層は、表面保護層と同様に吸湿性の低いフィルムを用いる。
【0031】
さらに具体的には、表面保護層を二軸延伸タイプのポリプロピレン,ポリアミド,ポリエチレンテレフタレート等の各フィルムとする。
【0032】
ガスバリヤ層は、アルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム,アルミニウム蒸着付きの二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム又はアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルム、或いはアルミ箔とする。
【0033】
熱溶着層は、未延伸タイプのポリエチレン,ポリプロピレンとする。
【0034】
なお、フィルムの層構成や材料については、特にこれらに限定するものではない。例えば、ガスバリヤ層として、金属箔、或いは樹脂系のフィルムに無機層状化合物,ポリアクリル酸等の樹脂系ガスバリヤコート材,DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等によるガスバリヤ膜を設けたもの、熱溶着層として、酸素バリヤ性の高いポリブチレンテレフタレートフィルム等を用いてもよい。
【0035】
表面保護層はガスバリヤ層を保護する機能を有するが、真空断熱材の製造工程における真空排気効率を高めるために、好ましくは吸湿性の低い樹脂を配置するのがよい。
【0036】
また、ガスバリヤ層に使用する金属箔以外の樹脂系フィルムは、吸湿することによってガスバリヤ性が著しく悪化してしまう。そのため、熱溶着層についても吸湿性の低い樹脂を配置することで、ガスバリヤ性の悪化を抑制すると共に、ラミネートフィルム全体の吸湿量を抑制できる。これにより、真空断熱材50の真空排気工程においても、外被材53が持ち込む水分量を小さくできるため、真空排気効率が大幅に向上し、断熱性能が向上する。
【0037】
なお、各フィルムのラミネート(貼り合わせ)は、二液硬化型ウレタン接着剤を介してドライラミネート法によって貼り合わせるのが一般的であるが、接着剤の種類や貼り合わせ方法は特にこれに限定するものではなく、ウェットラミネート法,サーマルラミネート法等の他の方法によるものでもよい。
【0038】
また、内包材52については、本実施例では熱溶着可能なポリエチレンフィルム、吸着剤54については物理吸着タイプの合成ゼオライトを用いたが、いずれもこれらの材料に限定するものではない。一例として、内包材52についてはポリプロピレンフィルム,ポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリブチレンテレフタレートフィルム等、吸湿性が低く熱溶着でき、アウトガスが少ないものであればよく、吸着剤54については水分やガスを吸着するもので、物理吸着,化学反応型吸着のどちらでもよい。
【実施例1】
【0039】
次に、本発明の実施例1について、図4を用いて説明する。図4は、真空断熱材に凹所が成形されるメカニズムを説明する為の図である。図4(a)は切断された複数の芯材を内包材52に収納した状態を示す図であり、図4(b)は図4(a)の矢印Cから目視した図であり、図4(c)は、真空成形されて製作される真空断熱材の概略断面図である。
【0040】
まず、図4(a),(b)において、ロール状に予め作成された無機繊維の積層体をカットして、複数の芯材51a〜51dを重ねて配置する。
【0041】
本実施例では、厚さ100mmの芯材51a(第四の積層体)の上に、同程度の厚さ(100mm程度)の芯材51b(第一の積層体)を積層している。さらに、芯材51bの上には、同程度の厚さ(100mm程度)の芯材51c(第二の積層体)及び芯材51d(第三の積層体)を、所定間隔を空けて重ねる。本実施例では、芯材51c及び芯材51dの間に50mm程度の間隔を空けており、芯材51b,芯材51c及び芯材51dで形成された凹形状の空間60aが存在する。
【0042】
この状態で、芯材51a,51b,51c,51d(以下、芯材全体を指す場合は「芯材51」という)を内包材52a(肉厚20μm前後のポリエチレン製の合成樹脂フィルム)内に収納する。この時、一定間隔(空間60a)を保つために治具を使用して、袋状の内包材52aの開口から収納してもよい。
【0043】
内包材52aへ収納した芯材51は、プレス機を使って圧縮してから内包材52a内を減圧する。そして、内包材52a内に収納した芯材51の位置がずれないように、内包材52aの開口全体を熱溶着機で溶着密封して、芯材51を仮圧縮した状態にする。また、この状態で芯材51を一時保管することも可能である。
【0044】
次いで、内包材52aの内部に仮圧縮した状態の芯材51を外被材53a内に収納する。芯材51は圧縮されているので、外被材53aを損傷することなく、スムーズに外被材53a内に挿入できる。その後、内包材52aの熱溶着を一部開封すると、芯材51は圧縮が解除されて、外被材53a内で外側に広がる。この状態で、外被材53a及び内包材52a内を減圧して、外被材53a及び内包材52aの開口を溶着密封することにより、真空断熱材50fが製作される。
【0045】
このように、圧縮−減圧−溶着密封工程を経ることで、真空断熱材50fの厚み方向には凹所58aが形成される。その構成について、図4(c)に真空断熱材50fの概略断面図を示す。減圧工程で外被材53及び内包材52aは、外側より芯材51を圧縮する。
このとき、本実施例では、芯材51a(第四の積層体)及び芯材51b(第一の積層体)は、外側より圧縮されて、芯材51c(第二の積層体)及び芯材51d(第三の積層体)の間の部分に入り込むように変形する。
【0046】
すなわち、第一の積層体(及び第四の積層体)の上に、第一の積層体(及び第四の積層体)よりも面積の小さい第二の積層体(及び第三の積層体)を重ねて外被材内に収納して内部を減圧すると、第一の積層体(及び第四の積層体)は空間60aを埋めるように圧縮変形する。
【0047】
減圧時、芯材51は外被材53a(及び内包材52a)によって外側に広がろうとする弾性変形が規制されている。そして、減圧が進行すると、芯材51の繊維間に存在する隙間は次第に減少して、外側から内側に圧縮変形する。
【0048】
仮に、芯材51がほぼ同一の厚みからなる積層体の場合、減圧によって均等に圧力が加わるので、形成される真空断熱材は平板状になる。
【0049】
一方、芯材51c及び芯材51dの間に空間60aが存在するような積層体の場合、図4(c)に示すように、空間60aの反対側に凹所58aが形成される。
【0050】
凹所58aは、以下のようにして形成される。芯材51を外被材53aで覆って、減圧チャンバー内に設置して減圧した状態では、外被材53aの内部と外部の圧力がほぼ同一のため、芯材51の厚みはすぐに変化しない。その後、減圧完了してから外被材53aの開口を溶着密封して、減圧チャンバー内を大気圧に戻すと、外被材53aの内部と外部の圧力差により、芯材51の厚みが圧縮される。
【0051】
芯材51の全体の厚みが小さくなる際に、芯材51c及び芯材51dと外被材53aとの間の空間60aを埋めるように、芯材51a及び芯材51bの層が空間60aに引き込まれるように繊維が曲線状に変形する。
【0052】
より詳細に説明すると、まず、所定間隔を空けて配置した芯材51c及び芯材51dに跨るように重ねた芯材51a及び芯材51bには、減圧によって均等に圧力が加わる。すると、芯材51a及び芯材51bは、積層した繊維間の隙間を埋めるように圧縮が進行する。
【0053】
ここで、芯材51c及び芯材51dに重なっている部分は変形が規制されるが、芯材51c及び芯材51dに重なっていない部分(空間60aの下方)では変形を規制するものがない状態である。すると、芯材51a及び芯材51bは空間60aに入り込み、空間60aを埋めることで安定した真空状態になろうとする。すなわち、空間60aに入り込んだ芯材51a及び芯材51bは、外被材53a及び内包材52aによって変形が規制されて、次第に内部の気体が減少することで、空間60aに芯材51a及び芯材51bが入り込んだ状態で減圧が終了する。これにより、真空断熱材50fには、空間60aの反対側の面に凹所58aが形成される。
【0054】
本実施例によれば、プレス加工により芯材が切断されて断熱性能が低下することがない。また、凹所の裏面に凸部が形成されにくく、凸部で外被材が伸ばされてクラックなどが発生することを抑制できる。よって、断熱性能の低下を抑制しつつ放熱パイプ等を収納する凹所を有する真空断熱材となる。
【実施例2】
【0055】
次に、実施例2について説明する。実施例1では、図4に示すように、芯材51c及び芯材51dの向かい合う面が、ほぼ平行に配置されている。この場合、芯材51bは、空間60aを埋めようと変形するが、芯材51c及び芯材51dと重なる部分では変形に追随できず、凹所58aが成形された反対面に2箇所の筋59が生じる場合がある。この筋59は、外被材53aの信頼性を損なう場合がある。
【0056】
そこで、実施例2では、図5に示すように、最外層の芯材51g及び芯材51hは所定間隔を空けて配置するとともに、向かい合う面がそれぞれ20〜70°の傾斜面51g1,51h1を有する。芯材51g(第二の積層体)及び芯材51h(第三の積層体)は、芯材51g及び芯材51hに跨る大きさの芯材51f(第一の積層体)の上に重ねて配置され、芯材51fはさらに同程度の大きさの芯材51e(第四の積層体)の上に重ねて配置された積層構造である。
【0057】
図5(a)には、2つの芯材51g及び芯材51hの向かい合う面が、それぞれ50°の角度の傾斜面51g1,51h1を有する例を示す。傾斜面51g1,51h1は、外被材53b側よりも芯材51f側が幅広となるように傾斜している。この構成において、芯材51e及び芯材51fは、芯材51g及び芯材51hの間の空間60bを埋めるように、空間60bに入り込む。そして、空間60bの反対側、すなわち、芯材51e側に凹所58bが形成される。このとき、芯材51e及び芯材51fは、傾斜面51g1,51h1に沿って変形するため、芯材51g及び芯材51hに重なる部分も、空間60bに入り込むような変形に追随し易くなる。
【0058】
これにより、図5(b)に示すように、芯材51g及び芯材51h側の外被材53bには、筋が形成されにくいため、外被材53bの信頼性が更に向上する。
【0059】
また、向かい合う面がそれぞれ20〜70°の傾斜面とすれば、芯材51e及び芯材51fが傾斜面に沿って曲線上に変形しやすくなり、凹所58bが適切に形成される。
【実施例3】
【0060】
次に、実施例3について説明する。実施例3は、図6に示すように、最外層に2つの芯材51k及び芯材51lが所定間隔を空けて配置されており、向かい合う面の一部にそれぞれ傾斜面51k1,51l1を有する。本実施例では、35°の角度の傾斜としている。また、傾斜面51k1,51l1よりも外側の部分は、互いにほぼ平行に向かい合う対向面51k2,51l2を有する。
【0061】
このように、最外層の積層体(芯材51k,51l)は外面に臨む部分を除く一部に角度を付けた傾斜面を有することにより、芯材51i及び芯材51jは、芯材51k及び芯材51lの間の空間60cを埋めるように、空間60cに入り込む。そして、空間60cの反対側には凹所58cが形成される。
【0062】
このとき、芯材51i及び芯材51jは、傾斜面51k1,51l1に沿って変形するため、芯材51k及び芯材51lに重なる部分も、空間60cに入り込むような変形に追随し易くなる。また、芯材51k及び芯材51lの外面は、対向面51k2,51l2が接することで、芯材51i及び芯材51jは内包材52cまで達することを抑制している。
【0063】
これにより、図6(b)に示すように、芯材51k及び芯材51l側の外被材53cには、筋が形成されにくいため、外被材53cの信頼性が更に向上する。
【0064】
なお、使用される芯材の仕様や真空成形時の真空引き時間などによっても、減圧時の芯材の変形の仕方は変わる。そのため、所定間隔を空けて配置した最外層の積層体の向かい合う面は、これらの条件にあわせて、一部の面を曲線状にカットすることでも、図4(c)に示す筋59の発生を抑制できる。
【0065】
また、真空断熱材に形成される凹所の幅寸法は、最外層に向かい合って配置した積層体間の間隔を調整することで、コントロールすることができる。そして、凹所の深さ寸法は、所定間隔を空けて配置した最外層の積層体の向かい合う面の傾斜角度を調整することでコントロールすることができる。
【0066】
また、真空断熱材に2つ以上の凹所を形成する場合には、最外層に所定間隔を空けて、3つ以上の積層体を配置すればよい。この場合、配置間隔及び積層体の対向面の傾斜角度を変えることで、凹所の幅及び深さをコントロールすることができる。
【0067】
なお、3つ以上の積層体を所定間隔で配置する場合、内包材内に収納する時に、積層体間の間隔を保つための位置決め、及び外被材に筋が形成されることを抑制するために、積層体の周囲に保護部材をさらに配置してもよい。
【実施例4】
【0068】
次に、実施例4について説明する。実施例4では、凹所が形成された真空断熱材を冷蔵庫に配置した例を説明する。箱体20に使用する真空断熱材は、内箱22又は外箱21に貼り付けて、内箱22と外箱21との間には発泡断熱材23が充填発泡される。
【0069】
本実施例では、特に外箱21の背面壁21bに配置する真空断熱材50b及び側面壁21eに配置する真空断熱材50gについて説明する。
【0070】
外箱21の内面(背面壁21b,側面壁21e)には、内部を冷媒が流れる放熱パイプ90を配置している。放熱パイプ90は、冷媒の放熱性を向上させるために、アルミテープ91で鋼板製の外箱21内面に貼り付けて固定している。
【0071】
真空断熱材50b,50gには、深さ4mm程度の凹所が形成されており、直径4mm程度である放熱パイプ90を凹所内に配置することができる。
【0072】
本実施例では、実施例1乃至3で説明したように、金型によるプレス成形加工を行うことなく、真空断熱材に放熱パイプを嵌める凹所を形成している。よって、真空断熱材の断熱性能を低下させることなく、信頼性の向上した真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することができる。
【実施例5】
【0073】
次に、実施例5について、図8を参照して説明する。本実施例では、図8(a),(d)に示すように、冷蔵庫内に配置した部品との接触防止及び間隔を確保するために、中央部に部分的な凹所を形成している。
【0074】
図8(a)に示すように、最外層の芯材51p(第二の積層体)は、所定の空間60dを有して配置される。芯材51pは、芯材51n(第一の積層体)の上に重ねられており、さらに芯材51nは芯材51m(第三の積層体)の上に重ねられている。すなわち、芯材51nは最外層の芯材51pの空間60dを跨るように配置されている。
【0075】
芯材51pは、空間60dの向かい合う面がそれぞれ50°の角度の傾斜面51p1,51p2,51p3,51p4を有する。本実施例では、最外層の芯材51pを多角形状に切取っているが、これは、配置されている部品の形状に合わせて、円形等にしてもよい。
【0076】
減圧工程で、内包材52dは外側より芯材51m,51n,51pを圧縮する。ここで、最外層の芯材51mに多角形状の空間60dを有する場合、空間60dに対向する芯材51m及び芯材51nが外側より圧縮されて、空間60d側に曲折して入り込む。そして、真空断熱材50iには空間60dの反対側の面に凹所61が形成される。
【0077】
なお、凹所61の反対側の面に筋が生じないように、真空成形時の芯材の追随の仕方に応じて、芯材を曲線状にカットしてもよい。また、実施例4のように、放熱パイプ90の形状に合わせた凹所を更に設けてもよい。
【0078】
このようにして凹所61が形成された真空断熱材50iを、図8(d)に示すように冷蔵庫に配置する。
【0079】
例えば、外箱側に凸となる照明部品収納部62を内箱22に有する場合、真空断熱材の50iの厚さが一定だと、真空断熱材50iと照明部品収納部62が接触する。そのため、真空断熱材50iの厚さを薄くしなければならないが、薄くしてしまうと断熱性能も低下してしまう。そこで、部分的な凹所61を形成することで、真空断熱材50iは全体として厚くすることが可能となり、薄くなる部分は最小限の凹所61のみとなる。
【0080】
また、外箱21と内箱22とによって形成される空間に、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填する時に、照明部品収納部62と真空断熱材50iの距離を確保することで、ウレタンの流動性の低下を抑えることができ、断熱性能の低下を抑制することができる。
【0081】
なお、照明部品収納部62は、側面壁に有する場合でも上面壁に有する場合でもよく、公知の照明配置構造に対応して真空断熱材に凹所を形成すればよい。
【0082】
なお、減圧工程において、芯材は内包材及び外被材から圧縮するように押しつけられる力が加わる。
【0083】
この場合、減圧が進行して芯材と内包材、及び内包材と外被材との摩擦抵抗が大きくなると、芯材,内包材及び外被材間で滑り変形しにくくなる。すると、外被材には引張又は圧縮の応力が加わり、金属蒸着層等のガスバリヤ層にクラックが生じる場合がある。
【0084】
そこで、減圧工程前又は減圧開始直後から減圧の途中までの間、芯材,内包材及び外被材間の摩擦抵抗が大きくなる前に、外被材の外側から、金型等で凹所の形成位置を部分的に押し出すようにする。これにより、摩擦抵抗が大きくなる前に、外被材が凹所近傍に滑るように位置するので、ガスバリヤ層のクラックの発生を抑制できる。
【0085】
以上のように、本発明は、金型によるプレス成形加工を実質的に必要とせず、部品との距離を確保するための目的に応じた凹所を形成することができる。また、真空断熱材の信頼性を低下させることなく、断熱性能の低下も抑制して凹所を形成することができ、生産性の向上した真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 冷蔵庫
20 箱体
21 外箱
21a 上面壁
21b 背面壁
21d 底面壁
21e 側面壁
22 内箱
23 発泡断熱材
50,50a〜50i 真空断熱材
51 芯材
51a,51e,51i 芯材(第四の積層体)
51b,51f,51j,51n 芯材(第一の積層体)
51c,51g,51k,51p 芯材(第二の積層体)
51d,51h,51l,51m 芯材(第三の積層体)
51g1,51h1,51k1,51l1 傾斜面
51k2,51l2 対向面
52,52a〜52d 内包材
53,53a〜53d 外被材
54 吸着剤
58,58a〜58c,61 凹所
59 筋
60,60a〜60d 空間
62 照明部品収納部
90 放熱パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維積層体の芯材と、該芯材を収納する外被材とを有し、前記外被材内を減圧した真空断熱材において、
前記芯材は第一の積層体と、該第一の積層体上に所定間隔で配置した第二の積層体及び第三の積層体と、を有し、
前記第一の積層体は前記第二の積層体及び前記第三の積層体の空間を埋めるように変形し、前記第一の積層体側に凹所が形成されたことを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
繊維積層体の芯材と、該芯材を収納する外被材とを有し、前記外被材内を減圧した真空断熱材において、
前記芯材は第一の積層体と、該第一の積層体上に所定間隔で配置した第二の積層体及び第三の積層体と、を有し、
前記第二の積層体及び第三の積層体の向かい合う面は前記外被材側よりも前記第一の積層体側が幅広となり、前記第一の積層体は前記第二の積層体及び前記第三の積層体の空間を埋めるように変形し、前記第一の積層体側に凹所が形成されたことを特徴とする真空断熱材。
【請求項3】
前記第二の積層体及び第三の積層体の向かい合う面は傾斜面を有し、該傾斜面に沿って前記第一の積層体が変形し、前記凹所が形成されたことを特徴とする、請求項2記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記傾斜面の角度は20〜70°であることを特徴とする、請求項3記載の真空断熱材。
【請求項5】
繊維積層体の芯材と、該芯材を収納する外被材とを有し、前記外被材内を減圧した真空断熱材において、
前記芯材は第一の積層体と、該第一の積層体上に配置した第二の積層体と、を有し、
前記第二の積層体は前記外被材側よりも前記第一の積層体側が幅広となる空間を有し、前記第一の積層体は前記第二の積層体の前記空間を埋めるように変形し、前記第一の積層体側に凹所が形成されたことを特徴とする真空断熱材。
【請求項6】
外箱の内側に配置された真空断熱材と、該真空断熱材と前記外箱との間に配置された放熱パイプと、を備えた冷蔵庫において、
前記真空断熱材は、繊維積層体の芯材と、該芯材を収納する外被材とを有し、前記外被材内を減圧して、
前記芯材は第一の積層体と、該第一の積層体上に所定間隔で配置した第二の積層体及び第三の積層体と、を有し、
前記第二の積層体及び第三の積層体の向かい合う面は前記外被材側よりも前記第一の積層体側が幅広となり、前記第一の積層体は前記第二の積層体及び前記第三の積層体の空間を埋めるように変形し、前記第一の積層体側に凹所が形成され、該凹所に前記放熱パイプが配置されたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項7】
内箱の外側に配置された真空断熱材と、該真空断熱材と前記内箱との間に配置された部品収納部と、を備えた冷蔵庫において、
前記真空断熱材は、繊維積層体の芯材と、該芯材を収納する外被材とを有し、前記外被材内を減圧して、
前記芯材は第一の積層体と、該第一の積層体上に配置した第二の積層体と、を有し、
前記第一の積層体は前記第二の積層体の前記空間を埋めるように変形し、前記第一の積層体側に凹所が形成され、該凹所に前記部品収納部が配置されたことを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−82954(P2012−82954A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180105(P2011−180105)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】