説明

真空断熱材及びそれを用いた冷蔵庫

【課題】真空断熱材の表面の平滑性を高くして接着剤による貼り付け性能を向上させ、且つ真空断熱材の断熱性能を高くすること。
【解決手段】繊維の集合した繊維集合体からなる芯材51と、ガス及び水分を吸着する吸着剤54と、芯材51と吸着剤54を内包する内包材52と、内包材52を収容する外被材53と、を有する真空断熱材50であって、芯材51は、繊維同士を結着させるバインダを含まない繊維集合体の積層体であり、芯材51と内包材52との間に粒状の吸着剤54が配設され、粒状の吸着剤54は、芯材51の繊維と繊維の間に保持され、内包材52と接する面が平坦形状を形成すること。また、粒状の吸着剤54は、真空断熱材50を貼り付ける貼り付け面側のみにおいて芯材51と内包材52との間に配設されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材及び粒状吸着材とこれらを内包する内包材を有する真空断熱材及び真空断熱材を適用した冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止に対する社会の取り組みとして、CO2の排出抑制を図るため、様々な分野で省エネ化が推進されている。近年の電気製品、特に冷熱関連の家電製品においては消費電力量低減の観点から、真空断熱材を採用して断熱性能を強化したものが主流になっている。また、各種原材料から製品の製造工程に至るまでのあらゆるエネルギー消費量を抑制するため、原材料についてはリサイクル化の推進、製造工程においては燃料代や電気代の抑制等、省エネ化が推進されている。そのため、より断熱性能の高い断熱材や、使用する用途に沿った形状の断熱材を用いることでより、断熱面積を大きくすることができる優れた真空断熱材が求められている。
【0003】
一般に用いられる真空断熱材の芯材は繊維集合体であり、大気圧の状態では嵩が大きくそのまま真空断熱材の芯材として使用するには、芯材にバインダを付着させ、圧縮プレス等によりボード化しなければならない。しかし、バインダを付着させボード化すると、バインダ成分により熱が伝わり真空断熱材としたときに断熱性能が低下することや、製造費においても高くなってしまう。そのため、従来の真空断熱材製造方法では、芯材の繊維集合体を収納する内包材を用いて、それを外包材で包み真空断熱材とすることで、バインダを用いずに作製することができ断熱性能が良好な真空断熱材を得ることができる。
【0004】
しかし、芯材の繊維集合体を収納する内包材を用いた製造方法では、芯材にバインダを付着させて圧縮プレス等によりボード化したときとは異なり、プレス加工を行っていないことから、芯材である繊維集合体の目付量(単位面積当たりの重さ)のバラツキにより表面に凹凸が発生してしまう。
【0005】
また、真空断熱材とした後に圧縮プレスや圧縮ロールを通して平滑することで表面凹凸を減少させることができるが、圧縮力が大きいと外被材が破れリークしてしまうことや、圧縮力が大きいと芯材である繊維集合体が破損し短繊維となり熱が伝わりやすくなり性能が低下してしまう。
【0006】
真空断熱材を開示した公知技術を挙げると、特許文献1に示された真空断熱材では、芯材と外被材との間に平面性に優れた硬質板を用いることにより真空断熱材としての表面性を良くしている。平面性に優れた硬質板を用いることで、芯材の凹凸には影響されることがなくなり、真空断熱材としたときに平面性の優れた真空断熱材を得ることができる旨が記載されている。
【0007】
また、特許文献2に示された真空断熱材では、気体吸着の吸着剤をフィルムに含有させて筒状形状にして、この筒状形状の吸着材を芯材と外被材との間に配置して真空断熱材とすることによって、吸着剤の凹凸形状の影響を受けることなく、表面の平滑性の良い真空断熱材とすることができると記載されている。
【0008】
また、特許文献3に示された真空断熱材では、流動改質剤と吸着剤を混合し通気性を有する包材で包み、包材を平板状に圧縮成型し芯材と外被材との間に配置することで、真空断熱材としたときに吸着剤の凹凸影響が無く平滑性が良い真空断熱材とすることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−55088号公報
【特許文献2】特開2010−31958号公報
【特許文献3】特開2009−168091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の特許文献1の構成では、硬質板を芯材と外被材の間に入れることで、表面性を良くすることができるものの、硬質板の熱伝導率が高いことから、真空断熱材としたときの断熱性能が悪くなってしまう。また、真空断熱材にしたときに硬質板と外被材とが接触する部分において鋭利な個所が発生してしまい、この鋭利な部分にぶつけや擦れが起こったときに、外被材が破れ易くなり真空断熱材のリークが発生しやすくなる虞があった。
【0011】
また、上記の特許文献2の真空断熱材は、吸着剤をフィルムの筒状形状として吸着剤の芯材と外被材との間に配置し、吸着剤の影響が少なく真空断熱材の表面凹凸を抑制することができるが、芯材の凹凸深さが吸着剤のフィルム厚さよりも大きい場合においては、真空断熱材としたときに表面に凹凸が現れてしまうという課題があった。
【0012】
また、上記の特許文献3の真空断熱材は、吸着剤物質と流動改質剤との混合物を包材とともに平板状に圧縮成型することで、それを真空断熱材の芯材と外被材との間に設置することで平面性を得ることができるが、平板状に圧縮成型するために手間がかかることや製造費においても高くなってしまう。また、圧縮成型をしている間に吸着剤が吸湿してしまうという虞があった。
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、真空断熱材の表面の平滑性が高く、真空断熱材の断熱性能が高い真空断熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
繊維の集合した繊維集合体からなる芯材と、ガス及び水分を吸着する吸着剤と、前記芯材と前記吸着剤を内包する内包材と、前記内包材を収容する外被材と、を有する真空断熱材であって、前記芯材は、前記繊維同士を結着させるバインダを含まない前記繊維集合体の積層体であり、前記芯材と前記内包材との間に粒状の吸着剤が配設され、前記粒状の吸着剤は、前記芯材の繊維と繊維の間に保持され、前記内包材と接する面が平坦形状を形成する構成とする。
【0015】
前記真空断熱材において、前記粒状の吸着剤は、前記真空断熱材を貼り付ける貼り付け面側のみにおいて前記芯材と前記内包材との間に配設されること。また、前記粒状の吸着剤に加えて、前記粒状の吸着材よりも吸湿性のある他の吸着剤が前記芯材の層間に配設されること。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、真空断熱材の繊維集合体の芯材表面と内包材との間に、繊維集合体の繊維と繊維間距離よりも小さい粒状の吸着剤を配置して、吸着剤を繊維と繊維の間に入り込ませることで、真空断熱材としたときにその表面の凹凸を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る真空断熱材を用いた冷蔵庫の正面外観図である。
【図2】本実施形態に係る真空断熱材を用いた冷蔵庫の縦断面図であり、図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る吸着材内包の真空断熱材の断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る真空断熱材における、芯材、粒状の吸着材、内包材及び外被材の配置構造を示す断面図である。
【図5】複数の吸着剤に水を滴下した場合のそれぞれの発熱温度の経過を示したグラフである。
【図6】本発明の実施例2に係る真空断熱材における、芯材、芯材の一方面に設けられた粒状吸着剤、芯材の層間に設けられた吸着剤、内包材及び外被材の配置構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る真空断熱材について、図面を参照しながら以下説明する。まず、本実施形態に係る真空断熱材を用いた冷蔵庫について、図1と図2を参照しながら以下説明する。
【0019】
図1と図2において、冷蔵庫1は、上から冷蔵室2、製氷室3a、上段冷凍室3b、下段冷凍室4、野菜室5を有している。図1には、上述した各室の前面開口部を閉塞する扉を示しており、上からヒンジ10等を中心に回動する冷蔵室扉6a,6bと、製氷室扉7aと、上段冷凍室扉7bと、下段冷凍室扉8と、野菜室扉9と、が配置されている。冷蔵室扉6a,6b以外は全て引き出し式の扉である。
【0020】
引き出し式扉7〜9は扉を引き出すと、各室を構成する容器が扉と共に引き出されてくる。また、各扉6〜9には冷蔵庫本体1とを密閉するためのパッキン11を備え、パッキン11は各扉6〜9の室内側外周縁に取り付けられている。
【0021】
また、冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3bとの間を区画断熱するために仕切断熱壁12が配置されている。この仕切断熱壁12は厚さ30〜50mm程度の断熱壁で、スチロフォーム、発泡断熱材(硬質ウレタンフォーム)、真空断熱材等、それぞれを単独使用又は複数の断熱材を組み合わせて作られている。製氷室3a及び上段冷凍室3bと下段冷凍室4との間は、温度帯が同じであるため区画断熱する仕切断熱壁ではなく、パッキン11の受面を形成した仕切り部材13を設けている。下段冷凍室4と野菜室5との間には区画断熱するための仕切断熱壁14を設けており、仕切断熱壁12と同様に30〜50mm程度の断熱壁であり、スチロフォーム、或いは発泡断熱材(硬質ウレタンフォーム)、真空断熱材等で作られている。
【0022】
上述したように、基本的に冷蔵、冷凍等の貯蔵温度帯の異なる部屋の仕切りには仕切断熱壁を設置している。尚、箱体20内には上から冷蔵室2、製氷室3a及び上段冷凍室3b、下段冷凍室4、野菜室5の貯蔵室をそれぞれ区画形成しているが、各貯蔵室の配置については特にこれに限定するものではない。また、冷蔵室扉6a,6b、製氷室扉7a、上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9に関しても、回転による開閉、引き出しによる開閉及び扉の分割数等について、特に限定するものではない。
【0023】
箱体20は、外箱21と内箱22とを備え、外箱21と内箱22とによって形成される空間に断熱部を設けて箱体20内の各貯蔵室と外部とを断熱している。外箱21と内箱22の間の空間に真空断熱材50を配置し、真空断熱材50以外の空間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23が充填されている。真空断熱材50については図3を用いて詳述するが、図2に示すように、この真空断熱材50は接着剤を用いて外箱21又は内箱22の貼付面に固着される。
【0024】
また、冷蔵庫の冷蔵室2、製氷室3a、下段冷凍室4、野菜室5等の各室を所定の温度に冷却するために製氷室3a、上段冷凍室3b、下段冷凍室4の背側には冷却器28が備えられており、冷却器28と圧縮機30と凝縮機31、図示しないキャピラリーチューブとを接続し、冷凍サイクルを構成している。冷却器28の上方には冷却器28にて冷却された冷気を冷蔵庫内に循環して所定の低温温度を保持する送風機27が配設されている。
【0025】
また、冷蔵庫の冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3bと、冷凍室4と野菜室5と、を区画する断熱材として、それぞれ仕切断熱壁12,14を配置し、発泡ポリスチレン33と真空断熱材50cで構成されている。この仕切断熱壁12,14については硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填しても良く、特に発泡ポリスチレン33と真空断熱材50cに限定するものではない。
【0026】
また、箱体20の天面後方部には冷蔵庫1の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品41を収納するための凹部40が形成されており、電気部品41を覆うカバー42が設けられている。カバー42の高さは外観意匠性と内容積確保を考慮して、外箱21の天面とほぼ同じ高さになるように配置している。特に限定するものではないが、カバー42の高さが外箱の天面よりも突き出る場合は10mm以内の範囲に収めることが望ましい。これに伴って、凹部40は断熱材23側に電気部品41を収納する空間だけ窪んだ状態で配置されるため、断熱厚さを確保するため必然的に内容積が犠牲になってしまう。
【0027】
内容積をより大きくとると凹部40と内箱22間の断熱材23の厚さが薄くなってしまう。このため、凹部40の断熱材23中に真空断熱材50aを配置して断熱性能を確保、強化している。本実施形態では、真空断熱材50aを冷蔵庫の前面側(扉6側)と電気部品41に跨るように、略Z形状に成形した1枚の真空断熱材50aとしている。尚、カバー42は外部からのもらい火や何らかの原因で発火した場合等を考慮し鋼板製としている。
【0028】
また、箱体20の背面下部に配置された圧縮機30や凝縮機31は発熱の大きい部品であるため、庫内への熱侵入を防止するため、内箱22側への投影面に真空断熱材50dを配置している。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る真空断熱材の構成と製造方法について、図3を参照しながら以下説明する。本実施形態に係る真空断熱材50は、芯材51と、芯材51を圧縮状態に保持するための内包材52と、内包材52で圧縮状態に保持した芯材51を被覆するガスバリヤ層を有する外被材53と、から構成されている。真空断熱材50の形状は、図2に示すように、符合50a〜50dで示す真空断熱材のそれぞれの形状に対応するものであり、図3の図示例において、その上下の厚さが薄く、その上面から見た平面が矩形又は正方形形状を呈する、薄い板状形状のものである。
【0030】
ここで、真空断熱材の製造方法について概説する。内包材52となる2枚のフィルムをリールから送り出して2枚のフィルム間に芯材51を介在させ、押圧プレスで軽くフィルムを圧接して空気を抜き出した後に2枚のフィルムの4辺縁を熱溶着して芯材51を内包した内包材52を形成する。次に、外被材53として、矩形形状の同一サイズの2枚のフィルムの辺縁の3辺を熱溶着した袋状のものを準備する。袋状の外被材53の1つの辺には開口部が形成されている。
【0031】
次に、芯材51を内包した内包材52を外被材53の開口部から挿入して、内包材52の一辺をカットした直後に外被材53を真空引きして(真空引きの直前に内包材一辺をカットして)、芯材51中の気体を吸い上げる。真空引きが完了した後に、外被材53の真空引きした側の一辺を熱溶着してシールする。外被材53の熱溶着シールの部分は、その4辺が図3に示すように折り曲げられて耳部折曲構造を形成して真空断熱材50を完成させる。図3に示す図示例で、真空断熱材50の下面は、冷蔵庫1の外箱21又は内箱22(図1参照)の貼付面に対向する貼り付け面を形成し、真空断熱材50の上面(耳部折曲構造側)は、発泡断熱材23に対向する発泡断熱材対向面を形成している。なお、真空断熱材は上述の製造方法に限らず、いずれの方法で製造されたものも本実施形態の真空断熱材に含まれる。また、上述の製造方法において、ガス及び水分を吸着する吸着材54については、後述する。
【0032】
ここで、本実施形態においては、芯材51についてはバインダ等で接着や結着していない繊維集合体の積層体として平均繊維径4μmのグラスウールを用いた。芯材51については、無機系繊維材料の積層体を使用することによりアウトガスが少なくなるため、断熱性能的に有利であるが、特にこれに限定するものではなく、例えばセラミック繊維やロックウール、グラスウール以外のガラス繊維等の繊維集合体等でもよい。
【0033】
本実施形態においては繊維集合体を用いているが、有機系樹脂繊維材料とすることも可能である。有機系樹脂繊維の場合、耐熱温度等をクリヤーしていれば特に使用に際しては制約されるものではない。具体的には、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等を公知のメルトブローン法やスパンボンド法等で1〜30μm程度の繊維径になるように繊維化するのが一般的であるが、繊維化できる有機系樹脂や繊維化方法であれば特に問うものではない。
【0034】
内包材52には低密度ポリエチレンから成るフィルムを用いているが、芯材を覆って袋形成のための熱溶着可能でシールできるものであればポリプロピレンやポリエステル等も使用可能であり、特に限定するものではない。
【0035】
外被材53の構成については、ガスバリヤ性を有し、熱溶着可能であれば特に限定するものではないが、本実施形態においては、表面保護層、ガスバリヤ層1、ガスバリヤ層2、熱溶着層の4層構成からなるラミネートフィルムとし、表面保護層は保護材の役割を持つ樹脂フィルムとし、ガスバリヤ層1は樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、ガスバリヤ層2は酸素バリヤ性の高い樹脂フィルムに金属蒸着層を設け、ガスバリヤ層1とガスバリヤ層2は金属蒸着層同士が向かい合うように貼り合わせている。熱溶着層については表面保護層と同様に吸湿性の低いフィルムを用いた。
【0036】
具体的には、表面保護層を二軸延伸タイプのポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の各フィルムとし、ガスバリヤ層1をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとし、ガスバリヤ層2をアルミニウム蒸着付きの二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム又はアルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルム、或いはアルミ箔とし、熱溶着層を未延伸タイプのポリエチレン、ポリプロピレン等の各フィルムとした。
【0037】
この4層構成のラミネートフィルムの層構成や材料については特にこれらに限定するものではない。例えばガスバリヤ層1及び2として、金属箔、或いは樹脂系のフィルムに無機層状化合物、ポリアクリル酸等の樹脂系ガスバリヤコート材、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等によるガスバリヤ膜を設けたものや、熱溶着層には例えば酸素バリヤ性の高いポリブチレンテレフタレートフィルム等を用いても良い。表面保護層についてはガスバリヤ層1の保護材であるが、真空断熱材の製造工程における真空排気効率を良くするためにも、好ましくは吸湿性の低い樹脂を配置するのが良い。また、通常ガスバリヤ層2に使用する金属箔以外の樹脂系フィルムは、吸湿することによってガスバリヤ性が著しく悪化してしまうため、熱溶着層についても吸湿性の低い樹脂を配置することで、ガスバリヤ性の悪化を抑制すると共に、ラミネートフィルム全体の吸湿量を抑制するものである。
【0038】
この吸湿量抑制により、真空断熱材50の真空排気工程においても、外被材53が持ち込む水分量を小さくできるため、真空排気効率が大幅に向上し、断熱性能の高性能化につながっている。尚、各フィルムのラミネート(貼り合せ)は、二液硬化型ウレタン接着剤を介してドライラミネート法によって貼り合わせるのが一般的であるが、接着剤の種類や貼り合わせ方法には特にこれに限定するものではなく、ウェットラミネート法、サーマルラミネート法等の他の方法によるものでも何ら構わない。
【0039】
「実施例1」
本発明の実施例1に係る真空断熱材について、図3、図4、図5を参照しながら以下説明する。図3は本発明の実施例1に係る吸着材内包の真空断熱材の断面図である。図4は本発明の実施例1に係る真空断熱材における、芯材、粒状の吸着材、内包材及び外被材の配置構造を示す断面図である。ここで、本実施例1に係る真空断熱材50の上下面の内の一方の面(図3の例で下面、すなわち、外被材53の端部の耳折れ構造の反対側の面)は、図2に示す冷蔵庫1の外箱21又は内箱22の貼付面に対向する面であり、真空断熱材50の当該面(図3の図示例で下面)と外箱21又は内箱22の貼付面とは適宜の接着剤で固着されることとなる。接着剤による強固な固着と、外箱21又は内箱22の貼付面からの真空断熱材の剥落とを図る観点からも、真空断熱材50の下面表面の平滑性、平坦性が求められるのである。
【0040】
真空断熱材50は、繊維集合体のグラスウール繊維からなる芯材51と、芯材51の一方の面に配置された、ガス及び水分を吸着する粒状の物理吸着剤(例えば、ゼオライト又は活性炭)からなる吸着剤54と、芯材51と吸着材54を包んだ低密度ポリエチレンからなる内包材52と、内包材52を収納した外被材53と、から構成されている。
【0041】
本実施例1においては繊維集合体グラスウールの目付量1155g/mを3層重ねて使用し、寸法は300mm×300mmを用いている。真空断熱材50は上述したように真空包装装置により真空引きをし、真空引きをした状態で外被材53の一辺をヒートシールにより熱溶着することで、真空断熱材50とすることができる。真空断熱材50の製造過程において、図4に示すように、芯材51の一方の面には目付により芯材凹部55が発生する。この芯材凹部55に粒状の吸着剤54を配設、設置することで、粒状の吸着剤54が芯材51の繊維集合体のグラスウール繊維と繊維の間に入り込むことによって、吸着剤54の内包材側の面が平坦形状となり、引いては真空断熱材としたときにその表面の凹凸を抑制することができる。この凹凸抑制で真空断熱材50の表面は平滑性を確保でき、当該真空断熱材の表面と外箱21又は内箱22の貼付面とは、接着剤で強固に固定関係を保持できる。換言すると、図4に示す粒状吸着材54が無いと、内包材52の表面形状は真空引きによって芯材51の凹凸形状になぞった形状となり、引いては外被材53の表面も同様に凹凸形状となってしまい、平滑性が失われることによって、真空断熱材50は、冷蔵庫外箱21又は内箱22(図2参照)との間で接着剤による強固な固着ができなくなるのである。本実施例1では芯材51の凹凸形状の部分に粒状の吸着剤54を埋め込むように配設して粒状吸着剤54の表面の平滑性を確保するのである。
【0042】
本実施例1に用いたグラスウールは平均4μmの繊維径を用いており、その繊維と繊維の間の距離は約50μm〜200μm(約0.05〜0.2mm)となる。そのため、吸着剤54の粒径を200μm以下とすることが好ましく、本実施例1では10μmとしている。本実施例1の吸着剤54の粒径は繊維と繊維の間の距離よりも小さく、繊維集合体のグラスウールよりも大きい径を用いているが、繊維集合体の径よりも小さい吸着剤54を用いる事も可能であるが、吸着剤54の粒径が小さくなるほど製造時に舞い易くなり取り扱い性が困難となる。また、粒径が小さいほどガスの吸着量は多くなるが、粒径が小さいほど周囲のガスとの接触面積が多くなることで、吸着速度も速くなり、真空断熱材の製造時に吸湿してしまう可能性がある。
【0043】
また、吸着剤54の粒径が100μm(0.1mm)よりも大きくなると、繊維と繊維の間に保持できなくなるだけではなく、真空断熱材としたときに表面に吸着剤54の凹凸がでてしまい、真空断熱材を平面にするために平滑ロールをかけた場合に破れや、運搬や貼り付け時における取り扱いで、吸着剤54の粒に対応して外被材53が凸形状となり、この凸部の表面が擦られることにより穴空きが発生し、リークしてしまう。
【0044】
本実施例1においては繊維集合体のグラスウール繊維を用いているが、繊維集合体として樹脂繊維を用いることも可能である。樹脂繊維を用いた場合は繊維径が6〜8μmとなり、繊維と繊維の間の距離は50〜300μm(0.05〜0.3mm)となる。また、繊維径が太くなることで、真空断熱材50の表面には繊維の凹凸が顕著に発生するようになる。そこで、芯材51と内包材52の間に粒状の吸着剤54を配置することで表面の凹凸を抑制することができる。また、真空断熱材とすることで内部が減圧状態となることから、外部から圧力がかかる。このときに、外部からの圧力により繊維集合体のグラスウールは目付けのバラツキにより目付量が少ない部分が凹部となってしまうが、芯材51の表面に粒状の吸着剤54があることにより、凹部に吸着剤54が外部からの圧力で押されて集まることで吸着材の内包材側の面が平坦形状となり、真空断熱材の表面の凹凸を抑制することができる。
【0045】
また、芯材51と内包材52の間に吸着剤54を配置することで、製造時において真空包装機で真空パックしたときに、粒状の吸着剤54が飛び出してくるのを抑制することができる。この理由は、本実施例1とは異なって吸着剤54を芯材51の繊維間に配置した場合においては、真空引きしたときに繊維層内の空気の流れと一緒に吸着剤54が飛び出してしまうが、本実施例1のように、芯材51と内包材52の間に吸着剤54を配置することで、内包材52が芯材51と吸着剤54を押さえ込むことで、吸着剤54が真空パック時に飛び出すのを抑制することができるからである。
【0046】
本実施例1においては、芯材51の一方の面(外箱又は内箱の貼付面に対向する面:図3の例では芯材の下面)の全体に吸着剤54を配置しているが、吸着剤54を一部に配置することも可能であり、好ましくは、芯材51の端部から10mm内側に配置することで、より真空パック時に飛び出すのを抑制することができる。
【0047】
本実施例1は、芯材51と内包材52の間に吸着剤54を配置することで、製造時の水分吸湿も抑制することができる。この理由は、芯材51の一方の面上に吸着剤54を配置し、本実施例1とは異なり内包材を用いずに外被材53で覆った場合においては、真空パックするまでに時間がかかり、その間において吸着剤54が外気と接触するために吸湿をしてしまう。そこで、本実施例1では、芯材51の一方の面(外箱又は内箱の貼付面に対向する面)上に吸着剤54を配置し、芯材51と吸着材54を内包材52で包み込んでシールし、外被材54を真空引きする直前において内包材52の一辺のシールをカットすることで、吸着剤54が外気との接触が殆ど無くなるので、真空断熱材の製造時の水分吸湿を低減することができる。これにより水分吸湿の抑制された吸着剤を用いて吸着性能の良好な真空断熱材50を得ることができる。
図5は複数の吸着剤54に水が付着した場合のそれぞれの発熱温度を示したグラフである。吸着剤54としての化学吸着剤60(水分と化学反応する吸着剤)と疎水性物理吸着剤61に水が付着した時の発熱温度を示しており、それぞれの吸着剤5gに水を0.5mL滴下したときの温度推移を測定した。本実施例においては、化学吸着剤60として酸化カルシウム、疎水性物理吸着剤61としてシリカアルミナ比が2〜5の吸着剤を用いた。疎水性物理吸着剤61は、水を滴下直後に最大温度約102℃となり、その後は徐々に温度が低下していく。
【0048】
一方、化学吸着剤60に水を滴下した場合においては、水を滴下後徐々に温度が高くなり2分後に最大温度が180を超え、その後温度が低下していくが、疎水性物理吸着剤61よりも長時間高い温度が継続する。そのため、芯材51として用いている繊維集合体グラスウールは耐熱温度が高いことから、180℃では溶融等の変化は発生しないが、内包材52の低密度ポリエチレンにおいては、溶融温度が120℃前後であり、化学吸着剤60の熱により溶けてしまう虞がある。
【0049】
また、外被材53についても、溶着層に用いているのは通常低密度ポリエチレンあるいは高密度ポリエチレンが用いられているため、溶融してしまう虞があった。
【0050】
一方、芯材51に樹脂繊維を用いた場合においては、耐熱温度がさらに低くなる。例えば、ポリスチレン繊維の繊維集合体を真空断熱材50の芯材51に用いた場合、ポリスチレンの耐熱温度は70〜90℃前後であり繊維化しているため、少ない熱容量でも軟化し、真空断熱材50として内部が減圧されていることから、外部から圧力がかかることでより耐熱温度は低くなってしまい、実際には約70℃以下でも軟化し繊維同士が溶着してしまう。繊維同士が溶着することで繊維から熱伝達してしまい真空断熱材50としての熱伝導率が劣化してしまう。
【0051】
そこで、吸着剤54として、高シリカアルミナ比吸着剤61bのシリカアルミナ比の高い吸着剤54を用いることで、水を吸湿したときの発熱温度を抑制することが可能である。本実施例1においては、公知の形状を表すZSM−5型におけるシリカアルミナ比30の疎水性ゼオライトを用いた。本実施例1においては、ZSM−5型のシリカアルミナ比30の疎水性ゼオライトを用いているが、シリカアルミナ比が高いほど、水を吸湿できる量が少なくなることで、水との反応温度が低くなりより発熱温度を少なくすることも可能である。これにより、水を吸湿したときの最大温度は約40℃とすることができる。そのため、芯材51に樹脂繊維を用いた場合においても繊維が収縮することなく、真空断熱材の表面の平面性を向上することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施例1は、粒状の吸着剤54を芯材51の一方の面(外箱又は内箱の貼付面に対向する面)に配置し、真空断熱材の一方の面側の表面平滑性を向上した真空断熱材50を作製し、真空断熱材50の吸着剤54配置側の反対側面に外被材の耳部を折り曲げるようにしている。これにより、吸着剤54を配置した側の真空断熱材の表面は平面性、平滑性の良好な真空断熱材を得ることができる。真空断熱材の表面の平面性が良好である真空断熱材面(図3の図示例で真空断熱材50の下面:耳部折曲構造の反対側の面)を外箱21又は内箱22への貼り付け側とすることで、外箱21又は内箱22の貼り付け面との接触性が良くなって接着剤による強固な固着が可能となり、空気の空間層の少なく、熱伝導率が低く断熱性能の良好な断熱材とすることができる。また、表面が平面、平滑であることから、貼り付け面との接触面積が大きくなり、接着の張り付き力も高くなり、真空断熱材50を貼り付け後の落下を低減することが可能となる。
【0053】
「実施例2」
本発明の実施例2に係る真空断熱材について、図6を参照しながら以下説明する。図6は、本発明の実施例2に係る真空断熱材における、芯材、芯材の一方面に設けられた粒状吸着剤、芯材の層間に設けられた吸着剤、内包材及び外被材の配置構造を示す断面図である。
【0054】
図6において、本実施例2は、真空断熱材50の芯材51の一方の面に疎水性ゼオライト62を用いるとともに、芯材51の層間に疎水性ゼオライト61(疎水性ゼオライト62よりもより吸湿性のあるゼオライト)を用いたものである。芯材51の一方の面に疎水性ゼオライトを用いることで、真空断熱材の表面の凹凸を抑制することと、水を吸着したときの発熱温度を抑制することができるが、疎水性であるためゼオライトが吸湿する水分量は少なく、真空断熱材50として長期に使用した場合に、外部からの水分透過量を吸湿できず、真空断熱材内部の真空度が低下し、熱伝導率が高くなり断熱性能も劣化してしまう。
【0055】
そこで、本実施例2では、芯材51の内部、すなわち層間に疎水性ゼオライト61を設置することによって、外部から水分が浸入してもこれを吸湿し、断熱性能の劣化を抑制することができる。また、疎水性ゼオライト61を芯材51の中間層に配置することにより、外被材53の外部から進入してくる水分に対して徐々に反応するため発熱温度が一度に上がらずに保つことが可能である。これにより、芯材51に樹脂繊維を用いても吸着剤の水分反応熱により溶着することもなく、真空断熱材50の性能を保つことが可能である。なお、本実施例2では吸着剤として疎水性ゼオライトを用いることを説明したが、これに限らず実施例1で述べた吸着剤でもよい。
【0056】
以上説明したように、本発明の実施例1,2では、芯材表面(一方の面)と内包材の間に粒状の吸着剤を配設することで、吸着剤が芯材である繊維集合体層の繊維と繊維の間に入り込むことにより、繊維集合体の凹部に吸着剤が保持され表面の凹凸を抑制することができる。また、真空断熱材を形成した後で、真空断熱材の平滑加工を施した場合、吸着剤の粒径が繊維と繊維の間の距離よりも小さいことから、繊維間に入り込み表面性、平坦性をさらに向上することができる。また、粒径が繊維間の距離よりも小さいことにより、平滑加工時に圧力をかけても、外被材への影響は少なく、破れ等のリーク原因とはならない。これにより真空断熱材をとしたときにその表面の凹凸が少なくなることから、真空断熱材の貼付け面と設置する設置面とを密着し易くすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室
3a 製氷室
3b 上段冷凍室
4 下段冷凍室
5 野菜室
6a 冷蔵室扉
6b 冷蔵室扉
7a 製氷室扉
7b 上段冷凍室扉
8 下段冷凍室扉
9 野菜室扉
10 扉用ヒンジ
11 パッキン
12,14 仕切断熱壁
13 仕切り部材
20 箱体
21 外箱
21a 天板
21b 後板
22 内箱
23 発泡断熱材
27 送風機
28 冷却器
30 圧縮機
31 凝縮機
33 発泡ポリスチレン
40 凹部
41 電気部品
42 カバー
50 真空断熱材
51 芯材
52 内包材
53 外被材
54 粒状吸着剤
55 芯材凹部
60 化学吸着剤
61 疎水性物理吸着剤
61b 高シリカアルミナ比吸着剤
62 疎水性ゼオライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の集合した繊維集合体からなる芯材と、ガス及び水分を吸着する吸着剤と、前記芯材と前記吸着剤を内包する内包材と、前記内包材を収容する外被材と、を有する真空断熱材であって、
前記芯材は、前記繊維同士を結着させるバインダを含まない前記繊維集合体の積層体であり、
前記芯材と前記内包材との間に粒状の吸着剤が配設され、
前記粒状の吸着剤は、前記芯材の繊維と繊維の間に保持され、前記内包材と接する面が平坦形状を形成する
ことを特徴とした真空断熱材。
【請求項2】
請求項1において、
前記粒状の吸着剤は、前記真空断熱材を貼り付ける貼り付け面側のみにおいて前記芯材と前記内包材との間に配設される
ことを特徴とする真空断熱材。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記真空断熱材を貼り付ける貼り付け面とは反対の面側に、前記外被材の端部を折り曲げて耳部折り曲げ構造を形成することを特徴とする真空断熱材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項において、
前記粒状の吸着剤に加えて、前記粒状の吸着材よりも吸湿性のある他の吸着剤が前記芯材の層間に配設される
ことを特徴とした真空断熱材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載された真空断熱材を、外箱又は内箱の発泡断熱材充填側の貼付面に貼り付けた冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−40717(P2013−40717A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178077(P2011−178077)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】