説明

真空開閉装置

【課題】真空絶縁容器の絶縁耐力を向上させ、真空バルブを用いた真空開閉装置の高電圧化、大容量化を図る。
【解決手段】筒状の真空絶縁容器2内に接離自在の一対の接点6、7を有する真空バルブ部1aと、真空バルブ部1aを開閉する操作機構部1bとを備え、真空絶縁容器2の少なくとも内表面に、セラミックス地肌の微小な凸凹状態の孔を塞いで滑らかにする二酸化珪素を主成分とした封孔膜11を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブを用いた真空開閉装置に係り、特に、真空バルブの真空絶縁容器の絶縁耐力を向上し得る真空開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の真空開閉装置に用いられる真空バルブには、汚損付着による絶縁特性の低下を防止するため、アルミナ磁器などからなる筒状の真空絶縁容器の外表面に釉薬が施されている。しかしながら、作業時間が長時間となるため、釉薬を施す代わりに、エポキシ樹脂などの合成樹脂を塗布し、保護層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、セラミックスからなる磁器がいしにおいても、汚損付着などを防止するため、表面に釉薬が施されている。更には、表面の一部分に表面抵抗10Ω・cm以下の抵抗帯を設け、発熱効果により汚損湿潤時や塩害時における絶縁特性の低下を防止するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−306281号公報 (第3ページ、図1)
【特許文献2】特開2003−141955号公報 (第2ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の真空開閉装置においては、次のような問題がある。
最近の真空開閉装置は、高電圧化や大容量化が進んでおり、それに伴って真空バルブに加わる電気的強度や機械的強度が上昇している。特に、真空バルブ内には、収納している接点やアークシールドとの距離が縮小化され、真空絶縁容器の内面の電界強度が上昇している。電界強度が許容値を超えてしまうと、真空絶縁容器が貫通破壊に到ることがある。
【0005】
真空絶縁容器の内面は、真空中で汚損湿潤の影響を受けないため、釉薬や保護層は施されておらず、微小な凸凹状態の地肌となっている。表面抵抗は、アルミナ磁器では1014〜15Ω・cmと高抵抗である。このため、接点などから放出される電子が沿面にトラップされ易く、その結果、部分的な帯電から電界集中を起こすようになり、絶縁耐力を向上させることが困難であった。
【0006】
このため、接点やアークシールドを収納する真空絶縁容器の絶縁耐力を向上させ、真空開閉装置の遮断部となる真空バルブを高電圧化や大容量化に適するものにすることが望まれていた。なお、真空絶縁容器の絶縁厚さや外形形状を大きくして高電圧化などに対応することは縮小化に逆行する。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、真空絶縁容器の絶縁耐力を向上し得る真空バルブを用いた真空開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の真空開閉装置は、筒状の真空絶縁容器内に接離自在の一対の接点を有する真空バルブ部と、前記真空バルブ部を開閉する操作機構部とを備え、前記真空絶縁容器の少なくとも内表面に二酸化珪素を主成分とする封孔膜を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、真空絶縁容器の少なくとも内表面に二酸化珪素を主成分とする封孔膜を設けているので、部分的な帯電や漏れ電流による熱歪が起きず、真空絶縁容器内に収納される接点などの集積密度を上げることができ、遮断部となる真空バルブを高電圧化、大容量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
先ず、本発明の実施例1に係る真空開閉装置を図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る真空開閉装置の構成を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、真空開閉装置は、遮断部となる真空バルブ部1aと、真空バルブ部1aを開閉する操作機構部1bとから構成されている。
【0013】
真空バルブ部1aには、アルミナ磁器などのセラミックスからなる筒状の真空絶縁容器2の両端開口面に、固定側封着金具3と可動側封着金具4とが封着されている。固定側封着金具3には、一方の電路となる固定側通電軸5が貫通固定され、その端部に固定側接点6が固着されている。固定側接点6に対向して、接離自在の可動側接点7が他方の電路となる可動側通電軸8端に固着されている。可動側通電軸8は可動側封着金具4の中央開口部を移動自在に貫通し、この可動側通電軸8と可動側封着金具4の開口部間に、伸縮自在のベローズ9が封着されている。
【0014】
これにより、真空絶縁容器2内を真空に保ちながら、可動側通電軸8を軸方向に移動させることができ、固定側接点6と可動側接点7とが接離できるようになっている。また、接点6、7間を包囲するように筒状のアークシールド10が設けられ、接点6、7間で大電流を遮断したときに発生する金属蒸気が真空絶縁容器2内面に付着して絶縁抵抗が低下することを防止している。
【0015】
また、真空絶縁容器2の内面には、石英、水晶などの二酸化珪素を主成分とした封孔膜11が設けられている。二酸化珪素の粉末に有機溶剤を添加し、この溶液を例えばスプレーによって塗布し、真空絶縁容器2自体の焼成温度(約1400℃)よりも低い温度で加熱、焼成すれば、表面が滑らかで強固に形成された封孔膜11が得られる。例えば、珪素が空気中の酸素と反応するように、温度900℃以上で加熱すれば二酸化珪素を主成分とした封孔膜11が得られる。膜厚は、5〜20μmであり、前記溶液を数回重ね塗りすれば、厚さを調整することができる。
【0016】
操作機構部1bには、真空バルブ部1aの開閉に必要な操作力が得られる例えば、永久磁石、ソレノイドコイルなどを有する電磁アクチュエータのような操作機構12が設けられている。操作機構12には、図示しないワイプバネなどの部材を介して、可動側通電軸8が連結される。
【0017】
これにより、真空絶縁容器2の内表面には、封孔膜11が設けられているので、セラミックス地肌の微小な凸凹状態が塞がれ、滑らかな表面状態となる。アルミナ磁器では、アルミナ粒子間の隙間が孔状となるが、この孔状が塞がれることになる。また、表面抵抗が1010〜12Ω・cmとなり、接点6、7などから放出される電子がトラップされ難くなり、部分的な帯電を防止することができる。
【0018】
表面抵抗は、封孔膜11の膜厚に影響され、5μm未満では1012Ω・cmを超過し、アルミナ磁器の表面抵抗に近づくので、電子がトラップされ易くなる。また、20μm超過では1010Ω・cmを下回り、漏れ電流がマイクロオーダ(=真空バルブの運転電圧10V/封孔膜11の表面抵抗1010Ω)となって、部分的な熱歪などを起こすことがある。即ち、封孔膜11の表面抵抗は、従来のような釉薬よりも小さく、また、保護層や抵抗帯よりも高くなっている。
【0019】
このような封孔膜11により、接点6、7と真空絶縁容器2間の距離などを縮小化し、真空絶縁容器2内に収納される各部品の集積密度を上げ、沿面に加わる電界強度を高くしても、部分的な帯電を防ぐことができる。このため、真空バルブを高電圧化、大容量化することができる。更に、表面が滑らかになるので、機械的な応力集中が起こらず、真空絶縁容器2自体の機械的強度を向上させることができる。その結果、操作機構12の操作力を増大させることができ、開閉速度を向上させることができる。
【0020】
なお、封孔膜11を固定側封着金具3から可動側封着金具4までの全域に設けるとともに、その端部を固定側封着金具3と可動側封着金具4とに接触させると、真空絶縁容器2全体の表面抵抗値が安定して好ましいものとなる。また、真空絶縁容器2の外表面にも封孔膜11を設けてもよく、大気中からの汚損湿潤による絶縁特性の低下を防止することができる。
【0021】
上記実施例1の真空開閉装置によれば、真空絶縁容器2の少なくとも内表面に二酸化珪素を主成分とする封孔膜11を設けているので、表面が滑らかになるとともに、表面抵抗が1010〜12Ω・cmとなり、部分的な帯電や漏れ電流による熱歪が抑制され、真空絶縁容器2内に収納される接点6、7などの集積密度を上げることができ、遮断部となる真空バルブを高電圧化、大容量化することができる。
【0022】
なお、上記実施例1では、封孔膜11の形成を二酸化珪素で説明したが、二酸化珪素に数〜数十重量%の酸化クロムを混合し、この溶液を真空絶縁容器2の内面に塗布して封孔膜11を形成してもよい。酸化クロムを混合することにより、封孔膜11の表面抵抗を制御し易くなる。また、二酸化珪素を主成分としているので、表面が滑らかで強固なものにすることができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2に係る真空開閉装置を図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施例2に係る真空開閉装置に用いられる真空バルブの構成を示す要部拡大断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、封孔膜の膜厚である。図2において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図2に示すように、真空絶縁容器2の内表面には、封孔膜11が設けられているが、アークシールド10端部と対向する部分は他の部分よりも膜厚が厚い厚膜部11aとなっている。膜厚を厚くすると、表面抵抗が低下するので、厚膜部11aの表面抵抗は他の部分よりも低くなる。
【0025】
これにより、アークシールド10端部と対向する真空絶縁容器2の内表面は、電界強度が高く、帯電し易くなるものの、膜厚部11aとなっているので電荷を速やかに移動させることができる。厚膜部11aの膜厚を封孔膜11の2〜3倍にすれば、表面抵抗を約1〜2桁低下させることができる。この場合、厚膜部11aの膜厚は、20μm以上としてもよい。真空絶縁容器2の両端開口面間の表面抵抗は、厚膜部11aと封孔膜11とが直列接続となるので、厚膜部11aにより全体の表面抵抗値を下げるものではない。
【0026】
また、厚膜部11aを90%以上の電界強度を有する領域に設ければ、絶縁耐力の向上が大きくなる。これは、空気中などと異なり、特に真空中の破壊電圧が90%以上の電界領域に左右されるためである。また、封着金具3、4と接する部分なども電界強度が高くなるので、これらの部分を厚膜部11aとしてもよい。
【0027】
上記実施例2の真空開閉装置によれば、実施例1による効果のほかに、真空絶縁容器2の内表面の帯電をより一層抑制することができる。
【実施例3】
【0028】
次に、本発明の実施例3に係る真空開閉装置を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例3に係る真空開閉装置に用いられる真空バルブの構成を示す要部拡大断面図である。なお、この実施例3が実施例1と異なる点は、真空バルブの構成と封孔膜の膜厚とである。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、真空バルブが小容量で大電流を遮断せず、従来のようなアークシールドを設けないものにおいては、接点6(7)の側面と対向し電界強度が高くなる部分を厚膜部11bとしている。即ち、電界強度が高くなる部分を厚膜部11bとし、帯電を抑制するものである。厚膜部11bの膜厚などの条件は、実施例2と同様である。
【0030】
上記実施例3の真空開閉装置によれば、実施例1による効果のほかに、小容量の真空バルブにおいても、真空絶縁容器2の内表面の帯電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る真空開閉装置の構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例2に係る真空開閉装置に用いられる真空バルブの構成を示す要部拡大断面図。
【図3】本発明の実施例3に係る真空開閉装置に用いられる真空バルブの構成を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0032】
1a 真空バルブ部
1b 操作機構部
2 真空絶縁容器
3 固定側封着金具
4 可動側封着金具
5 固定側通電軸
6 固定側接点
7 可動側接点
8 可動側通電軸
9 ベローズ
10 アークシールド
11 封孔膜
11a、11b 厚膜部
12 操作機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の真空絶縁容器内に接離自在の一対の接点を有する真空バルブ部と、
前記真空バルブ部を開閉する操作機構部とを備え、
前記真空絶縁容器の少なくとも内表面に二酸化珪素を主成分とする封孔膜を設けたことを特徴とする真空開閉装置。
【請求項2】
前記二酸化珪素に酸化クロムを混合して前記封孔膜を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空開閉装置。
【請求項3】
前記封孔膜の膜厚を5〜20μmとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空開閉装置。
【請求項4】
前記封孔膜の膜厚を、電界強度が高くなる部分を厚く、電界強度が低くなる部分を薄くしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空開閉装置。
【請求項5】
前記真空バルブ部には、前記接点を包囲するアークシールドが設けられ、このアークシールド端部と対向する前記封孔膜を厚膜部としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の真空開閉装置。
【請求項6】
前記真空バルブ部には、前記接点の周りに前記真空絶縁容器が配置され、前記接点と対向する前記封孔膜を厚膜部としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の真空開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−282557(P2008−282557A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123174(P2007−123174)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】