説明

眼科装置

【課題】眼科ユニットの位置決めが容易な眼科装置を提供する。
【解決手段】被検眼に対して眼科ユニット3を位置決めする眼科装置1において、ハンドル7の頂部に、前後に回転可能且つ押下可能な操作ホイール8を備えるジョイスティック5を設け、ハンドル7の前後左右の傾斜に応じて、眼科ユニット3を被検眼に対して上下左右に移動させ、操作ホイール8の回転に応じて、眼科ユニット3を被検眼に対して接近または離間させ、操作ホイール8が押下されたときに、眼科ユニット3に所定の動作を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼に対して眼科ユニットを位置決めして、被検眼の測定、診察または治療などの眼科動作を行う眼科装置では、被検眼を固定し、モニタ上で被検眼に対する相対位置を確認しながら眼科ユニットを移動させて被検眼に対して位置決めする。
【0003】
特許文献1には、ジョイスティックのハンドルの前後左右の傾斜角度に応じて眼科ユニットが前後左右に移動し、ジョイスティックのハンドルを捻るように回動させると眼科装置ユニットが上下に移動する眼科装置が開示されている。
【0004】
特許文献1の眼科装置では、眼科ユニットを上下させるためにはジョイスティックのハンドルを捻るという人間の感覚的において上下動と直結しにくい操作を要求され、オペレータが直感的に操作できないので、位置決めが容易でないという問題があった。
【特許文献1】特開2002−136480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、前記問題点に鑑みて、本発明は、眼科ユニットの位置決めが容易な眼科装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明によれば、被検眼に対して眼科ユニットを位置決めする眼科装置は、ハンドルの頂部に例えば、前後に回転可能な操作ホイールを備えるジョイスティックを有し、前記ハンドルの前後左右の傾斜および前記ホイールの回転に応じて前記眼科ユニットが移動するものとする。
【0007】
この構成によれば、ジョイスティックのハンドルの前後動作と、操作ホイールの前後動作とによって眼科ユニットの位置決めを行うので、操作の動きとモニタ上の被検眼の動きとが感覚的に一致しやすく、位置決めが容易である。
【0008】
また、本発明の眼科装置において、前記ハンドルの前後左右の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して上下左右に移動してもよく、前記操作ホイールの回転に応じて、前記眼科ユニットが被検眼に対して接近または離間してもよい。
【0009】
この構成によれば、被検眼に対して上下方向と左右方向とは共にモニタ上のXY方向として把握され、ハンドルの傾斜に応じてモニタ上で被検眼が上下左右に移動する。このため、被検眼に対して上下方向と左右方向を同じ要領で位置決めすることができ、オペレータの感覚に一致しやすい。また、眼科ユニットの被検眼に対する移動は、操作ホイールの回転方向に一致するのでオペレータが直感的に操作することができる。
【0010】
また、本発明の眼科装置は、前記ハンドルの前後左右の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して上下左右に移動し、前記操作ホイールの回転に応じて、前記眼科ユニットが被検眼に対して接近または離間する第1の操作モードと、前記ハンドルの左右の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して左右に移動し、前記ハンドルの前後の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが被検眼に対して接近または離間し、前記操作ホイールの回転に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して上下に移動する第2の操作モードとを備えてもよい。
【0011】
この構成によれば、従来の眼科装置の非直感的な操作になれているオペレータは、従来の眼科装置と操作感が近似する第2の操作モードで操作することができるので、眼科装置の更新がスムーズに行える。
【0012】
また、本発明の眼科装置において、前記操作ホイールは、押下可能であり、前記ジョイスティックは、前記操作ホイールの押下を検出するスイッチを備え、前記操作ホイールが押下されると、前記眼科ユニットが眼科動作を開始してもよい。
【0013】
この構成によれば、ジョイスティックから手を離さずに、眼科ユニットの適切な位置を維持した状態で、測定や治療などの眼科動作を開始できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ジョイスティックのハンドルの傾斜と操作ホイールの回転によって眼科ユニットを位置決めするので、人の感覚と一致しやすく、位置決め操作が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
これより、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明による眼科装置の1つの実施形態である眼圧計1を示す。眼圧計1は、装置本体2に、眼圧測定(眼科動作)を行う眼科ユニット3と、被検眼を固定するために被検者が顔を当接させる顔当枠4とが支持されおり、本体2には、眼科ユニット3の位置決めを行うためのジョイスティック5と、眼科ユニット3のカメラが捉えた被検眼の画像を映し出すモニタ6とが設けられている。
【0016】
図2に、ジョイスティック5の詳細を示す。ジョイスティック5は、前後左右に傾斜可能なハンドル7を有し、ハンドル7の頂部に前後方向に回転可能に設けられ、ハンドル7の内部に向かって押下することができる操作ホイール8を備えている。さらに、ジョイスティック5は、ハンドル7の前後の傾斜角度を検出する前後傾斜エンコーダ9と、ハンドル7の左右の傾斜角度を検出する左右傾斜エンコーダ10と、操作ホイール8の回転角度を検出するホイール回転エンコーダ11と、操作ホイール8の押下を検出する押下検出スイッチ12とを備えている。
【0017】
図3に、眼圧計1における、眼科ユニット3の位置決めにかかる構成を示す。ジョイスティック5のホイール回転エンコーダ11、前後傾斜エンコーダ9および左右傾斜エンコーダ10の各検出パルス信号は、制御基板13に入力され、眼科ユニット3を前後方向、つまり、被検眼に対する距離を調整する方向に移動させる前後位置決めDCモータ14と、眼科ユニット3を上下に移動させる上下位置決めDCモータ15と、眼科ユニット3を左右に移動させる左右位置決めDCモータ16とを駆動するようになっている。
【0018】
制御基板13は、前後傾斜エンコーダ9がハンドルの前後の傾斜を検出している場合、上下位置決めDCモータ15に直流電圧を印加する。このため、図4に示すように、ハンドル7の傾斜に応じて眼科ユニット3が移動するが、ハンドル7が前方に傾斜しているときは眼科ユニット3が上昇し、ハンドル7が後方に傾斜しているときは眼科ユニット3が下降する。
【0019】
このとき、上下位置決めDCモータ15には、前後傾斜エンコーダ9が発したパルス数、つまり、段階的に検出されるハンドル7の前後の傾斜角度に比例した電圧が印加されるようになっている。これにより、眼科ユニット3の上下左右の移動速度は、ハンドル7の傾斜角度に比例する。
【0020】
また、制御基板13は、左右傾斜エンコーダ10がハンドルの左右の傾斜を検出している場合、左右位置決めDCモータ16に直流電圧を印加し、図5に示すように、ハンドル7が傾斜している方向に眼科ユニット3を移動させる。
【0021】
左右位置決めDCモータ16に印加される直流電圧は、左右傾斜エンコーダ10が発したパルス数、つまり、段階的に検出されるハンドル7の傾斜角度に電圧が比例し、眼科ユニット3の上下左右の移動速度は、ハンドル7の傾斜角度に比例する。
【0022】
また、制御基板13は、ホイール回転エンコーダ11から操作ホイール8が単位角度だけ回転する毎に出力される検出パルスを受けて、その都度、前後位置決めモータ14に所定電圧の駆動電圧を100msecだけ印加する。これによって、図6に示すように、眼科ユニット3は、操作ホイール8の回転方向と同じ方向に、操作ホイール8の回転角度に比例した距離だけ移動させられ、被検眼に対して接近または離間させられる。
【0023】
また、眼圧計1は、押下検出スイッチ12が操作ホイール8が押下されたことを検出すると、眼科ユニット3に眼圧測定を開始させる。
【0024】
本発明による眼圧計1では、モニタ6に映し出された被検眼の中心に対して、モニタ6のフレームを移動させたい方向にジョイスティック5のハンドル7を傾斜させることで、眼科ユニット3が被検眼の中心に対向する方向に移動する。モニタ6における上下方向は、ジョイスティック5におおける前後方向であるが、人間の感覚においては違和感なく等しく認識できる。よって、オペレータは、モニタ6を見ながら直感的にジョイスティック5のハンドル7を操作して、被検眼に対して眼科ユニット3を正対させることができる。
【0025】
また、オペレータは、眼科ユニット3を被検眼に対して正対させた後、操作ホイール8を回転させることによって、眼科ユニット3を前後に移動させ、眼圧測定の焦点合わせを行う。この操作ホイール8の回転方向と眼科ユニット3の移動方向が一致するため、オペレータは、ここでも、直感的に操作することができ、位置決めが容易である。
【0026】
さらに、操作ホイール8を押下することで、眼科ユニット3の位置決めをした後、直ちに眼圧測定が開始されるので、被検者が動いて被検眼の位置がずれたり、誤ってジョイスティック5を動かしてしまう前に眼圧測定を行うことができる。
【0027】
このように、本発明の眼圧計1において、オペレータは、モニタ6から眼を離さず、直感的にジョイスティック5を操作することで、眼科ユニット3を位置決めして測定できるので、短時間に正確な測定が可能である。
【0028】
本発明において、眼科ユニット3の移動方向は、モニタ6上で確認される被検眼に対しての移動方向を意味し、例えば、被検者が仰向けになる場合、眼科ユニット3の上下移動は、現実の空間における水平移動になり、眼科ユニット3の前後移動は、現実の空間における上下移動になる。
【0029】
また、上記実施形態の眼圧計1において、眼科ユニット3の前後移動量が大きく、操作ホイール8の回転量が多くなるような場合には、操作ホイール8の回転速度が速いほど、つまり、ホイール回転エンコーダ11のパルスの間隔が短いほど、前後位置決めモータ14に印加する駆動電圧のパルス幅を長くするアクセラレーション処理を行ってもよい。
【0030】
また、上記実施形態の眼圧計1において、上述のジョイスティック5の操作に応じた眼科ユニット3の移動を、第1の操作モードとし、加えて、ハンドル7の前後の傾斜に応じて眼科ユニット3を前後に移動し、操作ホイールの回転に応じて眼科ユニット3を上下に移動する第2の操作モードを設けてもよい。
【0031】
従来の眼科装置を長年使用して、ハンドルを前後に傾斜させることで眼科ユニットを前後に移動する操作に習熟したオペレータは、例えば、モニタ6に表示されるメニューによって第2の操作モードを選択し、本発明の眼圧計1を従来の眼科装置と近似した操作方法で操作することができる。
【0032】
このように、2種類の操作モードを設けることで、初めて眼科装置を使用するオペレータや従来の眼科装置に未熟なオペレータは、直感的に操作できる第1の操作モードを選択することで眼圧計1の操作を容易に習得でき、熟練のオペレータは、第2の操作モードを選択することで、既に習熟している操作感覚によって眼圧測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態の眼科装置の斜視図。
【図2】図1の眼科装置のジョイスティックの部分断面正面図。
【図3】図1の眼科装置の眼科ユニットに位置決め機構のブロック図。
【図4】図1の眼科装置の眼科ユニットを上下に移動するためのジョイスティックの操作方向を示す側面図。
【図5】図1の眼科装置の眼科ユニットを左右に移動するためのジョイスティックの操作方向を示す正面図。
【図6】図1の眼科装置の眼科ユニットを前後に移動するためのジョイスティックの操作方向を示す側面図。
【符号の説明】
【0034】
1…眼圧計(眼科装置) 3…眼科ユニット
5…ジョイスティック 6…モニタ
7…ハンドル 8…操作ホイール
9…前後傾斜エンコーダ 10…左右傾斜エンコーダ
11…ホイール回転エンコーダ 12…押下検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に対して眼科ユニットを位置決めする眼科装置であって、
ハンドルの頂部に回転可能な操作ホイールを備えるジョイスティックを有し、
前記ハンドルの前後左右の傾斜および前記ホイールの回転に応じて前記眼科ユニットが移動することを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記ハンドルの前後左右の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して上下左右に移動することを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記操作ホイールの回転に応じて、前記眼科ユニットが被検眼に対して接近または離間することを特徴とする請求項1または2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記ハンドルの前後左右の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して上下左右に移動し、前記操作ホイールの回転に応じて、前記眼科ユニットが被検眼に対して接近または離間する第1の操作モードと、
前記ハンドルの左右の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して左右に移動し、前記ハンドルの前後の傾斜に応じて、前記眼科ユニットが被検眼に対して接近または離間し、前記操作ホイールの回転に応じて、前記眼科ユニットが前記被検眼に対して上下に移動する第2の操作モードとを備えることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記操作ホイールは、押下可能であり、
前記ジョイスティックは、前記操作ホイールの押下を検出するスイッチを備え、
前記操作ホイールが押下されると、前記眼科ユニットが眼科動作を開始することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の眼科装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−35905(P2008−35905A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209983(P2006−209983)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)