説明

眼覆

【課題】ドライアイや眼瞼炎の治癒などの医療効果やリフトアップなどの美容効果を得られる眼覆を実現する。
【解決手段】人体の頭部の両眼および側頭部を覆う長さの帯状の本体1と、本体を顔面に装着する手段を有し、上記本体内には植物性炭素繊維層を内装する。マイボーム腺に到達している毛細血管の血流を植物性炭素繊維の作用により促進させることにより、豊富な栄養と酸素をマイボーム腺に与え、老廃物を運び出すことが可能となり、そのことによって初めて人体内でマイボーム腺が正常な機能を取り戻せるようになり、ドライアイや眼瞼炎が治癒される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は人体の顔面に装着することにより、ドライアイや眼瞼炎の治癒などの医療効果やリフトアップなどの美容効果を得られる眼覆に関する。
【背景技術】
【0002】
目の緊張による目の周りの筋肉や血管の収縮が原因で、涙腺やマイボーム腺の機能障害を引き起こす症状をドライアイという。ドライアイは、テレビやパソコンの画面による目の酷使、冷暖房による異常な不自然な乾燥、コンタクトレンズの装着などが原因で起こり、レーシック手術後に起こることもある。乾燥した眼球が瞼の内側の皮をこすり落として眼瞼炎を引き起こすこともある。
【0003】
ドライアイの治療法としては、涙に近い成分の人工涙液やヒアルロン酸を主成分とする目薬を点眼したり、コンタクトレンズを装着している場合は、コンタクトレンズ用の目薬を点眼したり、あるいは涙点プラグを装着することが一般的である。
【0004】
一方、固形化されたマイボーム腺の分泌物を溶かし、涙液層を正常な状態に保つためにヒーターを内装した眼覆により眼瞼を温める発明(特許文献1)や、同じく水蒸気を発生する眼覆により水蒸気を目に供給する発明(特許文献2)が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2000−225141公報
【特許文献2】特願2002−78727公報
【特許文献3】特願2004−223188公報
【特許文献4】特願2007−204886公報
【特許文献5】特願2008−222149公報
【特許文献6】特願2008−6132公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、今までの治療方法は、あくまでもドライアイという症状に対する一時的対症療法に過ぎなかった。
【0007】
一方、特許文献に記載の発明は温熱や水蒸気など外からの作用によりマイボーム腺の分泌物を溶かす点においてはやはり対症療法的であり、また、ヒーターや水蒸気発生装置を組み込まなければならないので眼覆の構造が大がかりになり製造コストが嵩む問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は以上の従来技術の問題点に鑑みて創作されたものであり、一時的対症療法ではなく、生体内の目の周りの毛細血管の血流をきちんと改善することを企図したものであり、原因となる緊張を取り除き、マイボーム腺などの分泌腺の機能障害を正常化することによりドライアイや眼瞼炎を治癒する眼覆を提供することを目的とする。
【0009】
すなわち、この発明の眼覆は人体の頭部の両眼および側頭部を覆う長さの帯状の本体と、本体を顔面に装着する手段を有し、上記本体内には植物性炭素繊維層を内装したことを特徴とする。
【0010】
また、ここでは前記の眼覆において、両眼に位置する箇所の植物性炭素繊維層を他の部分より厚く構成し、本体の裏側に突起させた眼覆も第2発明として開示する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の眼覆は植物性炭素繊維層を内装しているが、セルロース系の有機物から作られた織物を炭化させ製造した植物性炭素繊維材料を人体に近づけると、血液中で連鎖的に結合した赤血球同士が分離するとともに正常な丸型の赤血球に戻ると共に、さらに血球に変容性と変形能が出て、赤血球が血管内を互いに独立した状態で流れるようになり血流が促進されることが知られている(特許文献3、4、5)。
【0012】
マイボーム腺(マイボームせん、Meibomian gland)は瞼の縁にある特殊な皮脂腺の一つで、目の涙液膜の蒸発を防ぎ、涙が頬にこぼれ落ちるのを防止し、閉じた瞼内を気密にする働きを持つ油性物質(皮脂)の供給をつかさどる。瞼板腺(けんばんせん、tarsal g1ands)ともいう。マイボーム腺は上瞼には約50本、下瞼には約25本存在する。機能障害を起こしているマイボーム腺は、その周りの毛細血管の血流が少なくなっているか、または滞っており、それによりドライアイが引き起こされる。
【0013】
よって、そのマイボーム腺に到達している毛細血管の血流を前記の植物性炭素繊維の作用により促進させることにより、豊富な栄養と酸素をマイボーム腺に与え、老廃物を運び出すことが可能となり、そのことによって初めて人体内でマイボーム腺が正常な機能を取り戻せるようになり、ドライアイや眼瞼炎が治癒される。
【0014】
ところで、通常、「アイマスク」と呼ばれている眼覆は、その名の通り人体の頭部の両眼部分のみを覆う大きさおよび形状となっている。また、一般的には毛細血管の血流を促進させるためにはマイボーム腺など、対象となるところの上にのみ前記の植物性炭素繊維を当てることが望ましいように思われている。
【0015】
しかしながら、臨床試験によると、血流促進をしたい毛細血管の前のより太い血管に植物性炭素繊維を当てると毛細血管の血流が飛躍的に改善されることが確認されている。この発明の眼覆は、両眼部分のみを覆う公知の眼覆とは異なり、両眼および側頭部を覆う長さの帯状の本体に植物性炭素繊維層を内装している。よって、瞼の毛細血管の手前、眉間部分の血管血流促進を行うように植物性炭素繊維層が位置する他、頚部から側頭部の頚動脈部分にも植物性炭素繊維層が位置して毛細血管の血流が飛躍的に改善され、さらにリンパ液流の促進効果も得られる。
【0016】
一方、植物性炭素繊維層の作用は狭くマイボーム腺に止まらず、眼球周りの他の腺や筋肉に対してもおよぶ。すなわち、毛綱血管の血流促進により緊張が緩み、機能が正常化してくる。その結果、この発明の眼覆によれば、ドライアイや眼瞼炎の治癒などの医療効果だけでなく、下記の美容効果も得ることができる。
(A) 目の周りの肌の血流があがる。
(B) 目じりの皺が薄くなる。
(C) 目の周りのくすみが取れる。
(D) 目の下のくまが取れる。
(E) リフトアップされる。
(F) 目の周りに張りが出る。
なお、顔面の筋肉の緊張を緩め柔軟にすることによりリフトアップなどの美容効果が得られることは特許文献6により知られている。
【0017】
次に、第2発明においては、両眼に位置する箇所の植物性炭素繊維層を他の部分より厚く構成して本体の裏側に隆起させているが、これにより眼窩付近の凹凸に眼覆が馴染んで密着性が向上し、植物性炭素繊維層の作用がより確かに発揮される効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の眼覆の第1実施例の斜視図。
【図2】同上、要部の断面図。
【図3】この発明の眼覆の第2実施例の斜視図。
【図4】同上、要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1および図2はこの発明の眼覆の第1実施例を示す図である。図中符号1は眼覆の本体である。この本体1は布などにより人体の頭部の両眼および側頭部を覆う長さの帯状に構成され、表地2Aと裏地2Bとの間には植物性炭素繊維層3が内装される構成からなる。
【0020】
本願発明において、植物性炭素繊維とは前記の特許文献3、4、5において公知のものであり、特許文献5において『「植物性」とは、セルロース系の有機物から構成されたものであることを意図する。植物性炭素繊維は、綿(綿花)、ウバメガシ繊維、竹繊維、その他の天然植物繊維、あるいは材木を原料とし、これらを高温で焼成することにより得られる。植物性炭素繊維から構成される本発明の素材や物品では、化学繊維に炭を練り混ぜたものとは異なり均一な組成構造の繊維を形成している為、シート等への加工が容易である。さらに、炭を素材にする通常の製品が有するデメリット、例えば、加工により生じる炭の特徴や作用の低下等を回避することが可能となる。植物性炭素繊維の分子構造は特に限定されず、例えば、黒鉛質系炭素、非晶質系炭素、これらの中間的結晶構造を持つ炭素等が挙げられる。また、繊維径は、所望の効果を得られる限り特には限定されないが、例えば、5〜20μm程度、好ましくは7〜15μm程度、より好ましくは7〜11μm程度である。また。トウを形成してもよく、撚糸されていてもよい。撚糸された炭素繊維束の直径は、所望の効果を得られる限り特には限定されないが、例えば、0.05〜10mm程度、好ましくは0.1〜5mm程度である。』と、定義されているものである。なお、レーヨンなどの再生セルロース繊維も含むことは勿論である。
【0021】
この発明においては、植物性炭素繊維層3は眼覆の本体1に内装されるが、この実施例においては両眼(図1において仮想線で図中符号Eとして図示している。)に位置する箇所4、4の植物性炭素繊維層を2層とすることにより他の部分より厚く構成し、本体の裏側に隆起させている。
【0022】
以上の眼覆は顔面に装着されるように使用に供されるが、この実施例においては伸縮素材部分5、5を両側に介在させることにより伸縮自在とした本体1の両端に耳に掛止可能な掛止穴6、6を設けることにより、本体を顔面に装着する手段としている。
【実施例2】
【0023】
図3および図4はこの発明の眼覆の第2実施例を示す図である。図中符号11は眼覆の本体である。この本体11は布などにより人体の頭部の両眼および側頭部を覆う長さの帯状に構成され、表地12Aと裏地12Bとの間には実施例1と同様の植物性炭素繊維層13が内装される構成からなる。
【0024】
植物性炭素繊維層13は眼覆の本体11に内装されるが、この実施例においても両眼E、Eに位置する箇所14、14の植物性炭素繊維層を2層とすることにより他の部分より厚く構成し、本体の裏側に隆起させている。
【0025】
以上の眼覆は顔面に装着されるように使用に供されるが、この実施例においては本体11を頭部に巻装可能な長さとするとし、例えばベルベットファスナーなどの一組の係着片の一方6Bを本体の一端の裏面に設けると共に、他方6Aを本体の両眼に位置する箇所14の表面に設けることにより、本体を顔面に装着する手段としている。この場合、係着片は顔面の前方に位置することで、装着がしやすさくなり、また、寝た時の後ろのごつごつした違和感がなくなる作用を得られる。
【符号の説明】
【0026】
1 (第1実施例の)眼覆の本体
3 (第1実施例の)植物性炭素繊維層
6 掛止穴
11 (第2実施例の)眼覆の本体
13 (第2実施例の)植物性炭素繊維層
6A、6B 係着片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の頭部の両眼および側頭部を覆う長さの帯状の本体と、本体を顔面に装着する手段を有し、上記本体内には植物性炭素繊維層を内装したことを特徴とする眼覆。
【請求項2】
両眼に位置する箇所の植物性炭素繊維層を他の部分より厚く構成し、本体の裏側に隆起させた請求項1記載の眼覆。
【請求項3】
伸縮自在とした本体の両端に耳に掛止可能な掛止穴を設けることにより、本体を顔面に装着する手段とした請求項1または2記載の眼覆。
【請求項4】
本体を人体の頭部に巻装可能な長さとし、一組の係着片の一方を本体の一端の裏面に設けると共に、他方を本体の両眼に位置する箇所の表面に設けることにより、本体を顔面に装着する手段とした請求項1または2記載の眼覆。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−155012(P2010−155012A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5(P2009−5)
【出願日】平成21年1月3日(2009.1.3)
【出願人】(506023932)セラスメディコ株式会社 (7)