説明

眼鏡の蝶番装置及び眼鏡用の枢軸取り外し装置

【課題】テンプルの開閉を長期間に亘って安定的に確保できると共に、テンプルとヨロイの分離を容易に行うことのできる眼鏡の蝶番装置を提供する。
【解決手段】ヨロイ2にテンプル3を開閉可能に枢着してなる蝶番装置である。テンプルに設けた上の蝶番部12に金属製の枢軸6を下方に向けて突出する。枢軸6は、割り溝42によって複数の分割片43に分割されてなる。枢軸の下端部分に設けた係合軸部45の下端に円錐状部47を有し、その上側に環状係止溝49を有する。ヨロイ2に設けた下の蝶番部21に、内周面が樹脂製の軸孔36が設けられ、その下端に環状係合部10を有する。軸孔36に枢軸6を挿通すると共に、分割片43が弾性的に窄まることによって形成された縮小状態の円錐状部が環状係合部10の係合孔37を挿通して後、分割片43が弾性復元することにより、環状係合部10の内周縁部分が環状係止溝49に嵌着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨロイにテンプルを開閉可能(折り畳み可能)に枢着してなる眼鏡の蝶番装置に関するものである。より詳しくは、テンプルを長期間に亘って安定的に繰り返し開閉可能とし、然も、修理等に際してテンプルとヨロイの分離を容易に行うことができる眼鏡の蝶番装置に関するものである。
又本発明は、該蝶番装置の修理等に際してテンプルとヨロイの分離を容易に行うことのできる眼鏡用の枢軸取り外し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヨロイにテンプルを開閉可能(折り畳み可能)に枢着してなる従来の眼鏡の蝶番装置は、通常、ヨロイの後端とテンプルの前端に夫々固定された蝶番片を噛み合わせると共に両者を蝶番ネジを用いて連結してなるものであった。
【0003】
しかしながら、テンプルは頻繁に開閉されるために蝶番ネジが緩みやすく、眼鏡使用時に蝶番ネジが脱落することがよくあった。脱落しないまでも蝶番ネジが緩むと、ヨロイとテンプルの枢着部分にガタツキが生じてテンプルの開閉が不安定化する問題があった。そのため、微小な蝶番ネジを何度も締め直してテンプルの開閉抵抗を調整し直さなければならない煩わしさがあった。又、テンプルが不用意に開閉すると、テンプルが折り畳まれた際の衝撃でレンズリムやレンズを損傷する恐れもあった。
【0004】
そこで、テンプルが頻繁に開閉されても、蝶番ネジを用いる場合のように緩みが発生しにくい蝶番装置が、実開平4−50819号公報で提案されている。
【0005】
該蝶番装置aは、図35に示すように、テンプルbの前端とヨロイcの後端に夫々設けた蝶番部d,eを噛み合わせ状態にして上下連通する枢着孔fを形成すると共に、この枢着孔fに連結具Aを取り付けることにより該テンプルbを開閉可能としていた。該連結具Aは、金属製の円筒体gと、該円筒体gに挿入される丸棒割りピンhとから構成されていた。該円筒体gは、図35〜36に示すように、長手方向にスリットj1が設けられ、バネ性が付与されてなり、前記枢着孔fと同じ長さを有し、一方の側縁には、側方に張り出す鍔状の張り出し片kが設けられていた。又、該円筒体gの該張り出し片k側には、その外周にパッキングmが囲撓されていた。
【0006】
一方前記丸棒割りピンhは、図35〜36に示すように、一端に鍔部nが設けられ、本体部pは、スリットj2により二分割され、夫々外側に拡張するようにバネ性が付与されており、他端には一対の係止突部q,qが設けられていた。そして、前記蝶番部d,eを連結するに際しては、前記枢着孔fに前記円筒体gを挿入し、前記張り出し片kを前記枢着孔fの一端の周縁部分rに当接させる。その後、前記丸棒割りピンhを、前記円筒体gの張り出し片kが設けられていない側の端部sから該円筒体gの挿通孔tに挿入する。
【0007】
このように挿入するに際しては、図36に示すように、前記丸棒割りピンhの先端部分uを、前記係止突部q,qを前記スリットj2によって内側に押圧した状態にして窄め、この窄められた先端部分uを前記挿通孔tの端部vに挿入し、この状態で該丸棒割りピンhを該挿通孔tに押し込む。該丸棒割りピンhはバネ性を有し、側方に拡張するように付勢されているので、図35(B)に示すように、該係止突部q,qは前記張り出し片kの内壁端部の傾斜係合面w,wに弾性的に係合する。これにより、丸棒割りピンhと円筒体gが一体化し、蝶番部c,dが枢着されることになる。
【0008】
かかる構成の蝶番装置aによるときは、前記蝶番ネジを用いて蝶番装置を構成する場合のように緩みが生じたり前記連結具Aが脱落する恐れのない利点があった。又、該蝶番装置は、前記円筒体gの外周に囲撓せしめられた前記パッキングmが、テンプルbの回動に適当な抵抗感を与え、テンプルのガタツキを防止せんとするものであった。
【0009】
しかしながら、かかる構成の蝶番装置aには次のような問題点があって改良の余地があった。即ち、前記丸棒割りピンhを前記挿通孔tに挿入するに際しては、図36に示すように、係止突部q,qを内側に押圧して前記先端部分uを窄め、この窄めた先端部分uを前記挿通孔tの端部vに挿入させる必要があった。しかしながらこの操作は、前記円筒体gと前記丸棒割りピンhが微小な部品であることからして、両係合突部q,qを内側に押圧して先端部分uを窄めること、及び、このように窄められた先端部分uを前記のように挿通孔tの端部vに挿入させることは極めて困難乃至、事実上不可能であり、蝶番装置を簡単に構成できるものではなかった。
【0010】
加えて前記のように、前記円筒体gの外周にパッキングmを囲撓し、これによりテンプルbの回動に適当な抵抗感を与え、テンプルbのガタツキを防止せんとするものであったが、該パッキングmは円筒体gの外周の一部分に取り付けられているに過ぎず、該パッキングmが存在しない部分では当然に隙間a1(図35(A))が発生した。又前記のように、丸棒割りピンhを前記円筒体gの挿通孔tに挿入させる際、係合突部qを内側に押圧して窄めた先側部分uを該挿通孔tに挿通させる関係上、かかる挿通を無理なく行わせようとすれば特許文献1の第1図(図35(A))に記載されているように、丸棒割りピンhの外周面b1と円筒体gの内周面c1との間に隙間d1が発生せざるを得ない。このように、円筒体の外周面h1と前記枢着孔fの内面j1との間に隙間a1が発生すると共に、丸棒割りピンhの外周面b1と円筒体gの内周面h1との間にも隙間d1が発生することから、更には前記パッキングmが前記枢着孔fの内周面に局部的に当接するに過ぎないことから、当初は適当なテンプル開閉抵抗が得られるとしても、その内に開閉抵抗が低下してテンプルbの開閉にガタツキが発生しやすい問題があった。
【0011】
更に、前記連結具Aが損傷された場合には、前記丸棒割りピンhの取り外しが必要となるが、この取り外しのためには、前記張り出し片kの内壁端部の傾斜係合面w,wに係合状態にある前記係止突部q,qの、該張り出し片kの外面e1から突出状態にある突出係合部f1,f1を、図35(B)に矢印で示すように内側に押圧することによって、該係止突部qと前記傾斜係合面wとの係合状態を解除しなければならない。しかしそのためには、前記張り出し片kの外面e1から突出する突出係合部f1,f1の係合側面g1,g1をやっとこ等の挾み工具で挾んで丸棒割りピンhの先端部分uを窄めなければならないことになるが、そもそも丸棒割りピンhは、眼鏡の蝶番部を構成するものであることから微小部品であり、前記係合側面g1,g1の前記張り出し片kからの突出は極めて僅かなものにならざるを得ない。従って該突出係合部f1,f1を挾み工具で挾みにくく、丸棒割りピンhの取り外しが極めて困難乃至不可能であった。
【0012】
更には、かかる従来の蝶番装置にあっては、前記円筒体の張り出し片kや前記突出係合部f1,f1、丸棒割りピンhの鍔部nがテンプルとヨロイとの枢着部分の外面に露出状態になることから、眼鏡の美観を損なう問題もあった。
【0013】
【特許文献1】実開平4−50819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、テンプルの開閉抵抗が所要に確保されてテンプルの開閉を長期間に亘って安定的に確保できると共に、修理等に際してテンプルとヨロイの分離を容易に行うことのできる眼鏡の蝶番装置の提供を課題とするものである。
【0015】
又本発明は、該蝶番装置の修理等に際してテンプルとヨロイの分離を容易に行うことのできる眼鏡用の枢軸取り外し装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る眼鏡の蝶番装置(以下、蝶番装置という)は、ヨロイにテンプルを開閉可能に枢着してなる眼鏡の蝶番装置であって、該テンプルの前端部分及び該ヨロイの後端部分の一方部分に、下方に向けて突出し且つ少なくとも下端側の部分が、軸線方向の割り溝によって複数の分割片に分割されてなる金属製の枢軸が設けられており、該枢軸は、全長に亘って軸外径が等しい軸本体の下端に、その最大軸径が前記軸本体の軸外径に等しい係合軸部が設けられてなる。そして、該係合軸部の下端部分は、外周面が下方に向けて小径となる円錐面状に形成された円錐状部とされており、該係合軸部の、該円錐状部の上側に位置させて、周方向に環状を呈する環状係止溝が設けられている。又、前記テンプルの前端部分及び前記ヨロイの後端部分の他方部分に設けられ且つ内周面が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔の下端に、該軸孔と同心で且つ該軸孔よりも小径の係合孔を有する環状係合部が前記他方部分に一体に設けられており、該軸孔の内周面に、前記軸本体の外周面が密接に挿通された状態となる如くなされており、且つ、前記環状係合部の係合孔に、前記各分割片を弾性的に窄ませて形成された縮小状態の円錐状部が、下方に向けて挿通された後に該分割片が弾性復元することによって、該環状係合部の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着されると共に、前記軸本体の外周面が前記軸孔の内周面に密接することを特徴とするものである。
【0017】
又、本発明に係る蝶番装置の他の態様は、ヨロイにテンプルを開閉可能に枢着してなる眼鏡の蝶番装置であって、該テンプルの前端部分及び該ヨロイの後端部分の一方部分に、下方に向けて突出し且つ少なくとも下端側の部分が、軸線方向の割り溝によって複数の分割片に分割されてなる金属製の枢軸が設けられており、該枢軸は、全長に亘って軸外径が等しい軸本体の下端に、その最大軸径が前記軸本体の軸外径に等しい係合軸部が設けられてなる。そして、該係合軸部の下端部分は、外周面が下方に向けて小径となる円錐面状に形成された円錐状部とされており、該係合軸部の、該円錐状部の上側に位置させて、周方向に環状を呈する環状係止溝が設けられている。又、前記テンプルの前端部分及び前記ヨロイの後端部分の他方部分に設けられ且つ内周面が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔の内周面に、前記軸本体の外周面が密接に挿通された状態となる如くなされており、且つ、前記係合軸部が該軸孔の下端から下方に突出される如くなされている。そして、前記環状係止溝に嵌着される、周方向に閉じた環状係止部材の係止孔に、前記各分割片を弾性的に窄ませて形成された縮小状態の円錐状部を挿通させることにより、該分割片が弾性復元することによって、該環状係止部材の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着される如くなされており、該嵌着状態で、前記軸本体の外周面が前記軸孔の内周面に密接するようになされると共に、該環状係止部材の外周縁部分が前記軸孔の下端周縁部分に当接し得る如くなされていることを特徴とするものである。
【0018】
前記環状係合部を具える蝶番装置において、前記環状係合部の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着により係合して前記円錐状部が該環状係合部の下方に突出した状態で、該円錐状部の下端側の部分を、凹部が設けられてなる取り外し工具の該凹部に嵌め入れ可能とし、該円錐状部の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で該取り外し工具が、前記枢軸の軸線方向で上方向に押されることにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになし、これにより、前記環状係合部と前記環状係止溝との係合状態が解除され、該縮小した円錐状部を該環状係合部から取り外し可能となすのがよい。
【0019】
前記環状係止部材を具える蝶番装置において、前記環状係止部材の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着により係合して前記円錐状部が該環状係止部材の下方に突出した状態で、該円錐状部の下端側の部分を、凹部が設けられてなる取り外し工具の該凹部に嵌め入れ可能となし、該円錐状部の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で該取り外し工具が、前記枢軸の軸線方向で上方向に押されることにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになし、これにより、前記環状係止部材と前記環状係止溝との係合状態が解除され、該縮小した円錐状部を前記環状係止部材から取り外し可能となすのがよい。
【0020】
前記各蝶番装置において、前記一方部分に設けられている前記枢軸を、前記軸本体の上端に係合頭部が設けられたものとし、前記他方部分には、該枢軸を挿通させる段付き頭部装着孔を設け、該係合頭部の下側は円柱状部として形成すると共に、上側は、該円柱状部の上端よりも拡大した非円形の板部として形成し、一方、前記段付き頭部装着孔は、前記円柱状部を嵌め入れる円形孔の上端に、前記非円形の板部を嵌め入れる非円形の係合孔部が、段差面を介して拡大するように連設されたものとして構成するのがよい。
【0021】
前記各蝶番装置において、前記円錐状部は、前記他方部分の下端部分に前記軸孔と同心に凹設された収容凹部に収容されるものとして構成するのがよい。
【0022】
本発明に係る眼鏡用の枢軸取り外し装置(以下、枢軸取り外し装置という)は、環状係合部を具える前記眼鏡の蝶番装置と、前記円錐状部を嵌め入れるための凹部が設けられた取り外し工具とからなり、該取り外し工具は、前記環状係合部が前記環状係止溝に嵌着により係合して該環状係合部の下方に突出した状態にある円錐状部を嵌め入れることができる凹部が設けられると共に、該円錐状部の下端側の部分を該凹部の上端側の部分に、該下端側の部分の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で嵌め入れることができるようになされており、このように嵌め入れた状態で該取り外し工具を、前記枢軸の軸線方向で上方向に押すことにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになされており、又、前記係合が解除された状態で、該取り外し工具の上端と前記環状係合部の下面との間に押し込み余裕部が設けられており、該押し込み余裕部の範囲で該取り外し工具を更に押し込むことにより、前記円錐状部の上端部分を前記環状係合部の前記係合孔の内部に存在させることができ、又は、該上端部分を前記軸孔の内部に存在させ得ることを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係る枢軸取り外し装置の他の態様は、環状係止部材を具える前記眼鏡の蝶番装置と、前記円錐状部を嵌め入れるための凹部が設けられた取り外し工具とからなり、該取り外し工具は、前記環状係止部材が前記環状係止溝に嵌着により係合して該環状係止部材の下方に突出した状態にある円錐状部を嵌め入れることができる凹部が設けられると共に、該円錐状部の下端側の部分を該凹部の上端側の部分に、該下端側の部分の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で嵌め入れることができるようになされており、このように嵌め入れた状態で該取り外し工具を、前記枢軸の軸線方向で上方向に押すことにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになされており、又、前記係合が解除された状態で、該取り外し工具の上端と前記環状係止部材の下面との間に押し込み余裕部が設けられており、該押し込み余裕部の範囲で該取り外し工具を更に押し込むことにより、前記円錐状部の上端部分を前記環状係止部材の前記係止孔の内部に存在させることができ、又は、該上端部分を前記軸孔の内部に存在させ得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る蝶番装置は、基本構成として、テンプルの前端部分及びヨロイの後端部分の一方部分に突設された金属製の枢軸を、その他方部分に設けられた、内周面が樹脂製の軸孔に密接に挿通させることとし、且つ、該枢軸の下端側に設けた係合軸部を環状係合部や環状係止部材で抜け止めする構成を採用している。
【0025】
従って、従来のネジ止めによって蝶番装置を構成するものとは異なり、蝶番ネジの緩みの締め直しに煩わされることがなく、又、前記従来の丸棒割りピンを用いる蝶番装置におけるように枢着部分に隙間を発生させることがないため隙間に起因してテンプルの開閉にガタツキを生じさせるといった問題を招来することもない。
【0026】
このように本発明によるときは、テンプルの適度の開閉抵抗が長期間に亘って発揮されて、安定したスムースなテンプル開閉が得られる使い勝手のよい蝶番装置を提供できることとなる。
【0027】
(2) 本発明に係る蝶番装置は、枢軸の少なくとも下端側の部分が、割り溝によって複数の分割片に分割されており、且つ、係合軸部の下端部分が円錐状部として構成されているため、前記環状係合部や前記環状係止部材を、枢軸の係合軸部に設けられている環状係止溝に嵌着させる際、該係合軸部の円錐状部を、弾性的に無理なく縮小させることができる。そして、環状係合部や環状係止部材が環状係止溝に嵌着された後は、各分割片の弾性復元によって軸本体の外周面を前記軸孔の内周面に密接させ得る。かかることから、蝶番装置の組み立て作業を容易且つ能率的に行うことができる。
【0028】
又、このように構成されているため、蝶番装置の修理の際やテンプルの交換を行う際には、取り外し工具の円錐状凹部内に該円錐状部を嵌め入れて該取り外し工具を枢軸の軸線方向に押圧することにより、該円錐状部を無理なく縮小状態として、前記環状係合部又は前記環状係止部材と前記環状係止溝との係合状態を容易に解除でき、これにより枢軸を無理なく引き抜くことができる。
【0029】
このように本発明は、枢軸の下端部分を構成する前記円錐状部を、蝶番装置の組立ての容易化と枢軸の係合解除の容易化(即ち、蝶番装置の分解の容易化)の双方に活用し得る大きな利点を有する。
【0030】
(3) 本発明において特に、前記環状係合部の下側に、前記軸孔と同心に収容凹部を設け、前記円錐状部が該収容凹部に収容されるように構成するときは、該円錐状部や前記環状係止部材が露出しない。かかることから、割り溝を有する円錐状部に髪の毛などが引っ掛かる恐れがなく、又、蝶番装置の外観を向上させ得ることとなる。
【0031】
(4) 本発明において、前記枢軸を、テンプルやヨロイと別体に構成し、テンプルやヨロイに設けた段付き頭部装着孔に該枢軸を挿通すると共にその頭部を該段付き頭部装着孔に嵌め入れることによって、枢軸をテンプルやヨロイに突出状態とするときは、該枢軸をテンプルやヨロイにロウ付け等の面倒な手段で固着する必要がなく、枢軸付きのテンプルやヨロイを簡易に構成できる利点がある。又、枢軸が損傷した場合にその修理を行う際には、損傷した枢軸をテンプルやヨロイから容易に取り外すことができるため、その修理を簡易且つ能率的に行ない得る利点がある。
【0032】
(5) 本発明に係る枢軸取り外し装置によるときは、前記環状係合部又は前記環状係止部材と前記環状係止溝との係合を前記円錐状部を損傷することなく容易に解除できる。しかも、該係合が解除された状態で取り外し工具を更に押し込み得る押し込み余裕部を設ける構成を採用しているため、このように更に押し込んだ状態にすれば、取り外し工具を取り外しても、環状係合部や環状係止部が環状係止溝と再び嵌着することがないので、枢軸の取り外しを一層確実に行ない得る利点がある。
【実施例1】
【0033】
図1〜3において本発明に係る蝶番装置1は、ヨロイ2にテンプル3を開閉可能に枢着してなり、該テンプル3の前端部分5及び該ヨロイ2の後端部分7の一方部分4(本実施例においては該テンプル3の前端部分5)に、下方に向けて突設された枢軸6が、前記テンプル3の前端部分5及び前記ヨロイ2の後端部分7の他方部分8(即ち、前記ヨロイ2の後端部分7)に設けられた軸孔9に密接に挿通されている。そして、前記枢軸6の下端部分に嵌着された環状係合部10によって該枢軸6が抜け止めされている。
【0034】
前記テンプル3は、チタン合金製等の金属製のものであり、その後端側の部分にはモダンが装着されている。該テンプル3の前端部分5は、図2、図4〜5に示すように、上側部分が庇状の円板状を呈し且つ下面11が水平である上の蝶番部12とされ、その下側部分が嵌入空間部13として形成されている。そして、該上の蝶番部12の内側の縁15は円弧状を呈すると共に、その前側の縁16は、テンプル3の外面17に略直交する直線状に形成されている。又前記嵌入空間部13の前面19は、円弧状を呈する前記内側の縁15に連続する円弧状凹面として形成されている。
【0035】
又前記ヨロイ2は、図3〜4に示すように、本実施例においてはチタン合金製等の金属製とされており、その後端部分7の上側部分は、円板状を呈する前記上の蝶番部12を嵌め入れるための嵌入空間部20として形成されると共に、その下側部分は、前記テンプル側の嵌入空間部13に嵌め入れられる、上面21が水平である円柱軸状を呈する下の蝶番部21として形成されている。
【0036】
そして図3〜5に示すように、前記上の蝶番部12の下面11の中央部分には円形状の嵌入凹部22が設けられると共に、前記下の蝶番部21には、該嵌入凹部22の下方に位置させ、該嵌入凹部22と軸線を共通にして円形の貫通孔23が設けられている。該貫通孔23の内周面25の下端側には円環状鍔部(前記環状係合部10)26が周設されており、該円環状鍔部26の下側には収容凹部27が形成されている。そして該貫通孔23には、樹脂製、例えばエンジニアリングプラスチック製の硬質の軸受パイプ29が圧入状態に嵌着されている。本実施例においては、該軸受パイプ29の長さは、後述する軸本体44の長さに等しく設定されており、又該軸受パイプ29の外径は、前記貫通孔23の内径よりも若干大きく(0.05mm程度大きく)設定されて該貫通孔23に圧入状態に嵌着されている。そして、該軸受パイプ29の下面30は前記円環状鍔部26の上面31に当接状態とされ、該軸受パイプ29の上面32は前記下の蝶番部21の上面33と面一を呈する。
【0037】
そして該嵌着状態で、内周面35が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔36が形成されると共に該軸孔36の下端に、該軸孔36と同心で且つ該軸孔36よりも小径の円形の係合孔37を有する前記環状係合部10が前記ヨロイ2に一体に設けられた構成となっている。
【0038】
前記枢軸6は図4〜6に示すように、前記嵌入凹部22(図5)に嵌め入れられて該嵌入凹部22にロウ付けされる頭部40の下面に、該頭部40と軸線を共通にして下方に向けて突出されている。該枢軸6は、金属製、例えばベータチタン製であり、全長に亘って軸外径が等しい円柱状の軸本体44の下端に係合軸部45が設けられてなる。そして、少なくとも下端側の部分41(本実施例においては下端側の部分41)が、軸線方向の割り溝42によって4つの分割片43,43,43,43に分割されている。該軸本体44の軸外径は、前記軸受パイプ29の内径に等しく設定されている。そして該係合軸部45の最大軸径が、該軸本体44の軸外径に等しく設定されている。
【0039】
該係合軸部45は、その下端部分が、その外周面46が円錐面状に形成された円錐状部47とされており、該円錐状部47の上端部分66の外径は前記軸本体44の軸外径に等しい。そして該円錐状部47の上側に位置させて、周方向に環状を呈する環状係止溝49が設けられている。
【0040】
かかる構成を有する枢軸6は、図3に示すように、内周面35が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔36に、前記軸本体44が密接に挿通された状態となされると共に、前記係合軸部45が該軸孔36の下端50から下方に突出される如くなされている。
【0041】
本実施例においては、軸孔36に軸本体44が密接に挿通された状態とすると共に、該軸孔36の下端50から下方に係合軸部45が突出された状態とするために、次のような作業工程を経ることとしている。
【0042】
先ず図7に示すように、前記軸受パイプ29の挿通孔51に、前記枢軸6をその先端52側から挿入し、該軸受パイプ29の前記上面32を前記上の蝶番部21の前記下面11に当接状態とする。これにより、枢軸6に軸受パイプ29が装着され、前記係合軸部45が該軸受パイプ29の下端から下方に突出した状態となる。そして、前記軸本体44の外周面53が、前記挿通孔51の内周面35に密接された状態となる。その後、枢軸6に装着された軸受パイプ29を、前記貫通孔23の上端から下方に向けて圧入する。
【0043】
このようにして挿通すると、該円錐状部47の下端径が前記係合孔37よりも小さく形成されているため、図8(A)に示すように、前記枢軸6の該円錐状部47の下端部分55が前記環状係合部39の有する係合孔37に挿入され、該円錐状部47の外周面46が前記係合孔37の内周縁48に支持された状態となる。この状態で該枢軸6を更に下方に押し込むと、図8(B)に示すように、前記各分割片43,43,43,43が弾性的に窄まることによって形成された縮小状態の円錐状部47が前記係合孔37を挿通でき、その後、該分割片43,43,43,43が弾性復元することにより、図8(C)に示すように、前記環状係合部10の内周縁部分55が前記環状係止溝49に嵌着された状態となる。そしてこの状態で、軸本体44の外周面53が前記軸孔9の内周面25に密接すると共に、図3に示すように、前記軸受パイプ29の下面30が前記環状鍔部26の上面31に当接状態となる。これにより、図1〜2に示すような蝶番装置1が構成されることになる。
【0044】
然して、かかる構成の蝶番装置1によるときは、図8(C)、図3に示すように、前記環状係合部10の内周縁部分54が前記環状係止溝49に嵌着されることによって該枢軸6の上方向への移動が阻止され、該枢軸6がヨロイ2から脱落する恐れがない。そして前記のように、軸受パイプ29は前記貫通孔23に圧入されてヨロイ2に固定状態となるため、前記枢軸6の軸本体44の外周面53が樹脂製の前記軸孔9に密接した状態で回動でき、従ってテンプル3は、一定の開閉抵抗を受けつつスムースに開閉できることになる。
【0045】
特に本実施例においては前記のように、軸孔9の下側に収容凹部27が設けられているため、前記円錐状部47は、図3に示すように該収容凹部27に収容された状態となる。かかることから、割り溝の端部分が存する円錐状部47が髪の毛等に引っ掛かる恐れがない。又、枢軸の上端は、前記テンプルに設けられている上の蝶番部12で覆い隠された状態となるため、蝶番装置を構成する枢軸等の部材が露出せず、眼鏡の美観向上が図られることとなる。
【0046】
そして、かかる蝶番装置1を構成する前記枢軸等が損傷された場合にその修理を行うためや、眼鏡デザイン面からテンプル3の交換を行う際等においては、該蝶番装置1と、取り外し工具56とからなる枢軸取り外し装置58(図9(A))を用いて、例えば次のようにしてテンプル3を容易に取り外すことができる。
【0047】
図9(A)(B)は、そのために用いる取り外し工具56の一例を示すものであり、前記収容凹部27に挿入でき且つ前記円錐状部47の円錐状の外周面46に当接し得る円錐状の内面57を有する円錐状の凹部59が設けられている。図9(A)に示すように、該取り外し工具56の該円錐状の凹部59に前記円錐状部47の下端側の部分60を嵌め入れると、図9(C)に示すように、該下端側の部分60の外周面(円錐状面)46aが該円錐状の凹部59の上端側の部分の円錐状の内面61に当接状態となる。その後、該取り外し工具56を前記枢軸6の軸線方向で上方向に押し込む。これにより該円錐状部47は、図10(A)に示すように、前記分割片43,43,43,43が弾性的に窄まることによって縮小状態で前記円錐状の凹部59に更に進入し、これにより図10(A)に示すように、前記環状係合部39と前記環状係止溝49との嵌着による係合状態が解除される寸前となし得る。取り外し工具56を更に上方向に押し込むと、該環状係合部39が該環状係止溝49から外れる。この状態で前記テンプル3を持ち上げると、前記枢軸6を前記軸孔9から無理なく取り外すことができる。
【0048】
本実施例においては図10(A)に示すように、前記円錐状部47の軸線方向の長さが比較的長く形成されており、該円錐状部47が、前記環状係合部39と前記環状係止溝49との係合が解除された状態となるように弾性的に縮小された状態において、前記工具56の上端62と前記環状係合部39の下面63との間に押し込み余裕部65が形成されるように構成されている。従って、該環状係合部39と該環状係止溝49との係合が外れた後も、該取り外し工具56を、図10(B)に示すように更に押し込むことができる。これにより、前記円錐状部47の上端部分66を、図10(B)に示すように、前記環状係合部39の前記係合孔37に存在させることができ、又は、該上端部分66を、前記軸孔9に存在させることができる。この状態にまでしてしまうと、図11に示すように、取り外し工具56を取り外しても前記円錐状部47は窄まった状態を維持するので、前記軸孔9からの前記枢軸6の取り外しがより容易となる。
【実施例2】
【0049】
図12は本発明に係る蝶番装置1の他の実施例を示すものであり、ヨロイ2にテンプル3を開閉可能に枢着してなり、該テンプル3の前端部分5及び該ヨロイ2の後端部分7の一方部分4(本実施例においては該テンプル3の前端部分5)としての上の蝶番部12に下方に向けて突設された枢軸6が、前記テンプル3の前端部分5及び前記ヨロイ2の後端部分7の他方部分8(即ち前記ヨロイ2の後端部分7)としての下の蝶番部21に設けられた軸孔9に密接に挿通されている。そして、前記枢軸6の下端部分に嵌着された環状係止部材67により該枢軸6が抜け止めされている。
【0050】
前記テンプル3と前記枢軸6は、前記実施例におけると同様の構成を有しているが、前記ヨロイ2の構成は前記と異なっている。該ヨロイ2は、図12〜13に示すように、本実施例においてはチタン合金製等の金属製とされており、その後端部分7の上側部分は、円板状を呈する前記上の蝶番部12を嵌め入れるための嵌入空間部20として形成されると共に、その下側部分は、前記テンプル側の嵌入空間部13に嵌め入れられる、上面21が水平である円柱軸状を呈する下の蝶番部21として形成されている。
【0051】
そして図12〜13、図5に示すように、前記上の蝶番部12の下面11の中央部分には円形状の嵌入凹部22が設けられると共に、前記下の蝶番部21には、該嵌入凹部22の下方に位置させ、該嵌入凹部22と軸線を共通にして円形の貫通孔23が設けられている。該貫通孔23の下側の部分は、水平な段差面69を介して拡大した収容凹部27とされている。そして該貫通孔23には、樹脂製、例えばエンジニアリングプラスチック製の硬質の軸受パイプ29が圧入状態に嵌着されている。本実施例においては、該軸受パイプ29の長さは、軸本体44の長さに等しく設定されており、又、該軸受パイプ29の外径は、前記貫通孔23の内径よりも若干大きく(0.05mm程度大きく)設定されて該圧入状態に嵌着されている。そして、該軸受パイプ29の下面30は、前記段差面69と面一を呈すると共に、該軸受パイプ29の上面31は前記下の蝶番部21の上面33と面一を呈する。
【0052】
そして該嵌着状態で、図12に示すように、内周面35が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔36が形成されると共に該軸孔36の下端に、前記収容凹部27が形成されている。
【0053】
前記枢軸6は図12〜13、図5〜6に示すように、前記嵌入凹部22(図5)に嵌め入れられて該嵌入凹部22にロウ付けされる頭部40の下面に、該頭部40と軸線を共通にして下方に向けて突出されている。該枢軸6は、金属製、例えばベータチタン製であり、全長に亘って軸外径が等しい円柱状の軸本体44の下端に係合軸部45が設けられてなる。そして、少なくとも下端側の部分41(本実施例においては下端側の部分41)が、軸線方向の割り溝42によって4つの分割片43,43,43,43に分割されている。該軸本体44の軸外径は、前記軸受パイプ29の内径に等しく設定されている。そして該係合軸部45の最大軸径が、該軸本体44の軸外径に等しく設定されている。
【0054】
該係合軸部45は、図6に示すように、その下端部分が、その外周面46が円錐面状に形成された円錐状部47とされており、該円錐状部47の上端部分66の外径は前記軸本体44の軸外径に等しい。そして該円錐状部47の上側に位置させて、周方向に環状を呈する環状係止溝49が設けられている。
【0055】
かかる構成を有する枢軸6は、図12に示すように、内周面35が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔36に、前記軸本体44が密接に挿通された状態となされると共に、前記係合軸部45が該軸孔36の下端から下方に突出される如くなされている。
【0056】
本実施例においては、軸孔36に軸本体44が密接に挿通された状態とすると共に、該軸孔36の下端50(図12、図16(C))から下方に係合軸部45が突出された状態とするために、次のような作業工程を経ることとしている。
【0057】
先ず図14に示すように、前記軸受パイプ29の挿通孔51に、前記枢軸6をその先端52側から挿入し、該軸受パイプ29の前記上面32を前記上の蝶番部21の前記下面11に当接状態とする。これにより、枢軸6に軸受パイプ29が装着され、前記係合軸部45が該軸受パイプ29の下端から下方に突出した状態となる。そして、前記軸本体44の外周面53が、前記挿通孔51の内周面35に密接された状態となる。
【0058】
その後、図15に示すように、枢軸6に装着された樹脂パイプ29を、前記貫通孔23の上端から下方に向けて圧入し、前記上の蝶番部12の下面11が前記下の蝶番部21の上面33に当接した状態とする。これにより、該樹脂パイプ29は該圧入によってヨロイ2に固定状態となる。そして、前記係合軸部45が前記軸孔36の下端から突出して前記収容凹部27に位置される。
【0059】
該係合軸部45がこのように突出した状態で、例えば肉厚が0.4mmのリング状を呈する金属製(ステンレス製やチタン合金製等)の環状係止部材67の円形の係止孔70に、前記各分割片43,43,43,43を弾性的に窄ませて形成された縮小した円錐状部47を図12に示すように挿通させると、該分割片43,43,43,43が弾性復元することにより、図17に示すように、該環状係止部材67の内周縁部分68が前記環状係止溝49に嵌着される如くなされている。
【0060】
図16(A)(B)(C)はその嵌着工程を示すものであり、図16(A)は、このように嵌着状態とするに先立って、前記円錐状部47の下端部分71を、前記環状係止部材67の有する前記係止孔70に挿入した状態を示し、該円錐状部47の外周面46が該係止孔70の内周縁72に当接している。その後、前記上の蝶番部12を下方向に押えた状態で該環状係止部材67を上方向に押圧すると、図16(B)に示すように、前記各分割片43,43,43,43が弾性的に窄められ、縮小状態の円錐状部47が該係止孔70を通過し、最終的には、前記各分割片43,43,43,43が弾性復元し、図16(C)、図12に示す嵌着状態が得られる。
【0061】
この嵌着状態で、図17に示すように、前記軸本体44の外周面53が、前記軸孔9の内周面25に密接できる。そして、該環状係止部材67の外周縁部分75が前記軸孔9の下端周縁部分(前記段差面69)76に当接し得る。この当接により、前記枢軸6が上方向に移動するのが阻止され、該枢軸6がヨロイ2から脱落する恐れがない。
そして図12、図17に示すように、軸受パイプ29は前記ヨロイ2に固定状態となるため、前記枢軸6の軸本体44の外周面53が樹脂製の前記軸孔9に密接した状態で回動でき、従ってテンプル3は、一定の開閉抵抗を受けつつスムースに開閉できることになる。
【0062】
特に本実施例においては前記のように、軸孔9の下側に収容凹部27が設けられているため、前記円錐状部47は図12に示すように、該収容凹部27に収容された状態となる。かかることから、割り溝の端部分が存する円錐状部47が髪の毛等に引っ掛かる恐れがない。又、枢軸の上端は、前記テンプル3に設けられている上の蝶番部12で覆い隠された状態となるため、蝶番装置1を構成する枢軸等の部材が露出せず、眼鏡の美観向上が図られることとなる。
【0063】
そして、かかる蝶番装置1を構成する前記枢軸等が損傷された場合にその修理を行うためや、眼鏡デザイン面からテンプル3の交換を行う際等においては、該蝶番装置1と、取り外し工具56とからなる枢軸取り外し装置58(図18(A))を用いて、例えば次のようにしてテンプル3を容易に取り外すことができる。
【0064】
図18(A)(B)は、そのために用いる取り外し工具56の一例を示すものであり、前記収容凹部27に挿入でき且つ前記円錐状部47の円錐状の外周面46に当接し得る円錐状の内面57を有する円錐状の凹部59が設けられている。図18(A)に示すように、該取り外し工具56の該円錐状の凹部59に前記円錐状部47の下端側の部分60を嵌め入れると、図18(C)に示すように、該下端側の部分60の外周面(円錐状面)46aが該円錐状の凹部59の上端側の部分の円錐状の内面61に当接状態となる。その後、該取り外し工具56を前記枢軸6の軸線方向で上方向に押し込む。これにより該円錐状部47は、図19(A)に示すように、前記分割片43,43,43,43が弾性的に窄まることによって縮小状態で前記円錐状の凹部59に更に進入し、これにより図19(A)に示すように、前記環状係止部材67と前記環状係止溝49との嵌着による係合状態が解除される寸前となし得る。取り外し工具56を更に上方向に押し込むと、該環状係止部材67が該環状係止溝49から外れる。この状態で前記テンプル3を持ち上げると、前記枢軸6を前記軸孔9から無理なく取り外すことができる。
【0065】
本実施例においては図19(A)に示すように、前記円錐状部47の軸線方向の長さが比較的長く形成されており、該円錐状部47が、前記環状係止部材67と前記環状係止溝49との係合が解除された状態となるように弾性的に縮小された状態において、前記取り外し工具56の上端62と前記環状係止部材67の下面76との間に押し込み余裕部65が形成されるように構成されている。従って、該環状係止部材67と該環状係止溝49との係合が外れた後も、該取り外し工具56を、図19(B)に示すように更に押し込むことができる。これにより、前記円錐状部の上端部分66を、図19(B)に示すように、前記環状係止部材67の前記係止孔70に存在させることができ、又は、該上端部分66を、前記軸孔9に存在させることができる。この状態にまでしてしまうと、図20に示すように、取り外し工具56を取り外しても前記円錐状部47は縮小状態を維持するので、前記軸孔9からの前記枢軸6の取り外しがより容易となる。
【実施例3】
【0066】
図21は、前記実施例1の蝶番装置1の変形態様を示すものであり、前記ヨロイ2の後端部分7としての上の蝶番部12に前記枢軸6を下方に向けて突出する一方、前記テンプル3の前端部分5としての下の蝶番部21に軸孔9を設け、該軸孔9に前記枢軸6を密接に挿通すると共に、該枢軸6の下端部分に嵌着された環状係合部39により該枢軸6を抜け止めしてなり、これによって該ヨロイ2にテンプル3を開閉可能に枢着した構成を有している。
【0067】
本実施例に係る蝶番装置1が前記実施例1に係る蝶番装置1と相違する点は、枢軸6をテンプル3に設けるかヨロイ2に設けるか、それに合わせて、軸孔9をヨロイ2に設けるかテンプル3に設けるかの点だけである。その他の構成及びそれによってもたらされる作用、効果は実施例1における場合と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0068】
図22は、前記実施例2の蝶番装置1の変形態様を示すものであり、前記ヨロイ2の後端部分7としての上の蝶番部12に前記枢軸6を下方に向けて突出する一方、前記テンプル3の前端部分5としての下の蝶番部21に軸孔9を設け、該軸孔9に前記枢軸6を密接に挿通すると共に、該枢軸6の下端部分に嵌着された環状係止部材67により該枢軸6を抜け止めしてなり、これによって該ヨロイ2にテンプル3を開閉可能に枢着した構成を有している。
【0069】
本実施例に係る蝶番装置1が前記実施例2に係る蝶番装置1と相違する点は、枢軸6をテンプル3に設けるかヨロイ2に設けるか、それに応じて、軸孔9をヨロイ2に設けるかテンプル3に設けるかの点だけである。その他の構成及びそれによってもたらされる作用、効果は実施例2における場合と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【実施例5】
【0070】
図23〜24は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4において、前記枢軸6を、テンプル3又はヨロイ2を貫通するように設けられた段付き頭部装着孔77に挿通して該枢軸6の係合頭部79の上面80を露出させてなる実施例を示すものである。この構成を、同図に示す、枢軸6をテンプル3の上の蝶番部12に取り付けた場合に代表させて、より具体的に説明する。
【0071】
該枢軸6は、本実施例においては図23〜24に示すように、その係合頭部79は、下側が円柱状部81として構成されると共にその上側が六角形の板部82として構成されており、その軸本体44と係合軸部45は前記と同様の構成を有している。そして前記上の蝶番部12には、前記枢軸6の前記係合頭部79を嵌め入れるための段付き頭部装着孔77が貫設されており、該段付き頭部装着孔77は、前記円柱状部81を嵌め入れる円形孔85の上側に、軸線を共通にして、前記六角形の板部82を嵌め入れる六角形の係合孔部86が、段差面88を介して拡大するように連設されている。
【0072】
図23は、かかる構成を有する枢軸6を前記上の蝶番部12に取り付けた状態を示すものであり、前記係合頭部79が前記段付き頭部装着孔77に嵌め入れられた状態で、前記軸本体44が下方に突設されている。そして、前記六角形の板部82と前記六角形の係合孔部86との係合によって、図25に示すように、テンプルの回動方向で該テンプル3と該枢軸6とが一体化状態にある。このようにして上の蝶番部12に取り付けられた枢軸6は、図23に示すように、前記テンプル3の前端部分5としての上の蝶番部12に前記枢軸6が下方に向けて突出される一方、前記ヨロイ2の後端部分7としての下の蝶番部21に設けられた軸孔9に前記枢軸6が密接に挿通されており、該枢軸6の下端部分に嵌着された環状係合部10により該枢軸6が抜け止めされている。これによって、該ヨロイ2にテンプル3が開閉可能に枢着されている。その余の構成は前記実施例1に係る蝶番装置1と同様であり、それによってもたらされる作用、効果は実施例2における場合と同様である。
【0073】
図26は、該枢軸6の他の態様を示すものであり、係合頭部79が、上側に四角形の板部84を有するものとして構成されると共に、段付き頭部装着孔77は、四角形の係合孔部86を上側に有するものとして形成されている。
【0074】
このようにして段付き頭部装着孔77に枢軸6を挿通して蝶番装置1を構成する場合、前記係合頭部79の形態は、要は、該係合頭部79を該段付き頭部装着孔77に嵌め入れた状態で、両者の係合によってテンプル3の回動方向で該テンプル3と該枢軸6とが一体化状態となればよいのであり、該係合頭部79の上側が非円形の板部として形成されると共に、該段付き頭部装着孔77は、該非円形の係合頭部79と嵌合し得る非円形の係合孔部86を上側に有するものであればよいのである。
【0075】
かかる構成の蝶番装置1によるときは、テンプル3やヨロイ2に設けた段付き頭部装着孔77に該枢軸6を挿通すると共にその係合頭部79を該段付き頭部装着孔77に嵌め入れることによって、枢軸付きのテンプルやヨロイを簡易に構成できる。又、枢軸6が損傷した場合にその修理を行う際には、損傷した枢軸6をテンプル3やヨロイ2から容易に取り外すことができるため、その修理を簡易且つ能率的に行なうことができる。
【実施例6】
【0076】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0077】
(1) 図27(A)(B)は、軸孔9の下端に環状係合部10が設けられてなる蝶番装置1において前記収容凹部27が設けられておらず、円錐状部47がヨロイ2の下の蝶番部21の下面89から下方に突出する場合を示し(図27(A))、又は、テンプル3の下の蝶番部21の下面90から下方に突出する場合を示している(図27(B))。又、図28(A)(B)は、環状係止部材67を環状係止溝49に嵌着してなる蝶番装置1において、前記収容凹部27が設けられておらず、該環状係止部材67と円錐状部47とがヨロイ2の下の蝶番部21の下面91から下方に突出する場合を示し(図28(A))、又は、テンプル3の下の蝶番部21の下面92から下方に突出する場合を示している(図28(B))。
【0078】
(2) 前記環状係合部10の係合孔37に前記円錐状部47を通過させて該環状係合部10を前記環状係止溝49に嵌着状態となし得、又は、前記環状係止部材67の係止孔70に前記円錐状部47を通過させて該環状係止部材67を前記環状係止溝49に嵌着状態となし得るように各分割片43を弾性的に窄ませることができる限り、前記枢軸6は、複数の分割片に分割されたものとして構成できる。図29は、2つの分割片43,43に分割された枢軸6を示しており、図30は、3つの分割片43,43,43に分割された枢軸6を示している。
【0079】
(3) 前記枢軸6は、テンプル3の前端部分5やヨロイ2の後端部分7に、下方に向けて突出する如く設けられればよいのであり、前記の他、テンプルの前端部分やヨロイの後端部分と一体成型等によって設けられてもよい。
【0080】
(4) 内周面25が樹脂製とされてなる前記軸孔9は、前記のように、樹脂製の軸受パイプ29を圧入して構成されることの他、該テンプルの前端部分5や該ヨロイ2の後端部分7が例えばカーボン樹脂等の硬質樹脂を用いて形成される場合は、図31に示すように、その下の蝶番部21に直接形成された孔を以って形成されることもある。
【0081】
(5) 図32は上の蝶番部12と下の蝶番部21との間に、テンプルの回動動作をより円滑化するための環状滑り部材93を介在させた場合を示すものである。該環状滑り部材93はステンレスや羊白等の金属や、樹脂を以って構成できる。
【0082】
(6) 図33〜34は、前記枢軸取り外し装置58を構成する取り外し工具56の他の態様を示すものであり、これを、環状係止溝49と環状係合部39との係合状態を解除して前記枢軸6を取り外す場合に代表させて説明する。
【0083】
該取り外し工具56は、前記円錐状部47の円錐状の外周面46に、内周縁96で当接し得る、軸線が上下方向である円形孔としての凹部59が設けられている。かかる構成を有する取り外し工具56を用いて前記環状係合部39と前記環状係止溝49との係合状態を解除するには、図34(A)に示すように、該取り外し工具56の該凹部59に前記円錐状部47の下端側の部分60を嵌め入れる。これにより図34(C)に示すように、該下端側の部分60の外周面(円錐状面)46aが該凹部59の内周縁96に当接状態となる。その後、該取り外し工具56を前記枢軸6の軸線方向で上方向に押し込む。これにより該円錐状部47は、図34(A)に示すように、前記分割片43,43,43,43が弾性的に窄まることによって縮小した状態で前記凹部59に更に進入し、これにより図34(A)に示すように、前記環状係合部39と前記環状係止溝49との嵌着による係合状態が解除される寸前となし得る。
【0084】
本実施例においては図34(A)に示すように、前記円錐状部47の軸線方向の長さが比較的長く形成されており、該円錐状部47が、前記環状係合部39と前記環状係止溝49との嵌着による係合が解除された状態となるように弾性的に窄まった状態において、前記取り外し工具56の上端62と前記環状係合部39の下面63との間に押し込み余裕部65が形成されるように構成されている。従って、該環状係合部39と該環状係止溝49との係合が外れた後も、該取り外し工具56を、図34(B)に示すように更に押し込むことができる。これにより、前記円錐状部の上端部分66を、図34(B)に示すように、前記環状係合部39の前記係合孔37に存在させることができ、又は、該上端部分66を、前記軸孔9に存在させることができる。この状態にまでしてしまうと、工具56を取り外しても前記円錐状部47は窄まった状態を維持するので、前記軸孔9からの前記枢軸6の取り外しがより容易となる。
【0085】
なお、前記取り外し工具56の凹部59は、前記円錐状部47を嵌め入れて前記係合状態を解除できる限り、前記した円錐状の凹部や円形状の凹部には特定されず、その他の態様の凹部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る蝶番装置を応用して構成された眼鏡を示す部分斜視図である。
【図2】そのテンプルの開閉状態を説明する平面図である。
【図3】本発明に係る蝶番装置を示す断面図である。
【図4】その分解斜視図である。
【図5】テンプルと、これに突設される枢軸を示す斜視図である。
【図6】枢軸が突設されたテンプルを示す平面図と斜視図である。
【図7】上の蝶番部に突設した枢軸に軸受パイプを装着し、これを、下の蝶番部に設けた貫通孔に圧入する作業工程を説明する断面図である。
【図8】枢軸の下端部分に設けられた係合軸部を第2の蝶番部に設けた環状係合部に係合させる作業工程を説明する断面図である。
【図9】係合軸部と環状係合部との係合状態を解除する解除工程と、そのために用いる工具を説明する断面図と斜視図である。
【図10】その係合状態を解除する作業工程を説明する断面図である。
【図11】その係合状態が解除された状態を示す断面図である。
【図12】枢軸の下端部分に設けられた係合軸部を環状係止部材に係合させてなる蝶番装置を説明する断面図である。
【図13】その蝶番装置を説明する分解斜視図である。
【図14】第1の蝶番部に突設された枢軸に軸受パイプを装着して後、これを、第2の蝶番部に設けた貫通孔に圧入する作業工程を説明する断面図である。
【図15】その枢軸の下端部分に設けられた係合軸部を、第2の蝶番部に設けられた軸孔の下端から下方に突出させた状態を示す断面図である。
【図16】その係合軸部と環状係止部材とを係合させる作業工程を説明する断面図である。
【図17】その係合軸部と環状係止部材とが係合した状態を示す断面図である。
【図18】係合軸部と環状係止部材との係合状態を解除する作業工程と、それに用いる工具を説明する断面図と斜視図である。
【図19】係合軸部と環状係合部との係合状態を解除する作業工程を説明する断面図である。
【図20】係合軸部と環状係止部材との係合が解除された状態を示す断面図である。
【図21】ヨロイに設けた上の蝶番部に突設した枢軸を、テンプルに設けた軸孔に密接に挿通すると共に、係合軸部と環状係合部とを係合させてなる蝶番装置を説明する断面図である。
【図22】ヨロイに設けた上の蝶番部に突設した枢軸を、テンプルに設けた軸孔に密接に挿通すると共に、係合軸部と環状係止部材とを係合させてなる蝶番装置を示す断面図である。
【図23】上の蝶番部に設けた段付き頭部装着孔に、係合頭部付きの枢軸を上側から下方に向けて挿通することにより構成された枢軸付きテンプルを用いて構成された蝶番装置を説明する断面図である。
【図24】その分解斜視図である。
【図25】その蝶番装置を有する眼鏡のテンプルの開閉作用を説明する平面図である。
【図26】係合頭部付きの枢軸の他の態様を、段付き頭部装着孔を有するテンプルと共に示す斜視図である。
【図27】枢軸の下端部分に設けられた係合軸部下端の円錐状部が、下の蝶番部の下面の下方に突出し、且つ該係合軸部と環状係合部とが係合状態とされてなる蝶番装置を示す断面図である。
【図28】枢軸の下端部分に設けられた係合軸部下端の円錐状部が、下の蝶番部の下面の下方に突出し、且つ該係合軸部と環状係止部材とが係合状態とされてなる蝶番装置を示す断面図である。
【図29】枢軸の他の態様を示す斜視図である。
【図30】枢軸のその他の態様を示す斜視図である。
【図31】軸受パイプを用いないで構成された軸孔に枢軸を挿通して構成された蝶番装置を示す断面図である。
【図32】環状滑り部材を介在させてなる蝶番装置を示す断面図である。
【図33】枢軸取り外し装置の他の態様を説明する断面図と斜視図である。
【図34】その枢軸取り外し装置を用いて環状係合部と係合軸部との係合状態を解除する作業工程を説明する断面図である。
【図35】蝶番ネジを用いない従来の蝶番装置を説明する断面図である。
【図36】その蝶番装置の組立工程を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 蝶番装置
2 ヨロイ
3 テンプル
5 テンプルの前端部分
6 枢軸
7 ヨロイの後端部分
9 軸孔
10 環状係合部
12 上の蝶番部
23 貫通孔
29 軸受パイプ
36 軸孔
37 係合孔
40 頭部
42 割り溝
43 分割片
44 軸本体
45 係合軸部
47 円錐状部
49 環状係止溝
56 工具
58 枢軸取り外し装置
59 凹部
65 押し込み余裕部
67 環状係止部材
70 係止孔
79 係合頭部
82 六角形の板部
83 段付き頭部装着孔
93 環状滑り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨロイにテンプルを開閉可能に枢着してなる眼鏡の蝶番装置であって、該テンプルの前端部分及び該ヨロイの後端部分の一方部分に、下方に向けて突出し且つ少なくとも下端側の部分が、軸線方向の割り溝によって複数の分割片に分割されてなる金属製の枢軸が設けられており、該枢軸は、全長に亘って軸外径が等しい軸本体の下端に、その最大軸径が前記軸本体の軸外径に等しい係合軸部が設けられてなり、
該係合軸部の下端部分は、外周面が下方に向けて小径となる円錐面状に形成された円錐状部とされており、該係合軸部の、該円錐状部の上側に位置させて、周方向に環状を呈する環状係止溝が設けられており、
前記テンプルの前端部分及び前記ヨロイの後端部分の他方部分に設けられ且つ内周面が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔の下端に、該軸孔と同心で且つ該軸孔よりも小径の係合孔を有する環状係合部が前記他方部分に一体に設けられており、該軸孔の内周面に、前記軸本体の外周面が密接に挿通された状態となる如くなされており、且つ、前記環状係合部の係合孔に、前記各分割片を弾性的に窄ませて形成された縮小状態の円錐状部が、下方に向けて挿通された後に該分割片が弾性復元することによって、該環状係合部の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着されると共に、前記軸本体の外周面が前記軸孔の内周面に密接することを特徴とする眼鏡の蝶番装置。
【請求項2】
ヨロイにテンプルを開閉可能に枢着してなる眼鏡の蝶番装置であって、該テンプルの前端部分及び該ヨロイの後端部分の一方部分に、下方に向けて突出し且つ少なくとも下端側の部分が、軸線方向の割り溝によって複数の分割片に分割されてなる金属製の枢軸が設けられており、該枢軸は、全長に亘って軸外径が等しい軸本体の下端に、その最大軸径が前記軸本体の軸外径に等しい係合軸部が設けられてなり、
該係合軸部の下端部分は、外周面が下方に向けて小径となる円錐面状に形成された円錐状部とされており、該係合軸部の、該円錐状部の上側に位置させて、周方向に環状を呈する環状係止溝が設けられており、
前記テンプルの前端部分及び前記ヨロイの後端部分の他方部分に設けられ且つ内周面が樹脂製とされてなる上下端が開放した円形の軸孔の内周面に、前記軸本体の外周面が密接に挿通された状態となる如くなされており、且つ、前記係合軸部が該軸孔の下端から下方に突出される如くなされており、
前記環状係止溝に嵌着される、周方向に閉じた環状係止部材の係止孔に、前記各分割片を弾性的に窄ませて形成された縮小状態の円錐状部を挿通させることにより、該分割片が弾性復元することによって、該環状係止部材の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着される如くなされており、該嵌着状態で、前記軸本体の外周面が前記軸孔の内周面に密接するようになされると共に、該環状係止部材の外周縁部分が前記軸孔の下端周縁部分に当接し得る如くなされていることを特徴とする眼鏡の蝶番装置。
【請求項3】
前記環状係合部の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着により係合して前記円錐状部が該環状係合部の下方に突出した状態において、該円錐状部の下端側の部分は、凹部が設けられてなる取り外し工具の該凹部に嵌め入れ可能となされており、該円錐状部の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で該取り外し工具が、前記枢軸の軸線方向で上方向に押されることにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになされ、これにより、前記環状係合部と前記環状係止溝との係合状態が解除され、該縮小した円錐状部を該環状係合部から取り外し可能となされていることを特徴とする請求項1記載の眼鏡の蝶番装置。
【請求項4】
前記環状係止部材の内周縁部分が前記環状係止溝に嵌着により係合して前記円錐状部が該環状係止部材の下方に突出した状態において、該円錐状部の下端側の部分は、凹部が設けられてなる取り外し工具の該凹部に嵌め入れ可能となされており、該円錐状部の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で前記取り外し工具が、前記枢軸の軸線方向で上方向に押されることにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになされ、これにより、前記環状係止部材と前記環状係止溝との係合状態が解除され、該縮小した円錐状部を前記環状係止部材から取り外し可能となされていることを特徴とする請求項2記載の眼鏡の蝶番装置。
【請求項5】
前記一方部分に設けられている前記枢軸は、前記軸本体の上端に係合頭部が設けられると共に、前記他方部分には、該枢軸を挿通させる段付き頭部装着孔が設けられてなり、該係合頭部の下側は円柱状部として形成されると共に、上側が、該円柱状部の上端よりも拡大した非円形の板部として形成されており、一方、前記段付き頭部装着孔は、前記円柱状部を嵌め入れる円形孔の上端に、前記非円形の板部を嵌め入れる非円形の係合孔部が、段差面を介して拡大するように連設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の眼鏡の蝶番装置。
【請求項6】
前記円錐状部は、前記他方部分の下端部分に前記軸孔と同心に凹設された収容凹部に収容されることを特徴とする請求項1又は2記載の眼鏡の蝶番装置。
【請求項7】
請求項1記載の眼鏡の蝶番装置と、前記円錐状部を嵌め入れるための凹部が設けられた取り外し工具とからなる眼鏡用の枢軸取り外し装置であって、
該取り外し工具は、前記環状係合部が前記環状係止溝に嵌着により係合して該環状係合部の下方に突出した状態にある円錐状部を嵌め入れることができる凹部が設けられると共に、該円錐状部の下端側の部分を該凹部の上端側の部分に、該下端側の部分の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で嵌め入れることができるようになされており、このように嵌め入れた状態で該取り外し工具を、前記枢軸の軸線方向で上方向に押すことにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになされており、又、前記係合が解除された状態で、該取り外し工具の上端と前記環状係合部の下面との間に押し込み余裕部が設けられており、該押し込み余裕部の範囲で該取り外し工具を更に押し込むことにより、前記円錐状部の上端部分を前記環状係合部の前記係合孔の内部に存在させることができ、又は、該上端部分を前記軸孔の内部に存在させ得ることを特徴とする眼鏡用の枢軸取り外し装置。
【請求項8】
請求項2記載の眼鏡の蝶番装置と、前記円錐状部を嵌め入れるための凹部が設けられた取り外し工具とからなる眼鏡用の枢軸取り外し装置であって、
該取り外し工具は、前記環状係止部材が前記環状係止溝に嵌着により係合して該環状係止部材の下方に突出した状態にある円錐状部を嵌め入れることができる凹部が設けられると共に、該円錐状部の下端側の部分を該凹部の上端側の部分に、該下端側の部分の外周面が該凹部の内周面又は内周縁に当接した状態で嵌め入れることができるようになされており、このように嵌め入れた状態で該取り外し工具を、前記枢軸の軸線方向で上方向に押すことにより、該円錐状部が、弾性的に縮小しながら該凹部に更に進入できるようになされており、又、前記係合が解除された状態で、該取り外し工具の上端と前記環状係止部材の下面との間に押し込み余裕部が設けられており、該押し込み余裕部の範囲で該取り外し工具を更に押し込むことにより、前記円錐状部の上端部分を前記環状係止部材の前記係止孔の内部に存在させることができ、又は、該上端部分を前記軸孔の内部に存在させ得ることを特徴とする眼鏡用の枢軸取り外し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2009−294489(P2009−294489A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148817(P2008−148817)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(597072420)株式会社アイプラス (3)
【Fターム(参考)】