説明

眼鏡レンズの保持構造

【目的】 レンズにビス用の穴を明けたりすることなく眼鏡レンズを確実に保持することができ、また有効視野を向上させる。
【構成】 眼鏡レンズ3を熱可遡性材料によって形成する。鼻側リム4に突起部15を突設し、この突起部15を眼鏡レンズ3の縁面に埋め込む。同じくテンプル側リム9に突起部18を突設し、この突起部18を眼鏡レンズ3の縁面に埋め込む。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は眼鏡レンズの保持構造、特に縁無しタイプの眼鏡に適用して好適な眼鏡レンズの保持構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、視野の広さや軽量性の利点等から縁無しタイプの眼鏡が注目されている。このような縁無し眼鏡としては、ナイロールと呼ばれるレンズ下部周囲をナイロン糸で吊るタイプと、ツーポイントまたはスリーピースと呼ばれるレンズに小孔をあけてビスで止めるタイプの2種類がある。前者の保持構造は、レンズ上部周囲を金属で構成し、下部はレンズ周囲に溝を形成してナイロン糸をこの溝にはめ込み、両端をレンズ上部の金属部に繋いでレンズを吊る構成を採っている。後者の保持構造は、レンズの左右周縁部寄りに小孔を明け、この小孔を利用してレンズをブリッジ、智、レンズ止め具等のレンズ保持部材にビス止めしている(例:実開平4−63419号公報、特開昭63−6521号公報参照)。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のナイロールを用いた眼鏡レンズの保持構造では、眼鏡レンズを玉摺りする際には周囲を平になるように玉型形状に削った後、レンズ周囲全周にわたって溝を彫らなければならかった。その場合、コバ厚の薄いレンズでは溝を彫る際に熟練を要したり、また溝内面とレンズ外面との板厚が薄くなり、眼鏡を落とした際に欠けたりすることがあった。
一方、ツーポイントまたはスリーピース方式の眼鏡レンズの保持構造は、レンズ面に穴を明けることが必要であり、レンズへの穴明けの際に、穴の出口周囲が欠けるとレンズとしての商品価値が半減し、また欠けなくてもドリリングによってマイクロクラックが生じると、このマイクロクラックは眼鏡の装用時に成長してレンズを破損にいたらしめるという問題があった。さらに小孔をレンズが割れない位置に形成しなければならないことから、小孔をレンズの周縁から離して形成すると、この小孔やその保持部が視野を妨げるという問題もあった。
【0004】
したがって、本考案は上記したような従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、レンズにビス用の穴を明けたりすることなくレンズを確実に保持することができ、また有効視野に優れ、製作が容易な縁無しタイプの眼鏡レンズの保持構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため第1の本考案は、眼鏡レンズを熱可遡性材料によって形成し、この眼鏡レンズを保持するレンズ保持部材の眼鏡レンズと接触する面に突起部を設けてなり、この突起部は前記眼鏡レンズ内に埋設されているものである。
第2の考案は、上記第1の考案において、レンズ保持部材の突起部は眼鏡レンズの縁面に埋設されているものである。
【0006】
【作用】
本考案において、レンズ保持部材は突起部が眼鏡レンズに埋設されることで眼鏡レンズを保持する。眼鏡レンズは熱可遡性材料によって形成されているので、熱硬化性材料と異なり所定温度以上に加熱されると、被加熱部が軟化、溶融し、冷却すると再び硬化する。このことから、加熱軟化部に突起部の埋め込みを可能にする。突起部は眼鏡レンズの縁面に埋設されることで、視野を妨げない。
【0007】
【実施例】
以下、本考案を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本考案に係る眼鏡レンズの保持構造の一実施例を示す斜視図、図2はブリッジ部の正面図、図3はブリッジ、鼻側リムおよびパッドの分解斜視図、図4は眼鏡レンズの保持構造を示す断面図、図5は智とテンプル側リムの分解斜視図である。これらの図において、全体を符号1で示す眼鏡フレームは、ブリッジ2によって互いに連結され左右の眼鏡レンズ3,3をそれぞれ保持する左右一対の鼻側リム4と、各鼻側リム4の下端部にぞれぞれ取付けられた左右一対のパッド5,5と、前端がそれぞれ左右の智6,6に蝶番7を介して左右方向に開閉自在に連結された左右一対のテンプル8,8と、各智6に連結されレンズ3のテンプル側端部を保持する左右一対のテンプル側リム9,9等を備え、縁無し眼鏡フレームを構成している。
【0008】
前記眼鏡レンズ3は、ガラス、プラスチック等の熱可遡性材料によって製作されている。熱可遡性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセチルセルロース樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。特に、アクリル系素材(MMA−−メチルメタアクリレートを主成分とする)を用いて製作すると、透明性、比重に優れ、また射出成形されたものは耐衝撃性に優れているため、レンズ3の周縁が欠け易い縁無し眼鏡レンズに非常に有利である。
ガラスとしては一般の無機ガラスが用いられる。
【0009】
前記鼻側リム4は、正面視略逆L字型に屈曲形成されることにより眼鏡レンズ3の鼻側上隅角部の縁面(コバ面)を保持するもので、眼鏡レンズ3の上側縁面3a(図2参照)に沿って智6方向に延在する水平部4aと、眼鏡レンズ3の内側(鼻側)縁面3bに沿って下方に延在する垂直部4bとで構成されている。鼻側リム4の長さとしては20mm〜30mm程度とされる。鼻側リム4の裏側下端部にはパッド足10(図3参照)の上端がろう付け等によって接続されており、このパッド足10の下端に一体的に設けたパッド箱11に前記パッド5のパッド箱芯12がビス(図示せず)によって傾動自在に連結されている。さらに、鼻側リム4の眼鏡レンズ3の内側縁面3bと密接する面には突起部15が一体に突設されており、この突起部15は前記眼鏡レンズ3の内側縁面3bから埋め込まれ、これにより眼鏡レンズ3を保持している。
【0010】
突起部15の埋め込みに際しては、眼鏡レンズ3の内側縁面に突起部15を当接させて突起部15を抵抗加熱、高周波加熱等適宜な加熱方法によって加熱することにより埋設部を加熱軟化させる。そして、このレンズの軟化部分に加熱した突起部15を押し込み、しかる後冷却、硬化させればよい。また、この突起部15を超音波振動させて突起部15とレンズ面との摩擦熱によって埋め込むことも可能であり、突起部15を押し込む方法は特に限定されない。押し込む時期としては、熱可遡性材料の種類によっても異なるが、通常は加熱箇所が軟化すれば押し込むことが可能である。
突起部15の形状としては平板状等種々の形状とすることができるが、図4に示すように逆台形状等の抜け難い形状とすることが望ましい。
埋め込み箇所としては特に限定されないが、鼻側リム4を取り付けた場合、視野が十分確保できるという点で内側縁面3bが好ましい。
突起部15を押し込むことにより溶けた樹脂(またはガラス)が外にはみ出して眼鏡レンズの外観を損なうことが予測される場合は、予め押し込み箇所と略同体積かやや小さい凹部を形成しておくとよい。この場合には凹部の形成によるマイクロクラックの残存を防ぐため凹部位置は突起部15を押し込む位置に形成することが望ましい。
鼻側リム4の材質としては、TiまたはTi合金、鉄系合金、洋白、モネル、ハイニッケル、ステンレス等のニッケル合金、またはブロンズ等の銅合金が用いられる。
【0011】
前記智6は、前記鼻側リム4と同一金属材料、またはポリアミド、PAS、PES等の樹脂によって平面視L字状に折曲形成され、前端には前記テンプル側リム9が一体的に設けられ、後端部内側面には前記蝶番7を構成する一対の蝶番片16(図5参照)が一体に突設されている。また、蝶番片16の中央にはビスが挿通されるビス孔17が形成されている。
【0012】
前記テンプル側リム9は、眼鏡レンズ3とフレーム1との接合部であり、変形強度に耐える剛性を有するものが求められるが、本実施例においては、ハイニッケル材(ニッケル85%、クロム10%、その他銅)を使用し、上下方向に長い板状体に形成され、前記智6の内側面にろう付け等によって一体的に接合されている。また、テンプル側リム9の内側面、すなわち眼鏡レンズ3の外側縁面3cと密接する面には板状の突起部18が一体に突設されており、この突起部18は前記眼鏡レンズ3の外側縁面3cに埋め込まれ、これにより眼鏡レンズ3を保持している。このような突起部18は上記した鼻側リム4の突起部15と全く同様にして埋め込まれる。
【0013】
このように本願考案においてはレンズ保持部材を構成する鼻側リム4およびテンプル側リム9に突起部15,18をそれぞれ突設し、これらの突起部15,18を眼鏡レンズ3の縁面に埋め込むように構成したので、構造が簡単でレンズ自体にビス穴を明けたりする必要がなく、したがって、穴明けによる欠け、マイクロクラックによる破損等を解消することができる。また、突起部15,18は眼鏡レンズ3の流動温度で押し込まれるため、レンズの他の部分が歪を起こす心配がなく、押し込んだ後冷却すると収縮固化し、突起部15,18と結合するため、これら突起部15,18がレンズから抜けたりするおそれがない。また、レンズ面の汚れを拭き取る際にツーポイントやスリーピースではビスの部分が邪魔になり、ビス周囲を綺麗に拭き取ることは困難であったが、本考案においてはレンズの表裏面を遮るものは何もないので、綺麗に拭き取ることができる。
【0014】
図6は本考案の他の実施例を示す斜視図である。この実施例は眼鏡レンズ3の上側縁面に眉20を密接し、この眉20の下面に突設した一対の突起部21を前記眼鏡レンズ3の上側縁面に埋め込んだものである。その他の構成は上記実施例と同様である。
このような構成においても上記実施例と同様な効果が得られる。
【0015】
なお、本考案は鼻側リム4、テンプル側リム9および眉20に突起部15,18,21をそれぞれ突設した場合について示したが、これらのうちの少なくともいずれか一つにのみ突起部を突設してレンズに埋め込み、残りのものをビス止めするようにしてもよい。
またレンズ保持部材としては鼻側リム4、テンプル側リム9および眉20に何等限定されるものでははなく、例えばテンプル側リム9を用いず智6を直接眼鏡レンズ3に固定する場合は、智6自体がレンズ保持部材を形成することは言うまでもない。
さらにまた、本実施例は鼻側リム4、テンプル側リム9に突起部をそれぞれ1つずつ設けたが、眉20と同様必要に応じて複数個設けることが可能である。
【0016】
【考案の効果】
以上説明したように本考案に係る眼鏡レンズの保持構造によれば、レンズ保持部材に突起部を突設し、この突起部を眼鏡レンズに埋め込むように構成したので、構造簡易にしてレンズにビス用の穴を明けることなくレンズを安定かつ確実に保持することができる。また、突起部を眼鏡レンズの縁面に埋め込むと、視野の妨げとならず、特に近方視使用頻度が高い累進レンズや多焦点レンズに実施して好適である。また、レンズを熱可遡性材料で形成しているので、加熱軟化させることで突起部の埋め込みが容易であるなど、その実用的効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る眼鏡レンズの保持構造の一実施例を示す斜視図である。
【図2】ブリッジ部の正面図である。
【図3】ブリッジ、鼻側リムおよびパッドの分解斜視図である。
【図4】眼鏡レンズの保持構造を示す断面図である。
【図5】智とテンプル側リムの分解斜視図である。
【図6】本考案の他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 眼鏡フレーム
2 ブリッジ
3 眼鏡レンズ
4 鼻側リム
5 パッド
6 智
7 蝶番
8 テンプル
9 テンプル側リム
15 突起部
18 突起部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 眼鏡レンズを熱可遡性材料によって形成し、この眼鏡レンズを保持するレンズ保持部材の眼鏡レンズと接触する面に突起部を設けてなり、この突起部は前記眼鏡レンズ内に埋設されていることを特徴とする眼鏡レンズの保持構造。
【請求項2】 請求項1記載の眼鏡レンズの保持構造において、レンズ保持部材の突起部は眼鏡レンズの縁面に埋設されていることを特徴とする眼鏡レンズの保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】実開平6−60825
【公開日】平成6年(1994)8月23日
【考案の名称】眼鏡レンズの保持構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願平5−6032
【出願日】平成5年(1993)1月29日
【出願人】(000113263)ホーヤ株式会社 (3,820)