説明

眼鏡用モダン

【課題】 ツルの軸芯を中心とする回転が一切起こらず、ツルから抜けてしまうこともなく、しかも適切な装着感が得られる眼鏡用モダンを提供する。
【解決手段】 柔軟性部材1の一端に硬質性部材2aを、柔軟性部材1の他端に硬質性部材2bをそれぞれ一体に形成したものとしている。さらに、柔軟性部材1の一端に硬質性部材2aを、柔軟性部材1の他端に硬質性部材2bをそれぞれ一体に形成し、硬質性部材2aおよび柔軟性部材1を貫通し、硬質性部材2bに到るツルTの挿入穴3を設けたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼鏡フレームのツルの先端部側に設けられる眼鏡用モダンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の眼鏡用モダンには、一般的に硬質の合成樹脂から形成されたものが存在する。
【0003】
このような眼鏡用モダンは、眼鏡フレームのツルの先端部側に取り付けると、ツルの軸芯を中心とする回転が起こったり、抜けるというようなことはなく、安定した取付状態を維持できるという利点を有する。
【0004】
また、この種の眼鏡用モダンには、柔軟性を有する合成樹脂、例えば図10に示したような、モダン11全体が柔軟な塩化ビニルまたは柔軟なアイオノマー樹脂から形成されたものが存在する(特許文献1)。
【0005】
このような眼鏡用モダンは、使用者の側頭部や耳の付け根部分への当たりが柔らかく、眼鏡のフィット性を向上させうるとしている。また、従来のシリコン樹脂からなるものにおける汗等の水分の吸収がなく、従ってこれらの吸収に起因して眼鏡がずり落ちやすくなるなどの欠点を解消できるとしている。
【特許文献1】登録実用新案第3007012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の一般的な眼鏡用モダンは、硬質の合成樹脂から形成されているため、使用者の側頭部や耳の付け根部分への当たりが硬く、装着感が悪いという問題点を有していた。さらに、このような眼鏡用モダンは、表面が滑りやすく、耳からずり落ちやすいという問題点を有していた。
【0007】
また、上記図10に示したような眼鏡用モダンは、眼鏡フレームのツルの先端部側に差し込むと、柔軟な素材のみから形成されているため、ツルの軸芯を中心とする回転が起こり、適切なフィット感が得られないという問題点を有していた。さらに、このような眼鏡用モダンは、適切なフィット感が得られないばかりか、場合によってはツルから抜けてしまうことがあるという問題点を有していた。
【0008】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、ツルの軸芯を中心とする回転が一切起こらず、ツルから抜けてしまうこともなく、しかも適切な装着感が得られる眼鏡用モダンを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の一端に硬質性部材2aを、柔軟性部材1の他端に硬質性部材2bをそれぞれ一体に形成したものとしている。
【0010】
さらに、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の一端に硬質性部材2aを、柔軟性部材1の他端に硬質性部材2bをそれぞれ一体に形成し、硬質性部材2aおよび柔軟性部材1を貫通し、硬質性部材2bに到るツルTの挿入穴3を設けたものとしている。
【0011】
そして、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の長さを、硬質性部材2aと硬質性部材2bを加えた長さより長くしたものとしている。
【0012】
また、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の表面の摩擦係数を大きくしたものとしている。
【0013】
さらに、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の硬度がJISタイプAデュロメータ硬さ90度以下であるものとし、硬質性部材2a、2bの硬度がJISタイプDデュロメータ硬さ50度以上であるものとしている。
【0014】
また、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1をエラストマー系樹脂からなるものとしている。
【0015】
さらに、この発明の眼鏡用モダンは、挿入穴3の内面に抜け防止手段3aを設けるか、またはツルTの外面に抜け防止手段Taを設けたものとしている。
【0016】
また、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の前半と後半の任意部位における挿入穴3のそれぞれの縦断面形状、硬質性部材2aの任意部位における挿入穴3の縦断面形状、硬質性部材2bの任意部位における挿入穴3の縦断面形状をそれぞれ角形とし、その挿入穴3に挿入するツルTの前記部位における縦断面形状を挿入穴3の断面形状の合致する角形としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の眼鏡用モダンは、以上に述べたように構成されているため、ツルの軸芯を中心とする回転が一切起こらず、ツルから抜けてしまうこともなく、しかも適切な装着感が得られるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の眼鏡用モダンを実施するための最良の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は、この発明のモダンを装着した眼鏡を示しており、左右のレンズR、Rの鼻側上端部を連結するブリッジBと、前記レンズR、Rの鼻側中央部にそれぞれ取り付けられたパッドP、Pと、前記レンズR、Rのテンプル側上端部にそれぞれ取り付けられたツルT、Tとから構成されている。そして、前記ツルTの先端部側には、この発明のモダンMが装着されている。なお、図示したものは、左右のレンズR、Rにそれぞれ縁F、Fを設けたものとしているが、縁F、Fのない縁無し眼鏡としてもよい。
【0020】
前記モダンMは、モダン成形時にツルTの先端部側に成形するなどして装着されるものとしており、柔軟性部材1の一端に硬質性部材2aを、柔軟性部材1の他端に硬質性部材2bをそれぞれ一体に形成したものとしている。
【0021】
また、前記モダンMは、モダン成形後にツルTの先端部側に挿入することにより、装着されるものとしており、柔軟性部材1の一端に硬質性部材2aを、柔軟性部材1の他端に硬質性部材2bをそれぞれ一体に形成し、硬質性部材2aおよび柔軟性部材1を貫通し、硬質性部材2bに到るツルTの挿入穴3を設けたものとしている。
【0022】
前記柔軟性部材1と硬質性部材2a、2bとを一体に形成するには、例えば、柔軟性部材1の端部に硬質性部材2a、2bをインサート成形して固定することことができる。この場合、図4に示したように、柔軟性部材1の端部が硬質性部材2a、2bの端部に差し込まれるようにしたり、図5に示したように、柔軟性部材1の端部に硬質性部材2a、2bの端部が差し込まれるようにすることができる。このようにすると、柔軟性部材1と硬質性部材2a、2bとの接触面積が増え、密着度が向上するものとなる。なお、硬質性部材2bの後端部は、成形時に閉鎖されたものとするか、埋め物によって閉鎖されたものとしている。
【0023】
そして、前記モダンMは、柔軟性部材1の長さを、硬質性部材2aと硬質性部材2bを加えた長さより長くしたものとしている。すなわち、前記硬質性部材2aと硬質性部材2bの長さを略同一長とし、柔軟性部材1の長さを、硬質性部材2aと硬質性部材2bを加えた長さの約3倍にするのが好ましい。図に示したものでは、柔軟性部材1の長さを70〜75mm程度とし、硬質性部材2aを12〜14mm程度とし、硬質性部材2bを9〜11mm程度としている。このようにすることにより、使用者の側頭部や耳の付け根部分に柔軟性部材1が当たるようにすれば、装着感が良くなる。
【0024】
さらに、前記モダンMは、柔軟性部材1としてエラストマー系の樹脂からなるものとしている。具体的に用いられる樹脂としては、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。エラストマー系の樹脂の他には、ゴム系材料とすることもできる。また、硬質性部材2a、2bとしては、硬質の各種合成樹脂からなるものとしている。具体的に用いられる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。なお、柔軟性部材1をポリスチレン系エラストマーとし、硬質性部材2a、2bをポリプロピレン樹脂とすると、密着性のよい組み合わせとなり好ましい。
【0025】
さらに、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の硬度がJISタイプAデュロメータ硬さ(以下、デュロAという)90度以下であるものとし、硬質性部材2a、2bの硬度がJISタイプDデュロメータ硬さ(以下、デュロDという)50度以上であるものとしている。柔軟性部材1の硬度がデュロA90度以上であると、柔軟性に欠け装着感が劣るものとなる。柔軟性部材1の硬度は、デュロA30〜70度にするのが最も優れた装着感が得られ好ましいものとなる。硬質性部材2a、2bの硬度がデュロD50度以下であると、硬度が低くツルTの軸芯を中心とする硬質性部材2a、2bの回転が起こることがある。
【0026】
また、この発明の眼鏡用モダンは、挿入穴3の内面に抜け防止手段3aを設けたり、ツルTの外面に抜け防止手段Taを設けたものとすることができる。これら抜け防止手段3aおよび抜け防止手段Taは、モダンMとツルTの密着性を良くしたり摩擦力を大きくして、モダンMがツルTからより抜けにくくしている。抜け防止手段3aは、図示したように、硬質性部材2aに位置する挿入穴3の内面に形成した鋸歯形状の刻み目などとすることができる。また、抜け防止手段Taは、ツルTの外面に摩擦力の大きい合成樹脂を塗布したものとしたり、図示したように、ツルTの外面に形成した鋸歯形状の刻み目などとすることができる。抜け防止手段は、挿入穴3またはツルTの一方に設けても、双方に設けてもよい。図示したものでは、挿入穴3に設けた抜け防止手段3aの鋸歯形状の刻み目と、ツルTに設けた抜け防止手段Taの鋸歯形状の刻み目が噛み合って、抜け防止をより強固なものとしている。
【0027】
さらに、この発明の眼鏡用モダンは、柔軟性部材1の前半と後半の任意部位における挿入穴3のそれぞれの縦断面形状、硬質性部材2aの任意部位における挿入穴3の縦断面形状、硬質性部材2bの任意部位における挿入穴3の縦断面形状をそれぞれ三角や四角などの角形とし、その挿入穴3に挿入するツルTの前記部位における縦断面形状を挿入穴3の断面形状の合致する三角や四角などの角形としている。例えば、図6〜9に示したように、図2中のA−A線断面、B−B線断面、C−C線断面、D−D線断面における挿入穴3およびツルTの縦断面形状をそれぞれ四角としている。これは、ツルTとモダンMの密着性を高めて、ツルTの軸芯を中心とするモダンMの回転をより防止するためである。
【0028】
また、前記柔軟性部材1の表面は、凹凸面としたり、梨地などとして、摩擦係数を大きくして、使用者の側頭部や耳の付け根部分からの滑り止め効果を有したものとすることができる。図に示したものでは、柔軟性部材1の幅方向に一定間隔をおいて複数本の溝4を設けて、柔軟性部材1の表面を凹凸面としている。
【0029】
以上のように構成されたこの発明に眼鏡用モダンは、前記柔軟性部材1の部位は、滑り止めの機能を果たし、硬質性部材2a、2bの部位は、ツルTの軸芯を中心とする回転と、ツルTからの抜けを防止する機能を果たしている。従って、眼鏡がスポーツ用サングラスである場合などには、ハードな動きの中でも、モダンMのフィット感を損ねることなく、本来持つべきフィット感を維持することができるともに、モダンMがツルTの軸芯を中心として回転せず、ツルTから抜けてしまうことのないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明のモダンを装着した眼鏡を示す斜視図である。
【図2】この発明のモダンを装着した眼鏡のツルの側面図である。
【図3】この発明のモダンを装着する前の眼鏡のツルの側面図である。
【図4】この発明のモダンの一実施形態を示す長さ方向断面図である。
【図5】この発明のモダンの他の実施形態を示す長さ方向断面図である。
【図6】図2中のA−A線による断面図である。
【図7】図2中のB−B線による断面図である。
【図8】図2中のC−C線による断面図である。
【図9】図2中のD−D線による断面図である。
【図10】従来のモダンを眼鏡のツル装着している状態の側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 柔軟性部材
2a 硬質性部材
2b 硬質性部材
3 挿入穴
3a 凹凸部
T ツル
Ta 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性部材(1)の一端に硬質性部材(2a)を、柔軟性部材(1)の他端に硬質性部材(2b)をそれぞれ一体に形成したことを特徴とする眼鏡用モダン。
【請求項2】
柔軟性部材(1)の一端に硬質性部材(2a)を、柔軟性部材(1)の他端に硬質性部材(2b)をそれぞれ一体に形成し、硬質性部材(2a)および柔軟性部材(1)を貫通し、硬質性部材(2b)に到るツル(T)の挿入穴(3)を設けたことを特徴とする眼鏡用モダン。
【請求項3】
前記柔軟性部材(1)の長さを、硬質性部材(2a)と硬質性部材(2b)を加えた長さより長くしたことを特徴とする請求項1または2記載の眼鏡用モダン。
【請求項4】
前記柔軟性部材(1)の表面の摩擦係数を大きくしたことを特徴とする請求項1または2記載の眼鏡用モダン。
【請求項5】
前記柔軟性部材(1)の硬度がJISタイプAデュロメータ硬さ90度以下であるものとし、硬質性部材(2a、2b)の硬度がJISタイプDデュロメータ硬さ50度以上であるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の眼鏡用モダン。
【請求項6】
前記柔軟性部材(1)をエラストマー系樹脂からなるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の眼鏡用モダン。
【請求項7】
前記挿入穴(3)の内面に抜け防止手段(3a)を設けるか、または前記ツル(T)の外面に抜け防止手段(Ta)を設けたことを特徴とする請求項2記載の眼鏡用モダン。
【請求項8】
前記柔軟性部材(1)の前半と後半の任意部位における挿入穴(3)のそれぞれの縦断面形状、硬質性部材(2a)の任意部位における挿入穴(3)の縦断面形状、硬質性部材(2b)の任意部位における挿入穴(3)の縦断面形状をそれぞれ角形とし、その挿入穴(3)に挿入するツル(T)の前記部位における縦断面形状を挿入穴(3)の断面形状の合致する角形としたことを特徴とする請求項2記載の眼鏡用モダン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−184490(P2006−184490A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377164(P2004−377164)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)