説明

着火器

【課題】大人にとって操作しやすく、子供にとっては解除し難い安全機構を備えた着火器を提供すること。
【解決手段】炎を噴出するノズル部2と、燃料を導入する燃料導入部3aと、導入された燃料を着火する着火部7と、を有し、着火部は、着火器の本体の一側に配置される着火操作部5が着火位置まで移動することによって着火する構成となっており、着火操作部の着火位置への移動を規制する規制部15b及び許可するための許可部15cを有する移動規制部15が前記着火操作部6に対して配置され、移動規制部は、移動することによって、規制部又は許可部を着火操作部の移動方向に対応して配置可能な構成となっており、移動規制部の移動を操作する移動規制部操作部は、着火器の本体の一側の反対方向の本体に配置されている着火器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから炎を噴出させる着火器、特に、安全を確保するための安全機構を備えた着火器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、着火器、例えばトーチバーナーは、ガスを収容しているガスカセットに装着される。このような、トーチバーナーは、内部にガスカセット内のガスを取り込む構成となっており、その取り込んだガスに対して、圧電材等を使用して火花放電を浴びせ、ガスを着火させ、その炎をノズルから噴出させる構成となっている。
この火花放電は、トーチバーナーに配置されているトリガーといわれる可動片を、使用者が指で操作することで簡単に発生する構成となっている。
このため、使用者は、トーチバーナーをガスカセットに装着し、トーチバーナー内にガスを導入させた状態で、トーチバーナーを握り、その握った手の指でトリガーを操作するだけで極めて簡単に着火させることができため、とても使い勝手の良い着火器となっていた。
【0003】
しかし、このようなトーチバーナーを大人が使用する場合は、使い易くて良いが、子供が使用する場合は、簡単にノズルから炎が噴出するため危険となるおそれがある。
そこで、従来より、子供が簡単にトリガーを操作できないような安全装置をトーチバーナー等に配置する提案がなされている(例えば、引用文献1)。
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第6840759号(図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際は、子供は、このような安全装置を、簡単に解除してしまうため、子供では、解除し難い安全装置が求められていた。勿論、安全装置の構造を異常に複雑にすれば、子供にとって解除し難い安全装置となるが、これでは、大人にとっても解除し難くなり、トーチバーナーの使い勝手が悪くなるという問題がある。
そこで、大人にとっての使い勝手の良さを維持しつつ、子供にとって解除し難い安全装置の開発が問題となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、大人にとって操作しやすく、子供にとっては解除し難い安全機構を備えた着火器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明によれば、炎を噴出するノズル部と、燃料を導入する燃料導入部と、導入された燃料を着火する着火部と、を有する着火器であって、前記着火部は、前記着火器の本体の一側に配置される着火操作部が着火位置まで移動することによって着火する構成となっており、前記着火操作部の着火位置への移動を規制する規制部及び許可するための許可部を有する移動規制部が前記着火操作部に対して配置され、前記移動規制部は、移動することによって、前記規制部又は前記許可部を前記着火操作部の移動方向に対応して配置可能な構成となっており、前記移動規制部の移動を操作する移動規制部操作部は、前記着火器の本体の一側の反対方向の本体に配置されていることを特徴とする着火器により達成される。
【0007】
前記構成によれば、着火操作部の着火位置への移動を規制する規制部及び許可するための許可部を有する移動規制部が着火操作部に対して配置され、移動規制部は、移動することによって、規制部又は許可部を前記着火操作部の移動方向に対応して配置可能な構成となっており、移動規制部の移動を操作する移動規制部操作部は、着火器の本体の一側の反対方向の本体に配置されている。
このため、着火器の利用者は、着火操作部を着火位置に移動させるために、移動規制部を移動させ、その許可部を着火操作部に合わせる必要がある。
そして、この移動規制部を移動させるには、移動規制操作部を操作する必要があるという構成になっている。
この移動規制操作部は、着火器の本体のうち、着火操作部が位置する一側と反対側に配置されている。したがって、着火器を操作する利用者は、本体の相互に反対側に配置されている、移動規制操作部と着火操作部を同時に操作する必要が生じる構成となっている。
このような動作は、片手で行うことは困難であるため勢い、利用者は両手で係る動作をする必要が生じる。これは、子供にとって極めて困難な動作を強いることになるため、子供にとって解除し難い安全機構となる。
一方、大人にとっては、両手を使用すれば操作可能であるので、使い勝手の良さは維持されることになる。
【0008】
好ましくは、前記移動規制部の前記許可部及び前記規制部は、前記移動規制部の移動方向に対応して配置されると共に、前記許可部は、前記規制部に挟まれるように配置され、前記許可部と前記規制部との境界部には、前記許可部と前記規制部との間における前記着火操作部の移動を規制する規制部側ストッパー部が形成されていることを特徴とする着火器である。
【0009】
前記構成によれば、移動規制部の許可部及び規制部は、移動規制部の移動方向に対応して配置されているので、利用者は、移動規制部を移動することで、着火操作部を移動規制部の許可部又は規制部に選択的に配置させることができ、使い易い構成となっている。
また、前記構成によれば、許可部は、規制部に挟まれるように配置され、許可部と規制部との境界部には、許可部と規制部との間における着火操作部の移動を規制する規制部側ストッパー部が形成されている。このため、着火操作部を規制部に配置した状態で、そのまま移動規制部を移動させても、着火操作部は、規制部側ストッパー部で、その移動を阻止され、許可部に配置されない構成となっている。
したがって、正しく着火操作部の位置を移動規制部の許可部の位置に合わせないと、着火操作部が、着火位置まで移動できないので、子供にとっては、より操作し難い安全機構となっている。
【0010】
好ましくは、前記移動規制部は、前記着火操作部が前記許可部を介して着火位置まで移動した際、前記着火操作部がその着火位置に留めるための維持部を有し、前記維持部は、前記移動規制部の前記移動方向に沿って、前記許可部に隣接又は近接して形成されていることを特徴とする着火器である。
【0011】
前記構成によれば、移動規制部は、着火操作部が許可部を介して着火位置まで移動した際、着火操作部がその着火位置に留めるための維持部を有している。このため、利用者は、着火操作部を維持部に配置させれば、着火操作部を操作し続けなくても、着火状態を維持させることができる。
また、維持部は、移動規制部の移動方向に沿って、許可部に隣接又は近接して形成されているので、利用者は、移動規制部の移動によって、着火操作部を許可部から維持部に容易に移動配置することが可能な構成となっている。
【0012】
好ましくは、前記着火操作部が前記維持部を押圧する方向に、前記着火操作部に付勢力を与える着火操作付勢部を備え、前記許可部と前記維持部との境界部には、前記許可部と前記維持部との間における前記着火操作部の移動を規制する維持部側ストッパー部が形成されていることを特徴とする着火器により達成される。
【0013】
前記構成によれば、着火操作部が維持部を押圧する方向に、着火操作部に付勢力を与える着火操作付勢部を備えているので、この付勢力により、着火操作部は維持部の領域に確実に維持される。
また、許可部と維持部との境界部には、許可部と維持部との間における着火操作部の移動を規制する維持部側ストッパー部が形成されているので、着火操作部が、誤って維持部から外れるのを確実に防止することができる。
【0014】
好ましくは、前記着火操作部の着火位置へ近接する移動によって、燃料が前記着火部に導入され、前記着火操作部の着火位置から離間する移動によって、燃料の前記着火部への導入が阻止される構成となっており、前記移動規制部は、移動規制付勢部を有し、前記移動規制部が、前記維持部から前記許可部に向う方向に沿って移動するように付勢力が働く構成となっており、前記許可部は、前記着火操作部が、前記移動規制部からの離間位置から前記着火位置まで移動をすることを許可する開口部であり、前記維持部側ストッパー部が、前記離間位置から前記着火位置側に向かう方向に突出する突起部であることを特徴とする着火器である。
【0015】
前記構成によれば、着火操作部の着火位置へ近接する移動によって、燃料が着火部に導入され、着火操作部の着火位置から離間する移動によって、燃料の着火部への導入が阻止される構成となっており、移動規制部は、移動規制付勢部を有し、移動規制部が、維持部から許可部に向う方向に沿って移動するように付勢力が働く構成となっており、許可部は、着火操作部が、移動規制部からの離間位置から前記着火位置まで移動をすることを許可する開口部であり、維持部側ストッパー部が、離間位置から着火位置側に向かう方向に突出する突起部である。
このため、着火操作部は、相対的に、維持部から許可部に向かって移動するよう付勢力が加わる構成となっている。
使用者が、着火操作付勢部の付勢力に抗して、着火操作部を離間位置から着火位置側に向かう方向に移動させると、着火操作部が、突起部を乗り越える。そのとき、移動規制部は、移動規制付勢部によって、維持部から許可部に向かう方向に沿って移動し、これにより、着火操作部は、維持部から開口部側へ移動し、開口部を介して非着火位置に移動され、着火部への燃料の導入が阻止され、自動消火される。
したがって、使用者が着火操作部を操作するだけで、着火状態から消火状態に速やかに、容易且つ安全に移行することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、大人にとって操作しやすく、子供にとっては解除し難い安全機構を備えた着火器を提供することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
図1は、本発明の着火器である例えば、トーチバーナー1を示す概略斜視図である。図1に示すように、トーチバーナー1は、炎を噴出するノズル部である例えば、ステンレス等の金属製のノズル2と、トーチバーナー本体3を有している。
トーチバーナー本体3の下方には、図示しない燃料である例えば、ガスを収容したカセットを取り付けるための燃料導入部である例えば、カセット取り付け口3aが形成されている。
すなわち、トーチバーナー本体3はこのカセット取り付け口3aにガスを収容したカセットを取り付けることで、そのガスをトーチバーナー本体3内に導入させることができる構成となっている。
また、図1に示すように、トーチバーナー本体3には、カセットからトーチバーナー3内に導入されるガス量を調節するためのガス調節用つまみ4が備わっている。また、トーチバーナー本体3には、トーチバーナー本体3内へのガスの導入を許可すると共に、導入されたガスに着火する着火部を動作させる着火操作部である例えば、トリガー5も有している。
さらに、後述する移動規制部操作部である例えば、セーフティーレバー6も有している。
図2は、図1のトーチバーナー1の概略左側面図であり、図2に示すように、セーフティーレバー6は、横長の楕円形状となっており、利用者が操作し易い形状となっている。
【0019】
図3は、図1のトーチバーナー1の背面側において、樹脂製の表面カバーを外した状態を示す概略図である。
図3に示すように、トーチバーナー本体3の内部には、その内部にガスが導入される機構本体3bが配置されている。また、機構本体3bのノズル2側には、着火部本体7aが配置されている。この着火部本体7aには、電極が配置され、その間に火花放電が生じ、この火花によりガスが着火され、炎がノズル2から噴出する構成となっている。
また、この着火本体7aの火花放電は、図3の着火スイッチ7b内の圧電体をたたくことによって発生する。具体的には、図1のトリガー5が、図3の矢印A方向動くことで、スイッチ先端部7cを押し、これにより、着火スイッチ7b内の圧電体をたたき、着火部本体7aに火花放電が生じる構成となっている。
これら着火部本体7a、着火スイッチ7b及びスイッチ先端部7c等により着火部7が構成されている。そして、トリガー5がスイッチ先端部7cを押し、着火スイッチ7b内の圧電体をたたく位置が、着火位置の一例となっている。
【0020】
次に、トーチバーナー1のトーチバーナー本体3内におけるガスの流れとその制御機構について説明する。
図4は、図3の機構本体3b内の主な構成を示す概略図であって、図5は、図4の矢印Bで示す部分を示す概略拡大図である。
図4及び図5は、ガス調節つまみ4が閉状態で、カセットから導入されたガスがノズル2側に流れない状態を示している。以下、詳細に説明する。
図4に示すように、機構本体3bには、トリガー5に当接し、図4の矢印A方向にトリガー5によって押圧される第1のチェックピン8を有している。この第1のチェックピン8の図の右側には、ダイアフラム9が配置され、その右側には、第2のチェックピン10が配置されている。この第2のチェックピン10は、図示するように、横向きに配置した略T字型をしている。
また、この第2のチェックピン10には、図4及び図5に示すように、オー(O)リング11が配置されていると共に、この第2のチェックピン10の右側にはスプリング12が配置されている。
【0021】
このため、図5の矢印Cに沿ってカセットからガスがトーチバーナー1内に導入されても、ガスはオーリング11と第2のチェックピン10とによって、その通路を閉塞され、ガスはノズル2側に導入されない構成となっている。
【0022】
一方、図4及び図5に示すように、ガス調節つまみ4には、スピンドル13が接続され、ガス調節つまみ4の回動によって、スピンドル13が、図5の矢印D方向に移動する構成となっている。
すなわち、ガス調節つまみ4を閉方向に回すと、スピンドル13は図5の左下方向に移動し、ガス通路14を閉塞する方向に移動する。
したがって、図4及び図5の状態では、カセットからのガスは、完全に遮断された状態となっている。
【0023】
図6は、図5のガス調節つまみ4を開方向に回した状態を示す概略拡大図である。図6では、スピンドル13は、ガス調節つまみ4の回転に連動して、図6の矢印Dに沿って、図6の右上方向に移動する。このため、図6に示すようにガス通路14は開放され、ノズル2側と連通されている。
しかし、第2のチェックピン10とオーリング11の位置は、図5と同様であるため、カセットのガスはノズル2側に導入されない。
【0024】
図7は、スピンドル13が図6と同様の位置で、第1のチェックピン8がトリガー5で押圧された状態を示す概略図である。
図7に示す第1のチェックピン8は、図4のトリガー5で矢印A方向に押圧され、これがため、その右側にあるダイアフラム9を、右側に撓むように変形させている。これにより、第2のチェックピン10も右側に押され、その押圧力がスプリング12の付勢力を超えると、第2のチェックピン10は、矢印A方向に移動する。
すると、第2のチェックピン10とオーリング11の間に隙間が生じ、カセットのガスは、矢印Cに沿って、ガス通路14側に導入される。図7の状態では、上述のように、ガス通路14は、ノズル2側と連通状態にあるため、ガス通路14に導入されたガスは、そのまま、ノズル2側に導入されることになる。
【0025】
このように、本実施の形態のトーチバーナー1では、ガスをノズル2側に導入するには、単に、ガス調節つまみ4を開放するだけではなく、トリガー5を操作する必要があるため、安全性に配慮した構成となっている。
また、ノズル2側に導入されるガス量は、ガス調節つまみ4を回し、その開き程度(図7のスピンドルの位置)を変えることで調節する構成となっている。
【0026】
次に、トーチバーナー1の安全機構について説明する。
図8は、本実施の形態のトーチバーナー1の安全機構の主な構成を示す概略図である。図8には、図4に示すトリガー5と図1等に示すセーフティーレバー6及び、このセーフティーレバー6と連接されている移動規制部である例えば、安全具15が示されている。
この安全具15は、図8に示すように、中央部に開口を有する略円盤状を成し、この略円盤状の部分には、中央部の開口と外部とを連通する溝部が形成されている。
また、図8のトリガー5の下端部には、図4にも示されているガイド部5aが形成されている。このガイド部5aが、着火操作部の一例となっている。
図9は、図8のセーフティーレバー6、安全具15及びガイド部5aを示す概略平面図である。
本実施の形態のトーチバーナー1では、この安全具15が、図4のトリガー5と機構本体3bの中間に配置される。このため、図4のトリガー5は、安全具15を介して、第1のチェックピン8に当接する構成となっている。
つまり、安全具15によって、トリガー5が不必要に第1チェックピン8に当接し、押圧することを防ぐことができる構成となっている。
【0027】
以下、安全具15の構成について、詳細に説明する。安全具15には、図8及び図9に示すように、ガイド部5aの通過を可能にする許可部(開口部)である例えば、溝部15cが形成され、その両側には、ガイド部5aの通過を阻止する規制部15bが形成されている。
このため、利用者が、図4のトリガー5を矢印A方向に移動させるように操作しても、そのガイド部5aが溝部15cを通らなければ、図4の第1のチェックピン8を押圧することができない構成となっている。
また、トーチバーナー1の初期設定では、図9に示すように、トリガー5のガイド部5aが、安全具15の規制部15bに対応した位置に配置されている。したがって、安全具15を動かさない状態では、トリガー5は安全具15に阻止され、第1のチェックピン8を動作させることができない構成となっている。
【0028】
安全具15には、図9に示すように、移動規制付勢部である例えば、バネ15aが備わっており、このバネ15aにより安全具15は、図9の矢印E方向に付勢力が加わる構成となっている。
したがって、安全具15は、利用者がセーフティーレバー6を操作し、バネ15aの付勢力に抗して、図9の矢印Fの方向に回転させることで、矢印Fの方向に回転し、一方、利用者が、セーフティーレバー6を離せば、そのバネ15aの付勢力で元の位置に戻る構成となっている。
すなわち、利用者がセーフティーレバー6を図9の矢印F方向に動かし、ガイド部5aに対応する位置に溝部15cが配置されることで、初めてガイド部5aが溝部15bを介して、安全具15を通過し、図4の第1のチェックピン8に到達することができる構成となっている。
このように、安全具15は、回転移動することで規制部15b又は溝部15cをガイド部5aの移動方向(図9の矢印A方向)に対応して配置可能な構成となっている。
【0029】
また、図9に示すように、安全具15の規制部15b及び溝部15cは、ガイド部5aの移動方向(図9の矢印方向)に対応して配置され、上述のように、溝部15cは2つの規制部15b、15bに挟まれるように配置される。
そして、この溝部15cと規制部15b、15bとの境界部である例えば、規制部15b、15bの溝部15c側端部には、それぞれ規制部側ストッパー部である例えば、規制部側ストッパー15d、15dが突状に形成されている。
【0030】
また、図8及び図9に示すように、安全具15の溝部15cを挟んで右側の規制部15bの内周側(中央部側)には、図8及び図9に示すように、維持部15eが形成されている。この維持部15eは、溝部15cを介して中央部側に入り込み、図4の第1のチェックピン8を押圧する着火位置に配置されたガイド部5a(すなわち、トリガー5)が、その位置のまま維持するための部分である。
この維持部15eは、安全具15の移動方向(矢印F及びEで示す方向)に沿って溝部15cと隣接して配置されているため、安全具15の回転により、ガイド部5aを容易に維持部15eに配置させることができる構成となっている。
【0031】
また、図3に示すように、第1のチェックピン16には、チェックピン用バネ16が配置されている。このチェックピン用バネ16は、図4に示すように、トリガー5が第1のチェックピン8を押圧する際、トリガー5を図4の矢印Aの反対方向(チェックピン8から離間する方向)に移動させるよう付勢力が生じるようになっている。
このチェックピン用バネ16が、着火操作付勢部の一例である。
このため、図9の維持部15eにガイド部5aが配置された状態では、ガイド部5aは、このチェックピン用バネ16で、維持部15eに押しつけられる構成となり、安定的に維持部15eに配置され、着火位置を保持することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、さらに、維持部15eと溝部15cとの境界部である例えば、維持部15eの溝部15c側には、維持部側ストッパー15fが形成されている。この維持部側ストッパー15fは、ガイド部5aが、安全具15からの離間位置から着火位置に向かう方向(中央部へ向かう方向)に沿って突出して形成される突起部の一例となっている。
これにより、ガイド部5aは、維持部15eから脱落することなく、より確実に維持部15eに押しつけられる構成となっている。
【0033】
また、維持部15eに押しつけられた状態のガイド部5aは、利用者がトリガー5を操作して、ガイド部5aを維持部側ストッパー15fの高さを超えるまで移動させると、安全具15に加わっているトリガー5の押圧力がなくなる。このため、安全具15は、バネ15aの付勢力により、図9の矢印E方向に回転を開始する。すると、ガイド部5aは、相対的にその位置を変え、図9の溝部15cに連接している当接部15gに当接する。すると、ガイド部5aは、図3のチェックピン用バネ16の付勢力により、溝部15cに沿って着火位置から外される構成となっている。
【0034】
また、本実施の形態のトーチバーナー1のトリガー5は、図3及び図4に示すように、図3の矢印A方向に移動することで、第1のチェックピン8と着火部7のスイッチ先端部7cを共に押圧する構成となっている。
このため、トリガー5の矢印A方向への移動という単一の動作で、第1のチェックピン8を押し、トーチバーナー1内にガスの導入を行い、同時に、スイッチ先端部7cの押圧で着火させることができる構成となっている。
一方、逆にトリガー5が、第1のチェックピン8やスイッチ先端部7cから離間されると、図5のスプリング12の付勢力で第2のチェックピン10等が元の位置に戻り、トーチバーナー1内へのガスの導入が阻止され、トーチバーナー1の炎の噴射が停止することになる。
【0035】
したがって、上述のように、ガイド部5aが、図3のチェックピン用バネ16の付勢力により、溝部15cに沿って外側に移動されると、トーチバーナー1は、自動的に消火される構成となっている。
【0036】
トーチバーナー1の安全機構は、以上のような構成となっているが、以下その安全機構の動作を詳細に説明する。
先ず、安全機構を解除して、トーチバーナー1に着火させる動作を説明する。
利用者は、図1に示すようなトーチバーナー1の利用者がガス調節つまみ4を回し、スピンドル13を図6等に示す開状態とする。その後、図1のセーフティーレバー6を、バネ15aの付勢力に抗して、図9の矢印F方向にスライド移動させる。すると、図9の安全具15の溝部15cが、トリガー5のガイド部5aの移動方向(矢印A方向)に対応した位置に配置される。
この状態で、利用者がトリガー5のガイド部5aを矢印A方向に移動させると、図10に示すように、ガイド部5aは、溝部15cを通過し、その後、トリガー5が、図3の第1のチェックピン8及びスイッチ先端部7cを押圧し、トーチバーナー1に着火することとなる。図10は、安全機構を解除した状態を示すトーチバーナー1の要部の概略図である。
このとき、ガイド部5aは溝部15cに連接して配置されている当接部15gに当接した状態となるため、利用者がセーフティーレバー6から手等を離しても、バネ15aの付勢力で安全具15が、矢印E方向に回転して、元の位置に戻ることを阻止することができ、利用者にとって使い易い構成となっている。
【0037】
これに対して、利用者がセーフティーレバー6をスライド移動させない状態で、トリガー5を図4の矢印A方向に移動させた場合は、図11の状態となる。
図11は、安全具15の安全機構が動作している状態を示す概略図である。
図11に示すように、この場合は、ガイド部5aは、安全具15の規制部15bに当接し、その移動が阻止させるため、トリガー5の移動も停止し、図3に示す第1のチェックピン8及びスイッチ先端部7cを押圧することがなく、トーチバーナー1が着火すること がない。
このように、本実施の形態では、利用者が、付勢力が働いている安全具15の付勢力に抗しながら、安全具15をスライド移動させ、安全機構が解除されるポイントの位置で、安全具15の回転を停止させ、この状態で、トリガー5を動作させなければ、安全機構は解除されず、トーチバーナー1を着火させることはできない。
【0038】
さらに、安全具15をスライド移動させるセーフティーレバー6とトリガー5は、図1に示すようにトーチバーナー本体3の正反対に配置されている。すなわち、トリガー5の正反対の位置にセーフティーレバー6が配置されている。
このため、このようにトーチバーナー本体3の正反対に配置されるトリガー5と、付勢力の加わっているセーフティーレバー6とを同時に操作し、且つ、セーフティーレバー6は、特定の位置に合わせる必要がある。
したがって、利用者は、これらの操作を片手で行うことは困難であり、両手で操作する必要がある。
これは、子供にとっては極めて困難な動作を強いるので、子供にとって解除し難い安全機構となる。
一方、大人にとっては、両手であれば操作し易いので、使い勝手の良さは維持されることになる。
【0039】
また、本実施の形態のトーチバーナー1では、図11の状態で、安全機構を解除しようとし、トリガー5を引きながら、セーフティーレバー6をスライド移動させようとしても、ガイド部5aは、規制部側ストッパー15dによって移動を阻止され、安全機構を解除できない。
このように、本実施の形態では、セーフティーレバー6を操作して、安全具15を特定の位置に正確に配置しなければならず、一旦、誤った位置に配置した場合は、安全機構を解除できない構成となっているので、安全性が極めて高い機構となっている。
【0040】
図12は、安全具15の安全機構が動作している状態を示す他の概略図である。
図12は、図11と同じく、安全具15の溝部15cの位置を、ガイド部5aの位置に対応して配置できなかった例であり、図12は、図11と異なり、溝部15cの反対側(図11及び図12では右側)の規制部15bに、ガイド部5aが当接した例を示すものである。
この場合も、ガイド部5aが規制部15bに阻止されて、安全機構が解除されないと共に、トリガー5を引きながらでは、ガイド部5aが規制部側ストッパー15dに当接して、安全機構を解除できない構成となっている。
【0041】
図13は、図10に示すように、着火位置に配置されるガイド部5aを、その着火位置の状態で維持させる状態を示す概略図である。
具体的には、図10の着火位置にガイド部5aを配置した状態で、利用者がセーフティーレバー6をスライド移動させ、安全具15を矢印F方向に移動させる。
すると、ガイド部5aは、維持部側ストッパー15fを越えて維持部15eに配置される。この状態で、利用者がトリガー5の操作を止め指等を離すと、ガイド部5aは、図3のチェック用バネ16の付勢力により、維持部15eに押し付けられる。
また、利用者が、セーフテーレバー6から手等を離して、安全具15は、図13の矢印E方向にバネ15aの付勢力で戻ろうとしても、ガイド部5aは、維持部側ストッパー15fに当接し、その移動が阻止され、トーチバーナー1は、着火位置の状態を維持することができ、利用者にとって使い易いトーチバーナー1となる。
【0042】
図14は、トーチバーナー1の自動消火の動作等を示す概略図である。図14の矢印Gは、ガイド部5aの移動軌跡を示すものである。具体的には、先ず、図13の維持部15eに、ガイド部5aが配置されている状態で、利用者が、トーチバーナー1の使用を終了しようとする場合は、利用者は、先ず、トリガー5を矢印A方向に引く、すると、維持部15eに配置されていたガイド部5aは、安全具15の中央部側に移動し、やがて、維持部側ストッパー15fを越える位置に達する。すると、安全具15のバネ15aの付勢力により、安全具15が矢印E方向に移動し、ガイド部5aは、溝部15cに連接されている当接部15gに当接する。この状態で、利用者がトリガー5から手等を離すと、ガイド部5aは、図3のチェックピン用バネ16の付勢力で、溝部15cに沿って、矢印Aと反対方向に移動する。これにより、トリガー5は図4の第1のチェックピン8を押圧する位置(着火位置)から外れるため、ノズル2側へのガスの供給が阻害され、自動消火することになる。
なお、ガイド部5aは、図14に示すように、安全具15の矢印E方向に移動により、規制部15bに配置されることになる。
【0043】
このように、本実施の形態のトーチバーナー1では、利用者がトーチバーナー1の使用後、トリガー5を、指等で一度引き、その後、離すだけで、速やか且つ安全に自動消火をすることができる構成となっている。
【0044】
以上のように、本実施の形態のトーチバーナー1では、トーチバーナー本体3の一側に配置され、バネ15aで付勢されているセーフティーレバー6を操作し、安全具15を特定の位置に配置すると共に、それと正反対側に配置されているトリガー5を同時に操作する必要があるため、子供では操作し難く、極めて安全性が高い機構となっている。
本実施の形態に係るトーチバーナー1については、アメリカ合衆国消費者製品安全委員会が定めたバーナー等の安全基準である「16C.F.R.Part1210」に基づき「テスト」を実施したところ、その基準を満たすことが判明した。
以下に、そのテスト項目、被験者数、テスト結果等の概要を示す。
テスト結果としては、5分間のテスト時間では、子供100人中、全ての子供が、本実施の形態に係るトーチバーナーの着火に成功せず、テスト開始後、7分10秒で初めて1名の子供がトーチバーナーの着火に成功したため、99パーセントの子供が着火に成功しないという結果となった。
具体的には、以下のように、6個のライターの各々について16人乃至18人の子供をサンプルに着火テストを行った。
ライター 子供の人数 着火の成否
1 17名 否
2 18名 否
3 17名 否
4 16名 否
5 16名 成功(1名)
6 16名 否
100名(合計) 1名(成功者)
なお、上記の表のテストに参加した子供の内訳は以下のとおりである。
年齢 男子 女子 合計
42ヶ月乃至44ヶ月 19名 11名 30名
45ヶ月乃至48ヶ月 26名 14名 40名
49ヶ月乃至51ヶ月 19名 11名 30名
合計 64名 36名 100名
このように、本実施の形態にかかるトーチバーナー1は、アメリカ合衆国消費者製品安全委員会が定めたバーナー等の安全基準である「16C.F.R.Part1210」に基づく「テスト」でも、99パーセントの子供が着火操作できないことが明らかとなり、これは、極めて安全性が高いことが証明されたことになる。
また、一方、大人にとっての操作性は維持されているため、大人にとっては使い易いトーチバーナー1ともなっている。
【0045】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。また、上記実施形態の各構成は、その一部を省略し、または、任意に組み合わせることができる
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の着火器である例えば、トーチバーナーを示す概略斜視図である。
【図2】図1のトーチバーナーの概略左側面図である。
【図3】図1のトーチバーナーの背面側において、樹脂製の表面カバーを外した状態を示す概略図である。
【図4】図3の機構本体内の主な構成を示す概略図である。
【図5】図4の矢印Bで示す部分を示す概略拡大図である。
【図6】図5のガス調節つまみを開方向に回した状態を示す概略拡大図である。
【図7】スピンドルが図6と同様の位置で、第1のチェックピンがトリガーで押圧された状態を示す概略図である。
【図8】本実施の形態のトーチバーナーの安全機構の主な構成を示す概略図である。
【図9】図8のセーフティーレバー、安全具及びガイド部を示す概略平面図である。
【図10】安全機構を解除した状態を示すトーチバーナーの要部の概略図である。
【図11】安全具の安全機構が動作している状態を示す概略図である。
【図12】安全具の安全機構が動作している状態を示す他の概略図である。
【図13】着火位置に配置されるガイド部を、その着火位置の状態で維持させる状態を示す概略図である。
【図14】図1のトーチバーナーの自動消火の動作等を示す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・トーチバーナー、2・・・ノズル、3・・・トーチバーナー本体、3a・・・カセット取り付け口、3b・・・機構本体、4・・・ガス調節つまみ、5・・・トリガー、5a・・・ガイド部、6・・・セーフティーレバー、7・・・着火部、7a・・・着火部本体、7b・・・着火スイッチ、7c・・・スイッチ先端部、8・・・第1のチェックピン、9・・・ダイアフラム、10・・・第2のチェックピン、11・・・オー(O)リング、12・・・スプリング、13・・・スピンドル、14・・・ガス通路、15・・・安全具、15a・・・バネ、15b・・・規制部、15c・・溝部、15d・・・規制部側ストッパー、15e・・・維持部、15f・・・維持部側ストッパー、15g・・・当接部、16・・・チェックピン用バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎を噴出するノズル部と、
燃料を導入する燃料導入部と、
導入された燃料を着火する着火部と、を有する着火器であって、
前記着火部は、前記着火器の本体の一側に配置される着火操作部が着火位置まで移動することによって着火する構成となっており、
前記着火操作部の着火位置への移動を規制する規制部及び許可するための許可部を有する移動規制部が前記着火操作部に対して配置され、
前記移動規制部は、移動することによって、前記規制部又は前記許可部を前記着火操作部の移動方向に対応して配置可能な構成となっており、
前記移動規制部の移動を操作する移動規制部操作部は、前記着火器の本体の一側の反対方向の本体に配置されていることを特徴とする着火器。
【請求項2】
前記移動規制部の前記許可部及び前記規制部は、前記移動規制部の移動方向に対応して配置されると共に、前記許可部は、前記規制部に挟まれるように配置され、前記許可部と前記規制部との境界部には、前記許可部と前記規制部との間における前記着火操作部の移動を規制する規制部側ストッパー部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の着火器。
【請求項3】
前記移動規制部は、前記着火操作部が前記許可部を介して着火位置まで移動した際、前記着火操作部がその着火位置に留めるための維持部を有し、
前記維持部は、前記移動規制部の前記移動方向に沿って、前記許可部に隣接又は近接して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着火器。
【請求項4】
前記着火操作部が前記維持部を押圧する方向に、前記着火操作部に付勢力を与える着火操作付勢部を備え、
前記許可部と前記維持部との境界部には、前記許可部と前記維持部との間における前記着火操作部の移動を規制する維持部側ストッパー部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の着火器。
【請求項5】
前記着火操作部の着火位置へ近接する移動によって、燃料が前記着火部に導入され、前記着火操作部の着火位置から離間する移動によって、燃料の前記着火部への導入が阻止される構成となっており、
前記移動規制部は、移動規制付勢部を有し、前記移動規制部が、前記維持部から前記許可部に向う方向に沿って移動するように付勢力が働く構成となっており、
前記許可部は、前記着火操作部が、前記移動規制部からの離間位置から前記着火位置まで移動をすることを許可する開口部であり、
前記維持部側ストッパー部が、前記離間位置から前記着火位置側に向かう方向に突出する突起部であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の着火器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−25526(P2010−25526A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191219(P2008−191219)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)