説明

着用物品

【課題】着用物品を装着した後においても、すそ回りから股下にかけての良好な締め付けバランスと防漏性とが持続可能な着用物品を提供する。
【解決手段】腹側部F、背側部R、及び該両部の間の股下部Cに画成され、着用状態でウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを構成し、液不透過性シート2とこれに積層する外層シート3とを有してなる着用物品であって、前記外層シート3と前記液不透過性シート2との間に実質的に液体を吸収しない多数の粒子6を少なくとも前記股下部Cに広がる所定領域に配置させた着用物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開型使い捨ておむつ、パンツ型使い捨ておむつ、おむつカバーなど、着用時にウエスト開口部と一対のレッグ開口部を構成する着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
展開型使い捨ておむつ、パンツ型使い捨ておむつ、おむつカバーなどの着用物品においては、着用時のズレや汚物漏れを防いで良好な装着を実現するために、立体ギャザー用弾性部材やレッグギャザー用弾性部材が左右のレッグ開口部の周縁に沿った形で配されるものがある。やや特殊なものではあるが、特に長時間装着される要介護者用のおむつとして、吸収体内部に固定された吸収性ポリマーが吸液によってゲル化膨張しポリマービーズが固定化された層を形成するものが開示されている(特許文献1参照)。これは、特に吸収体に体液が吸収された状態で長時間装着した場合において、人肌と吸収体との間における体圧のかかる方向をビーズの膨張と球体形状により分散し、それによる床ずれの防止効果を奏するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−183159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装着後においては、おむつには様々な力が外側から加わる。特に、乳幼児をおんぶしたり抱っこしたりする場面では、専用のおんぶ紐を股下から腹側及び背側へと沿わせて固定するが、この場合乳幼児の体重が股下の紐の部分に集中しやすく、おむつの股下部が圧迫されてしまう。また、ベビーカーやチャイルドシートに乳幼児を載せる場面でも、ベルトを股下から腹側へと渡して固定するため、このベルトの部分でおむつが圧迫される。本発明者らは、このような場面で乳幼児の股下から腹側ないし背側にかかる部分が局部的に強く圧迫されて特に太腿周りのフィット性が失われやすいという点に着目した。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、着用物品を装着し、特におんぶ紐や抱っこベルト、シートベルトといった締め付け具を使用した際にも、すそ回りから股下にかけての圧迫感を緩和し、かつ股下におけるすそ回りからの排泄物の漏れに対する高い防漏性を発揮する着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、腹側部、背側部、及び該両部の間の股下部に画成され、着用状態でウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを構成し、液不透過性シートとこれに積層する外層シートとを有してなる着用物品であって、前記外層シートと前記液不透過性シートとの間に実質的に液体を吸収しない多数の粒子を少なくとも前記股下部に広がる所定領域に配置させた着用物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の着用物品は、着用時において、とりわけおんぶ紐や抱っこベルト、シートベルトといった締め付け具を使用した際にも、すそ回りから股下にかけての圧迫感を緩和し、かつ股下からの排泄物の漏れに対して高い防漏性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の着用物品における一実施形態としての乳幼児用の展開型使い捨ておむつを模式的に示す一部切欠展開平面図である。
【図2】図1のII−II線断面の拡大断面図である。
【図3】本実施形態のおむつを乳幼児に着用させて抱っこ紐をかけた状態を模式的に示した斜視図である。
【図4】本実施形態のおむつを着用させたときの股下部における圧迫状態を説明するための模式化した説明図である。
【図5】本実施形態における袋状部の平面形状の変形例1を模式的に示す展開平面図である。
【図6】本実施形態における袋状部の平面形状の変形例2を模式的に示す展開平面図である。
【図7】本実施形態における袋状部の平面形状の変形例3を模式的に示す展開平面図である。
【図8】本実施形態における袋状部の平面形状の変形例4を模式的に示す展開平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の着用物品における一実施形態としての乳幼児用の展開型使い捨ておむつを示す一部切欠展開平面図である。なお、本実施形態のおむつはウエスト開口部の近傍にウエスト弾性部材を有しているが、図1においてはこのウエスト弾性部材は省略している。図2は、図1のII−II線断面の拡大断面図である。
【0010】
本実施形態の展開型使い捨ておむつ10は、図1に示すとおり、腹側部Fと背側部Rと該両部の間に位置する股下部Cとからなり、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、液不透過性シート2、及び外層シート3、さらに前記表面シート1と液不透過性シート2との間に介在される吸収体4を具備する。前記表面シート1にはその左右両側において、長手方向の長さに一致する一対のサイドシート5,5が立体ギャザーをなす部分の弾性部材8の部分を非接合として残し、全面的に接合されている。このようにして積層されたおむつ10の全体の展開形状は、図1に示すような実質的に縦長の砂時計形状、すなわち、その長手方向の両端部(腹側部F、背側部R)が幅広にされ、股下部Cが括れる形状とされている。
【0011】
前記液不透過性シート2と外層シート3との間には、少なくとも前記股下部Cに広がる所定の領域に、実質的に液体を吸収しない粒子6が厚みをもって多数充填された袋状部Tが形成されている。前記袋状部Tにおいては前記粒子6を接着せず、その内部の粒子6の液不透過性シート2及び外層シート3とから独立した移動性によって、外側からの圧迫に対する適度な柔軟性を有する。これにより、後述のとおり、おむつの外側からの局部的な圧迫力に対し、その緩和作用と排泄物の漏れに対する防止作用とを奏する。なお、粒子6における「実質的に非吸収性」とは、液体及び湿気を完全に吸収しない場合のみならず、前記粒子6の移動性を妨げない程度の低吸収性、特におむつの外側からの力によっても移動性を妨げない程度の低吸収性を包含する意味である。
【0012】
この実施形態における使い捨ておむつ10は、着用時は背側部Rを着用者の背側に配し、さらに股下部Cが股間に沿うようにわたし、前側部Fを着用者の下腹部にあて装着し、着用時の形状でウエスト開口部をなす端縁Woと一対のレッグ開口部をなす端縁Loとを構成する。この着用時に立体的となるおむつ10の股下部Cのフィット性と防漏性を実現するため、サイドシート5に一対の起立性防漏カフをなす糸状ないし細紐状の立体ギャザー形成用の弾性帯8を備えている。また足の付け根のあたりを適度に締め付けて漏れを防止する目的でサイドシート5と液不透過性シート2との間にレッグギャザー形成用の弾性部材9を備えている。図1のサイドシート5は防漏カフの自由端縁位置mを有し着用状態でこの位置が着用者の肌面に向け突出するように起立する。他方、防漏カフの基端位置(図示しないがおおむね表面シートの左右両側端縁に一致する位置)からおむつ幅方向側縁にかけてサイドシート5と表面シート1ないし液不透過性シート2が接合しており、前記基端位置は吸収体4の左右側縁とレッグギャザー形成用の糸状ないし細紐状の弾性部材9との間に位置する。
【0013】
本実施形態のおむつ10において、前記袋状部Tは、図1に示すとおり、平面視において、幅方向(X方向)の袋状部左右端縁kと長手方向(Y方向)の袋状部上下端縁kとで囲まれた縦長の長方形状である。この袋状部Tは、平面視において吸収体4の股下部Cにあたる部分を含みかつ該吸収体4が配設された部分を越えさらに広い範囲である。袋状部Tの左右端をなす袋状部左右端縁kは、外層シート3と液不透過性シート2との接合部の端縁であり、そこからおむつの左右両側縁外方に向け両シートが接合されている。袋状部Tの上下端をなす袋状部上下端縁kも同様であり、そこからおむつの上下方向外方に向けて液不透過性シート2及び外層シート3が接合されている。このように両シートを所定の領域で接合する方法は特に限定されず定法により作製することができる。本実施形態においては、この袋状部Tは、前記袋状部上下端縁k及び袋状部左右端縁k以外では外層シート3と液不透過性シート2とが接合されない袋状とされ、そこに多数の粒子6が移動可能に封入されている。この多数の粒子6の移動性によって柔軟性のあるやわらかな当たりの袋状部Tが形成される。
【0014】
図2は、図1のII−II線断面の拡大断面図である。本実施形態において、幅方向を前記袋状部左右端縁k,k間で袋状とされた袋状部Tは、吸収体4より非肌当接面側に配置され、自然な状態で内部の多数の粒子により股下部Cの中央部分に厚み方向に厚みtを有する形状である。この袋状部Tの形状は、前記粒子6の移動性によって適度な柔らかさを持って外側からの圧迫に対して変形可能である。例えば、矢印dの圧迫が加わると、そこに配置されている粒子6の一部が押されて周辺へ移動し(矢印d)、前記厚みtが幅方向の各部で変化しつつ他の位置に移動する。
【0015】
このように配置された前記粒子6は、まず、外層シートの外側からの圧迫力に対し、その力を吸収、分散させ、吸収体4や身体への力の集中的な伝搬を軽減する作用を有する。本実施形態において、例えば、おむつ10を着用した乳幼児90の股下に抱っこ紐80を這わせて持ち上げると、乳幼児の全体重がおむつ10の股下部Cにかかってしまう。しかし、本実施形態のおむつ10においては、粒子6が多数集まって厚みを持つので、これによって前記の圧迫力を面で吸収するため、その衝撃は和らぐ。その結果、乳幼児の股下、臀部、下腹部を圧迫しすぎず、その部分でのうっ血や肌トラブルを軽減することができる。また、乳幼児が勢い良く床にお尻から座り込んだ場合においても、同様に該粒子6がその衝撃を吸収、分散させて痛さを和らげることができる。
【0016】
さらに、本実施形態においては、前記粒子6が、外側からの圧迫力を吸収するとともに、該粒子6の表面が追従してその部分から全体としてその周囲へと盛り上がるように移動する。この粒子6の移動は、液不透過性シート2と外層シート3とを変形し、身体の起伏に沿ってピッタリとフィットする効果が得られる。
例えば、図3の示すとおり、乳幼児が抱き上げられて抱っこの状態になると、その体重に反して抱っこ紐80の引っ張り上げる力が作用する。特に股下部Cにおいて、背側方向では臀裂部にくい込むようにして引っ張り上げる力がかかり、腹側方向では左右鼡径靭帯及び左右外腹斜筋を股下の股間を中心に引っ張り上げる力がかかる。例えば、1年くらいの月齢の赤ちゃんでは約10Kgの体重があり、それなりに強い力が股下部Cのやわらかい部分に集中してかかることとなる。それに伴って弾性部材9も引っ張られ、太腿とおむつのシート材との間に隙間が大きく開くように変形して、その部分でのフィット性が損なわれる。さらに、股下部Cでは吸収体4も同時に強く押圧され、前述の隙間から排泄物が漏れ出る可能性が生じる(矢印d)。
このようなときにも本実施形態のおむつ10においては、この圧迫力がおむつに作用する領域(以下、圧迫領域pという。)に配されている粒子6が、幅方向外方(図3における矢印d)に逃げて外層シート3を肌面方向へと押しやる。押し出されたシート材が、弾性部材9によるレッグギャザーの締め付けと相俟って、乳幼児の柔らかい丸みのある太腿周りにフィットする。これにより、着用者の股下の腿の付根からおしりに至る広範にわたって、接触面が広がりおむつのピッタリとしたフィット感が持続され、良好な着用感と、この部分での股下からの排泄物の防漏性とを両立して実現することができる。かかる観点から本実施形態において粒子6を内在させた袋状部Tは股下部の中央の少なくとも一部に配されていることが好ましい。
【0017】
図4は、本実施形態のおむつ10を装着したときの股下部Cの中心点Aを挟んで腹側部F及び背側部Rに向かう外層シート3の状態を説明するための模式化した説明図である。以下、図4を参照して、圧迫領域にかかる圧迫力が外層シート3に与える影響と粒子6の移動が外層シートに及ぼす作用とについて、これと連動する弾性部9及び吸収体4の排尿ポイント41及び排便ポイント42と併せて説明する。図4においては、力の作用を模式化して示すため吸収体4は省略するが、前記の排尿ポイント41及び排便ポイント42は外層シート3に投射して1点鎖線で示した。また、レッグ開口部端縁Lo周辺の一点鎖線は弾性部材9の一部を示すが、弾性部材9の収縮による襞は省略している。
図4では、右足、左足のためのレッグ開口部をなす端縁Lo(すそ回り)が形成され、手前側の面が腹側部Fに向かう面となる。着用後に抱っこ紐により圧迫を受けた股下中心点A付近は左右に湾曲したくい込んだ状態となる。一方で、腹側から背側にかけた股上方向にも身体にそって湾曲した状態となる。この状態を外層シート3を、横断主曲率面31と縦断主曲率面32を有する鞍面として示した。鞍面の形状は、背丈方向(Z方向)について、横断主曲率面31は負(B)の方向に曲率を有する凸面とすれば、縦断主曲率面32は正(U)の曲率を有する凹面としてみることができる。すなわち、鞍面形状では、逆の方向に曲率の中心を有する2つの円弧が互いに直交するように円弧頂点で交差し、両円弧を矛盾なく延長して構成される面である。
【0018】
図4において、矢印d及びdは、股下部C直下への圧迫力及び股下部Cから腹側部Fへの圧迫力である。通常の装着状態では、レッグ開口部端縁Lo周辺のシート材は、弾性部材9の収縮力により両足太腿にフィットする。しかし、装着後に矢印d及びdの方向に強い圧迫力がかかると、その影響でレッグ開口部端縁Lo(外層シート3の左右端縁部)が弾性部材9とともに矢印dの方向へ屈曲して太腿との間に隙間が生じる。特に上述したように曲率の反転する鞍面形状のため、このように幅方向の横断主曲率31が大きくなると他方の縦断主曲率32は小さくなろうとし、身体の起伏から離れていき、相乗的にレッグ開口部端縁Loに極めて大きな隙間が開くこととなる。また、この場合、吸収体4の排尿ポイント41も強く絞られるように押圧されるため、排泄物が幅方向両端へと漏れ出す可能性が生じる。
これに対し本実施形態においては、粒子6が、矢印d及びdの圧迫力を吸収、分散しながらレッグ開口部端縁Lo(すそ回り)の方へと移動する。移動した粒子6は、レッグ開口部端縁Lo付近で袋状部Tを膨らませて隙間を埋めるので、弾性部材9が所定の位置に戻って太腿としっかりフィットする。その結果、股下部においてすそ回りからの排泄物の防漏性が高められる。
なお、図4では、力の作用を腹側部Fに向かう手前側の面のみで示しているが、臀裂に沿うようにベルトを配設したときには背側部Rに向かう面においても同様である。さらに、股下部Cを中心に説明したが、おむつ10のウエスト開口部端縁Wo付近にも粒子6が配置される場合、同様に該ウエスト開口部周辺のフィット性及びそこからの排泄物の防漏性を維持することができる。また、前記外層シート3は、非伸縮性の液不透過性シート2及び吸収体4よりも変形しやすくやわらかい素材であることが、鞍面形状の股下部Cにおける適切な表面変形性の観点から好ましい。
【0019】
粒子6は、おむつ等の着用物品に使用されるものであるために、軽量で、かつ外側からの圧迫力に対しても潰れにくい強度を有することが好ましい。また、前記粒子6は、自由な移動の観点から、球形や楕円形などの曲面を有する形状であることが好ましい。このような粒子6は、前述のとおり実質的に液体を吸収しない粒子であり粒子同士の摩擦が少ない。そのため該粒子6は袋状部T内で動きやすい。例えば、発泡ポリスチレンビーズなど衝撃吸収と肌触りのよいクッション等に通常使用されるものを用いることができる。さらに、前記粒子6は、おむつ内の通気性を阻害しないよう、その平均粒径は0.1〜5mmが好ましく、0.5〜2mmがさらに好ましい。また、袋状部Tにおける粒子6の密度は、衝撃吸収と移動性とのバランスから、0.001g/cm〜0.5g/cmが好ましく、0.01g/cm〜0.1g/cmがさらに好ましい。また、粒子6が緩衝材として作用するために、股下部Cの中央部分における袋状部Tの厚みtは、3〜30mmが好ましく、5〜15mmがさらに好ましい。
【0020】
なお、前述の圧迫領域pとは、おむつと外側からの圧迫力との関係で相対的に生じる領域であって、図3に示す抱っこ紐の場合に限定されるものではない。この圧迫領域pは、主に股下部Cの幅方向の中央部分を中心に、様々な場面によって異なる広がりを持つ。例えば、ベビーカーの場合は、股下の立体股ベルトと脇の左右腰ベルトを腹側で係合させるので、おむつ10の股下部Cから腹側部Fまでが圧迫領域pとなる。また、チャイルドシートの場合は、股下のバックルと腹側の左右タングをしっかりと強く引っ張って係合させるので、おむつ10の股下部Cから腹側部Fのみならず、座席にあたる臀部までが圧迫領域pとなる。
【0021】
袋状部Tは、圧迫力によるおむつのよれ等の防止の観点から、前記圧迫領域pに対応する位置とすることが好ましい。それは、該圧迫領域pが、圧迫力を強く受けやすい部分であり、フィット感、防漏性が損なわれやすい原因となる部分だからである。少なくとも、該圧迫領域p内の股下部Cの排尿ポイント41、排便ポイント42を覆うように、前記袋状部Tが画成されることが好ましい(図1参照)。本実施形態のおむつ10に示す縦長形状(図1参照)に限定されるものではない。
この点を、図1を参照してさらに詳述する。本実施形態におけるおむつ10を、幅方向において左弓状部W、中央矩形部W、右弓状部Wに3分割、長手方向において腹側部F、股下部C、背側部Rに3分割して説明する。前記左弓状部W及び右弓状部Wは、吸収体4の左右端縁部外方において長手方向に弓状に延在する部分である。中央矩形部Wは、前記左右弓状部に挟まれた吸収体4の幅に一致する縦長の矩形部分である。前記腹側部F、股下部C、背側部Rは前述のとおりである。中央矩形部Wの股下部Cにあたる部分は、前記排尿ポイント41及び排便ポイント42を含む排泄領域43であり、排泄量の多い部分である。前記排尿ポイント41は陰茎に対応する部分であり、排便ポイントは肛門に対応する部分である。なお、本実施形態のおむつ10における両ポイントは男性乳幼児の場合を示しているが、女性の場合、大人の場合それぞれ位置や範囲は多少異なるため、それに合わせて適宜決めることができる。
【0022】
このように、最も外側からの圧迫力を受けやすい股下部Cにおいて、少なくとも排泄領域43に対応する部分を袋状部Tとすることが、排泄物の漏れ防止の観点から好ましい。さらに幅方向において、該袋状部Tは、シート材を太腿周りにしっかりとフィットさせる趣旨から、前記中央矩形部Wを越えて、左右弓状部W,Wにまで及んでもよく、特にレッグギャザー形成用の弾性部材9の配される手前まであることが好ましい。加えて長手方向においては、該袋状部Tは、腹側及び背側のウエスト開口部Wのよれ、及びそこからの漏れを防止するために、腹側部F及び背側部Rまでに及んでも良い。
また、前記袋状部Tは、排泄領域43を中心に任意に形成することができ、本実施形態の縦長の長方形状に限定されるものではない。例えば、おむつ10の外形に沿った砂時計形状としてもよい。袋状部Tが砂時計形状の場合は、ウエスト開口部端縁Wo周辺にしっかりと粒子6を配置することができるため、この部分のフィット性を向上させることができる点で好ましい。本実施形態及び後述する他の実施形態のおむつはこの種の製品に適用される通常の材料及び加工方法により製造することができる。粒子6の袋状部Tへの封入については、例えば、外側の不織布側から吸引しながら封入したり、静電気防止のために除電装置を用いて、例えば、コロナ放電を行いながら封入する等あげられる。
【0023】
また、前記吸収体4は、本実施形態の形態に限らず、平面視において複数個に分割されているものであってもよい。この場合は、おむつのシート材がよれても吸収体4の分割の通路に沿って前記粒子6が速やかに移動することができるため、シート材の適格な変形ができる点で好ましい。前記吸収体4の分割形状としては、幅方向に3分割された形状、さらに長手方向に複数に分割された形状などが挙げられる。このような形態に分割することの作用は、吸収体が分割されることで、吸収体に屈曲点ができ、より体型に沿いやすくなると共に、外部から圧力がおむつにかかった場合においても、液の導通路が常に確保することが可能となり、吸収性能を維持しながらフィット性向上が可能になり、外部から圧力がおむつにかかった場合でのフィット性向上に粉体の効果をより発揮できる環境にすることができることがあげられる。
【0024】
図5〜8は、本実施形態における袋状部Tの平面形状の変形例1〜4を模式的に示す展開平面図である。なお、図5〜8に示すおむつ20,30,40,50は、それぞれの袋状部Tの特徴を示すため、外層シート3側から見た各シート材の積層された状態をおむつの外形として示している。該おむつの外形に、前記袋状部Tを実線で囲まれた領域として重ね合わせ、さらに吸収体4を一点鎖線で投射するように示している。その他、弾性部材9を実線で示す以外は省略している。
図5の示す変形例1においては、まず、おむつ幅方向の中央において長手方向に延びる幹線領域61が形成されている。該幹線領域61は、排泄領域である股下部の幅方向中央部にあたるため、そこに配された粒子6が確実に外側からの圧迫力を緩和させることができる。さらに、前記幹線領域61を中心に左右に幅方向に延びる脇道領域62が、背側部Rから腹側部Fに至るまで複数形成されている。粒子6は前記幹線領域61から左右の脇道領域62を通って確実に幅方向外方に移動できるので、前記幹線領域61で受けた圧迫力を確実に幅方向に分散させてシート材を適切に変形することができる。
図6の示す変形例2は、前記変形例1の左右それぞれの脇道領域62において、幅方向端縁部を結ぶように長手方向に延びる沿岸線領域63が形成されている。前記変形例2では、前記変形例1の作用に加え、沿岸線領域63に寄せられる粒子6がおむつレッグギャザー用弾性帯9付近のシート材を均等に強く変形させることができるので、おむつと太腿との間のフィット性の向上に効果的である。
図7の示す変形例3においては、前記変形例1の幹線領域61の長手方向上下端縁に配された各脇道領域62,62が、他よりも幅方向に長くされた長尺領域64,64である。これにより、粒子6がウエスト開口部端縁Lo近傍にまで移動可能となるので、腹回りにおけるおむつのフィット性の確保と排泄物の防漏性向上とに効果的である。
図8に示す変形例4においては、変形例3のものより長手方向に幅広とされた前記長尺領域64’を有する。さらに、前記長尺領域64’及び脇道領域62の幅方向の左右それぞれの端縁部を結ぶようにされたやや弓形の沿岸線領域63’が形成されている。さらに、これにより、粒子6が、弾性部材9近傍に加え、ウエスト開口部端縁Lo近傍からサイドフラップ左右側縁部にまで移動可能となるので、太腿回りと腹回りの両方における、おむつのフィット性の確保と排泄物の防漏性向上とに効果的である。
【0025】
上記の各実施形態のおむつに用いられる材料は特に限定されず、この種物品に通常適用されるものを用いればよいが、表面シートは、液透過性であり肌への当りのソフトな材料からなることが好ましい。例えばコットン等の天然繊維を材料とする不織布や、各種合成繊維に親水化処理を施したものを材料とする不織布を用いることができる。外層シートは液不透過性のシート材からなることが好ましい。外層シートは必要に応じて水蒸気の透過性のものであってもよい。具体的に十分な水蒸気透過性を得るために、炭酸カルシウム等のフィラーからなる微粉を分散させたポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムを延伸し、微細な孔をあけた多孔質フィルムを用いることが好ましい。サイドシートとしては、不織布、フィルムシート、紙等が挙げられる。防漏性の観点からは、サイドシートを液不透過性又は難透過性である疎水性不織布、防漏性のフィルムシート等により形成することが好ましい。上記シートは一枚でもよいし、さらに機能性のシート等と組み合わせて2枚以上のものとしてもよい。吸収体の形成材料としては、通常吸収性物品に用いられるものを用いることができる。具体的には例えば、繊維集合体又はこれと高分子吸水ポリマーとを併用させたもの等を用いることができる。繊維集合体を構成する繊維としては、パルプ繊維等の親水性天然繊維や、合成繊維(好ましくは親水化処理を施したもの)等を用いることができる。
【0026】
液不透過性シートは、蒸気透過性であることが好ましく、多孔質であってもなくてもよい。そのシートの材料としては、上記裏面シートと同様のものを好適に用いることができる。具体的には例えば、熱可塑性樹脂に無機化合物又は有機化合物のフィラーを添加したものを、Tダイやサーキュラーダイから溶融押出してフィルムを形成し、次いで、斯かるフィルムを一軸又は二軸延伸して得た透湿性を有するシートを用いることができる。
【0027】
本発明の着用物品は上記実施形態のような幼児用の展開型使い捨ておむつに限定されるものではなく、パンツ型のものであっても、大人用のおむつであってもよく、また生理用ショーツ、ショーツ型ナプキンであってもよい。また、尿とりパッド等の吸収パッドと組み合わせて用いる展開型おむつカバーであってもよく、この場合にも吸収パッドに配設された吸収体を、上記展開型おむつに係る実施形態の吸収体4としてみることができる。具体的には、吸収パッドの吸収体がおむつカバーの腹側部分Fから背側部分Rに股下部分Cを介して配置されるように吸収パッドとおむつカバーを組み合わせて装着する。このとき、おむつカバーの股下部に配置された粒子6が上記実施形態において示したのと同様の機能を果たし、装着者の体形に合った理想的なフィット性を実現することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 表面シート
2 液不透過性シート
3 外層シート
4 吸収体
5 サイドシート
6 粒子
7 ファスニングテープ
8 立体ギャザー用弾性帯
9 レッグギャザー用弾性帯
10,20,30,40,50 展開型使い捨ておむつ
31 横断主曲率
32 縦断主曲率
41 排尿ポイント
42 排便ポイント
43 排泄ポイント
61 幹線領域
62 脇道領域
63 沿岸線領域
80 抱っこ紐
90 乳幼児
,d,d 力の作用方向を示す矢印
排泄物が漏洩方向
流体の移動を示す矢印
p 圧迫領域
T 袋状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部、背側部、及び該両部の間の股下部に画成され、着用状態でウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを構成し、液不透過性シートとこれに積層する外層シートとを有してなる着用物品であって、前記外層シートと前記液不透過性シートとの間に実質的に液体を吸収しない多数の粒子を少なくとも前記股下部に広がる所定領域に配置させた着用物品。
【請求項2】
前記多数の粒子を配置した股下部の所定領域は、前記外層シートと液不透過性シートとの間の厚み方向において前記多数の粒子がなす厚みを有する請求項1記載の着用物品。
【請求項3】
前記粒子が発泡ポリスチレンビーズである請求項1又は2記載の着用物品。
【請求項4】
前記粒子は前記着用物品の着用時に外部からの押圧を受け前記外層シート及び前記液不透過性シートとは独立して移動可能とされた請求項1〜3のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項5】
前記多数の粒子が配置された所定領域が前記着用物品の腹側部から股下部を介して背側部にまで及んで存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項6】
前記多数の粒子が配置された所定領域の輪郭が、平面視において砂時計形状もしくは長方形状である請求項1〜5のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項7】
前記着用物品は、さらに前記液不透過性シートを挟んで前記粒子の存在しない側に配置される液透過性の表面シートと前記両シート間に介在配置される吸収体とを具備してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項8】
前記吸収体は、平面視において前記多数の粒子が配置された所定領域に対応する部分が複数に分断されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−115231(P2011−115231A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272902(P2009−272902)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】