説明

着脱可能な靴の踵カバー及びその着脱機構

【課題】
アウトドアレジャーで使用されることの多い踵部に開口部が設けられた靴に、着脱可能
な踵カバーを設けることで町中等の人目が気になる場所でも外観を変更して使用できるよ
うにする。
【解決手段】
靴の外皮の一部がアキレス腱を横切る踵ベルトを構成しており、踵ベルトの下部とソー
ルの間に開口部がある靴に対し、左右一対のスナップによって着脱が可能な踵カバーを提
供する。踵カバーを装着することで素足や靴下が見えにくいようにしたり、踵カバーを外
すことで通気性を確保したりという調整が簡単に行えるようになり、一足の靴で町中から
アウトドアレジャーまで対応可能になる。また踵カバーの色や素材を調整することで手軽
にデザインを変更することも可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴の踵部に通気性や排水性を確保するため設けられた開口部に、着脱可能な踵
カバーを設けることで開口部の大きさの変更を可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
歩行中に足を石等の危険物から保護してくれる靴であるが、足を包み込む構造ゆえ通気
性に乏しく着用時に蒸れてしまうものが多い。その対策として小さな穴を設けたもの、メ
ッシュ生地を使用したもの、湿気を通しやすい高分子素材を使ったもの等があったが、穴
が小さいため泥等が詰まってしまうことが多く、効果が十分とは言えなかった。そこで足
首やつま先といった足にフィットさせるために必要な構造を保ったまま靴の外皮の一部を
無くすことで、大きな開口部を確保したものが登場してきた。それはサンダルに近い快適
性と足への追随性の良さからスポーツサンダルと呼称される。
【0003】
スポーツサンダルは甲の両脇や踵部といった歩行時に力の加わりにくい部分に開口部を
持つ。開口部が大きいため水中に踏み込んだあとの排水性も高く、水場でのアウトドアレ
ジャーに使用されることも多い。
【0004】
蒸れにくく快適なスポーツサンダルではあるが、大きな開口部ゆえ外から素足や靴下が
見えてしまい、人目の多い町中で履くことに抵抗を感じる場合がある。また、石や木の枝
が多く落ちている場所などで一時的に開口部を塞ぎたいという場合もある。
【0005】
靴の蒸れで問題になりやすいのは指の間に湿気が溜まりやすいつま先であり、踵につい
ては足入れ部がすぐ上にあるため極端に蒸れることはない。町中の使用であれば踵には極
端に大きな開口部がなくても十分な快適性が確保できる。

【特許文献1】特許公開2004−283586
【特許文献2】特許公表2006−528519
【特許文献3】特許公開平9−206108
【特許文献4】特許公開平8−238110
【0006】
特許文献1および特許文献2は開口部のあるスポーツサンダルの例である。
【0007】
特許文献3にあるものは踵カバー部がホールド力の調整用をかねる踵ベルトで靴の外皮
に固定されているため、踵カバーが着脱できないという問題点がある。
【0008】
特許文献4にあるものは歩行時に踵方向に加わる力を、靴に別部品として取付けられた
踵カバーの移動調節機構が受けているという問題点がある。本発明では歩行時に踵方向に
加わる力は靴の外皮の一部が構成する踵ベルト部が受けているため、踵カバーの着脱機構
であるスナップ部に力が直接加わることはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通気性や排水性を確保するために靴の踵部に設けられた開口部の大きさをを必要に応じ
て変更することができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
靴の踵部に着脱がしやすく歩行時の靴の歪みが生じても外れにくい踵カバーを設けるこ
とで、簡単に開口部の大きさを変更できるようにする。
【発明の効果】
【0011】
踵カバーの着脱を簡単に行えるようにし、装着することで素足や靴下が見えにくいよう
にしたり、外すことで通気性を確保したりという調整が可能になるため、一足の靴で町中
からアウトドアレジャーまで対応可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の効果を実現する為には、踵の開口部に合致してずれの生じにくい踵カバーの形
状と、着脱が簡単で歩行時に靴に生じる歪みで不用意に外れてしまうことのない着脱機構
が必要である。
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例】
【0014】
図1が実施例を含む靴(6)と踵カバー(1)の分離状態の斜視図である。
【0015】
図1(a)が踵部に開口部(9)のある靴(6)である。開口部(9)は靴外皮(7)
の踵上部でアキレス腱を支える踵ベルト(8)とソール(10)の間に形成される。靴外
皮(7)の内側の左右にメス側スナップ(5)が内向きに取付けられている。
【0016】
図1(b)が靴(6)から取り外した踵カバー(1)である。足の踵に接する踵カバー
内皮(2)と靴の開口部(9)に合致する形状の踵カバー外皮(3)との二重構造になっ
ている。踵カバー内皮(2)の表側の左右にオス側スナップ(4)が外向きに取付けられ
ている。
【0017】
本実施例の着脱機構に用いたスナップはオスメスがあり、踵カバーを取り外したときに
足への当たりが少なく靴擦れが起きにくいように、表の平らな面が広いメス側スナップ(
5)を靴外皮(7)に設けた。スナップには多種多様なものが存在するためオスメスが逆
になることもありえる。
【0018】
図2が図1の透視図である。図1で陰になっていたオス側スナップ(4)とメス側スナ
ップ(5)と踵カバー内皮(2)及び踵カバー外皮(3)の重なり具合を破線で示した。
【0019】
図3が実施例を含む靴(6)と踵カバー(1)の結合状態の斜視図である。図中の符号
4(5)は踵カバー内皮(2)に設けられたオス側スナップ(4)と靴外皮(7)に設け
られたメス側スナップ(5)が互いに噛み合った接合状態を示す。
【0020】
図4が図3の透視図である。図3で陰になっていたオス側スナップ(4)とメス側スナ
ップ(5)と踵カバー内皮(2)及び踵カバー外皮(3)の重なり具合を破線で示した。
【0021】
図5が実施例の踵カバー(1)の斜視図である。踵カバー内皮(2)と踵カバー外皮(
3)は互いに縫い付けや接着等で固定される。
【0022】
図6が実施例の踵カバー(1)の部品の斜視図である。図5の踵カバー(1)の踵カバ
ー内皮(2)と踵カバー外皮(3)を分解して表示した状態である。
【0023】
図7が図6の透視図である。図6で陰になっていたメス側スナップ(4)と踵カバー内
皮(2)及び踵カバー外皮(3)の重なり具合を破線で示した。
【0024】
踵カバー内皮(2)は足の踵に直接接するため、足の踵に合わせた丸みを帯びた形状に
形成されていることが望ましい。また、形状を安定させるため多少厚みのある素材を使用
することが望ましいが、その際に靴外皮(7)とで生じる段差による違和感は、踵カバー
内皮(2)の縁に面取り加工を施すことで軽減される。
【0025】
踵カバー外皮(3)は踵カバー内皮(2)の外側にあわせた丸みと同時に、靴外皮(7
)にデザインを合わせた外観が必要となる。踵カバー外皮(3)の素材に靴外皮(7)と
同等の厚みを持たせることで踵カバー内皮(2)と踵カバー外皮(3)とに生ずる段差が
、踵ベルト(8)と組み合うことで踵カバー(1)の位置が大きくズレることを防ぐ。
【0026】
オス側スナップ(4)の取付け位置は踵カバー内皮(2)の外側である。アキレス腱を
挟んだ左右のくるぶしの後ろ寄りを取付け位置の目安にすると、当たりやすい骨や筋が無
いため靴擦れが発生しにくい。また歩行時に踵方向に加わる力も踵ベルト(8)を通して
靴外皮(7)に逃げるため、オス側スナップ(4)とメス側スナップ(5)には伝わらず
に済む。
【0027】
図8が実施例に使用したスナップの斜視図である。(a)がオス側スナップ(4)の裏
側である。(b)がオス側スナップ(4)の表側である。(c)がメス側スナップ(5)
の表側である。(d)がメス側スナップ(5)の裏側である。
【0028】
オス側スナップ(4)の結合用突起(4a)は先端と根本が絞り込まれた樽型になって
いる。オス側スナップ(4)の結合用突起(4a)をメス側スナップ(5)の結合穴(5
a)に押し込むと、メス側スナップ(5)の裏側に内蔵された結合バネ(5c)が結合用
突起(4a)の根本の絞り込み部を押さえることでオス側スナップ(4)とメス側スナッ
プ(5)が結合される。
【0029】
オス側スナップ(4)は縫い付け用穴(4b)、メス側スナップ(5)は縫い付け用穴
(5b)をそれぞれ使用して対象物に縫い付け使用する。
【0030】
スナップにはここで示した縫い付けるタイプの他に、リベットのように打ち込むものや
接着するものなど様々な取り付け方法のタイプがあり、取付ける対象物によって選択する
ことができる。
【0031】
実施例に用いたオス側スナップ(4)とメス側スナップ(5)は装着時にそれぞれの表
側どうしであれば向きに関わらず差し込めるように回転体が基本形状になっている。その
ため噛み合った状態で互いに回転することができるという構造を持つ。踵カバー外皮(3
)が開口部(9)に合わせた形状になっているため踵カバー(1)の位置が大きくズレる
ことはないが歩行時には靴(6)全体に歪みが発生することは避けられない。その歪みは
素材の柔軟性とスナップの回転構造によって吸収される。また、靴(6)を履いている状
態では足が靴(6)の内側にあるため、スナップが連結を解放する向きに動くことはない

【0032】
メス側スナップ(5)に内蔵された結合バネ(5c)は手でスナップの結合が解除でき
る程度の強さのバネであるため、万一靴(6)を履く際に踵部を踏んでしまってもすぐに
スナップの結合が解除され、靴(6)や踵カバー(1)が壊れることが未然に防止される

【0033】
本発明による踵カバー着脱機構は靴のデザイン変更などの目的で使用することもできる
。例えば踵カバー外皮(3)に反射素材を使用し、夜間歩行時の安全性を高めたり、踵カ
バー(1)の色を変更してデザインに変化を持たせるといったことにも利用できる。また
踵カバー(1)に破損や汚損が発生したときに補修のために交換するといったこともでき
る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例を含む靴と踵カバーの分離状態の斜視図である。
【図2】図1の透視図である。
【図3】実施例を含む靴と踵カバーの結合状態の斜視図である。
【図4】図3の透視図である。
【図5】実施例の踵カバーの斜視図である。
【図6】実施例の踵カバーの部品の斜視図である。
【図7】図6の透視図である。
【図8】実施例に使用したスナップの斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1は踵カバー。
2は踵カバー内皮。
3は踵カバー外皮。
4はオス側スナップ。
4aは結合用突起。
4bオス側スナップ縫い付け穴。
5はメス側スナップ。
5aは結合用穴。
5bはメス側スナップ縫い付け穴。
5c結合バネ。
6は靴。
7は靴外皮。
8は踵ベルト。
9は開口部。
10はソール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴(6)の一部である靴外皮(7)の踵上部に設けられた踵ベルト(8)とソール(1
0)の間に形成された開口部(9)に合致する形状の踵カバー外皮(3)、及び踵カバー
外皮(3)が取付けられ、開口部(9)を靴(6)の内側から覆うことのできる寸法の踵
カバー内皮(2)とで構成される踵カバー(1)。
【請求項2】
請求項1の踵カバー(1)の踵カバー内皮(2)の表側左右に取付けられたオス側スナ
ップ(4)と開口部(9)のある靴外皮(7)の内側左右に設けられたメス側スナップ(
5)により着脱がしやすく、なおかつ意図せずには外れにくい踵カバー着脱機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−17364(P2010−17364A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180853(P2008−180853)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(308019690)
【Fターム(参考)】