説明

矢切パネルの取付構造

【課題】 矢切パネルの先端部に取付手段を容易に設けることができて取付の信頼性も十分なものとすることのできる矢切パネルの取付構造を提供する。
【解決手段】 矢切パネルを、矢切部の中央部(棟側)を覆うための中央部用パネルと、矢切部の端部(軒側)を覆うための端部用パネル1Eとに分割形成する。端部用パネル1Eの裏面の少なくとも下端近傍および上端近傍に、ボルトがスライド可能に挿入されるレール11、13をそれぞれ水平に設け、該レール11、13に挿入したボルト14により該端部用パネル1Eを屋根架構の妻側端縁に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、建物の矢切部における外壁を構成する矢切パネルを、屋根架構の妻側端縁に取付ける構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図9に示すように、梁5a、合掌5b、母屋5c、棟木5d等で構成される屋根架構5の妻側端縁に、建物の矢切部に対応する略三角形状の矢切パネル10を取付けることにより、該矢切部を覆うことがなされている。この矢切パネル10は、通常、裏面にインサートナット等の取付手段を、上端縁および下端縁に沿って適宜間隔をおいて並べるように設けておき、各取付手段を適宜ファスナ等を介して屋根架構5に取付けるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、建物の矢切部は先端側(軒側)へいくほど狭いので、これに応じて矢切パネル10の先端部の形状も先鋭にならざるを得ず、したがって先端側へいくほど取付手段の配設が困難であり、またこのことから矢切パネル10の先端部における取付の信頼性が不十分となりやすいという問題があった。
【0004】この発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、矢切パネルの先端部に取付手段を容易に設けることができて取付の信頼性も十分なものとすることのできる矢切パネルの取付構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためになされたこの発明の矢切パネルの取付構造は、建物の矢切部を覆う矢切パネルを屋根架構の妻側端縁に取付ける構造であって、前記矢切パネルが、矢切部の中央部を覆うための中央部用パネルと、前記矢切部の端部を覆うための端部用パネルとに分割形成され、前記端部用パネルの裏面の少なくとも下端近傍および上端近傍には、ボルトがスライド可能に挿入されるレールがそれぞれ水平に設けられ、該レールに挿入したボルトにより該端部用パネルを屋根架構の妻側端縁に取付けることを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】図1は、この発明の矢切パネルの取付構造の一実施形態を示す側面図であり、図2は図1の矢切パネル(端部用パネル)の背面図である。図1及び2においては、建物の矢切部の右半分を覆う矢切パネル1ならびにその取付構造が示されており、矢切パネル1は全体として略直角三角形状に形成されている。なお、矢切部の左半分を覆う矢切パネルならびにその取付構造は、上記矢切パネル1の場合と左右対称となっているため、ここではその説明は省略する。
【0007】図2に示す矢切パネル1は、2枚の中央部用パネル1Mと、1枚の端部用パネル1Eとに分割形成されている。
【0008】端部用パネル1Eの裏面には、下部レール11、中間部レール12、上部レール13がそれぞれ埋設されている。
【0009】下部レール11は、端部用パネル1Eの下端縁(底辺)に沿って、端部用パネル1Eの左端から右端まで水平に延びるように設けられている。この下部レール11は、図3に示すように、C字状の断面形状を有するレール(以下、Cレールと称す)となっており、内部に摺動ボルト14が挿入される。この摺動ボルト14は、下部レール11の両端近傍にそれぞれ挿入され、これにより、端部用パネル1Eの左下端部および右下端部が屋根架構に固定される。
【0010】上記摺動ボルト14は、垂直片14aと、該垂直片14aから突出した2本のネジ棒14bとよりなり、該垂直片14aは、ネジ棒14bを外側に向けて下部レール11内に挿入される。なお、図4に示すように、垂直片140aから1本のネジ棒140bが突出した構成を有する摺動ボルト140を用いてもよい。
【0011】上記構成により、摺動ボルト14は下部レール11に沿ってスライドして移動することができ、当該下部レール11上の任意の位置において固定することができる。したがって、端部用パネル1Eの左下端部および右下端部を屋根架構に取付ける際の位置決めを容易に行うことができる。
【0012】上記端部用パネル1Eの左下端部および右下端部は、上記摺動ボルト14により、図1に示すように、第1ファスナ15および取付片51を介して梁5aの上面に取付けられる。
【0013】第1ファスナ15は、水平片15aと垂直片15bとよりなり、該垂直片15bに形成されたボルト挿通孔に上記摺動ボルト14のネジ棒14bが挿通されナットで締結される。水平片15aは、取付片51に挿通されたジョイントボルト51aに挿通され係止される。
【0014】上記第1ファスナ15の垂直片15bには、摺動ボルト14の2本のネジ棒14bにそれぞれ対応するボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。ここで、前記図4に示すように1本のネジ棒140bが突出した構成を有する摺動ボルト140を用いる場合は、図5に示すように、上記ネジ棒140bに対応する1個のボルト挿通孔150cが設けられた第1ファスナ150が用いられる。図5に示す第1ファスナ150は、水平片150aと垂直片150bとよりなり、該垂直片150bに上記ボルト挿通孔150cが形成されている。さらに、該垂直片150bの裏面(水平片150aと反対側面)には、4個の突起部150dが設けられている。この突起部150dは、ボルト挿通孔150cを包囲するように、上下に2個ずつ設けられており、第1ファスナ150を下部レール11に取付けた際に、上側の2個の突起部150dが下部レール11の上縁に、下側の2個の突起部150dが下部レール11の下縁にそれぞれ係合するようになっている。これにより、ネジ棒140bが1本となっていても第1ファスナ150が回転することがなく、したがって取付の信頼性を十分とすることができる。
【0015】上記取付片51には、図1に示すように、上記端部用パネル1Eの左下端部および右下端部だけでなく、端部用パネル1Eの下部の外壁パネル2が外壁ファスナ21を介して取付けられる。外壁ファスナ21は、水平片21aと垂直片21bとよりなり、該垂直片21bが外壁パネル2の裏面上部にボルトにより締結される。水平片21aには上記ジョイントボルト51aが挿通される。これにより、外壁パネル2が取付片51に吊り下げられる。
【0016】上部レール13は、図2に示すように、端部用パネル1Eの上端(頂部)のやや下部に、端部用パネル1Eの左端縁から、上端縁(斜辺)近傍まで、水平に延びるように設けられている。中間部レール12は、前記下部レール11と上部レール13とのほぼ中間の高さ位置に、端部用パネル1Eの左端縁から、上端縁(斜辺)近傍まで、水平に延びるように設けられている。上記上部レール13および中間部レール12は、前記下部レール11と同様のCレールとなっている。また、上部レール13および中間部レール12には、前記下部レール11の場合と同様に、それぞれ摺動ボルト14が挿入される。なお、中間部レール12においては、摺動ボルト14は、該中間部レール12の右端まで(端部用パネル1Eの斜辺近傍まで)挿入される。上記摺動ボルト14により、端部用パネル1Eの上端部および中間部(斜辺近傍)がそれぞれ屋根架構に固定される。この場合も、前記端部用パネル1Eの左下端部および右下端部の場合と同様に、屋根架構に取付ける際の位置決めを容易に行うことができる。
【0017】上記端部用パネル1Eの上端部および中間部は、図1及び6に示すように、矢切アングル31を介して屋根パネル3の妻側端縁に取付けられる。
【0018】図6に示すように、屋根パネル3は、軽量リップ溝形鋼を長方形に枠組みしてなる外枠32aの内側に鋼製の補強桟32bを掛け渡してフレーム32を構成し、該フレーム32の上面に野地板33を固定することにより得られたものである。フレーム32の外枠32aおよび補強桟32bは、それぞれ、屋根を支持する斜材(垂木)ならびに水平材(母屋)として機能する(即ち、この実施形態では、フレーム32が屋根架構の一部となっている)。屋根パネル3は、支持金具34a、34b、34c、34dを介して、梁5a、軒梁5e、小屋束5fおよび横梁5gにそれぞれ接合されている。上記支持金具34a、34b、34c、34dのそれぞれは、エンドプレート上に直立片が設けられ、さらに該直立片に受け片341が突設された構成となっている。屋根パネル3は、この受け片341上に載置した状態で、上記直立片にボルトにより締結し得るようになっており、これにより、屋根パネル3を手で支持しながらでなくとも容易に支持金具34a、34b、34c、34dに取り付けることができるようになっている。
【0019】なお、上記野地板33は、軒先に取付けられる他の部材やその下部の外壁パネル等の取付作業が行いやすいように、その軒先側端部をフレーム32の軒先側端部よりも内方(棟側方向)に後退させている。
【0020】上記矢切アングル31は、L字形の断面形状を有し、その垂直面が、前記梁5a上の支持金具34aおよび小屋束5f上の支持金具34cを間に挟むようにしてフレーム32の妻側端縁に重合され、該支持金具34a、34cならびにこれら支持金具34a、34cの間の部分において、それぞれフレーム32にボルトにより締結される。このとき、矢切アングル31は、前記屋根パネル3の場合と同様に、上記支持金具34a、34cの受け片341(妻側に突設されたもの)上に載置した状態で取付作業を行うことができる。
【0021】上記端部用パネル1Eの上端部および中間部は、図1に示すように、第2ファスナ16および傾斜ファスナ17を介して矢切アングル31に取付けられる。
【0022】第2ファスナ16の構成は、前記第1ファスナ15と同様であり、1本のネジ棒を有する摺動ボルトを用いる場合も、前記図5に示す第1ファスナ150と同様のものが用いられる(ただし、第2ファスナ16は水平片16aを上にして用いられる)。第2ファスナ16は、垂直片16bに形成されたボルト挿通孔に摺動ボルト14のネジ棒14bが挿通されナットで締結される。
【0023】傾斜ファスナ17は、図7に示すように、水平片17aの側端縁に、プレート17bを介して傾斜片17cの側端縁を接合したものである。水平片17aには1個のボルト挿通孔17dが、傾斜片17cには2個のルーズホール17eがそれぞれ形成されている。図1R>1に示すように、該水平片17aと、前記第2ファスナ16の水平片16aとは、ジョイントボルトにより上下動可能に連結され、傾斜片17cは、矢切アングル31の傾斜面にボルトにより締結される。
【0024】なお、端部用パネル1Eの中間部は、中間部レール12の右端(端部用パネル1Eの斜辺近傍)において固定されるため、中間部レール12は少なくとも端部用パネル1Eの斜辺近傍に設けられていればよいが、端部用パネル1Eの左端縁近傍にも設けるようにすると、端部用パネル1Eの取付作業の際に、端部用パネル1Eを上記2箇所から吊り上げることができ、したがって吊り上げた状態の端部用パネル1Eを水平な状態に保持することができる。ここに示す実施形態においては、中間部レール12は、前記したように端部用パネル1Eの左端縁から斜辺近傍まで水平に延びるように設けられているので、該中間部レール12の両端近傍にそれぞれ摺動ボルト14を挿入しておくことにより、端部用パネル1Eを水平に吊り上げることができ、したがって取付作業が行いやすい。
【0025】ここに示す実施形態における端部用パネル1Eは、下部レール11、中間部レール12および上部レール13の3本のレールが配設された構成となっているが、レールの配設数は、端部用パネルのサイズ等に応じて適宜変更することができる。
【0026】また、端部用パネル1Eは、右先端部が欠落した形状となっているが、図8に示すように、建物の出隅の最上部に取付けられる出隅壁パネル4の上部が、上記端部用パネル1Eの欠落部分に相当する形状に形成されており、これにより、該欠落部分が覆われるようになっている。このように、矢切部の端部を出隅壁パネル4の上部で覆うようにすれば、当該部位を先鋭的な形状の矢切パネルで覆う必要がないため、当該部位における外壁の強度や取付構造等の点で望ましい。
【0027】中央部用パネル1Mは、図2に示すように、矢切部の中央部右側を覆う台形状に形成されている。中央部用パネル1Mの裏面には、下部レール11Mおよびインサートナット13Mがそれぞれ埋設されている。
【0028】下部レール11Mは、前記端部用パネル1Eの下部レール11と同様に、Cレールよりなり、中央部用パネル1Mの下端縁(底辺)に沿って、中央部用パネル1Mの左端から右端まで水平に延びるように設けられている。また、下部レール11M形成部の取付方法も前記端部用パネル1Eの下部レール11形成部の場合と同様である。
【0029】インサートナット13Mは、中央部用パネル1Mの右上端近傍および左上端近傍にそれぞれ設けられている。このインサートナット13Mにより、中央部用パネル1Mの右上端近傍および左上端近傍が、それぞれ適宜なファスナ(図示せず)を介して前記矢切アングル31に取付けられる。上記ファスナとしては、水平片および垂直片を有するものが用いられ、該垂直片が上記インサートナット13Mにボルトにより締結される。該水平片は、前記端部用パネル1Eの上端部および中間部の場合と同様に、傾斜ファスナ17の水平片17aとジョイントボルトにより上下動可能に連結され、傾斜ファスナ17の傾斜片17cが、矢切アングル31の傾斜面にボルトにより締結される。
【0030】この発明において、端部用パネルの長さや中央部用パネルの分割数は、矢切部の形状およびサイズに応じて適宜決定することができる。例えば、屋根勾配が小さく、矢切部が比較的先鋭な場合には、端部用パネルは比較的長くし、中央部用パネルの数は比較的少なくすることが考えられる。
【0031】
【発明の効果】以上のように、この発明の矢切パネルの取付構造は、該矢切パネルを中央部用パネルと端部用パネルとに分割形成し、該端部用パネルの裏面の少なくとも下端近傍および上端近傍に、取付手段として、ボルトがスライド可能に挿入される水平レールをそれぞれ設けておいて、該レールに挿入したボルトにより該端部用パネルを屋根架構の妻側端縁に取付けるようにしたものである。したがって、先鋭な矢切パネル先端部においても、取付手段を容易に配設することができる。
【0032】またこのため、矢切パネルの先端部における取付の信頼性を十分とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る矢切パネル(端部用パネル)の取付構造を示す側面図。
【図2】図1の矢切パネルの背面図。
【図3】端部用パネルの下部レールおよび摺動ボルトの構成を示す斜視図。
【図4】摺動ボルトの他の例を示す斜視図。
【図5】第1ファスナの一例を示す斜視図。
【図6】矢切パネルの取付構造を示す分解斜視図。
【図7】傾斜ファスナの斜視図。
【図8】矢切パネルを矢切部に取付けた状態を示す斜視図。
【図9】従来の矢切部の構造を示す一部切欠斜視図。
【符号の説明】
1 矢切パネル
1M 中央部用パネル
1E 端部用パネル
11 下部レール
12 中間部レール
13 上部レール
14 摺動ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 建物の矢切部を覆う矢切パネルを屋根架構の妻側端縁に取付ける構造であって、前記矢切パネルが、矢切部の中央部を覆うための中央部用パネルと、前記矢切部の端部を覆うための端部用パネルとに分割形成され、前記端部用パネルの裏面の少なくとも下端近傍および上端近傍には、ボルトがスライド可能に挿入されるレールがそれぞれ水平に設けられ、該レールに挿入したボルトにより該端部用パネルを屋根架構の妻側端縁に取付けることを特徴とする矢切パネルの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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