説明

石油燃焼器の芯上下装置

【課題】 芯へのタール付着による影響を受けにくく、安定した燃焼性能と消火性能を維持しながら長期間の使用を可能とした芯上下装置の構造に関する。
【解決手段】 油タンク2から立設した芯内筒3と芯外筒4との間隙に芯5を上下動自在に取付け、芯上下軸1の内方端に取付けて芯上下軸1を中心に可動する駆動板6と駆動板6の可動端に形成した駆動ピン6aと、芯5の側面に形成した一対の係合ピン5aと、油タンク2内に配置した回転軸8を中心に回動する略コ字形の駆動レバー7とを設け、駆動ピン6aと係合ピン5aとが駆動レバー7に係合する。芯上下軸1の回動時に駆動板6の駆動ピン6aが駆動レバー7を駆動し、駆動レバー7が回転軸8を中心に回動して、係合ピン5aを介して芯5を上下動するものであり、駆動レバー7が芯5の両側を支持して均等に力を伝えて駆動するので、芯5の傾きを防ぐと共に、スムーズな芯上下操作が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯上下式石油燃焼器の芯上下装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芯上下式石油燃焼器は、油タンクの上面に取付けられた芯外筒と、油タンクの底板から立設した芯内筒との間隙に上下動自在に保持した芯と、芯上下操作を行う芯上下軸とを備えており、芯上下軸を芯上げ方向に回動して芯を上動して芯の先端を芯収容筒の上部に突出させ、点火ヒータなどの点火装置によって芯に着火すると、芯の下端で吸上げられた燃料が芯の上端で燃焼を開始する。また、燃焼中に芯上下軸を回動して芯高さを変更することで燃焼量の調節を行うことができ、更に芯を消火位置まで下げると消火するものである。
【0003】
このような石油燃焼器に備える芯上下装置として、芯ホルダに取付けたラックギヤと芯上下軸の内方端に設けたピニオンギヤとの噛合いによって芯を上下動する構成のものが一般的であったが、ラックギヤとピニオンギヤによる構成は、芯上下軸の回転量が大きく芯上下操作の操作回数が多くなり面倒であることや、ラックギヤとピニオンギヤの加工に時間がかかるため製造コストが高くなってしまうといった課題があった。このためラックギヤとピニオンギヤによる構成に変わるものとして、芯上下軸の内方端に駆動板を取付け、この駆動板の可動端から芯方向に向けて駆動ピンを形成し、芯の外周に取付けた芯ホルダの側面には駆動ピンが係合する連結部を設け、芯上下軸の回動時に可動する駆動板の駆動ピンによって芯ホルダが駆動して芯を上下動する芯上下装置の提案がある(特許文献1)。
【0004】
上記特許文献1の構成では、ラックギヤやピニオンギヤが不要となって製造コストを低減できると共に、芯上下軸の回転量が少なくなり、少ない操作回数で芯上下操作が可能となり操作性が向上できるものとなった。しかし、この構成は駆動ピンが芯の全体を芯の片側のみで支える構造であるため芯に傾きが生じやすいという課題が見つかっており、芯に傾きが生じると燃焼バランスが崩れて臭気の発生や消火性能の低下の原因となったり、芯上下操作の妨げとなることがあった。
【0005】
この対策として、出願人は駆動板と芯ホルダの連結部との間に位置するように、駆動板に駆動規制部を取付け、この駆動規制部が芯ホルダの連結部の側面に当接して芯ホルダを芯側へ押し付けることで芯の傾きを防ぐ構造を提案した(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−106332号 公報
【特許文献2】特開2006−258403号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2の構成は、通常の使用時における芯の傾き対策としては一定の効果が得られたが、芯にタール成分が付着して芯の硬さや厚みが増し、芯と芯内・外筒との隙間が狭くなり接触抵抗が大きくなったときには、駆動規制部のバネの力だけでは芯に傾きが生じてしまうことがあり、まだまだ完全な対策とは言えなかった。そこで、この発明では芯上下操作時の操作性を維持したまま、従来の片側で芯を支える構成の欠点を解消できる新たな芯上下装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記の課題を解決するもので、芯上下操作を行う芯上下軸1と、油タンク2の底板から立設した芯内筒3と、油タンク2の上面板に取付けた芯外筒4とを設け、芯内筒3と芯外筒4との間隙に上下動自在に芯5を装着し、前記芯上下軸1の回動によって前記芯5が上下動する石油燃焼器において、前記芯上下軸1の内方端に取付けて芯上下軸1を中心に可動する駆動板6と、該駆動板6の可動端から芯5方向へ向けて形成した駆動ピン6aとを設けると共に、前記芯5の側面には一対の係合ピン5aを形成し、前記油タンク2内には前記駆動板6の駆動ピン6aと前記芯5の係合ピン5aとが係合する略コ字形の駆動レバー7と、該駆動レバー7を回動可能に支持する回転軸8とを設け、前記駆動レバー7は基部7aによって回転軸8に取付けられて両先端部7bが前記芯5の側方に位置し、その両先端部7bに前記芯5の係合ピン5aが係合する芯係合部9を設けると共に、前記芯上下軸1側の前記先端部7bには前記駆動板6の駆動ピン6aが係合する係合部10を設け、前記芯上下軸1の回動時に前記駆動板6の前記駆動ピン6aが前記駆動レバー7を駆動し、前記駆動レバー7は前記回転軸8を中心に回動して前記芯5を上下動することを特徴とする。
【0008】
また、前記駆動レバー7の前記係合部10は駆動レバー7の長手方向に沿った長孔10aで構成し、芯上下軸1の回動時に前記駆動ピン6aが長孔10a内で位置を変化しながら駆動レバー7を駆動する構成であり、前記長孔10aは最大燃焼位置と最小燃焼位置との間の駆動ピン6aの移動範囲に対応する部分を駆動レバー7の基部7a側が高くなるように傾斜したことにより、燃焼範囲では芯上下軸1の回転量に対する芯5の上下方向の移動量が少なくなるから、燃焼量の調節が行いやすいものとなった。
【0009】
また、前記回転軸8には間隔11をあけて規制手段12を配置し、前記駆動レバー7をこの間隔11に配置し、前記規制手段12が駆動レバー7を挟持して駆動レバー7の位置を規制することにより、駆動レバー7の回転軸8の軸方向への移動を阻止して芯上下操作時のスムーズな動作を可能にすると共に、燃焼位置では芯5が自重によって芯下げ方向へ移動しようとする力が働くが、駆動レバー7の芯下げ方向への回動が阻止されるので、芯5の位置を保持することができる。
【0010】
また、前記駆動板6の側面と前記駆動レバー7の先端部7bの側面とが当接していることにより、芯5が自重によって芯下げ方向へ移動しようとする力が働くが、駆動板6と駆動レバー7との接触面にも抵抗を与えることができたから、駆動レバー7と芯上下軸1の芯下げ方向への回動を阻止して、芯5をセット位置に確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、駆動板6の駆動ピン6aと芯5の両側に形成した係合ピン5aとが係合する駆動レバー7を設け、芯上下軸1の回動と連動する駆動ピン6aが駆動レバー7を駆動し、駆動レバー7が回転軸8を中心に回動することで芯5を上下動する構成としたものであり、駆動レバー7の両先端部7bが芯5を両側から支持するものであるから、芯5に傾きが発生することなく、芯5の先端部の高さを全周均一に保つことができ、良好な燃焼性能を維持することができるものとなった。
【0012】
また、製品の使用経過によって芯5にタールが付着するなどして、芯5が硬くなったり、芯5の厚みが増したりすると芯5の上下動時の抵抗が変化することがあるが、駆動レバー7の両先端部7bが芯5の両側を支持して駆動するから、駆動板6の力が芯5の両側に均等に伝わり、芯5の傾きを防ぐことができる。このため、芯5へのタールの付着によってすぐに芯上下操作ができなくなることはなく、長期間の使用が可能となり、従来の片側だけで芯5を上下動する構造の欠点を克服して芯上下時の抵抗の変化にも対応できるものとなり、製品の耐久性を向上することができた。
【0013】
また、駆動板6の駆動ピン6aが係合する駆動レバー7の係合部10は駆動レバー7の長手方向に沿った長孔10aで構成し、かつ、この長孔10aは最大燃焼位置から最小燃焼位置の間の駆動ピン6aの移動範囲に対応する部分を駆動レバー7の基部7a側が高くなるように傾斜した形状にしている。この構成によって最大燃焼位置と最小燃焼位置の間における駆動ピン6aの回動角度が長孔10aの傾斜角度と一致して、駆動ピン6aが長孔10aの傾斜に沿って回動するから、芯上下軸1の回転量に比べて、駆動レバー7の回転量が少なくなり、芯5の上下方向の移動量も少なくすることができたから、燃焼範囲での燃焼量の調節が行いやすくなった。
【0014】
また、回転軸8には駆動レバー7を挟持する規制手段12を配置して、駆動レバー7の回転軸8の軸方向への移動を阻止しているから、芯上下軸1の回動時に駆動レバー7の無駄な動きを抑えることができたから、駆動レバー7が駆動ピン6aの力を効率よく芯5に伝えることができ、芯上下操作がスムーズに行えるものとなった。
また、芯5を燃焼位置にセットしたとき、芯5の重さで芯下げ方向へ移動しようとする力が働くが、規制手段12と駆動レバー7との接触面で生じる抵抗により駆動レバー7の芯下げ方向への回動を阻止するので、芯5を正しいセット位置に保持することができ良好な燃焼性能を得ることができるものとなった。
【0015】
また、駆動板6の側面と駆動レバー7の側面とを当接させることにより、駆動板6と駆動レバー7との接触面でも抵抗を与えることができるから、芯5の重さで芯下げ方向に移動しようとしても、駆動板6と駆動レバー7との接触面で生じる抵抗によって芯上下軸1と駆動レバー7の芯下げ方向への回動を阻止するので、芯5を確実に正しいセット位置に保持することができ、良好な燃焼性能を得ることができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施例を示す石油燃焼器の縦断面図である。
【図2】この発明の実施例を示す石油燃焼器の横断面図である。
【図3】この発明の実施例を示す芯上下装置の最大燃焼位置の状態を説明する要部断面図である。
【図4】この発明の実施例を示す芯上下装置の最小燃焼位置の状態を説明する要部断面図である。
【図5】この発明の実施例を示す芯上下装置の消火位置の状態を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、2は石油燃焼器の油タンク、3は油タンク2の底板から立設した芯内筒、4は油タンク2の上面に取り付けた芯外筒、13は芯内筒3と芯外筒4とで構成する芯収容筒、5は芯内筒3と芯外筒4との間隙に上下動自在に取り付けた芯であり、油タンク2の燃料は芯5の下端で吸い上げられ、芯5の上端に供給される。
【0018】
1は油タンク2の側面から油タンク2内に挿通した芯上下操作を行う芯上下軸、1aは芯上下軸1の外方端に取付けた芯上下軸1の操作つまみ、14は芯5の上方に配置した燃焼筒であり、操作つまみ1aによって芯上下軸1を芯上げ方向に回動して芯5を上動し、図示しない点火ヒータなどの点火装置によって芯5に点火すると、芯5の下端で吸い上げられた油タンク2の燃料が芯5の上端で燃焼し、発生する燃焼炎と燃焼ガスは燃焼筒14で空気の供給を受けて燃焼を完了する。
【0019】
15は油タンク2の側面に取り付けた芯上下装置のベース、16は芯上下軸1に遊嵌して芯上下軸1を中心に回動する回動板、16aは芯上下軸1と回動板16との間に設けた係止部、17は油タンク2と回動板16との間に取付けた戻しバネ、18は芯上げ位置の回動板16と係合するストッパーであり、芯上下軸1を芯上げ方向に回動すると係止部16aを介して回動板16とが一緒に回動して戻しバネ17を巻き上げ、最大燃焼位置で回動板16とストッパー18とが係合して回動板16には戻しバネ17による芯下げ方向への回転力が保持される。
【0020】
19は前記ストッパー18と連結した感震器であり、感震器19が所定振動値を検出するとストッパー18と回動板16との係合を外し、戻しバネ17の力で回動板16が芯下げ方向へ回動し、係止部16aを介して芯上下軸1を芯下げ方向に回動して石油燃焼器を消火することができる。
【0021】
また、芯上下軸1は回動板16とストッパー18とが係合した状態で係止部16aから離れて独立して回動可能に設けてあり、手動で芯上下軸1を回動することで、通常の消火操作や燃焼量の調節を行うことができるようになっている。
【0022】
6は芯上下軸1の内方端に設けた芯上下軸1を中心に回動する駆動板、6aは駆動板6の可動端から芯5側へ向けて伸ばした駆動ピンであり、芯上下軸1を回動すると駆動板6が駆動して駆動ピン6aが芯上下軸1を中心に回動する。
【0023】
7は油タンク2内に配置した略コ字形に形成した駆動レバー、7bは芯5の両側部を挟むように配置された駆動レバー7の2本の先端部、7aは2本の先端部7bを連結する駆動レバー7の基部、7cは基部7aに形成した軸孔である。8は油タンク2内に配置されて駆動レバー7の回動中心となる回転軸、20は油タンク2内に挿通した回転軸8の先端が係合する軸保持部材、21は油タンク2の側面に形成した透孔の周縁に取付けるパッキングであり、パッキング21を取付けた透孔から油タンク2内に回転軸8を挿通し、駆動レバー7の基部7aの軸孔7cを貫通したあと、回転軸8の先端が軸保持部材20に嵌合する。15aは芯上下装置のベース15の一部で形成した軸固定部材であり、ベース15を油タンク2の側面に取付けると軸固定部材15aが回転軸8の外方端に接触して回転軸8が押圧され、パッキング21が油タンク2の透孔の周縁に密着することで回転軸8を油タンク2内に固定している。
【0024】
油タンク2内の駆動レバー7は基部7aの軸孔7cが回転軸8に嵌合して、回転軸8を中心に回動可能に取付けられており、駆動レバー7の一方の先端部7bは芯5と駆動板6との間に位置している。10は芯5と駆動板6との間に位置する先端部7bに設けた係合部であり、実施例の係合部10は駆動レバー7の長手方向に沿った長孔10aで構成しており、駆動板6の駆動ピン6aが長孔10aに係合しており、芯上下軸1を回動すると駆動ピン6aが長孔10aの内縁を押して駆動レバー7に力を伝えて駆動レバー7が回転軸8を中心に回動するものである。
【0025】
22は芯5の外周に取付けた芯ホルダ、5aは芯ホルダ22の側面から外方へ向けて形成した一対の係合ピンであり、芯5は芯ホルダ22に一体に取付けてから芯内筒3に装着される。9は駆動レバー7の両先端部7bに設けたL字状のスリットで構成する芯係合部であり、L字状の芯係合部9の上端部は駆動レバー7の上端で開口している。芯内筒3に装着した芯5の係合ピン5aを芯係合部9の上部開口から挿通し、芯5を円周方向に回転すると芯5の係合ピン5aが芯係合部9の水平部に移動して、芯5が駆動レバー7に係合する。この構成によって、芯上下軸1を回動して駆動レバー7が回転軸8を中心に駆動すると、駆動レバー7の芯係合部9の内縁が芯5の係合ピン5aを押すことで芯5に力が伝わり、芯5が上下動できるものとなった。
【0026】
ところで、従来の芯上下装置は駆動板6の駆動ピン6aが直接芯ホルダ22と係合して、芯5の片側1箇所だけを支持する構造であったため、芯5が支持されていない側は芯5の重さで芯5の位置が下がり、芯5に傾きが生じやすいという課題があり、芯5を燃焼位置にセットしたときに駆動ピン6aで支持された側と支持されていない側で芯高さが変わってしまい、芯高さの低い部分では芯5の先端の炎と芯収容筒13との距離が近くなって消火時間が長くなったりすることがあった。
また、芯5の先端にタールが付着して芯5が硬くなったり芯5の厚みが増したときは、芯5と芯収容筒13との隙間が狭くなって芯上下時の抵抗が大きくなり、芯5を駆動するときに強い力が必要となるが、芯5の片側1ヶ所だけで芯5を駆動する構成では芯5の片側しか動かなくなってしまうため、芯5が傾くだけで上下動できなくなってしまい、短期間で芯上下操作が行えなくなるという課題があった。
【0027】
この発明は、これらの従来の課題を解決するものであり、駆動レバー7の両先端部7bが芯5の両側を支持する構成としたから、芯5の片側だけが下がって芯5の傾きが生じることはなくなり、芯高さを芯5の全周で均一にすることができるものとなったから、芯収容筒13の温度が均一になり、良好な燃焼バランスを維持できると共に、安定した燃焼性能を得ることができるものとなった。
【0028】
また、駆動板6の駆動ピン6aの力を駆動レバー7を介して芯5の両側に伝えることができるから、芯5の一部分だけに力が集中することがなくなり、芯5へのタールの付着などにより芯上下時の抵抗が大きくなったときでも、芯5の傾きを発生させることなく芯5を上下動することができるものとなり、従来のように芯5に僅かにタールが付着しただけですぐに芯上下ができなくなるようなことはなくなり、使用開始から短期間で使用不能となることはなく、長期間にわたって使用することができるものとなった。
【0029】
また、駆動ピン6aは駆動レバー7を介して芯5を上下動する構成であり、駆動レバー7は回転軸8を中心に回動するものであるから、回転軸8からの距離が長いほど小さい力で駆動レバー7を駆動することができる。このため実施例では駆動レバー7の係合部10を芯係合部9の位置よりも駆動レバー7の先端側に配置して、回転軸8から係合ピン5aまでの距離よりも、回転軸8から駆動ピン6aまでの距離の方が長くなるように設けている。このようにすると、駆動ピン6aが駆動レバー7を駆動する力は、芯5が係合ピン5aを介して駆動レバー7を駆動しようとする力よりも小さくすることができるから、駆動ピン6aが直接芯5を駆動する従来構造に比べて少ない力で芯上下軸1を回動することができると共に、燃焼位置にセットしたときには少ない力で芯5の位置を保持できるものとなった。
【0030】
また、駆動板6の駆動ピン6aは芯上下軸1を回転中心として回動するから、駆動ピン6aが芯上下軸1の真上に位置する最上部から斜め45度上方の範囲では、芯上下軸1の回転量に対して駆動ピン6aの上下方向の移動量は少なくなる。一方、駆動ピン6aが芯上下軸1に対して斜め45度上方から斜め45度下方までの範囲では、芯上下軸1の回転量に対して駆動ピン6aの上下方向の移動量が多くなる。実施例では、最上部から斜め45度上方の間で燃焼範囲を設定し、斜め45度下方付近を消火位置に設定しており、この構成であれば、燃焼範囲では芯上下軸1の回動に対して芯5が少しずつ上下動することで芯高さの調節が行いやすくなり、燃焼範囲を外れて消火位置までは、芯上下軸1の回転量に対して芯5の上下の移動量が多くなって芯上下操作がスムーズに行えるものとなる。
【0031】
芯上下軸1を回動すると駆動ピン6aは長孔10a内で位置を変化しながら駆動レバー7を駆動するものであるから、この発明では、駆動レバー7の長孔10aを最大燃焼位置と最小燃焼位置との間の駆動ピン6aが移動する範囲を基部7a側が高くなるように傾斜した形状としている。この構成によって長孔10aの傾斜角度を燃焼範囲の駆動ピン6aの回転角度に近づけることができるので、駆動ピン6aが長孔10aの傾斜角度に沿って移動しやすくなり、燃焼範囲における芯上下軸1の回転量に対して駆動レバー7の上下方向の移動量を少なくできる。このため、燃焼範囲では芯上下軸1の操作に対して芯5が少しずつ動くようになり、芯高さの急な変化が抑えられて燃焼量の調節が行いやすくなる。
【0032】
一方、最小燃焼位置から消火位置までの間では、駆動ピン6aの上下方向の移動量が多くなり、駆動ピン6aの移動方向に対して長孔10aが交差している形となるので、駆動ピン6aの上下方向の移動量と駆動レバー7の上下方向の移動量がほとんど一致するようになり、この範囲では燃焼範囲と比べて芯上下軸1の回転量に対して芯5の上下方向の移動量を大きくすることができる。このため、芯高さの微調整を必要とする燃焼範囲では、芯5の移動量を抑えて、一方、微調整を必要としない最小燃焼位置から消火位置の範囲ではスムーズな操作が可能となり、芯上下操作時の操作性を向上させることができた。
【0033】
また、図2において、8aは回転軸8の途中で先端側の直径を細くする段部であり、駆動レバー7の軸孔7cは回転軸8の段部8aよりも先端側の直径の細くなった部分に嵌合しており、駆動レバー7は軸保持部材20と段部8aとの間に配置されている。12は駆動レバー7の位置を規制する規制手段であり、実施例では軸保持部材20と段部8aによって規制手段12を構成しており、回転軸8を油タンク2内に取付けて軸固定部材15aで油タンク2内へ向けて押圧したときに、駆動レバー7が油タンク2内の軸保持部材20と段部8aによって挟持され、軸保持部材20と段部8aが駆動レバー7の回転軸8の軸方向への移動を規制する。
【0034】
駆動レバー7が回転軸8を中心に回動するときに、駆動レバー7が回転軸8の軸方向に移動してしまうと、駆動レバー7に余分な抵抗が発生して芯上下操作の妨げとなるが、上記の構成であれば、規制手段12が駆動レバー7の回転軸8の軸方向への移動を阻止することができるから、駆動レバー7の無駄な動きがなくなり芯上下操作がスムーズにできるようになり、芯上下操作時の操作性が向上できるものとなった。
また、芯5を燃焼位置にセットしたときは、芯5の重さで芯5がセット位置から芯下げ方向に下がろうとする力が働くが、駆動レバー7は規制手段12によって挟持されているから、駆動レバー7と規制手段12との接触面に抵抗が発生して駆動レバー7の芯下げ方向への回動を阻止するから、芯5の重さで芯5が芯下げ方向に下がることはなくなり、正しい芯高さを維持することで良好な燃焼性能を得ることができるものとなった。
【0035】
図2において、23は芯5と駆動板6との間に位置する駆動レバー7の先端部7bと間隔を介して並設した係合片であり、実施例では先端部7bの先端を基部7a側に折り返した折り返し片で形成しており、芯係合部9と係合部10はそれぞれ駆動レバー7の先端部7bと係合片23に設けている。係合片23と駆動レバー7の先端部7bとの間に間隔を形成することで、駆動板6や駆動ピン6aが芯5の係合ピン5aと干渉しない位置関係にすることができるので、油タンク2内の部品の取付け位置の制限を受けにくくなって部品の配置効率が向上でき、芯上下軸1などの位置変更や油タンク2の形状変更など大幅な設計変更なく実現することができる。
【0036】
更に、この発明では係合片23と駆動板6とが接触するように構成したから、駆動板6と係合片23との接触面でも抵抗が発生するものであり、駆動レバー7は前記規制手段12との接触面で発生する抵抗と、駆動板6と係合片23との接触面とで発生する抵抗の両方によって駆動レバー7の芯下げ方向への回動を阻止することができるので、芯5を燃焼位置にセットしたときに、芯5の重さで駆動レバー7が芯下げ方向に回動することはなく、確実に正しい芯高さを保持することができるものとなった。
【符号の説明】
【0037】
1 芯上下軸
2 油タンク
3 芯内筒
4 芯外筒
5 芯
6 駆動板
6a 駆動ピン
7 駆動レバー
7a 基部
7b 先端部
7c 軸孔
8 回転軸
9 芯係合部
10 係合部
10a 長孔
11 間隔
12 規制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯上下操作を行う芯上下軸(1)と、油タンク(2)の底板から立設した芯内筒(3)と、油タンク(2)の上面板に取付けた芯外筒(4)とを設け、芯内筒(3)と芯外筒(4)との間隙に上下動自在に芯(5)を装着し、前記芯上下軸(1)の回動によって前記芯(5)が上下動する石油燃焼器において、
前記芯上下軸(1)の内方端に取付けて芯上下軸(1)を中心に可動する駆動板(6)と、該駆動板(6)の可動端から芯(5)方向へ向けて形成した駆動ピン(6a)とを設けると共に、
前記芯(5)の側面には一対の係合ピン(5a)を形成し、
前記油タンク(2)内には前記駆動板(6)の駆動ピン(6a)と前記芯(5)の係合ピン(5a)とが係合する略コ字形の駆動レバー(7)と、該駆動レバー(7)を回動可能に支持する回転軸(8)とを設け、
前記駆動レバー(7)は基部(7a)によって回転軸(8)に取付けられて両先端部(7b)が前記芯(5)の側方に位置し、
その両先端部(7b)に前記芯(5)の係合ピン(5a)が係合する芯係合部(9)を設けると共に、前記芯上下軸(1)側の前記先端部(7b)には前記駆動板(6)の駆動ピン(6a)が係合する係合部(10)を設け、
前記芯上下軸(1)の回動時に前記駆動板(6)の前記駆動ピン(6a)が前記駆動レバー(7)を駆動し、前記駆動レバー(7)は前記回転軸(8)を中心に回動して前記芯(5)を上下動することを特徴とする石油燃焼器の芯上下装置。
【請求項2】
前記駆動レバー(7)の前記係合部(10)は駆動レバー(7)の長手方向に沿った長孔(10a)で構成し、芯上下軸(1)の回動時に前記駆動ピン(6a)が長孔(10a)内で位置を変化しながら駆動レバー(7)を駆動する構成であり、
前記長孔(10a)は最大燃焼位置と最小燃焼位置との間の駆動ピン(6a)の移動範囲に対応する部分を駆動レバー(7)の基部(7a)側が高くなるように傾斜したことを特徴とする請求項1に記載した石油燃焼器の芯上下装置。
【請求項3】
前記回転軸(8)には間隔(11)をあけて規制手段(12)を配置し、前記駆動レバー(7)をこの間隔(11)に配置し、
前記規制手段(12)が駆動レバー(7)を挟持して駆動レバー(7)の位置を規制することを特徴とする請求項1または2に記載した石油燃焼器の芯上下装置。
【請求項4】
前記駆動板(6)の側面と前記駆動レバー(7)の先端部(7b)の側面とが当接していることを特徴とする請求項3に記載した石油燃焼器の芯上下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231963(P2011−231963A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101792(P2010−101792)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)