説明

石炭ガス化システム

【課題】 搬送用ガスが粉体燃料と混合したときにガス中の水分の凝縮を防ぎ、粉体燃料の搬送を安定して行う。
【解決手段】 微粉炭とガス化剤とを反応させて可燃性ガスを生成する石炭ガス化炉8が設けられ、この石炭ガス化炉8には、石炭1が粉砕された微粉炭が供給されている。また、可燃性ガス生成時にチャー13が発生するので、このチャー13はサイクロン17とフィルタ18で回収されて石炭ガス化炉8にリサイクルされている。このような石炭ガス化システムにおいて、チャー回収後の可燃性ガスの一部を取り出して熱交換器44で加熱する。そして、その加熱後の可燃性ガスを搬送用ガスとして用いて、微粉炭およびチャーを石炭ガス化炉8に供給する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は石炭ガス化システムに係り、特に、石炭とガス化剤とを反応させて可燃性ガスを生成し、その可燃性ガスを脱硫して精製ガスを製造する石炭ガス化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に石炭ガス化システムは、石炭ガス化炉において微粉炭とガス化剤とを反応させて可燃性ガスを生成し、その可燃性ガスを脱硫装置で脱硫することにより精製ガスを得るように構成されている。微粉炭は、搬送用ガスによって搬送されて石炭ガス化炉に供給される。また、石炭ガス化炉では可燃性ガス生成時にチャーが発生し、このチャーは可燃性ガスと共に石炭ガス化炉から排出される。そして、この可燃性ガスをサイクロンおよびフィルタに通すことにより、可燃性ガスからチャーが回収され、この回収されたチャーも搬送用ガスによって搬送され石炭ガス化炉に供給される。
【0003】ところで、上記石炭ガス化システムでは、微粉炭やチャーなどの粉体燃料を搬送するための搬送用ガスとして、精留塔において空気から分離された窒素ガスを用いている。この窒素ガスを搬送用ガスとして用いるためには昇圧させる必要があり、そのための補機動力を増加させると、プラント効率が低下するという欠点があった。また、窒素ガスは不活性ガスであるので、このような不活性ガスが可燃性ガスに混入すると、脱硫後の精製ガスの発熱量が低下してしまうという欠点もあった。
【0004】そこで、搬送用ガスとして窒素ガスの代わりに可燃性ガスを用いる方法が提案されている。この方法は、石炭ガス化炉で生成された可燃性ガスの一部を分岐させ、さらに昇圧して粉体燃料を搬送するようにした方法である。この場合、可燃性ガスを分岐させる箇所が水洗浄塔出口であるので、石炭ガス化炉との差圧は小さく、昇圧に要する補機動力は窒素ガスを用いた場合に比べて低減できる。また、不活性ガスが混入しないため、脱硫後の精製ガスの発熱量が低下することもない。
【0005】さらに、脱硫装置において分離したCO2リッチガスを粉体燃料の搬送用ガスとして用いる方法も提案されている(例えば特開昭63−12690号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のように可燃性ガスやCO2リッチガスをそのまま搬送用ガスとして用いると、搬送用ガスが粉体燃料と混合したときにガス中の水分が凝縮し、これによって、粉体燃料が搬送配管の内面に固着して、搬送配管が閉塞するという問題がある。
【0007】本発明の目的は、搬送用ガスが粉体燃料と混合したときにガス中の水分の凝縮を防ぎ、粉体燃料の搬送を安定して行うことのできる石炭ガス化システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、微粉炭とガス化剤とを反応させて可燃性ガスを生成する石炭ガス化炉と、該石炭ガス化炉に微粉炭を供給する微粉炭供給手段と、前記石炭ガス化炉で可燃性ガス生成時に発生するチャーを回収し石炭ガス化炉に供給するチャー供給手段と、チャー回収後の可燃性ガスを脱硫して精製ガスを得る脱硫手段とを備えた石炭ガス化システムにおいて、前記チャー回収後の可燃性ガスの一部を取り出して加熱する加熱手段が設けられ、その加熱後の可燃性ガスを搬送用ガスとして用いて、前記微粉炭供給手段は微粉炭を前記石炭ガス化炉に供給し、前記チャー供給手段はチャーを前記石炭ガス化炉に供給することを特徴としている。
【0009】上記構成によれば、加熱手段で加熱された可燃性ガスは温度が上昇しており、微粉炭やチャーなどの粉体燃料と混合しても、ガス中の水分が凝縮することはない。そのため、粉体燃料が搬送配管の内面に固着して搬送配管が閉塞することもなく、粉体燃料の搬送を安定して行うことができる。
【0010】また、前記加熱手段は、可燃性ガスが前記微粉炭供給手段で微粉炭に混合したとき、もしくは前記チャー供給手段でチャーに混合したときに、混合後の温度が露点以上となるように可燃性ガスを加熱することを特徴としている。
【0011】可燃性ガスが微粉炭もしくはチャーと混合したときに、その混合後の温度が露点以上に制御されていれば、ガス中の水分が凝縮するのを防ぐことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の石炭ガス化システムを応用した一例で、石炭ガス化複合発電システムの全体構成を示している。図1に示すように、石炭1は粉砕機2で粉砕されて微粉炭となり、熱風発生炉3に導入され、熱風発生炉3で発生する高温の加熱ガスにより乾燥される。乾燥後の微粉炭1は、一旦、ホッパ4に貯められた後、ロックホッパシステム5により加圧され、さらに搬送用ガス7で搬送されて石炭ガス化炉8に供給される。また、空気10は熱交換器11を通って精留塔12に送られ、この精留塔12で窒素と酸素に分離される。分離された酸素は圧縮機14で加圧され、ガス化剤として石炭ガス化炉8へ送られる。
【0013】石炭ガス化炉8のガス化部では、上記酸素により微粉炭1がガス化され、同時にガス化炉底部からスラグ15が流下する。石炭ガス化炉8で生成された生成ガスは、シンガスクーラ16で冷却された後、サイクロン17およびフィルタ18に導入され、ここでチャー13が回収される。回収されたチャー13は、ホッパ19〜21により加圧され、さらに搬送用ガス7で石炭ガス化炉8に送られてリサイクルされる。
【0014】一方、サイクロン17およびフィルタ18を通った生成ガスは、水洗浄塔24で冷却された後に、吸収塔26に導入される。そして生成ガスは、吸収塔26で脱硫され、硫化水素、硫化カルボニル等の硫黄化合物が除去されて、精製ガス29となる。
【0015】精製ガス29はガスタービン31に導入される。ガスタービン31では精製ガス29を燃焼させて回転し、その回転力によって発電機32が回転駆動される。ガスタービン31駆動後の燃焼排ガスは廃熱回収ボイラ33へ送られ、廃熱回収後に煙突34から大気中に放出される。
【0016】シンガスクーラ16および廃熱回収ボイラ33では熱交換によって蒸気が発生するが、シンガスクーラ16からの発生蒸気35と廃熱回収ボイラ33からの発生蒸気36は蒸気タービン37へ送られ、蒸気タービン37を回転させる。この蒸気タービン37も発電機32を回転駆動する。
【0017】本実施の形態では、水洗浄塔24出口の可燃性ガスライン40にリサイクルガス(可燃性ガスの一部)の取り出しライン41が接続され、この取り出しライン41には熱交換器42、圧縮機43、熱交換器44がガスの流れに沿って設けられている。そして、取り出しライン41に取り出されたリサイクルガスは、一旦、熱交換器42で冷却された後、圧縮機43で昇圧され、さらに熱交換器44で加熱される。加熱されたリサイクルガスは、微粉炭およびチャーの搬送用ガス7として用いられる。
【0018】なお、図中、22,25は熱交換器、23はタンク、27は再生器、28は再生廃ガス処理部、30は燃料遮断弁である。
【0019】図2は、熱交換器44廻りの詳細を示している。取り出しライン41には、熱交換器44に並列にバイパスライン45が設けられ、このバイパスライン45の途中に流量調節弁46が取り付けられている。また、取り出しライン41のうち熱交換器44の下流側には、温度検出器47、流量検出器48および流量調節弁49が設けられている。
【0020】熱交換器44には高温流体が流れており、リサイクルガスは熱交換器44で高温流体と熱交換して加熱される。そして、加熱後のリサイクルガスは温度が、常時、温度検出器47で検出され、その検出結果に基づいて流量調節弁44の開度が制御されている。すなわち、加熱後のリサイクルガスの温度が低い場合は、流量調節弁46の開度は閉じる方向に制御され、リサイクルガスの多くが熱交換器44を通って加熱される。また、加熱後のリサイクルガスの温度が高い場合は、流量調節弁46の開度は開ける方向に制御され、リサイクルガスの一部がバイパスライン45を通るようになり、熱交換器44での加熱が抑制される。これによって、リサイクルガスの温度を所定の温度に制御することが可能となる。
【0021】このように、本実施の形態では、リサイクルガスが所定温度となるように加熱制御されているので、リサイクルガスが微粉炭やチャーなどの粉体燃料と混合したときでも、リサイクルガス中の水分が凝縮することがなく、微粉炭やチャーの搬送配管の閉塞を防止できる。
【0022】次に、リサイクルガスと粉体燃料が混合した場合の、リサイクルガスの温度と露点との関係について説明する。図3は、リサイクルガスつまり搬送用ガスの温度と混合後の温度との関係を示している。従来方式すなわち搬送用ガスを加熱せずそのまま粉体燃料と混合させた場合、粉体燃料の温度によっては、粉体燃料と搬送用ガスが、混合した後の温度(以下、混合後の温度)が搬送用ガスの露点を下回り、搬送用ガス中の水分が凝縮することが分かる。
【0023】しかし、本実施の形態のように搬送用ガスを加熱すれば、混合後の温度が露点以上となり、搬送用ガス中の水分が凝縮することはない。よって、混合後の温度が露点以上となるように、搬送用ガスを加熱する必要がある。
【0024】本実施の形態によれば、リサイクルガスによる粉体燃料の搬送が可能となるため、補機動力の低減が可能となる。また、窒素ガス等の不活性ガスが精製ガスに混入するのを最小限に抑えることができるので、精製ガスの発熱量低下もなく、ガスタービンの出力向上を図ることができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、可燃性ガスが加熱されてから微粉炭やチャー等の粉体燃料に混合されるので、可燃性ガス中の水分が凝縮することがなく、また粉体燃料を搬送するための配管が閉塞するのも防止できる。その結果、粉体燃料の搬送を安定して行うことのできる。
【0026】また、リサイクルガスでの粉体燃料の搬送が可能となり、プラントの効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の石炭ガス化システムを応用した一例で、石炭ガス化複合発電システムの全体構成図である。
【図2】本発明の要部である熱交換器廻りの系統図である。
【図3】搬送用ガス温度と混合後の温度との関係を示した図である。
【符号の説明】
7 搬送用ガス
8 石炭ガス化炉
13 チャー
16 シンガスクーラ
17 サイクロン
18 フィルタ
24 水洗浄塔
26 吸収塔
29 精製ガス
31 ガスタービン
32 発電機
40 可燃性ガスライン
41 取り出しライン
44 熱交換器
45 バイパスライン
46 流量調節弁
47 温度検出器
48 流量検出器
49 流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 微粉炭とガス化剤とを反応させて可燃性ガスを生成する石炭ガス化炉と、該石炭ガス化炉に微粉炭を供給する微粉炭供給手段と、前記石炭ガス化炉で可燃性ガス生成時に発生するチャーを回収し石炭ガス化炉に供給するチャー供給手段と、チャー回収後の可燃性ガスを脱硫して精製ガスを得る脱硫手段とを備えた石炭ガス化システムにおいて、前記チャー回収後の可燃性ガスの一部を取り出して加熱する加熱手段が設けられ、その加熱後の可燃性ガスを搬送用ガスとして用いて、前記微粉炭供給手段は微粉炭を前記石炭ガス化炉に供給し、前記チャー供給手段はチャーを前記石炭ガス化炉に供給することを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項2】 請求項1に記載の石炭ガス化システムにおいて、前記加熱手段は、可燃性ガスが前記微粉炭供給手段で微粉炭に混合したとき、もしくは前記チャー供給手段でチャーに混合したときに、混合後の温度が露点以上となるように可燃性ガスを加熱することを特徴とする石炭ガス化システム。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開2000−328074(P2000−328074A)
【公開日】平成12年11月28日(2000.11.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−140905
【出願日】平成11年5月21日(1999.5.21)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)