説明

砂型の分離装置

【課題】
砂型の分離作業における汎用性を向上させること。
【解決手段】
製品模型12が固定され、製品模型12に対応して砂型13を形成する木枠11と、木枠11が設置される基台14と、木枠11を把持する左アーム18及び右アーム19とを備え、基台14に対して木枠11を相対移動させるリフト部材16と、リフト部材16において延在し、左アーム18及び右アーム19の少なくともいずれか一方を移動自在に案内する支持レール17と、支持レール17に案内される左アーム18及び右アーム19の少なくともいずれか一方をリフト部材16に保持するストッパ19bとを有する構成としたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂型の分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
砂型鋳造は、鋳砂をつき固めてつくった砂型を用いて鋳物を鋳造する方法である。
【0003】
砂型鋳造の作業手順としては、まず、型枠内に製品の模型を設置し、この模型を覆うように型枠内に鋳砂を詰め、この鋳砂をつき固める。つき固められた鋳砂が凝固した後、模型から凝固した鋳砂(砂型)を分離する。そして、この砂型に湯(例えば、溶融させたアルミ材)を注入し、所定の時間が経過した後に、冷却されて凝固した湯(鋳物)を砂型から取り出すことで、製品形状を有する鋳物が鋳造される。
【0004】
上述した砂型鋳造において、模型と砂型とを分離する場合には、砂型に破損が生じないように、模型を砂型に対して平行に移動させる必要がある。
【0005】
模型と砂型とを分離するための装置が、後述の特許文献1に記載されている。この装置について、図5(a)、(b)を参照して説明する。
【0006】
この装置1は、保持部2と、シリンダ3と、型枠4とを備えている。製品の模型5は、保持部2上に固定される。シリンダ3は、駆動源(図示省略)の駆動力を受けて床面6の上下方向(図5(a)及び図5(b)示上下方向)に伸縮自在となっている。型枠4は、その幅方向(図5(a)及び図5(b)示左右方向)の各側面において、支持アーム7により支持されている。支持アーム7は、シリンダ3の上端部3aに連結されている。これにより、型枠4は、シリンダ3の伸縮にともなって、床面6の上下方向に移動する構造となっている。
【0007】
図5(a)において、保持部2上に固定された模型5を取り囲むように型枠4が設置され、この型枠4内に砂型8が保持されている。
【0008】
この状態から、駆動力を受けてシリンダ3が床面6の上方に伸びると、このシリンダ3に支持アーム7を介して連結された型枠4が同方向に移動する。これにより、模型5が固定された保持部2に対して、型枠4が砂型8と共に床面6の上方に相対的に移動し、最終的に、図5(b)に示す様に、砂型8と模型5とが分離される(砂型の分離作業)。
【特許文献1】特表2001−512048号公報(図3e及び図3fを参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した装置1において、型枠4は、その幅方向の各側面において、支持アーム7により支持されている。この支持アーム7に連結されるシリンダ3の位置は、型枠4の幅方向に関して決まっているので、支持アーム7の位置も、型枠4の幅方向に関して決まっている。
【0010】
したがって、支持アーム7が支持できる型枠4のサイズも必然的に決まってしまうことになり、装置1において使用できる型枠4のサイズに制約があった。
【0011】
つまり、装置1における砂型の分離作業においては、模型5から分離できる砂型8のサイズが限られていた。
【0012】
例えば、様々なサイズの砂型8を製作する必要がある場合、上述した装置1は、支持アーム7によって支持し得るサイズの型枠4の範囲内でしか、砂型の分離作業を行うことができなかった。このため、装置1は、多種少量生産に対応できる汎用性の高い装置であるとは言い難かった。
【0013】
よって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、砂型の分離作業における汎用性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にて講じた技術的手段は、請求項1に記載の様に、模型が固定され、該模型に対応して砂型を形成する型枠と、前記型枠が設置される基台と、前記型枠を把持する第1把持部材及び第2把持部材とを備え、前記基台に対して前記型枠を相対移動させるリフト部材と、前記リフト部材において延在し、前記第1把持部材及び第2把持部材の少なくともいずれか一方を移動自在に案内するレールと、前記レールに案内される前記第1把持部材及び第2把持部材の少なくともいずれか一方を前記リフト部材に保持する固定部材とを有する構成としたことである。
【0015】
好ましくは、請求項2に記載の様に、前記基台から前記型枠の移動方向に延在し、前記リフト部材を移動自在に支持する案内部材を有すると良い。
【0016】
好ましくは、請求項3に記載の様に、前記レールは、前記型枠の移動方向に直交する方向に延在すると良い。
【0017】
好ましくは、請求項4に記載の様に、前記レールは、前記第1把持部材及び第2把持部材の少なくともいずれか一方を摺動自在に支持すると良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基台に対して型枠を相対移動させるリフト部材は、型枠を把持する第1把持部材と第2把持部材とを備えている。また、これら第1把持部材と第2把持部材の少なくともいずれか一方は、リフト部材において延在するレールに移動自在に案内されている。この場合、第1把持部材及び第2把持部材、若しくは、これらのいずれか一方を、レールに沿って移動させることで、第1把持部材に対する第2把持部材の位置を変化させることができる。
【0019】
したがって、様々なサイズの型枠を用いる場合であっても、そのサイズに合わせて第1把持部材と第2把持部材との位置関係を調整することで、型枠を確実に把持できる。
【0020】
そして、型枠が確実に把持された状態で、この型枠をリフト部材が基台に対して相対移動させることで、型枠に固定された模型から砂型を分離できる(砂型の分離作業)。
【0021】
このように、本発明の砂型の分離装置は、様々なサイズの型枠を用いて砂型を製作する場合であっても、その型枠のサイズに合わせて砂型の分離作業を行うことができ、汎用性の高い装置となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を基に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る砂型分離装置10(砂型の分離装置)の構造を概略的に示す正面図、図2は、図1におけるII方向矢視図である。図3は、木枠11(型枠)と、この木枠11の底面11aに固定された製品模型12(模型)と、この製品模型12に対応して形成された砂型13とを模式的に示す図である。
【0024】
砂型分離装置10は、木枠11に固定された製品模型12と砂型13とを分離するための装置である。
【0025】
砂型分離装置10は、基台14と、支柱15と、リフト部材16と、支持レール17と、左アーム18及び右アーム19とを備えている。
【0026】
基台14は、平面部14aを有するテーブル状のものである。基台14の平面部14aには、木枠11(図3参照)が設置される。また、基台14には、脚部14bが設けられている。基台14は、この脚部14bを介して床面(図示省略)に設置される。
【0027】
支柱15(案内部材)は、基台14において、装置左右方向(図1示左右方向)の各側にそれぞれ設けられている。支柱15は、基台14から装置上方(図1及び図2示上方)(型枠の移動方向)に延在している。なお、ここで言う装置上方とは、基台14の平面部14aに鉛直な方向に相当する。
【0028】
リフト部材16は、装置左右方向がその長手方向となる、略プレート状のものである。リフト部材16は、その装置左右方向の各側において、スライダ16aを介して、支柱15に移動自在に支持されている。なお、図1及び図2中実線で示すリフト部材16は、木枠11を持ち上げる時の起点である初期位置に位置している。
【0029】
また、リフト部材16には、油圧シリンダ20のロッド20aが連結されている(図2参照)。この油圧シリンダ20には、基台14に固定されたハンドポンプ21から作動油が供給される構造となっている。ハンドポンプ21のレバー21aを操作すると、作動油がハンドポンプ21から油圧シリンダ20へとホース21bを経由して供給され、油圧シリンダ20のロッド20aがケース20bに対して装置上方に伸びる。これにともなって、ロッド20aに連結されたリフト部材16が、図2中2点鎖線で示す様に、支柱15に沿ってその初期位置から装置上方に移動する。つまり、リフト部材16は、油圧による駆動力を受けて、基台14に対して装置上方に移動する構造となっている。
【0030】
支持レール17(レール)は、リフト部材16に設けられている。支持レール17は、装置上下方向(図1示上下方向)に関して、距離を隔てて一対設けられている。支持レール17は、装置左右方向(図1示左右方向)(型枠の移動方向に直交する方向)に延在している。
【0031】
左アーム18(第1把持部材)及び右アーム19(第2把持部材)は、いずれもリフト部材16に設けられている。左アーム18は、図2に示す様に、装置前後方向(図2示左右方向)がその長手方向となる、略プレート状のものである。左アーム18は、リフト部材16において、装置左方(図1示左方)の側に取り付けられている。また、左アーム18において、装置下方(図1及び図2示下方)の端部には、係合部18aが設けられている。係合部18aは、装置前後方向に延在し、その横断面の形状は角型となっている。上述した木枠11(図3参照)は、この係合部18aを介して、左アーム18により把持される。
【0032】
右アーム19は、左アーム18と同様に、装置前後方向がその長手方向となる、略プレート状のものである。右アーム19は、リフト部材16において、左アーム18に対して装置右方(図1示右方)の側に取り付けられている。そして、右アーム19には、左アーム18と同様に、係合部19aが設けられている。上述した木枠11(図3参照)は、この係合部19aを介して、右アーム19により把持される。
【0033】
また、右アーム19は、上述した支持レール17に摺動自在に支持されている。これにより、右アーム19は、図1中2点鎖線で示す様に、支持レール17に沿って、装置左右方向に移動できる。つまり、装置左右方向に関して、リフト部材16における左アーム18と右アーム19との間隔が可変となっている。この構造により、砂型13を製作するための木枠11を、そのサイズに合わせて確実に把持することができる。つまり、本発明の砂型分離装置10は、様々なサイズの砂型13の製作に用いることができ、例えば、多種少量生産にも対応し得る、汎用性の高い装置となっている。
【0034】
さらに、右アーム19において、支持レール17の近傍には、ストッパ19b(固定部材)が設けられている。ストッパ19bは、ブラケット19cと、ボルト19dとを備えている。ボルト19dは、ブラケット19cを装置前後方向に貫通している。ボルト19dは、ブラケット19cに螺合されており、ボルト19cは、その回転にともなって、ブラケット19cに対して装置前後方向に移動する。なお、ボルト19dの先端部は、支持レール17に対向するように配置されている。したがって、ブラケット19cに対してボルト19dを、その先端部が支持レール17に近づく方向に回転させると、ボルト19dの先端部は、支持レール17に最終的に当接する。そして、ボルト19dをさらに同方向に回転させることで、ボルト19dの先端部が、支持レール17に対して圧接される。この時点で、ボルト19dの先端部と支持レール17との間の摩擦力により、右レール19が支持レール17に対して摺動できない状態となる。つまり、ストッパ19bによって、右アーム19が、支持レール17(リフト部材16)に対して保持される構造となっている。
【0035】
なお、以上の説明においては、リフト部材16に設けられた支持レール17が右アーム19を摺動自在に支持する構造となっていたが、これに限定されない。例えば、支持レール17が、左アーム18と右アーム19とを、それぞれ摺動自在に支持する構造であっても良い。この場合、ストッパ19bに対応する構造を、左アーム18の側にも設ければ良い。
【0036】
また、右アーム19を摺動自在に支持する支持レール17が、装置左右方向に延在する例を示したが、これに限定されない。例えば、使用される木枠11のサイズに応じて左アーム18に対する右アーム19の位置が変化するように、支持アーム17が右アーム19を支持する構造であれば良い。
【0037】
また、リフト部材16に設けられた支持レール17が右アーム19を移動自在に案内する構造であれば良く、支持レール17が右アーム19を摺動自在に支持する構造に限定されない。
【0038】
以下、砂型分離装置10を用いて製品模型12から砂型13を分離する作業(砂型の分離作業)の態様について、図4を参照して説明する。
【0039】
図4は、砂型分離装置10を用いた砂型の分離作業の態様を模式的に示す図である。
【0040】
まず、ハンドポンプ20(図1及び図2参照)の操作により、リフト部材16を、その初期位置に位置させる。この状態で、基台14の平面部14aに、プレート状の受け板22を設置する。そして、図4(a)に示す様に、砂型13を保持した木枠11を、その底面11aの側が装置上方(図4(a)示上方)に位置するように、受け板22上に設置する。このとき、リフト部材16の左アーム18の係合部18aを、木枠11に設けられた凸部11bに係合させておく。
【0041】
次に、リフト部材16の右アーム19を、木枠11のサイズに合わせて、図4(b)中2点鎖線で示す様に、支持レール17に沿って移動させる。そして、左アーム18の場合と同様に、右アーム19の係合部19aを、木枠11の凸部11bに係合させた後、ストッパ19bを用いて、右アーム19を支持レール17に対して保持する。これにより、砂型13を保持した木枠11が、左アーム18及び右アーム19によって確実に把持された状態となる。また、このとき、木枠11及び製品模型12から砂型13が確実に分離されるように、木槌等を用いて、木枠11の底面11aに装置上方(図4(b)示上方)から軽く振動を与えておく。
【0042】
そして、ハンドポンプ20(図1及び図2参照)の操作により、油圧による駆動力をリフト部材16に与え、図4(c)に示す様に、木枠11を把持したリフト部材16を支柱15に沿って装置上方(図4(c)示上方)に移動させる。このとき、木枠11は、リフト部材16により、基台14に対して装置上方に相対移動する(持ち上げられる)ことになる。
【0043】
木枠11内に保持された砂型13においては、上述した木槌等による振動の付加によって、木枠11及び製品模型12に対する摩擦力(保持力)が、自身の重量(自重)よりも小さくなっている。したがって、リフト部材16により、木枠11が装置上方に持ち上げられると、基台14の平面部14aに設置された受け板22上に砂型13が残る。こうして、木枠11に固定された製品模型12から砂型13が分離される。
【0044】
以上説明した様に、本発明の砂型分離装置10によれば、油圧による駆動力を受けて基台14に対して装置上方に移動するリフト部材16には、木枠11を把持する左アーム18と右アーム19とが設けられている。また、これら左アーム18と右アーム19の少なくともいずれか一方は、リフト部材16において装置左右方向に延在する支持レール17に摺動自在に支持されている。この場合、左アーム18と右アーム19、若しくは、これらのいずれか一方を、支持レール17に沿って摺動させることで、左アーム18に対する右アーム19の位置を、装置左右方向に関して変化させることができる。
【0045】
したがって、様々なサイズの木枠11を用いる場合であっても、そのサイズに合わせて左アーム18と右アーム19との位置関係を調整することで、木枠11を確実に把持できる。
【0046】
そして、リフト部材16が木枠11を確実に把持した状態で、このリフト部材16を基台14に対して装置上方に移動させることで、木枠11内に固定された製品模型12から砂型13を分離できる(砂型の分離作業)。
【0047】
このように、本発明の砂型分離装置10は、様々なサイズの木枠11を用いて砂型13を製作する場合であっても、その木枠11のサイズに合わせて砂型の分離作業を行うことができ、汎用性の高い装置となっている。
【0048】
さらに、リフト部材16は、基台14から装置上方に延在する支柱15により移動自在に支持されている。したがって、リフト部材16が油圧による駆動力を受けて装置上方に移動する場合、リフト部材16の動きが支柱15によって案内される。その結果、リフト部材16の装置上方への移動が安定し、砂型の分離作業をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る砂型分離装置の構造を概略的に示す正面図。
【図2】図1におけるII方向矢視図。
【図3】木枠と、木枠の底面に固定された製品模型と、製品模型に対応して形成された砂型とを模式的に示す図である。
【図4】砂型分離装置を用いた砂型の分離作業の態様を模式的に示す図。
【図5】公知の砂型分離装置の構造を示す図。
【符号の説明】
【0050】
10 砂型分離装置(砂型の分離装置)
11 木枠(型枠)
12 製品模型(模型)
13 砂型
14 基台
15 支柱(案内部材)
16 リフト部材
17 支持レール(レール)
18 左アーム(第1把持部材)
19 右アーム(第2把持部材)
19b ストッパ(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型が固定され、該模型に対応して砂型を形成する型枠と、
前記型枠が設置される基台と、
前記型枠を把持する第1把持部材及び第2把持部材とを備え、前記基台に対して前記型枠を相対移動させるリフト部材と、
前記リフト部材において延在し、前記第1把持部材及び第2把持部材の少なくともいずれか一方を移動自在に案内するレールと、
前記レールに案内される前記第1把持部材及び第2把持部材の少なくともいずれか一方を前記リフト部材に保持する固定部材と
を有することを特徴とする砂型の分離装置。
【請求項2】
前記基台から前記型枠の移動方向に延在し、前記リフト部材を移動自在に支持する案内部材を有することを特徴とする請求項1に記載の砂型の分離装置。
【請求項3】
前記レールは、前記型枠の移動方向に直交する方向に延在することを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の砂型の分離装置。
【請求項4】
前記レールは、前記第1把持部材及び第2把持部材の少なくともいずれか一方を摺動自在に支持することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の砂型の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35260(P2006−35260A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218397(P2004−218397)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】