説明

砂岩調塗膜形成用組成物及びその形成方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被塗物表面に天然砂岩調の塗膜を形成する組成物およびその形成方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来より、天然石材のような重量物、かつ、加工が不便な材料を使用せずに、天然石同様の意匠感を表現できる各種の塗材が、建築物、土木構造物等の表面に施工されている。このような天然石調塗材としては、御影石調、大理石調と並んで、天然砂岩調の物も存在している。この天然砂岩調とは、堆積岩の割り肌のような、不規則な表面凹凸形状と、砂礫からなる表面のザラザラとした触感を特徴とするものである。天然砂岩調塗材とは、このような天然砂岩調の塗膜を形成する組成物であり、その不規則な表面形状の形成方法の一つには、左官によるコテ塗りがあげられる。このようなコテ塗りでは、被塗物に天然砂岩調塗材を予め平滑に塗付し、その直後、コテにて部分的に塗材を配りながら、模様形成を行っていくものである。一方、天然砂岩の表面形状を型取りした人工型に、天然砂岩調塗材を流し込んで、乾燥後に脱型する方法によっても天然砂岩調塗膜を形成することが可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような天然砂岩調塗材は、現場施工の場合には、前述の方法のうちコテ塗りが用いられることが多い。このようなコテ塗り施工では、天然砂岩調塗材を数mm程度に厚付けし、さらにコテにて不規則な表面凹凸形状を付与するため、コテによる模様形成の行い易さが必要である。コテによる模様形成の行い易さとは、塗材がコテによって軽く、スムースにのびること、コテへの付着がなく、模様を作りコテを塗材から離した際の離れ具合が良好であること、コテ切れがよいこと、形成された凹凸模様は、塗材のたれによって崩れたりせず、比較的早急に乾燥硬化すること等である。しかしながら、早急な乾燥をするような塗材の場合には、形成された天然砂岩調塗膜の表面が、急激な乾燥によってクラックを生じたりする場合があった。
【0004】したがって、本発明が解決しようとする課題は、コテ塗りによ、天然砂岩調塗膜を形成することができ、特にコテ塗りによる施工においては、コテによる模様形成が非常に行い易く、形成された模様はタレによって崩れることが無いという作業性に優れた塗材であり、その乾燥性に優れる上に、表面のクラックや皮張りを生ずることのない組成物を得ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決する為に、本発明者らは、天然砂岩調塗膜形成用組成物として、合成樹脂エマルション、着色骨材、無機質粉体を基本の配合組成として、これらのうち着色骨材、無機質粉体の粒径を特定のものとし、さらに合成繊維として、特定のものを使用することに想到した。
【0006】すなわち、■合成樹脂エマルションを固形分で100重量部に対して、■平均繊維長0.5〜5mm、繊度0.5〜10デニールの合成繊維を5〜15重量部、■粒度50〜500μm以内の着色骨材を100〜600重量部、■粒度50〜1000μm以内の無機質粉体を100〜600重量部、■ポリエチレンオキサイドを固形分で1〜10重量部含有し、着色骨材と無機質粉体の重量比率が、6:1〜1:6であることを特徴とするものである。
【0007】さらに本発明では、形成される凹凸模様が、よりたれにくくし、さらに耐水性の向上を図るために、さらに■ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂を固形分で0.5〜5重量部含有させても良い。
【0008】また、本発明の実際の使用時においては、前述の各成分に、さらに適宜水を加えて施工するものであるが、その場合において水を混合した組成物全体に占める固形分の比率が、60〜90%の範囲においてコテ塗り、流し込み共に最適な流動性に調整されるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において使用する■合成樹脂エマルションは、重合性不飽和二重結合を有するモノマーをエマルション重合して得られるもの、または、予め合成した樹脂を、水系分散媒に分散剤を使用して分散したものの何れでもよく、さらに粉末型のエマルションでもよい。但し、粉末型の場合は、使用時に水の添加が必須となる。
【0010】これらのエマルションの種類は、ポリ酢酸ビニル系、ポリアクリル酸エステル系、アクリル−スチレン共重合体系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、酢酸ビニル−アクリル共重合体系、エチレン−塩化ビニル共重合体系、酢酸ビニル−ベオバ共重合体等のうちの少なくとも1種以上からなるものである。
【0011】■平均繊維長0.5〜5mm、繊度0.5〜10デニールの合成繊維とは、平均繊維長、繊度がこの範囲にあれば特に限定されない。ここで繊度とは、繊維の太さを現す指標であり、長さ9000m当たりの質量のグラム数を表すデニールで表現するものである。
【0012】このような条件を満たす繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン、ビニロン、ビスコースレーヨン等があげられる。
【0013】■粒度が50〜500μm以内の着色骨材は、粒度がこの範囲にあり、有色のものであれば特に限定されるものではなく、珪砂、砕石、ガラスビース等の粒状物表面に、耐熱性の高い顔料を添加した珪酸ソーダ系のバインダーを高温で焼き付ける方法、アミノアルキッド樹脂塗料等による焼付コーティングを施したもの、着色ラッカーにより焼付工程を省略したもの、また、耐候性を考慮した場合には、アルコキシシリル基を官能基として含み、主鎖がアクリルであるシロキサン架橋型反応性オリゴマーと、顔料、硬化剤からなる着色材によって着色コーティングしたもの、また、顔料と共に焼成したセラミックスの粉砕物、着色天然石の粉砕物等適宜使用可能である。
【0014】■粒度50〜1000μmの無機質粉体は、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、寒水石、珪藻土、石英粉、珪砂、バライト粉、ウオラストナイト等であり、平均粒径がこの範囲にあれば特に限定されるものではない。
【0015】■ポリエチレンオキサイドは、エチレンオキサイド分子を1万ないし数十万ほどに連結させて得られる高分子重合体で、エチレンオキサイド繰り返し部分の数が300程度以上のものである。
【0016】次に■ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は、例えば、脂肪族ジカルボン酸と、ポリアルキレンポリアミンを縮合させて得られる低分子量ポリアミドポリアミンを、水溶液中でエピクロルヒドリンと反応させて得られるポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンや、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等のアミノアクリルアミドおよびアミノメタクリルアミド等のエピクロルヒドリン付加物による重合体または共重合体分散液、またはさらに水溶性の官能基を有するエチレン性不飽和結合含有モノマーとの共重合による水溶性樹脂等があげられる。
【0017】本発明組成物は、これら■から■ないしは■から■を混合して製造するものであるが、■、■については先述のように、6:1〜1:6が望ましい。これは骨材粒径、配合比率と、樹脂の比重、配合比率との関連からこの範囲の場合に、コテ塗り作業性が向上すると共に、骨材の沈降が少なくなるためである。
【0018】本発明組成物は■の合成樹脂エマルション100重量部に対して、■〜■の各構成成分比率が前述の範囲でなければならない。この範囲を各構成成分が外れる場合には、乾燥性が低下したり、表面クラックが生じやすくなったり、コテによる施工の場合にのびが悪くなったり等するため、本発明の効果を十分に得ることができなくなる。例えば■の合成繊維が本発明の規定範囲より多くなると、コテ塗りの際に塗料がパサつく為、コテがスムースに動かしにくくなる結果、砂岩調の凹凸模様を形成しにくくなる。逆に合成繊維が本発明の規定範囲より少なくなると、凹凸模様のたれや表面にクラックを生じることになる。コテ塗り時ののびの悪さは■のポリエチレンオキサイドが少ない場合にも同様に生じる。さらに、■、■の骨材が少なくなると、表面クラックが生じやすくなり、骨材が多い場合には組成物がぱさつき、やはりコテ塗り時ののびが悪くなる。
【0019】本発明の組成物には、さらに通常このような塗材に配合することができる、各種添加剤、すなわち可塑剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、沈降防止剤、難燃剤等や、顔料、染料を本発明の効果が損なわれない程度に配合することができる。
【0020】本発明組成物の実際の施工は、予め混合された組成物を現場にてハンドミキサーで再度混合しコテ塗りするものである。コテ塗りの際に左官の手作業によって天然砂岩調の凹凸模様を形成する。この場合に複数の異色の組成物を製造しておき、コテにて適当に異色の組成物を配り塗りした後に、その境界部分を均す方法により多彩色感を出すことができる。また、凹凸模様の形成においては、より砂岩調の表面のざらざらした感じを表現するために、塗材の未乾燥時に刷毛にてその表面に引き跡をつけても良い。
【0021】これらの砂岩調塗膜は、さらに天然砂岩調に近い意匠感を付与するために、砂岩調塗膜を形成した同一組成物、または、骨材粒度や色相の異なる砂岩調塗膜形成用組成物を過剰希釈したものの1種または2種以上を、先に形成した砂岩調塗膜表面に刷毛塗りや吹付塗装しても良い。
【0022】
【作用】本発明の砂岩調塗膜形成用組成物は、その各構成成分の組合せによって、塗膜を形成した場合に最適な状態となり、その結果、優れた乾燥性と塗膜表面へのクラックの生じ難さという相反する効果、並びに長期保存の際の沈降性の防止効果が得られるが、そのような効果は特に、平均繊維長、繊度を規定した合成繊維と、平均粒径、粒度の規定された着色骨材と無機質粉体との充填効果、ポリエチレンオキサイドの流動性調整効果等が複合された結果生じるものである。
【0023】
【実施例】以下に本発明の効果を明確にするべく各種試験について、実施例、比較例として対比を行った。
【0024】(試験方法)
*砂岩調塗膜形成用組成物の製造攪拌タンクに合成樹脂エマルションを投入し、続いてディゾルバーにて攪拌しながら、表1に示した原料を、表2に示した配合比率となるように投入した。攪拌を続けながら、各原料が偏らずほぼ均一に混合した状態にて攪拌を終了し、しばらく静置し、その後以下の試験を行った。
【0025】*たれ性試験「JIS A 6021 屋根用塗膜防水材 5.10 たれ抵抗性能」に準拠して、長さ400mm、幅200mm、厚み5mmに切断したフレキシブルボードに、エスケー化研株式会社製「ミラクシーラーES」を、塗付量0.35kg/m2でエアレススプレーガンにて塗装し、6時間乾燥養生した。その平滑面の周囲に、フレキシブルボードの長手方向に40mmの塗膜のたれ代を残して、幅10mm、厚さ6mmの型枠を貼り付け、水平に置いた後に形成された凹面部分に、上記のように製造した砂岩調塗膜形成用組成物をコテにて平滑に塗付した。塗付直後に、この試験体の200mmのたれ代を設けた一辺の型枠を取り除き、続いて試験体全体を鉛直に保持し、20℃で24時間静置する。その後、型枠を除去した部分の砂岩調塗膜のたれの状態を目視にて確認し、たれの全くないものを○、若干たれを生じるものを△、大きなたれを生じるものを×として評価した。
【0026】*コテ作業性試験面積1m2 の壁面に、エスケー化研株式会社製「ミラクシーラーES」を、塗付量0.35kg/m2 でエアレススプレーガンにて塗装し、6時間乾燥養生した後、上記のように製造した砂岩調塗膜形成用組成物をコテにて厚み6mmで平滑に塗付した。この際に組成物がコテにてスムースにのびるかどうかを確認し、のびがスムースなものを○、摩擦が大きくのびが悪いものを×として評価した。その後同一材料を、平滑面に部分的に配りながら凹凸模様を形成した。この時の凹凸模様の付けやすさについて、凹凸模様を形成しやすく、かつ、形成した凹凸模様がそのまま維持されるものを○、凹凸が付けにくく、凹凸模様を付けてもすぐ崩れるものを×とした。さらに、凹凸模様形成の際に、コテ切れの良いものを○、コテ切れの悪いものを×として評価した。
【0027】*表面クラック試験長さ400mm、幅200mm、厚み5mmに切断したフレキシブルボードに、その平滑面の、400mmの二辺に、幅10mm、厚さ2mmの型枠を貼り付けた。さらに該型枠の半分の長さの200mmで、幅10mm、厚さ6mmの型枠を先に貼り付けた型枠の表面に積層して貼り付け、図1のように型枠が2mm、6mmの階段状となるようにした。このような型枠内に、上記のように製造した砂岩調塗膜形成用組成物をコテにて階段状となるように塗付した後、20℃で24時間乾燥させ、その表面および、階段状の入隅部分にクラックが発生していないかどうか目視にて確認した。このときクラックの発生がないものを○、クラックが発生しているものを×として評価した。
【0028】*乾燥性試験幅10mm、厚さ4mmの型枠を使用した以外は、たれ試験の際と同様にして試験体を作成した。コテにて平滑に塗装した直後にその試験体の重量を測定しておき、温度20℃、湿度65%で養生した。このとき5時間後、10時間後、20時間後の重量をそれぞれ測定し、その重量減少を計算によって求めた。次に試験体を100℃で絶乾状態まで加熱し重量を測定し、この時の重量と当初の重量との差を揮発分重量とした。この揮発分重量を100として、5時間後、10時間後、20時間後の重量減少が、何%となるかを計算した。
【0029】*耐水性試験幅10mm、厚さ4mmの型枠を使用した以外は、たれ試験の際の試験体作成と同様にして、コテにて平滑に塗装した後、7日間乾燥養生したものを、50℃の温水に24時間浸漬し、その後引き上げて、その表面の状態を目視にて確認した。このとき、砂岩調塗膜に異常がないものを○、若干の白化が見られるものを△、流出が見られるものを×として評価した。
【0030】*外観試験コテ作業性試験を行った後の壁面を目視にて確認し、天然砂岩の表面外観に非常に近いものを○、外観不良を×として評価した。
【0031】以下にこれら試験の結果について解説する。
【0032】(実施例1)表1の原料を使用して、表2に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表4に示したように、たれ性、コテ切れ性、表面クラックにおいて非常に優れた結果を得た。またコテののび、凹凸模様付与性、耐水性についても概ね良好であった。また、乾燥性については初期の5時間経過時点で、後述する各比較例よりも重量減少率が大きく、乾燥性に優れることがわかった。このように乾燥性に優れながら、まったく表面クラックを発生せず、その塗膜外観は、天然砂岩の表面に非常に類似していた。
【0033】(実施例2)表1の原料を使用して、表2に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表4に示したように、コテののび性が非常に優れるという結果を得た。またたれ性試験、凹凸模様付与性、コテ切れ性、表面クラック、耐水性についても概ね良好であった。また、乾燥性については初期の5時間経過時点で、後述する各比較例よりも重量減少率が大きく、乾燥性に優れることがわかった。このように乾燥性に優れながら、表面クラックをほとんど発生せず、その塗膜外観は、天然砂岩の表面に非常に類似していた。
【0034】(実施例3)表1の原料を使用して、表2に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表4に示したように、コテの切れ性が非常に優れるという結果を得た。またたれ性試験、コテののび性、凹凸模様付与性、表面クラック、耐水性についても概ね良好であった。また、乾燥性については初期の5時間経過時点で、後述する各比較例よりも重量減少率が大きく、乾燥性に優れることがわかった。このように乾燥性に優れながら、表面クラックをほとんど発生せず、その塗膜外観は、天然砂岩の表面に非常に類似していた。
【0035】(実施例4)表1の原料を使用して、表2に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表4に示したように、たれ性、コテの切れ性、表面クラック、耐水性が非常に優れるという結果を得た。また、コテののび性、凹凸模様付与性についても概ね良好であった。また、乾燥性については初期の5時間経過時点で、後述する各比較例よりも重量減少率が大きく、乾燥性に優れることがわかった。このように乾燥性に優れながら、表面クラックをほとんど発生せず、耐水性にも優れるという特徴により、施工後養生期間が短い場合に、降雨があっても問題を生じることが少ない。また、形成された塗膜外観は、天然砂岩の表面に非常に類似していた。
【0036】(比較例1)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表5に示したように、ビニロンの繊維長が本発明規定範囲より短い為、たれ性、表面クラック、耐水性において実施例より劣り、乾燥性においても初期の5時間経過時点で、実施例より重量減少率が小さく乾燥に時間がかかることがわかった。また、形成された塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0037】(比較例2)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表5に示したように、ビニロンの繊維長が本発明規定範囲より長い為、コテののび、凹凸模様付与性において実施例より劣った。また、形成された塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0038】(比較例3)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表5に示したように、ビニロンの配合比率が本発明規定範囲より多い為、コテののび、凹凸模様付与性において実施例より劣り、乾燥性においても初期の5時間経過時点で、実施例より重量減少率が小さく乾燥に時間がかかることがわかった。さらに、耐水性においても流出が発生し非常に劣ることになった。また、形成された塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0039】(比較例4)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表5に示したように、ビニロンの配合比率が本発明規定範囲より少ない為、コテ切れ、表面クラックにおいて実施例より劣った。また、形成された塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0040】(比較例5)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表5に示したように、無機質粉体の粒度が本発明規定範囲より小さい為、コテ切れ、表面クラックにおいて実施例より劣り、乾燥性においても初期の5時間経過時点で、実施例より重量減少率が小さく乾燥に時間がかかることがわかった。さらに、耐水性においても若干の白化がみられた。また、形成された塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0041】(比較例6)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表6に示したように、無機質粉体の粒度が本発明規定範囲より大きい為、たれ性、コテののび、凹凸模様付与性において実施例より劣った。また、塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0042】(比較例7)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表6に示したように、無機質粉体の配合比率が本発明規定範囲より多い為、コテののび、凹凸模様付与性において実施例より劣った。また、塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0043】(比較例8)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表6に示したように、無機質粉体の配合比率が本発明規定範囲より少ない為、たれ性、コテの切れ、表面クラックにおいて実施例より劣り、乾燥性においても初期の5時間経過時点で、実施例より重量減少率が小さく乾燥に時間がかかることがわかった。さらに、耐水性においても若干の白化がみられた。また、塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0044】(比較例9)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表6に示したように、ポリエチレンオキサイドが配合されていない為、コテののび、凹凸模様付与性、表面クラック性において実施例より劣った。また、塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0045】(比較例10)表1の原料を使用して、表3に記載の配合例のように、砂岩調塗膜形成用組成物を製造し、上記の試験方法に基づいて各種試験を行った結果、表6に示したように、合成繊維の代わりに、天然繊維のパルプが配合されている為、コテののび、凹凸模様付与性において実施例より劣り、乾燥性においても初期の30分時点で、実施例より重量減少が小さく乾燥に時間がかかることがわかった。さらに、耐水性においても若干の白化がみられた。また、塗膜外観は、天然砂岩の表面意匠とは異なるものとなった。
【0046】
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【0047】
【発明の効果】本発明の効果は、従来の砂岩調塗膜形成用組成物が、形成される砂岩調塗膜の表面にクラックを生じることが多いのに対して、非常にクラックを発生しにくいことにある。また、その一方で乾燥性や耐水性に優れるので、施工後の降雨にも強く、未乾燥の状態が比較的長い従来のものに比較して、風雨によって形成された凹凸模様が崩れにくい。さらに、このような左官の手作業による模様形成材料においては、コテ作業性が非常に重要であるが、本発明の組成物においては、コテののび、凹凸模様の付与しやすさ、コテ切れの良さの何れにおいても非常に優れており、かつ、形成された凹凸模様が維持され崩れないような粘性に調整されているため、天然砂岩調の表面意匠を形成する場合に非常に扱いやすい塗材といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面クラック試験の試験体作製のための、型枠を貼り付けたフレキシブルボードを示す斜視図
【符号の説明】
a フレキシブルボード
b 2mmの型枠
c 6mmの型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】■合成樹脂エマルションを固形分で100重量部に対して、■平均繊維長0.5〜5mm、繊度0.5〜10デニールの合成繊維を5〜15重量部、■粒度50〜500μm以内の着色骨材を100〜600重量部、■粒度50〜1000μm以内の無機質粉体を100〜600重量部、■ポリエチレンオキサイドを固形分で1〜10重量部含有し、着色骨材と無機質粉体の重量比率が、6:1〜1:6であることを特徴とするコテ作業性に優れる砂岩調塗膜形成用組成物。
【請求項2】さらに、■ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を固形分で0.5〜5重量部含有することを特徴とする請求項1に記載のコテ作業性に優れる砂岩調塗膜形成用組成物。
【請求項3】請求項1または請求項2の何れかに記載の砂岩調塗膜形成用組成物をその固形分比率が60〜90重量%となるように水希釈し、被塗面へコテ塗りすることを特徴とする砂岩調塗膜の形成方法。

【図1】
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【特許番号】特許第3378735号(P3378735)
【登録日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【発行日】平成15年2月17日(2003.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−179936
【出願日】平成8年6月19日(1996.6.19)
【公開番号】特開平10−1624
【公開日】平成10年1月6日(1998.1.6)
【審査請求日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−81258(JP,A)
【文献】特開 昭60−262872(JP,A)
【文献】特開 平7−214520(JP,A)
【文献】特開 平7−125817(JP,A)
【文献】特開 平4−325583(JP,A)