説明

破砕セルロース繊維材料のコンパクトな供給システムおよび方法

破砕セルロース材料供給システムであって、前記供給システムは、上方チップ入口、一般に垂直に定置された内部室、及び下方排出ポートを含むチップ容器と、前記チップ容器への少なくとも1個の薬液入口であって、薬液を前記チップ容器内に注入するようにしてある蒸解液入口と、を含み、前記チップ容器は前記下方排出ポートにおいてチップに液圧をかけるために十分な薬液とチップを前記内部室内に保持しており、前記供給システムは、さらに、前記下方排出ポートに接続され、前記チップ容器から液圧下でチップと薬液を受け入れる一般に水平に設置されたチップコンベヤー又はチップ管と、を含み、前記チップコンベヤー又はチップ管は、チップコンベヤー又はチップ管内のチップに薬液を注入する薬液注入器を含むものであり、 前記チップコンベヤー又はチップ管の排出部に接続され、チップと薬液を受け入れる高圧搬送装置と、を含み、これにより、前記チップ容器の前記排出部におけるチップ及び薬液の液圧がチップと薬液を高圧搬送装置へ供給するのに十分となることを特徴とする破砕セルロース材料供給システム。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は2010年6月4日に提出された米国特許出願第12/793,965号および2009年6月11日に提出された米国仮特許出願第61/186,123号の利益を主張するものであり、両出願の全てを本明細書中に参考として援用する。

【背景技術】
【0002】
本発明は、木材チップ等の破砕セルロース繊維材料を連続蒸解処理容器へ搬送するための供給システムに関し、特にこれらの材料の低圧スラリー材料を、蒸解処理容器に搬送される高圧スラリー材料へ変換する高圧搬送装置へ供給することに関する。
【0003】
連続蒸解装置における破砕セルロース繊維材料(本明細書では一般に「木材チップ」又は単に「チップ」と言う)のパルプ化では、繊維材料の圧力と温度を例えばセッ氏150°(150℃)、ゲージ圧10バール(g)に上げながら混入空気を除去し、チップを蒸解液で浸透させるように木材チップは処理される。典型的にはチップはスチーム処理されて、空気を追い出し、チップの温度を上げ、チップを加熱済みの蒸解液で含浸させて加圧した後、スラリーとして蒸解装置へ搬送される。
【0004】
従来のチップ供給アセンブリーは、通常、チップ容器、低圧フィーダー、スチーム処理槽、垂直チップ管、高圧フィーダーを有しており、チップから空気を追い出し、チップを加熱し、加圧する。従来の高圧フィーダーアセンブリーの諸例については米国特許第5,968,314号明細書に開示されており、この特許明細書には垂直チップ容器、水平チップスチーム処理槽、垂直チップ管(チップ・シュートとも言う)及び高圧フィーダーを備えた蒸解装置用チップ供給システムが記載されている。
【0005】
従来、チップ容器内のチップは比較的乾燥した状態にあり、チップ容器の下流側で薬液(liquor)によってスラリー化される。しかしながら、チップをチップ容器からスチーム処理槽、垂直チップ管へ容易に搬送するため、薬液をチップ容器に加えてスラリー化することが図られている。
【0006】
また、チップ容器内又はスチーム処理槽内においてチップにスチームを加えることも行われており、チップ容器下流側にあるスチーム処理槽内でチップにスチーム処理する場合もある。スチーム処理槽の排出部又はチップ・コンベヤー内において、チップの搬送を容易にすべく薬液をチップに加えてチップをスラリー化することも行われている。
【0007】
スラリーは機械的コンベヤー、例えばスクリューとらせん(augers)を備えた水平管によって垂直チップ管へ移動されている。機械的コンベヤーのスクリューとらせんはモーターによって駆動されるため、エネルギーを必要とする。これらのスクリュー、らせん等の運動機械的部品は調達コストと稼働コストの両面で高コストである。チップ供給システムにおいては、調達コスト、メンテナンス・コスト及びエネルギー・コストを低減化することが長年にわたり望まれている。
【0008】
垂直チップ容器内のスラリーの液圧はチップの高圧搬送装置への供給を補助する。チップ・スラリーは垂直チップ管の頂部から入り、この管を充填し、管の底部にあるチップへ液圧をかける。チップ管は、管内に保持されたチップ・スラリーの質量がこの管の底部排出端部においてチップを高圧フィーダー等の高圧搬送装置へ供給するのに十分な液圧を確保する高さを有する。
【0009】
液圧が十分でない場合、流入するチップ・スラリーに高圧フィーダーによって適用される吸引が、流入するスラリーに気泡を形成させることがある。スラリー内に気体が内包されると、スラリーは部分的に圧縮性となり、加圧することがより難しくなる。したがって、スラリー内の気体は、高圧フィーダーの効率性を低下させることがある。また、状況によっては、液圧の不足により生じた気体がチップ・スラリーの高圧フィーダー内への流入を妨害する場合がある。
【0010】
従来、このチップ・スラリーに必要な液圧は垂直チップ管を使用することでもたらされてきた。垂直チップ管の高さは例えば15フィート乃至30フィート(5m乃至10m)である。このチップ管の高さはチップ供給システム全体の高さを実質的に増加させることになり、チップ容器をチップ管上方の比較的高い位置に設置することを必要とする。チップ容器、その他のチップ供給システム内の高位置に設置された部分に必要な支持構造はおおがかりなものになる可能性がある。チップ容器は例えば115フィート(35m)の高さに設置される。チップ供給システムの高さを低減することでシステムに必要な構造を最小にし、チップ供給システムの構築コストと保守整備コストを低減化することが長年にわたり要望されている。

【発明の概要】
【0011】
チップ容器の下方部分に薬液を満たし、容器内でチップ・スラリーを形成するチップ供給システムが開発された。容器内のスラリーは容器の下部排出部分において液圧を形成し、この液圧はチップ・スラリーを高圧搬送装置へ供給するのに十分なものである。したがって、チップ容器を薬液で満たすことによりチップ管を不要にすることができる。
【0012】
水平に配置されたチップ・スクリュー・コンベヤー又はチップ管で液圧下のチップ・スラリーをチップ容器から受取り、そのチップ・スラリーを高圧ポンプ又は高圧フィーダー(HPF)などの高圧搬送装置へ供給する。チップ容器内で液圧が発生されるためチップ管は不要である。これにより、チップ容器と高圧搬送装置の間にチップ管が存在している場合と比べ、チップ容器をより低い高さに設置することができる。
【0013】
チップ容器に薬液を満たすとチップ容器内に破砕セルロース繊維材料のスラリーが発生する。チップ容器内の薬液による液圧は、連続蒸解装置に接続された高圧搬送装置に供給するために必要な液圧を発生させるに十分なものである。ある場合において、チップ容器内で形成された液圧により、機械的チップ搬送装置を備える必要がなくなり、破砕セルロース材料に対する機械的作用を除去し、機械的作用を原因とするチップ材料の損傷を無くすことができる。機械的チップ搬送装置の使用を避けることでチップ搬送の建設コストと稼働コストを低減でき、また破裂強度、引張強度、引裂強度などの物理的パルプ特性を改善できる。
【0014】
薬液で満たされたチップ容器はチップを高圧搬送装置へ供給するのに十分な液圧を与えることができるため、垂直チップ管は不要である。垂直チップ管を除去することにより、垂直チップ管を備えた従来のチップ供給システムと比べ、チップ供給搬送システムの高さをより低くできる。高さの高いチップ供給システムではチップ容器を高位置に設置させ、チップ管を支持するために支持構造物が必要であるのに対し、高さの低いチップ供給システムではそのような設備は少なく小型で済む。例えば、チップ供給システムは高さが約6フィート(20m)にできる。一方、水平チップ管を備えた、同様な寸法の蒸解液容器用の従来のチップ供給システムの高さは例えば115フィート(35m)である。
【0015】
チップ容器に薬液を満たすことにより、チップ管を除去すると、チップ供給システムの高さを例えば20フィート(7m)から55フィート(17m)だけ低減できる。このようにチップ供給システムの高さを低減することで、従来のシステム内でチップ容器を高位置に設置するのに必要な構造鋼や他の材料の量を低減することができ、製造コストと保守整備コストを実質的に節約することが可能である。また、チップ容器の高さを低くすることでチップ容器へのアクセスがより容易になる。
【0016】
さらに、薬液で満たされたチップ容器を備えるチップ供給システムは高いチップ輸送容量を提供し、比較的に大きな流量でチップ・スラリーを高圧フィーダー又は他の搬送装置へ供給することができる。チップ管を無くすことにより、チップ管でのチップの流量への制限を取り除くことができる。チップ・スラリーの流量はチップ容器の容量に基づき決定することができ、この流量は一般に従来のチップ管の流量より多い容量である。
【0017】
また、実質的に水平なチップ管は、チップ・スラリーをチップ管からチップ管の外部まで液圧により移動させることにより、チップを移動させることができる。液圧は薬液又はスチームをこの管内へ注入させることによって加えられる。この管の長さ方向に沿って薬液又はスチーム(又はこれらの両方)用のノズルが配置されており、管内でのチップの流れ方向への角度で薬液又はスチームの噴射物が注入される。更に、チップ管出口において薬液又はスチームの噴射物を任意で加えてもよく、チップ・スラリーをチップ管から高圧フィーダーへの供給導管内へ送り出してもよい。
【0018】
水平チップ管はスクリュー及びらせんなどの運動部品を有さなくてよい。スクリュー又はらせんが不要になることで、回転スクリュー及びらせんを備えた水平チップ管と比較して機械的運動部品の個数が少なくなる。
【0019】
破砕セルロース材料供給システムが開示され、この供給システムは、
上方チップ入口、一般に垂直に定置された内部室、及び下方排出ポートを含むチップ容器と、
前記チップ容器への少なくとも1個の薬液入口であって、薬液を前記チップ容器内に注入するようにしてある薬液入口
とを含み、
前記チップ容器は前記下方排出ポートにおいてチップに液圧をかけるために十分な薬液とチップを前記内部室内に保持しており、
前記供給システムは、さらに
前記下方排出ポートに接続され、前記チップ容器から液圧下でチップと薬液を受け入れる一般に水平に設置されたチップコンベヤー又はチップ管を含み、
前記チップコンベヤー又はチップ管は、チップコンベヤー又はチップ管内のチップに薬液を注入する薬液注入器を含むものであり、
前記供給システムは、さらに
前記チップコンベア又はチップ管の排出部に接続され、チップと薬液を受け入れる高圧搬送装置
を含み、
これにより、前記チップ容器の前記排出部におけるチップ及び薬液の液圧がチップと薬液を高圧搬送装置へ供給するのに十分となることを特徴とする。
【0020】
破砕セルロース繊維材料を高圧搬送装置へ供給する方法が開示され、この方法は、
破砕セルロース繊維材料をチップ容器の上方入口に供給すること、
前記チップ容器を薬液と繊維材料のスラリーで少なくとも部分的に満たすように薬液を加えること、
前記チップ容器内の薬液により前記チップ容器の下方排出部においてスラリーに液圧を発生させること、
液圧下で前記スラリーを実質的に水平なコンベヤー又は管に排出すること、
スラリーを前記コンベヤー又は管の出口へ移動させるために前記コンベヤー又は管内に薬液を注入すること、
液圧下にあるスラリーを前記コンベヤー又は管の前記出口から高圧搬送装置の入口へ搬送すること、
を含むことを特徴とする。
【0021】
チップ管であって、
チップ容器の排出出口に取り付けられた入口と、チップフィーダーに流体連通するようにした出口とを備えた実質的に水平な管と、
前記入口から前記出口まで延在する前記チップ管内のチップ・スラリー流路と、
流体を前記チップ管内へ注入するように前記チップ管に取り付けられた少なくとも1個の流体注入ノズルと
を含み、
前記流体注入ノズルは流体を前記出口近傍の前記チップ管の第1の端部に向かって注入する角度で取り付けられていることを特徴とするチップ管。

【図面の簡単な説明】
【0022】
図1は薬液に満たされた容器下部と底部出口を備えたチップ容器を示す概略図であり、チップ容器はチップを高圧搬送装置へ直接排出する水平な薬液充満2連スクリュー供給装置に接続されている。
【0023】
図2は薬液に満たされた容器下部と底部出口を備えたチップ容器を示す概略図であり、チップ容器はチップを高圧搬送装置へ直接排出する水平なチップ管供給装置に接続されている。
【0024】
図3は薬液に満たされた容器下部と底部出口を備えたチップ容器を示す概略図であり、チップ容器はチップを高圧搬送装置へ直接排出する水平なチップ管供給装置に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【0025】
図1はチップ供給システム10を示しており、チップ供給システム10には従来の頂部チップ入口14を備えた閉鎖頂部12を有するチップ容器11を有する。チップ容器11は底部排出部15を有する垂直容器である。頂部チップ入口14は計量スクリュー16とエア・ロック18を備えていてもよい。計量スクリューはチップ供給部20から導管又はコンベヤーを介してチップを受け取る。スチームや他の蒸気はチップ容器の閉鎖頂部12にある排気部22によってチップ容器からスチーム又は蒸気回収システム24へ排出することができる。
【0026】
チップ容器11は、例えば直径約10乃至15フィート(3乃至5m)の円形状又は楕円形状の断面を有する上部室26を含んでもよい。また、上部室内にチップ・レベル・センサー25、例えばガンマ・センサーを設置し、容器内のチップのレベルを測定することで容器内のチップの量をモニターしてもよい。この上部室の高さはチップ容器の全体の高さの1/2から2/3にすることができる。
【0027】
頂部チップ入口14からのチップは上部室26に入り、そこで落ち着く。上部室内のチップはチップのカラムを形成し、このカラムはチップ容器内を下方に移動しチップ容器の下部室28に向かう。コンピューター等の制御装置38によりチップ・レベル・センサー25を監視し、チップ容器内のチップを所望のレベルに維持するようチップ計量スクリュー16を調節してもよい。
【0028】
上部室26内のチップは比較的乾燥状態のままでもよく、あるいは上部の外壁に配置されたスチームノズル30によってスチームをあてられてもよい。蒸気ノズル30はチップ容器の上部室において1つの高さあるいは1つ以上の高さに配置されてもよく、蒸気ノズル30には例えば低圧スチーム源等のスチーム源32からスチームが供給される。このスチームは上部室内におけるチップを加熱し、チップのスチーム処理を開始するための熱エネルギーを供給する。
【0029】
チップ容器の下部室28の上端部は上部室26の下端部とは同じ断面を有している。チップは上部室から下部室へ直接流れる。チップ容器の下部室28は完全にあるいは少なくとも部分的に薬液で満たされている。同様に上部室26の一部が薬液で満たされていてもよい。液体注入ノズル32は例えばチップ容器の下部室の外壁の様々な高さに配列されており、各高さにおいて一列の薬液ノズル32はチップ容器の下部室の外壁の周囲に配置されている。例えば、2つの高さにおいて、各一列の薬液ノズル32を存在させることができる。蒸気ノズル32は、薬液をチップ容器内の下方向に注入すべく、水平から約15°乃至85°の角度の下方に向けて配置される。このように薬液を下方向へ注入することで、チップのチップ容器室内の移動を補助することができる。
【0030】
例えば、白液、緑液又は黒液のような薬液34の供給源は導管35及び弁36によって各薬液ノズル32に接続されている。これらの弁を手動で調節することによって設定位置を保ち、各弁に関連するノズルへの薬液の流れを調整してもよい。あるいは各弁を、調節できるコンピューター制御装置38を用いて制御し、チップ容器内の薬液を所望の高さにすることを実現してもよい。例えば、フロートセンサー、圧力センサー又は光学センサー等のセンサー39をチップ容器の下部室と上部室に配置することでチップ容器内の薬液レベルをモニタリングすることも可能である。
【0031】
チップ容器11の下部室28の形状、例えば横断面形状は、開放上部40では実質的に円形状の断面であり、開放底部排出部15では実質的に長方形の断面である。下部室28は対向する側部が非垂直で徐々に先細る平面状側壁42を有している。これらの平面状の側壁42は約20°乃至30°の角度を形成する。これらの角度はチップ容器11で取り扱われる特定の材料、例えばチップ容器に対して普段供給される木材チップの特定の種別に応じて設定される。下部室28により、上部室26の円形形状から実質的に長方形の底部排出部15へのチップの円滑な幾何学的な遷移が実現する。対向する平面状側壁42の間には対向する曲面状の側壁44が存在し、平面状側壁と連結されている。平面状側壁42はそれぞれ平面視では一般に三角形である。これらの平面状側壁は図1に示されるように、ひし形状に垂直に配してもよい。
【0032】
下部室の側壁42、44は互いにかつ上部室と溶接され、チップ容器内のチップ及び薬液に対する連続的な流体密封室28を形成してもよい。下部室28はチップと薬液がチップ容器を下方向へ均一に移動することを促進するように一般に中空になっている。チップ容器内の上部室26、下部室28、特に下部室28は容器の全体の横断面においてもチップが下方向に均一に移動することを促進するように形成されている。チップの均一な下方向の流れを促進するチップ容器は米国特許第5,617,975号明細書(6欄、65行目乃至8欄、52行目参照)に開示されており、この特許明細書全体の内容は本明細書中に参考として援用される。更に、薬液、チップ、スチームは下部チップ・スラリー排出部15と上部スチームおよび蒸気排気部22を経由する以外はチップ容器から逃散しないのが好ましい。
【0033】
チップ容器はその内部においてチップと薬液のスラリーを形成するように、部分的に薬液で満たされている。このスラリーはチップ容器の底部排出部15において液圧の上昇を生みだす。この液圧はチップ・スラリーをポンプや高圧フィーダー等の高圧搬送装置46内へ、高圧搬送装置46の入口で気体を形成することなく送るのに十分である。必要とされる液圧の量は高圧搬送装置及び各構成要素、例えばチップ容器底部排出部15と高圧搬送装置46との間にある水平チップ管48内のスクリュー・コンベヤー等で要求される値に依存する。チップ容器に薬液を満たす又は少なくとも部分的に満たすことにより作り出された液圧により、高圧搬送装置46の入口へつながる従来の垂直チップ管を不要な構成要素とすることができる。
【0034】
チップ容器内のスラリーのレベル、例えば液体のレベルは所望の液圧を達成するよう設定できる。例えば、チップ容器内のスラリーのレベルはチップ容器の底部排出部15からチップ容器内の薬液の表面レベルまで15フィート(3m)の高さであるか又は10フィート乃至20フィート(3m乃至7m)の範囲の高さである。
【0035】
チップ容器11内へ注入される薬液の流量、チップ容器内に入るチップの流量、及びチップ容器から排出されるチップ・スラリーの流量によって、チップ容器内における薬液のレベルが決定される。一般に、チップ容器内の薬液のレベルは所定のレベルに維持されるべきである。薬液レベル・センサー39を用いてチップ容器内の蒸解液レベルを検出してもよい。これらのセンサーからの信号に基づき、制御装置38は弁36を調整し、ノズル32を通る薬液の流量を調節し、チップ容器に流入するチップの流量とチップ容器から排出するチップの流量を調整し、チップ容器内を所望の薬液レベルにすることができる。
【0036】
チップ容器内へ注入される薬液の量又は流量はチップがチップ容器内にある時間中に薬液を吸着し得るチップの容量を越えていてもよい。薬液の量又は流量はチップ容器内に自由液体を発生させるのに十分であってもよい。自由液体は、チップ容器からのチップの排出流れを促進するスラリーを発生させ、スラリーが機械的に作用する装置を必要とすることなくコンベヤー48又は水平チップ管62、82(図2及び図3)等の搬送装置内を移動することを補助する。
【0037】
チップ容器用の薬液34は処理容器から、例えば頂部分離装置から抽出してもよい。処理容器内での蒸解処理又は他の処理に必要とされる薬液の量は、スラリーとしての薬液をコンベヤー、チップ管、ポンプ、高圧搬送装置及び関連ある導管(パイプ)内を搬送するのに要求される薬液より一般に少ない。蒸解処理又は他の処理で必要とされる量よりも過剰の薬液は頂部分離装置等を使用することにより、スラリーが処理容器へ流入する際に抽出されてもよい。この過剰の薬液は黒液34としてチップ容器内へ注入され、十分な液圧を作り出すために用いられてもよい。さらに、チップ容器内に白液34が注入されてもよい。
【0038】
一例として、チップ容器内へ導入される白液の量は、一般にはチップ容器、チップ供給システム及び処理容器を含むパルプ化システムに導入される白液の総量の10%乃至50%である。白液の残量の全て又はほとんどがこの処理容器に導入されることが好ましい。チップ容器と処理容器に導入される白液は処理容器内のチップに蒸解等の処理を施すために使用される。
【0039】
重質の硬質広葉樹(heavy, hard woods)で形成されたチップについては、チップ容器に導入される白液の量はパルプ化システムに導入される白液の総量の10乃至25%程度にしてもよい。針葉樹(softwoods)で形成されたチップについては、チップ容器に導入される白液の量はパルプ化システムに導入される白液の総量の25乃至50%程度にしてもよい。
【0040】
チップ容器に添加される薬液は、チップ容器内のチップを浸す高濃度白液の最初の流入分としてもよい。一例として、重質の広葉樹の木材チップは木材の乾燥重量の1.2倍の薬液量を吸収するし、軽質の針葉樹チップは木材の乾燥重量の2倍の薬液を吸収する傾向がある。チップ容器底部に加える白液等の薬液の量はチップ容器内の木材の乾燥重量の少なくとも0.2乃至1.0倍にすることができる。軽質の針葉樹チップが入れてあるチップ容器に対して、加える白液の量はこの容器内のチップの乾燥重量の少なくとも0.6乃至1.0倍にすることができる。これらに関係なく、チップ容器内の薬液の量はチップを高圧供給装置内へ供給するのに必要とされる液圧を発生するのに十分であることが好ましい。
【0041】
白液はチップ容器内のチップ温度より低い温度で供給されることができる。このように白液が低温度であると、チップを処理容器内に入れる前に木材チップが早期に蒸解するリスクを低減することができる。チップ容器内のチップは、チップ容器へのスチーム22の供給により100℃に加熱され、白液は大気温度などの90℃を下回る温度で添加される。
【0042】
チップ・スラリーはチップ容器の底部排出部15から液圧下で排出される。底部排出部は円筒形ハウジング内にらせんスクリューを含む一般に水平な2連スクリュー・コンベヤー48に接続されている。このコンベヤー48は傾斜が10°以下である実質的に水平な状態でもよい。
【0043】
チップ・スラリーはスクリュー・コンベヤー48に入り、らせんスクリューによってコンベヤーの出口端部50へ移動する。出口端部には下方入口52が備えられており、チップ・スラリーが上方出口50を通じてスクリュー・コンベヤーから導管54へ排出されるときに下方入口52より薬液が注入される。スクリュー・コンベヤーの出口端部50への薬液の注入は導管54内へのチップの排出を促進し、スクリュー・コンベヤーの出口端部50のチップの詰まりとブロッキングを回避することを助ける。薬液の注入はスラリー内のチップに対する薬液の比率を高圧搬送装置に適した比率に調整するためにも使用される。
【0044】
ノズル56はコンベヤー外へのチップの移動を促進するために下方入口52においてスチーム又は薬液(又はこれらの両方)を注入できる。チップのスクリュー・コンベヤー外への移動を助けるため、ノズル56を配向させて、薬液又はスチームの噴射物を部分的に上方向に注入してもよい。垂直ノズル56を、上方チップ出口78を有する従来の水平チップ管を改良することにより設けてもよい。
【0045】
チップのスラリーは導管54を通じ、高圧搬送装置46、例えば直列又は並列された1台以上のポンプ又は高圧フィーダーに流入する。高圧搬送装置はチップ容器の底部排出ポート15の高さと実質的に同じ高さであっても良く、15乃至25フィート(5乃至8m)の高さとすることができる。チップ・スラリーは高圧搬送装置内において、処理容器58、例えば導管54からチップ・スラリーを受け入れる頂部分離装置入口を備えた連続蒸解容器に適した圧力レベルに加圧される。
【0046】
図2は、充填された状態のチップ容器11(図1及び図2に示すように)と、チップ容器の底部排出部15にある水平チップ管62とを有するチップ供給システム60を示す。水平チップ管62は図1に示されたスクリュー・コンベヤー48の代わりである。チップ供給システム60におけるチップ容器11は、図1に関連して説明したチップ容器10と同じように作動し、同じような構成要素と形状を備えている。また、チップ管へのチップ・スラリーの排出を補助するために、チップ容器の底部に回転スクレーパーを任意で設置してもよい。この回転スクレーパーはチップ容器の構成要素であってチップ管の構成要素ではない。
【0047】
チップ管62はチップ・スラリーをチップ容器からこの管を介して高圧搬送装置46へ移動させるのに液圧作用に依存している。この液圧作用はチップ容器のケーシングに沿って配列されるノズル70を通じて薬液34又はスチームを注入させることを含む。チップ管を用いてチップ・スラリーをチップ容器から高圧フィーダーへ液圧で移動させることにより、従来のチップ・コンベヤーに見られる機械的スクリューやらせん部品(図1参照)が不要となる。従来のチップ・コンベヤーのスクリューやらせん部品を無くすことで調達コスト、エネルギー・コスト及び保守整備コスト等の面のコスト効率化を達成することが可能である。
【0048】
チップはチップ容器から水平チップ管62の上方入口64へ排出される。チップ容器の底部排出部15と上方入口64との間の継手66はチップ管内へのチップの円滑かつ均一な流れを促進する形状になっている。継手66は円形、楕円形、競技場トラック形又は8の字状などの幾何学的横断面形状を有する。
【0049】
チップ容器の軸端部に備えられた1個以上の薬液注入器68は薬液34又はスチームをチップ管62内へ注入し、チップをチップ容器から引き出しチップ管内へ流入させる流れをチップ管内に作り出す。軸端部に配置され、チップ管に対する継手66に近接する複数の薬液(又はスチーム)注入器68は薬液又はスチームをチップ管内へ注入してチップをチップ容器からチップ管内へ移動させるように使用することができる。
【0050】
チップ容器からチップ管62へのチップの流量は薬液注入器68を通じて注入される薬液又はスチームの量に応じて制御可能である。同様に、薬液又はスチームはチップ管の側壁に配列されたノズル70からチップ管の長さに沿って注入可能である。これらのノズル70は、注入された薬液の流れがチップ管内でのチップの所望の流れとほぼ同じ方向になるように配列される。これらのノズル70はチップをチップ管内で移動させ、チップ管内のチップの流量制御を補助する。ノズル70から加えられた薬液は、スラリー内のチップを希釈し、チップ容器下流にある高圧搬送装置46にとって適したチップ/スラリー比にするために用いられる。
【0051】
チップ管の排出端部にある、垂直に配置されたノズル72は薬液又はスチームを注入しチップをチップ管から導管54へ垂直上方向へ推進させる。
【0052】
薬液注入器68とノズル70、72(構造的に同じノズル型でもよい)のそれぞれは、注入器又はノズルへの薬液(又はスチーム)の流れを制御するために対応する弁74を備えていてもよい。これらの弁74は手動で設定してもよいし、導管54中の流量センサー76からの信号に基づいて制御装置38によって制御してもよく、また高圧搬送装置46において制御してもよい。
【0053】
チップ容器62は、軸と、実質的に妨害物の無いチップ・スラリー中央流路とを備えた実質的に円筒形の管でもよい。チップ容器のケーシングにはノズル70、72が備えられており、これらのノズルはチップ・スラリーをチップ入口からチップ出口へ中央流路を通じて移動させるような位置、角度で配置されている。これらのノズルはチップ容器ケーシング上に例えば10°乃至45°の傾斜角度にて設置が可能である。このノズルの角度は、ノズルから液体の流れを中央流路を通すチップの流れ方向に配向させる。これらのノズルは液体をチップ管の軸に沿って、入口に近接するチップ管の第2端部へ注入する。ノズルの配置例としては、チップ管の入口端部近傍に軸方向に設置されたノズル、入口と出口との間でチップ管のケーシングに沿って配列された複数個のノズル搭載部に設置されたノズル列、チップ管の出口近傍のノズルを含む配置が挙げられる。
【0054】
図3は、薬液で充填されたチップ容器11(図1と図2に示すように)と、チップ容器の底部排出部15にある水平チップ管82とを備えたチップ供給システム80を示している。チップ管82は、軸方向(平面内あるいは平面外)のチップ・スラリー排出ポート84を備えている点を除き、図3に示すチップ管62と類似している。チップ・スラリーはチップ管内を通るチップスラリーの流れと実質的に同じ流向でチップ管から導管54へ排出する。チップ管から排出される際にチップ・スラリーの流れが曲げられないため、垂直に向けられた薬液ノズル(図3の72参照)はチップ管84の出口において不要である。
【0055】
導管54はチップ・スラリーを高圧搬送装置46へ搬送する。導管内の弁86を用いて導管内のチップ・スラリーの流量と圧力を制御してもよい。また、ノズル88及び対応する弁74を使用し薬液又はスチームを注入することで、導管54内を流れるチップ・スラリーの移動の補助、チップ・スラリーの希釈を行うことができる。弁86とノズル88用の弁74を手動あるいは制御装置38で制御することにより、導管54内に所望のチップ・スラリーの流量又は圧力を提供することができる。更に、導管54を取り除き、ポンプ等の高圧搬送装置をチップ管82の出口84に直接接続してもよい。
【0056】
以上、本発明を現在最も実際的で好適と考えられる実施形態に関連付けて説明を行ってきたが、本発明は本書内で開示された実施形態に限定されるものではなく、添付の請求の範囲の趣旨と範囲内に含まれる種々の変形例や均等物を包含するよう意図されたものである。

【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕セルロース材料供給システムであって、
前記供給システムは、
上方チップ入口、一般に垂直に定置された内部室、及び下方排出ポートを含むチップ容器と、
前記チップ容器への少なくとも1個の薬液入口であって、薬液を前記チップ容器内に注入するようにしてある蒸解液入口と、
を含み、
前記チップ容器は前記下方排出ポートにおいてチップに液圧をかけるために十分な薬液とチップを前記内部室内に保持しており、
前記供給システムは、さらに、
前記下方排出ポートに接続され、前記チップ容器から液圧下でチップと薬液を受け入れる一般に水平に設置されたチップ搬送装置と、
前記チップ搬送装置の排出部に接続され、チップと薬液を受け入れる高圧搬送装置と、
を含み、
これにより、前記チップ容器の前記排出部におけるチップ及び薬液の液圧がチップと薬液を高圧搬送装置へ供給するのに十分となる
ことを特徴とする破砕セルロース材料供給システム。

【請求項2】
前記チップ容器内の薬液レベルが前記チップ容器の前記下方排出ポートの上方少なくとも15フィートにあり、前記チップ容器が前記薬液レベルと前記下方排出ポートの間で薬液とチップにより満たされている請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。

【請求項3】
前記チップ搬送装置が、前記チップ搬送装置内のチップと薬液に薬液を注入する薬液注入装置を含む請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。

【請求項4】
前記チップ搬送装置が機械的スクリュー・コンベヤー又はらせん・コンベヤーを含む請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。

【請求項5】
前記チップ搬送装置が、薬液ノズルを有するチップ管であり、前記薬液ノズルは、チップを液圧で前記チップ管内を通して前記チップ搬送装置の排出部へ移動させ、薬液をチップ管内を指向させるよう配置されている請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。

【請求項6】
前記チップ容器への少なくとも1個の薬液入口が、前記チップ容器の複数の高さ位置において前記チップ容器の周囲に沿って配置された薬液ノズルの群列である請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。

【請求項7】
前記チップ容器の少なくとも1個の薬液入口が、薬液をチップ容器内に下方へ注入させるよう水平から下へ15°乃至85°の角度に方向づけられた薬液ノズルを含む請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。

【請求項8】
前記チップ容器の上部が円形又は楕円形横断面を有し、前記チップ容器の下部が対向する先細りの平面状側壁を含む請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。

【請求項9】
前記チップ容器の前記下方排出ポートが前記高圧搬送装置の高さ位置の15フィート以下の高さにある請求項1記載の破砕セルロース材料供給システム。
【請求項10】
破砕セルロース繊維材料を高圧搬送装置へ供給する方法であって、
破砕セルロース繊維材料をチップ容器の上方入口に供給すること、
前記チップ容器を薬液と繊維材料のスラリーで少なくとも部分的に満たすように薬液を加えること、
前記チップ容器内の薬液により前記チップ容器の下方排出部においてスラリーに液圧を発生させること、
液圧下で前記スラリーを実質的に水平なコンベヤー又は管に排出すること、
スラリーを前記コンベヤー又は管の出口へ移動させるために前記コンベヤー又は管内に薬液を注入すること、
液圧下にあるスラリーを前記コンベヤー又は管の前記出口から高圧搬送装置の入口へ搬送すること、
を含むことを特徴とする供給方法。

【請求項11】
前記チップ容器内の薬液レベルを前記チップ容器の前記下方排出ポートから上方少なくとも15フィートに維持することを更に含む請求項10記載の方法。

【請求項12】
前記薬液レベルと前記下方排出ポートとの間に薬液とチップを満たすことを含む請求項11記載の方法。

【請求項13】
前記チップ容器内に注入される薬液が、前記チップ容器の複数の高さ位置において前記チップ容器の周囲に沿って配置された薬液ノズルの列群を通じて注入される請求項10記載の方法。

【請求項14】
前記チップ容器の少なくとも1個の薬液入口が、薬液をチップ容器内に下方へ注入させるよう水平から下へ15°乃至85°の角度に方向づけられた薬液ノズルを含む請求項13記載の方法。

【請求項15】
前記チップ容器の上部が円形又は楕円形の横断面を有し、前記チップ容器の下部が対向する先細りの平面状側壁を含み、前記チップ容器の下部がスラリーの下向きの移動を容易にする請求項10記載の方法。

【請求項16】
前記チップ容器の下方排出ポートが前記高圧搬送装置の高さ位置の15フィート以下の高さにある請求項10記載の方法。

【請求項17】
チップ管であって、
チップ容器の排出出口に取り付けられた入口と、チップフィーダーに流体連通するようにした出口とを備えた実質的に水平な管と、
前記入口から前記出口まで延在する前記チップ管内のチップ・スラリー流路と、
流体を前記チップ管内へ注入するように前記チップ管に取り付けられた少なくとも1個の流体注入ノズルと
を含み、
前記流体噴射ノズルは流体を前記出口近傍の前記チップ管の第1の端部に向かって注入する角度で取り付けられていることを特徴とするチップ管。

【請求項18】
前記ノズルが流体をチップ管の軸に沿って、また、前記入口に近接する前記チップ管の第2の端部内へ注入する請求項17記載のチップ管。

【請求項19】
前記ノズルが前記入口と前記出口との間のチップ管のケーシングに沿って配列された複数個のノズルである請求項17記載のチップ管。

【請求項20】
前記チップ管の前記出口に近接する第2の流体注入ノズルを更に含む請求項19記載のチップ管。

【請求項21】
前記第2の流体噴射ノズルが、流体を軸に対してある角度をなす出口方向に向かって出口を介して注入する請求項20記載のチップ管。


【公表番号】特表2012−530193(P2012−530193A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515137(P2012−515137)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038156
【国際公開番号】WO2010/144693
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(502278600)アンドリッツ インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】