説明

硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法

【課題】本発明は、簡易な硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程S1と、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を加えて、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程S2と、を有し、前記硝酸塩形成不能金属がGeである硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法を用いることによって前記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ランタン(以下、La)等の硝酸塩形成可能金属を含むゲルマニウム(以下、Ge)酸化物の多結晶体は、アパタイト型構造を有し、酸素イオン伝導性固体電解質材料として注目されている。
【0003】
前記多結晶体は、例えば、La等の硝酸塩形成可能金属を含む粉末とGeを含む粉末を用いる固相法(固相反応法ともいう)により製造できる。しかし、固相法は複雑な粉末混合工程と高温で加熱する工程を伴うので、より簡易でかつより低温で加熱処理可能な製造方法が求められている。
【0004】
La等の硝酸塩形成可能金属とGeを完全に溶解した水溶液(以下、均質水溶液)が得られれば、この均質水溶液を乾燥することにより、硝酸塩形成可能金属を含むGe酸化物を得ることができる可能性がある。また、これを低温で加熱することにより、多結晶体を容易に得ることができる可能性がある。
しかし、これまで、La等の硝酸塩形成可能金属とGeの均質水溶液は得られていない。
なお、本明細書では「均質」を「溶質を完全に溶解させた」という意味で用いる。
【0005】
従来、アンモニア(NH)を用いてアルカリ領域でGe酸化物を溶解させた水溶液と、酸性領域で硝酸ランタン(La(NO)を溶解させた水溶液とが混在した均質水溶液は作成できないと考えられていた(非特許文献1および非特許文献5)。ランタンとゲルマニウムの組み合わせは文献などがなく、酸化2塩化ハフニウム(HfOCl)水溶液にアンモニアを用いてGe酸化物を溶解した水溶液を混合して沈殿物が生じた場合、硝酸を加えて酸性領域にすると沈殿物が消失するという報告もなかった。
【0006】
特許文献1は、液相法による高純度のBi12MO20粉体(ただし、MはSiまたはGeである。)の製造方法に関するものである。反応にOH型イオン交換樹脂を用い、Ge化合物を溶解する溶液は、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、NROH(Rは炭素数1〜3のアルキル基)より選ばれるアルカリ性水溶液である。
しかし、BiとGeを完全に溶解した均質水溶液は得られていない。
【0007】
非特許文献1は、「Hafnium Germanate from a Hydrous Hafnium Germanium Oxide Gel」に関するものである。HfOCl水溶液に酸化ゲルマニウムを加えて懸濁水溶液を作製し,この件濁水溶液にアンモニアを加えて沈殿物を製造、この沈殿物を加熱してハフニウムゲルマニウム酸化物(HfGeO)を合成している。
しかし、HfとGeを完全に溶解した均質水溶液は得られていない。
【0008】
非特許文献2は、「Red Luminescence in MgO−GeO
Gel Glasses and Glass Ceramics Doped with Mn ions Prepared by Sol−gel Method」に関するものである。GeとMgを含む溶液を有機金属塩と有機溶媒を用いて製造している。
しかし、水溶液は用いていない。
【0009】
非特許文献3は、「Solution Synthesis and Characterization of Sillenite Phase,Bi2440 (M=Si,Ge,V,As,P)」に関するものである。
Geはアルカリ性でのみ溶解すると記載されている一方、硝酸ビスマスは過剰な硝酸共存下でのみ水に溶解する塩である。そのため、Geと共存する均質水溶液の調整は不可能と考えられている。実際、BiとGeを完全に溶解した均質水溶液は得られていない。
なお、シリコン(以下、Si)、ガリウム(以下、Ga)もアルカリ性でのみ溶解すると記載されている。また、アルカリ源としてリチウム(以下、Li)、ナトリウム(以下、Na)、カリウム(以下、K)、セシウム(以下、Cs)が用いられており、これらが不純物として残留する。実際、Zr、Hf、Ru、LaのいずれかをGeと共に完全に溶解した均質水溶液は得られていない。
【0010】
非特許文献4は、「Synthesis and photocatalytic performance of BiVO by ammonia co−precipitation process」に関するものである。アンモニウム・モリブデン酸塩(NHVO),硝酸ビスマス,硝酸を含む水溶液を作成し,アンモニアを加えて沈殿物を作成している。沈殿物を濾過,洗浄,450℃以上に加熱することでBiVO酸化物を得ている。しかし、バナジウム塩を用いており、BiとGeを完全に溶解した均質水溶液は得られていない。
【0011】
特許文献2は、「バナジン酸ビスマスのソフト合成法および該方法によって得られたバナジン酸ビスマス」に関するものである。バナジウム・カリウム酸化物(K14またはKV)と硝酸ビスマスを混ぜた懸濁水溶液を攪拌して化合物を製造している。この製造方法は、化合物を製造する際に均質水溶液を経由していない。
【0012】
なお、硝酸塩形成可能金属を含むGe酸化物のアモルファス体は、溶融急冷法により製造できる。例えば、アパタイト型ランタンゲルマニウム酸化物(La9.7Ge26.55)の場合は1800℃以上に加熱してから、その後、急冷する溶融急冷法により、理論上アモルファス体を製造できる。しかし、1800℃以上と加熱温度が高いため、La9.7Ge26.55のアモルファス体は実際には製造されていない。
そこで、硝酸塩形成可能金属を含むGe酸化物のアモルファス体を簡単に低温で製造できる方法も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−63106号公報
【特許文献2】特開2001−2419号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Inorganic Chemistry,37,02/24/1998 Experimental Section,Hydrous Hafnium Germanate、P.M.Kambert Oxide Gel(p.1352)
【非特許文献2】T.Sanada,K.Yamamoto et al,J.Sol−Gel.Sci.Tech.,41,1/10/2007 2.Experimental(p.238)
【非特許文献3】H.S.Horowitz,et al、Solid State Ionics,32/33, 9/20/1989 2.Experimental(p.681)
【非特許文献4】J.Yu,Ya Zhang,A.Kudo、“Synthesis and photocatalytic performance of BiVO4 by ammonia co−precipitation process”、J.Solid State Chem.,182(2009)223−228
【非特許文献5】V.A.Vekhov,B.S.Vitukhnovskaya,R.F.Doronkina,Russian Jounal of Inorganic Chemistry,11(1966)132−135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、簡易な硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記事情を鑑み、本発明者は、試行錯誤を重ねて、本発明を完成した。
本発明は、アルカリ領域で溶解させたGeと、酸性領域で溶解させたLaとを混在させた均質水溶液はできないという従来の常識を打ち破り、アルカリ領域で溶解させたGeを有するアンモニア水溶液と、酸性領域で溶解させたLaを有する硝酸塩水溶液とを混在させた均質水溶液を調整した初めての成功例である。
この均質水溶液は、酸性からアルカリ性まで広いpH領域で析出物が生成しないが、濃アンモニアを滴下するだけで、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物を容易に製造できる。従来のセラミックス合成法である固相法に比べ操作ははるかに容易である。また、処理加熱温度も低温とすることができる。また、均質水溶液から硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物を製造するため不純物の混入を少なくでき、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の純度を向上させることができる。
更に、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物に低温の加熱処理を行うことにより、アモルファス体や多結晶体とすることができる。
本発明は、以下の構成を有する。
【0017】
(1)硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程と、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を加えて、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程と、を有し、前記硝酸塩形成不能金属がGeであることを特徴とする硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【0018】
(2)前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液のpHを8.5以上とするように、前記濃アンモニア水溶液を加えることを特徴とする(1)に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
(3)前記濃アンモニア水溶液の濃度が前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液中に含まれている硝酸イオンと同モル当量以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
(4)硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液と硝酸塩形成可能金属の酸水溶液とを混合して、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
(5)前記硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液と前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液とを混合する時、希釈硝酸を加えることを特徴とする(4)に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【0019】
(6)硝酸塩形成不能金属の酸化物をアンモニア水溶液に溶解して前記硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液を作成することを特徴とする(4)又は(5)に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
(7)硝酸塩形成可能金属の酸化物を希釈硝酸に溶解して前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液を作成することを特徴とする(4)又は(5)に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【0020】
(8)硝酸塩形成可能金属の硝酸塩を水溶液に溶解して前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液を作成することを特徴とする(4)又は(5)に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
(9)前記硝酸塩形成可能金属がBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、In又はBiの群から選択されるいずれか1種の金属であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【0021】
(10)前記硝酸塩形成可能金属が前記金属に加えて前記群から選択される別の金属を1種以上含むことを特徴とする(9)に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
(11)前記沈殿物を濾過・洗浄・乾燥することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【0022】
(12)前記沈殿物を結晶化温度未満の加熱温度で加熱して、アモルファス体とすることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
(13)前記沈殿物を結晶化温度以上の加熱温度で加熱して、多結晶体とすることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程と、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を加えて、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程と、を有し、前記硝酸塩形成不能金属がGeである構成なので、酸性からアルカリ性まで広いpH領域で析出物が生成しない安定な硝酸塩形成可能金属及びGeの酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を滴下して、大気中で、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を短時間で、イオン交換樹脂等を必要とせず単純な操作で作成でき、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物を低温で容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】白濁した硝酸塩アンモニア水溶液の写真である。
【図3】La及びGe含有均質酸アンモニア水溶液の写真である。
【図4】400℃加熱処理物の粉末X線回折プロファイルである。
【図5】1000℃加熱処理物の粉末X線回折プロファイルである。
【図6】Bi及びGe含有均質酸アンモニア水溶液の写真である。
【図7】乾燥処理物の粉末X線回折プロファイルである。
【図8】沈殿物を室温で2日間攪拌した後、濾過、120℃で10時間乾燥した試料の粉末X線回折プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の実施形態)
<硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法>
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程S1と、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程S2とを有する。
【0026】
硝酸塩形成可能金属とは、硝酸塩を形成可能な金属であり、アルカリ属を除き、金属のイオン化傾向が銅よりも碑な金属である。具体的には、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、In又はBiの群から選択されるいずれか1種の金属である。
また、前記硝酸塩形成可能金属が前記金属に加えて前記群から選択される別の金属を1種以上含んでもよい。
更に、硝酸塩形成可能金属の硝酸塩は、27℃で0.5mol/l以上2.5mol/l以下の濃度で水に溶解可能である。
【0027】
硝酸塩形成不能金属とは、硝酸塩を形成不能な金属であり、V、Nb、Ta、W、Ga、Si、Ge、Snも硝酸塩形成不能金属として利用できる。しかし、本発明ではGeに限定している。Ge酸化物誘導体が特に有用であるためである。
なお、硝酸塩形成可能金属としても硝酸塩形成不能金属としてもアルカリ金属は好ましくない。アルカリ金属は、残留不純物となり得るためである。
【0028】
(硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程S1)
例えば、以下の2液混合法又は1液法により、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する。
【0029】
[2液混合法]
まず、Geを完全に溶解させた透明なGe含有均質水溶液を作成する。
例えば、GeO粉末を蒸留水に分散させて、懸濁水溶液を作成してから、この懸濁水溶液に、蒸留水で希釈したアンモニア水(以下、希釈アンモニア)を滴下して、Geを溶解して、透明なGe含有均質水溶液を作成する。
また、GeO粉末をアンモニア水溶液に混合して、懸濁水溶液を経由せずに、Ge含有均質水溶液を作成してもよい。
【0030】
次に、硝酸塩形成可能金属を完全に溶解させた透明な硝酸塩形成可能金属含有均質酸水溶液を作成する。
例えば、La(NO)等の硝酸塩形成可能金属の硝酸塩を水溶液に溶解して、La等の硝酸塩形成可能金属を含む均質酸水溶液を作成する。
また、Bi等の硝酸塩形成可能金属の酸化物を硝酸に溶解してから、蒸留水を加えて、Bi等の硝酸塩形成可能金属を含む均質酸水溶液を作成する。
【0031】
次に、Ge含有均質水溶液と硝酸塩形成可能金属を含む均質酸水溶液との2液を混合する。これにより、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属が完全に溶解した透明な均質酸アンモニア水溶液を形成する。
【0032】
2液混合により白濁した場合には、希釈硝酸を加えて酸性(例えば、pHを2以下)にすれば、析出物を溶解させることができ、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の均質酸アンモニア水溶液を得ることができる。
なお、硝酸塩形成可能金属含有均質酸水溶液に希釈硝酸を加えて酸性度を高めておくことにより、前記2液混合による白濁を生じさせないようにできる。
【0033】
[1液法]
まず、先に記載した方法と同様にして、Geを完全に溶解させた透明なGe含有均質水溶液を作成する。
次に、Ge含有均質水溶液に硝酸塩形成可能金属の硝酸塩を混合する。これにより、沈殿物が生ずる。例えば、硝酸マグネシウムを加えると白色の沈殿物が生ずる。
次に、希釈硝酸を加えて沈殿物を溶解させて、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属が完全に溶解した透明な均質酸アンモニア水溶液を形成する。
【0034】
(硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程S2)
硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の均質酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を滴下して、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する。
なお、沈殿物作成後、濾過・洗浄・乾燥することにより、不純物等を取り除くことができる。
【0035】
硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液のpHを8.5以上とする濃度及び量の濃アンモニア水溶液を加える。これにより、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成することができる。
なお、前記酸アンモニア水溶液のpHを8.7以上とすることがより好ましく、9以上とすることが更に好ましい。これにより、より短時間で前記沈殿物を作成できる。
【0036】
均質酸アンモニア水溶液中に含まれている硝酸イオンと同モル当量以上のアンモニアを滴下したとき、酸アンモニア水溶液のpHを8.5以上とする濃度とすることができ、沈殿物を生じさせることができる。
【0037】
例えば、濃アンモニア水溶液の濃度は20wt%以上とする。
濃アンモニア水溶液の濃度は20wt%とした場合には、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の均質酸アンモニア水溶液100mlに同量滴下したときに、酸アンモニア水溶液のpHを9以上とする濃度とすることができ、沈殿物を生じさせることができる。
濃アンモニア水溶液の濃度は、大気圧中で扱えるアンモニア水濃度の最大値である約30wt%とした場合には、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の均質酸アンモニア水溶液100mlに滴下する量を少なくしても、酸アンモニア水溶液のpHを9以上とする濃度とすることができ、沈殿物を生じさせることができる。
また、例えば、BiGe12を作成する場合、Bi溶解のために過剰の硝酸(HNO水溶液)を加えた場合には、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の均質酸アンモニア水溶液100mlに対して、同量超の濃アンモニア水溶液を滴下する必要がある。
【0038】
沈殿物は濾過することにより、水溶液と分離することができ、蒸留水等を用いて沈殿物を洗浄することにより、沈殿物の表面及び内部に付着した不純物を取り除くことができる。
その後、オーブン等で100℃以上の温度にすることにより、洗浄に用いた蒸留水を揮発させて、乾燥処理物を作成する。
【0039】
<多結晶体>
乾燥処理物を結晶化温度以上の温度で加熱することにより、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる多結晶体を作成することができる。
【0040】
<アモルファス体>
乾燥処理物を結晶化温度未満の温度で加熱することにより、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなるアモルファス体を作成することができる。なお、不純物分解温度以上の温度で加熱することが好ましい。これにより、不純物を分解除去することができる。
【0041】
<硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物からなる膜>
まず、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の均質酸アンモニア水溶液を基板上に塗布する。塗布法としてはスピンコート法、ディッピング法等を用いることができる。
次に、濃アンモニア水溶液を滴下してから、乾燥して、基板上に硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる乾燥処理膜を形成する。
【0042】
<多結晶体の膜>
前記乾燥処理膜を結晶化温度以上の温度で加熱することにより、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる多結晶体の膜を作成することができる。
【0043】
<アモルファス体の膜>
前記乾燥処理膜を結晶化温度未満の温度で加熱することにより、硝酸塩形成不能金属であるGe及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなるアモルファスの膜を作成することができる。なお、不純物分解温度以上の温度で加熱することが好ましい。これにより、不純物を分解除去することができる。
【0044】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程S1と、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を加えて、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程S2と、を有し、前記硝酸塩形成不能金属がGeである構成なので、酸性からアルカリ性まで広いpH領域で析出物が生成しない安定な硝酸塩形成可能金属及びGeの酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を滴下して、大気中で、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を短時間で、イオン交換樹脂等を必要とせず単純な操作で作成でき、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物を低温で容易に製造できる。
【0045】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液のpHを8.5以上とするように、前記濃アンモニア水溶液を加える構成なので、容易に、均質酸アンモニア水溶液から硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の沈殿物を作成することができる。
【0046】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記濃アンモニア水溶液の濃度が前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液中に含まれている硝酸イオンと同モル当量以上である構成なので、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液と同量の濃アンモニア水溶液を滴下したときに、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液のpHを8.5以上とすることができ、容易に、均質酸アンモニア水溶液から硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の沈殿物を作成することができる。
【0047】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液と硝酸塩形成可能金属の酸水溶液とを混合して、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する構成なので、酸性からアルカリ性まで広いpH領域で析出物を生成させない安定な硝酸塩形成可能金属及びGeの酸アンモニア水溶液を容易に作成でき、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物を低温で容易に製造できる。
【0048】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液と前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液とを混合する時、希釈硝酸を加える構成なので、析出物が形成され、白濁しても、前記析出物を完全に溶解させ、硝酸塩形成可能金属及びGeの均質酸アンモニア水溶液を容易に作成できる。
【0049】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、硝酸塩形成不能金属の酸化物をアンモニア水溶液に溶解して前記硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液を作成する構成なので、硝酸塩形成不能金属を完全に溶解させた硝酸塩形成不能金属の均質アンモニア水溶液を作成できる。
【0050】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、硝酸塩形成可能金属の酸化物を希釈硝酸に溶解して前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液を作成する構成なので、硝酸塩形成可能金属を完全に溶解させた硝酸塩形成可能金属の均質酸水溶液を作成できる。
【0051】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、硝酸塩形成可能金属の硝酸塩を水溶液に溶解して前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液を作成する構成なので、硝酸塩形成可能金属を完全に溶解させた硝酸塩形成可能金属の均質酸水溶液を作成できる。
【0052】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記硝酸塩形成可能金属がBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、In又はBiの群から選択されるいずれか1種の金属である構成なので、いずれの金属も、アルカリ属を除き、金属のイオン化傾向が銅よりも碑な金属であるので、硝酸塩を形成することができ、水溶液に完全に溶解させた均質酸水溶液を作成できるので、硝酸塩形成不能金属の均質アンモニア水溶液と混合してから、濃アンモニア溶液を滴下して、容易に、前記群から選択されるいずれか1種の金属及びGeの酸化物を作成できる。
【0053】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記硝酸塩形成可能金属が前記金属に加えて前記群から選択される別の金属を1種以上含む構成なので、前記群から選択されるいずれか1種の金属、前記群から選択される別の金属を1種以上及びGeの酸化物を作成できる。
【0054】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記沈殿物を濾過・洗浄・乾燥する構成なので、不純物を除去した硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の乾燥処理物を作成できる。
【0055】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記沈殿物を結晶化温度未満の加熱温度で加熱して、アモルファス体とする構成なので、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物のアモルファス体を作成できる。
【0056】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、前記沈殿物を結晶化温度以上の加熱温度で加熱して、多結晶体とする構成なので、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の多結晶体を作成できる。
【0057】
本発明の実施形態である硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。例えば、硝酸塩形成可能金属とGeの組成比が異なる組成物も同様の手順で合成できる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
(実施例1−1:La及びGeの酸化物の製造)
まず、二酸化ゲルマニウム(以下、GeO)0.5gを蒸留水に分散させて、懸濁液を作成した。
次に、この懸濁液に、蒸留水で希釈したアンモニア水(以下、希釈アンモニア)を滴下して、GeOを溶解して、透明なGe含有均質アンモニア水溶液を得た。このGe含有均質アンモニア水溶液のpHは約8.6であった。
【0059】
次に、硝酸ランタン(La(NO)を蒸留水に溶解して、2mol%のLa含有均質酸水溶液を作成した。
次に、前記Ge含有均質アンモニア水溶液に前記La含有均質酸水溶液を加え、白濁した酸アンモニア水溶液を得た。なお、この白濁した酸アンモニア水溶液中のLaとGeの比率を9.7:6とした。
図2は、白濁した酸アンモニア水溶液の写真である。
【0060】
次に、白濁した酸アンモニア水溶液に希釈硝酸を加えてpHを1.6とすることにより、析出物を溶解させ、La及びGe含有均質酸アンモニア水溶液を得た。
図3は、La及びGe含有均質酸アンモニア水溶液の写真である。ビーカーの底に沈んでいるのはスターラー(攪拌子)である。
【0061】
次に、このLa及びGe含有均質酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水に滴下することにより、La及びGeの酸化物の沈殿物を生成させた。
次に、この沈殿物を濾過し、蒸留水で洗浄した後、約100℃で10時間、乾燥することにより、La及びGeの酸化物の乾燥処理物を得た。
【0062】
(実施例1−2:La及びGeの酸化物のアモルファス体の製造)
前記乾燥処理物を3時間400℃で加熱して、400℃加熱処理物を得た。
図4は、400℃加熱処理物の粉末X線回折プロファイルである。
図4に示すように、400℃加熱処理物はアモルファス体であった。
【0063】
(実施例1−3:La及びGeの酸化物の結晶体の製造)
400℃加熱処理物をアルミナボートに充填してから、オーブン内に配置し、大気中、1000℃で加熱して、1000℃加熱処理物を得た。
図5は、1000℃加熱処理物の粉末X線回折プロファイルである。
図5に示すように、アパタイト型結晶によるピークが観測され、1000℃加熱処理物は多結晶体であった。
なお、La及びGeの酸化物のアパタイト型結晶体は酸素イオン伝導性固体電解質としての利用可能性がある。
【0064】
(実施例2:Bi及びGeの酸化物の製造)
まず、GeOを0.8gビーカーに量り取り、希釈アンモニアでGeOを溶解して、透明なGe含有均質アンモニア水溶液を作成した。
次に、酸化ビスマス(Bi)を別のビーカーに2.3g量り取り、10mlの硝酸で溶解してから、蒸留水を加えて50mlの透明なBi含有均質酸水溶液を作成した。
次に、Ge含有均質アンモニア水溶液とBi含有均質酸水溶液を混合して、透明なBi及びGe含有均質酸アンモニア水溶液を作成した。
図6は、Bi及びGe含有均質酸アンモニア水溶液の写真である。この写真は、Bi及びGe含有均質酸アンモニア水溶液に関するはじめて報告である。ビーカーの底に沈んでいるのはスターラー(攪拌子)である。
【0065】
次に、このBi及びGe含有均質酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水に滴下することにより、Bi及びGeの酸化物の沈殿物を生成させた。
次に、この沈殿物を濾過し、蒸留水で洗浄した後、約120℃で10時間、乾燥することにより、乾燥処理物を得た。
【0066】
図7は、乾燥処理物の粉末X線回折プロファイルである。
図7に示す結晶ピークから、乾燥処理物は、Bi及びGeの酸化物(BiGe12)の多結晶体とアモルファス体の混合物であった。
【0067】
なお、Bi及びGe含有均質酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水を滴下した後、室温で2日間攪拌を続けてから、沈殿物を濾過、120℃で10時間乾燥するとアモルファス体が消滅し、少量の不純物結晶が含まれていたが、ほぼBiGe12結晶のみの乾燥処理物が得られた。
図8は、2日間攪拌後の乾燥処理物の粉末X線回折プロファイルである。
図8において、黒丸はBiGe12結晶ピークであり、白四角は不純物結晶ピークである。
【0068】
BiGe12結晶はγ線蛍光材料に応用可能な材料である。
これまで、BiGe12結晶を120℃で生成する報告は無かったが、本発明では、濃アンモニア水を滴下後、2日間攪拌することにより、120℃乾燥でBiGe12の結晶を生成できた。
また、溶融急冷法によるBiGe12のアモルファス体の製造には1055℃以上に加熱する必要ある。しかし、本発明では、それ以下の低温の120℃で多結晶体との混合物ではあるが、アモルファス体を製造することができた。
【0069】
(実施例3:Mg及びGeの酸化物の製造)
まず、GeOを2gビーカーに量り取り、50mlの蒸留水に分散させた後、希釈アンモニアでGeOを溶解して、透明なGe含有均質アンモニア水溶液を作成した。
次に、このGe含有均質アンモニア水溶液にゲルマニウムと等モル量の硝酸マグネシウムを加え、白色の沈殿物を生成した。
次に、この白色の沈殿物を含むアンモニア水溶液に希釈硝酸を加えて沈殿物を溶解させ、透明なMg及びGe含有均質酸アンモニア水溶液を作成した。
次に、このMg及びGe含有均質酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水に滴下することにより、微小結晶集合体からなる沈殿物を生成させた。
次に、この沈殿物を濾過し、蒸留水で洗浄した後、100℃で10時間、乾燥することにより、乾燥処理物を得た。
次に、乾燥処理物をアルミナボートに充填してから、オーブン内に配置し、大気中、800℃で3時間、加熱して、800℃加熱処理物を得た。
800℃加熱処理物は、Mg及びGeの酸化物(MgGeO)の多結晶体であった。
【0070】
(比較例1:Ge溶解性)
(比較例1−1)
GeOを0.2g量り取り、濃硝酸に加えて攪拌した。
しかし、GeOは濃硝酸に溶解しなかった。
(比較例1−2)
GeOを0.2g量り取り、蒸留水で希釈した硝酸に加えて攪拌した。
しかし、GeOは蒸留水で希釈した硝酸に溶解しなかった。
【0071】
(比較例2:Ge含有均質アンモニア水溶液の安定性)
(比較例2−1)
まず、GeOを0.5g量り取り、蒸留水に分散させて、懸濁液を作成した。
次に、この懸濁液に、蒸留水で希釈したアンモニア水(以下、希釈アンモニア)を滴下することによりGeOを溶解させて、透明なGe含有均質アンモニア水溶液を得た。Ge含有均質アンモニア水溶液のpHは約8.6であった。
次に、Ge含有均質アンモニア水溶液に濃硝酸を加えて酸性(pH=1.2)としたが、沈殿は生じなかった。
【0072】
(比較例2−2)
濃硝酸の代わりに蒸留水で希釈した硝酸を用いたが、沈殿は生じなかった。
(比較例2−3)
濃硝酸の代わりに希釈アンモニアを用いてアルカリ性(pH=10)としたが、沈殿は生じなかった。
(比較例2−4)
濃硝酸の代わりに濃アンモニアを用いたが、沈殿は生じなかった。
【0073】
従来、GeOはアルカリ領域のみで溶解すると考えられていた。
しかし、比較例2−1〜2−4に示したように、いったん希釈アンモニアを用いてGeOを水に溶解させると、酸性、アルカリ性どちらの状態にしても沈殿は生じなかった。つまり、Ge含有均質アンモニア水溶液は広いpH範囲で安定であった。
【0074】
(比較例3:Ge含有均質アンモニア水溶液の安定性)
(比較例3−1)
GeOを0.5g量り取り、濃アンモニア(21%溶液)に加えて攪拌した。
これに蒸留水を加えて溶解させ、Ge含有均質アンモニア水溶液を作成した。
次に、Ge含有均質アンモニア水溶液にアンモニアを添加したが、沈殿は生じなかった。
(比較例3−2)
アンモニアの代わりに硝酸を用いたが、沈殿は生じなかった。
【0075】
(比較例4:均質水溶液のための水の重要性)
まず、GeOを0.5g量り取り、エタノールに分散させ、エタノールで希釈したアンモニア水を加えたが、GeOは溶解しなかった。
GeOの溶解にはアンモニアに加えて十分量の水が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法に関するものであり、X線の蛍光材料(Sr及びGeの酸化物)、γ線の蛍光材料(Bi及びGeの酸化物)、可視光線の蛍光材料(Mn及びGeの酸化物、Mg及びGeの酸化物)、誘電体材料(Bi及びGeの酸化物)、固体電解質、センサー材料、燃料電池材料等に利用することができ、蛍光・誘電体材料産業だけでなく、当該材料を用いたセンサーや燃料電池等の電子機器・エネルギー機器製造産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0077】
S1…硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程、S2…硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成する工程と、
前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液に濃アンモニア水溶液を加えて、硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸化物からなる沈殿物を作成する工程と、を有し、
前記硝酸塩形成不能金属がGeであることを特徴とする硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液のpHを8.5以上とするように、前記濃アンモニア水溶液を加えることを特徴とする請求項1に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記濃アンモニア水溶液の濃度が前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液中に含まれている硝酸イオンと同モル当量以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項4】
硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液と硝酸塩形成可能金属の酸水溶液とを混合して、前記硝酸塩形成不能金属及び硝酸塩形成可能金属の酸アンモニア水溶液を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液と前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液とを混合する時、希釈硝酸を加えることを特徴とする請求項4に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項6】
硝酸塩形成不能金属の酸化物をアンモニア水溶液に溶解して前記硝酸塩形成不能金属のアンモニア水溶液を作成することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項7】
硝酸塩形成可能金属の酸化物を希釈硝酸に溶解して前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液を作成することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項8】
硝酸塩形成可能金属の硝酸塩を水溶液に溶解して前記硝酸塩形成可能金属の酸水溶液を作成することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項9】
前記硝酸塩形成可能金属がBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、In又はBiの群から選択されるいずれか1種の金属であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項10】
前記硝酸塩形成可能金属が前記金属に加えて前記群から選択される別の金属を1種以上含むことを特徴とする請求項9に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項11】
前記沈殿物を濾過・洗浄・乾燥することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項12】
前記沈殿物を結晶化温度未満の加熱温度で加熱して、アモルファス体とすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。
【請求項13】
前記沈殿物を結晶化温度以上の加熱温度で加熱して、多結晶体とすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の硝酸塩形成可能金属及びGeの酸化物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−60333(P2013−60333A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200522(P2011−200522)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)