説明

硫化リチウムの製造方法

【課題】比表面積の大きい硫化リチウムを効率よく製造できる硫化リチウムの製造方法を提供する。
【解決手段】水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒からなるスラリー中に、硫化水素ガスを吹き込み、水酸化リチウムと硫化水素を反応させ、反応により生じる水を、スラリーから除去しながら反応を継続し、系内の水分が実質的に無くなった後、硫化水素の吹き込みを止め、不活性ガスを吹き込むことを特徴とする硫化リチウムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化リチウム、その製造方法及び硫化物系固体電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硫化リチウムの製造方法として特許文献1には、水酸化リチウムと非プロトン性有機溶媒からなるスラリー中に硫化水素を吹き込み、水硫化リチウム作製後、脱水・脱硫化水素することにより無水硫化リチウムを製造する第1の発明と、硫化水素を連続して吹き込み、直接無水硫化リチウムを作製する第2の発明が開示されている。
また、特許文献2では、粒径を0.1mm〜1.5mmに制御した固体状の水酸化リチウムに、水素ガスと硫黄ガスを同時に、又は硫化水素を吹き込み、130℃〜445℃の温度で硫化リチウムを製造する方法が開示されている。
【0003】
また、アルカリ金属硫化物の製造方法として、特許文献3には、含水アルカリ水硫化物とアルカリ金属水酸化物水溶液を反応させて得られるアルカリ金属硫化物水溶液を、非水溶性の分散媒と接触させ脱水することを特徴とする製造方法が開示されている。
【0004】
上記の製造方法等を用いて製造された硫化リチウムは、ポリアリーレンスルフィドの原料として知られているが、近年リチウム電池用硫化物系固体電解質の原料として用いられる場合が増えている。
【0005】
硫化物系固体電解質について、特許文献4には10−4S/cm台のイオン伝導性を有する固体電解質が開示されている。同様に、特許文献5にはLiSとPから合成された固体電解質であって、10−4/cm台のイオン伝導性を有するものが開示されている。
【0006】
また、特許文献6にはLiSとPを68〜74モル%:26〜32モル%の比率で合成した硫化物系結晶化ガラスが開示されている。この固体電解質では10−3S/cm台のイオン伝導性を実現している。
【0007】
ところで、特許文献1や特許文献7に記載されている硫化リチウムの製造方法では、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を代表とする極性溶媒が通常使用されている。しかしながら、NMPを使用した場合、不純物としてNMPと水酸化リチウムが反応したN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)が生成する。また、例えば、極性溶媒として一般的なジメチルホルムアミド(DMF)やアルコール類として1−オクチルアルコールを溶媒として使用した場合も、水酸化リチウムや硫化水素と反応して不純物を生じて、反応液が高粘度となる。
このように、水酸化リチウムと硫化水素から硫化リチウムを製造するために極性溶媒を使用すると、何らかの不純物を生じて原料のロスや反応の進行が妨げられるという問題があった。
【0008】
また、従来の極性溶媒を使用した硫化リチウム製造方法では、反応中間体である水硫化リチウムの脱硫化水素を進めるために、150℃以上の高温が必要であった。
また、水硫化リチウムは通常、極性溶媒に溶解するため、原料である水酸化リチウムの仕込みを増加すると水硫化リチウム溶液の粘度が急激に上昇し、反応速度の低下や水酸化リチウムが残留する等の不具合があった。
また、反応温度を150℃以上とするためには、150℃以上の高沸点を有する極性溶媒が望ましい。しかしながら、得られた硫化リチウムを電解質原料として使用するためには極性溶媒や不純物を除去する必要があり、さらに高沸点溶媒を除去するための乾燥工程が必須であった。
また、水硫化リチウム製造後や硫化リチウム製造中に、反応温度を昇温して反応生成水を留去するため、この際、水分共存下で硫化リチウムの結晶が成長するため、内部が詰まった立方体形状のLiSが得られていた。このLiSは、内部が詰まった構造であるため比表面積が1.0m/gに満たないものであるのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−330312号公報
【特許文献2】特開平9−278423号公報
【特許文献3】特開2006−16281号公報
【特許文献4】特開平4−202024号公報
【特許文献5】特開2002−109955号公報
【特許文献6】特開2005−228570号公報
【特許文献7】国際公開第04/106232号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、リチウム電池用固体電解質を製造するに当たり、従来の溶融法やメカニカルミリング法に加え、炭化水素系有機溶媒中での撹拌によっても、固体電解質を合成できることを見出している。しかしながら、従来の方法で作製される比表面積が1.0m/gに満たない硫化リチウムを原料とした場合、合成時間が40時間以上と非常に長くなる上、未反応硫化リチウムが残留する等の問題があった。
一方、メカニカルミリング法による合成においても、粉砕機や条件によっても異なるが、原料の硫化リチウムの比表面積が小さい場合、反応時間が30時間以上も必要であった。
【0011】
本発明の目的は、比表面積の大きい硫化リチウムを効率よく製造できる硫化リチウムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、以下の硫化リチウムの製造方法等が提供される。
1.水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒からなるスラリー中に、硫化水素ガスを吹き込み、前記水酸化リチウムと硫化水素を反応させ、前記反応により生じる水を、前記スラリーから除去しながら反応を継続し、系内の水分が実質的に無くなった後、硫化水素の吹き込みを止め、不活性ガスを吹き込むことを特徴とする硫化リチウムの製造方法。
2.前記炭化水素系有機溶媒が、水と共沸組成を形成する1種又は2種以上の溶媒からなることを特徴とする1記載の硫化リチウムの製造方法。
3.前記炭化水素系有機溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びドデカンから選ばれる1種又は2種以上の溶媒からなることを特徴とする1又は2に記載の硫化リチウムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比表面積の大きい硫化リチウムを効率よく製造できる方法が提供できる。また、本発明の製造方法は、極性溶媒を使用する製造方法と比べて、不純物が生成せず、原料であるリチウムのロスがない。さらに、比較的低温で製造できるため、製造費用が削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】硫化物系固体電解質の製造工程を説明するための概略フロー図である。
【図2】実施例7で使用した固体電解質製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の硫化リチウムの製造方法では、水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒からなるスラリー中に、硫化水素ガスを吹き込み、水酸化リチウムと硫化水素を反応させる。そして、反応により生じる水を、スラリーから除去しながら反応を継続することを特徴とする。
本発明では、炭化水素系有機溶媒を使用する。これにより、NMPに代表される極性溶媒を使用した場合に生じる不純物による原料のロスを考慮する必要がなくなる。炭化水素系有機溶媒は、強アルカリである水酸化リチウムや、酸である硫化水素との反応性が低く、不純物をほとんど生成しない。そのため、不純物を除去するための精製工程が不要となり、大幅な製造プロセスの簡素化が図れる。
【0016】
また、本発明では反応により生じる水を、スラリーから除去しながら原料を反応させる。このため、反応系に実質的に水分が存在しないため、硫化リチウムの結晶成長が進まず、比表面積の大きい硫化リチウムを得ることができる。この硫化リチウムは、固体電解質の製造原料として好適である。
【0017】
本発明の製造方法で使用する水酸化リチウムは、特に制限はなく、工業的に市販されているものが使用できる。高純度な硫化リチウムを得ることができるため、不純物含有量の少ない水酸化リチウムを使用することが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる炭化水素系有機溶媒は、特に制限はないが、水と共沸組成を形成する溶媒が好ましい。炭化水素系有機溶媒は、1種で使用してもよく、2種以上の混合溶媒で使用してもよい。具体的には、ベンゼン(沸点80℃)、トルエン(沸点111℃)、キシレン(沸点:p−体、138℃,m−体、139℃,o−体、144℃)、エチルベンゼン(沸点136℃)及びドデカン(沸点215℃)から選ばれる1種又はこれらの混合物が好適に用いられる。
【0019】
水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒を混合してスラリーとする。この際、水酸化リチウムの仕込み量は、特に制限はなく、取り扱いや移送を考慮して適切な濃度とすればよい。例えば、スラリーにおける水酸化リチウムの量は30重量%以下であることが望ましい。
【0020】
水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒からなるスラリーに、硫化水素ガスを吹き込み、水酸化リチウムと硫化水素を反応させる。
使用する硫化水素にも特に制限はないが、高純度の硫化リチウムを得ることができることから、二酸化炭素やアンモニアガス等の不純物含有量の少ない硫化水素を使用することが好ましい。
硫化水素の吹き込み速度は、反応系の規模や反応条件等により適宜調整すればよい。
【0021】
反応時の圧力は、常圧であっても加圧であってもいずれでもかまわない。加圧することにより反応速度を大きくすることができ、使用する硫化水素量を低減することができる。加圧する場合の圧力は0.2〜3.0MPaが好ましい。
【0022】
反応時の温度は、用いる炭化水素系有機溶媒の沸点と硫化水素の溶解度、反応時の圧力により異なるが、炭化水素系有機溶媒が水と共沸する温度以上で、反応時の圧力下における炭化水素系有機溶媒の沸点以下であることが好ましい。
反応温度としては、例えば、70℃〜300℃が好ましい。加熱下で反応させることにより、反応により生じた水をスラリー内から除去することができる。特に、上述した水と共沸組成を形成する溶媒を使用することにより、スラリー内から水を効率よく除去することができる。反応系から速やかに水分を除去することにより、反応系に水分が実質的に存在しない状態とすることができるため、硫化リチウムの結晶成長が進まず、比表面積の大きい硫化リチウムを得ることができる。
尚、水は反応系から蒸発した共沸ガスをコンデンサ等で凝縮することで系外に除去できる。この際、炭化水素系有機溶媒も除去されるが、除去された量を反応系に新たに追加してもよい。これにより、スラリー濃度等を調整できる。
【0023】
反応が進行し、反応系から原料である水酸化リチウムが消失すると、水の発生が止まる。本願において、系内の水分が実質的に無くなった後とは、反応系から蒸発する水分が観測されなくなった状態を意味する。水の発生が止まった後、硫化水素の吹き込みを止め、不活性ガスを吹き込む。この不活性ガスの吹き込みにより系内の残留する硫化水素を取り除くことも可能である。
【0024】
脱硫化水素後、スラリーの固体成分と有機溶媒を分離し、乾燥することにより、硫化リチウムを回収できる。尚、後述するように、スラリーの状態で固体電解質の製造工程に使用してもよい。
【0025】
本発明の製造方法で得られる硫化リチウムは、比表面積が大きいものである。具体的に、比表面積が1.0m/g以上とすることができる。比表面積が1.0m/gに満たない場合、従来の方法で合成された硫化リチウムに比べ処理時間短縮の効果が得られない場合がある。
硫化リチウムの比表面積は、好ましくは1.5m/g以上であり、より好ましくは10m/g以上、100m/g以上である。
【0026】
尚、比表面積はBET法により例えばAUTOSORB6を用いて測定する。窒素ガスを用いた窒素法の測定下限は1.0m/gであるため、窒素法の測定下限以下の場合には、クリプトンガスを用いて測定することができる。
【0027】
リチウム二次電池等に用いられる硫化物系固体電解質は、上述した本発明の方法により得られた硫化リチウムを用いて製造できる。本発明のLiSを使用することにより、固体電解質を短時間で合成できるため生産性が高くなる。また、硫化物系固体電解質を所望の組成比で合成することができる。
以下、硫化物系固体電解質の製造工程の例を、図面を用いて説明する。尚、硫化物系固体電解質の製造工程は、本例に限定されるものではない。
【0028】
図1は、硫化物系固体電解質の製造工程を説明するための概略フロー図である。
図1に示す硫化物系固体電解質の製造工程は、主に、硫化リチウム(LiS)製造工程1と固体電解質製造工程2からなる。
硫化リチウム(LiS)製造工程1では、上述した本発明の製造方法にて、LiSを製造する。具体的に、反応槽11に水酸化リチウム(LiOH)と非水溶性有機溶媒を投入し、スラリー状とする。反応槽11内を加熱、撹拌しながら硫化水素(HS)を供給し、LiSを得る。この際、反応時に発生する水は反応槽11外に除去される。
反応終了、即ち、水の発生が止まった後、HSの供給を停止し、不活性ガスにて脱硫化水素する。
【0029】
上記製造工程1で得たLiSを、固体電解質製造工程2に供給する。この際、LiSは反応槽11からスラリー状のまま供給してもよく、スラリーから固液分離したLiSを供給してもよい。
固体電解質製造工程2では、製造工程1で得たLiSと他の硫化物を反応させる。具体的に、電解質反応槽21にLiSと他の硫化物(例えば、P)を投入、混合した後、ビーズミル22に投入する。電解質反応槽21による混合と、ビーズミル22による混合、粉砕により、原料を反応させ固体電解質を得る。
【0030】
LiSと混合する硫化物としては、上述した硫化リン(P)の他に、硫化ケイ素、硫化ホウ素、硫化ゲルマニウムから選択される1つ以上の硫化物が好ましく使用できる。特にPが好ましい。
上記の硫化物については、特に限定はなく、市販されているものが使用できる。
【0031】
上記原料(硫化リチウムと他の硫化物を含む)に、有機溶媒を加えた状態で反応させる。有機溶媒を加えた状態で反応させることで、処理時の造粒効果を抑制し、合成反応を効率的に促進できる。これにより、均一性に優れ、未反応原料の含有率が低い固体電解質を得ることができる。また、原料や反応物の器壁等への固着を防止することができ、製品の歩留を向上できる。
【0032】
溶媒としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素又は芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が使用できる。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
これらのうち、特にトルエン、キシレンが好ましい。
【0033】
また、LiSの製造工程1で使用した炭化水素系有機溶媒と同じ溶媒を使用することも好ましい。本発明の硫化リチウムは、従来法で製造したものよりも不純物の発生が低いため、硫化リチウムの洗浄、精製をしなくても、製造工程1で得たスラリー状のまま電解質反応槽21に投入することができる。また、高沸点溶媒を使用しなくともよいので、乾燥も不要である。このように、LiSの製造と電解質の製造とで共通溶媒化できるので、硫化リチウムの固液分離、洗浄、精製、乾燥工程が削減できる。
【0034】
有機溶媒中の水分量は、原料硫化物及び合成された硫化物系固体電解質との反応を考慮して、50ppm(重量)以下であることが好ましい。水分は反応により硫化物系固体電解質の変性を引き起こし、固体電解質の性能を悪化させる。そのため、水分量は低いほど好ましく、より好ましくは、30ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0035】
反応時の硫化リチウムの仕込み量は、硫化リチウムと他の硫化物の合計に対し30〜95mol%とすることが好ましく、さらに、40〜85mol%とすることが好ましく、特に50〜75mol%とすることが好ましい。
【0036】
有機溶媒の量は、原料である硫化リチウムと他の硫化物が、溶媒の添加により溶液又はスラリー状になる程度であることが好ましい。通常、溶媒1kgに対する原料(合計量)の添加量は0.03〜1Kg程度となる。好ましくは0.05〜0.5Kg、特に好ましくは0.1〜0.3Kgである。
【0037】
電解質反応槽21の温度は、60℃〜300℃であり、80℃〜200℃が好ましい。60℃未満ではガラス化反応に時間がかがり生産効率が十分ではない。300℃を超えると、好ましくない結晶が析出する場合がある。
また、ビーズミル22の温度は、20℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上60℃以下である。処理温度が20℃未満の場合、固体電解質製造に要する反応時間が長くなる場合があり、80℃を超えると、容器、ボールの材質であるジルコニア、強化アルミナ、アルミナの強度低下が著しく起こるため、容器、ボールの磨耗、劣化や電解質へのコンタミが生じるおそれがある。
【0038】
ビーズミル22から取り出されたスラリーは、有機溶媒と固体電解質(硫化物ガラス)からなり、そのままの状態で結晶化加熱槽23に輸送される。
必要に応じて、固体電解質を結晶化加熱槽23にて結晶化し、硫化物結晶化ガラスとする。これにより、硫化物系固体電解質のイオン伝導性を向上できる。
結晶化における加熱温度は、200℃以上400℃以下、より好ましくは250〜320℃である。加熱時間は、1〜5時間が好ましく、特に1.5〜3時間が好ましい。尚、スラリー状態で撹拌しながら加熱するため、炭化水素系有機溶媒の蒸気圧により加圧状態となる。そのため、結晶化加熱槽はオートクレーブ等の耐圧反応器が用いられる。
【0039】
反応後又は結晶化処理後、必要であれば乾燥機24にて硫化物系固体電解質を乾燥することもできる。尚、好ましい様態として、乾燥工程での加熱と結晶化工程の加熱を、1つの加熱工程とすることもできる。この場合は、遠心分離工程等によりスラリーを固液分離し、その後に乾燥機24により乾燥すればよい。
尚、電解質反応槽21にLiSと他の硫化物(例えば、P)を投入、混合合成して(ビーズミル22を用いずに)固体電解質を製造してもよく、ビーズミル22による混合、粉砕により(電解質反応槽21を用いずに)、原料を反応させ固体電解質を製造してもよい。
【0040】
以上、硫化物系固体電解質の製造方法を、図1を参照して説明したが、本固体電解質の製造方法は、上述の方法に限定されない。
例えば、粉砕機中で、少なくとも本発明の製造方法で製造した硫化リチウムと他の硫化物とを含む原料を、炭化水素系溶媒中で粉砕しつつ反応させて固体電解質を製造する固体電解質の製造方法であってもよい(特願2008−079753)。
また、反応槽中で、少なくとも本発明の製造方法で製造した硫化リチウムと他の硫化物とを含む原料を、炭化水素系溶媒中で反応させて固体電解質を製造する固体電解質の製造方法であってもよい(PCT/JP2008/067126)。
【0041】
また、粉砕機中で、少なくとも本発明の製造方法で製造した硫化リチウムと他の硫化物とを含む原料を、炭化水素系溶媒中で粉砕しつつ反応させて固体電解質を合成し、さらに、反応槽中で、少なくとも本発明の製造方法で製造した硫化リチウムと他の硫化物とを含む原料を、炭化水素系溶媒中で反応させて固体電解質を合成し、反応中の原料を、前記粉砕機と前記反応槽との間を循環させる固体電解質の製造方法であってもよい(特願2008−292967)。
【0042】
硫化物系固体電解質は、全固体リチウム二次電池の固体電解質層や、正極や負極合材に混合する固体電解質等としても使用できる。
例えば、正極と、負極と、正極及び負極の間に固体電解質からなる層を形成することで、全固体リチウム二次電池となる。
【実施例】
【0043】
[硫化リチウムの作製]
実施例1
窒素気流下で非水溶性媒体としてパラキシレン(広島和光製試薬)270gを600mlセパラブルフラスコに加え、続いて水酸化リチウム30g(本荘ケミカル製)を投入し、フルゾーン撹拌翼300rpmで撹拌しながら、110℃に保持した。
スラリー中に硫化水素(巴商会製)を300ml/分の供給速度で吹き込みながら120℃まで昇温した。セパラブルフラスコからは、水とパラキシレンの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するパラキシレンと同量のパラキシレンを連続的に供給し、反応液レベルを一定に保持した。
凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後6時間で水の留出は認められなくなった(水分量は総量で22mlであった)。尚、反応の間は、パラキシレン中に固体が分散して撹拌された状態であり、パラキシレンから分層した水分は無かった。
この後、硫化水素を窒素に切り替え300ml/分で1時間流通した。
【0044】
固形分をろ過・乾燥して白色粉末である硫化リチウムを得た。この粉末を分析したところ(塩酸滴定及び硝酸銀滴定)、硫化リチウムの純度は99.6%であった。X線回折測定したところ、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。
得られた硫化リチウムの比表面積を窒素ガスによるBET法で、AUTOSORB6を用いて測定した結果、14.8m/gであった。
また、生成固体のイオンクロマト分析や反応後のパラキシレンのガスクロ分析等を行ったが、不純物は確認されなかった。
【0045】
実施例2
実施例1において、非水溶性媒体としてトルエン(広島和光製試薬)270g、硫化水素吹き込み前の温度を95℃、吹き込み中及び後を104℃に変えた以外は同様にして硫化リチウムを得た。
固形分をろ過・乾燥して得た白色粉末を分析したところ(塩酸滴定及び硝酸銀滴定)、硫化リチウムの純度は99.2%であった。X線回折測定したところ、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。得られた硫化リチウムの比表面積を窒素ガスによるBET法で、AUTOSORB6を用いて測定した結果、12.6m/gであった。
【0046】
実施例3
実施例1において非水溶性媒体としてドデカン(広島和光製試薬)235.5g、硫化水素吹き込み前の温度を130℃、吹き込み中及び後を140℃に変えた以外は同様にして硫化リチウムを得た。
固形分をろ過・乾燥して得た白色粉末を分析したところ(塩酸滴定及び硝酸銀滴定)、硫化リチウムの純度は98.8%であった。X線回折測定したところ、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。得られた硫化リチウムの比表面積を窒素ガスによるBET法で、AUTOSORB6を用いて測定した結果、10.5m/gであった。
【0047】
実施例4
実施例1において、セパラブルフラスコの代わりにオートクレーブを用い、圧力制御弁により系内を加圧状態に保ち反応を行った。
窒素気流下で非水溶性媒体としてパラキシレン(広島和光製試薬)270gを600mlオートクレーブに加え、続いて水酸化リチウム30g(本荘ケミカル製)を投入した。窒素ガスにより圧力を0.85MPaまで加圧し、この圧力に保持した。フルゾーン撹拌翼300rpmで撹拌しながら、200℃に保持した。
【0048】
スラリー中に硫化水素(巴商会製)を300ml/分の供給速度で吹き込みながら210℃まで昇温した。オートクレーブからは、水とパラキシレンの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するパラキシレンと同量のパラキシレンを連続的に供給した。
【0049】
凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後3時間で水の留出は認められなくなった(水分量は総量で22mlであった)。尚、反応の間は、パラキシレン中に固体が分散して撹拌された状態であり、パラキシレンから分層した水分は無かった。
この後、硫化水素の供給を停止し、オートクレーブを脱圧し、窒素ガスを300ml/分で1時間流通した。
【0050】
固形分をろ過・乾燥して白色粉末である硫化リチウムを得た。この粉末を分析したところ(塩酸滴定及び硝酸銀滴定)、硫化リチウムの純度は99.4%であった。X線回折測定したところ、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。
得られた硫化リチウムの比表面積を窒素ガスによるBET法で、AUTOSORB6を用いて測定した結果、16.2m/gであった。
また、生成固体のイオンクロマト分析や反応後のパラキシレンのガスクロ分析等を行ったが、不純物は確認されなかった。
【0051】
実施例5
実施例4において、非水溶性媒体としてパラキシレンをトルエン(広島和光製試薬)270gに代えた以外は同様にして硫化リチウムを得た。
固形分をろ過・乾燥して得た白色粉末を分析したところ(塩酸滴定及び硝酸銀滴定)、硫化リチウムの純度は99.0%であった。X線回折測定したところ、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。
得られた硫化リチウムの比表面積を窒素ガスによるBET法で、AUTOSORB6を用いて測定した結果、11.2m/gであった。
【0052】
比較例1
従来から知られている特許第3528866号に記載の方法に準じて硫化リチウムを合成した。まず、第一の工程として、極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン溶媒(以下NMPとする:広島和光製試薬)270gを600mlセパラブルフラスコに加え、続いて水酸化リチウム30g(本荘ケミカル製)を投入し、フルゾーン撹拌翼300rpmで撹拌しながら、130℃に保持した。ここで、液中に硫化水素(巴商会製)を300ml/分の供給速度で2時間吹き込んだ。その結果、LiOH+HS→LiSH+HO反応に従い水流化リチウム(LiSH)溶液が生成された。
【0053】
続いて、第二の工程としてこの反応液を窒素気流下(50ml/分)で昇温し水流化リチウムを脱硫化水素化した。前述の反応により副生成する水分が昇温するに従って蒸発するため、系外にコンデンサにより凝縮させて留去した。水分の留去に伴い温度が上昇するが、205℃に達した時点で温度を保持した。保持時間は2時間(脱硫化水素反応が終了し、硫化リチウムが安定に存在するようになる)とした。
冷却後、ガラス製フィルタにより減圧ろ過し、固形分をNMP溶媒により2倍希釈洗浄を3回実施し、さらにトルエン溶媒により同様に2回洗浄した。
乾燥後に得られた白色粉末をX線回折測定により、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。
得られた硫化リチウムの比表面積を窒素ガスによるBET法で、AUTOSORB6を用いて測定した結果、測定限界である1.0m/g未満であった。そこで窒素ガスをクリプトンガスに変更し測定した。比表面積は0.04m/gであった。
【0054】
比較例2
比較例1と同様に、第一の工程として、極性溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド溶媒(以下DMFとする:広島和光製試薬)270gを600mlセパラブルフラスコに加え、続いて水酸化リチウム30g(本荘ケミカル製)を投入し、フルゾーン撹拌翼300rpmで撹拌しながら、100℃に保持した。
ここで、液中に硫化水素(巴商会製)を300ml/分の供給速度で吹き込んだところ、水流化リチウムの生成が確認されたものの、セパラブルフラスコの気相部壁面や系外コンデンサまでの上部配管に多量の白色固体が付着した。また、反応液粘度の上昇も認められた。
この白色固体は、アミン臭がしたことより、強アルカリである水酸化リチウムと、水流化反応での生成水存在下における極性溶媒DMFの分解に由来する生成物であると推定される。
白色固体による上部配管の閉塞の危険があったため、第二の工程である脱硫化水素反応を実施することができなった。
【0055】
[固体電解質の作製]
実施例6
上記実施例1で作製したLiS 16.27gと平均粒径50μm程度のP(アルドリッチ社製)33.73gを10mmφアルミナボール175個が入った500mlアルミナ製容器に入れ密閉した。上記計量、密閉作業はすべてグローブボックス内で実施し、使用する器具類はすべて乾燥機で事前に水分除去したものを用いた。
この密閉したアルミナ容器を、遊星ボールミル(レッチェ社製PM400)にて室温下、所定時間メカニカルミリング処理を実施し、得られた白黄色の固体電解質ガラス粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)をし、LiS結晶ピークの有無を観測した。LiSの結晶ピークの消滅をもって固体電解質ガラスが生成したと判断できる。
その結果、LiS結晶ピークが消滅する時間は14時間であった。
【0056】
比較例3
上記比較例1により作製したLiSを使用した他は、実施例6と同様にしてLiS結晶ピークの有無を観測した。
その結果、LiS結晶ピークが消滅するまでに36時間を要した。
【0057】
実施例6と比較例3の比較から、本発明のLiSを使用することにより、固体電解質の製造時間を半分以下まで短縮できることが確認できた。
【0058】
実施例7
ビーズミルで固体電解質を製造した。具体的に、実施例1で製造したLiS 35.2gとP(アルドリッチ社製)73.1gをアイメックス社製バッチ式レディーミル(RMB−08)により粉砕合成した。粉砕合成条件は、800mlZrO製ポットに0.5mmφZrOビーズ1271g、無水トルエン溶媒252.7g、LiS 35.2g、P 73.1gを仕込み、回転数2000rpmで1.5時間処理し、固体電解質ガラス粒子スラリーを得た。この固体電解質ガラス粒子スラリーを、25μm目開きメッシュシートを用いたヌッチェ式真空ろ過を施し0.5mmφZrOビーズを分離除去し、固形分濃度が30%の固体電解質ガラストルエン混合液を得た。
乾燥後に得られた粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、原料LiSのピークが消滅し、ほぼ固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。乾燥粒子の回収率は98%であった。
上記固体電解質粒子をグローブボックス内Ar雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、300℃、2時間の加熱処理を施し電解質ガラスセラミック粒子を得た。このガラスセラミック粒子のX線回折測定では、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
【0059】
比較例4
実施例5において、比較例1で製造したLiSを使用してビーズミルで固体電解質を製造した。具体的に、比較例1で製造したLiS 35.2gとP(アルドリッチ社製)73.1gをアイメックス社製バッチ式レディーミル(RMB−08)により粉砕合成した。粉砕合成条件は、800mlZrO製ポットに0.5mmφZrOビーズ1271g、無水トルエン溶媒252.7g、LiS 35.2g、P 73.1gを仕込み、回転数2000rpmで1.5時間及び3.5時間処理し、それぞれ固体電解質ガラス粒子スラリーを得た。この固体電解質ガラス粒子スラリーを、25μm目開きメッシュシートを用いたヌッチェ式真空ろ過を施し0.5mmφZrOビーズを分離除去し、固形分濃度が30%の固体電解質ガラストルエン混合液を得た。
乾燥後に得られた粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、1.5時間処理した固体電解質ガラスでは原料LiSに起因するピークが2θ=26.8、31.0、44.6、52.8degに観測され、
3.5時間処理した粒子では、原料LiSのピークが消滅し、ほぼ固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。乾燥粒子の回収率はそれぞれ98%であった。
1.5時間処理した固体電解質粒子をグローブボックス内Ar雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、300℃、2時間の加熱処理を施した電解質ガラスセラミック粒子では、X線回折測定によりLi2Sに起因するピークが依然として存在する一方、Liに起因するピークが観測された。これに対して3.5時間処理し加熱処理を施した電解質ガラスセラミック粒子のX線回折測定では、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
以上のことから、ビーズミルによる合成でも製造時間を半分以下にできることを確認した。
【0060】
実施例8
上記実施例1で作製したLiS 1.63gと平均粒径50μm程度のP(アルドリッチ社製)3.37gを500mlシュレンクビンに投入し、キシレン溶媒(脱水p−キシレン:和光純薬社製)を固形分濃度が30%になるように加え、撹拌子を用いて撹拌しながら140℃に昇温し、所定時間反応した。
反応時間毎のスラリーサンプルを注射器により5ml抜き出し、乾燥して得られた白黄色の固体電解質ガラス粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)し、LiS結晶ピークの有無を観測した。
その結果、LiS結晶ピークが消滅する時間は22時間であった。
【0061】
比較例5
上記比較例1により作製したLiSを使用した他は、実施例8と同様にしてLiS結晶ピークの有無を観測した。
その結果、LiS結晶ピークが消滅するまでに48時間を要した。
【0062】
実施例8と比較例5の比較から、本発明のLiSを使用することにより、固体電解質の製造時間を半分以下まで短縮できることが確認できた。
【0063】
実施例9
図2に示す固体電解質製造装置にて固体電解質を製造した。この装置3では、ビーズミル30での反応と撹拌付き反応槽40での反応がある。
固体電解質製造装置3は、原料を粉砕しつつ反応させて固体電解質を合成するビーズミル30と、原料を反応させて固体電解質を合成する撹拌付き反応槽40とを備える。反応槽40は容器42と撹拌翼44からなる。撹拌翼44はモータ(M)により駆動される。
ビーズミル30には、ビーズミル30内を20℃〜80℃に保つために、ビーズミル30の周りに温水を通すことのできるヒーター50が設けられている。反応槽40は、反応槽40内を60℃〜300℃に保つために、オイルバス60に入っている。オイルバス60は容器42内の原料と溶媒を所定温度に加熱する。反応槽40には気化した溶媒を冷却して液化する冷却管46が設けられる。
ビーズミル30と反応槽40は、第1の連結管70と第2の連結管72(連結手段)で連結されている。第1の連結管70は、ビーズミル30内の原料と溶媒を反応槽40に移動させ、第2の連結部72は、反応槽40内の原料及び溶媒をビーズミル30内に移動させる。原料等を連結管50,52を通して循環するために、ポンプ74が、第2の連結管52に設けられている。
ビーズミル30としてアシザワ・ファインテック社製スターミルミニツェア(0.15L)を用い、0.5mmφジルコニアボールを仕込んで使用した。
反応槽40としては、撹拌機付の1.5Lガラス製反応器を使用した。
【0064】
実施例1により製造したLiS 39.05g(70mol%)とアルドリッチ社製P 80.95g(30mol%)、広島和光純薬製社製 脱水トルエン 1080gを加えた混合物を、反応槽40及びビーズミル30に充填した。
ポンプ74により内容物を400mL/分の流量で循環させ、反応槽40を80℃になるまで昇温した。
ビーズミル30本体は、液温が70℃に保持できるよう外部循環により温水を通水し、周速8m/sの条件で運転した。6時間後にスラリーを抜き出し、150℃にて乾燥し白色粉末を得た。
得られた粉末のXRDを測定した結果、原料であるLiSのピークは消失し固体電解質ガラスとなっていることが判明した。
【0065】
比較例6
比較例1で作製したLiSを用いた他は、実施例9と同様にして固体電解質を製造した。この場合、6時間後のスラリーから得た粉末のXRDを測定した結果、原料であるLiSのピークは消滅せず、処理が不十分であった。さらに処理を継続して12時間反応後に得られた粉末のXRDを測定した結果、原料であるLiSのピークは消失し固体電解質ガラスとなっていることが判明した。
【0066】
実施例9と比較例6の比較から、本発明のLiSを使用することにより、固体電解質の製造時間を半分程度まで短縮できることが確認できた。
【0067】
製造例 [電池セルの作製]
正極集電体であるアルミニウム箔上に正極合材を積層させ、1MPa〜68MPaで加圧プレスし正極合材層を形成した。尚、正極合材は、実施例4又は6で製造した固体電解質と正極活物質であるコバルト酸リチウム系複合酸化物を、固体電解質30重量部に対して複合酸化物70重量部を添加混合して作製した。
同様に、負極集電体であるアルミニウム箔上に、固体電解質40重量部に対して負極活物質であるカーボン60重量部を混合した負極合材を用いて負極合材層を形成した。
先述の正極合材層上に、先述の固体電解質を用いて固体電解質層を同様に形成し、正負極集電体で挟持され、正極合材層、固体電解質層及び負極合材層の3層で構成された電池を作製した。この積層体に対して、さらに1MPa〜300MPaの圧力を印加して薄膜化した。
この積層体をアルミラミネートフィルムで挟み、真空状態下で加熱密閉化し電池セルを作製した。
ここで用いた正極活物質としては、コバルト酸リチウムの他、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、これらの複合酸化物等を実施し、電池として充放電可能なことを確認した。
同様に負極活物質としては、黒鉛をはじめとするカーボンブラック系、及びこれらの混合物、スズやケイ素等の金属粉末を実施し、電池として充放電可能なことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の硫化リチウムの製造方法により、微小粒径の硫化リチウムを効率よく製造できる。また、本発明の硫化リチウムは、硫化物系固体電解質の原料として好適である。
【符号の説明】
【0069】
1 硫化リチウム製造工程
11 反応槽
2 固体電解質製造工程
21 電解質反応槽
22 ビーズミル
23 結晶化加熱槽
24 乾燥機
3 固体電解質製造装置
30 ビーズミル
40 撹拌付き反応槽
42 容器
44 撹拌翼
46 冷却管
50 ヒーター
60 オイルバス
70 第1の連結管
72 第2の連結管
74 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒からなるスラリー中に、硫化水素ガスを吹き込み、前記水酸化リチウムと硫化水素を反応させ、
前記反応により生じる水を、前記スラリーから除去しながら反応を継続し、
系内の水分が実質的に無くなった後、硫化水素の吹き込みを止め、不活性ガスを吹き込むことを特徴とする硫化リチウムの製造方法。
【請求項2】
前記炭化水素系有機溶媒が、水と共沸組成を形成する1種又は2種以上の溶媒からなることを特徴とする請求項1記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項3】
前記炭化水素系有機溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びドデカンから選ばれる1種又は2種以上の溶媒からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の硫化リチウムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−163356(P2010−163356A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284174(P2009−284174)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)