説明

硫酸ナトリウムを用いてシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムを製造する方法

本発明は、硫酸ナトリウムを用いるシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの製造方法を提供し、その際、珪砂、硫酸ナトリウム及び炭素を混合し、炉中へ装入して反応させ、得られた固体ケイ酸ナトリウム及び二酸化硫黄を、シリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの製造のために次の工程に従って使用する:1) シリカの製造について:前記固体ケイ酸ナトリウムを水に溶かし、濾過して、水ガラス溶液を製造し、次いで硫酸を前記水ガラス溶液と反応させて、沈降シリカと硫酸ナトリウムとを製造し、前記沈降シリカを洗浄し、濾過し、液化し、乾燥させて、シリカを製造する;2) 亜硫酸ナトリウムの製造について:ソーダを亜硫酸水素ナトリウム溶液中に添加して、亜硫酸ナトリウム溶液を製造し、前記亜硫酸ナトリウム溶液の一部を濃縮し、蒸発させて乾燥した亜硫酸ナトリウムを得て、前記亜硫酸ナトリウム溶液の他方の分を、ケイ酸ナトリウムの製造の間に製造された二酸化硫黄と反応させて亜硫酸水素ナトリウム溶液を製造し、これは工程(2)中でリサイクル及び再使用することができる;3) 亜硫酸水素ナトリウムの製造について:ソーダを亜硫酸水素ナトリウム溶液中に添加して、引き続きケイ酸ナトリウムの製造の間に製造された二酸化硫黄と反応させて、過飽和の亜硫酸水素ナトリウム溶液を製造し、これを結晶化させ、乾燥させて、乾燥した固体亜硫酸水素ナトリウムを得る。本発明による方法は多様な生成物を低い製造コストで提供し、環境問題を引き起こすことなく、かつ実際上に著しい有用性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸ナトリウムを用いてシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムを製造する方法に関する。
【0002】
沈降シリカ(軽質二酸化ケイ素又はホワイトカーボンともいわれる)は、ゴム用の充填剤として利用される;同様にプラスチック、滑剤、絶縁材料、紙、塗料及びテキスタイルの充填材料として及び白色顔料としても使用される。現在では、シリカを製造する最も一般的な方法は、この沈降法である。この方法において使用される水ガラス(ケイ酸ナトリウム)は、珪砂とソーダ(無水炭酸ナトリウム)との反応により製造される。しかしながら、このプロセスは大量のソーダを必要とし、製造コストが高くなる。
【0003】
本発明の課題は、製造コストを低減しかつ環境問題も減らす、沈降シリカを製造するための新規の方法を提供することである。
【0004】
本発明は、次の反応式:
【化1】

を有する。
【0005】
本発明の実施態様は、従って、硫酸ナトリウムを用いてシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムを製造する方法である。この特徴は、ケイ酸ナトリウムの製造のためにソーダの代わりに硫酸ナトリウムを使用することにある。
【0006】
前記方法において、硫酸ナトリウムを珪砂及び炭素と一緒に混合し、次いで反応のために炉中に装入する。有利に、珪砂、硫酸ナトリウム及び炭素は、118.3〜147.9:100:4〜12の質量比であり、反応温度は1200〜1500℃である。前記プロセスに続く工程で、前記反応生成物、つまり固体ケイ酸ナトリウム及び二酸化硫黄は、シリカ、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムの製造のために、次の工程により使用される:
(1) シリカの製造について:
硫酸ナトリウム、珪砂及び炭素の反応により製造された前記固体ケイ酸ナトリウム(水ガラス)を、100:180〜488の質量比で水中に溶かして、ケイ酸ナトリウム溶液を形成する。前記ケイ酸ナトリウム溶液中の固体含有量を沈殿させ、濾過により除去する。濾過後に、濾液を98%の硫酸と13:19:1の体積比で70〜100℃で1から4時間の期間にわたり反応させる。有利な実施態様の場合には、前記水ガラス及び硫酸を、反応容器中へ同時にかつ連続的に全体の反応(沈降)時間にわたり計量供給する。沈降が完了した後に、この懸濁液を濾過し、フィルターケーキを洗浄し、液化し、乾燥させて、所望の沈降シリカが得られる。
【0007】
(2) 亜硫酸ナトリウムの製造について:
ソーダを、亜硫酸水素ナトリウム溶液中に1:1のモル比で溶かして、亜硫酸ナトリウム溶液を製造する。前記亜硫酸ナトリウム溶液の一部を濃縮し、蒸発させて、乾燥した亜硫酸ナトリウムを得る。前記亜硫酸ナトリウム溶液の他方の分を、ケイ酸ナトリウムの製造の間に得られた二酸化硫黄と1:1のモル比で20〜50℃で反応させるために使用して、リサイクルすることができる亜硫酸水素ナトリウム溶液を製造し、これを工程(2)で再使用してソーダと共に亜硫酸ナトリウムを製造する。本発明の方法のこの工程は、硫酸ナトリウム、珪砂及び炭素の反応における副生成物として製造される二酸化硫黄を急冷し、かつ二酸化硫黄がこのプロセスから出ないことを保証する。それにより環境問題は回避される。さらに、化学工業及び製紙工業において有用な原材料である亜硫酸ナトリウムが得られる。
【0008】
(3) 亜硫酸水素ナトリウムの製造について:
ソーダを亜硫酸水素ナトリウム溶液中へ、1:1のモル比で溶解させ、次いで前記溶液を、ケイ酸ナトリウムの製造の間に得られた二酸化硫黄と20〜50℃で反応させて、亜硫酸水素ナトリウムの過飽和された溶液を製造し、これを結晶化し、蒸発させて、乾燥した固体亜硫酸水素ナトリウムを得る。
【0009】
現在の技術と比較して、本発明の方法は次の利点を有する:
(1) 亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムは副生成物として得られる、これらは有用な材料であるか又はこのプロセスにおいてリサイクル及び再使用することができる。
【0010】
(2) 亜硫酸ナトリウムは、例えば、SO2の急冷のためにリサイクル及び再使用することができ、かつこれは製造コストを低下させかつ環境汚染を抑制する。
【0011】
(3) 硫酸及びケイ酸ナトリウムの反応により得られる硫酸ナトリウムは、水ガラスの製造のためにリサイクル及び再使用することができ、これは廃水の問題を回避し、かつさらに製造コストを低下させる。
【0012】
(4) 硫酸ナトリウム、珪砂及び炭素の反応の間に副生成物として得られるSO2は急冷され、こうして環境汚染は回避される。
【0013】
本発明の方法は、バッチプロセスとして又は連続的プロセスとして使用することができる。水ガラスの連続的製造又は全体の連続的方法が有利である。硫酸ナトリウムの使用による水ガラスを連続的に製造する方法において、断熱の馬蹄型火炎炉(thermal insulation horseshoe-flame furnace)を使用するのが特に有利である。
【0014】
次の実施例は、本発明を実施及び説明するためのものであり、本発明の範囲を限定又は制限するものではない。
【0015】
実施例
原材料の珪砂、硫酸ナトリウム及び炭素(既に粉砕された)をSiO2:NaSO4:C=100:81.4:6.5の質量比で混合した。前記混合物を断熱の馬蹄型火炎炉中へ連続的に装入して、1420〜1450℃の温度で反応させた。前記炉の出口で、生じた固体のケイ酸ナトリウムが連続的に取り出され、急冷し、水に溶かして、3.5M、29Be’水ガラス溶液を形成させた。
【0016】
5リットル反応器に、水2.5リットルと前記水ガラス溶液0.075リットルとを装入し、86℃に加熱した。引き続き、前記水ガラス溶液1.163リットルと硫酸0.072リットルとを、100分の期間にわたり同時に計量供給した。反応が完了した後に、さらに硫酸0.011リットルを添加して、pHを4.5に調節した。
【0017】
シリカ(BET=185m2/g)348.1gが、濾過、洗浄及び乾燥の後に得られた。
【0018】
シリカの濾過において得られた濾液を濃縮し、蒸発させると、乾燥した硫酸ナトリウムが得られ、これは水ガラスを製造する最初の工程でリサイクル及び再使用することができた。硫酸ナトリウム235.14gが得られた。
【0019】
ソーダを、亜硫酸水素ナトリウム溶液中に、ソーダ対亜硫酸水素ナトリウムの1:1のモル比で溶かして、亜硫酸ナトリウム溶液を製造した。
【0020】
水ガラス製造工程の副生成物であるガス状のSO2を急冷するために、ソーダと亜硫酸水素ナトリウム溶液との反応により製造された亜硫酸ナトリウム溶液の一部を使用した。この反応は20〜50℃で実施され、亜硫酸水素ナトリウム溶液が得られ、この一部をソーダと共に亜硫酸ナトリウム溶液の製造のためにリサイクル及び再使用した。
【0021】
SO2の急冷のために使用されなかった亜硫酸ナトリウム溶液の残りの量を濃縮し、蒸発させて、商業的製品として販売することができる固体亜硫酸ナトリウムを得た。
【0022】
二酸化硫黄を20〜50℃で、1:1のモル比でソーダと亜硫酸水素ナトリウム溶液との反応により得られた亜硫酸ナトリウム溶液の一部と反応させて、亜硫酸水素ナトリウムの過飽和された溶液を製造することもできた。前記の亜硫酸水素ナトリウム溶液を、次いで結晶化し、蒸発させて、乾燥した及び固体の亜硫酸水素ナトリウムを得ることができ、これは化学工業における他の適用のために使用することができた。
【0023】
上記に示したように、本発明の方法は、簡単でかつ製造コストを減らすことを可能にする。SO2、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸ナトリウム、異なる反応工程の副生成物は、この方法においてリサイクル及び再使用することができる。従って、廃水の問題は存在しない。一方で、副生成物の亜硫酸ナトリウムは、化学工業における他の適用のために有用な材料であり、従って商業化することができる。従って、本発明の方法は、実際上に著しい有用性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪砂、硫酸ナトリウム及び炭素を混合し、炉中へ装入して反応させ、得られた固体ケイ酸ナトリウム及び二酸化硫黄を、シリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの製造のために次の工程に従って使用する:
(1) シリカの製造について:前記固体ケイ酸ナトリウムを水中に100:180〜488の質量比で溶解させ、濾過して、ケイ酸ナトリウム溶液を製造し、生じたケイ酸ナトリウム溶液を98%の硫酸と、13〜19:1の体積比で70〜100℃で1〜4時間反応させて、沈降シリカと硫酸ナトリウム溶液とを製造し、沈降シリカを濾過し、洗浄し、液化し、乾燥させてシリカを得る、
(2) 亜硫酸ナトリウムの製造について:ソーダを亜硫酸水素ナトリウム溶液中へ、ソーダ対亜硫酸水素ナトリウムの1:1のモル比で溶解させて、亜硫酸ナトリウム溶液を形成させ、前記亜硫酸ナトリウム溶液の一部を濃縮し、乾燥させて、乾燥した亜硫酸ナトリウムを得て、前記溶液の他方の分を二酸化硫黄と1:1のモル比で、20〜50℃で反応させて、亜硫酸ナトリウムの製造のために使用することができる亜硫酸水素ナトリウム溶液を得る、
(3) 亜硫酸水素ナトリウムの製造について:ソーダを亜硫酸水素ナトリウム溶液中へ、ソーダ対亜硫酸水素ナトリウムの1:1のモル比で溶解させ、引き続きケイ酸ナトリウムの製造の間に製造された二酸化硫黄と20〜50℃で反応させて、過飽和の亜硫酸水素ナトリウム溶液を製造し、これを結晶化し乾燥させて、乾燥した亜硫酸水素ナトリウムを得る、
ことを特徴とする、硫酸ナトリウムを用いるシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの製造方法。
【請求項2】
前記珪砂、硫酸ナトリウム及び炭素は118.3〜147.9:100:4〜12の質量比であり、その反応温度は1200〜1500℃であることを特徴とする、請求項1記載のシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの製造方法。
【請求項3】
工程(1)の終わりに得られた濾液を洗浄し、濃縮し、乾燥させて、固体硫酸ナトリウムを得て、これを方法に再使用することを特徴とする、請求項1又は2記載のシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの製造方法。
【請求項4】
前記炉が断熱の馬蹄型火炎炉であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のシリカ、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの製造方法。

【公表番号】特表2008−542186(P2008−542186A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515032(P2008−515032)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001227
【国際公開番号】WO2006/131065
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507404558)デグサ ウェリンク シリカ (ナンピン) カンパニー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Degussa Wellink Silica (Nanping) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Wellink Mansion, No. 136 Xinjian Road, Nanping, Fujian 353000, China
【Fターム(参考)】