説明

硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化することによってガソリンを脱硫する新規な方法

【課題】ガソリンフラクションに含まれる硫黄の量を低減させる方法を提供する。
【解決手段】オレフィン、硫黄含有化合物および可能性のあるC3およびC4フラクションに属する分子を含有するガソリンフラクションを脱硫する方法であって、該ガソリンフラクションを、酸容量が4.7当量/kg超であり、比表面積が55m/g未満である酸性樹脂と接触させる第一工程(A)と、第一工程からの混合物を分留する第二工程(B)とを少なくとも包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンフラクションに含まれる硫黄の量を低減させる方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、オレフィンを含むガソリンフラクションを脱硫するための配置に関する。本発明の方法は、転化ガソリン(特には接触分解、流動接触分解(fluidized catalytic cracking:FCC)、コークフラクション法、ビスブレーキング法または熱分解法からのガソリン)の変換に特に適用されるものである。
【0003】
本発明の方法により、2、3または4個の炭素原子を含有する炭化水素を含む可能性があるガソリンフラクションを品質向上させ、これにより、ガソリンの収率およびオクタン価を実質的に低減させることなく、前記ガソリンフラクションの全硫黄含有量を、現在または将来の規格に適合するように非常に低いレベルに低減させることが可能である。
【0004】
新しい環境規制を満足するガソリンの製造には、それらの硫黄含有量を、一般的には50ppm以下、より好ましくは10ppm未満の値に実質的に低減させることが必要である。
【0005】
転化ガソリン、より詳細には、ガソリンプールの30〜50%を示し得る接触分解からのもののオレフィンおよび硫黄含有量が高いことも知られている。
【0006】
ガソリン中に存在する硫黄の90%近くが、接触分解法からのガソリン(以降、FCC(流動接触分解)ガソリンと称する)が原因であるとされ得る。このため、FCCガソリンは、本発明の脱硫法のための好ましい原料油を構成する。
【0007】
より一般的には、本発明の方法は、所定の比率のオレフィンを含有し、C3およびC4フラクションに属するいくつかのより軽質の化合物をさらに含有してもよいあらゆるガソリンフラクションに適用可能である。本方法のためのガソリン原料油はまた、メタノールまたはエタノールタイプまたは可能性のあるより重質のアルコールのアルコール類と混合されてもよい。
【背景技術】
【0008】
精油所において通常用いられる第一の脱硫経路は、ガソリンの水素化脱硫からなる。しかしながら、このような方法を用いて現在要求される標準規格を達成するために、厳しい温度および圧力条件の下に操作すること、特に、高い水素圧で操作することが必要であるようである。
【0009】
このような操作条件により、必然的に、概して少なくとも一部のオレフィンが水素化し、結果として、当該方法によって得られる脱硫されたガソリンの実質的なオクタン価の低下を伴う。
【0010】
さらなる経路は、酸触媒処理に基づいてガソリンを脱硫する方法を用いることからなる。当該タイプの処理の目的は、原料油中に存在するオレフィンに不飽和硫黄含有化合物を付加する(またはアルキル化する)ことおよびこれよりは少ない程度であるが原料中に含まれるオレフィンのフラクションをオリゴマー化することによって不飽和のチオフェン性の硫黄含有化合物の沸点を高くすることである。
【0011】
例えば、特許文献1および2にこのような方法が記載されている。チオフェン性不飽和硫黄含有化合物は、酸触媒の存在下にオレフィンと反応し、この反応により、前記化合物がより高い沸点の生成物に転化する。チオールもオレフィンと反応して、スルフィドを形成し得、このスルフィドもより高い沸点の生成物に転化される。その後、より高い沸点の硫黄含有化合物は、簡単な蒸留によって分離されてよい。低硫黄ガソリンは、蒸留塔の頂部から回収される。
【0012】
特許文献3に記載された類似の方法では、酸触媒は、蒸留塔内に直接的に置かれ得る。この場合、より高い沸点の硫黄含有化合物は塔底部から抜き出される一方で、脱硫されたガソリンは、塔頂部から抜き出される。
【0013】
上記諸特許文献に記載された酸触媒は、一般的に、イオン交換樹脂、担持された硫酸またはリン酸等のブレンステッドの酸性度を有する固体触媒である。
【0014】
特許文献4には、硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化することによる脱硫方法が記載されており、かつ、種々の酸触媒の活性度が比較されている。これらの触媒の中で、1種の樹脂であるアンバーリスト(登録商標)35(Rohm & Haasから販売)が評価され、担持型リン酸または脱アルミニウム型ゼオライトタイプの触媒より実質的に低い活性度を示した。したがって、当該文献は、ガソリンの脱硫についての適用において、イオン交換樹脂タイプの触媒を当業者が使用するということをもたらさない。
【特許文献1】米国特許第6059962号明細書
【特許文献2】仏国特許第2810671号明細書
【特許文献3】米国特許第5863419号明細書
【特許文献4】米国特許第6048451号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ガソリンフラクションに含まれる硫黄の量を低減させる方法、特に、転化ガソリン(特には接触分解、流動接触分解(fluidized catalytic cracking:FCC)、コークフラクション法、ビスブレーキング法または熱分解法からのガソリン)の変換に適用される方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、オレフィン、硫黄含有化合物および可能性のあるC3およびC4フラクションからの分子を含有するガソリンフラクションを脱硫する方法であって、前記ガソリンフラクションを酸性の樹脂に接触させて、前記ガソリンフラクションのオレフィンと硫黄含有化合物との間の付加反応によってより高い沸点の硫黄含有化合物を生じさせる第一工程(A)と、第一工程からの混合物を分留して、原料油に対して硫黄含有量が低減させられた軽質のフラクションと、硫黄含有化合物が濃縮されたより高い沸点のフラクションを生じさせる工程(B)とを少なくとも包含し、工程(A)において用いられた樹脂の酸容量は4.7当量/kg超であり、その比表面積は55m/g未満であり、その細孔容積は0.16〜0.25ml/kgである方法である。
【0017】
上記本発明の方法において、用いられた樹脂の酸容量は、好ましくは5.0当量/kg超であり、その比表面積は、好ましくは50m/g以下であることが好ましい。
【0018】
上記本発明の方法において、チオフェンの転化度は、99%未満、好ましくは98%未満であることが好ましい。
【0019】
上記本発明の方法において、操作温度が50〜150℃、好ましくは60〜140℃であり、操作圧力が0.5MPa超、好ましくは1MPa超であることが好ましい。
【0020】
上記本発明の方法において、HSVが、0.2〜5h−1であることが好ましい。
【0021】
上記本発明の方法において、処理されるべき原料油が50ppm超の窒素、好ましくは20ppm超の窒素を含有する場合に、前記原料油は、使用済み樹脂を用いる、窒素含有化合物を抽出するための装置内で前処理され、前記樹脂は、反応工程において適正に用いられたものと同一であることが好ましい。
【0022】
上記本発明の方法において、触媒は、並列で機能する複数の固定床間に分配され、触媒粒子の径は、0.3〜1mmであることが好ましい。
【0023】
上記本発明の方法において、触媒は、直列で機能する複数の固定床間に分配され、熱交換器が各反応器の間に入れられることが好ましい。
【0024】
上記本発明の方法において、触媒は、沸騰床様式で用いられることが好ましい。
【0025】
本発明により、イオン交換樹脂タイプの触媒に基づいて硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化することによってオレフィン性ガソリンを脱硫する方法であって、該イオン交換樹脂タイプの触媒の、酸容量によって測定される酸性度が4.7当量/kg超、好ましくは5.0当量/kg超であり、その比表面積が55m/g未満、好ましくは50m/g未満であり、その細孔容積が0.50ml/g未満、好ましくは0.45ml/kg未満、より好ましくは0.38ml/g未満である、方法が記載される。
【0026】
本明細書の以下の部分では、このような触媒を簡単に「樹脂」と称することにする。
【0027】
本方法は、脱硫されるべき原料油を上記特徴を有する樹脂に接触させる工程からなる。原料油は、場合によっては、オレフィンに富むC3またはC4フラクション等の別の炭化水素原料油またはメタノール、エタノールまたはより重質のアルコール等のアルコールとの混合物として処理されてもよい。
【0028】
操作条件は、原料油中に含まれるオレフィン性の化合物への硫黄含有化合物の付加を促進するように調整される。2つの主要な所望の反応は、チオフェンおよび/またはメチルチオフェン、および可能性のあるより重質なチオフェン化合物とオレフィンの付加と、チオールとオレフィンの付加である。
【0029】
並行して、オレフィンのオリゴマー化反応により、一般に8個を超える炭素原子を含むオレフィンが概して形成される。
【0030】
次いで、反応器の出口において回収される生成物は、少なくとも一つの軽質の硫黄不含有フラクションと重質のフラクションとを回収するために蒸留される。少なくとも一つの軽質の硫黄不含有フラクションは、脱硫ガソリンを構成し、重質のフラクションには、より高い沸点の硫黄含有化合物が濃縮されている。
【0031】
硫黄含有化合物をオレフィンと反応させる工程の間に、前記オレフィンをオリゴマー化させることによって重質のオリゴマーおよび重合体が生じる。前記重質のオリゴマーおよび重合体は、触媒を徐々に不活化する。樹脂タイプの触媒が直面する主要な不活化メカニズムは次の通りである:
・触媒上への重合体およびオリゴマーの沈着;
・温度の影響下での触媒の脱スルホン化;
・原料油中に存在する窒素含有化合物を含む塩基性化合物による酸点の中和。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、オレフィン、硫黄含有化合物および可能性のあるC3およびC4フラクションに属する分子を含有するガソリンフラクションを脱硫する方法であって、該ガソリンフラクションを、酸容量が4.7当量/kg超であり、比表面積が55m/g未満である酸性樹脂と接触させる第一工程(A)と、第一工程からの混合物を分留する第二工程(B)とを少なくとも包含するので、特定の酸樹脂を用いることによりチオフェン化合物とオレフィンとの付加反応の活性を高くすることができ、硫黄含有量を有効に低減させることにつなげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、スルホン酸基がグラフトされた、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を含む酸性のイオン交換樹脂を触媒として用いて、硫黄含有化合物を、処理されるべき原料油中に含まれるオレフィンまたはオレフィンの一部に付加することによる新規な脱硫方法を提示する。
【0034】
本発明の方法において用いられる酸性樹脂は、このタイプの適用のための従来技術において用いられる酸性樹脂に対して改善された活性度および安定性を有するように選択される。
【0035】
本方法は、少なくとも以下の2つの工程を包含する:
・適切な反応器において、処理されるべき原料油を樹脂と接触させ、原料油中に含まれるオレフィンと硫黄含有化合物との付加反応により高い沸点の硫黄含有化合物を生じさせる、第一の工程(A);
・原料油に対して硫黄含有量が低減させられた軽質のフラクションと、硫黄含有化合物が濃縮された重質のフラクションを生じさせ得るように、第一工程からの混合物を分留する工程(B)。
【0036】
軽質のフラクションの硫黄含有量は、一般に、十分に低いため、これは、直接的にガソリンプールに取り入れられ得る。
【0037】
重質のフラクションは、例えば水素化脱硫による脱硫後にガソリンプールに取り入れられてよく、あるいは、中間留分プールと混合されて、灯油または軽油フラクションを生じさせてもよい。
【0038】
本発明との関連で用いられる樹脂はまた、4.7当量/kg超、好ましくは5.0当量/kg超の酸容量(acid capacity)を有する。当量/kgは、樹脂のkg当たりのプロトンのモル数に相当する。
【0039】
以下の特徴の少なくとも一つを樹脂が好適に示す場合に前記樹脂の活性度および安定性が改善されたことも観察された:
a)樹脂中に存在するスルホン基からの硫黄の量が、好ましくは15重量%超、より好ましくは18〜22重量である;
b)この適用のための樹脂の比表面積が、好ましくは55m/g未満、より好ましくは25〜50m/gである;
c)樹脂の細孔容積が、好ましくは0.10〜0.50ml/g、より好ましくは0.15〜0.40ml/g、より一層好ましくは0.16〜0.25ml/gである;
d)平均細孔径が、好ましくは10〜40nm、より好ましくは20〜30nm、より一層好ましくは20〜28nmである;
e)樹脂が、好ましくは0.3〜1mm、より好ましくは0.6〜0.85mmの粒度分布を有するビーズ状に成形される。
【0040】
本発明に関わる樹脂を用いることにより、次のことが観察される。第一に、硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化するための活性が相当改良され得、それ故に、より低い温度で操作され得る。これにより、樹脂の耐用期間が改良される。第二に、重合体の沈着による不活化速度が低減し得る。
【0041】
本発明によると、樹脂は、処理される炭化水素フラクションが液状であるような条件下に反応器内で用いられる。
【0042】
固定床式反応器、多管式反応器(multi-tube reactor)、チャンバー式反応器、沸騰床式反応器、移動床式反応器、流動床式反応器等の多くの実現性のある解決方法が樹脂に対して想定され得る。しかしながら、反応器内の温度プロフィールを制御し得る実施形態が好適に用いられる。硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化するための反応およびオレフィンのオリゴマー化反応は発熱性である。樹脂は高温で分解し得る固体であるので、反応器の温度プロフィールを制御することが好ましい。
【0043】
固定床では、これは、流出液の一部を反応器に再循環させて、通過当たりのオレフィン転化の速度を制限し、これにより、反応器内の温度上昇を制御することにより行われ得る。
【0044】
沸騰床では、反応器内の温度上昇は、一般に、反応媒体に直接的に浸される熱交換面を用い、反応器内に熱点が発生することを避けるので、より制御し易い。
【0045】
触媒は、単一の反応器内に置かれてもよいが、好ましくは、並列または直列で操作される複数の反応器内に置かれる。本発明においてこの装置が有利に用いられるのは、これが装置の連続的な操作を維持しつつ、反応器をいつでも停止させて使用済み触媒を置換することができるからである。
【0046】
直列で反応器が操作される場合、熱交換器を各反応器の間に入れて、直列の各反応器に対する入口温度を別々に調整するようにしてもよい。
【0047】
本発明の方法は、硫黄およびオレフィンを含有するガソリンの処理のために特に適している。これらの化合物は、転化ガソリン、特には、接触分解、流動接触分解(FCC)、コークフラクション法、ビスブレーキング法または熱分解法からのガソリン中に同時に存在する。これらのガソリンは、一般に、少なくとも30ppmの硫黄および10%のオレフィンを含有する。
【0048】
原料油の終留点は、一般的には230℃未満であるが、160℃未満、好ましくは130℃未満の沸点を有するガソリンを処理することが好ましい。原料油はまた、3または4個の炭素原子を含有する炭化水素フラクションを含有してもよい。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、処理される原料油は、最初に、5個以下の炭素原子を含有するオレフィン並びにチオフェン等のより軽質の硫黄含有化合物を高濃度に有する軽質フラクションが除かれる。
【0050】
FCCガソリンに関しては、これらの軽質の硫黄含有化合物は、主として、チオールであり、これは、抽出酸化(extractive oxidation)、チオエステル化等の特定の処理工程の間に除去され得る。
【0051】
本発明の特定の実施形態によると、原料油にメタノール、エタノール等のアルコール類の形態の酸素含有化合物を加えることが可能である。
【0052】
これらのアルコール化合物は、原料油中に存在するオレフィンと反応してエーテルを形成し得る。エーテルは、良好なオクタン価を有し、ガソリンプールに取り入れられてよい。
【0053】
原料油は、場合によっては、窒素含有化合物の含有量を低減させることを目的とする前処理を経てもよい。前記窒素含有化合物の低減を行うために当業者に知られるあらゆる解決方法が想定されてよい。
【0054】
この工程は、例えば、酸性の水溶液により原料油を洗浄するか、または、ゼオライト、酸性樹脂または塩基性の窒素含有化合物を保有し得る任意の他の固体からなる酸性の保護床(guard bed)上でガソリンを処理するかの工程からなり得る。
【0055】
窒素含有化合物を捕捉するための好ましい解決方法は、保護床において本発明の使用済み樹脂を部分的に用いる工程からなる。この場合、装置は、少なくとも2つの反応器を含まなければならない。第一の反応器は、使用済み樹脂を含み、少なくとも一部の窒素含有化合物を捕捉するために操作される。第二の反応器は活性な樹脂を含み、硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化するために用いられる。
【0056】
第二の反応器に用いられる樹脂の活性が0であるかまたはもはや十分ではない場合、それは、保護床において用いられてよい。
【0057】
窒素含有化合物を抽出する工程は、一般に、原料油が50ppm超の窒素を含有する場合に必要であるが、20ppm超もの窒素を含有する場合にも必要な場合もある。
【0058】
さらに、原料油は、ジオレフィンを選択的に水素化することを目的とする前処理を経てもよい。実際に、分解ガソリンは、一般に、1〜3重量%の量でジオレフィンを含有する。前記ジオレフィンは、重合化に対して反応性が高く、重合体の沈着によって樹脂の早すぎる不活性化を引き起こすかもしれない。
【0059】
本方法に適用可能な前処理法は、仏国特許第2847260号明細書および仏国特許第2850113号明細書に記載されている。これらの特許に記載された方法を用いてガソリンが処理される場合、ジオレフィンに加えて、それは、主としてチオールの形態で存在するチオフェンより軽質の硫黄含有化合物の、チオフェンより重質の(すなわちより高い沸点を有する)硫黄含有化合物への転換を経る。
【0060】
硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化する工程のための操作条件は、要求される規格を満足するガソリンを生じさせるように最適化されなければならない。
【0061】
操作圧力は、一般的には0.5MPaより高く、好ましくは1MPa超である(1MPa=10パスカル)。圧力は、反応器内で反応混合物を液相に維持するように調整される。
【0062】
毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、反応器当たり0.2〜5h−1、好ましくは0.5〜3h−1である。
【0063】
温度は、硫黄含有化合物に対して所望の転換度を達成するように調整される。好ましくは、温度は、予想される転化度を超えないように、特には、原料油中に存在するチオフェンの形態の硫黄の最大で99%を転化するように調整される。
【0064】
チオフェンの転化度は、好ましくは99%未満、より好ましくは98%未満である。より高い転化は、一般に、より高い温度で樹脂を操作することを必要とし、これにより、重合体の沈着による不活性化が加速する。操作温度は、一般には50〜150℃、好ましくは60〜140℃である。
【0065】
(実施例)
この実施例では、3種の市販の樹脂が比較された。第一のものは、従来技術の樹脂であり、第二のものは、本発明によるものであり、第三のものも本発明によるが、第二のものより酸点の濃度は高く、比表面積は低かった。
【0066】
用いられた樹脂の特徴が表1に示される。これらの樹脂は、スルホン酸基がグラフトされた、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体を含む。
【0067】
【表1】

【0068】
これらの触媒を評価するために用いられた原料油(A)は、FCCガソリンであり、その主要な特徴は、表2に与えられる。
【0069】
【表2】

【0070】
(樹脂の活性の調査)
樹脂1、2および3の活性は、通過床式反応器(traversed bed reactor)を用いて行われた試験の間に評価された。
【0071】
60mlの触媒が反応器内に装填された。70℃の温度、50ml/hの流量および2MPaの圧力で原料油(A)が注入された。
【0072】
48時間後、試験液のサンプルが回収され、硫黄専用の検出器を備えたガス・クロマトグラフィによって分析され、チオフェン化合物の転化度を測定した。図1は、3種の触媒に対するチオフェンの転化度を示す。
【0073】
最も活性な樹脂は、本発明による樹脂(3)であった。これらの試験は、樹脂(2)および(3)が90%超の活性を有しており、樹脂(1)の活性より有意に高かったことを示す。
【0074】
(樹脂の安定性の調査)
樹脂(1)および(3)の安定性が、約400時間の2つの試験の間で比較された。各試験のために、60mlの樹脂が反応器内に装填された。圧力および流量は、それぞれ2MPaおよび50ml/hに等しくなるように一定に維持された。
【0075】
サンプルは、定期的に回収され、硫黄含有化合物専用の検出器を用いるガス・クロマトグラフィによって分析された。次いで、原料油中のチオフェンの量に対するチオフェンの転化度が計算され、これにより、触媒の活性の変動をモニタリングすることができた。温度は、試験の間、チオフェン転化度を90〜99%に維持するように調整された。図2は、時間の関数としての2種の樹脂の相対的な活性の変動を示す。
【0076】
樹脂(3)は、樹脂(1)よりゆるやかな不活性化の傾きを有していた。300時間後に観察された樹脂(3)の活性の損失は、150時間後の樹脂(1)の活性の損失と等価であった。したがって、樹脂(3)を用いることがより高度に有利であり、樹脂(3)は、樹脂(1)の約2倍安定である。
【0077】
したがって、本発明の樹脂(3)は、硫黄含有化合物をより高い沸点の化合物に転化するためにより良好に適しており、また、より良好な活性およびより良好な安定性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】3種の触媒に対するチオフェンの転化度を示す。
【図2】時間の関数としての2種の樹脂の相対的な活性の変動を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン、硫黄含有化合物および可能性のあるC3およびC4フラクションからの分子を含有するガソリンフラクションを脱硫する方法であって、
前記ガソリンフラクションを酸性の樹脂に接触させて、前記ガソリンフラクションのオレフィンと硫黄含有化合物との間の付加反応によってより高い沸点の硫黄含有化合物を生じさせる第一工程(A)と、
第一工程からの混合物を分留して、原料油に対して硫黄含有量が低減させられた軽質のフラクションと、硫黄含有化合物が濃縮されたより高い沸点のフラクションを生じさせる工程(B)と
を少なくとも包含し、工程(A)において用いられた樹脂の酸容量は4.7当量/kg超であり、その比表面積は55m/g未満であり、その細孔容積は0.16〜0.25ml/kgである方法。
【請求項2】
用いられた樹脂の酸容量は、好ましくは5.0当量/kg超であり、その比表面積は、好ましくは50m/g以下である、請求項1に記載のオレフィン、硫黄含有化合物および可能性のあるC3およびC4フラクションからの分子を含有するガソリンフラクションを脱硫する方法。
【請求項3】
チオフェンの転化度は、99%未満、好ましくは98%未満である、請求項1または2に記載のオレフィン、硫黄含有化合物および可能性のあるC3およびC4フラクションからの分子を含有するガソリンフラクションを脱硫する方法。
【請求項4】
操作温度が50〜150℃、好ましくは60〜140℃であり、操作圧力が0.5MPa超、好ましくは1MPa超である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のガソリンフラクションを脱硫する方法。
【請求項5】
HSVが、0.2〜5h−1である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
処理されるべき原料油が50ppm超の窒素、好ましくは20ppm超の窒素を含有する場合に、前記原料油は、使用済み樹脂を用いる、窒素含有化合物を抽出するための装置内で前処理され、前記樹脂は、反応工程において適正に用いられたものと同一である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のガソリンフラクションを脱硫する方法。
【請求項7】
触媒は、並列で機能する複数の固定床間に分配され、触媒粒子の径は、0.3〜1mmである、請求項1〜6のいずれか1つに記載のガソリンフラクションを脱硫する方法。
【請求項8】
触媒は、直列で機能する複数の固定床間に分配され、熱交換器が各反応器の間に入れられる、請求項1〜6のいずれか1つに記載のガソリンフラクションを脱硫する方法。
【請求項9】
触媒は、沸騰床様式で用いられる、請求項1〜6のいずれか1つに記載のガソリンフラクションを脱硫する方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−299263(P2006−299263A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115101(P2006−115101)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL