説明

硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法およびその処理設備

【課題】処理工程における硫化水素の発生を抑止して環境汚染を防止し、かつ、廃水中のCOD濃度を排水基準以下の適正範囲内に安定させることができる硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法およびその処理設備を提供する。
【解決手段】本発明の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法は、酸化処理の前に、前記廃水を固形分と第1処理水とに分離する無薬注方式の固液分離工程と、該固液分離工程により得られた第1処理水に前記酸化処理を行って第2処理水とする酸化処理工程とを具えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法およびその処理設備に関し、特に、降雨時に、製鉄工程で発生するスラグに接触した浸出水の処理方法およびその処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄工程における高炉から排出される高炉スラグは、CaOおよびSiO2を主成分としているが、高炉内は強還元雰囲気であることから、鉄鉱石やコークスに含有されていた硫黄の大半がスラグに移行し、高炉スラグには1〜2質量%程度の硫黄が含有されることになる。
【0003】
高炉から排出された溶融状態の高炉スラグは、通常、スラグ冷却場(スラグヤード)で所定の温度となるまで冷却・固化され、その後、ブルドーザー、パワーショベルなどによって掘り起こされ、一旦仮置きされた後に、人工砕石、地盤改良材などの土木建築材料として利用されている。
【0004】
この冷却・固化中あるいは仮置き中に高炉スラグに雨水が接触すると、雨水に高炉スラグ中の成分が浸出する。また、高炉スラグをスラグヤードにおいて冷却水によって冷却する場合、この冷却水にも高炉スラグ中の成分が浸出する。
【0005】
同様に、転炉スラグや溶銑脱硫スラグなどの製鋼スラグにおいても、雨水や冷却水と接触すると、製鋼スラグ中の成分が浸出する。本発明において、これら高炉スラグや製鋼スラグなどの製鉄スラグ中の成分が浸出した水を、「浸出水」と称する。
【0006】
前記浸出水中の硫黄成分は、硫化水素などの硫化物形態における、Sが-2価である硫化物イオン(S2-)、Sが+2価であるチオ硫酸イオン(S2O32-)、Sが+4価である亜硫酸イオン(SO32-)などの形態で存在する。この浸出水中における硫黄の安定形態は、Sが+6価である硫酸イオン(SO42-)であり、前記硫化物イオン、チオ硫酸イオン、亜硫酸イオンなどの還元性の硫黄分は、排水基準で規定されている化学的酸素要求量で表されるCOD(Chemical Oxygen Demand)として計測される。
【0007】
従って、排水基準を満足していない場合には、CODとして計測される硫黄化合物(以下、「硫黄系COD成分」或いは「硫黄系還元性物質」と称する)を酸化処理してCODとして計測されない硫酸イオン(SO42-)として放流するか、または、カルシウムイオン(Ca2+)と反応させて石膏のような硫酸カルシウム(CaSO4)として回収する必要がある。
【0008】
従来、硫黄系COD成分を含有する廃水に、次亜塩素酸ナトリウムや、過酸化水素あるいはオゾン等の化学酸化剤を添加することによって酸化処理を行い、廃水中のCOD濃度を排水基準以下の適正範囲内に低下させる技術が提案されてきた。
【0009】
特許文献1は、高炉スラグの浸出により発生する黄水に対して、次亜塩素酸ナトリウムを黄水の最高電位、すなわち黄水中のチオ硫酸イオンの酸化還元電位の最高電位となるまで添加して、浸出水中のCODを低減させる方法を開示する。
【0010】
また、特許文献2は、石炭ガス化設備から排出される排水中の難分解物質であるチオ硫酸イオンおよびギ酸等のCOD成分を確実に分解する技術に関し、高pH域(pH7〜12)での第1段処理と低pH(pH2〜6)域での第2段処理とを行うことにより、前記難分解物質の処理を行う技術を開示する。
【0011】
さらに、特許文献3は、焼却灰を水洗して得られる排水を低pH(pH6以下)に調整し、重金属類を析出させた後、固液分離により得られた排水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して、前記排水の酸化処理を行う技術を開示する。
【0012】
しかしながら、前記浸出水を、特許文献1、2または3に記載された技術を用いて処理する場合、その主成分である硫化物イオンの一部は、低pH条件下において有害な硫化水素となり、周囲環境に放出されてしまうおそれがある。そのため、前記発生した硫化水素の環境への放出を抑止するとともに、発生した硫化水素を別途追加処理する必要があり、処理が複雑となり設備費用が増加するという問題がある。
【0013】
また、本発明者らの実験によれば、低pH条件下において、前記廃水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して酸化処理を行っても、前記硫化物イオンの一部は硫酸イオンとなるまでは酸化分解されず、単体硫黄までしか酸化されないため、処理水が白濁すると共に、処理水のCOD濃度も高い値を示し、排水基準以下の適正範囲内に低下させることができないという問題があった。
【0014】
水処理に対する基本的な要求事項として「薬剤使用量の低減」と「処理水質の安定化」があり、これらを同時に満足するためには、薬剤使用量、特に、化学酸化剤の添加量を適正化する必要がある。この化学酸化剤添加量の適正化のためには、酸化反応槽内の反応状況や、処理水質をモニタリング機器(COD計、ORP計(酸化還元電位計)、残留塩素計)などでモニタリングし、フィードバック制御を行うことが有効であるが、フィードバック制御はどうしても遅れを伴う制御であるため、流入水質をモニタリングし、その計測値から化学酸化剤の添加量をフィードフォワード制御することが望まれる。
【0015】
流入水のCOD濃度をモニタリングする機器としては、COD計やUV計等が挙げられるが、COD計は計測データが出るのに1時間を要するため、このような用途に不向きである。UV計はリアルタイムで計測データが得られるという特長を有するものの、成分によって濃度と吸光度の関係が異なるため、流入水中に複数の処理対象物質が存在し、その存在比率が変動する場合には吸光度から換算されるCOD濃度が大きく真値から外れる可能性がある。
【0016】
したがって、流入水中の成分の比率が変化する場合には、フィードフォワード制御を用いることはできず、用いたとしても、COD成分濃度を誤って高く推定した場合には化学酸化剤を過剰に添加してしまい薬剤費が嵩んでしまう。また、化学酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合には、残留塩素濃度の非常に高い処理水を公共水域に放流してしまい、残留塩素の酸化作用、殺菌作用、漂白作用等により、放流先の生態系に影響を与えるおそれがある。
【0017】
一方、COD濃度を低く推定した場合には、化学酸化剤の添加量が不足し、COD濃度の高い処理水を排出するという危険性がある。これらは、フィードバック制御と組み合わせることで、その影響を小さくすることができるものの、本質的に避けるべきものといえる。
【0018】
また、流入水質の変動が非常に大きい場合には、化学酸化の添加量制御が困難となり、処理水のCODの排出基準(規制値)を遵守するためには、化学酸化剤の添加量は高めに設定する必要が生ずる。この場合も、化学酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合には、残留塩素濃度の非常に高い処理水を公共水域に放流してしまうという危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開昭54−42848号公報
【特許文献2】特開2005−224771号公報
【特許文献3】特開2003−190974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、処理工程における硫化水素の発生を抑止して環境汚染を防止し、かつ、廃水中のCOD濃度を排水基準以下の適正範囲内に安定させることができる硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法およびその処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)硫黄系COD成分を含有する廃水に化学酸化剤を添加することにより酸化処理を行う硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法であって、前記酸化処理の前に、前記廃水を固形分と第1処理水とに分離する無薬注方式の固液分離工程と、該固液分離工程により得られた第1処理水に前記酸化処理を行って第2処理水とする酸化処理工程とを具えることを特徴とする硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【0022】
(2)前記酸化処理工程で得られた第2処理水は、pH調整処理が行われる上記(1)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【0023】
(3)前記化学酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムである上記(1)または(2)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【0024】
(4)前記次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、前記固液分離工程後かつ前記酸化処理工程前における第1処理水のUV計による紫外線吸光度の測定値、前記酸化処理工程中における第1処理水のORP計による酸化還元電位の測定値、前記酸化処理工程中における第1処理水の残留塩素計による残留塩素濃度の測定値、前記酸化処理工程後における第2処理水の残留塩素計による残留塩素濃度の測定値、および、前記酸化処理工程で得られた第2処理水にpH調整処理を行った場合に、該pH調整処理後における最終処理水の残留塩素計による残留塩素濃度の測定値から選ばれる1以上の測定値に応じて決定される上記(3)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【0025】
(5)前記第2処理水中の残留塩素濃度は、前記酸化処理工程中の第1処理水の残留塩素計による測定値、前記酸化処理工程後の第2処理水の残留塩素計による測定値、または、前記酸化処理工程中の第1処理水のORP計による酸化還元電位の測定値に応じて調整される上記(3)または(4)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【0026】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法によって処理された最終処理水の性状をモニタリングし、該モニタリングの結果、排水基準を満たしている場合に前記最終処理水を放流する硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【0027】
(7)硫黄系COD成分を含有する廃水を固形分と第1処理水との固液に分離する無薬注方式の第1固液分離手段、および該第1固液分離手段で固液分離された第1処理水を、化学酸化剤を用いて酸化処理して第2処理水とする反応槽を具える硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【0028】
(8)前記反応槽から流出する第2処理水を中和する中和槽をさらに具える上記(7)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【0029】
(9)前記反応槽から流出する第2処理水、または、第2処理水を中和する中和槽を具える場合は、中和処理後の第2処理水を固形分と最終処理水との固液に分離する第2固液分離手段を具える上記(7)または(8)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【0030】
(10)上記(7)、(8)または(9)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備により処理された最終処理水の性状を、放流前に監視する監視水槽を具える硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【0031】
(11)前記化学酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムである上記(7)〜(10)のいずれか一に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【0032】
(12)前記反応槽に流入する第1処理水の紫外線吸光度を測定するUV計、前記反応槽中の第1処理水の酸化還元電位を測定するORP計、前記反応槽中の第1処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素計、前記設備が、該設備により処理された第2処理水を中和する中和槽を具える場合には、前記中和槽中の第2処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素計、および、前記設備が、該設備により処理された最終処理水の性状を放流前に監視する監視水槽を具える場合には、前記監視水槽中の最終処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素計から選ばれる1以上の測定手段を設ける上記(11)に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、酸化処理の前に無薬注方式の固液分離を行うことにより、硫化水素の発生を抑止して環境汚染を防止し、かつ発生するスラッジの量を低減させ、さらに、廃水中のCOD濃度を排水基準以下の適正範囲内に安定させることができる硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法およびその処理設備を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に従う硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備を示す模式図である。
【図2】所定のpHにおけるCOD濃度を示すグラフである。
【図3】ORPとCOD濃度との関係を示すグラフである。
【図4】残留塩素濃度とCOD濃度との関係を示すグラフである。
【図5】本発明に従う硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備を示す模式図である。
【図6】従来の処理設備を示す模式図である。
【図7】従来の処理設備を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備1の実施形態について図1を参照して詳細に説明する。
本発明の処理設備1は、硫黄系COD成分を含有する廃水3を固形分70と第1処理水5との固液に分離する無薬注方式の第1固液分離手段7、およびこの第1固液分離手段7で固液分離された第1処理水5を、化学酸化剤9を用いて酸化処理して第2処理水11とする反応槽13を具える。
【0036】
第1固液分離手段7としては、例えば砂ろ過、アンスラサイトろ過、金属フィルターろ過等のろ過装置や、サイクロン分離、遠心分離、重力沈殿等の装置を用いることができる。また、この第1固液分離手段7の材質は、pH12.5程度までのアルカリ性に対して耐えうるものとする。
【0037】
化学酸化剤9は化学酸化剤貯槽15から添加され、この化学酸化剤9としては、例えば次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。次亜塩素酸ナトリウムの酸化力は酸性側で高く、チオ硫酸イオンの確実な分解を可能にするからである。このため、反応槽13の材質は、酸性側、具体的にはpH3.5程度以下、より好ましくはpH2程度以下までの酸性に対して耐えうるものとする。また、次亜塩素酸ナトリウムは、pH3程度以下の酸性条件化において分解し、腐食性で有毒の塩素ガスを発生する危険性があるため、反応槽13は、内面コーティングなどによりその耐腐食性を強化したり、発生ガスの処理設備(回収、吸収、分解、吸着装置等)を備えたりするのが好ましく、また、pHが平均的に4.5程度であっても、局所的にpHが低下し、塩素ガスが発生する可能性もあるので、反応槽13内の攪拌強度は十分にとるのが好ましい。
【0038】
また、本発明の処理設備1は、反応槽13に流入する第1処理水5の紫外線吸光度を測定するUV計17、反応槽13中の第1処理水5の酸化還元電位を測定するORP計19、および、反応槽13中の第1処理水5の残留塩素濃度を測定する残留塩素計21から選ばれる1以上の測定手段を設けるのが好ましい。これにより、化学酸化剤9としての次亜塩素酸ナトリウムの過不足のない適正な添加量をより正確に制御できるようになるため、処理水質の安定化(規制値を超えるCOD濃度値および以上に高い残留塩素濃度値を防ぐ)や処理コスト(次亜塩素酸ナトリウムコスト)の低減が可能となるためである。さらに、反応槽13におけるpH調整を可能にするため、pH計25を設けてもよい。
【0039】
さらに、本発明の処理設備1は、反応槽13から流出する第2処理水11を中和する中和槽27を具えるのが好ましい。中和槽27にはpH計29が設けられ、第2処理水11のpHを適正範囲に調整する。通常、公共用水域への放流基準はpH5.8〜8.6であるのに対し、第2処理水11のpHは通常pH5.8を下回るため、放流前にpHをこの範囲に調整する必要がある。このpHの調整には、酸31およびアルカリ33を酸貯槽35およびアルカリ貯槽37から反応槽13または中和槽27に添加することにより行うのが好ましく、また、局所的にpHが低下するのを防ぐため、これら酸31およびアルカリ33ならびに化学酸化剤9としての次亜塩素酸ナトリウムの添加箇所は、反応槽13または中和槽27内の流速の大きい位置に設定したり、複数の添加箇所から添加するなどの対策を採ったりすることが好ましい。
【0040】
なお、この中和槽27に残留塩素計23を設けることもできる。反応槽13に設けた場合と比較して、原理的には応答が若干遅れるが、中和槽27での滞留時間は通常30分以内と短く、流入水質が短時間に大きく変動しない限り、実際の運転上での影響はほとんどない。また、残留塩素計27および残留塩素計23のメンテナンスは、上部が密閉構造となる反応槽13よりも、中和槽27へ設けた残留塩素計23の方が容易である。
【0041】
また、反応槽13または中和槽27から流出する第2処理水11を第2固形分71と最終処理水39との固液に分離する第2固液分離手段41を具えるのが好ましい。これは、反応槽13における処理が不十分(例えば装置の故障などでpHが高い条件や、次亜塩素酸ナトリウムが不足した条件での酸化処理)となった場合、第2処理水11に固形物(硫黄の微細粒子)が存在し、第2処理水11の濁度やCOD濃度値が上昇する場合があるためである。第2固液分離手段41としては、第1個液分離手段7と同様に、例えば砂ろ過、アンスラサイトろ過、金属フィルターろ過等のろ過装置や、サイクロン分離、遠心分離、重力沈殿等の装置を用いることができ、さらに、硫黄の微細粒子は非常に微細であるため、固液分離効率を高くとるべく、第2固液分離手段41の前段に凝集槽43を設け、凝集剤貯槽45からポリマー等の凝集剤47を添加してもよい。
【0042】
さらに、本発明の処理設備1は、上述したような処理設備1により処理された最終処理水39(中和槽27および第2固液分離手段41を具えない場合は第2処理水11)の性状を、放流前に監視できる様に監視水槽49を具えるのが好ましい。
【0043】
次に、本発明の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法の実施形態について図1を参照して詳細に説明する。
本発明の処理方法は、酸化処理の前に、廃水3を固形分70と第1処理水5とに分離する無薬注方式の固液分離工程Iと、この固液分離工程Iにより得られた第1処理水5に酸化処理を行って第2処理水11とする酸化処理工程IIとを主として具える。
【0044】
廃水3は、固液分離工程Iの前に、調整槽51に集められ、水位計53によってその水位が計測されるのが好ましく、この情報は制御盤・配電盤55に送られ、気象情報やその他の情報(処理設備能力、浸出係数、冠水の許容度など)を総合的に考慮した上で、制御盤・配電盤55に組み込んだプログラムによって計量槽57への通水開始、終了の判断がなされる。通水開始の判断がなされると、廃水3は、調整槽51から原水ポンプで計量槽57に供給される。この計量槽57で第1固液分離手段7以降への通水量が調整され、余分な廃水は計量槽余剰水59として調整槽51に戻される。
【0045】
なお、各ポンプの配備については、流入水の濃度変動が大きいと予測される場合には、複数の容量の異なるポンプを設置し、必要な流量に合わせてポンプを切り替えて運転する、またはポンプの流量を可変とする(インバーター制御等)等の設計とするのが好ましい。また、故障しやすいポンプ(高濃度の薬液注入ポンプや次亜塩素酸ナトリウム液注入ポンプのように内部で気泡の発生が予想されるポンプ、調整槽から計量槽へ送液する原水ポンプのように固形物の混入が予想されるポンプ等)については、予備のポンプを設置しておくのがよい。また、各種配管やタンク類、攪拌機等の材質は、使用される場所毎の状況(pH、腐食/耐食性、圧力など)に応じたものとするとよい。
【0046】
固液分離工程Iにより固形物を除去することにより得られた第1処理水5の主成分である硫化物イオンとチオ硫酸イオンは、次亜塩素酸ナトリウム等の化学酸化剤9によってそれぞれ式(1)および式(2)にしたがって酸化分解される。
【0047】
【化1】

【0048】
上記式(1)で示されるように、次亜塩素酸ナトリウムによる酸化反応において、硫酸が生成されるため、処理水のpHは低下する。また、上記式(2)で示されるように、次亜塩素酸ナトリウムによる酸化反応において、塩酸が生成されるため、処理水のpHは低下する。前記反応は、後述するように、pHが低いほど反応速度が大となり、pHは6以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは4.5以下とすることにより、非常に大きい反応速度が得られ、小型の反応装置でも処理が可能となる。さらに、式(1)の反応を中性側からアルカリ性側で行うと、硫黄分が硫酸イオンまで完全酸化されず、単体の硫黄として析出し、処理水が白濁するとともに、COD濃度が十分に低下せず、処理水質の悪化を招くおそれがある。このため、pHは上述の酸性側の範囲で反応させる。
【0049】
ところで、上述したような廃水3であるスラグヤード浸出水の組成については、スラグ自体の組成に応じて種々のものがあり、典型的には、(i)硫化物イオンやチオ硫酸イオン等の硫黄系COD成分の濃度が高く、これら陰イオンの対イオンが主にカルシウムであるためにpHが高い場合と、(ii)硫化物イオンやチオ硫酸イオン等の硫黄系COD成分の濃度は低いが、水酸化カルシウムの濃度が高いためにpHが高い場合とがある。
【0050】
前記(i)の場合について考えると、硫化物イオンやチオ硫酸イオン濃度が高いため、上記式(1)および(2)の反応によって処理水のpHを大幅に下げることができる。このため、浸出水のpHがある程度高くても、酸化処理時のpHを酸性側に維持することができ、高い反応速度が得られると共に、処理水のpHがある程度高いほうが、最終的に再度酸化処理水を中性まで中和する際の、アルカリの添加量を削減することができる。
【0051】
一方、前記(ii)の場合について考えると、上記式(1)および(2)の反応が少ししか起こらないため、その反応生成物である硫酸と塩酸により、酸化処理時の処理水のpHを酸性側に維持することはできず、酸化反応速度を大きくすることが難しい。したがって、固液分離工程Iまたは酸化処理工程IIにおいて酸を添加し、処理水を中性から酸性側にしておく必要がある。
【0052】
次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、固液分離工程I後かつ酸化処理工程II前における第1処理水5のUV計17による紫外線吸光度の測定値、酸化処理工程II中における第1処理水5のORP計19による酸化還元電位の測定値、酸化処理工程II中における第1処理水5の残留塩素計21による残留塩素濃度の測定値、酸化処理工程II後における第2処理水11の残留塩素計23による残留塩素濃度の測定値、および、最終処理水39の残留塩素計63による残留塩素濃度の測定値から選ばれる1以上の測定値に応じて決定されるのが好ましい。
【0053】
UV計17は、リアルタイムに紫外線吸光度をモニタリングすることが可能であり、UV計17の出力値はCOD濃度値と相関関係を示すので、本発明の固液分離工程I後かつ酸化処理工程II前における第1処理水5のUV計17による測定値によって、次亜塩素酸ナトリウムの添加量を正確に制御することが可能となる。
【0054】
また、前記ORP計19によって計測される酸化処理工程II中における第1処理水5の酸化還元電位(ORP)を用いて、フィードバック制御を行うことで、さらに正確な制御が可能となる。これまでの実験から、上述したような固液分離処理を行った後、次亜塩素酸ナトリウムによる酸化処理を行う場合、第1処理水5における残存チオ硫酸ナトリウムの濃度とpHにより、酸化還元電位が大きく変化することを見出している。処理水中に少しでもチオ硫酸ナトリウムが残存する場合には、酸化還元電位はpHが4.5近辺において850mV以下となるが、チオ硫酸ナトリウムが分解され尽くすと、酸化還元電位は急激に上昇し、1100mV程度の値を示す。このことから、酸化還元電位が900mV程度以下の場合には、次亜塩素酸ナトリウムの添加量を増大させるといった制御を行うのが好ましい。酸化還元電位が1100mV以上の場合には、COD成分は分解され尽くしているものの、過剰に次亜塩素酸ナトリウムを添加している可能性がある。このため、徐々に、次亜塩素酸ナトリウムの添加量を減少させつつ、酸化還元電位が下がり出した段階で次亜塩素酸ナトリウムの添加量を再度微増させる制御方法が考えられる。
【0055】
次亜塩素酸ナトリウムの過剰添加のチェックには残留塩素計21,23,63によって測定される酸化処理中の第1処理水5、酸化処理後の第2処理水11、最終処理水39の残留塩素濃度値を用いることが好ましい。これまでの実験において、残留塩素濃度が1mg/L以上であれば、COD濃度値は5mg/L以下であるとのデータが得られており、酸化処理中の第1処理水5、酸化処理後の第2処理水11および最終処理水39から選ばれる1以上中の残留塩素濃度をモニタリングし、その値が所定の値を超えた場合に、次亜塩素酸ナトリウムの添加量を低減し、所定の値を下回った場合に次亜塩素酸ナトリウムの添加量を増大させるのが好ましい。
【0056】
なお、次亜塩素酸ナトリウムの添加量を増大あるいは減少させる制御は、酸化処理装置における水理学的滞留時間や、添加薬剤の濃度、流入水の濃度などの影響を受ける。さらに、紫外線吸光度、ORP、残留塩素濃度等はメーカーや測定方式によっても指示値や応答時間に差が出る。特に、ORPは、参照電極の材質により指示値が100mV程度異なることが知られている。このため、実際の処理設備においてはPID制御等の制御プログラムを組み込み、実設備の運転を行いながら最適な制御が可能となるよう制御方法、各種制御定数を最適化するのが好ましい。
【0057】
また、反応槽13のpHは、5.5以下に制御するのが好ましい。特許文献3においては、処理対象を焼却灰の洗浄水に限定した上で、pH6以下の条件で酸化することが述べられているが、種々のスラグヤード廃水における実験においては、pHが5.5超〜6.0の間では反応速度が小さく、pHは5.5以下が好ましく、さらに好ましくは4.5以下とすることが反応速度の面で有利であると言う実験結果を得ている。ただし、pHが4以下となると次亜塩素酸が分解し塩素ガスが発生する可能性が高くなるため、pHは4超〜4.5程度に維持することが最も好ましい。pH調整剤としては、流入水のチオ硫酸濃度が高い場合には大量の塩酸が生成するので、アルカリ(通常水酸化ナトリウム)33をアルカリ貯槽37から添加することとなり、流入水のチオ硫酸濃度が低い場合には、酸31を酸貯槽35から添加するのが好ましい。ただし、流入水の濃度や成分組成が変化する場合には、酸液とアルカリ液の両方を添加できるものとしておく。
【0058】
上記測定値は、すべて制御盤・配電盤55に送られ、その値を基に反応槽13における化学酸化剤9の添加量がほぼ決定され、化学酸化剤貯槽15から化学酸化剤9が反応槽13に供給される。反応槽13内部は攪拌機によりほぼ完全混合状態とし、内部の状態はORP計19、残留塩素計21、pH計25によってモニタリングされ、これらの情報が制御盤・配電盤55に送られ、化学酸化剤9の添加量のより過不足ない正確な添加量と、前記pH調整剤の添加量が決定され、その制御信号に基づいて、酸貯槽35、アルカリ貯槽37、化学酸化剤貯槽15からそれぞれの薬品が反応槽13に供給されるのが好ましい。
【0059】
本発明において、前記酸化処理工程IIで得られた第2処理水11は、pH調整処理IIIが行われるのが好ましい。通常公共用水域への放流基準はpH5.8〜8.6であり、前記第2処理水11のpHは通常pH5.9を下回るため、放流前にpHをこの範囲に調整する必要があるためである。このため、反応槽13から流出する第2処理水11は、中和槽27に導かれ、pH計29によってモニタリングされながら、pHの放流基準を満足するように添加量が制御盤・配電盤55で決められ、酸貯槽35、アルカリ貯槽37から必要なpH調整剤31,33が中和槽27に添加される。
【0060】
さらに、前述したように、中和槽27から流出する処理水を固液分離するための第2固液分離手段41を中和槽27の後段に設けることが好ましい。
【0061】
最終処理水39の性状をモニタリングし、このモニタリングの結果、排水基準を満たしている場合に最終処理水39を放流するのが好ましい。このため、中和槽27または第2固液分離装置41から流出する最終処理水39は、監視水槽49に導かれ、COD計61および残留塩素計63ならびにpH計65で監視水槽49内部水の水質がモニタリングされ、放流基準を満足することが確認された上で、放流水67として放流される。流入水質の変動が予想以上に大きかった場合や、万が一の処理設備機器のトラブルがあった場合に備えて、放流水67を調整槽51に返送するラインを設けても良い。その際の返送ポンプとして、調整槽51から処理水を計量槽57に移送するポンプあるいはその予備ポンプを用いることで設備費の低減が可能となる。監視水槽49で残留塩素濃度が所定の値を超えた場合には、その情報を元に、制御盤・配電盤55で化学酸化剤9の反応槽13への添加量を削減するとともに、残留塩素分解槽69に監視水槽49内の液を循環させ、残留塩素濃度が所定の値以下となるまで処理を行う。残留塩素分解槽69は、塔形式とし、内部に粒状の亜硫酸カルシウムを充填し、そのカラムに液を通水する方法が考えられるが、この形式以外の形式でも利用可能である。なお、後述するように、残留塩素分解槽69は設けず、監視水槽49に直接亜硫酸カルシウムを添加する方法もある。
【0062】
第2処理水11中の残留塩素濃度は、酸化処理工程II中の第1処理水5、酸化処理工程II後の第2処理水11および最終処理水39から選ばれる1以上の残留塩素計21,23,63による測定値に応じて調整されるのが好ましい。残留塩素濃度の非常に高い処理水を放流するのを防止するためである。
【0063】
また、上述したように、反応槽13から流出する第2処理水11を固形分と最終処理水39との固液に分離する第2固液分離手段41を具えるのが好ましく、また、第2固液分離手段41の前段に凝集槽43を設け、凝集剤貯槽45からポリマー等の凝集剤47を添加してもよい。これにより、仮に所定の重金属が反応槽13から流出する第2処理水11に含まれる場合でも、その重金属に適した処理剤や捕集剤を添加した後の重金属を固定した固形物の固液分離装置として活用出来る。
【0064】
前記第2処理水11の残留塩素濃度を残留塩素計23で、または、最終処理水39の残留塩濃度を残留塩素計63で計測し、残留塩素濃度が高い場合には、亜硫酸カルシウムを主成分とする薬剤を添加するか、あるいは、亜硫酸カルシウムを主成分とする薬剤を充填した充填槽に前記第2処理水11を通水し、残留塩素濃度を低減できるようにしてもよい。高濃度の残留塩素濃度の処理水を排出して放流先の環境に悪影響を与えることを回避するためである。亜硫酸カルシウムは亜硫酸イオンを水側に供給でき、還元剤として働くので、残留塩素との反応速度も大きいという特質を持ち、残留塩素の除去剤として好適である。また、残留塩素の除去剤として、還元剤ではあるが溶解度が小さいので、亜硫酸カルシウムを仮に過剰に添加したとしても、未反応の亜硫酸カルシウムの固体が処理水に含まれない限り、処理水のCOD値を大きく上昇させることはなく、残留塩素を除去できる。さらに、亜硫酸カルシウムは溶解度は小さいものの、残留塩素との反応により液側の亜硫酸濃度が小さくなると、平衡(溶解度の上限)になるべく、溶出速度が上昇するので、反応速度が大きくなるという特性を有するので、本目的に好適である。
【0065】
なお、図1に示した実施形態は一例であって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
図2は、COD濃度が120mg/L程度のスラグヤード浸出水を、反応槽(容積:0.7L)に連続的に供給するとともに、次亜塩素酸ナトリウムを、前記COD濃度(120mg/L)を完全に分解できる量の1.03倍添加しながら、反応槽のpHを酸(硫酸)およびアルカリ(水酸化ナトリウム)によって、所定の値(4.5,5.5,6,7.5)に維持しつつ、処理水の分析を行ったものである。水質分析にあたっては、サンプリング時にpHを11程度まで上昇させ、サンプルの分析開始までの経時変化を抑制し、正しい評価ができるようにした。実験では原水の流量を3水準設定し、液の反応槽内の滞留時間の異なる(6分,12分,23分)データを採取した。pHを4.5に維持した場合には、滞留時間が6分の場合でもCODはほぼ完全分解されているのに対して、pHの制御値の上昇に伴い、CODの残存濃度が上昇する傾向が示されており、pHを5.5以下、望ましくは4.5以下とすることで、高い反応速度が得られ、小型(滞留時間の短い)の処理装置でも確実な処理が実施できることがわかった。
【0067】
図3および図4は、図2と同様の実験においてpHを4.5程度に維持しながら、CODを完全分解できる量の1.03倍量の次亜塩素酸ナトリウムの添加を行った連続処理実験における反応槽内のORPとCOD濃度との関係(図3)と、残留塩素濃度とCOD濃度との関係(図4)を示したものである。
【0068】
図3には、ORPが1100mVを超えるとCODがほぼ分解されていることが示されており、ORPで良好な処理が行なわれていることをモニタリングできることが示されているが、前述のように、ORPは次亜塩素酸ナトリウムの過剰添加のチェックには用いることはできない。また、前述したように、ORP計は機種、方式毎に異なる値を示すため、実処理に当たっては、使用する機器での相関を明らかにする必要があり、そのデータを用いて管理指標、制御方法を決める必要がある。
【0069】
また、図4から、残留塩素濃度が1.5mg/L以上存在すれば、処理水のCODはほぼ分解されていることがわかる。2.2mg/L以超えの残留塩素が残存するような次亜塩素酸ナトリウムの添加は、過剰添加であり薬品の無駄使いであり、さらに、再度残留塩素濃度を低減するための処理が必要となるので避けるべきである。一方、残留塩素濃度が1.5mg/L未満の場合には、CODが残存し、残留塩素濃度とCOD残存量にはデータのバラツキが見られる。この理由として、反応槽内での滞留時間が短い場合には、残留塩素が存在しても、反応時間が足りないためにCODが高い値を示したデータがあるためである。本データから、残留塩素濃度は1.5〜2.2mg/Lとなるように制御するのが良いことがわかる。
【0070】
(実験例)
COD濃度が120mg/Lのスラグヤード浸出水を、
1)無薬注で、有効径1mmの砂ろ過装置でろ過したもの(試料1)
2)無薬注で、口径50mmの金属製フィルターでろ過したもの(試料2)
3)凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を50mg/L添加して1時間静置して上澄みを採取したもの(試料3)
を用意し、処理水質とスラッジ発生量を比較した。さらに、処理水500mlを1000mlのビーカーに移し、上部を密閉した後、3分後に処理水直上2cmの場所で測定した硫化水素濃度を測定した。
試料1および試料2におけるスラッジ発生量は、それぞれ砂層とフィルター表面を洗浄し、洗浄液の量と浮遊物質(SS)濃度から算出した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から、試料1および試料2では、硫化水素が発生しないというメリットが確認されたとともに、スラッジ発生量も小さく、薬剤費が不要であることと、スラッジ処理量が低減できることによるコストメリットが明確である。一方、試料3では、PAC添加に伴い、微細固形分は凝集し、処理が可能となるものの、PAC添加によりpHが低下するので、硫化物の一部が分子状の硫化水素となり、気散するという問題が確認された。さらに、凝集剤を添加しているために、凝集剤成分もスラッジ化するので、スラッジ発生量が増大するという問題点も明確である。
【0073】
(実施例1)
実施例1は、図5に示すように、砂ろ過装置(有効径1.0mm)107を用いて、被処理水103(供給速度:250ml/分)を固形分170と第1処理水105とに分離し、この第1処理水105に対し、反応槽113(容積:5L)で前記酸化処理を行って第2処理水111とし、この反応槽113から流出する第2処理水111を中和槽127(容積:3L)で中和して最終処理水139とした後、この最終処理水の性状を、放流前に監視水槽149(容積:5L)で監視した。
また、監視水槽149の残留塩素計163による残留塩素濃度が2.3mg/L以上となった場合には、処理水を、監視水槽149から250ml/分の速度で残留塩素分解槽169(粒状亜硫酸カルシウムを充填し、見かけ容積200mlとしたもの)に循環させた。
なお、被処理水103は、実際のスラグヤード浸出水を異なる場所、異なる日に採取し、冷蔵庫保管し、使用前に20℃に調整したもので、COD濃度が300mg/L、30mg/L、150mg/L、50mg/L、400mg/Lのもの5種類を用い、この順に3時間おきに切り替えて供給した。
反応槽113および中和槽127にはpH計125,129を配置し、各槽のpHはそれぞれ4.0〜5.0、6.5〜8の間に維持した。
酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム109を添加し、この添加量は、反応槽113に流入する第1処理水105の紫外線吸光度をUV計117で測定し、この出力とCOD濃度の相関関係(最小2乗法による)から、COD濃度値を推算し、そのCOD成分流入量を酸化分解できる理論量に相当する次亜塩素酸ナトリウム109を反応槽113に投入した。
なお、図5中、参照符号131,133,135,137はそれぞれ酸,アルカリ,酸貯槽,アルカリ貯槽を示す。
また、モニタリング機器として、反応槽113,中和槽127および監視水槽149に、ORP計119,残留塩素計123および残留塩素計163をそれぞれ設けたが、制御に用いるのは上述したUV計117のみである。
【0074】
また、第1処理水105を、上記COD濃度が異なる5種類の被処理水の運転期間中に1L採取し、2Lの三角フラスコに移し、上部を密閉し、10分間放置した後の、三角フラスコ上部の気体中の硫化水素濃度を検知管で測定した。
【0075】
(実施例2)
実施例2は、反応槽113に流入する第1処理水105の紫外線吸光度をUV計117で測定し、この出力とCOD濃度の相関関係(最小2乗法による)から、COD濃度値を推算し、そのCOD成分流入量を酸化分解できる理論量の1.3倍に相当する次亜塩素酸ナトリウム109を反応槽113に投入したこと以外は、実施例1と同様である。
【0076】
(実施例3)
実施例3は、反応槽113に流入する第1処理水105の紫外線吸光度をUV計117で測定し、この出力とCOD濃度の相関関係(最小2乗法による)から、COD濃度値を推算し、そのCOD成分流入量を酸化分解できる理論量に相当する次亜塩素酸ナトリウム109を反応槽113に投入し、反応槽113に設けたORP計119の値が900mV以下850mV超となった場合に、理論量の1.3倍、850mV以下となった場合に、理論量の1.6倍量の次亜塩素酸ナトリウム液の投入を行い、ORP計119の値が900mVを超えた時点で、次亜塩素酸ナトリウム液の投入量を理論値に戻す運転としたこと以外は、実施例1と同様である。
なお、モニタリング機器として、中和槽127、監視水槽149に、残留塩素計123および残留塩素計163をそれぞれ設けるが、制御に用いるのは上述したUV計117およびORP計119のみである。
【0077】
(実施例4)
実施例4は、反応槽113に流入する第1処理水105の紫外線吸光度をUV計117で測定し、この出力とCOD濃度の相関関係(最小2乗法による)から、COD濃度値を推算し、そのCOD成分流入量を酸化分解できる理論量に相当する次亜塩素酸ナトリウム109を反応槽113に投入し、残留塩素計123で測定した中和槽127の第2処理水の残留塩素濃度が1.0mg/L超え1.5mg/L以下の場合に理論量の1.3倍、1.0mg/L以下となった場合に理論量の1.6倍、1.5mg/L超え3.0mg/L以下となった場合に理論量の0.8倍、3.0mg/L超えとなった場合に理論量の0.6倍量の次亜塩素酸ナトリウム液の投入を行ったこと以外は、実施例1と同様である。
なお、モニタリング機器として、反応槽113および監視水槽149に、ORP計119および残留塩素計163をそれぞれ設けるが、制御に用いるのは上述したUV計117および残留塩素計123のみである。
【0078】
(実施例5)
実施例5は、反応槽113に流入する第1処理水105の紫外線吸光度をUV計117で測定し、この出力とCOD濃度の相関関係(最小2乗法による)から、COD濃度値を推算し、そのCOD成分流入量を酸化分解できる理論量に相当する次亜塩素酸ナトリウム109を反応槽113に投入し、反応槽113に設けたORP計119の値が900mV以下850mV超となった場合に、理論量の1.3倍、850mV以下となった場合に、理論量の1.6倍量の次亜塩素酸ナトリウム液の投入を行い、ORP計119の値が900mVを超えた時点で、次亜塩素酸ナトリウム液の投入量を理論値に戻し、また、残留塩素計123で測定した中和槽127の第2処理水の残留塩素濃度が1.0mg/L超え1.5mg/L以下の場合に理論量の1.3倍、1.0mg/L以下となった場合に理論量の1.6倍、1.5mg/L超え3.0mg/L以下となった場合に理論量の0.8倍、3.0mg/L超えとなった場合に理論量の0.6倍量の次亜塩素酸ナトリウム液の投入を行ったこと以外は、実施例1と同様である。
ただし、処理水のCOD濃度を常時放流基準(20mg/L設定)に保つことを第1とし、残留塩素については、監視水槽149から、残留塩素分解槽169への循環によって対処できることから、万が一、ORP計119側と残留塩素計123側の設定で異なる制御指示(片方は添加量増大信号、片方は添加量低減信号)が出た場合には、添加量増大信号による制御を優先するシーケンスとした。
なお、モニタリング機器として、監視水槽149に残留塩素計163を設けるが、制御に用いるのは上述したUV計117、ORP計119、残留塩素計123のみである。
【0079】
(比較例1)
比較例1は、図6に示すように、被処理水203(供給速度:250ml/分)を直接反応槽213(容積:5L)に導入し、また、残留塩素分解槽を具えないこと以外は、実施例1と同様である。
【0080】
(比較例2)
比較例2は、図7に示すように、被処理水303(供給速度:250ml/分)を、凝集混和槽371に導入し、凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)373をPAC貯槽375から添加した後、沈殿池377にて固液分離処理を行って第1処理水305とし、また、残留塩素分解槽を具えないこと以外は、実施例1と同様である。
【0081】
(評価)
表2に、実施例1〜5および比較例1〜2の反応槽流入水の硫化水素濃度ならびに中和槽および監視水槽の残留塩素濃度およびCOD濃度、次亜塩素酸ナトリウム添加量および亜硫酸カルシウム添加量を示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表2より以下のように考察される。
比較例1では、実施例1〜5、比較例2と比較して、最終処理水となる監視水槽水のCOD濃度値が高いという結果となった。これは、固液分離処理を行わずに酸化処理を行なっているため、処理水にSS成分が残存し、このSSがCODとして計測されるためである。また、次亜塩素酸ナトリウムの消費量も最も大きいが、これは、流入水中のCOD濃度値が大であるため、必用な次亜塩素酸ナトリウムの量も大となるためである。監視水槽流入水のSSを固液分離すれば、COD濃度値を下げることはできるが、運転費の大部分を占める次亜塩素酸ナトリウムの消費量は低減できない。残留塩素濃度は、0〜3mg/L以上を示し、大きく変動した。これは、次亜塩素酸ナトリウムの添加量制御がUV計によるフィードフォワード制御のみによるものであり、被処理水水質の変動、特に、COD成分であるチオ硫酸イオン、亜硫酸イオンと硫化物イオンの比率が変わった場合、UV指示値とCODの関係の検量線の傾きが変わり、UV指示値からのCOD換算値に誤差を生じ、結果として次亜塩素酸ナトリウムの添加量に過不足が生じるためである。監視水槽に過剰の残留塩素を処理する残留塩素分解槽を持たないこのシステムでは、高濃度の残留塩素を含む処理水を放流する危険性がある。
【0084】
比較例2では、固液分離処理を行っているため、比較例1に比べて監視水槽のCOD濃度値は低めであり、次亜塩素酸ナトリウムの使用量も低減できている。しかしながら、より精密な次亜塩素酸ナトリウム添加量の制御を行っている実施例3〜5や、若干多目の次亜塩素酸ナトリウムを投入した実施例2と比較すると監視水槽のCOD濃度値は高い値となった。さらに、残留塩素濃度は0〜3mg/L以上を示し、大きく変動した。これは、次亜塩素酸ナトリウムの添加量制御がUV計によるフィードフォワード制御のみによるものであり、被処理水水質の変動、特に、COD成分であるチオ硫酸イオン、亜硫酸イオンと硫化物イオンの比率が変わった場合、UV指示値とCODの関係の検量線の傾きが変わり、UV指示値からのCOD換算値に誤差を生じ、結果として次亜塩素酸ナトリウムの添加量に過不足が生じるためである。監視水槽に過剰の残留塩素を処理する残留塩素分解槽を持たないこのシステムでは、高濃度の残留塩素を含む処理水を放流する危険性がある。
さらに、比較例2のみ反応槽流入水の硫化水素濃度が高い値となった。これは、凝集剤として使用したPACによって溶液のpHが低下し、一部の硫化物イオンが硫化水素ガスとして気散したためであり、本システムを実用化する場合には、凝集混和槽から酸化処理槽までの間を気密構造とし、硫化水素ガスが放散され事故がおきないように注意する必要がある。
【0085】
実施例1では、比較例1に対して監視水槽のCOD濃度値が低く、また、次亜塩素酸ナトリウムの消費量も小さいというという効果が得られている。これは、固液分離を行なっているため、SS性のCOD成分が反応槽に流入しないためである。また、監視水槽の残留塩素濃度の最高値も小さい値となっている。これは、実施例1では残留塩素分解槽を設けていることによる効果である。
比較例2に対しては、硫化水素ガスが発生しないというメリットは明白であり、また、監視水槽水の残留塩素濃度の最高値も小さい値となっている。これは、実施例1では残留塩素分解槽を設けていることによる効果である。
【0086】
実施例2と比較例1,2との関係は、基本的に実施例1の場合と同様であるが、実施例1と比較して、次亜塩素酸ナトリウムを30%多く添加したため、監視水槽のCOD濃度はより小さく、逆に、中和槽の残留塩素濃度は高いという結果となった。本システムでも、残留塩素分解槽を設けており、監視水槽からの放流水が高濃度の残留塩素濃度となる危険性は回避できるが、次亜塩素酸ナトリウムおよび亜硫酸カルシウムの消費量は実施例1より大となる。以上のように、実施例2では実施例1より処理水質は向上するものの、運転費(薬剤費)は増大する。実施例1と2は、設備としては同じものであり、UV計から計算される次亜塩素酸ナトリウム添加量に対して、実際にどの程度の割合の次亜塩素酸ナトリウムを加えればよいかは、実装置の運転を実施しつつ、把握していけばよい。
【0087】
実施例3では、UV計によるフィードフォワード制御に加え、ORP計で次亜塩素酸ナトリウムの添加量をフィードバック制御しているので、実施例1に対して、次亜塩素酸ナトリウム使用量は同等でありながら監視水槽水のCOD濃度の改善効果が顕著である。これは、ORP制御により、より過不足のない次亜塩素酸ナトリウムの添加が可能となったためである。
【0088】
実施例4では、UV計によるフィードフォワード制御に加え、残留塩素系による次亜塩素酸ナトリウムの添加量をフィードバック制御しているので、水質的には実施例3とほぼ同等であるが、次亜塩素酸ナトリウムの過剰添加を防止できるので、次亜塩素酸ナトリウムの添加量は実施例3より若干小さく、残留塩素濃度が過剰に上昇することは少ないので、亜硫酸カルシウムの消費量は極僅かとなる。
【0089】
実施例5では、UV計によるフィードフォワード制御に加え、ORP計で次亜塩素酸ナトリウムの添加量をフィードバック制御し、さらに残留塩素系による次亜塩素酸ナトリウムの添加量をフィードバック制御しているので、監視水槽CODや次亜塩素酸ナトリウム使用量、亜硫酸カルシウムの消費量のすべての面でメリットが得られる。ただし、モニタリング機器は最も多く、建設費は実施例の中で最も高価となる。
【0090】
以上のように、各実施例1〜5と比較例1〜2との間では、処理水質とその安定性、薬品使用量、硫化水素発生対策の必要性(対比較例2)などの面で明確な差が認められた。
実施例1〜5の比較においては、要求水質、流入水水質、建設費と運転費のどちらを重視するかなどを総合的に考慮して判断すればよい。例えば、流入水の濃度と流入水のチオ硫酸イオン、亜硫酸イオンと硫化物イオンの比率がほとんど変わらないことが明らかな場合には、UV計による制御だけでも良好な水質と小さい運転費の両立が可能な場合もある。逆に、流入水の濃度と流入水のチオ硫酸イオン、亜硫酸イオンと硫化物イオンの比率が絶えず側場合には、実施例3〜5(実施例5が最も確実)のフローを採用するか、実施例2のように、多少運転費は増大しても、多目の次亜塩素酸ナトリウムの添加量に設定し、過剰の残留塩素は別途処理するようにすればよい。
【0091】
また、今回の実施例では、制御方法として、基準値を設け、基準値を超えた場合に、制御値を指定の値に階段状に変更する単純な制御方法をとっているが、実際の処理では、PID制御等の制御技術を用いることで、より精密な制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、酸化処理の前に無薬注方式の固液分離を行うことにより、硫化水素の発生を抑止して環境汚染を防止し、かつ発生するスラッジの量を低減させ、さらに、廃水中のCOD濃度を排水基準以下の適正範囲内に安定させることができる硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法およびその処理設備を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
1 , 100 本発明に従う廃水の処理設備
3 硫黄系COD成分を含有する廃水
5 , 105, 305 第1処理水
7 , 107, 第1固液分離手段
9 , 109, 209, 309 化学酸化剤
11 , 111, 211, 311 第2処理水
13 , 113, 213, 313 反応槽
15 , 115, 215, 315 化学酸化剤貯層
17 , 117, 217, 317 UV計
19 , 119, 219, 319 ORP計
21 残留塩素計
23 , 123, 223, 323 残留塩素計
25 , 125, 225, 325 pH計
27 , 127, 227, 327 中和槽
29 , 129, 229, 329 pH計
31 , 131, 231, 331 酸
33 , 133, 233, 333 アルカリ
35 , 135, 235, 335 酸貯槽
37 , 137, 237, 337 アルカリ貯槽
39 , 139, 239, 339 最終処理水
41 第2固液分離手段
43 凝集槽
45 凝集貯槽
47 凝集剤
49 , 149, 249, 349 監視水槽
51 調整槽
53 水位計
55 , 155, 255, 355 制御盤・配電盤
57 計量槽
59 計量槽余剰水
61 COD計
63 , 163, 263, 363 残留塩素計
65 pH計
67 , 167, 267, 367 放流水
69 , 169 残留塩素分解槽
70 , 170 固形分
71 第2固形分
200, 300 比較例の廃水の処理設備
103, 203, 303 被処理水
371 凝集混和槽
373 PAC
375 PAC貯槽
377 沈殿池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄系COD成分を含有する廃水に化学酸化剤を添加することにより酸化処理を行う硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法であって、
前記酸化処理の前に、前記廃水を固形分と第1処理水とに分離する無薬注方式の固液分離工程と、
該固液分離工程により得られた第1処理水に前記酸化処理を行って第2処理水とする酸化処理工程と
を具えることを特徴とする硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【請求項2】
前記酸化処理工程で得られた第2処理水は、pH調整処理が行われる請求項1に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【請求項3】
前記化学酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムである請求項1または2に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【請求項4】
前記次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、前記固液分離工程後かつ前記酸化処理工程前における第1処理水のUV計による紫外線吸光度の測定値、前記酸化処理工程中における第1処理水のORP計による酸化還元電位の測定値、前記酸化処理工程中における第1処理水の残留塩素計による残留塩素濃度の測定値、前記酸化処理工程後における第2処理水の残留塩素計による残留塩素濃度の測定値、および、前記酸化処理工程で得られた第2処理水にpH調整処理を行った場合に、該pH調整処理後における最終処理水の残留塩素計による残留塩素濃度の測定値から選ばれる1以上の測定値に応じて決定される請求項3に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【請求項5】
前記第2処理水中の残留塩素濃度は、前記酸化処理工程中の第1処理水の残留塩素計による測定値、前記酸化処理工程後の第2処理水の残留塩素計による測定値、または、前記酸化処理工程中の第1処理水のORP計による酸化還元電位の測定値に応じて調整される請求項3または4に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法によって処理された最終処理水の性状をモニタリングし、該モニタリングの結果、排水基準を満たしている場合に前記最終処理水を放流する硫黄系COD成分を含有する廃水の処理方法。
【請求項7】
硫黄系COD成分を含有する廃水を固形分と第1処理水との固液に分離する無薬注方式の第1固液分離手段、および該第1固液分離手段で固液分離された第1処理水を、化学酸化剤を用いて酸化処理して第2処理水とする反応槽を具える硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【請求項8】
前記反応槽から流出する第2処理水を中和する中和槽をさらに具える請求項7に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【請求項9】
前記反応槽から流出する第2処理水、または、第2処理水を中和する中和槽を具える場合は、中和処理後の第2処理水を固形分と最終処理水との固液に分離する第2固液分離手段を具える請求項7または8に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【請求項10】
請求項7、8または9に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備により処理された最終処理水の性状を、放流前に監視する監視水槽を具える硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【請求項11】
前記化学酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムである請求項7〜10のいずれか一項に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。
【請求項12】
前記反応槽に流入する第1処理水の紫外線吸光度を測定するUV計、前記反応槽中の第1処理水の酸化還元電位を測定するORP計、前記反応槽中の第1処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素計、前記設備が、該設備により処理された第2処理水を中和する中和槽を具える場合には、前記中和槽中の第2処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素計、および、前記設備が、該設備により処理された最終処理水の性状を放流前に監視する監視水槽を具える場合には、前記監視水槽中の最終処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素計から選ばれる1以上の測定手段を設ける請求項11に記載の硫黄系COD成分を含有する廃水の処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−234338(P2010−234338A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87808(P2009−87808)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】