説明

硬度計算システムおよび硬度計算方法

【課題】対象物の押圧時のくぼみ方の特性に関係なく、対象物の硬度を高精度で計算することを課題とする。
【解決手段】本発明の硬度計算システム1000によれば、磁気センサ19から取得した電圧の情報に基づいて作成した2階微分波形と、加速度センサ13から取得した加速度の情報に基づく加速度波形と、を比較して電圧・変位変換係数Cmdを計算し、予め求めている電圧・圧力変換係数Cmpを電圧・変位変換係数Cmdで除算して対象物のバネ定数(硬度)を計算することで、対象物の押圧時のくぼみ方の特性に関係なく、対象物の硬度を高精度で計算することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物(人体など)の硬度を計算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物の硬度を測定することが有益である場面は多い。例えば、対象物が人体の場合、体の所定箇所の硬度を測定することで、筋肉や臓器の硬度、あるいは、動脈硬化の進行度などを知り、その後の対策等に役立てることができる。
【0003】
例えば、人体などの対象物に対して、加速度センサと圧力センサを備えた装置を押し当て、圧力情報と、加速度の情報を2階積分して得た変位情報と、を用いることで、対象物の硬度(弾性係数)を計算する技術がある(特許文献1参照)。
【0004】
また、対象物の硬度を測る一般の装置として、デュロメータがある。デュロメータを用いれば、対象物に押し当てた押針によるくぼみの深さから、対象物の硬度を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−211172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、加速度の情報を2階積分することによる誤差が大きくて硬度の計算精度が低くなる場合があるという問題がある。
【0007】
また、デュロメータは、ゴムやプラスチックのように、押針が当たっている部分の周りの部分がほとんどくぼまないような対象物の硬度の測定には適しているが、人体のように、押針が当たっている部分の周りの部分も一緒にくぼむような対象物の硬度の測定には、誤差が大きくなるため適していない。
【0008】
そこで、本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、対象物の押圧時のくぼみ方の特性に関係なく、対象物の硬度を高精度で計算することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、対象物の硬度を計算する硬度計算システムであって、前記硬度の計算時に前記対象物が凹むように前記対象物に押し付けられる測定装置と、前記測定装置からの情報に基づいて前記硬度を計算する硬度計算装置と、を備えており、前記測定装置は、前記対象物における前記測定装置との接触部分の押し付け方向の動きの加速度の情報を検出する加速度センサと、前記対象物における前記測定装置との接触部分へ加えられた圧力の大きさに応じた電圧の情報を出力する磁気センサと、を備えており、前記硬度計算装置は、前記磁気センサが出力する電圧の情報に対する、前記接触部分へ加えられている圧力の比を示す電圧・圧力変換係数を記憶する記憶部と、前記磁気センサから取得した電圧の情報に基づく電圧波形を2階微分することにより、2階微分波形を作成する2階微分波形作成部と、前記作成された2階微分波形と、前記加速度センサから取得した加速度の情報に基づく加速度波形とを比較し、比較結果を出力する波形比較部と、前記出力された比較結果に基づいて、前記作成された2階微分波形に対する、前記加速度波形の大きさの比を示す電圧・変位変換係数を計算し、前記電圧・圧力変換係数を前記電圧・変位変換係数で除算することで、前記硬度を計算する計算部と、を備えることを特徴とする。
その他の手段については後記する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象物の押圧時のくぼみ方の特性に関係なく、対象物の硬度を高精度で計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の硬度計算システムの全体構成図である。
【図2】測定装置の動作原理の説明図である。
【図3】測定装置の構造例の模式図である。
【図4】受信コイル側の出力電圧と圧迫による圧力の関係を示す図である。
【図5】対象物をバネとした場合において、(a)は加速度センサによる出力を示す図であり、(b)は磁気センサによる出力を示す図であり、(c)は圧力センサによる出力を示す図であり、(d)は変位センサによる出力を示す図である。
【図6】(a)は磁気センサ電圧を示す図であり、(b)において(b1)は2階微分波形を示す図で(b2)は加速度センサ出力に基づく加速度波形を示す図であり、(c)は胸部変位を示す図である。
【図7】対象物をバネとした場合の加速度センサによる出力の2階積分値の変化の説明図である。
【図8】対象物をバネとした場合において、(a)は磁気センサ出力に基づいて算出した変位を示す図であり、(b)は変位センサの出力を示す図である。
【図9】硬度計算装置による処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【図10】硬度計算装置によるバネ定数の計算の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】(a)は2つの接触部を有する測定装置の構造例の模式図で、(b)は接触部のほかに液圧測定部を有する測定装置の構造例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、説明や図示の都合上、「V(ボルト)」と「mV(ミリボルト)」など、単位のスケールが異なっている部分がある。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る硬度計算システム1000は、測定装置1と硬度計算装置2とを備えて構成される。なお、図1の測定装置1では、図2の測定装置1と比較して、構成の一部の図示を省略している。
ここで、併せて図2も参照しながら、測定装置1の構成と動作原理について説明する。測定装置1は、受信コイル11(磁場検知手段)を有する本体部14と、発信コイル12(磁場発生手段)および加速度センサ13を有する接触部15と、バネ16(弾性体)と、を備えて構成される。なお、受信コイル11と発信コイル12とを合わせて磁気センサ19と称する。
【0014】
接触部15は、硬度の計算時に、測定装置1の操作者によって、対象物である人体の胴体B(ここでは胸部を想定)が凹むように胴体Bに押し付けられる部位である。なお、本体部14と接触部15は、剛性を有する。加速度センサ13は、その押し付け方向の動きの加速度の情報を検出する。ここで、胴体Bはバネ的性質とダンパ的性質を有するが、バネ的性質のほうが支配的であるので、近似的に、胴体Bをバネ定数がKのバネ17であると考える。このバネ17のバネ定数K(硬度)が、本実施形態での計算対象である。
【0015】
磁気センサ19は、測定装置1によって胴体Bへ加えられた圧力の大きさに応じた電圧の情報を出力する。そのため、受信コイル11と発信コイル12は、お互いに対向するように配置されている。そして、本体部14と接触部15の間には、バネ定数がK’(既知)のバネ16が配置されている。なお、K’>Kの関係が成立するように、バネ16を選択する。そうしないと、本体部14に圧迫の力Fが加えられたときに(図2参照)、本体部14と接触部15が接してしまい、磁気センサ19としての役割が損なわれるからである。なお、例えば、本体部14と接触部15との間の距離Dは2mm程度で、本体部14に圧迫の力Fが加えられたときの、バネ16の縮み量は0.5mm程度となるように設計すればよい。
【0016】
次に、図2を参照して、磁気センサ19および周辺部品の動作について説明する。まず、交流発振源31は、特定の周波数(例えば、20kHz)を持つ交流電圧を生成する。その交流電圧はアンプ32によって特定の周波数を持つ交流電流に変換され、その変換された交流電流が発信コイル12に流れる。発信コイル12を流れる交流電流によって発生した磁場は、受信コイル11に誘起起電力を発生させる。
【0017】
誘起起電力によって受信コイル11に発生した交流電流(周波数は交流発振源31によって生成された交流電圧の周波数と同じ。)は、プリアンプ33によって増幅され、増幅後の信号が検波回路34に入力される。検波回路34では、交流発振源31によって生成された特定の周波数又は2倍周波数によって、前記した増幅後の信号の検波を行う。そのため、交流発振源31の出力を、参照信号35として検波回路34の参照信号入力端子に導入する。また、検波回路34を用いずに全波整流回路を用いた動作方式にしてもよい。検波回路34(または整流回路)からの電圧の情報(出力信号)は、ローパスフィルタ36を通過した後、硬度計算装置2の駆動回路21(図1参照)に導入される。
【0018】
なお、本体部14に加えられる圧力(力F)と、ローパスフィルタ36から駆動回路21に導入される出力信号によって表される電圧の大きさとの関係は、図4の線4a(破線)に示す通りである。線4aが直線的であるのは、バネ16のバネ定数K’が大きく、本体部14への圧力に対するバネ16の縮み量が小さいためである。この線4aを、圧力が0のときに電圧が0になるように補正して線4b(実線)とすることで、圧力と電圧との関係を、原点を通る比例関係にすることができる。この補正は、例えば、後記する処理部23によって行うことができる。また、磁気センサ19が出力する電圧の情報に対する、胴体Bへ加えられている圧力の比を示す変換係数を、以下、電圧・圧力変換係数(Cmp[N/mV])と称し、この値は予め実験によって算出しているものとする。
【0019】
次に、図1に戻って、硬度計算装置2について説明する。硬度計算装置2は、コンピュータ装置であり、駆動回路21,22、処理部23、記憶部24、音声発生部25、表示部26、電源部27および入力部28を備えて構成される。
【0020】
駆動回路21は、測定装置1の受信コイル11からローパスフィルタ36(図2参照)などを経由して受信した電圧の情報を処理部23に伝える。
駆動回路22は、測定装置1の加速度センサ13から受信した加速度の情報を処理部23に伝える。
【0021】
処理部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって実現され、2階微分波形作成部231、波形比較部232、計算部233および判定部234を備える。以下、それらの処理について、図5〜図7も参照しながら説明する。
【0022】
図5に示すように、バネ定数が0.935kgf/mmのバネを用いた場合において、加速度センサ13による出力は(a)に示すようになり、磁気センサ19による出力は(b)に示すようになり、磁気センサ19の代わりに圧力センサ(不図示)を用いた場合の出力は(c)に示すようになり、リファレンスとしてのレーザセンサなどの変位センサ(不図示)による出力(変位の真値(正しい値))は(d)のようになる。
【0023】
なお、本実施形態の目的は、対象物(図2のバネ17)のバネ定数(硬度)を計算することであるが、そのために、まず、図5の(a)、(b)、(c)に示す出力の情報のうち少なくとも1つ以上を用いて、(d)に示す情報に極力近い情報を得ることを考える。そして、その得た情報を使って、対象物(図2のバネ17)のバネ定数(硬度)を計算する。
【0024】
つまり、レーザセンサなどの変位センサを用いないで対象物のバネ定数(硬度)を計算するために、加速度センサ13と磁気センサ19(または圧力センサ)による情報を用いる。変位センサを用いないことの理由としては、例えば、状況により使用が困難であることや、高価であることなどが挙げられる。なお、例えば、従来技術で行っていたように、加速度センサ13の出力を2階積分すると、図7に示すように、2階積分値の誤差が時間の経過とともに大きくなり、実用に耐えないので、本実施形態ではその方法を用いない。
【0025】
図5において、(b)に示す磁気センサ19による出力の波形と、(d)に示す変位センサの出力による波形とを比較すると、縦軸の単位や振幅の大きさは異なっているが、概形はよく似ていて、また、周波数は同じである。したがって、(b)に示す磁気センサ19による出力の波形に所定の変換係数(以下、「電圧・変位変換係数(Cmd[mm/mV])」と称する。)を乗算してやれば、(d)に示す変位センサの出力による波形と近似することができる。電圧・変位変換係数Cmdは、2階微分波形(詳細は後記)に対する、加速度波形のそれぞれの大きさの比を示す数値である。なお、(c)に示す圧力センサによる出力の波形と、(d)に示す変位センサの出力による波形とについても、同様である。
【0026】
ここで、対象物のバネ定数(硬度)の計算について、数式を使って説明する(適宜各図参照)。本体部14に圧迫の力(圧力)Fが加えられたときのバネ17の縮み量(変位量)をXとし(図2参照)、磁気センサ19による出力電圧をVとすると、次の式(1)、式(2)、式(3)が成立する。なお、作用反作用の法則により、接触部15と胴体Bとの接触部分にも、力(圧力)Fがかかる。
F=K×X ・・・式(1)
X=Cmd×V ・・・式(2)
F=Cmp×V ・・・式(3)
【0027】
式(1)は、フックの法則を表す式である。
式(2)は、磁気センサ19による出力電圧Vに、電圧・変位変換係数Cmdを乗算することで、変位量Xを得ることができることを表す式である。
式(3)は、磁気センサ19による出力電圧Vに、電圧・圧力変換係数Cmpを乗算することで、圧力Fを得ることができることを表す式である。
【0028】
そして、式(1)に式(2)および式(3)を代入して整理すると、次の式(4)を得ることができる。
K=Cmp/Cmd ・・・式(4)
つまり、電圧・圧力変換係数Cmpを電圧・変位変換係数Cmdで除算することで、対象物のバネ定数K(硬度)を計算することができる。
【0029】
図1に戻って、記憶部24は、各種情報を記憶する手段であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などによって実現される。記憶部24は、実験によって算出された電圧・圧力変換係数Cmpを予め記憶している。
【0030】
音声発生部25は、音声を発生させる手段であり、例えばスピーカによって実現される。音声発生部25は、例えば、測定装置1による測定の開始時や終了時に、ビープ音を発生させる。
表示部26は、各種表示を行う手段であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube) Displayによって実現される。表示部26には、各種の波形、対象物の硬度、硬度を視覚化したインジケータなどが表示される。
【0031】
電源部27は、硬度計算装置2における電源供給手段である。
入力部28は、各種情報入力のためにユーザによって操作される手段であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。
【0032】
ここで、図3を参照して、測定装置1の構造例について説明する。なお、図2で説明した事項については、説明を適宜省略する。測定装置1a(1)は、全体がペンシル型で、本体部14と接触部15とから構成されている。
【0033】
本体部14は、発信コイル12、発信コイル12を搭載するコイル基板120、発信コイル12および受信コイル11と接続される動作回路基板130、電池18、硬度計算の開始時等に操作される動作ボタン190、表示部26を備えている。
【0034】
接触部15は、受信コイル11、加速度センサ13、受信コイル11および加速度センサ13を搭載するコイル基板110を備えている。
コイル基板110とコイル基板120の間には、1本から4本のバネ16a(16)が配置されている。簡易な方式としては、バネ16a(16)を1個として、コイル基板110と発信コイル12のコイル直径と同じ直径以上を持つバネ16a(16)を使用することができる。バネ16a(16)を1個の構成とするとコイル基板110と発信コイル12のコイルをバネ16a(16)内部に配置でき、小型化が可能となる。
【0035】
測定装置1a(1)は、対象物が凹むように接触部15が対象物に押し付けられた際、バネ16a(16)が縮んで発信コイル12と受信コイル11とが近づき、受信コイル11が検知する磁場の大きさが増加することで、接触部15へ加えられた圧力の大きさに応じた電圧の情報を受信コイル11から出力する。また、測定装置1a(1)は、全体がペンシル型であることで、コンパクトで使いやすい。
【0036】
次に、図9のフローチャートを参照して(適宜他図参照)、硬度計算装置2の処理について説明する。
まず、操作者によって動作ボタン190が操作される(ステップS1)。
ここでは、その後、操作者によって、測定装置1a(1)の接触部15が対象物に数回押し付けられたものとする。
【0037】
そして、硬度計算装置2の処理部23は、測定装置1a(1)の接触部15が対象物に押し付けられるたびに、その測定装置1a(1)からの情報に基づいて対象物のバネ定数(硬度)を計算する(ステップS2。詳細は図10で後記)。
【0038】
次に、硬度計算装置2の処理部23は、ステップS2で計算した複数回分のバネ定数について、平均値や分散を計算する(ステップS3)。
次に、硬度計算装置2の処理部23の判定部234は、ステップS3で計算した平均値や分散に基づいて、それらの値が異常値か否かを判定し(ステップS4)、Yesの場合はステップS5に進み、Noの場合はステップS6に進む。なお、異常値か否かの判定は、例えば、予め設定しておいた閾値と比較することにより実現できる。また、ステップS4でYesの場合(異常値の場合)とは、例えば、測定装置1を持つ手の震えなどによって、加速度センサ13の加速度の検知精度が低下した場合が考えられる。
【0039】
ステップS5において、硬度計算装置2の処理部23は、表示部26に計測やり直しのメッセージを表示させ、ステップS2に戻る。
【0040】
ステップS6において、硬度計算装置2の処理部23は、表示部26にバネ定数(硬度)を表示させ、処理を終了する。ここでは、例えば、バネ定数の平均値を表示すればよい。
【0041】
次に、図10を参照して、硬度計算装置2による対象物のバネ定数(硬度)の計算の処理(図9のステップS2の処理)について説明する。なお、図9の説明では、ステップS2でバネ定数(硬度)の計算を複数回行うものとしたが、この図10では、バネ定数(硬度)の1回の計算について説明する。
【0042】
まず、処理部23は、磁気センサ19から取得した電圧の情報に基づく電圧波形と、加速度センサ13から取得した加速度の情報に基づく加速度波形を取得する(ステップS21)。
【0043】
次に、2階微分波形作成部231は、電圧波形を2階微分し、2階微分波形を作成する(ステップS22。図6の(a)と(b1)参照)。
【0044】
次に、波形比較部232は、2階微分波形(図6の(b1)参照)と加速度波形(図6の(b2)参照)を比較して比較結果を出力し、計算部233は、その比較結果に基づいて、電圧・変位変換係数Cmdを計算する(ステップS23)。具体的には、例えば、次の式(5)を用いて電圧・変位変換係数Cmdを計算することができる(図6(b)参照)。
【数1】

【0045】
次に、計算部233は、電圧・圧力変換係数Cmpを電圧・変位変換係数Cmdで除算する(式(4)参照)ことで、対象物のバネ定数K(硬度)を計算し(ステップS24)、処理を終了する。
【0046】
このように、本実施形態の硬度計算システム1000によれば、磁気センサ19から取得した電圧の情報に基づいて作成した2階微分波形と、加速度センサ13から取得した加速度の情報に基づく加速度波形と、を比較して電圧・変位変換係数Cmdを計算し、予め求めている電圧・圧力変換係数Cmpを電圧・変位変換係数Cmdで除算して対象物のバネ定数(硬度)を計算することで、対象物の押圧時のくぼみ方の特性に関係なく、対象物の硬度を高精度で計算することができる。特に、加速度センサ13の出力を2階積分する従来技術に比べて、大きく精度を上げることができる。また、磁気センサ19を用いることで、測定装置1の小型化や低価格化を容易に実現できる。
【0047】
(変形例)
次に、測定装置1の変形例について説明する。この変形例では、磁気センサ19の代わりに、圧力センサ(不図示)を使用する。圧力センサとしては、例えば、ひずみゲージ(ロードセル)式、圧電式、容量式、電磁式、音叉式、ピエゾ半導体式などの圧力センサを用いればよい。
【0048】
そして、図10のフローチャートにおいて、ステップS22では電圧波形の代わりに圧力波形を2階微分することで2階微分波形を作成し、ステップS24では電圧・圧力変換係数Cmpを「1」(電圧から圧力への変換が不要のため)としてバネ定数を計算すればよい。このようにして、磁気センサ19の代わりに圧力センサを用いても、磁気センサ19の場合と同様に、対象物の押圧時のくぼみ方の特性に関係なく、対象物のバネ定数(硬度)を高精度で計算することができる。
【0049】
また、図11(a)に示すように、2チャンネル、つまり、接触部15を2つ有する測定装置1b(1)を用いてもよい。そうすれば、対象物における2箇所のバネ定数を同時に計算できるので、その平均値を用いたり、対象部位と周囲部位のバネ定数の差を計算したり、精度がよいほうの値のみを用いたりすることができる。
【0050】
(応用例)
前記した実施形態では、対象物を人体の胴体(胸部)としたが、それ以外の対象物に対しても硬度計算システム1000を適用することができる。
例えば、産婦人科分野で、妊婦の子宮口の硬さ計測に適用することができる。その場合、例えば、超音波診断装置に付属する構成として測定装置1を用いてもよい。
【0051】
また、整形外科分野で、人体の各所の筋肉の硬さ計測に適用することができる。具体的には、筋肉の緊張や凝りの程度を計測することができる。
また、美容分野で、人体の肌の硬さ計測に適用することができる。
【0052】
また、外科分野で、前記したペンシル型のほかに、内視鏡型、指先装着型などによって、通常の外科手術や腹腔鏡手術のときに腸や肝臓などの臓器の硬さ計測に適用することができる。
【0053】
また、心臓内科分野で、心臓内壁の硬さ計測や動脈硬化の進行度計測に適用することができる。その場合、超小型のコイル(受信コイル11、発信コイル12)や加速度センサ13等を作り、心臓カテーテルの先端部に測定装置1を装着すればよい。具体的には、例えば、図11(b)に示すように、接触部15のほかに、血管内の液圧を計算するための液圧測定部150を備えた測定装置1c(1)を用いればよい。そして、接触部15によって測定した対象物の硬度を、液圧測定部150によって測定した液圧の大きさに応じて補正すればよい。なお、測定装置1c(1)では、液圧によって接触部15や液圧測定部150が押されることを考慮して、その押される力の反対方向に作用するバルーン等の反発部材をそれらの根元部分に設置してもよい。
【0054】
以上で本実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
例えば、測定装置1における弾性体の例としてバネ16を用いたが、それ以外に、ゴムなどの他の弾性体を用いてもよい。
【0055】
また、図9のフローチャートでは、ステップS1で動作ボタン190の操作があったことを処理開始の契機としたが、これに限らず、何も操作しなくても、測定装置1の接触部15にある程度の圧力がかかったことを処理開始の契機としてもよい。
【0056】
また、硬度の異なる複数の対象物に対応するために、バネ16の硬さが異なる複数の測定装置1を用意しておいたり、あるいは、同一の測定装置1に対して硬さが異なるバネ16を付け替えて校正するようにしたりしておくこともできる。
また、硬度を測定する対象物は、人体以外であってもよい。
その他、具体的な構成や処理について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,1a,1b,1c 測定装置
2 硬度計算装置
11 受信コイル(磁場検知手段)
12 発信コイル(磁場発生手段)
13 加速度センサ
14 本体部
15 接触部
16,16a バネ(弾性体)
17 バネ
18 電池
19 磁気センサ
21,22 駆動回路
23 処理部
24 記憶部
25 音声発生部
26 表示部
27 電源部
28 入力部
31 交流発振源
32 アンプ
33 プリアンプ
34 検波回路
35 参照信号
36 ローパスフィルタ
110 コイル基板
120 コイル基板
130 動作回路基板
150 液圧測定部
190 動作ボタン
231 2階微分波形作成部
232 波形比較部
233 計算部
234 判定部
1000 硬度計算システム
B 胴体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の硬度を計算する硬度計算システムであって、
前記硬度の計算時に前記対象物が凹むように前記対象物に押し付けられる測定装置と、前記測定装置からの情報に基づいて前記硬度を計算する硬度計算装置と、を備えており、
前記測定装置は、
前記対象物における前記測定装置との接触部分の押し付け方向の動きの加速度の情報を検出する加速度センサと、
前記対象物における前記測定装置との接触部分へ加えられた圧力の大きさに応じた電圧の情報を出力する磁気センサと、を備えており、
前記硬度計算装置は、
前記磁気センサが出力する電圧の情報に対する、前記接触部分へ加えられている圧力の比を示す電圧・圧力変換係数を記憶する記憶部と、
前記磁気センサから取得した電圧の情報に基づく電圧波形を2階微分することにより、2階微分波形を作成する2階微分波形作成部と、
前記作成された2階微分波形と、前記加速度センサから取得した加速度の情報に基づく加速度波形とを比較し、比較結果を出力する波形比較部と、
前記出力された比較結果に基づいて、前記作成された2階微分波形に対する、前記加速度波形の大きさの比を示す電圧・変位変換係数を計算し、
前記電圧・圧力変換係数を前記電圧・変位変換係数で除算することで、前記硬度を計算する計算部と、
を備えることを特徴とする硬度計算システム。
【請求項2】
前記磁気センサは、
磁場を発生させる磁場発生手段と、
前記対象物よりも剛性が大きい弾性体によって前記磁気発生手段と直接的または間接的に接続され、前記磁場発生手段が発生させた磁場を検知して当該磁場の大きさに応じた電圧の情報を出力する磁場検知手段と、を備えており、
前記対象物が凹むように前記測定装置が前記対象物に押し付けられた際、前記弾性体が縮んで前記磁場発生手段と前記磁場検知手段とが近づき、前記磁場検知手段が検知する磁場の大きさが増加することで、前記対象物における前記測定装置との接触部分へ加えられた圧力の大きさに応じた電圧の情報を前記磁場検知手段から出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬度計算システム。
【請求項3】
対象物の硬度を計算する硬度計算システムであって、
前記硬度の計算時に前記対象物が凹むように前記対象物に押し付けられる測定装置と、前記測定装置からの情報に基づいて前記硬度を計算する硬度計算装置と、を備えており、
前記測定装置は、
前記対象物における前記測定装置との接触部分の押し付け方向の動きの加速度の情報を検出する加速度センサと、
前記対象物における前記測定装置との接触部分へ加えられた圧力の情報を出力する圧力センサと、を備えており、
前記硬度計算装置は、
前記圧力センサから取得した圧力の情報に基づく圧力波形を2階微分することにより、2階微分波形を作成する2階微分波形作成部と、
前記作成された2階微分波形と、前記加速度センサから取得した加速度の情報に基づく加速度波形とを比較し、比較結果を出力する波形比較部と、
前記出力された比較結果に基づいて、前記作成された2階微分波形に対する、前記加速度波形の大きさの比を示す電圧・変位変換係数を計算し、
前記電圧・変位変換係数の逆数をとることで、前記硬度を計算する計算部と、
を備えることを特徴とする硬度計算システム。
【請求項4】
対象物の硬度を計算する硬度計算システムによる硬度計算方法であって、
前記硬度計算システムは、前記硬度の計算時に前記対象物が凹むように前記対象物に押し付けられる測定装置と、前記測定装置からの情報に基づいて前記硬度を計算する硬度計算装置と、を備えており、
前記測定装置は、
前記対象物における前記測定装置との接触部分の押し付け方向の動きの加速度の情報を検出する加速度センサと、
前記対象物における前記測定装置との接触部分へ加えられた圧力の大きさに応じた電圧の情報を出力する磁気センサと、を備えており、
前記硬度計算装置は、
前記磁気センサが出力する電圧の情報に対する、前記接触部分へ加えられている圧力の比を示す電圧・圧力変換係数を記憶する記憶部と、2階微分波形作成部と、波形比較部と、計算部と、を備えており、
前記2階微分波形作成部は、
前記磁気センサから取得した電圧の情報に基づく電圧波形を2階微分することにより、2階微分波形を作成し、
前記波形比較部は、
前記作成された2階微分波形と、前記加速度センサから取得した加速度の情報に基づく加速度波形とを比較し、比較結果を出力し、
前記計算部は、
前記出力された比較結果に基づいて、前記作成された2階微分波形に対する、前記加速度波形の大きさの比を示す電圧・変位変換係数を計算し、
前記電圧・圧力変換係数を前記電圧・変位変換係数で除算することで、前記硬度を計算する
ことを特徴とする硬度計算方法。
【請求項5】
前記磁気センサは、
磁場を発生させる磁場発生手段と、
前記対象物よりも剛性が大きい弾性体によって前記磁気発生手段と直接的または間接的に接続され、前記磁場発生手段が発生させた磁場を検知して当該磁場の大きさに応じた電圧の情報を出力する磁場検知手段と、を備えており、
前記対象物が凹むように前記測定装置が前記対象物に押し付けられた際、前記弾性体が縮んで前記磁場発生手段と前記磁場検知手段とが近づき、前記磁場検知手段が検知する磁場の大きさが増加することで、前記対象物における前記測定装置との接触部分へ加えられた圧力の大きさに応じた電圧の情報を前記磁場検知手段から出力する
ことを特徴とする請求項4に記載の硬度計算方法。
【請求項6】
対象物の硬度を計算する硬度計算システムによる硬度計算方法であって、
前記硬度計算システムは、前記硬度の計算時に前記対象物が凹むように前記対象物に押し付けられる測定装置と、前記測定装置からの情報に基づいて前記硬度を計算する硬度計算装置と、を備えており、
前記測定装置は、
前記対象物における前記測定装置との接触部分の押し付け方向の動きの加速度の情報を検出する加速度センサと、
前記対象物における前記測定装置との接触部分へ加えられた圧力の情報を出力する圧力センサと、を備えており、
前記硬度計算装置は、
2階微分波形作成部と、波形比較部と、計算部と、を備えており、
前記2階微分波形作成部は、
前記圧力センサから取得した圧力の情報に基づく圧力波形を2階微分することにより、2階微分波形を作成し、
前記波形比較部は、
前記作成された2階微分波形と、前記加速度センサから取得した加速度の情報に基づく加速度波形とを比較し、比較結果を出力し、
前記計算部は、
前記出力された比較結果に基づいて、前記作成された2階微分波形に対する、前記加速度波形の大きさの比を示す電圧・変位変換係数を計算し、
前記電圧・変位変換係数の逆数をとることで、前記硬度を計算する
ことを特徴とする硬度計算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−76658(P2013−76658A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217321(P2011−217321)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)