説明

硬貨処理装置

【課題】硬貨処理の全ての動作において利用される共通搬送部での硬貨ブリッジの発生を防止する硬貨処理装置を簡素な構造で実現する。
【解決手段】共通搬送部1は、搬送ベルト101、カバー部102を備える。カバー部102は搬送ベルト101の両側端に配置された側壁121A,121Bと、搬送ベルト101の搬送方向の始端側に配置された始端壁122とを備える。側壁121A,121Bにはベルト押さえ部123A,123Bをそれぞれ形成し、ベルト押さえ部123Aは搬送ベルト101に沿って略全長に亘り形成し、ベルト押さえ部123Bは始端壁122側の所定長さLcutに亘り切り欠き部を備えた形状で形成する。また、始端壁122には、右側壁121Aとの接合部にベルト押さえ部124を形成するのみで、搬送ベルト101の幅方向にはベルト押さえ部を形成していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入金、出金、補充、精査等の硬貨処理を行う硬貨処理装置、特に、各動作時に必ず硬貨が通過する搬送経路での硬貨ブリッジによる搬送ミスを防止する硬貨処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ATM(自動預け払い機)等の自動で貨幣を処理する装置には、硬貨の入金、出金処理さらには補充、精査処理を行う硬貨処理装置が備えられている。硬貨処理装置は、顧客等外部からの硬貨の挿入や、外部への硬貨の繰り出し口となる入出金部と、硬貨の種類毎に所定枚数をストックしておく金種別スタッカと、補充時に硬貨を挿入し、精査時に硬貨を排出するカートリッジと、を備える。そして、硬貨処理装置はこれらの各部間で硬貨を搬送することにより各種の処理を行う。
【0003】
このような硬貨処理装置では、搬送経路の特定位置で複数の硬貨によるブリッジが発生するという問題がある。この問題を解決する方法として、特許文献1では、多数の硬貨が挿入されるタンクの側壁の少なくとも1つを垂直に形成することで、タンク内での硬貨によるブリッジの発生を解消している。また、特許文献2では、多数の硬貨が挿入されるタンクに硬貨撹拌手段を備えることで、タンク内での硬貨によるブリッジの発生を解消している。
【特許文献1】特開2001−353261公報
【特許文献2】特開平11−328467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前述の各従来技術は、タンクから硬貨を排出する際に発生するブリッジを防止することができるが、次に示すように、入金、出金、補充、精査の各動作に硬貨が搬送される共通搬送部でのブリッジを防止することはできない。
【0005】
図5は硬貨処理装置の概略構成を示す構成図である。なお、硬貨処理装置全体の構成および動作は実施形態に記載するので、ここでは省略する。
【0006】
このような構造の硬貨処理装置では、各硬貨処理の全てにおいて共通搬送部1に硬貨が持ち込まれる。具体的に、共通搬送部1には、入金処理時は一括一時保留部10から硬貨が投下され、出金処理、精査処理時は金種別スタッカ6から横搬送ベルト7を介して硬貨が搬入され、補充処理時は運用カートリッジ11から縦搬送部13を介して硬貨が挿入される。そして、これらの場合、通常は多数の硬貨が同時に搬入される。
【0007】
図6は従来の共通搬送部の構成を示す構成図である。
【0008】
共通搬送部1は、搬送ベルト101と、カバー部102と、搬送ローラ103と、を備える。カバー部102は搬送ベルト101を略覆う形状で形成されており、搬送ベルト101の搬送方向の両側部に形成された側壁121と、搬送ベルト101の搬送方向の始点端側に形成された始点壁122とを備える。側壁121は、搬送ベルト101の搬送面に垂直な方向の一部が搬送ベルト101側に突出して搬送ベルト101の上面に接触するベルト押さえ部123を、搬送ベルト101の略全長に亘り備えている。始点壁122も、搬送ベルト101の搬送面に垂直な方向の一部が搬送ベルト101側に突出して搬送ベルト101の上面に接触するベルト押さえ部124を、搬送ベルト101の全幅に亘り備えている。
【0009】
ところが、このような共通搬送部1を備える構造では、搬送ベルト101の上方から複数の硬貨が挿入された場合に、図7に示すような硬貨のブリッジが発生する。
図7は硬貨ブリッジの状態を示す概念図であり、(A)は2点支持ブリッジを示し、(B)は3点支持ブリッジを示す。
搬送ベルト101の幅の半分よりも径の大きい硬貨が投入された場合、図7(A)に示すように、対向する側壁121のベルト押さえ部123にそれぞれの硬貨500の一端が接し、これに対向する端部同士が接触して、2枚の硬貨500によるブリッジが形成される。このブリッジは2枚の硬貨500で側壁121のベルト押さえ部123に接した状態(2点支持状態)で安定であるため、搬送ベルト101が駆動してもこのままの状態を維持してしまう。
【0010】
また、同様の形状の硬貨500が投入された場合、図7(B)に示すように、対向する側壁121のベルト押さえ部123と、これら側壁121に垂直な始端壁122のベルト押さえ部124にそれぞれの硬貨500の1端と2端とが接し、各硬貨500の所定位置同士が接触することで、2枚の硬貨500によるブリッジが形成される。このブリッジは2枚の硬貨500で側壁121のベルト押さえ部123および始端壁122のベルト押さえ部124に接した状態(3点支持状態)で安定であるため、搬送ベルト101がくどうしてもこのままの状態を維持してしまう。特に、3点支持の場合、2点支持よりもブリッジの安定度が高くなり、簡単にはブリッジが崩れることはない。
【0011】
このようなブリッジが発生することで、入金、出金、精査時に入出金する金額に間違いが発生して、装置の信頼性を低下させてしまう。
【0012】
したがって、この発明の目的は、硬貨処理の全ての動作において利用される共通搬送部での硬貨ブリッジの発生を防止する硬貨処理装置を簡素な構造で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、各部から投入される硬貨を所定方向に搬送する硬貨搬送手段を備えた硬貨処理装置において、硬貨搬送手段は、硬貨を所定方向に搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトの両側部に沿って形成された側壁および搬送方向の始端側に搬送方向に垂直な壁面を有する始端壁を有するカバー部材と、を備える。そして、始端壁および側壁は、投入される複数の硬貨によりブリッジが形成されても、該ブリッジを形成する複数の硬貨の1点が搬送ベルトに接する形状で形成されることを特徴としている。
【0014】
この構成では、硬貨搬送手段に硬貨が挿入されて、複数の硬貨によるブリッジが形成されようとしても、そのブリッジを構成する硬貨が硬貨搬送手段に接する点のうちの少なくとも1点が、駆動される搬送ベルト上に存在する。このため、搬送ベルトの動きに応じてブリッジの支持点の1点が移動して、安定したブリッジにはならない。
【0015】
また、この発明の硬貨処理装置は、カバー部材の始端壁および側壁に、ブリッジを形成する複数の硬貨の1点が搬送ベルトに接する形状の切り欠き部を備えたベルト押さえ部を有することを特徴としている。
【0016】
この構成では、搬送ベルトに対してベルト押さえ部が設置されることで硬貨が搬送ベルトから落下することが抑制されるが、ベルト押さえ部に前記切り欠き部を備えることで、さらに、硬貨によるブリッジの少なくとも1つの支持点が搬送ベルト上に存在させられる。このため、搬送ベルトの動きに応じてブリッジの支持点の1点が移動して、安定したブリッジにはならない。
【0017】
また、この発明の硬貨処理装置は、切り欠き部を始端壁から両側壁に亘る形状で形成することを特徴としている。
【0018】
この構成では、互いに平行な両側壁の少なくとも一方の側壁のベルト押さえ部と、該両側壁に垂直な始端壁のベルト押さえ部との両方に切り欠き部を形成することで、支持点により三角形が形成される3点支持等における支持点の少なくとも1点を搬送ベルト上にすることができる。このため、搬送ベルトの動きに応じてブリッジの支持点の1点が移動して、安定したブリッジにはならない。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、硬貨搬送手段に複数の硬貨が搬入されてブリッジが形成されそうになっても、ブリッジを支持する少なくとも1点が搬送ベルト上に有ることで、支持点が移動し、ブリッジが不安定になり崩れる。これにより、複数の硬貨によるブリッジの形成を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る硬貨処理装置について図を参照して説明する。
図1は本実施形態の硬貨処理装置の共通搬送部1の構造を示す図であり、(A)は側面から見た構成図であり、(B)は(A)におけるA−A断面図であり、(C)は(A)におけるB−B断面図であり、(D)は搬送ベルトの搬送面側から見た断面図である。なお、図1に示す共通搬送部1を備える硬貨処理装置は、図5に示す硬貨処理装置と共通搬送部を除き同じ構成であるので、図5に基づいて説明する。
【0021】
硬貨処理装置の共通搬送部1は、搬送ベルト101と、カバー部102と、排出ローラ103とを備える。搬送ベルト101は、図示しないモータ等の駆動源から駆動力を与えられ、所定方向に駆動される(図1の矢印方向)。カバー部102は、搬送ベルト101の両側部に、搬送方向の略全長に亘って形成される側壁121A,121Bと、搬送方向の始点側の所定位置に形成される始端壁122とを備える。
【0022】
各側壁121A,121Bは、搬送ベルト101付近で搬送面に略垂直な壁面を有する形状で形成されており、搬送ベルト101の搬送面(上面)側に、壁面から突出する形状のベルト押さえ部123A,123Bがそれぞれ形成されている。ベルト押さえ部123A,123Bは、底面が搬送ベルト101の側端部に所定幅で当接し、突出する壁面から徐々に厚み(高さ)が低くなる形状、すなわち、上面の断面が円弧状に形成されている。また、搬送ベルト101の搬送方向右手側の側壁121Aのベルト押さえ部123Aは、搬送方向の略全長に亘って形成されているが、搬送方向左手側の側壁121Bのベルト押さえ部123Bは、始端壁122から所定長さLcutに亘り切り欠き部を有し、その他の部分では搬送方向の略全長に亘って形成されている。このため、図1の(B)、(C)に示すように、始端壁122から所定距離Lcut以上離れた位置(断面A−A)では、搬送ベルト101の両側端にベルト押さえ部123A,123Bが存在し、始端壁122から所定距離Lcut以下の位置(断面B−B)では、搬送ベルト101の一方の側端(右側端)にのみベルト押さえ部123Aが存在する形状となる。
【0023】
始端壁122は、搬送ベルト101付近で搬送面に略垂直な壁面を有する形状で形成されており、右側壁121Aのベルト押さえ部123Aに連続するコーナ部に、上面から見てR面状のベルト押さえ部124が形成されているが、他の部分、すなわち、始端壁122における搬送ベルト101の幅方向に平行な面から左側壁121Bとのコーナにかけてはベルト押さえ部が形成されていない。言い換えれば、始端壁122における右側壁121Aとのコーナを除く略全面に切り欠き部が形成されている。
【0024】
ここで、左側壁121Bのベルト押さえ部123Bに形成される切り欠き部の搬送方向の長さ(以下、単に「切り欠き部の長さ」と称す)は、搬送する各種の硬貨の径により設計される。
例えば、搬送する硬貨のうちで最も径の大きい硬貨(日本円では500円硬貨)500A,Bを用いて図2(A)に示す設計を行う。この場合、硬貨500A,500Bの2枚を用い、一方の硬貨500Aを、搬送ベルト101上に載置させた状態で右側壁121Aのベルト押さえ部123Aと始端壁122とに接触させる。次に、他方の硬貨500Bを、同じく搬送ベルト101上に載置させた状態で、先に載置した硬貨500Aと左側壁121Bとに接触させる。この状態で、始端壁122の壁面から硬貨500Bと左側壁121Bとの接点までの距離Lcoinと比較して、前記切り欠き部の長さLcutが長くなるように、該切り欠き部の長さLcutを設定する。また、この際、ベルト押さえ部123Bの始端壁122側の末端は、搬送方向逆方向に沿って先細り形状に形成されており、この先細り部が、前述の互いに接触させて載置させた2枚の硬貨500A,500Bに接触しない形状で形成されている。このような構造とすることで、後述する2枚の硬貨による安定した3点支持ブリッジを搬送ベルト101の駆動により防ぐことができる。
【0025】
また、搬送する硬貨のうちで所定の硬貨、例えば、最も径の小さい硬貨(日本円では1円硬貨)500C〜500Eを用いて図2(B)に示す設計を行う。この場合、硬貨500C〜500Eの3枚を用い、1枚の硬貨500Cを搬送ベルト101上に載置させた状態で、切り欠き部を有する左側壁121Bと始端壁122とに接触させる。次に、硬貨500Dを、同じく搬送ベルト101上に載置させた状態で、先に載置した硬貨500Cと右側壁121Aのベルト押さえ部123Aとに接触させる。さらに、硬貨500Eを、同じく搬送ベルト101上に載置させた状態で、先に載置した硬貨500Dと左側壁121Bとに接触させる。この状態で、硬貨500D,500Eの中心を結ぶ直線と左側壁121Bの壁面との交点に対して、この交点からベルト押さえ部123Bの先細り部への接線方向の成す角が90°よりも大きくなるように、切り欠き部およびベルト押さえ部123Bを形成する。このような構造とすることで、平面状のブリッジが形成されても、搬送ベルト101の駆動によって崩すことができる。具体的に説明すると、例えば、搬入された硬貨から硬貨500C〜500Eの3枚が、切り欠き部が形成された領域で平面ブリッジを形成する。このままでは安定ではないが、駆動されて搬送ベルト101が動くと硬貨500Eが左側壁121Bとともにベルト押さえ部123Bに接触する。この際、硬貨500Dと硬貨500Eとの中心を結ぶ中心線と、交点からベルト押さえ部123Bに向かう接線との成す角が90°以下であると、さらにベルト押さえ部123Bで平面ブリッジが支持されてしまい、安定化してしまう可能性がある。一方、本実施形態のように、前記中心線と接線との成す角が90°よりも大きければ、搬送ベルト101の移動に沿って硬貨500Eとベルト押さえ部123Bとの接点が移動し、平面ブリッジが不安定になって崩れる。
【0026】
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、硬貨のブリッジを防止する共通搬送部を構成することができる。
【0027】
このような共通搬送部1を備える硬貨処理装置は次に示すような動作処理を行う。
(1)入金処理
利用者が入金操作を行ってシャッター14が開き、入出金部2に硬貨が投入される。シャッター14が閉まると、投入された硬貨は、入出金部2から繰り出し部3に送られ、繰り出し部3から1枚ずつ硬貨識別部4に搬送される。硬貨識別部4は搬入された硬貨を順に識別して送り出す。この際、硬貨識別部4は識別結果から投入金額を検出する。送り出された硬貨は一括一時保留部10に一時的にストックされる。この時点で、図示しない表示器上に投入硬貨額が表示され、利用者により確認されると、一括一時保留部10にストックされた硬貨が共通搬送部1に投下される。共通搬送部1は、同時に投下された複数の硬貨を出金搬送部8に送り出す。
【0028】
この際、共通搬送部1では、図3に示すような2点支持ブリッジや図4に示すような3点支持ブリッジが一時的に発生する。
図3は共通搬送部1における2点支持ブリッジの構成を示す図であり、(A)が搬送方向の始端側から見た断面図(図1(D)に相当する位置)であり、(B)搬送面に対して垂直上方向から見た平面断面図である。
このように2枚の硬貨500により搬送ベルト101の幅方向に平行に開く形状のブリッジが形成される場合、このブリッジを構成する硬貨500はそれぞれベルト押さえ部123A上(図中の点501)と、左側壁121Bの壁面および搬送ベルト101(図中の点502)とで支持される。ここで、搬送ベルト101は、機能上、前述の搬送方向に連続的に動いているので、搬送ベルト101上の支持点502は搬送方向に移動する。これにより、ブリッジの支持が不安定になり、ブリッジが崩れる。すなわち、殆ど2点支持ブリッジが毛試製されることなく崩れる。この結果、2点支持ブリッジは安定して存在せず、2点支持ブリッジによる搬送ミスを防ぐことができる。
【0029】
図4は共通搬送部1における3点支持ブリッジの構成を示す図である。
このように2枚の硬貨500により搬送ベルト101の搬送方向に対して斜め方向に開くブリッジが形成される場合、このブリッジを構成する硬貨500の一方はベルト押さえ部123A(図中の点503)と、始端壁122および搬送ベルト101(図中の点504)とで支持され、他方の硬貨500は左側壁121Bおよび搬送ベルト101(図中の点505)で支持される。ここで、搬送ベルト101は、機能上、前述の搬送方向に動いているので、搬送ベルト101上の支持点504,505は搬送方向に移動する。これにより、ブリッジの支持が不安定になり、ブリッジが崩れる。すなわち、殆ど3点支持ブリッジが形成されることなく崩れる。この結果、3点支持ブリッジは安定して存在せず、3点支持ブリッジによる搬送ミスを防ぐことができる。
【0030】
このように確実に出金搬送部8へ搬送された硬貨は、出金識別部9、繰り出し部3、を介して再び硬貨識別部4に導かれる。硬貨識別部4で金種識別された硬貨は、入金搬送部5に搬送され、入金搬送部5は、識別結果に従って各硬貨を金種別スタッカ6にストックする。この際、金種別スタッカ6において満杯の硬貨が存在すれば、その硬貨は一括一時保留部10を介して一括スタッカ12に排出される。
【0031】
(2)出金処理
利用者の操作により出金処理が必要になると、出金額に相当する硬貨が選択されて、金種別スタッカ6から横搬送ベルト7に投下される。横搬送ベルト7は投下された硬貨を共通搬送部1に搬送する。共通搬送部1は搬入された硬貨を出金搬送部8に搬送する。この場合も、共通搬送部1が前述の構造であることからブリッジは発生せず、搬送ミスが発生することなく全ての硬貨が出金搬送部8に搬送される。出金搬送部8に搬送された硬貨は、出金識別部9に搬入され、出金識別部9は硬貨を入出金部2に搬送するとともに、搬入された硬貨の金種を識別して合計額を検出する。ここで、この合計額が指定された出金額と一致すれば、シャッター14が開かれて、利用者は硬貨を取り出すことができる。
【0032】
このような出金処理においても、共通搬送部1でブリッジが発生して搬送ミスが起こることを防ぐことができる。
【0033】
(3)補充処理
硬貨処理装置の保持者により補充が行われる場合、まず、運用カートリッジ11の全ての金種の硬貨が同時に投入される。投入された硬貨は、縦搬送部13により共通搬送部1に搬入される。共通搬送部1は搬入された硬貨を出金搬送部8に搬送する。この場合も、共通搬送部1が前述の構造であることからブリッジは発生せず、搬送ミスが発生することなく全ての硬貨が出金搬送部8に搬送される。このように出金搬送部8へ搬送された硬貨は、出金識別部9、繰り出し部3、を介して硬貨識別部4に導かれる。硬貨識別部4は各硬貨の金種を識別し、金種識別された硬貨は入金搬送部5に搬送され、入金搬送部5は、識別結果に従って各硬貨を金種別スタッカ6にストックする。この際、金種別スタッカ6において満杯の硬貨が存在すれば、その硬貨は一括一時保留部10を介して一括スタッカ12に排出される。
【0034】
このような補充処理においても、共通搬送部1でブリッジが発生して搬送ミスが起こることを防ぐことができる。
【0035】
(4)精査処理
硬貨処理装置の保持者により精査が行われる場合、金種別スタッカ6にストックされていた全ての硬貨が横搬送ベルト7に投下されて、共通搬送部1に搬入される。共通搬送部1は搬入された硬貨を出金搬送部8に搬送する。この場合も、共通搬送部1が前述の構造であることからブリッジは発生せず、搬送ミスが発生することなく全ての硬貨が出金搬送部8に搬送される。このように出金搬送部8へ搬送された硬貨は、出金識別部9、繰り出し部3、を介して硬貨識別部4に導かれる。硬貨識別部4は各硬貨の金種を識別して硬貨毎の合計を検出し、一括一時保留部10を介して各硬貨を運用カートリッジ11へ排出する。
【0036】
このような精査処理においても、共通搬送部1でブリッジが発生して搬送ミスが起こることを防ぐことができる。
【0037】
このように、本実施形態の共通搬送部を用いることで、どの硬貨処理を行う場合であっても、硬貨ブリッジを形成させず、搬送ミスを防止することができる。
【0038】
なお、前述の実施形態では、使用する硬貨のうちで最大径の硬貨と最小径の硬貨とを用いて、切り欠き部の設定を行ったが、目的とする仕様、例えば使用する硬貨の種類等、に応じて切り欠き部の形状を任意に設定することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態の硬貨処理装置の共通搬送部1の構造を示す図
【図2】共通搬送部1の切り欠き部の形状を示す説明図
【図3】共通搬送部1における2点支持ブリッジの構成を示す図
【図4】共通搬送部1における3点支持ブリッジの構成を示す図
【図5】硬貨処理装置の概略構成を示す構成図
【図6】従来の共通搬送部の構成を示す構成図
【図7】硬貨ブリッジの状態を示す概念図
【符号の説明】
【0040】
1−共通搬送部
101−搬送ベルト
102−カバー部
103−排出ローラ
121A,121B−側壁
122−始端壁
123A,123B,124−ベルト押さえ部
2−入出金部
3−繰り出し部
4−硬貨識別部
5−入金搬送部
6−金種別スタッカ
7−横搬送ベルト
8−出金搬送部
9−出金識別部
10−一括一時保留部
11−運用カートリッジ
12−一括スタッカ
13−縦搬送部
14−シャッター
15−電源
500,500A〜500E−硬貨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各部から投入される硬貨を所定方向に搬送する硬貨搬送手段を備えた硬貨処理装置において、
前記硬貨搬送手段は、硬貨を所定方向に搬送する搬送ベルトと、
搬送ベルトの両側部に沿って形成された側壁および搬送方向の始端側に前記搬送方向に垂直な壁面を有する始端壁を有するカバー部材と、を備え、
前記始端壁および前記側壁は、前記投入される複数の硬貨によりブリッジが形成されても、該ブリッジを形成する複数の硬貨の1点が前記搬送ベルトに接する形状で形成されている硬貨処理装置。
【請求項2】
前記カバー部材の始端壁および側壁は、前記ブリッジを形成する複数の硬貨の1点が前記搬送ベルトに接する形状の切り欠き部を備えたベルト押さえ部を有する請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記切り欠き部は前記始端壁から両側壁に亘る形状で形成されている請求項2に記載の硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−338104(P2006−338104A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159018(P2005−159018)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】