説明

硬貨払出装置

【課題】 硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒に設けた硬貨確認センサで確実に検知し、かつ払い出し不具合が発生しない構造が簡単に実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供する
【解決手段】 チェンジスライド10の移動方向前後に、リンク9に対するチェンジスライド10の相対的な位置を決める係止手段と、チェンジスライド10の移動を抗する移動抵抗手段とを具え、前記係止手段の係止および係止解除と、前記移動抵抗手段の抵抗および抵抗解除とを、前記チェンジスライドの移動に伴って行うとともに、前記係止手段は弾性力を有する係止部12と係止部12を係止する係止面9aとからなり、前記移動抵抗手段は弾性力を有する移動抵抗部13と傾斜面21aを有する凸部21とからなり、係止部12と移動抵抗部13とをチェンジスライド10と一体的に形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等の機器内部に配設された硬貨処理装置の硬貨払出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動販売機等の機器内部には、投入硬貨の真偽を判別するとともに、釣銭の額に応じた硬貨を払い出す硬貨処理装置が搭載されている。
【0003】
この硬貨処理装置の下部に配設される硬貨払出装置は、投入硬貨の正偽を判別して正偽貨を選別する硬貨選別部の下方にあって、該硬貨選別部から落下する硬貨を積載収納するための直線的かつ並列に設けられた複数の硬貨収納筒と、該硬貨収納筒全ての最下層にある硬貨を一枚ずつ引き出すペイアウトスライドと、このペイアウトスライド下方に配設され、当該ペイアウトスライドにより引き出された硬貨を載置し、この硬貨の落下払出を制御するチェンジスライドから構成されている。
【0004】
また、本出願人は、硬貨の払い出しに際して、前記硬貨収容筒内に蓄積された硬貨を最後の一枚まで有効的に釣銭として使用するとともに、硬貨の払い出しを迅速かつ確実に行うため、前記硬貨収納筒各々の裏側に硬貨確認センサを配置して、引き出した硬貨を検知し、さらに該硬貨確認センサを利用して、硬貨払い出し完了の確認を行う技術を開発している(特願2009−162817号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−162817号
【特許文献2】特許第3622517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような硬貨払出装置においては、該硬貨払出装置を備える硬貨処理装置全体の大きさから、前記硬貨収納筒からペイアウトスライドによって硬貨を引き出す量を最低限(硬貨径の6〜7割程度)にして、装置全体の小型化を図っている。したがって、硬貨収納筒を上から覗くと、硬貨が落下する穴である払出穴6aの一部を確認することができる(図4参照)。
【0007】
そのため、図14に示すように、硬貨収納筒5が空の状態では、上述した払出穴6aの一部に落下してきた硬貨50が入り込むことがあるが、硬貨50は回転することで引き出される前の正常な姿勢(水平の姿勢)になる。
【0008】
しかしながら、上述した特願2009−162817号の技術においては、硬貨を硬貨確認センサで検知し易くするため、図16に示すように、チェンジスライド110の硬貨載置部111の先端形状を円弧形状にすることによって硬貨50を載置する範囲を拡げている。
【0009】
ここで、上述した硬貨を引き出す最低限の量と、チェンジスライド110の硬貨載置範囲との関係をみると、硬貨載置範囲を拡大しないときと比べて、払出穴6aの一部は、チェンジスライド110の硬貨載置部111によって硬貨載置範囲を拡大した分だけ狭くなる(図14および図15参照)。
【0010】
この状態で、硬貨収納筒5が空の時に硬貨50が落下してくると、図15に示すように、硬貨50が払出穴6aに入り込み、硬貨50の一部が硬貨収容筒5とチェンジスライド110の硬貨載置部111の一部との間に引っ掛かって回転が出来ないこと(以下「硬貨立ち」と称する)が発生することがある。
【0011】
硬貨立ちが発生すると、さらに、後続の硬貨によっても姿勢が正常にならず払出不可能に至る、もしくは硬貨立ちした硬貨とペイアウトスライドとが衝突、ロックし、払出不可能に至る虞もある。
【0012】
いずれの現象も発生頻度は少ないが、硬貨払出機能が停止するという重大な問題であるために、解決すべき課題である。
【0013】
この問題を解決するために、硬貨払い出しの際に、チェンジスライドの移動開始時点をペイアウトスライドが移動を開始する時点よりも遅らせる方法が考えられる。
【0014】
この方法により、チェンジスライドが他と遅れて移動するまでの間にチェンジスライド上を硬貨が移動するので、チェンジスライドの硬貨載置範囲は、最初よりもチェンジスライドが移動する時には相対的に広くなる。
【0015】
すなわち、硬貨払い出しの際に、チェンジスライドの移動開始時点をペイアウトスライドが移動を開始する時点よりも遅らせると、最初の段階(待機状態)において硬貨がチェンジスライドに載っていなくても、移動に伴って徐々に載るようになるということであり、待機状態におけるコインベースとチェンジスライドとの間に硬貨が引っ掛からない程度の空間を保ちながら、払出確認センサで検知可能な硬貨の姿勢を維持することが可能となる。
【0016】
上記の「チェンジスライドの移動開始時点をペイアウトスライドが移動を開始する時点よりも遅らせる」という技術思想は、例えば、特許第3622517号に開示されている。
【0017】
この特許第3622517号には、収納筒内に積載収納された硬貨のうち最下層の硬貨を一枚ずつ引き出すメインスライダと、メインスライダに連動してディスペンサプレート上を滑動するストッパストライダと、このストッパスライダに設けられディスペンサプレートとの係止および係止解除する爪と、ストッパスライダを駆動手段により引き出すレバープッシャを有し、このレバープッシャで爪とディスペンサプレートとの係止を解除した後にストッパスライダを引き出して選択された硬貨を払い出すものであり、この特許第3622517号の図1には、引き出した硬貨を支えるストッパスライダが、硬貨を引き出すメインスライダの移動よりも遅れて移動することが記載されている。
【0018】
しかしながら、特許第3622517号においては、上記の技術思想を実現する為に、硬貨を引き出すメインスライダと硬貨を支えるストッパスライダの他に、爪、レバープッシャといった部品が必要であり、大掛かりなものである。
【0019】
つまり、「硬貨払い出しの際に、チェンジスライドの移動開始時点をペイアウトスライドが移動を開始する時点よりも遅らせる」ためには、特願2009−162817号の先願の技術と比較して、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたりする必要があり、特願2009−162817号の先願と同じ部品構成での実現が不可能である。
また、硬貨処理装置全体のサイズを大きくする必要が生じる虞もある。
【0020】
そこで、本発明は、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知し、かつ払い出し不具合が発生しない構造を、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するため、この発明では、チェンジスライドの移動方向前後に、ペイアウトスライドにより引き出された硬貨に対するチェンジスライドの相対的な位置を決める係止手段と、チェンジスライドの移動を抗する移動抵抗手段とを具え、前記係止手段の係止および係止解除と、前記移動抵抗手段の抵抗および抵抗解除とを、前記チェンジスライドの移動に伴って行い、前記係止手段は弾性力を有する係止部と該係止部を係止する係止面との一対からなり、かつ、前記係止部と前記係止面のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で前記リンクと一体的に形成し、前記移動抵抗手段は弾性力を有する移動抵抗部と該移動抵抗部を押圧する傾斜面を有する凸部との一対からなり、かつ、前記移動抵抗部と前記傾斜面を有する凸部のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で装置本体の筐体と一体的に形成するようにしている。
【発明の効果】
【0022】
この発明の硬貨払出装置では、チェンジスライドの移動方向前後に、ペイアウトスライドにより引き出された硬貨に対するチェンジスライドの相対的な位置を決める係止手段と、チェンジスライドの移動を抗する移動抵抗手段とを具え、前記係止手段の係止および係止解除と、前記移動抵抗手段の抵抗および抵抗解除とを、前記チェンジスライドの移動に伴って行い、前記係止手段は弾性力を有する係止部と該係止部を係止する係止面との一対からなり、かつ、前記係止部と前記係止面のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で前記リンクと一体的に形成し、前記移動抵抗手段は弾性力を有する移動抵抗部と該移動抵抗部を押圧する傾斜面を有する凸部との一対からなり、かつ、前記移動抵抗部と前記傾斜面を有する凸部のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で装置本体の筐体と一体的に形成するようにしたから、チェンジスライドに硬貨が載る範囲を、待機状態よりもチェンジスライドの移動開始時には相対的に広くすることができ、引き出した硬貨の体勢を払出時まで維持して、該硬貨を硬貨確認センサで確実に検知するとともに、払い出し不具合が発生しない構造を、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、この発明に係わる硬貨払出装置を搭載した硬貨処理装置本体の正面斜視図。
【図2】図2は、この発明に係わる硬貨払出装置の構成を示す要部破断概念断面図。
【図3】図3は、本発明に係わるチェンジスライドの上面斜視図および平面図。
【図4】図4は、待機状態における硬貨払出装置1の下部の構成を示した平面図。
【図5】図5は、待機状態における硬貨と硬貨載置部との関係を強調した立体断面図。
【図6】図6は、ペイアウトスライドの移動開始直後の状態における硬貨と硬貨載置部との関係を強調した立体断面図。
【図7】図7は、硬貨確認センサによる硬貨検知時における硬貨と硬貨載置部との関係を強調した立体断面図。
【図8】図8は、硬貨払出時における硬貨と硬貨載置部との関係を強調した立体断面図。
【図9A】図は9A、待機状態における硬貨払出装置の断面図。
【図9B】図は9B、図9Aのチェンジスライドの各部の働きを強調した拡大図。
【図10A】図10Aは、ペイアウトスライドの移動開始直後の状態における硬貨払出装置の断面図。
【図10B】図10Bは、図10Aのチェンジスライドの各部の働きを強調した拡大図。
【図11A】図11Aは、硬貨確認センサによる硬貨検知時における硬貨払出装置の断面図。
【図11B】図11Bは、図11Aのチェンジスライドの各部の働きを強調した拡大図。
【図12A】図12Aは、硬貨払出時における硬貨払出装置の断面図。
【図12B】図12Bは、図12Aのチェンジスライドの各部の働きを強調した拡大図。
【図13A】図13Aは、図11Aのチェンジスライドの移動抵抗部を示した拡大図。
【図13B】図13Bは、筐体側に移動抵抗部を設けた場合の移動抵抗部を示した拡大図。
【図14】図14は、待機状態において投入された硬貨が正常に収容された状態を示す立体断面図
【図15】図15は、待機状態において投入された硬貨が硬貨立ちした状態を示す立体断面図。
【図16】図16は、従来のチェンジスライドの上面斜視図および平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明に係わる硬貨払出装置について詳述する。
まず、本発明による硬貨払出装置1の構成を説明する。
【0025】
図1は、この発明に係わる硬貨払出装置1を搭載した筐体2からなる硬貨処理装置本体の正面斜視図であり、図2は、本発明の硬貨払出装置1の構成を示す要部破断概念断面図である。
【0026】
図1に示すように、硬貨払出装置1は、筐体2の下部に搭載される硬貨払出部3と、図2に示す、筐体2に着脱自在に装着される硬貨収容部4とを具えている。
【0027】
この硬貨収容部4は、金種毎に用意された複数本の硬貨収容筒5と、硬貨収納筒5の底部となるコインベース6と、硬貨収容筒5とコインベース6との間にスライド自在に支承され、硬貨収容筒5内に蓄積収容された硬貨50を一枚ずつ引き出すペイアウトスライド7とを具えている。
【0028】
一方硬貨払出部3は、図示せぬ駆動モーターにより回動する円板形状のモーターカム8と、このモーターカム8に連動して図2の図面左右方向へ往復スライド移動するリンク9と、ペイアウトスライド7により引き出された硬貨50の下面支持とその解除とを選択的に行って硬貨の払い出しと非払い出しとを制御する複数本のチェンジスライド10と、チェンジスライド10の移動可否を決める払出硬貨選択ソレノイド30と、硬貨収納筒5裏側(硬貨収容筒5内の硬貨50に対し、払出穴6aの方向。以下も同様に「硬貨収納筒5裏側」と称する)に隣接し、ペイアウトスライド7によって引き出された硬貨50を検知するための硬貨確認センサ40とを具えている。
【0029】
なお、リンク9とペイアウトスライド7とは硬貨収容部4を筐体2に装着した際に互いに凹凸嵌着して連結され、ペイアウトスライド7は、リンク9を介しモーターカム8に連動して、図2の図面左右水平方向へコインベース6に沿って、往復スライド移動するようにしている。
【0030】
そして、上述した図示せぬ駆動モーターおよび払出硬貨選択ソレノイド30は、筐体2からの硬貨払出指令等に基づいて駆動し、それぞれ硬貨払出動作と、各硬貨収容筒5内の特定の金種のみの払い出しとを制御している。
【0031】
上述のとおり、本発明による硬貨払出装置1の基本的な構成は、特願2009−162817号に示す硬貨処理装置の構成と同様であるが、本発明においては、チェンジスライド10の形状が従来のものとは大きく異なっている。
図3は、本発明におけるチェンジスライド10の上部斜視図および平面図である。
【0032】
チェンジスライド10は、硬貨が引き出される際に硬貨の一部の下面を支持する硬貨載置部11と、待機時に筐体2に係止してチェンジスライド10を待機位置に保持する移動停止部14とを具え、ペイアウトスライド7により引き出された硬貨に対するチェンジスライド10の相対的な位置を決める係止手段と、チェンジスライド10の移動を抗する移動抵抗手段との一部を有している。
【0033】
この係止手段は弾性力を有する係止部12と、該係止部12の下面に形成された凸部12aを係止する係止面9a(図9A等参照)とからなり、移動抵抗手段は弾性力を有する移動抵抗部13と、該移動抵抗部13の上面に形成された凸部13aを押圧する傾斜面21aを有する凸部21(図9A等参照)とからなる。なお、係止部12および移動抵抗部13はチェンジスライド10と一体的に形成され、係止部12の係止力である弾性力は移動抵抗部13の抵抗力である弾性力より大きくなるようにしている。
【0034】
また、従来のチェンジスライド110の硬貨載置部111が円弧形状だったのに対し(図16参照)、本発明におけるチェンジスライド10の硬貨載置部11は四角形状であり、硬貨収容筒5の内側方向への出っ張り量も従来より少なくして、待機状態におけるチェンジスライド10とコインベース6との間に十分な空間を確保し、落下してくる硬貨の回転に影響が無いようにしている。
【0035】
これらチェンジスライド10の各部の働きについては後に詳述する。
【0036】
次に、図3に示すチェンジスライドを用いた硬貨払出動作について、図1および図4に示す切断面Aにて切断した硬貨払出装置1を図面右方向から見た図にて説明するとともに、その構成をより詳細に説明する。なお、図4は、待機状態における硬貨払出装置1の下部の構成を示した平面図であり、切断面Aは、複数の硬貨収容筒5のうち、500円硬貨を収容する硬貨収容筒5の中心を通る断面とする。
【0037】
図5〜図8は、硬貨50とチェンジスライド10の硬貨載置部11との関係を強調した図であり、硬貨払出時の各状態を立体的に示した硬貨払出装置である。
【0038】
図5は、待機状態を示している。この時、硬貨50は硬貨収納筒5内にあり、チェンジスライド10の硬貨載置部11には載っていない。
【0039】
図6は、リンク9の移動開始直後の硬貨がチェンジスライドに載った状態を示している。硬貨50はペイアウトスライド7によって移動するが、チェンジスライド10は移動せず、図6に示すように、硬貨50の一部がチェンジスライドの硬貨載置部11に載る。
この後、チェンジスライド10はペイアウトスライド7とともに移動する。
【0040】
図7は、硬貨確認センサ40による硬貨検知時の状態を示している。この時、硬貨50の一部はチェンジスライド10の硬貨載置部11に載った姿勢を保ったまま、硬貨確認センサ40の直下に到達し、硬貨確認センサ40は硬貨50を検知する。
そして、チェンジスライド10の硬貨載置部11によって硬貨50の姿勢を水平に保持したまま、ペイアウトスライド7は、さらに、硬貨50を硬貨収納筒5裏側の方向に移動させる。
【0041】
図8は硬貨払出時の状態を示している。この時、硬貨50はコインベース6から外れることで硬貨収納筒5表側から落下が始まり、硬貨確認センサ40が硬貨の払い出しを検知する。
【0042】
このように、チェンジスライド10がペイアウトスライド7から遅れて移動を開始するまでの間に、チェンジスライド10上を相対的に硬貨50が移動するようにすることによって、チェンジスライド10の硬貨載置部11に硬貨が載る範囲を、最初の段階(待機状態)よりもチェンジスライド10の移動開始時には相対的に広くすることができる。
【0043】
上記実施例のように、待機状態において、硬貨50がチェンジスライド10の硬貨載置部11に全く載っていなくても、移動に伴って徐々に載るようになるので、待機状態におけるコインベース6とチェンジスライド10との間に硬貨が引っ掛からない程度の空間を保ちながら、硬貨払出確認センサ40で検知可能な硬貨50の姿勢を水平に維持することが可能となる。
すなわち、硬貨を硬貨確認センサで確実に検知するとともに、硬貨立ち等の払い出し不具合を発生しない構造が実現可能である。
【0044】
さらに、硬貨払出時における、チェンジスライド10の各部の働きについて説明するとともに、チェンジスライド10周辺の構成についてもより詳細に説明する。
図9A、図10A、図11Aおよび図12Aは、硬貨払出時の各状態を示した断面図であり、図9B、図10B、図11Bおよび図12Bは、それぞれチェンジスライド10の係止部12、移動抵抗部13および移動停止部14の働きを強調した拡大図である。
なお、図9A〜図12Bでは、ペイアウトスライド7の図示を省略している。
【0045】
図9Aおよび図9Bは、待機状態を示している。この時、係止部12の凸部12aはリンク9に形成された係止面9aに係止されていない状態であり、移動抵抗部13も筐体2に形成された傾斜面21aを有する凸部21から押圧されておらず、係止部12および移動抵抗部13が移動に対して抵抗となっていない状態にある。そして、移動停止部14は筐体2側から突出したピン22に当接している。この移動停止部14と筐体2側のピン22との係止によって、チェンジスライド10は待機状態に保たれる。
なお、リンク9の係止面9aと、筐体2に形成された凸部21と、凸部21の傾斜面21aとは、それぞれ、チェンジスライド10の移動経路上に形成されるものとする。
【0046】
図10Aおよび図10Bは、ペイアウトスライド7(図6等参照)およびリンク9の移動開始直後の状態を示している。移動開始時、移動抵抗部13の凸部13aは筐体2の傾斜面21aに当接してチェンジスライド10の移動を阻害し、チェンジスライド10は移動しない状態(停止状態)となる。そして、リンク9とともに移動するペイアウトスライド7によって引き出された硬貨50が、停止状態のチェンジスライド10の硬貨載置部11に載置される。これにより、チェンジスライド10の硬貨載置範囲は相対的に広くなる。
さらに、リンク9が移動すると、チェンジスライド10の係止部12の凸部12aは、リンク9の係止面9aと係止する。すると、上述した通り、移動抵抗部13の抵抗力である弾性力は、係止部12の係止力である弾性力よりも弱いので、移動抵抗部13の凸部13aは筐体2の傾斜面21aに乗り上げて、チャンジスライド10はリンク9とともに移動を開始する。
【0047】
図11Aおよび図11Bは、硬貨確認センサ40による硬貨検知時の状態を示している。この時、移動抵抗部13の凸部13aは筐体2の凸部21を押圧しているが、上述した通り、移動抵抗部13の抵抗力である弾性力は、係止部12の係止力である弾性力よりも弱くして、チェンジスライド10の移動の障害にはならないようにしている。よって、硬貨50の一部はチェンジスライド10の硬貨載置部11に載った姿勢を保ったまま、硬貨確認センサ40の直下に到達し、硬貨確認センサ40は硬貨50を検知する。
そして、チェンジスライド10の硬貨載置部11によって硬貨50の姿勢を水平に保持したまま、リンク9と連動するペイアウトスライド7(図7等参照)が、さらに、硬貨50を硬貨筒5裏側方向に移動させる。
【0048】
図12Aおよび図12Bは、硬貨払出時の状態を示している。この時、硬貨50はコインベース6から外れることで落下が始まり、硬貨確認センサ40が硬貨の払い出しを検知する。
【0049】
以後、動作は継続し、リンク9が硬貨筒5表側方向に移動すると、リンク9の移動に連動して、チェンジスライド10を硬貨筒5表側方向へと移動させる。そして、リンク9が硬貨筒5表側方向に移動する途中で、チェンジスライド10の移動停止部14が筐体2側のピン22に衝突して、チェンジスライド10が待機位置で停止する。
【0050】
そして、モーターカム8(図2参照)の回動を規制する図示せぬ駆動モーターによって、モーターカム8の回転が停止すると、ペイアウトスライド7(図5等参照)およびリンク9が待機時の位置に到達して停止して、図9Aおよび図9Bに示す待機状態に戻る。
【0051】
なお、硬貨非払出時においては、払出硬貨選択ソレノイド30(図2参照)が作動せず、図6、図10Aおよび図10Bの状態の後もチェンジスライド10は待機位置に維持される一方で、他の硬貨筒5内の硬貨を払い出すためにリンク9は移動するが、リンク9の係止面9aが、係止部12の係止力に抗して凸部12aを押し上げて硬貨筒5裏側方向に移動を続ける。
【0052】
また、再び待機状態に戻る際も、同様に、リンク9が、係止部12の係止力に抗して凸部12aを押し上げて硬貨筒5表側方向に移動を続ける。
この間、硬貨50の下面は支持され続けるので、硬貨50は落下せず、硬貨50の払い出しは行われない。
【0053】
以上、図3に示す形状のチェンジスライド10を用いた実施例を説明したが、図3におけるチェンジスライド10後方の移動抵抗部13については、図13Aのように、チェンジスライド10に設けるのではなく、図13Bのように筐体2側に移動抵抗部23を設けて、チェンジスライド10に傾斜面15aを有する凸部15を設けて、移動抵抗部23の凸部23aがチェンジスライド10の傾斜面および凸部を押圧し、チェンジスライド10に抵抗力が掛かるようにしても良い。
【0054】
なお、上記実施例では、いずれも係止部をチェンジスライド10に一体的に形成して、リンク9に係止面9aを形成したが、チェンジスライド10に係止面を形成して、リンク9に弾性形状である係止部を形成してもよい。
また、上述した係止手段および移動抵抗手段のどちらを、それぞれチェンジスライドの移動方向前後のいずれかに設けること、およびチェンジスライドの上方下方のいずれかに設けることは、適宜に設計変更することが可能である。
【0055】
このように、この硬貨払出装置では、弾性力を有する係止部と該係止部を係止する係止面との一対からなって、ペイアウトスライドにより引き出された硬貨に対するチェンジスライドの相対的な位置を決める係止手段と、弾性力を有する移動抵抗部と該移動抵抗部を押圧する傾斜面を有する凸部との一対からなって、チェンジスライドの移動を抗する移動抵抗手段とを、チェンジスライドの移動方向前後に具え、前記係止手段の係止および係止解除と、前記移動抵抗手段の抵抗および抵抗解除とを、前記チェンジスライドの移動に伴って行うとともに、前記係止部と前記係止面のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で前記リンクと一体的に形成し、前記移動抵抗部と前記傾斜面を有する凸部のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で装置本体の筐体と一体的に形成している。
【0056】
これによって、本発明は、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知する構成を、払い出し不具合が発生せず、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 硬貨払出装置
2 筐体(硬貨処理装置本体)
3 硬貨払出部
4 硬貨収容部
5 硬貨収容筒
6 コインベース
6a 払出穴
7 ペイアウトスライド
8 モーターカム
9 リンク
9a リンクの係止面
10 チェンジスライド
11 硬貨載置部
12 係止部
12a 係止部の凸部
13 移動抵抗部
13a 移動抵抗部の凸部
14 移動停止部
21 筐体の凸部
21a 筐体の凸部の傾斜面
22 ピン
30 払出硬貨選択ソレノイド
40 硬貨確認センサ
50 硬貨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金種毎に用意された複数本の硬貨収容筒と、
該複数の硬貨収容筒の下端からそれぞれ一枚ずつ硬貨を同時に引き出すペイアウトスライドと、
該ペイアウトスライドにより引き出された各硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って前記引き出された硬貨の払い出しと非払い出しとを制御する複数本のチェンジスライドと、
前記ペイアウトスライドと連結して装置本体に配設されたモーターカムからの駆動力を前記ペイアウトスライドに伝達するリンクとを有し、
前記ペイアウトスライドによって引き出した硬貨を前記硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで検知してから落下させて払い出す硬貨払出装置において、
前記チェンジスライドの移動方向前後に、前記ペイアウトスライドにより引き出された硬貨に対する前記チェンジスライドの相対的な位置を決める係止手段と、前記チェンジスライドの移動を抗する移動抵抗手段とを具え、
前記係止手段の係止および係止解除と、前記移動抵抗手段の抵抗および抵抗解除とを、前記チェンジスライドの移動に伴って行い、
前記係止手段は弾性力を有する係止部と該係止部を係止する係止面との一対からなり、かつ、前記係止部と前記係止面のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で前記リンクと一体的に形成され、
前記移動抵抗手段は弾性力を有する移動抵抗部と該移動抵抗部を押圧する傾斜面を有する凸部との一対からなり、かつ、前記移動抵抗部と前記傾斜面を有する凸部のうち、いずれか一方は前記チェンジスライドと一体的に、他方は前記チェンジスライドの移動経路上で装置本体の筐体と一体的に形成されることを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項2】
前記係止手段の係止面は、前記チェンジスライド下方の前記リンクに形成され、
前記移動抵抗手段の傾斜面を有する凸部は、前記チェンジスライド上方の前記筐体に形成され、
前記係止部は、前記チェンジスライドの前方の下側に該チェンジスライドと一体的に形成されて、前記係止手段の係止面に係止されるとともに、
前記移動抵抗部は、前記チェンジスライドの後方の上側に該チェンジスライドと一体的に形成されて、前記移動抵抗手段の傾斜面を有する凸部によって押圧されるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の硬貨払出装置。
【請求項3】
前記係止手段の係止面は、前記チェンジスライド下方の前記リンクに形成され、
前記移動抵抗手段の傾斜面を有する凸部は、前記チェンジスライドの後方の上側に該チェンジスライドと一体的に形成され、
前記係止部は、前記チェンジスライドの前方の下側に該チェンジスライドと一体的に形成されて、前記係止手段の係止面に係止されるとともに、
前記移動抵抗部は、前記チェンジスライドの移動経路上で該チェンジスライド上方の前記筐体に形成されて、前記移動抵抗手段の傾斜面を有する凸部によって押圧されるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の硬貨払出装置。
【請求項4】
前記係止部の弾性力よりも、前記移動抵抗部の弾性力の方が弱いことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の硬貨払出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−203798(P2011−203798A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68033(P2010−68033)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】