説明

硬貨枚数計測手段を備えたコインチューブ

【課題】収容された硬貨の枚数を正確に計測することができる硬貨枚数計測手段を備えたコインチューブを提供する。
【解決手段】本発明のコインチューブは、硬貨を積載して収容するコインチューブ本体5と、コインチューブ本体5の周側壁の外側に配置される複数の長尺状電極61a〜61d, 62a〜62dと、コインチューブ本体5に積載される硬貨Cと電気的に接続されるように配置される硬貨電極部7とを備える。そして、長尺状電極61a〜61d,62a〜62dは、その長さ方向がコインチューブ本体5の長さ方向に沿うように、コインチューブ本体5の周方向に沿って互いに所定幅の間隙Gを介して並ぶように配置され、且つ、硬貨電極部7と長尺状電極61a〜61d, 62a〜62dとの間の静電容量がコインチューブ本体5内の硬貨の枚数に応じた値をとる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に、自動販売機、両替機、精算機、券売機、サービス機器等(以下、「自動販売機等」という。)に搭載される硬貨処理装置に設けられるコインチューブに関し、特に、収納されている硬貨の枚数を計測する硬貨枚数計測手段を備えたコインチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機等の内部には、投入された硬貨の正偽を判別するとともに、正貨とみなされた投入硬貨を金種毎に選別収納し、さらに選別収納された硬貨を釣銭等の額に応じて払い出す硬貨処理装置が搭載されている。図6は、このような硬貨処理装置の概略図である。硬貨処理装置1は、通常、投入された硬貨Cの正偽を判別するとともに投入硬貨Cを金種別に振り分けるための硬貨選別装置2と、この硬貨選別装置2により振り分けられた投入硬貨Cを金種毎に収納するための硬貨収納装置3と、この硬貨収納装置3から釣銭等の額に応じた硬貨Cを選択して払い出すための硬貨払出装置4とを備えている。この硬貨処理装置1における硬貨収納装置3は、通常、硬貨Cを金種毎に積載して収納する複数のコインチューブ本体5を備えており、また、多くのものは、硬貨処理装置1から取り外し可能なカセットになっている。
【0003】
硬貨を積載して収納するコインチューブ本体の周側壁には、一定枚数(例えば、10枚)以上の硬貨が収納されているか否かを検知するエンプティセンサと、コインチューブが満杯になったことを検知する満杯検知センサが備えられており、これによりコインチューブ本体内に収納されている硬貨のおおよその枚数を把握して、釣銭払い出しの可否を判断するようにしている。しかし、これらのセンサは、硬貨が一定レベル以上積載されているか否かを検知するものであるため、一定の枚数以上収納されているか否かは把握できるが、正確な収納枚数を把握することはできない。そのため、エンプティセンサ及び満杯センサの検出結果のみで釣銭払い出しの可否を判断した場合、エンプティセンサにより硬貨が一定レベル以上積載されていないと判断されると直ちに当該金種は払い出し不可能であると判断され、実際には釣銭の払い出しが可能であるにもかかわらず釣銭の必要な商品の販売が停止されてしまい、その商品の販売機会を逸脱することになる。そこで、硬貨の収納枚数を把握するために、硬貨処理装置の制御部において、最低限保障される硬貨の収容枚数が分かっている初期状態(例えば、エンプティセンサにより硬貨が一定レベル以上積載されていると判断される場合において、このときに保障される枚数)から硬貨の受入れと払出しをカウントすることにより硬貨の収容枚数を把握することも行われており、これについては特許文献1(特開平11−232521号公報)に開示されている。
【0004】
また、コインチューブ本体内に収容されている硬貨の枚数を直接検知するものとして、ソナーセンサによる検知が特許文献2(特表2003−518674号公報)に開示され、重量センサによる検知が特許文献3(特開2011−60128号公報)に開示されている。ソナーセンサによる検知は、コインチューブ本体の上方に配置されたソナーセンサから発生した音が積載された硬貨に反射して帰ってくる時間を測定することでソナーセンサから積載された硬貨の上面までの距離を算出し、この距離から硬貨の積載枚数を算出するものである。重量センサによる検知は、コインチューブ本体の底部に配置された重量センサによって硬貨の重量を測定し、その重量から硬貨の積載枚数を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−232521号公報
【特許文献2】特表2003−518674号公報
【特許文献3】特開2011−60128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の硬貨枚数計測手段を備えたコインチューブには、次のような問題点がある。
【0007】
エンプティセンサと満杯センサのみを備えるコインチューブでは、収容されている硬貨の枚数を正確に把握することができない。また、特許文献1に開示されている、最低限保障される収容枚数が分かっている初期状態から硬貨の受入れと払出しをカウントすることにより収容枚数を把握する方法については、実際の収納枚数ではなく最低限保障される収容枚数からカウントをスタートするものであるため、実際の収納枚数を正確に把握できるわけではない。また、硬貨収容装置が硬貨処理装置から脱着されてコインチューブ本体に収納されている硬貨の状態が変更されると、それまでの値に信頼性がなくなることから、あらたに初期状態を設定して硬貨の受入れと払出しのカウントをやり直さなければならないという問題点もある。そのため、従来の硬貨枚数計測手段を備えたコインチューブでは、まだ払出しが可能な硬貨が残っていても釣銭切れと判断せざるを得ず、全ての硬貨を釣銭の支払に利用できない。
【0008】
特許文献2に開示されているソナーセンサによる検知では、満杯近くになるとソナーの戻りが拡散して正確な枚数を把握することができなくなるという問題点を有している。特許文献3に開示されている重量センサによる検知は、コインチューブ本体の底部に機械的構造を有する重量センサを配置するために、硬貨処理装置の構造が複雑になるという問題点を有している。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決することを課題とする。具体的には、本発明は、収容された硬貨の枚数を正確に計測することができる硬貨枚数計測手段を備えたコインチューブを提供することを課題とする。さらに、硬貨枚数計測手段を備えたコインチューブを備えた硬貨処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1のコインチューブは、硬貨を積載して収容するコインチューブ本体と、前記コインチューブ本体の周側壁の外側に配置される複数の長尺状電極と、前記コインチューブ本体に積載される硬貨と電気的に接続されるように配置される硬貨電極部と、を備え、複数の前記長尺状電極は、前記長尺状電極の長さ方向が前記コインチューブ本体の長さ方向に沿うように、前記コインチューブ本体の周方向に沿って互いに所定幅の間隙を介して並ぶように配置され、且つ、前記長尺状電極は、前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量が前記コインチューブ本体内の硬貨の枚数に応じた値をとる位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の硬貨処理装置は、請求項1に記載のコインチューブと、前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量を測定するための静電容量測定手段と、前記コインチューブ本体に積載されている硬貨の枚数と、前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量との関係を記憶するための記憶手段と、前記静電容量測定手段によって測定された静電容量の値と、前記記憶手段に記憶されている、前記コインチューブ本体に積載されている硬貨の枚数と、前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量との関係とから、前記コインチューブ本体に積載されている硬貨の枚数を算出するための演算手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コインチューブ本体に積載された硬貨の枚数を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のコインチューブの斜視図である。
【図2】(a)硬貨が収容されていない状態と(b)硬貨が1枚収容されている状態における、本発明の実施形態のコインチューブにおけるコインチューブ本体の底部付近の断面図である。
【図3】コインチューブ本体内の硬貨の枚数と電極群間の静電容量との関係を測定した結果を示したグラフである。
【図4】(a)4×2電極タイプのものと(b)1×2電極タイプのものとのそれぞれにおいて、コインチューブ本体内における硬貨の水平方向の偏りによって電極群間の静電容量がどの程度変化するかを測定した結果を示した説明図である。
【図5】本発明の実施形態のコインチューブ内の硬貨の枚数と、硬貨電極部と第1の電極群及び第2の電極群との間の静電容量との関係を測定した結果を示したグラフである。
【図6】本発明の実施形態のコインチューブを備えた硬貨処理装置のブロック図である。
【図7】本発明の実施形態のコインチューブを備えた硬貨処理装置における処理を説明するフロー図である。
【図8】硬貨処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について説明する前に、本発明者らが本発明をなすに至った経緯及び本発明の原理について説明する。まず、本発明の発明者らは、コインチューブ本体の周側壁の外側に対向する2枚の長尺状電極を設けて、この2枚の長尺電極間の静電容量を測定することを思いつき、コインチューブ本体内に積載されている硬貨の枚数とこの対向する2枚の長尺状電極の間の静電容量との間に相関関係があることを見いだした。さらに、本発明の発明者らは、コインチューブ本体内における硬貨の水平方向の配置のばらつきによって、2枚の長尺状電極の間の静電容量の値がばらつくことも見いだした。このような知得に鑑みて、本発明の発明者らは、2枚の長尺状電極のそれぞれを複数の長尺状電極に分割して、陽極になる長尺状電極と陰極になる長尺状電極とをコインチューブ本体の周方向に沿って交互に配置することに思い至った。そして、本発明の発明者らは、このような構成を採用することにより、単純に対向する2枚の長尺状電極を用いるものと比較して、硬貨1枚あたりの静電容量の変化は小さくなるが、それ以上に、コインチューブ本体内の硬貨の水平方向の配置のばらつきによる静電容量の変化が小さくなるため、静電容量の値が硬貨枚数の算定に使用しうるものになることを見いだした。さらに、本発明の発明者らは、コインチューブ本体内に積載される硬貨に接触する硬貨電極部を設け、この硬貨電極部と長尺状電極との間の静電容量を測定することで、硬貨1枚あたりの静電容量の変化が大きくなることを見いだした。本発明は、以上の本発明の発明者らの独自の知得に基づいてなされたものである。
【0015】
以下、本発明の実施形態の1つを図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態のコインチューブの斜視図である。コインチューブ本体5の周側壁の外側に8枚の長尺状の銅箔電極61a〜61d,62a〜62dが配置され、コインチューブ5の底部付近に硬貨電極部7が配置されている。
【0017】
コインチューブ本体5の周側壁の外側に配置された長尺状の銅箔電極61a〜61d,62a〜62dは、その下端はコインチューブ本体5の底部近傍に位置しており、その上端は硬貨が満杯と判断される高さよりも高い位置になっている。この8枚の銅箔電極61a〜61d,62a〜62dは、コインチューブ本体5の周方向に沿って互いに所定幅の間隙Gを介して並ぶように配置されている。銅箔電極61a〜61d,62a〜62dが所定幅の間隙Gを介して配置されているので、コインチューブ本体5の側面からコインチューブ本体5に積載されている硬貨Cを確認できるようにもなっている。8枚の銅箔電極61a〜61d,62a〜62dのうち、一つおきに配置されている4枚の銅箔電極61a〜61dは、導線81により互いに電気的に接続されている。同様に、残りの一つおきに配置されている4枚の銅箔電極62a〜62dも、導線82により互いに電気的に接続されている。この導線81,82は、絶縁被膜導線などを用いて構成されている。これらの導線81,82は、図1中に表示されているが、その等価回路は図6に示されている。図6から分かるように、導線81は、銅箔電極61a〜61dに、導線82は、銅箔電極62a〜62dに、それぞれ電気的に接続されている。図1の導線81,82における黒丸は、導線81,82と各銅箔電極61a〜61d、62a〜62dとが電気的に接続されていることをシンボル的に示すものである。
【0018】
このように、コインチューブ本体5の周側壁の外側に、電気的に接続された4枚の銅箔電極からなる電極群が2つ形成されており、それぞれの電極群を構成する銅箔電極が交互に並ぶように配置されている。つまり、4枚の銅箔電極61a〜61dからなる第1の電極群61と4枚の銅箔電極62a〜62dからなる第2の電極群62とがあり、第1の電極群61を構成する銅箔電極61a〜61dと第2の電極群62を構成する銅箔電極62a〜62dとが、コインチューブ本体5の周方向に沿って互いに所定幅の間隙Gを介して交互に並ぶように配置されている。なお、各電極群61,62を構成する銅箔電極の枚数は、後述するように、4枚に限定されるものではない。
【0019】
図2は、(a)硬貨が収容されていない状態と(b)硬貨Cが1枚収容されている状態における、本発明の実施形態のコインチューブにおけるコインチューブ本体5の底部付近の断面図である。コインチューブ本体5の底部付近に配置されている硬貨電極部7は、金属のバネ材で構成されており、コインチューブ本体5に積載されている硬貨と電気的に接続するようになっている。
【0020】
ここで、コインチューブ本体5内に積載されている硬貨Cの枚数が増加すると、この第1の電極群61と第2の電極群62との間の静電容量も増加するという関係にある。そのため、第1の電極群61と第2の電極群62との間の静電容量の値からコインチューブ本体5内に積載されている硬貨Cの枚数を算出することが可能となる。加えて、コインチューブ本体5内に積載されている硬貨の枚数が増加すると、硬貨電極部7と銅箔電極61a〜61d,62a〜62dとの間の静電容量も増加する関係にある。そのため、硬貨電極部7と銅箔電極61a〜61d,62a〜62dとの間の静電容量からコインチューブ本体5内に積載されている硬貨の枚数を算出することが可能となる。
【0021】
図3は、コインチューブ本体5内の硬貨Cの枚数と電極群61,62間の静電容量との関係を測定した結果を示したグラフである。それぞれの電極群61,62が4枚の銅箔電極61a〜61d,62a〜62dからなる4×2電極タイプのものと、それぞれの電極群が1枚の銅箔電極61A,62Aからなる1×2電極タイプのものとについての測定結果を示している。測定に用いたコインチューブ本体5は、外径28mm、厚さ2mmのアクリル製のものである。硬貨Cとしては10円硬貨を用いた。静電容量は、ヒューレットパッカード社製の4192Aインピーダンスアナライザにて測定した。4×2電極タイプのものは、8枚の縦150mm、横8mm、厚さ0.07mmの長尺状の銅箔電極が約3mmの間隙を介して並ぶように配置されており、1×2電極タイプのものは、2枚の縦150mm、横41mm、厚さ0.07mmの長尺状の銅箔電極が約3mmの間隙を介して並ぶように配置されている。
【0022】
硬貨枚数と静電容量との関係をみると、硬貨枚数が1枚変化したときの静電容量の変化量は、4×2電極タイプのものでは約0.14pF、1×2電極タイプのものでは約0.23pFとなっている。
【0023】
図4は、(a)4×2電極タイプのものと(b)1×2電極タイプのものとのそれぞれにおいて、コインチューブ本体5内における硬貨の水平方向の偏りによって電極群61,62間の静電容量がどの程度変化するかを測定した結果を示した説明図である。コインチューブ本体5内に10円硬貨を100枚入れた状態で、コインチューブ本体5を図4の矢印で示す4方向に傾けることにより硬貨Cを移動させて、電極群61,62間の静電容量を測定した。図4から分かるように、そこに記載の円はコインチューブ本体5を上方から見たものであり、その周囲の円弧は銅箔電極61a〜61d,62a〜62d,61A,62Aの配置を表している。矢印の先に記載されている数字は、コインチューブ本体5をその方向に傾けて硬貨Cを移動させたときの電極群61,62間の静電容量の値であり、コインチューブ本体5を表す円の中央に記載されている数字は、コインチューブ本体5を傾けない場合の静電容量の値である。
【0024】
コインチューブ本体5の傾き、つまり、コインチューブ本体5内の硬貨の水平方向の偏りによる静電容量の変化量をみると、図4(a)の4×2電極タイプのものでは約0.06pF、図4(b)の1×2電極タイプのものでは約0.53pFとなっている。
【0025】
4×2電極タイプのものでは、硬貨枚数が1枚変化したときの静電容量の変化量が約0.14pFであるのに対し、硬貨Cが水平方向に移動したときの静電容量のばらつきは約0.06pFであり、硬貨1枚あたりの静電容量の変化量が、硬貨の偏りによる静電容量のばらつきよりも大きくなっている。そのため、4×2電極タイプのものでは、硬貨1枚単位での検知が可能となる。
【0026】
図5は、本発明の実施形態のコインチューブ内の硬貨の枚数と、硬貨電極部7と第1の電極群61及び第2の電極群62との間の静電容量との関係を測定した結果を示したグラフである。測定に用いたコインチューブ本体5は、外径28mm、厚さ2mmのアクリル製のものである。コインチューブ本体5の周側壁の外側に、8枚の縦150mm、横8mm、厚さ0.07mmの長尺状の銅箔電極が約3mmの間隙を介して並ぶように配置されている。硬貨としては10円硬貨を用いた。静電容量は、ヒューレットパッカード社製の4192Aインピーダンスアナライザにて測定した。静電容量の値は、硬貨電極部7と第1の電極群61との間の静電容量と、硬貨電極部7と第2の電極群62との間の静電容量の平均値である。なお、ここでは、第1の電極群61と第2の電極群62を合わせたもの(つまり、全ての銅箔電極61a〜61d,62a〜62dを接続したもの)で測定するのではなく、第1の電極群61と第2の電極群62とを別々に測定してその平均をとるようにしている。これは、後述するように、この実施形態では、第1の電極群61と第2の電極群62との間の静電容量も測定できるように、第1の電極群61と第2の電極群62とが別々に静電容量測定手段9に接続されているためである。
【0027】
硬貨枚数と静電容量との関係をみると、硬貨枚数が1枚変化したときの静電容量の変化量は、約0.78pFとなっている。
【0028】
以上より、それぞれが複数の長尺状電極61a〜61d,62a〜62dからなる第1の電極群61と第2の電極群62を形成し、それぞれの電極群61,62を構成する長尺状電極61a〜61d,62a〜62dが交互に並ぶように配置される構造とすることにより、硬貨1枚あたりの静電容量の変化は小さくなるが、それ以上に、コインチューブ本体5内の硬貨の水平方向の偏りによる電極群間の静電容量の変化が小さくなる、つまり、正確に硬貨の枚数を算出できることが理解できる。加えて、硬貨電極部7と第1の電極群61及び第2の電極群62と間では、第1の電極群61と第2の電極群62との間よりも、硬貨1枚あたりの静電容量の変化が大きくなることが理解できる。
【0029】
図6は、本発明の実施形態のコインチューブを備えた硬貨処理装置のブロック図である。図6におけるコインチューブ本体5は、上面から見た概念図で表している。硬貨電極部7と、それぞれが4枚の銅箔電極61a〜61d,62a〜62dからなる2つの電極群61,62とは、それぞれが、静電容量測定回路等の静電容量測定手段9に導線81,82,83によって電気的に接続されている。静電容量測定手段9は、硬貨電極部7と第1の電極群61及び第2の電極群62の間の静電容量を測定する手段である。また、この静電容量測定手段9は、第1の電極群61と第2の電極群62との間の静電容量を測定することもできるようになっている。記憶手段10は、静電容量値と硬貨の枚数との関係と、コインチューブ本体5に積載されている硬貨の枚数とを記憶する手段である。記憶手段10のEEPROM 101には、静電容量値と硬貨の枚数との関係が記憶され、RAM 102には、コインチューブ本体5に積載されている硬貨の枚数が記憶されている。演算手段11は、静電容量測定手段9によって得られた静電容量値と、記憶手段10に記憶されている静電容量値と硬貨の枚数との関係とから、硬貨の枚数を算出する手段である。これらの静電容量測定手段9、記憶手段10及び演算手段11は、主制御バス12を介して互いに接続されている。
【0030】
図7は、本発明の実施形態のコインチューブを備えた硬貨処理装置における処理を説明するフロー図である。硬貨処理装置の主制御により、コインチューブ本体5内に収容されている硬貨Cの枚数の計測が指示されると、この静電容量測定手段7によって、硬貨電極部7と第1の電極群61及び第2の電極群62の間の静電容量を測定する(S1)。次に、演算手段11によって、静電容量測定手段9によって得られた静電容量値と、記憶手段10のEEPROM 101に記憶されている静電容量値と硬貨の枚数との関係とから、硬貨Cの枚数を算出する(S2)。最後に、算出された硬貨Cの枚数を記憶手段10のRAM 102に記憶して(S3)、硬貨枚数計測の処理を終了する。
【0031】
なお、本発明の実施形態のコインチューブを備えた硬貨処理装置においては、その静電容量測定手段9が、硬貨電極部7と第1の電極群61及び第2の電極群62の間の静電容量だけでなく、第1の電極群61と第2の電極群62との間の静電容量も測定することもできるようになっている。そのため、硬貨電極部7と第1の電極群61及び第2の電極群62との間の静電容量に基づく硬貨枚数の算出とともに、第1の電極群61と第2の電極群62との間の静電容量に基づく硬貨枚数の算出を行うことも可能になっている。この2つの方法による硬貨枚数の算出を行うことにより、硬貨枚数の計測の正確性がより一層担保されることになる。
【0032】
本発明の実施形態のコインチューブを備えた硬貨処理装置における硬貨枚数の計測は任意の時点で行うことが可能である。例えば、硬貨の払出し処理の直後に硬貨枚数の計測を行うことで、硬貨が確実に払い出されたか否かを確認することも可能である。
【0033】
本実施形態のコインチューブを備えた硬貨処理装置によれば、コインチューブ本体5内に収納された硬貨Cの枚数を正確に計測することができる。また、電源投入直後や、硬貨収容装置のカセットを脱着した直後であってもコインチューブ本体5内に収納されている硬貨Cの枚数を計測することができる。また、銅箔電極61a〜61d,62a〜62dが所定幅の間隙Gを介して配置されているため、コインチューブ本体5内に収納されている硬貨Cの視認性が損なわれない。また、一つのセンサでエンプティも満杯も検出することができるので、エンプティセンサと満杯センサが不要になる。
【0034】
以上、本発明の実施形態の1つについて説明したが、本発明のコインチューブ及び硬貨処理装置はこの実施形態に限定されるものではない。
【0035】
上述の実施形態においては、それぞれの電極群を構成する長尺状電極は4つであるが、長尺状電極の数はこれに限られるものではなく、2つであっても、3つであっても、5つ以上であってもよい。上述の実施形態では、硬貨電極部7が金属のバネ材で構成されてコインチューブ本体5の底部付近に配置されているが、硬貨電極部7は、この構成に限られず、コインチューブ本体5に積載されている硬貨と電気的に接続されるものであればよい。上述の実施形態では、第1の電極群61と第2の電極群62との間の静電容量も測定できるように、第1の電極群62と第2の電極群62とが別々に静電容量測定手段9に接続されているが、長尺状電極を2つの電極群に分けずに、すべての長尺状電極に接続されている導線等を静電容量測定手段9に接続して、一度に硬貨電極部7と全ての長尺状電極との間の静電容量を測定するようにしてもよい。また、長尺状電極を2つの電極群に分けずに、それぞれの長尺状電極を個別に静電容量測定手段9に接続して、それぞれの長尺状電極ごとに、硬貨電極部9とその長尺状電極との間の静電容量を測定して、その平均をとるようにしてもよい。上述の実施形態においては、長尺状電極として銅箔電極61a〜61d,62a〜62dを用いているが、長尺状電極は、銅箔電極に限られず、静電容量の測定に適するものであればよい。上述の実施形態においては、長尺状電極間の電気的接続に導線81,82を用いているが、長尺状電極間の接続手段は、導線に限られず、電気的に接続されるものであればよい。上述の実施形態においては、静電容量測定手段9により測定される値及び記憶手段10に記憶される値として静電容量値をあげているが、この値は、演算手段11における処理に適するように変換された適宜の数値であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 硬貨処理装置
2 硬貨選別装置
3 硬貨収納装置
4 硬貨払出装置
5 コインチューブ本体
61 第1の電極群
61a〜61d 第1の電極群を構成する銅箔電極
62 第2の電極群
62a〜62d 第2の電極群を構成する銅箔電極
7 硬貨電極部
81, 82, 83 導線
9 静電容量測定手段
10 記憶手段
101 EEPROM
102 RAM
11 演算手段
12 主制御バス
C 硬貨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を積載して収容するコインチューブ本体と、
前記コインチューブ本体の周側壁の外側に配置される複数の長尺状電極と、
前記コインチューブ本体に積載される硬貨と電気的に接続されるように配置される硬貨電極部と、
を備え、
複数の前記長尺状電極は、前記長尺状電極の長さ方向が前記コインチューブ本体の長さ方向に沿うように、前記コインチューブ本体の周方向に沿って互いに所定幅の間隙を介して並ぶように配置され、且つ、
前記長尺状電極は、前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量が前記コインチューブ本体内の硬貨の枚数に応じた値をとる位置に配置されていることを特徴とするコインチューブ。
【請求項2】
請求項1に記載のコインチューブと、
前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量を測定するための静電容量測定手段と、
前記コインチューブ本体に積載されている硬貨の枚数と、前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量との関係を記憶するための記憶手段と、
前記静電容量測定手段によって測定された静電容量の値と、前記記憶手段に記憶されている、前記コインチューブ本体に積載されている硬貨の枚数と、前記硬貨電極部と前記長尺状電極との間の静電容量との関係とから、前記コインチューブ本体に積載されている硬貨の枚数を算出するための演算手段と、
を備えることを特徴とする硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−25751(P2013−25751A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163058(P2011−163058)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】