説明

硬貨釣銭機

【課題】釣銭先行運用と入金先行運用の運用モードの切り替えが可能であって、鑑別部で入金不可と判別された貨幣を返却するためのリジェクト収納部を有する硬貨釣銭機においては、各運用モードに合わせて、リジェクト用トレイを鍵付き、レバー付きに入れ替えなければならないという問題がある。
【解決手段】リジェクト収納部の開口部に、リジェクト扉33を配置すると共にこのリジェクト扉33を施錠する錠34を設け、釣銭先行運用モードにおいては、リジェクト扉33を施錠してリジェクト収納部からの硬貨の取り出しを阻止し、入金確定運用モードにおいては、リジェクト扉33を開錠してリジェクト収納部からの硬貨の取り出しを可能にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等のレジ精算場において使用されるPOSレジスタ等に接続して硬貨の入出金処理を行う硬貨釣銭機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の硬貨釣銭機は、POSレジスタより購入商品の登録がなされ、購入商品の合計金額が表示部に表示されると、係員がその金額を顧客に伝え、顧客からの現金を受け取るとその現金が正常なものか否かを確認したうえで顧客から見える箇所に保持させた状態にしてPOSレジスタに受取金額を入力する。
【0003】
これにより、POSレジスタが購入商品の合計金額と入力された受取金額とから釣銭を算出し、釣銭を要する場合には紙幣釣銭機および硬貨釣銭機に出金指示が出されて釣銭の出金が行われる。
【0004】
係員がその釣銭を顧客に手渡した時点でその顧客との精算処理が完了し、顧客はレジ精算場から離れる。
【0005】
一方、係員は、顧客から受け取って顧客の見える場所箇所に保持させておいた現金を紙幣と硬貨に分けてそれぞれの釣銭機に投入することにより釣銭機が入金処理を行って終了する。
【0006】
また、顧客から預かった貨幣を先に釣銭機に投入し、預かり金額を計数し、POSレジスタに登録された購入金額から釣銭金額を算出し、出金指示することで釣銭機が釣銭を出金するようにした運用にもモード切り替えすることができる(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
以降前者の運用を釣銭先行運用、後者の運用を入金確定運用という。
【0008】
釣銭先行運用では、顧客に釣銭を渡した後に預かり金を釣銭機に投入するため、装置で正常に認識できなかったリジェクトした貨幣があっても装置に取り込んでしまえばよく、リジェクト庫はトレイ構造で鍵が実装されて管理されている。
【0009】
入金確定運用では、釣銭機が預かり金額を確定するため、リジェクトした貨幣は未計数となるため、すぐに取り出して確認する必要があり、鍵の代わりにノブ付きになっており、鍵がなくてもトレイの引出が可能で、すぐに貨幣が取り出せる構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−302119公報
【特許文献2】特開2001−43449公報
【特許文献3】特開2004−302520公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の技術においては、釣銭先行運用モードと入金確定運用モードの各運用モードに合わせて、その都度リジェクト用トレイを鍵付き、レバー付きに入れ替えなければならないという問題がある。
【0012】
また、入れ替えなければいけないが、その作業を忘れたりトレイを間違えたりしてしまうという問題がある。
【0013】
しかし、リジェクト用トレイの形態にかかわらずどちらの運用にも運用モードの切り替えで対応できるようにするという要求がある。
【0014】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明は、預かり硬貨を入金した後に釣銭を出金する入金確定運用モードと、釣銭を出金した後に預かり硬貨を入金する釣銭先行運用モードとの運用モードの切り替えが可能であって、入金された硬貨の少なくとも金種、真偽鑑定を行う鑑別部と、該鑑別部で入金不可と判別された硬貨を返却するためのリジェクト収納部とを有する硬貨釣銭機において、前記リジェクト収納部の開口部に、それを閉じるリジェクト扉を配置すると共にこのリジェクト扉を施錠する錠を設け、前記釣銭先行運用モードにおいては、リジェクト扉を施錠してリジェクト収納部から硬貨の取り出しを阻止し、前記入金確定運用モードにおいては、リジェクト扉を開錠してリジェクト収納部から硬貨の取り出しを可能にすることを特徴とする。
また、上記構成において、リジェクト扉の錠の状態が施錠状態か開錠状態かを検知するセンサを設け、その検知情報を上位装置に通知し、運用モード状態が適当であるか否かを検知することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このようにした本発明は、リジェクト収納部を直接、錠付きのリジェクト扉で開閉するようにしたことにより、釣銭先行運用と入金先行運用の運用に合わせて施錠もしくは開錠しておくだけで対応することができることになり、従来の錠付きのトレイやノブ付きのトレイが必要なく、しかも、そのようなトレイの交換作業が必要なくなるという効果が得られる。
【0017】
また、釣銭先行運用モードまたは入金先行運用モードのセンサ情報をPOSに通知することにより、硬貨釣銭機の運用状態があっているか否かを検知することができ、セキュリティの確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例を示す全体斜視図
【図2】制御部構成ブロック図
【図3】実施例1の硬貨釣銭機の機構を示す概略側面図
【図4】概略平面図
【図5】リジェクト部の正面説明図
【図6】概略説明図
【図7】錠の例を示す説明図
【図8】リジェクト扉の例を示す説明図
【図9】実施例2の硬貨釣銭機の機構を示す概略側面図
【図10】概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明による実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は第1の実施例を示す斜視図、図2は制御部構成ブロック図である。
【0021】
1は釣銭機であり、紙幣釣銭機2と硬貨釣銭機3で構成されている。
4はPOSレジスタ、5はレジ担当の係員が顧客から受け取った硬貨を投入する入金口、6は顧客へ釣銭として支払う硬貨を払い出す出金口である。
【0022】
7は受け入れ不能と判別された硬貨を収納するリジェクト部、10は預かり貨幣(硬貨および紙幣)を入金した後に釣銭を出金する入金確定運用モードと釣銭を出金した後に預かり貨幣を入金する釣銭先行運用モードとの運用モードの切り替えを係員操作により行うモード切り替えキー等の入力手段10aと、係員が入力した内容や装置の情報を表示するための表示部10b等で構成される操作表示部である。
20は顧客から受け取った紙幣を入金したり、顧客へ釣銭として支払う紙幣を払い出す紙幣入出金口、19は紙幣レジ釣銭機内に収納されている紙幣を回収し、収納する回収カセット部である。
【0023】
図2に示す如く、制御部には、CPU11、メモリ12、I/Oポート13、14、15が搭載されており、これらは内部バス16を通じて相互に通信を行う。また、CPU11はPOSレジスタ4と通信が可能である。
I/Oポート13には前記操作表示部10のスイッチ、LED等が接続される。
スイッチの検知信号は、I/Oポート13、内部バス16を通じてCPU11に送られる。
また、LEDのドライブ信号は、内部バス16、I/Oポート13を通じてLEDに送られる。
他のI/Oポート14、15にはそれぞれ紙幣釣銭機2、硬貨釣銭機3に設けられる各モータ、各ソレノイドおよび各センサ等が接続される。
各センサの検知信号は、I/Oポート14、15、内部バス16を通じてCPU11に送られる。
【0024】
また、モータ、ソレノイド等の各種駆動系のドライブ信号は内部バス16、I/Oポート14、15を通じて各モータ、各ソレノイド等に送られる。
【0025】
メモリ12にはセンサの検知信号により各種駆動系を制御する等の手順を実行するファームウェアが格納されている。
【0026】
図3は硬貨釣銭機3の機構を示す概略側面図、図4は概略平面図であり、顧客から受け取った入金硬貨を入金する入金口5と、この入金口5に設けられたセンサ31と、釣銭硬貨を出金するための出金口6と、入金した硬貨を金種毎に収納にする1円ホッパー21、50円ホッパー22、5円ホッパー23、100円ホッパー24、10円ホッパー25、500円ホッパー26と、入金した硬貨の金種、真偽等を判別する鑑別部27と、この鑑別部27を配置した入金搬送路28と、リジェクト収納部29および出金搬送路30により構成されている。
【0027】
入金搬送路28と出金搬送路30はモータ32により駆動される。
【0028】
上記の構成による硬貨釣銭機によると、商品の清算において、釣銭先行運用モードは、レジ係が顧客から受け取った支払預かり金をPOSレジスタ4に入力し、売上金に対する釣銭を釣銭機1から出金し、顧客に釣銭を手渡して取引が完了した後に預かり金を釣銭機1に入金する。
【0029】
また、入金確定運用モードは、支払預かり金を釣銭機1に入金し、計数した後に釣銭を算出し、出金した釣銭を顧客に手渡す。
硬貨入金口5に入金した硬貨は、センサ31で検知されると、入金搬送路28に繰出され鑑別部27にて金種等の判別を行う。その結果、金種不明等により入金不可と判別された硬貨はリジェクトとして入金搬送路28に設けられているリジェクト通路によりリジェクト収納部29に送られて収納され、金種が確定した硬貨は金種別に計数された後、入金搬送路28に設けられている金種毎の取込み通路からそれぞれ1円ホッパー21、50円ホッパー22、5円ホッパー23、100円ホッパー24、10円ホッパー25、500円ホッパー26に送り込まれて収納される。
計数結果は、CPU11からPOSレジスタ4に通知される。
【0030】
図5は本実施例のリジェクト部の正面説明図、図6は構造の概略説明図であり、リジェクト部7は装置前面に配置され、リジェクト扉33を開いてリジェクト収納部29が開放される構造になっている。リジェクト扉33の開閉を行う回転支点は本実施例では扉上部(扉下部でも可)にあり、リジェクト収納部29の開口を閉じる側に倒れる構造で、図示しない付勢部材によって閉じた状態が維持できるようになっている。
【0031】
リジェクト扉33の上部には錠34を設け、この錠34に扉ロック部材35が取り付けてあり、リジェクト扉33が開かないように設定できる。
このリジェクト扉33の錠34は、図7に示す如く、コイン等でも施錠や開錠ができる簡易なものでもよく、さらに錠34の周囲の所定位置に鍵穴34aの状態(向き)に応じて釣銭先行運用(出金優先)と入金先行運用(入金優先)を表示しておくと運用モードの誤設定を見つけることができる。
【0032】
つまり、釣銭先行運用では、硬貨のリジェクトが発生しても顧客との取引は完了しており、リジェクトした硬貨はリジェクト収納部29に保管しておけばよいために、通常は、リジェクト扉33の錠34を施錠しておく。
入金先行運用では、支払預かり金を機械で計数確定するため、リジェクトした硬貨はすぐに取り出し、確認して再投入する必要があるためにリジェクト扉33は施錠状態にはしない。
【0033】
そのため、釣銭先行運用時に扉ロック部材35によりリジェクト扉33が開かないようにロックしたときに鍵穴34aが垂直になり、入金先行運用時にリジェクト扉33が開くように扉ロック部材35によるロックを解除したときに鍵穴34aが水平になる場合、図7に示すように時計回りの12時(または6時)の位置に「出金優先」を表示し、3時(または9時)の位置に「入金優先」を表示することで運用モードの誤設定を防止する。
また、図8に示す如く、リジェクト扉33を透明板製や半透明板製としてリジェクト収納部29内の状態が外から見えるような材質にしておくと、内部の扉ロック部材35の状態を目視することが可能となり、釣銭先行運用と入金先行運用のモードの誤設定を防ぐことができる。
【0034】
さらに、扉ロック部材35にロック状態であることを示す文字等を印刷しておけば、施錠によりリジェクト扉33をロックしたときロック状態であることを示す文字等によりロック状態を確認できることになりより確実な運用モードの誤設定を防止することができる。
【0035】
このように本実施例1では、リジェクト収納部29を直接、錠34付きのリジェクト扉33で開閉するようにしたことにより、釣銭先行運用と入金先行運用の運用に合わせて施錠もしくは開錠しておくだけで対応することができることになり、従来の錠付きのトレイやノブ付きのトレイが必要なく、しかも、そのようなトレイの交換作業を必要としなくなる。
【実施例2】
【0036】
図9は本実施例のリジェクト部の正面説明図、図10は構造の概略説明図であり、リジェクト部7は装置前面に配置され、リジェクト扉33を開いてリジェクト収納部29が開放される構造になっている。リジェクト扉33の開閉を行う回転支点は扉上部にあり、リジェクト収納部29の開口を閉じる側に倒れる構造で、図示しない付勢部材によって閉じた状態が維持できるようになっている。
リジェクト扉33の上部には錠34を設け、この錠34に扉ロック部材35が取り付けてあり、リジェクト扉33が開かないように設定できる。
【0037】
このリジェクト扉33の錠34の近傍にはリジェクト扉33が開くようにロックを解除したときのこの扉ロック部材35を検知するセンサ36が配置されている。このセンサ36は、錠34が施錠状態(リジェクト扉33のロック状態)でOFF、開錠状態(リジェクト扉33のロック解除状態)でONとなり、その出力を図2に示す制御部のI/Oポート15を介してCPU11に通知する。
【0038】
前記制御部のメモリ12にはセンサ36のON、OFFと運用モードとの適正な関係を示す情報つまりセンサ36がONのときは入金先行運用モード、センサ36がOFFのときは釣銭先行運用モードが適正な関係であるという情報が記憶されており、したがって、CPU11はセンサ36からのONまたはOFFのセンサ情報が通知されると、このセンサ情報と操作表示部10のモード切り替えキー等の入力手段10aにより予め入力されている現在の運用モードをメモリ12の記憶情報と比較して、錠34の状態が適正な運用モードに一致しているか否かを判断し、不一致であるときは操作表示部10のLEDにアラーム表示させる。また、不一致の場合、センサ情報に従って、運用モードを切り替えて釣銭先行運用または入金先行運用の運用モードを自動設定させることもできる。
【0039】
このような本実施例によると、釣銭先行運用モードまたは入金先行運用モードのセンサ情報を制御部に通知することにより、硬貨釣銭機の運用モードと錠の状態があっているか否かを判定してLEDのアラーム表示により係員に報知したり、錠の状態に合わせて運用モードを自動設定することができ、セキュリティの確保が可能となる。
【0040】
以上本発明を実施例を用いて説明したが、本発明は前記の如く、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等のレジ精算場において使用されるPOSレジスタ等に接続して硬貨の入出金処理を行う硬貨釣銭機ばかりでなく、銀行等の金融機関内において使用される自動テラー現金預払い機等の行員が使用する端末機等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 釣銭機
2 紙幣釣銭機
3 硬貨釣銭機
4 POSレジスタ
5 入金口
6 出金口
7 リジェクト部
10 操作表示部
10a 入力手段
10b 表示部
11 CPU
12 メモリ
13、14、15 I/Oポート
16 内部バス
19 回収カセット部
20 紙幣入出金口
21 1円ホッパー
22 50円ホッパー
23 5円ホッパー
24 100円ホッパー
25 10円ホッパー
26 500円ホッパー
27 鑑別部
28 入金搬送路
29 リジェクト収納部
30 出金搬送路
31 センサ
32 モータ
33 リジェクト扉
34 錠
35 扉ロック部材
36 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
預かり貨幣を入金した後に釣銭を出金する入金確定運用モードと、釣銭を出金した後に預かり硬貨を入金する釣銭先行運用モードとの運用モードの切り替えが可能であって、
入金された硬貨の少なくとも金種、真偽鑑定を行う鑑別部と、
前記鑑別部で入金不可と判別された硬貨を返却するためのリジェクト収納部とを有する硬貨釣銭機において、
前記リジェクト収納部の開口部に、それを閉じるリジェクト扉を配置すると共にこのリジェクト扉を施錠する錠を設け、
前記釣銭先行運用モードにおいては、リジェクト扉を施錠してリジェクト収納部から硬貨の取り出しを阻止し、
前記入金確定運用モードにおいては、リジェクト扉を開錠してリジェクト収納部から硬貨の取り出しを可能にしたことを特徴とする硬貨釣銭機。
【請求項2】
請求項1記載の硬貨釣銭機において、
前記錠の周囲に、施錠状態のときの錠の鍵穴の向きと開錠状態のときの鍵穴の向きに合わせて釣銭先行運用モードと入金確定運用モードを示す表示を設けたことを特徴とする硬貨釣銭機。
【請求項3】
請求項1記載の硬貨釣銭機において、
前記リジェクト扉を前記リジェクト収納部内の状態が外から見えるような材質とし、前記扉ロック部材にロック状態であることを示す文字等を印刷して、施錠によりリジェクト扉をロックしたときロック状態であることを示す文字等によりロック状態を確認できるようにしたことを特徴とする硬貨釣銭機。
【請求項4】
請求項1記載の硬貨釣銭機において、
前記錠の状態が施錠状態か開錠状態かを検知してその情報を出力するセンサを設け、
前記センサの出力情報との適正な運用モードの関係を示す情報を記憶した記憶部を設けて、
前記センサの検知情報および現在の運用モードを前記記憶部の情報と照合して、前記錠の状態が適正な運用モードと一致しているか否かを判断することを特徴とする硬貨釣銭機。
【請求項5】
請求項4記載の硬貨釣銭機において、
前記錠の状態が運用モードと不一致の場合、係員に報知する表示を行うことを特徴とする硬貨釣銭機。
【請求項6】
請求項4記載の硬貨釣銭機において、
前記錠の状態が運用モードと不一致の場合、前記錠の状態に合わせて運用モードを自動設定することを特徴とする硬貨釣銭機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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