説明

磁場生成装置およびこれを有する船舶

【課題】簡素な構成で、所望の形態の広い磁場を形成することができる磁場生成装置、および該磁場生成装置を有する船舶を提供する。
【解決手段】磁場生成装置100は、船舶300に搭載される搭載電源部10と、搭載電源部10に接続され、且つ船舶300に曳航される給電線部20と、給電線部20に接続された、磁場生成コイルユニット40a、40b、40cを具備する磁場生成コイル部30と、を有している。磁場生成コイルユニット40aは、浮力体41aと、ユニット制御部42aと、ループコイル47aと、 ループコイル47aを傾斜させる傾斜機構49aと、を有し、船舶300からの制御信号によって、ループコイル47aが所定の角度に傾斜され、かつ、船舶300から供給された交流電流が、磁場生成コイルユニット40aにおいて所定の直流電流に変換されてループコイル47aに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁場生成装置およびこれを有する船舶、特に、実際の船舶が形成する磁場に反応する機雷を処理する磁場生成装置、および該掃具を装備したこれを有する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁場生成装置は、実際の船舶が形成する磁場に反応する機雷(いわゆる「高知能磁気機雷」に同じ)を処理するために、XYX3軸のそれぞれの方向にソレノイドコイルを配置した磁場生成コイルユニットを複数台曳航していた。すなわち、磁場生成装置は、掃海艇に設置される搭載電源部と、曳航される給電線部および磁場生成コイル部とを有していた。
搭載電源部は、搭載制御器と、搭載電源と、給電線接続部とを有している。搭載制御器と給電線接続部とは搭載制御信号配線によって接続され、搭載電源と搭載制御器とは搭載制御信号配線によって接続され、搭載電源は搭載制御器によって制御される。
給電線部は、制御信号線および電力供給線と、磁場生成コイル接続部とを有し、給電線接続部(船舶側)と磁場生成コイル接続部とが、制御信号線および電力供給線によって接続されている。
磁場生成コイル部は複数の磁場生成コイル電源器および磁場生成コイルユニットを有し、磁場生成コイル電源器は制御信号線に接続された磁場生成コイル制御部と、電力供給線に接続された複数の交流直流変換器と、を具備している。そして、磁場生成コイル制御部によって制御される複数の交流電流/直流電流変換器(以下、「交直変換器」または「A/D変換器」と称す)は、それぞれ磁場生成コイルユニットに磁場生成コイル給電引出線によって接続されている。なお、磁場生成コイルユニットは、前後方向(X軸)磁場発生コイルと、左右方向(Y軸)磁場発生コイルと、垂直方向(Z軸)磁場発生コイルと、を具備している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】htpp://www.udt-europe.com./g/2010/template/backgrod(Mine Warfare III Thuesday 11th June 13.45hrs)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示された発明は、磁場生成コイルユニットが、前後方向(X軸)磁場発生コイルと、垂直方向(Z軸)磁場発生コイルと、を具備し、それぞれに接続された交直変換器が必要であるため、コイルの構成が複雑になると共に、コイル毎に通電する制御方法が複雑になり、製造コストが上昇すると共に、保全性が悪化するという問題があった。また、模型の精度を上げようとするならば、左右方向(Y軸)の磁場発生コイルも必要になることは容易に想像される。
また、複数のコイルを組み合わせた場合は、構造や重量の制約から、コイルのサイズ(コイルが包囲する面積に対応する)が比較的小さくなる場合が多く、大きな磁気モーメントを得ることが困難なため、掃海範囲が狭くなるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題を解決するものであって、簡素な構成で、所望の形態の広い磁場を形成することができる磁場生成装置、および該磁場生成装置を装備した掃海艇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る磁場生成装置は、曳航される浮力体と、
該浮力体に傾斜自在に設置された環状のループコイルと、
前記浮力体に設置され、前記ループコイルを傾斜させる傾斜機構と、
前記ループコイルに直流電流を供給する直流電力供給手段と、
該直流電力供給手段に交流電力を供給する交流電力供給手段と、
前記傾斜機構および前記直流電力供給手段を制御する制御手段と、
該制御手段に制御信号を伝達する制御信号伝達手段と、を有する。
【0007】
(2)また、前記(1)において、前記浮力体が1台または2台以上であって、
前記浮力体のそれぞれに前記ループコイルおよび前記傾斜手段が設置され、
前記直流電力供給手段が、前記交流電力供給手段から供給された交流電流を直流電流に変換すると共に、変換された直流電流を前記3台のループコイルのそれぞれに供給することを特徴とする請求項1記載の磁場生成装置。
(3)また、前記(1)において、1台の前記浮力体に、複数台のループコイルが並べて設置され、
該浮力体に設置された前記直流電力供給手段が、前記交流電力供給手段から供給された交流電流を直流電流に変換すると共に、変換された直流電流を前記複数台のループコイルのそれぞれに供給することを特徴とする。
【0008】
(4)また、前記(1)乃至(3)の何れかにおいて 前記傾斜機構が、前記ループコイルの一部を把持し、該把持した部分を傾斜中心にして前記ループコイルを傾斜させることを特徴とする。
(5)また、前記(1)乃至(3)の何れかにおいて、前記傾斜機構が、前記ループコイルをそれぞれ異なる位置において支持する複数台の伸縮体であって、該伸縮体のそれぞれの伸縮量を変更することによって、前記ループコイルを傾斜させることを特徴とする。
【0009】
(6)さらに、本発明に係る磁場生成装置を有する船舶は、前記(1)乃至(5)の何れかに記載の磁場生成装置を装備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁場生成装置によれば以下の効果が得られる。
(i)ループコイルが傾斜するから、所望の磁場(例えば、実際の船舶が形成する磁場)を形成することができる。
(ii)また、構成が簡素で、制御方法が簡単であるから、製造コストの上昇を抑え、良好な保全性を維持することができる。
(iii)また、ループコイルの直径(包囲する面積)を容易に大きくすることができるから、大きな磁気モーメントを得ることができ、一度に広い範囲に所定の磁場を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁場生成装置を説明する構成を模式的に示す構成図。
【図2】図1に示す磁場生成装置のユニット制御部の構成を模式的に示す構成図。
【図3】図1に示す磁場生成装置の磁場生成コイルユニットの構成を模式的に示す斜視図。
【図4】図1に示す磁場生成装置の磁場生成コイルユニットの構成を模式的に示す斜視図。
【図5】本発明の実施の形態2に係る磁場生成装置を説明する構成を模式的に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1:磁場生成装置]
図1は本発明の実施の形態1に係る磁場生成装置を説明するものであって、図1は構成を模式的に示す構成図、図2は一部(ユニット制御部)の構成を模式的に示す構成図、図3および図4は一部(磁場生成コイルユニット)の構成を模式的に示す斜視図である。
【0013】
(磁場生成装置)
図1において、磁場生成装置100は、船舶300に搭載される搭載電源部10と、搭載電源部10に接続され船舶300に曳航される給電線部20と、給電線部20に接続された磁場生成コイル部30と、を有している。
【0014】
(搭載電源部)
搭載電源部10は、搭載制御器11と、搭載交流電源装置12と、搭載接続部13と、を有し、 搭載制御器11と搭載交流電源装置(図中、「搭載電源」と記載する)12が搭載電源制御配線14によって、搭載制御器11と搭載接続部13とが搭載制御信号配線15によって、搭載交流電源装置12と搭載接続部13とが搭載交流電流配線16によって、それぞれ接続されている。
【0015】
(給電線部)
給電線部20は、制御信号線21と、交流電線22と、給電接続部23とを有し、制御信号線21および交流電線22の一方の端は搭載接続部13に、他方の端は給電接続部23に接続されている。
このとき、交流電線22は、給電接続部23に向かう往路交流電線と、搭載接続部13に向かう復路交流電線とが撚れて束になったものであって、両者が形成する磁場の位相が相反するため、結果として、交流電線22の周囲には殆ど磁場が形成されない。
なお、給電接続部23や、制御信号線21および交流電線22には、必要に応じ、曳航のために船舶300に設置された曳航索(図示しない)が接続される。
【0016】
(磁場生成コイル部)
磁場生成コイル部30は、磁場生成コイル部制御信号線31と、磁場生成コイル部交流電線32と、これらに接続された磁場生成コイルユニット40a、40b、40cと、を有している。
磁場生成コイルユニット40aは、浮力体41aと、ユニット制御部42aと、ループコイル47aと、 ループコイル47aを傾斜させる傾斜機構49aとを有している。
浮力体41aは磁場生成コイルユニット40aが沈まないようにするものであって、水面に浮上したり、あるいは水中に停留したりする。
なお、浮力体41a等や、磁場生成コイル部制御信号線31および磁場生成コイル部交流電線32には、必要に応じ、曳航のために船舶300(または給電接続部23)に設置された曳航索(図示しない)が接続される。
【0017】
(ユニット制御部)
ユニット制御部42aには、磁場生成コイル部制御信号線31から分岐した磁場生成コイル部制御信号分岐線33aと、磁場生成コイル部交流電線32から分岐した磁場生成コイル部交流電流分岐線34aと、が接続されている。
【0018】
そして、ユニット制御部42aは、船舶300からの制御信号を受信するユニット電流制御器43aと、ユニット電流制御器43aからの信号に基づいて、交流電流を直流電流に変換する交直変換器44aと、ユニット電流制御器43aからの信号に基づいて傾斜機構49aに供給する駆動電流を生成する傾斜機構駆動制御器45aと、を有している(図2参照)。
そして、交直変換器44aにおいて変換された直流電流は、ループコイル直流電線46aによってループコイル47aに供給され、ループコイル47aの周囲に所定の磁場を形成する。
また、傾斜機構駆動制御器45aにおいて生成された駆動電流は、傾斜機構駆動電線48aによって傾斜機構49aに供給される。なお、傾斜機構49aがステッピングモーターによって駆動される場合には、前記駆動電流は、所定回数のパルスになる。
なお、ループコイル直流電線46aは、ループコイル47aに向かう往路直流電線と、ユニット制御部42aに向かう復路直流電線と、を有し、両者が形成する磁場の位相が相反するため、結果として、ループコイル直流電線46aの周囲には殆ど磁場が形成されない。
【0019】
なお、磁場生成コイルユニット40b、40cは何れも磁場生成コイルユニット40aと同じ構成であるから、図において、各部材の符号を同じにして、符号に付した子番をそれぞれ「b、c」に変更して描き、説明を省略する。
したがって、磁場生成コイルユニット40a、40b、40cにおけるループコイル47a、47b、47cそれぞれに供給する直流電流の大きさや傾斜角度を選定することによって、所望の磁場(例えば、実際の船舶が形成する磁場)を形成することが可能になる。
このとき、ループコイル47a、47b、47cにはそれぞれ1台の交直変換器44a、44b、44cを設けるだけ(合計3台)で済むから、従来のようにXYZ3軸のそれぞれの方向にソレノイドコイルを配置した磁場生成コイルユニットを3台曳航する場合に、それぞれのソレノイドコイル毎に、交直変換器を設ける(合計9台)のに比較して、装置が簡素になり、製造コストが安価になる。
【0020】
(傾斜機構)
図3において、傾斜機構49aは、矩形状のループコイル47aのそれぞれの辺に設置された伸縮体491a、492a、493a、494aである。伸縮体491a、492a、493a、494aはそれぞれの伸縮量が制御されるものであって、例えば、伸縮シリンダ(図3の(a)参照)や、供給されるエアー量が制御されるエアージャッキ等(図3の(b)参照)である。
なお、供給されるエアーは、図示しない圧力空気ホースによって船舶300から供給してもよいし、浮力体41aに小型の圧縮空気ポンプを設置して供給するようにしてもよい。また、伸縮体491a、492a、493a、494aの何れか1台を、回転支持手段にして、矩形状のループコイル47aの何れかの辺を昇降しないで、回転自在に支持するようにしてもよい。
【0021】
図4において、傾斜機構49aは、矩形状のループコイル47aの一辺を把持する起立転倒駆動装置495aである。起立転倒駆動装置495aは、例えば、電動式であればステッピングモータ(図示しない)の回転軸に直接または減速機を介して接続され、ループコイル47aの一辺を中心に回動するものである。
【0022】
[実施の形態2:磁場生成装置]
図5は本発明の実施の形態2に係る磁場生成装置を説明するものであって、構成を模式的に示す構成図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分の符号には、同じ数字を付し、一部の説明を省略する。
(磁場生成装置)
図5において、磁場生成装置200は、磁場生成装置100における磁場生成コイル部30を構成する浮力体41a、41b、41cを、1台の浮力体41dに集約し、浮力体41dにループコイル47a、46b、46c等を設置している。また、ユニット制御部42a、42b、42bを1台のユニット制御部42dに集約している。
そして、これらを除く構成は磁場生成装置100に同じであるから、磁場生成装置100と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、ループコイル直流電線46a等および傾斜機構駆動電線48a等の描写を省略している。
したがって、磁場生成装置200は、磁場生成コイル部30がコンパクトにまとまるから、製造コストがさらに安価になる。
【0023】
[実施の形態3:磁場生成装置を有する船舶]
本発明の実施の形態3に係る磁場生成装置を有する船舶は、実施の形態1および実施の形態2において説明した船舶300と同じであるから、説明を省略する。すなわち、磁場生成装置100または磁場生成装置200を装備したものである。したがって、一度に広い範囲に所定の磁場を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、構成が簡素で容易に所望の磁場を生成することができるから、いろいろな要請(例えば、掃海等)に応じた磁場を生成する磁場生成装置として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 搭載電源部
11 搭載制御器
12 搭載交流電源装置
13 搭載接続部
14 搭載電源制御配線
15 搭載制御信号配線
16 搭載交流電流配線
20 給電線部
21 制御信号線
22 交流電線
23 給電接続部
30 磁場生成コイル部
31 磁場生成コイル部制御信号線
32 磁場生成コイル部交流電線
33 磁場生成コイル部制御信号分岐線
34 磁場生成コイル部交流電流分岐線
40 磁場生成コイルユニット
41 浮力体
42 ユニット制御部
43 ユニット電流制御器
44 交直変換器
45 傾斜機構駆動制御器
46 ループコイル直流電線
47 ループコイル
48 傾斜機構駆動電線
49 傾斜機構
100 磁場生成装置(実施の形態1)
200 磁場生成装置(実施の形態2)
300 船舶(実施の形態3)
491 伸縮体
495 起立転倒駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曳航される浮力体と、
該浮力体に傾斜自在に設置された環状のループコイルと、
前記浮力体に設置され、前記ループコイルを傾斜させる傾斜手段と、
前記ループコイルに直流電流を供給する直流電力供給手段と、
該直流電力供給手段に交流電力を供給する交流電力供給手段と、
前記傾斜手段および前記直流電力供給手段を制御する制御手段と、
該制御手段に制御信号を伝達する制御信号伝達手段と、
を有する磁場生成装置。
【請求項2】
前記浮力体が1台または2台以上であって、
前記浮力体のそれぞれに前記ループコイルおよび前記傾斜手段が設置され、
前記直流電力供給手段が、前記交流電力供給手段から供給された交流電流を直流電流に変換すると共に、変換された直流電流を前記3台のループコイルのそれぞれに供給することを特徴とする請求項1記載の磁場生成装置。
【請求項3】
1台の前記浮力体に、複数台のループコイルが並べて設置され、
該浮力体に設置された前記直流電力供給手段が、前記交流電力供給手段から供給された交流電流を直流電流に変換すると共に、変換された直流電流を前記複数台のループコイルのそれぞれに供給することを特徴とする請求項1記載の磁場生成装置。
【請求項4】
前記傾斜手段が、前記ループコイルの一部を把持し、該把持した部分を傾斜中心にして前記ループコイルを傾斜させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の磁場生成装置。
【請求項5】
前記傾斜手段が、前記ループコイルをそれぞれ異なる位置において支持する複数台の伸縮体であって、該伸縮体のそれぞれの伸縮量を変更することによって、前記ループコイルを傾斜させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の磁場生成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の磁場生成装置を有する船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183950(P2011−183950A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51947(P2010−51947)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(509202558)ユニバーサル特機株式会社 (12)