説明

磁場生成装置およびこれを有する船舶

【課題】比較的小径の牽引ロープにすることで、航行の抵抗を低減し、牽引ロープの引き出し装置や収納装置を小型や簡素にすることができる、安価な磁場生成装置および船舶を提供する。
【解決手段】磁場生成装置は、電流注入部30が設けられた超伝導コイル7と、電流注入部30に永久電流スイッチ4を介して接続されたバッテリ5と、バッテリ5に蓄電放電制御部6を介して接続された注入電流端子装置1と、を有し、注入電流端子装置1に注入電源110が接続された際、バッテリ5に電気エネルギーが貯蔵され、注入電流端子装置1が注入電源110から引き離された状態で、超伝導コイル7にバッテリ5から電気エネルギーが供給され、超伝導コイル7を流れる永久電流によって磁場を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁場生成装置およびこれを有する船舶、特に、実際の船舶が形成する磁場に反応する機雷を処理するのに好適な磁場生成装置、および該磁場生成装置を有する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁場生成装置(磁気掃海装置に同じ)は、掃海艇に牽引されるものであって、掃海艇から給電ケーブルを介して供給された直流電流を、磁場生成装置を構成するコイルに流すことによって所定の磁場を生成するものである。このとき、特に、複数の磁場生成装置を牽引するとき、給電ケーブルが長尺かつ大径になるため、航行の大きな抵抗になったり、給電ケーブルの引き出し装置や収納装置が大型化や複雑化したりするという問題があった。
そこで、電源装置と超伝導磁石構造を有することによって、給電ケーブルを不要にする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−150038号公報(第6−7頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、水力タービン発電機を利用する内蔵発電のため、牽引しながら可変ピッチプロペラを回転する必要がある。そのため、航行の抵抗が増大するだけでなく、牽引ロープに要求される強度が増し、牽引ロープが大径になったり、牽引ロープの引き出し装置が堅固になったり、あるいは、牽引ロープの収納装置が大型化したりするという新たな、問題がある。また、水力タービン発電機が高価なため、磁場生成装置の価格が高騰するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題を解決するものであって、比較的小径の牽引ロープにすることで、航行の抵抗を低減し、牽引ロープの引き出し装置や収納装置を小型や簡素にすることができる、安価な磁場生成装置および該磁場生成装置を有する船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る磁場生成装置は、電流注入部が設けられた超伝導コイルと、
前記電流注入部に短絡絶縁手段を介して接続された蓄電部と、
該蓄電部に蓄電放電制御部を介して接続された端子手段と、
を有し、
前記端子手段に注入電源が接続された際、前記蓄電部に電気エネルギーが貯蔵され、
前記端子手段が注入電源から引き離された状態で、前記超伝導コイルに前記蓄電部から電気エネルギーが供給され、前記超伝導コイルを流れる永久電流によって磁場を生成することを特徴とする。
(2)また、前記電流注入部に加熱手段が設置され、該加熱手段に通電することによって、前記超伝導コイルを加熱して、永久電流の流れを止めることを特徴とする。
(3)さらに、本発明に係る船舶は、前記(1)または(2)に記載の海中磁場生成装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の磁場生成装置によれば、曳航される際、給電線によって船舶に接続される必要がないから、比較的小径の牽引ロープによって曳航するだけで済むため、航行の抵抗を低減し、牽引ロープの引き出し装置や収納装置を小型や簡素にすることができる。よって、装置が安価になると共に、装備する船舶の自由度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る船舶を模式的に示す構成図。
【図2】本発明の実施の形態2に係る磁場生成装置を説明する一部(超伝導コイル)を抜き出して模式的に示す斜視図。
【図3】図2に示す磁場生成装置の一部(電流注入部)を抜き出して模式的に示す側面図。
【図4】図2に示す磁場生成装置の構成を模式的に示す配線図。
【図5】図2に示す磁場生成装置の全体構成を模式的に示す配線図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1:船舶]
図1は本発明の実施の形態1に係る船舶を模式的に示す構成図である。
図1において、船舶100は、磁場生成装置10a、10b、10cを有している。
磁場生成装置10aは牽引ロープ11aによって船舶100に接続され、磁場生成装置10bは牽引ロープ11bによって磁場生成装置10aに接続され、磁場生成装置10cは牽引ロープ11cによって磁場生成装置10bに接続されている。
なお、磁場生成装置10a、10b、10cのそれぞれや牽引ロープ11a、11b、11cのそれぞれは、基本的に同じ構成(大きさや長さ等は相違する場合がある)であるから、以下の説明において、同じ内容または相当する内容については符号の添え字「a、b、c」の記載を省略する。
【0010】
また、船舶100が牽引する磁場生成装置10は3台であるが、本発明はその台数を限定するものではない。また、牽引ロープ11は一対であるが、1本または3本以上であってもよい。複数本にすることによって、磁場生成装置10のローリングの発生を防止する可能性が増大する。また、磁場生成装置10同士を牽引ロープ11に接続しないで、磁場生成装置10のそれぞれを船舶100に直接接続するようにしてもよい。
図1において、磁場生成装置10は略円筒状の中央ケース13と、中央ケース13の両端を覆う略円錐台状の前方ケース12および後方ケース14とからなる密閉容器であって、中央ケース13の内部は図示しない断熱手段によって低温チャンバーが形成され、該低温チャンバー内に超伝導コイル7(図2、3参照)が配置されている。
【0011】
[実施の形態2:磁場生成装置]
図2〜図5は本発明の実施の形態2に係る磁場生成装置を説明するものであって、図2は一部(超伝導コイル)を抜き出して模式的に示す斜視図、図3は一部(電流注入部)を抜き出して模式的に示す側面図、図4は構成を模式的に示す配線図、図5は全体構成を模式的に示す配線図である。なお、各図において同じ部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0012】
図2および図3において、超伝導コイル7には電流注入部30が設けられ、電流注入部30において、スーパーキャパシター等によって形成されたバッテリ(蓄電部に同じ)5に、通電線22、23によって接続されている。通電線22と通電線23とは永久電流取り入れ/取り出しスイッチ(以下、「永久電流スイッチ」と称す)4によって短絡または切断され、通電線23には蓄電放電制御部6が設置され、蓄電放電制御部6にバッテリ5が接続されている。
また、通電線22には注入電流調整用抵抗器(以下、「注入用抵抗器」と称す)3が設置された通電線21が接続され、通電線23には通電線24が接続され、通電線21および通電線24は、それぞれ注入電流端子装置(以下、「注入端子」と称す)1に接続されている。
【0013】
さらに、電流注入部30には、加熱用ヒーター31が設置され、加熱用ヒーター31は、加熱用通電線34および加熱用通電線35によって加熱用電源32に接続されている。そして、加熱用通電線34には加熱用スイッチ33が設置されている。
なお、注入用抵抗器3、永久電流スイッチ4、および加熱用スイッチ33は、制御器2によって制御されるものであり、制御器2には、船舶100に装備された管制機120から、所定の制御信号が送信される。
【0014】
図4の(a)において、磁場生成装置10は船舶100において、船舶100に設けられた注入電源110と注入電流端子装置1とが接続され、管制機120の制御信号に基づいて、電気エネルギーがバッテリ5に蓄電される。このとき、図示しない配線によって、加熱用電源32にも電気エネルギーが蓄電される。
【0015】
図4の(b)および図5において、注入電流端子装置1が注入電源110から切り離され、磁場生成装置10は船舶100によって牽引されている。そして、管制機120の制御信号を受けた制御器2の制御によって、永久電流スイッチ4および蓄電放電制御部6が作動(ON)し、バッテリ5に蓄電された電気エネルギーが超伝導コイル7に供給される。そうすると、超伝導コイル7には永久電流が流れ、その周囲に磁場が生成される。
【0016】
また、磁場の生成を中止する際には、加熱用スイッチ33が作動(ON)し、加熱用ヒーター31に通電され、加熱用ヒーター31は発熱する。そうすると、超伝導コイル7に電気抵抗が生じ、永久電流の流れがなくなり、その周囲に磁場が消える。
さらに、再度、磁場を生成する際は、前記と同様に、永久電流スイッチ4が作動(ON)して、バッテリ5に蓄電された電気エネルギーを超伝導コイル7に供給する。
なお、船舶100に搭載された管制機120と磁場生成装置10における制御器2とは、有線または無線によって接続されている。
【0017】
以上のように、磁場生成装置10は、給電線によって船舶100に接続される必要がなく、曳航されながら、所望の磁場を生成したり、生成した磁場を消したり、さらに、再度磁場を生成したりすることができる。よって、比較的小径の牽引ロープによって曳航するだけで済むため、航行の抵抗を低減し、牽引ロープの引き出し装置や収納装置を小型や簡素にすることができるから、安価になる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、航行の抵抗を低減し、装置を小型や簡素にすることができるから、いろいろな磁場生成域に応じた磁場生成装置および磁場生成装置を有する船舶として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 注入電流端子装置(注入端子)
2 制御器
3 注入用抵抗器
4 永久電流取り入れ/取り出しスイッチ(永久電流スイッチ)
5 バッテリ
6 蓄電放電制御部
7 超伝導コイル
10 磁場生成装置
11 牽引ロープ
12 前方ケース
13 中央ケース
14 後方ケース
21 通電線
22 通電線
23 通電線
24 通電線
30 電流注入部
31 加熱用ヒーター
32 加熱用電源
33 加熱用スイッチ
34 加熱用通電線
35 加熱用通電線
100 船舶
110 注入電源
120 管制機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流注入部が設けられた超伝導コイルと、
前記電流注入部に短絡絶縁手段を介して接続された蓄電部と、
該蓄電部に蓄電放電制御部を介して接続された端子手段と、
を有し、
前記端子手段に注入電源が接続された際、前記蓄電部に電気エネルギーが貯蔵され、
前記端子手段が注入電源から引き離された状態で、前記超伝導コイルに前記蓄電部から電気エネルギーが供給され、前記超伝導コイルを流れる永久電流によって磁場を生成することを特徴とする磁場生成装置。
【請求項2】
前記電流注入部に加熱手段が設置され、該加熱手段に通電することによって、前記超伝導コイルを加熱して、永久電流の流れを止めることを特徴とする請求項1記載の磁場生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の磁場生成装置を有することを特徴とする船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−228487(P2011−228487A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97152(P2010−97152)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(509202558)ユニバーサル特機株式会社 (12)