説明

磁性ゲル

【課題】磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きい磁性ゲルを提供することを目的とする。
【解決手段】高分子物質と、磁性粒子と、前記磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径の磁性微粒子と、溶媒とを含有することを特徴とする磁性ゲルを用いる。その際、前記磁性粒子が、分散性を有することが好ましく、前記磁性粒子が、酸化鉄粒子であることが好ましい。また、磁場の印加によって、弾性率が可逆的に変化し、その変化が、印加する磁場の磁束密度によって、弾性率が略比例的であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性ゲルは、高分子物質に磁性流体や強磁性微粒子等を含ませたゲルであって、磁場を印加することによって、弾性率等の粘弾性特性が変化したり、伸縮変形する刺激応答性高分子ゲルである。すなわち、このような磁性ゲルは、印加する磁場によって、変化する弾性率や伸縮変形等により、駆動力が発生してアクチュエータ効果が得られる。よって、軟らかさが変わるマットや、振動を素早く抑える制振材等としての応用が検討されている。
【0003】
このような印加した磁場によって、弾性率が変化する材料としては、特許文献1〜3に記載の材料等が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、可撓性を有する高分子材料に、磁場の作用により磁気分極する粒子が分散している弾性率可変材料が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、非球状の磁性粒子及び粘弾性材料を含有する磁気応答性材料が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、粘弾性材料に非球状の磁性粒子を分散させた磁気応答性材料であって、前記非球状の磁性粒子は、前記粘弾性材料中で配向している磁気応答性材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−266970号公報
【特許文献2】特開2008−13631号公報
【特許文献3】特開2008−195826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によれば、使用に適した特定の形状に加工できる可撓性材料であって、磁場の作用により弾性率が変化することができ、さらに、印加する磁場の強さを調節することにより、弾性率の変化量を連続的にかつ任意にコントロールできることが開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の材料では、印加する磁場を強くしても、磁場の印加前後の弾性率の変化量が充分に大きいものが得られない場合があった。
【0010】
また、特許文献2及び特許文献3によれば、磁場を印加した場合、印加後の弾性率が印加前に比べて大きく低下することが開示されている。そして、印加前後でほぼ同様の弾性率を示す従来公知の材料とは全く異なることが開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載の材料では、磁場の印加前後の弾性率の変化量が充分に大きいものが得られない場合があった。また、特許文献2及び特許文献3には、上述したように、印加後の弾性率が印加前に比べて低下する材料について記載されており、印加前後の弾性率の変化量が充分に大きいものを得ようとするものではなかった。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きい磁性ゲルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る磁性ゲルは、高分子物質と、磁性粒子と、前記磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径の磁性微粒子と、溶媒とを含有することを特徴とする。
【0014】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子が、分散性を有することが好ましい。
【0015】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子が、酸化鉄粒子であることが好ましい。
【0016】
また、前記磁性ゲルにおいて、磁場の印加によって、弾性率が可逆的に変化することが好ましい。
【0017】
また、前記磁性ゲルにおいて、印加する磁場の磁束密度によって、弾性率が略比例的に変化することが好ましい。
【0018】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁束密度が400mT以下の範囲で、弾性率が略比例的に変化することが好ましい。
【0019】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の少なくとも一方が、非球状の粒子、表面が粗面である粒子、及び表面に突起部を有する粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の少なくとも一方が、磁場を印加した際に前記溶媒と接触する面が凹凸状となるように整列するものであることが好ましい。
【0021】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記高分子物質が、寒天、カラギーナン、及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記溶媒が、水であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きい磁性ゲルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る磁性ゲルの弾性率を測定する方法を説明するための図面である。
【図2】本実施形態に係る磁性ゲルの伸縮変形について説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の実施形態に係る磁性ゲルは、高分子物質と、磁性粒子と、前記磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径の磁性微粒子と、溶媒とを含有するものである。そうすることによって、磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きい磁性ゲルが得られる。
【0027】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0028】
まず、高分子物質と溶媒とを含む磁性ゲルとすることにより、高分子物質を溶媒で膨潤させた状態、すなわち、高分子物質に溶媒が内在した状態になると考えられる。
【0029】
また、磁場を印加していない状態では、磁性粒子と磁性微粒子とが含有されていても、それらが磁性ゲル自体の弾性率にほとんど作用せず、さらに、高分子物質に溶媒が内在した状態であるので、磁性ゲルの弾性率としては、比較的低いものになると考えられる。
【0030】
一方、磁場を印加した状態では、磁性粒子と磁性微粒子とが印加された磁場によって、それぞれが結合する方向に力を発揮し、その結合力によって、磁性ゲルの弾性率を高めると考えられる。
【0031】
また、高分子物質に溶媒が内在した状態であるので、磁場が印加されると、磁性微粒子は磁性ゲル内を比較的自由に移動できると考えられる。このことから、磁場が印加されることによって発揮される磁気結合力が磁性ゲルに大きく働き、磁性ゲルの弾性率をより高めると考えられる。
【0032】
さらに、高分子物質を構成する高分子鎖も、高分子物質に内在した溶媒の存在によって、柔軟性が高く、多少の変形は可能であると考えられる。よって、磁性粒子は、磁性微粒子より大きいので、高分子物質を構成する高分子鎖によって移動を阻害され、磁性微粒子ほど自由に移動できないと考えられるが、磁気粒子も、高分子鎖の変形等によって、磁性ゲル内をある程度自由に移動できると考えられる。このことからも、磁場が印加されることによって発揮される磁気結合力が磁性ゲルに大きく働き、磁性ゲルの弾性率をより高めると考えられる。
【0033】
また、磁場を印加した状態では、磁性粒子と磁性微粒子とに、それぞれが結合する方向に磁気結合力が発揮され、磁性粒子と磁性微粒子とが近づく方向に移動すると考えられる。その際、このような移動に伴って、高分子物質を構成する高分子鎖同士も近づく方向に移動し、高分子物質に内在された溶媒を放出すると考えられる。そして、磁場を印加しなくなった場合、磁性ゲル周辺に存在する溶媒を再度吸収できると考えられる。このような含有される溶媒量の変化も、弾性率の変化に寄与すると考えられる。
【0034】
そして、磁性粒子と磁性微粒子とによる弾性率の変化量は、磁性粒子及び磁性微粒子の含有量に依存すると考えられる。磁性粒子だけではなく、磁性微粒子を含有させることによって、磁性粒子及び磁性微粒子の含有量を高めることができる。すなわち、磁性粒子を、磁性ゲルを構成できる限界まで含有させたとしても、さらに磁性微粒子を含有させることができる。よって、磁場の印加前後における弾性率の変化量を大きくすることができると考えられる。
【0035】
以上のことから、磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きい磁性ゲルが得られると考えられる。
【0036】
また、本実施形態に係る磁性ゲルは、上述したように、磁場の印加前後における弾性率の変化量を大きいものである。具体的には、例えば、本実施形態に係る磁性ゲルは、磁性粒子及び磁性微粒子を含有しないこと以外、本実施形態に係る磁性ゲルと同様の構成のゲルとほぼ同程度の弾性率であっても、磁場を印加することによって、その弾性率を大きく高めることができるものであるもの等が挙げられる。
【0037】
また、本実施形態に係る磁性ゲルは、磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きいので、制振材料等として好適に用いることができる。
【0038】
なお、ここで弾性率とは、変形のしにくさを表す物理量であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、曲げ弾性率、引張弾性率、圧縮弾性率、せん断(ずり)弾性率、及び貯蔵弾性率等が挙げられる。
【0039】
この弾性率の一例である圧縮弾性率とは、部材に圧縮荷重を作用させた場合の圧縮ひずみε(圧縮変形量/初期厚み)に対する圧縮応力σ(圧縮荷重/圧縮作用面積)の比(σ/ε)で表される弾性率である。より具体的には、例えば、以下に示すような弾性率等である。なお、図1は、本実施形態に係る磁性ゲルの弾性率を測定する方法を説明するための図面である。
【0040】
まず、圧縮弾性率とは、部材(測定対象物)に圧縮荷重を作用させた場合の圧縮ひずみε(圧縮変形量/初期厚み)に対する圧縮応力σ(圧縮荷重/圧縮作用面積)の比(σ/ε)で表される弾性率である。
【0041】
圧縮弾性率は、例えば、圧縮試験機や動的粘弾性測定装置等の弾性率測定装置を用いて、圧縮ひずみεと圧縮応力σとを同時に測定し、その測定結果から算出することができる。より具体的には、例えば、まず、図1(a)に示すように、測定対象物である磁性ゲル11を、弾性率測定装置の下方治具12と上方治具13とを挟むように配置する。そして、上方治具13が下方治具12に近づく方向である矢符14の示す方向に圧縮荷重を磁性ゲル11に作用させる。その際の圧縮ひずみεと圧縮応力σとを弾性率測定装置によって同時に測定する。その測定された圧縮ひずみεと圧縮応力σとから圧縮弾性率を算出する。なお、磁場が印加された状態の磁性ゲル11の圧縮弾性率を測定する際には、下方治具12から上方治具13に向かう方向である矢符15の示す方向に磁力線が形成されるように磁場を形成させた状態で圧縮ひずみεと圧縮応力σとを測定すればよい。
【0042】
次に、弾性率の他の一例であるせん断弾性率とは、部材(測定対象物)にせん断荷重を作用させた場合の剪断ひずみγに対するせん断応力σの比(G=σ/γ)で表される弾性率である。
【0043】
また、せん断弾性率には、例えば、ねじりによるせん断弾性率とずりによるせん断弾性率とが挙げられる。
【0044】
ねじりによるせん断弾性率とは、部材(測定対象物)にせん断荷重としてねじり荷重を作用させた場合のねじりひずみ(せん断ひずみ)γに対するねじり応力(せん断応力)σの比(G=σ/γ)で表される弾性率である。
【0045】
ねじりによるせん断弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置等の弾性率測定装置を用いて、ねじりひずみ(せん断ひずみ)γとねじり応力(せん断応力)σとを同時に測定し、その測定結果から算出することができる。より具体的には、例えば、まず、図1(b)に示すように、測定対象物である磁性ゲル11を、弾性率測定装置の下方治具12と上方治具13とを挟むように配置する。そして、上方治具13を、上方治具13と下方治具12との中心線を回転軸として回転させる、すなわち矢符16に示す方法に回転させて、磁性ゲル11にねじり荷重を作用させる。その際のねじりひずみ(せん断ひずみ)γとねじり応力(せん断応力)σとを弾性率測定装置によって同時に測定する。その測定されたねじりひずみ(せん断ひずみ)γとねじり応力(せん断応力)σとからねじりによるせん断弾性率を算出する。なお、磁場が印加された状態の磁性ゲル11のせん断弾性率を測定する際には、下方治具12から上方治具13に向かう方向である矢符15の示す方向に磁力線が形成されるように磁場を形成させた状態でねじりひずみ(せん断ひずみ)γとねじり応力(せん断応力)σとを測定すればよい。
【0046】
また、ずりによるせん断弾性率とは、部材(測定対象物)にせん断荷重としてずり荷重を作用させた場合のずりひずみ(せん断ひずみ)γに対するずり応力(せん断応力)σの比(G=σ/γ)で表される弾性率である。
【0047】
ずりによるせん断弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置等の弾性率測定装置を用いて、ずりひずみ(せん断ひずみ)γとずり応力(せん断応力)σとを同時に測定し、その測定結果から算出することができる。より具体的には、例えば、まず、図1(c)に示すように、測定対象物である磁性ゲル11を、弾性率測定装置の下方治具12と上方治具13とを挟むように配置する。そして、上方治具13を、下方治具12と上方治具13との中心線に垂直な方向である矢符17の示す方向に移動させて、磁性ゲル11にずり荷重を作用させる。その際のずりひずみ(せん断ひずみ)γとずり応力(せん断応力)σとを弾性率測定装置によって同時に測定する。その測定されたずりひずみ(せん断ひずみ)γとずり応力(せん断応力)σとからずりによるせん断弾性率を算出する。なお、磁場が印加された状態の磁性ゲル11のせん断弾性率を測定する際には、下方治具12から上方治具13に向かう方向である矢符15の示す方向に磁力線が形成されるように磁場を形成させた状態でずりひずみ(せん断ひずみ)γとずり応力(せん断応力)σとを測定すればよい。
【0048】
また、圧縮弾性率を測定する際に用いる弾性率測定装置としては、例えば、株式会社オリエンテック製のSTA−1150等が挙げられる。また、ねじりによるせん断弾性率を測定する際に用いる弾性率測定装置としては、例えば、アントンパール社製のMCR301等が挙げられる。
【0049】
また、ここでの体積平均粒子径は、一般的な粒度計等を用いて測定することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る磁性ゲルは、磁場の印加によって、その弾性率が可逆的に変化することが好ましい。そして、本実施形態に係る磁性ゲルは、印加する磁場の磁束密度によって、その弾性率が略比例的に変化することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る磁性ゲルは、印加する磁場の磁束密度を高くすれば、その弾性率が高くなり、印加する磁場の磁束密度を低くすれば、その弾性率が低くなるような可逆的な変化を示すものであることが好ましい。なお、その略比例的な変化は、比例限界があってもよい。具体的には、例えば、本実施形態に係る磁性ゲルに印加する磁場の磁束密度が400mT以下まで略比例的な変化が成り立つことが好ましい。
【0051】
また、本実施形態に係る磁性ゲルは、磁場を印加によって、上述したように、弾性率が変化するだけではなく、図2に示すような伸縮変形してもよい。なお、図2は、本実施形態に係る磁性ゲルの伸縮変形について説明するための図面である。
【0052】
まず、磁界として、均一磁界を印加した場合、本実施形態に係る磁性ゲルは、例えば、図2(a)に示すような伸縮変形をすることが考えられる。磁性ゲル11に、ある方向、図2(a)の場合、矢符21の示す方向に磁力線が形成されるように磁場を印加した場合、磁性ゲル11は、形成された磁力線に沿って伸び、磁力線に垂直な方向に縮んだ磁性ゲル22となると考えられる。
【0053】
このことは、磁場が印加した状態では、磁性粒子と磁性微粒子とが印加された磁場によって、それぞれが結合する方向に力を発揮し、磁力線に沿うような形状に、磁性粒子及び磁性微粒子のクラスタを形成すると考えられる。そして、磁性粒子及び磁性微粒子が磁力線に沿うような形状になるので、それに伴って、マトリックスとなる、溶媒が内在された高分子物質も引っ張られ、磁性ゲル自体も、磁力線に沿って伸びると考えられる。
【0054】
次に、磁界として、磁石等による不均一磁界を印加した場合、本実施形態に係る磁性ゲルは、図2(b)や図2(c)に示すような伸縮変形をすることが考えられる。
【0055】
まず、図2(b)に示すように、本発明に係る磁性ゲル11の一表面に接触する板状部材23があり、磁性ゲル11の板状部材23を挟んで反対側に、磁石24を配置した場合、磁性ゲル11は、板状部材23の面方向に垂直な方向に縮み、板状部材23の面方向に平行な方向に伸びた磁性ゲル25となると考えられる。すなわち、磁性ゲル11全体が、磁石24に近づく方向に変形すると考えられる。このことは、磁石24によって、磁性粒子及び磁性微粒子が磁石24に近づく方向に吸引力が発生するためであると考えられる。
【0056】
また、図2(b)に示すように、本発明に係る磁性ゲル11の一表面(接触面)に接触する板状部材23があり、接触面に対向する面近傍に離間した状態で磁石24配置した場合、磁性ゲル11は、板状部材23の面方向に垂直な方向に伸び、板状部材23の面方向に平行な方向に縮んだ磁性ゲル26となると考えられる。すなわち、磁性ゲル11全体が、磁石24に近づく方向に変形すると考えられる。このことは、磁石24によって、磁性粒子及び磁性微粒子が磁石24に近づく方向に吸引力が発生し、さらに、板状部材23が磁性ゲル11の移動を拘束する方向に力が発生するためであると考えられる。
【0057】
なお、ここでの磁場の印加は、本実施形態に係る磁性ゲルの弾性率を変化させることができるような磁場であれば、特に限定されない。また、本実施形態に係る磁性ゲルを、上述したような伸縮変形するような磁力線が形成される磁場であることが好ましい。具体的には、例えば、電磁石を用いてコイルに電流を流すことによって磁場を発生させる方法、永久磁石を近づける方法、及び磁場発生装置を用いる方法等が挙げられる。この中でも、電磁石を用いてコイルに電流を流すことによって磁場を発生させる方法が、コイルに流す電流を制御することで、磁性ゲルの弾性率や伸縮変形の変化量を制御できる点から好ましい。また、磁場発生装置を用いる方法も、装置の出力を制御することで、磁性ゲルの弾性率や伸縮変形の変化量を制御できる点から好ましい。さらに、磁場発生装置を用いる方法は、装置の出力を制御するだけであるので、磁性ゲルの弾性率や伸縮変形の変化量の制御が容易である点からより好ましい。ここで、磁場発生装置としては、具体的には、例えば、アントンペール社製のMRD等が挙げられる。
【0058】
また、磁場を印加した状態での、ねじりによるせん断弾性率は、具体的には、例えば、磁場発生装置を備えた弾性率測定装置を用いることによって、測定することができる。磁場発生装置を備えた弾性率測定装置としては、例えば、磁場発生装置(アントンペール社製のMRD)を備えた弾性率測定装置(アントンパール社製のMCR301)等が挙げられる。なお、磁場を印加しない状態での、ねじりによるせん断弾性率は、同様の装置を用い、磁場発生装置から磁場を発生しないようにして、弾性率を測定すれば、測定することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る磁性ゲルは、高分子物質に溶媒が内在された状態であるとともに、溶媒が内在された状態の高分子物質の表面にも存在するので、摩擦を低減させたり、粘着性を発現させたりすることができると考えられる。
【0060】
本実施形態で用いる高分子物質としては、溶媒とともに、ゲルを構成できるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、物理的架橋や化学的架橋等によって架橋された高分子物質等が挙げられる。より具体的には、例えば、公知の架橋剤を用いて、架橋させた高分子物質等が挙げられる。また、高分子物質としては、天然高分子物質であっても、合成高分子物質であってもよい。
【0061】
高分子物質の一例である天然高分子物質としては、具体的には、例えば、カラギーナン、デンプン、寒天、ゼラチン、及びカゼイン等が挙げられる。
【0062】
高分子物質の他の一例である合成高分子物質としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム等のポリメタクリル酸の塩、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸のエステル、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン等の水溶性ポリマー、イソブテンと無水マレイン酸との共重合体、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体、マレイン化油とポリエチレングリコールとの共重合体等の共重合体、これら例示された各共重合体の変性物、ポリビニルアルコールのアクリルアミド変性物、これら例示された各樹脂の架橋物、シリコーン樹脂の架橋物等が挙げられる。
【0063】
また、架橋剤を用いる場合であっても、その架橋剤としては、特に限定されない。具体的には、例えば、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物等が挙げられる。
【0064】
本実施形態で用いる高分子物質としては、例示された各高分子物質を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、例示された各高分子物質の中でも、寒天、カラギーナン、及びポリビニルアルコールが好ましく、カラギーナンがより好ましい。
【0065】
本実施形態で用いる、磁性粒子及び磁性微粒子としては、磁性を有し、磁性微粒子が磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径を有する関係を満たしていれば、特に限定されない。
【0066】
本実施形態で用いる磁性粒子としては、磁性を有し、磁性微粒子が磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径を有する関係を満たしていれば、特に限定されない。具体的には、例えば、フェロ磁性、フェリ磁性、常磁性、超常磁性を有する粒子等が挙げられる。より具体的には、例えば、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライトを主成分とするフェライト粒子、マグネタイト等の酸化鉄を主成分とする酸化鉄粒子、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性を有する金属を主成分とする磁性金属粒子、カルボニル鉄を主成分とするカルボニル鉄粒子等が挙げられる。
【0067】
また、本実施形態で用いる磁性粒子としては、分散性を有することが好ましい。そうすることによって、磁場の印加前後における弾性率の変化量がより大きい磁性ゲルが得られる。このことは、前記磁性粒子が、分散性を有するほうが、磁場が印加されていないときには、前記磁性ゲル内に前記磁性粒子が分散されやすいので、前記磁性粒子が前記磁性ゲルの弾性率に与える影響が小さく、前記磁性ゲルの弾性率が低くなる傾向があることによると考えられる。よって、磁場が印加された場合と印加されていない場合との弾性率の変化量が大きくなると考えられる。
【0068】
なお、ここで分散性を有する粒子とは、分散しやすい粒子のことであり、集合して形成されたクラスタであっても、その粒子径が大きくならない粒子のことである。具体的には、例えば、対象となる粒子の含有率が体積分率で0.0014(0.14体積%)のとき、粒子単体の体積平均粒子径に対するクラスタの体積平均粒子径が1.5〜10倍である粒子であることが好ましい。
【0069】
また、本実施形態で用いる磁性粒子としては、例示したものの中でも、バリウムフェライト粒子等のフェライト粒子、カルボニル鉄粒子、酸化鉄粒子が好ましく、酸化鉄粒子がより好ましい。このことは、酸化鉄粒子が好適な分散性を有することによると考えられる。また、磁性粒子は、例示された各磁性粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
なお、酸化鉄粒子は、粒子の含有率が体積分率で0.0014(0.14体積%)のとき、粒子単体の体積平均粒子径に対するクラスタの体積平均粒子径が1.83〜5倍程度の粒子である。
【0071】
本実施形態で用いる磁性微粒子としては、磁性を有し、磁性微粒子が磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径を有する関係を満たしていれば、特に限定されず、粒子径以外は、磁性粒子と同様のものが用いられる。磁性微粒子としては、その中でも、フェライト粒子及び酸化鉄粒子が好ましく、フェライト粒子がより好ましい。また、磁性微粒子は、磁性粒子と同様、磁性微粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
また、本実施形態に係る磁性ゲルは、上述したように、磁性粒子と、この磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径の磁性微粒子との2種の粒子を含有させるものである。磁性粒子と磁性微粒子との粒子径の差が小さすぎると、磁性ゲルに磁場を印加した際の弾性率の変化量が小さくなる傾向があり、本発明の効果を充分に発揮できなくなる。
【0073】
また、本実施形態で用いる、磁性粒子及び磁性微粒子の形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、球状であっても、非球状であってもよい。非球状としては、例えば、針状、柱状、数珠状、棒状、板状、塊状、繊維状、鱗片状、ウィスカ状等が挙げられる。また、磁性粒子及び磁性微粒子の少なくとも一方が、非球状の粒子、表面が粗面である粒子、及び表面に突起部を有する粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。磁性粒子及び磁性微粒子の少なくとも一方が、このような粒子であれば、磁場印加時の弾性率をより高めることができる。このことは、このような粒子と溶媒との摩擦抵抗を高めることができ、それによって、磁性粒子及び磁性微粒子の少なくとも一方の移動が阻害されることによると考えられる。また、磁性粒子及び磁性微粒子の少なくとも一方が、磁場を印加した際に溶媒と接触する面が凹凸状となるように整列するものであることが好ましい。磁性粒子及び磁性微粒子の少なくとも一方が、このような粒子であれば、磁場印加時の弾性率をより高めることができる。このことは、このような粒子と溶媒との摩擦抵抗を高めることができ、それによって、磁性粒子及び磁性微粒子の少なくとも一方の移動が阻害されることによると考えられる。
【0074】
本実施形態で用いる溶媒としては、本実施形態で用いる高分子物質を膨潤させてゲル状にできるものであれば、特に限定されず、例えば、水や有機溶媒等が挙げられる。また、この溶媒としては、水が好ましい。
【0075】
また、本実施形態に係る磁性ゲルの製造方法は、高分子物質、磁性粒子、磁性微粒子及び溶媒が、本実施形態の構成を満たすように含有されたゲル状のものを製造できれば、特に限定されない。具体的には、まず、磁性微粒子を、溶媒、例えば、水に分散させることによって、磁性微粒子分散液を得る。そして、この磁性微粒子分散液に、高分子物質と磁性粒子とを均一に分散させた後、放置する。そうすることによって、本実施形態に係る磁性ゲルが得られる。
【0076】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
[実施例1]
まず、磁性微粒子として、体積平均粒子径が1.1μmの酸化鉄粒子を水に混合し、分散させた。そうすることによって得られた磁性微粒子分散液に、高分子物質として、カラギーナンと、磁性粒子として、体積平均粒子径が20μmのフェライト粒子を投入し、均一になるように混合した後、放置した。その際、カラギーナンが0.8質量%、酸化鉄粒子が5質量%、フェライト粒子が70質量%となるように、各成分を混合させた。そうすることによって、磁性ゲルが得られた。
【0078】
[比較例1]
磁性微粒子として用いたフェライト粒子を含有させないこと以外、実施例1と同様にして、磁性ゲルを得た。
【0079】
得られた磁性ゲルを以下のようにして評価した。
【0080】
まず、磁場を印加する前の各磁性ゲルの、ねじりによるせん断弾性率を、弾性率測定装置(アントンパール社製のMCR301)を用いて測定した。
【0081】
そして、磁場発生装置(アントンペール社製のMRD)を用いて、各磁性ゲルに、磁束密度500mTの磁場を印加した。磁場を印加したまま、磁場を印加する前の各磁性ゲルの、ねじりによるせん断弾性率の測定方法と同様の方法で、磁性ゲルの、ねじりによるせん断弾性率を測定した。
【0082】
その結果、実施例1に係る磁性ゲルの、磁場印加前の弾性率が、6.5×10Paであり、磁場印加後の弾性率が、1.7×10Paであった。このことから、磁場の印加前後の弾性率の変化量が、約1.1×10Paであった。よって、磁場の印加前後の弾性率の変化率、すなわち、磁場印加前の弾性率に対する磁場の印加前後の弾性率の変化量の比率(磁場の印加前後の弾性率の変化量/磁場印加前の弾性率)が、約2.6%であった。
【0083】
これに対して、比較例1に係る磁性ゲルの、磁場印加前の弾性率が、1.9×10Paであり、磁場印加後の弾性率が、3.7×10Paであった。このことから、磁場の印加前後の弾性率の変化量が、約1.8×10Paであった。よって、磁場の印加前後の弾性率の変化率、すなわち、磁場印加前の弾性率に対する磁場の印加前後の弾性率の変化量の比率(磁場の印加前後の弾性率の変化量/磁場印加前の弾性率)が、約1.9%であった。
【0084】
また、実施例1に係る磁性ゲルは、磁場の印加によって、弾性率が可逆的に変化した。すなわち、実施例1に係る磁性ゲルは、磁場の印加を数回行った後であっても、磁場を印加していないときの弾性率は、磁場印加前の弾性率とほぼ同様の値である6.5×10Pa程度であり、磁場を印加しているときの弾性率は、磁場印加後の弾性率とほぼ同様の値である1.7×10Pa程度であった。
【0085】
このことからわかるように、磁性粒子と磁性微粒子とを含有した場合(実施例1)は、磁性粒子だけ含有し、磁性微粒子を含有しない場合(比較例1)と比較して、磁場の印加前後の弾性率の変化率が大きかった。
【0086】
[実施例2]
まず、高分子物質として、ポリビニルアルコール(PVA)と、磁性粒子として、体積平均粒子径が1.1μmの酸化鉄粒子とを均一になるように混合させた。そうすることによって得られた混合物に、架橋剤であるグルタルアルデヒドの含有率が25質量%の水溶液をPVAの繰り返し単位(ユニット)に対して、0.1〜5モル%となるように添加して混合した。この混合によって得られた混合液に、塩酸を数滴加えた。そうすることによって、ゲルが得られた。そして、得られたゲルを48時間、純水に浸漬させた。
【0087】
その後、磁性微粒子として、体積平均粒子径が30nmのフェライト粒子を水に混合し、分散させた。そうすることによって得られた磁性微粒子分散液に、純水に浸漬させたゲルを24時間浸漬させた。そうすることによって、磁性ゲルが得られた。
【0088】
なお、この磁性ゲルを合成する際、PVAが4質量%、フェライト粒子が3.5質量%、酸化鉄粒子が40質量%となるように、各成分を添加させた。また、PVA、フェライト粒子、及び酸化鉄粒子の各含有率は、合成開始時の含有率である。
【0089】
[比較例2]
磁性微粒子として用いた酸化鉄粒子を含有させないこと以外、実施例2と同様にして、磁性ゲルを得た。
【0090】
得られた磁性ゲルについて、印加する磁場の磁束密度を250mTに変えたこと以外、実施例1及び比較例1での評価と同様に評価した。
【0091】
その結果、実施例2に係る磁性ゲルの、磁場印加前の弾性率が、1.7×10Paであり、磁場印加後の弾性率が、4.6×10Paであった。このことから、磁場の印加前後の弾性率の変化量が、2.9×10Paであった。よって、磁場の印加前後の弾性率の変化率、すなわち、磁場印加前の弾性率に対する磁場の印加前後の弾性率の変化量の比率(磁場の印加前後の弾性率の変化量/磁場印加前の弾性率)が、約2.7%であった。
【0092】
これに対して、比較例2に係る磁性ゲルの、磁場印加前の弾性率が、4.3×10Paであり、磁場印加後の弾性率が、7.2×10Paであった。このことから、磁場の印加前後の弾性率の変化量が、2.9×10Paであった。よって、磁場の印加前後の弾性率の変化率、すなわち、磁場印加前の弾性率に対する磁場の印加前後の弾性率の変化量の比率(磁場の印加前後の弾性率の変化量/磁場印加前の弾性率)が、約1.7%であった。
【0093】
また、実施例2に係る磁性ゲルは、磁場の印加によって、弾性率が可逆的に変化した。すなわち、実施例2に係る磁性ゲルは、磁場の印加を数回行った後であっても、磁場を印加していないときの弾性率は、磁場印加前の弾性率とほぼ同様の値である1.7×10Pa程度であり、磁場を印加しているときの弾性率は、磁場印加後の弾性率とほぼ同様の値である4.6×10Pa程度であった。
【0094】
このことからもわかるように、磁性粒子と磁性微粒子とを含有した場合(実施例2)は、磁性粒子だけ含有し、磁性微粒子を含有しない場合(比較例2)と比較して、磁場の印加前後の弾性率の変化率が大きかった。
【0095】
さらに、磁性粒子として、分散性を有する酸化鉄粒子を用いた実施例2は、磁性粒子として、フェライト粒子を用いた実施例1より、印加した磁場の磁束密度が小さいにもかかわらず、弾性率の変化率が大きかった。このことから、磁性粒子として、分散性を有するものを用いることが好ましいことがわかった。
【0096】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0097】
本発明の一態様に係る磁性ゲルは、高分子物質と、磁性粒子と、前記磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径の磁性微粒子と、溶媒とを含有することを特徴とする。
【0098】
このような構成によれば、磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きい磁性ゲルを提供することができる。
【0099】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0100】
まず、前記高分子物質と前記溶媒とを含む磁性ゲルとすることにより、前記高分子物質を前記溶媒で膨潤させた状態、すなわち、前記高分子物質に前記溶媒が内在した状態になると考えられる。
【0101】
また、磁場を印加していない状態では、前記磁性粒子と前記磁性微粒子とが含有されていても、それらが磁性ゲル自体の弾性率にほとんど作用せず、さらに、前記高分子物質に前記溶媒が内在した状態であるので、磁性ゲルの弾性率としては、比較的低いものになると考えられる。
【0102】
一方、磁場を印加した状態では、前記磁性粒子と前記磁性微粒子とが印加された磁場によって、それぞれが結合する方向に力を発揮し、その結合力によって、磁性ゲルの弾性率を高めると考えられる。
【0103】
また、前記高分子物質に前記溶媒が内在した状態であるので、磁場が印加されると、前記磁性微粒子は前記磁性ゲル内を比較的自由に移動できると考えられる。このことから、磁場が印加されることによって発揮される磁気結合力が前記磁性ゲルに大きく働き、磁性ゲルの弾性率をより高めると考えられる。
【0104】
さらに、前記高分子物質を構成する高分子鎖も、前記高分子物質に内在した溶媒の存在によって、柔軟性が高く、多少の変形は可能であると考えられる。よって、前記磁性粒子は、前記磁性微粒子より大きいので、前記高分子物質を構成する高分子鎖によって移動を阻害され、前記磁性微粒子ほど自由に移動できないと考えられるが、前記磁気粒子も、前記高分子鎖の変形等によって、前記磁性ゲル内をある程度自由に移動できると考えられる。このことからも、磁場が印加されることによって発揮される磁気結合力が前記磁性ゲルに大きく働き、磁性ゲルの弾性率をより高めると考えられる。
【0105】
また、磁場を印加した状態では、前記磁性粒子と前記磁性微粒子とに、それぞれが結合する方向に磁気結合力が発揮され、前記磁性粒子と前記磁性微粒子とが近づく方向に移動すると考えられる。その際、前記移動に伴って、前記高分子物質を構成する高分子鎖同士も近づく方向に移動し、前記高分子物質に内在された溶媒を放出すると考えられる。そして、磁場を印加しなくなった場合、磁性ゲル周辺に存在する溶媒を再度吸収できると考えられる。このような含有される溶媒量の変化も、弾性率の変化に寄与すると考えられる。
【0106】
そして、前記磁性粒子と前記磁性微粒子とによる弾性率の変化量は、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の含有量に依存すると考えられる。前記磁性粒子だけではなく、前記磁性微粒子を含有させることによって、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の含有量を高めることができる。すなわち、前記磁性粒子を、磁性ゲルを構成できる限界まで含有させたとしても、さらに前記磁性微粒子を含有させることができる。よって、磁場の印加前後における弾性率の変化量を大きくすることができると考えられる。
【0107】
以上のことから、磁場の印加前後における弾性率の変化量が大きい磁性ゲルが得られると考えられる。
【0108】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子が、分散性を有することが好ましい。
【0109】
このような構成によれば、磁場の印加前後における弾性率の変化量がより大きい磁性ゲルが得られる。
【0110】
このことは、前記磁性粒子が、分散性を有するほうが、磁場が印加されていないときには、前記磁性ゲル内に前記磁性粒子が分散されやすいので、前記磁性粒子が前記磁性ゲルの弾性率に与える影響が小さく、前記磁性ゲルの弾性率が低くなる傾向があることによると考えられる。よって、磁場が印加された場合と印加されていない場合との弾性率の変化量が大きくなると考えられる。
【0111】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子が、酸化鉄粒子であることが好ましい。
【0112】
このような構成によれば、磁場の印加前後における弾性率の変化量がより大きい磁性ゲルが得られる。
【0113】
このことは、酸化鉄粒子が好適な分散性を有することによると考えられる。
【0114】
また、前記磁性ゲルにおいて、磁場の印加によって、弾性率が可逆的に変化することが好ましい。
【0115】
このような構成によれば、制振材等として好適に使用することができる。
【0116】
また、前記磁性ゲルにおいて、印加する磁場の磁束密度によって、弾性率が略比例的に変化することが好ましい。
【0117】
このような構成によれば、制振材等として好適に使用することができる。
【0118】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁束密度が400mT以下の範囲で、弾性率が略比例的に変化することが好ましい。
【0119】
このような構成によれば、制振材等として好適に使用することができる。
【0120】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の少なくとも一方が、非球状の粒子、表面が粗面である粒子、及び表面に突起部を有する粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0121】
このような構成によれば、磁場印加時の弾性率をより高めることができる。このことは、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子と前記溶媒との摩擦抵抗を高めることができ、それによって、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の移動が阻害されることによると考えられる。
【0122】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の少なくとも一方が、磁場を印加した際に前記溶媒と接触する面が凹凸状となるように整列するものであることが好ましい。
【0123】
このような構成によれば、磁場印加時の弾性率をより高めることができる。このことは、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子と前記溶媒との摩擦抵抗を高めることができ、それによって、前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の移動が阻害されることによると考えられる。
【0124】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記高分子物質が、寒天、カラギーナン、及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0125】
このような構成によれば、磁場の印加前後における弾性率の変化量がより大きい磁性ゲルが得られる。
【0126】
また、前記磁性ゲルにおいて、前記溶媒が、水であることが好ましい。
【0127】
このような構成によれば、磁場の印加前後における弾性率の変化量がより大きい磁性ゲルが得られる。
【符号の説明】
【0128】
11,22,25,26 磁性ゲル
12 下方治具
13 上方治具
23 板状部材
24 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子物質と、
磁性粒子と、
前記磁性粒子の体積平均粒子径に対して10%以下の体積平均粒子径の磁性微粒子と、
溶媒とを含有することを特徴とする磁性ゲル。
【請求項2】
前記磁性粒子が、分散性を有する請求項1に記載の磁性ゲル。
【請求項3】
前記磁性粒子が、酸化鉄粒子である請求項2に記載の磁性ゲル。
【請求項4】
磁場の印加によって、弾性率が可逆的に変化する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性ゲル。
【請求項5】
印加する磁場の磁束密度によって、弾性率が略比例的に変化する請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性ゲル。
【請求項6】
前記磁束密度が400mT以下の範囲内で、弾性率が略比例的に変化する請求項5に記載の磁性ゲル。
【請求項7】
前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の少なくとも一方が、非球状の粒子、表面が粗面である粒子、及び表面に突起部を有する粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁性ゲル。
【請求項8】
前記磁性粒子及び前記磁性微粒子の少なくとも一方が、磁場を印加した際に前記溶媒と接触する面が凹凸状となるように整列するものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁性ゲル。
【請求項9】
前記高分子物質が、寒天、カラギーナン、及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁性ゲル。
【請求項10】
前記溶媒が、水である請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁性ゲル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−195754(P2011−195754A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66309(P2010−66309)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】