説明

磁性ナノ粒子、磁性検出器アレイ、および生物学的分子の検出におけるそれらの使用方法

【課題】生物学的分子の検出における磁性ナノ粒子およびそれらの使用方法を提供する。
【解決手段】以下の工程を含む、対象とする分子を検出する方法:少なくとも1つの磁化可能ナノ粒子に共有結合している第1の分子を提供する工程、基体に共有結合している第2の分子を提供する工程、第1の分子の第2の分子への選択的結合に適する条件下において、第1の分子を第2の分子と接触させ、複合体を形成させる工程、および複合体を検出する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[連邦政府委託研究開発に関する陳述]
政府は、米国国防総省国防高等研究事業局(DARPA)による認可番号 N00014-02-1-0807にしたがい、本発明における権利を所有しうる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、磁性ナノ粒子、磁性ナノ粒子検出器、および、生物学的物質を、天然または合成を問わず、および修飾または非修飾を問わず、検出する方法に関する。本発明はまた、生物学的物質の検出に使用するための磁性ナノ粒子材料、およびこれら材料の作成方法に関する。最後に、本発明は、磁性粒子検出器および関連装置、ならびに生物学的物質の検出のためのそのような装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[関連技術の説明]
高感度で定量的なDNA断片検出および同定システムの開発は、機能的ゲノム学、科学捜査、生物兵器防衛、バイオテロ対策、および他のバイオテクノロジー適用において重要性が増している。
【0004】
理想的には、検出システムは、感度が良く、迅速で、移動可能で、安価で、かつ再利用可能であるべきである。さらに、システムは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のようなDNA増幅工程を必要としないことが好ましい。より具体的には、システムは、以下の特徴を有することが好ましい: (1) 各タグにつき1つのDNA断片、(2) 各タグが独立に検出可能、(3) 事実上無限数の検出器、および (4) 関与する結合プロセスの効率が既知。現在、これら全ての要件を満たす市販のシステムは存在しない。
【0005】
蛍光標識化(タグ付加)を利用する現在の多くのマイクロアレイシステムは、有用なシグナル対ノイズ比を達成するのにおよそ104の分子を必要する(そのため各タグを独立に検出可能にできない)ので、本質的に感度が低く、また、用いる光学システム、クロストーク、および退色のため、かろうじて定量的であるに過ぎない(M. Schena, R. W. Davis, Microarray Biochip Technology, Eaton Publishing, pp. 1-18 (2000))。さらに、この光学検出システムは、通常ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)と併せて用いられる。
【0006】
しかしながら、幾つかのグループが最近、標的分子の検出に新しい方法を用いている。Baseltの米国特許第5981297号(1999年11月9日発行)において、Naval Research laboratoryのグループが、標的分子種(常磁性ポリマービーズに連結している)に選択的に結合することが報告されている結合分子が連結した磁気抵抗性または磁歪性(magnetostrictive)磁場センサーを用いて、標的分子を検出する装置および方法の両方を提示した。
【0007】
D.R. Baseltらによる「A Biosensor Based on Magnetoresistance Technology」(Biosensors and Bioelectronics, Vol. 13, no. 7-8: 731-739 (1998))と題される関連公知文献において、BARC (Bead Array Counter)と呼ばれる磁性検出システムが提示されている。本文献によれば、BARCは、DNAのような分子を互いに結合させる力を測定し、またこれらの相互作用を用いて固体基体に磁性マイクロビーズを保持させる。基体上の微細加工磁気抵抗性トランスデューサは、磁力により引き寄せられたときにビーズが離れるか否かを示すことが報告されており、複数検体検出機能において使用するためのチップに応用可能である。
【0008】
M. M. Millerら (”A DNA Array Sensor Utilizing Magnetic Microbeads and Magnetoelectronic Detection”, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 225: 138-144 (2001))は、微細加工チップ上のDNAハイブリダイゼーションを検出するための標識として磁性マイクロビーズを使用する複数検体バイオセンサーを提示する。ビーズは、チップ自体に内蔵された巨大磁気抵抗性磁気エレクトロニクスセンサーを用いて検出され、それにより8つの異なる検体の同時検出が可能となる。
【0009】
米国特許出願第2002/0060565号 (2002年5月23日公開)において、Tondraは、選択した分子種の存在の検出に有用な強磁性薄膜基盤磁場検出システムを提案する。この特許出願の明細書によれば、磁場センサーは、その一方の面に結合分子層を有する基体上に支持され、選択した分子種に選択的に結合することができる。
【0010】
最後に、ポルトガルのあるグループが、近位でコイルに結合したスピンバルブセンサーを開発した (D. L. Graham, et al., J. Appl. Phys., 91: 7786 (2002))。使用された磁性タグは、常磁性ポリスチレンボールにつき直径約2μmであり、強磁性粒子も同様のサイズとされた。このより大きなタグは、より多くの、かつ簡単に確認することができない数のDNA断片と結合し、このことがこのシステムの定量能を害する。この文献に提案されるタグおよび磁性検出器の寸法は、検出器密度を本明細書に開示される方法よりも102〜104低いレベルに制限する。
【0011】
これまで達成された進歩にも関わらず、前述の4つ全ての所望の性質を理想的に満たす検出システムは、いまだ必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
[本発明の概要]
磁性ナノ粒子および検出器アレイのシステムが記載される。このシステムは、DNAのような核酸分子の高感度検出に有用である。ナノ粒子は、超常磁性であるか、または少なくとも2つの反強磁性的に結合した高モーメント強磁性体の層を含む反強磁性的ナノ粒子である、高モーメント磁性ナノ粒子でありうる。
【0013】
[図面の説明]
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本発明のある局面をさらに説明するために含まれる。本発明は、これら図の1またはそれ以上を本明細書に示される具体的態様の詳しい説明と組み合わせて参照することにより、より良く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、本発明のある局面に従い、DNAプローブ (結合分子)およびスピンバルブまたは磁気トンネルジャンクション (MTJ) 検出器により構成されるDNA検出器の概略図を示す。図1Bは、検出すべきDNA断片(標的分子)に連結している磁性ナノ粒子タグを示す。図1Cは、標的DNAと結合DNAがハイブリダイズした後の、DNA検出器および磁性ナノ粒子タグの構成を示す。
【図2A】図2Aは、その上に磁性タグを伴うスピンバルブ検出器を示し、ピン層の磁化をy方向に図示する。フリー層の磁化は、xに沿った磁化容易軸(easy-axis)およびyに沿った磁化困難軸(hard-axis)を有する。
【図2B】図2Bは、スピンバルブ検出器の調査方法の2つのモード、すなわちACティックリング場(AC tickling field) Ht がスピンバルブ平面 (x-y平面) に対して平行 (面内モード)または垂直(normal) (垂直モード)のいずれか、を示す。Hb はDCバイアス場である。
【図2C】図2Cは、単一のCoナノ粒子によるスピンバルブ抵抗変化ΔRを垂直検出モードにおけるティックリング場 Ht の位相(phase)の関数として示す。
【図3A】図3Aは、0.3μm スピンバルブ (SV) センサー上の16-nm Fe3O4 ナノ粒子単層の拡大図を示す。
【図3B】図3Bは、Fe3O4 ナノ粒子単層を伴う0.3μm スピンバルブ (SV) センサーおよびナノ粒子を伴わないセンサーの電圧シグナルのグラフを示す;線はモデリング結果である。
【図4】図4は、ブロッキング溶液に浸したスピンバルブセンサーの磁気抵抗 (MR)およびΔR値を示す。ここに示すように、スピンバルブは、ブロッキング溶液への24時間の暴露後にそのMR比およびΔRを維持している。
【図5】図5は、下層 (基層)および金キャップ、Au、を有する、合成の反強磁性的に結合した磁性ナノ粒子の概略図を示す。矢印を伴う層が、残留磁気状態において反強磁性的に結合している強磁性層である。強磁性層の数は、その適用に依存して約2〜約6まで変化しうる。金キャップは生物結合のためのものあり、一方下層は適切なフィルムの形成および生化学的適用のためのものである。
【図6】図6は、合成強磁性ナノ粒子の加法作成方法(additive fabrication method)を示す。
【図7】図7Aは、その表面にDNAプローブが特異的に結合している長い検出器上に直接組み込まれたマイクロ流体チャンネルを示す。図に示すように、検出器はマイクロ流体チャンネルの幅である20μmよりわずかに大きく作られ、長い検出器は比較的大量のDNAサンプルに適する。図7Bは、その表面にDNAプローブが特異的に結合している短い検出器上に直接組み込まれたマイクロ流体チャンネルを示す。検出器は、比較的少量のDNAサンプルについての使用により適するように、マイクロ流体チャンネルの幅より短く作られている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[定義]
以下の定義は、当業者が本発明の詳しい説明を理解するのを助けるために提供される。
【0016】
本明細書で用いる「結合分子」とは、抗体、ポリ核酸(DNAまたはRNA)鎖、および可能性ある標的分子を選択的に結合または「認識」できる分子レセプター、例えばポリ核酸、酵素、タンパク質、ペプチド、抗体、脂質、ポリマー、金属イオン、および低分子量有機および無機種、例えば毒物、薬物(処方医薬および違法薬物の両方)、爆発物、およびバイオハザードである。
【0017】
本明細書で用いる「標的分子」または「標的種」とは、問題のアッセイによりその存在、不在、または濃度が測定される、分子、分子種、または生命体を意味する。本発明における使用に含まれる標的分子には、限定はされないが、とりわけ、ウイルス、細菌、他の生物学的生命体、例えば真菌、抗体、タンパク質、ペプチド、ポリ核酸、脂質、ポリマー、医薬化合物、有機化合物、バイオハザード化合物、爆発性化合物、および毒物が含まれる。
【0018】
本明細書で用いる「検出器」とは、任意の数の磁性検出システムを意味し、この磁性検出システムには、スピンバルブ検出器 (スピンバルブフィルム検出器とも呼ばれる)、磁気トンネルジャンクション (MTJ) 検出器、およびMagArray(商標)検出器、並びにスピンバルブ検出器およびMTJ検出器の両者の改良型MagArray(商標)が含まれる。
【0019】
[発明の詳しい説明]
検出システムは、典型的には、スピンバルブまたはMTJ検出器のアレイ、図1Aに示すようにアレイ中の個々の検出器に連結している対象とする標的に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、マクロ流体またはマイクロ流体サンプル送達システム、および図1Bに示すように標的DNA断片と結合している磁性ナノ粒子を含みうる。図1Cに示すように、タグ付加されたDNA断片は、選択的ハイブリダイゼーションのため流体チャンネルによって検出器アレイに送達される。ハイブリダイズしなかったDNA断片は、洗浄除去されるか、または傾斜磁場により取り除かれる。図2Aおよび2Bに示すように、検出器アレイは、DCバイアス場(DC bias field)およびACティックリング場(AC tickling field)の組み合わせにより調べられる。印加磁場により磁性ナノ粒子タグが正味の磁気モーメント(net magnetic moment)を示すようになり、それは続いてスピンバルブまたはMTJ検出器により検出することができる。面内検出モードにおいて、検出器シグナルは、ACティックリング場 Htと同じ周波数を有する。これに対して、図2Cに示すように、垂直モードにおいては検出器シグナルはACティックリング場の第二高調波(second harmonic)である。いずれの場合も、たとえシグナル対ノイズ比が小さくても、ロックイン検出を用いることができる。このようにして、標的DNA断片の存在をシグナルにて示す磁性ナノ粒子タグの存在を検出することができる。検出器電圧シグナルは、磁性ナノ粒子の数に、それゆえ標的DNA断片の数に比例する。
【0020】
通常、DNA断片は、磁性ナノ粒子をタグ付加することができる。タグ付加された断片は、スピンバルブ上の相補的ヌクレオチドにより基体に選択的に結合することができる。スピンバルブはその後、磁性ナノ粒子の検出に用いられる。
【0021】
本明細書に開示される方法およびシステムは、既報の光学検出システムおよび他の公知技術の磁性検出スキームよりかなり感度がよい。本発明のシステムは、スピンバルブまたはMTJ検出器設計を含むので、BARCよりも効率的でかつ感度が良い。さらに、高磁気モーメントを有するナノメータスケールの粒子が、より希薄な磁性材料を備えたより大きな粒子のかわりに、生物分子タグとして使用される。本システムは、機能的MRI (fMRI) システムよりも感度が良い。計算によると、fMRIによる検出に必要とされるガドリニウムの量は、本発明のシステムにより検出可能な磁性ナノタグの量をはるかに上回ることが示される。最後に、本発明のシステムは、SQUID (Superconducting Quantum Interference Device) 検出器システムによる検出に必要とされる高性能な冷却装置を必要としない。
【0022】
本発明の局面には、磁性ナノ粒子、検出器、検出システム、およびそれらの使用方法が含まれる。本発明の各種局面を以下説明する。米国商標登録出願第78285336号が、2003年8月9日にMAGARRAYのマークについて出願された (出願人Sunrise Associates)。
【0023】
ナノ粒子
【0024】
本発明の実施に有用なナノ粒子は、好ましくは、磁性 (すなわち、強磁性) コロイド材料および粒子である。磁性ナノ粒子は、超常磁性となるような小さいサイズの高モーメント磁性ナノ粒子であってもよく、あるいは少なくとも2つの反強磁性的に結合した高モーメント強磁性体の層を含む合成反強磁性的ナノ粒子であってもよい。いずれのタイプのナノ粒子も、磁場の非存在下では「非磁性」を示し、通常は凝集しないようである。本発明によれば、使用に適する磁化可能ナノ粒子は、常磁性、超常磁性、強磁性、およびフェリ磁性材料、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の材料を含む。
【0025】
磁性ナノ粒子は、好ましくは、以下の性質を有する:(1) 好ましくは溶液中で凝集しないよう、その残留磁気ができる限り小さい(超常磁性粒子または反強磁性的粒子はいずれもこの要件を満たしうる); (2) タグが約100 Oeの弱い磁場の下で高磁気モーメントを示すため容易に検出可能である; (3) タグのサイズが、DNAハイブリダイゼーションプロセスその他の生物学的プロセスを妨害しないように、好ましくは標的生物分子と同程度である; (4) タグが好ましくは生物学的環境下において均一かつ化学的に安定である; および/または (5) タグが好ましくは生体適合性を有し、すなわち水溶性であり、かつDNA断片または他の生物分子に容易に連結するように機能化されている。
【0026】
ナノ粒子は、好ましくは、室温で超常磁性である高モーメント磁性ナノ粒子、例えばCo、Fe、またはCoFeナノ結晶である。それらは、化学的経路、例えば適当な溶液における塩還元または化合物分解により作成することができる。そのような磁性ナノ粒子の例は、文献に公開されている (S. Sun, and C. B. Murray, J. Appl. Phys., 85: 4325 (1999); C. B. Murray, et al., MRS Bulletin, 26: 985 (2001))。これらの粒子は、サイズを制御して(例えば、5-12 nmに)合成することができ、単分散であり、かつオレイン酸により安定化される。本発明によれば、ナノクラスター沈殿システム (D. J. Sellmyer, et al., Chap. 7, Handbook of Thin Film Materials, edited by H. S. Nalwa, Academic Press (2002))において高磁気モーメントナノ粒子を作成することも可能である。これらの粒子は、生物結合(bioconjugation)への応用のため開発された。本発明における使用に適する磁性ナノ粒子およびナノ粉末には、限定はされないが、Co、Co合金、フェライト、窒化コバルト、酸化コバルト、Co-Pd、Co-Pt、鉄、鉄合金、Fe-Au、Fe-Cr、Fe-N、Fe3O4、Fe-Pd、Fe-Pt、Fe-Zr-Nb-B、Mn-N、Nd-Fe-B、Nd-Fe-B-Nb-Cu、Ni、およびNi合金が含まれる。これにかえて同様に許容されるように、金薄層を磁性コア上にめっきするか、あるいはポリ-L-リジンでコートされたガラス表面を磁性コアに連結してもよい。適したナノ粒子は、例えば、Nanoprobes, Inc. (Northbrook, IL)およびReade Advanced Materials (Providence, RI)から市販されている。
【0027】
磁性ナノ粒子タグは、化学的経路のかわりに物理的方法によって作成することもでき、またそれは検出すべき標的生物分子の標識に適している。タグは、少なくとも2つの強磁性薄層、好ましくはFexCo1-x(ここでxは0.5〜0.7である)またはFexCo1-x基盤合金の層、を含む。FexCo1-xは、既知の強磁性材料の中で最高の飽和磁化 (約24.5 kGauss)を有する (R. M. Bozorth, Ferromagnetism, D. Van Nostrand Company (1951))。これらの強磁性層は、非磁性スペーサー層、例えばRu、Cr、Auなど、またはそれらの合金の層、により隔てられる。スペーサー層は、得られる粒子の正味の残留磁気がゼロまたはほぼゼロとなるように、反強磁性的に結合した強磁性層が形成されるよう適宜加工される。反強磁性的結合は、磁性データ保存業界において実施されるように、RKKY交換相互作用(S. S. P. Parkin, et al., Phys. Rev. Lett., 64(19): 2304 (1990)) および静磁気相互作用 (J. C. Slonczewski, et al., IEEE Trans. Magn., 24(3): 2045 (1988)) を介して達成されうる。しかしながら、反強磁性的結合強度は、粒子が約100 Oeの外部磁場によって飽和しうる(すなわち、全ての層の磁化が平行となりうる)ように、弱いことが好ましい。これは、層の厚さを調節すること、およびスペーサー層を合金とすることにより達成されうる。
【0028】
ナノ粒子の生物結合を促進するため、ナノ粒子が金-チオール結合を介して生物分子に結合できるように、金キャップを反強磁性的スタックの上に付加することができる。さらに、適当な界面活性剤をナノ粒子に付与し、それらを水溶性とすることも容易である。ナノ粒子の端は、化学的安定性のためAuまたは他の不活性薄層により不動態化することができる。
【0029】
当業者は、前記ナノ粒子を作成するための多くの物理的方法を想起することができる。フィルムスタックはナノメータスケールの強磁性層およびスペーサー層により作ることができ、そのためにそれらの層は超平滑基体 (または放出層(release layer))上に積層される必要がある。マスク層は、インプリンティング、エッチング、自己集合などによって形成されうる。その後マスク層および不要なフィルムスタックを取り除き、完全に洗浄除去する。そして、放出層を除去し、マスク層のネガ像であるナノ粒子を取り出す。これら粒子に、最終的に界面活性剤および生物分子を付与する。超平滑基体は、完全な洗浄および化学機械研磨(CMP)の後、再使用することができる。
【0030】
あるいは、ナノ粒子は、減法作成法(subtractive fabrication method)により作成することができる。この場合、フィルムスタックは放出層上に直接積まれ、続いてマスク層が積まれる。フィルムスタックは、マスク層を通してエッチングされ、最終的に基体から放出される。これらのナノ粒子は、加法作成法(additive fabrication method)の場合と反対に、マスク層のポジ像から生じる。
【0031】
本発明における使用に適する磁性ナノ粒子のサイズは、ナノ粒子がDNAハイブリダイゼーションのような生物学的プロセスを妨害しないように、好ましくは作業対象の標的生物分子のサイズと同程度である。結果として、磁性ナノ粒子のサイズは、好ましくは約5 nm〜約250 nm (平均直径)、より好ましくは約5 nm〜約150 nm、最も好ましくは約5 nm〜約20 nmである。例えば、平均直径が5 nm、6 nm、7 nm、8 nm、9 nm、10 nm、11 nm、12 nm、13 nm、14 nm、15 nm、16 nm、17 nm、18 nm、19 nm、20 nm、25 nm、30 nm、35 nm、40 nm、45 nm、50 nm、55 nm、60 nm、70 nm、80 nm、90 nm、100 nm、110 nm、120 nm、130 nm、140 nm、および150 nmの磁性ナノ粒子、並びに平均直径がこれら値のいずれか2つの間にはいるナノ粒子が、本発明における使用に好適である。さらに、より一般的な球形の磁性ナノ粒子に加えて、本発明における使用に好適なナノ粒子は、ロッド(rod)、コイル、またはファイバーであってよい。
【0032】
本適用に使用するための合成反強磁性的ナノ粒子は、一般的な強磁性粒子よりもかなり大きくても良い。これは、凝集を予防するため、ナノ粒子は、印加磁場ゼロにおいて正味の磁気モーメントを有してはならない(または磁気モーメントが非常に小さくなければならない)からである。反強磁性的粒子は、すべてのサイズでゼロ磁場においてゼロ磁気モーメントを有しうるが、強磁性粒子については、そのサイズが「超常磁性限界」より小さくなければならず、それは典型的には20 nmまたはそれ未満であり、通常20 nm未満である。合成反強磁性的粒子の利点を示すため、本発明者らは、スピンバルブ検出器において直径30nmおよび高さ30 nmの合成反強磁性的粒子について生じる電圧を計算し、それを直径16 nmのFe3O4 ナノ粒子および直径11 nmのCo ナノ粒子により生じる電圧と比較した。本発明者らは、75%の合成反強磁性的粒子が強磁性FeCoであること、およびスピンバルブ検出器はすべての場合で同じであることを想定している。表1はこれら計算の結果を示し、表1の説明文はスピンバルブ寸法および操作条件を示す。合成反強磁性的粒子由来のスピンバルブシグナルは、強磁性粒子よりもほぼ2桁大きいことに注目。

表1:スピンバルブシグナル電圧(最高最低振幅)と磁性タグの対照。垂直検出モードのデータ(図2B)のみをここに挙げる。電圧は、その中心がスピンバルブフリー層の中央平面から20 nm離れた単一のナノ粒子によるものである。センサーサイズは、3μm x 0.2μmで、その有効長は1μmである。センス方向の電流密度は108 A/cm2である。スピンバルブセンサー由来の漂遊磁界の効果が計算に含まれる。合成FeCoは30 Oeで飽和すると想定され、その粒子は印加磁場より物理的に回転する。超常磁性ナノ粒子の室温磁気モーメントは、Langevin関数により説明されるように減少するが、合成反強磁性的結合ナノ粒子の室温磁気モーメントは、超常磁性によりあまり変化しないことに注目。

【0033】
表1に挙げるシグナルレベルは、スピンバルブ検出器についてものもであることに注意されたい。MTJ検出器(ジャンクション領域0.2μm×0.2μmおよび抵抗面積積1 kOhm-μm2)に置き換え、バイアス電圧250 mVおよびHb = 35 Oe、Ht = 100 Oe rmsにおいて磁気抵抗 (MR) 25%にて操作した場合、単一の合成FeCo ナノ粒子由来の電圧シグナルは、1 mV以上に達しする。このシグナルレベルによりロックイン増幅器なしで検出することが可能になり、MagArray(商標)検出器読み出しプロセス全体が非常に迅速化される。
【0034】
その有利なシグナルレベルに加えて、合成反強磁性的結合ナノ粒子は、様々な印加磁場において飽和させることができる。この特徴は、磁性による細胞の分離の多重化に生かすことができる。MagArray(商標)検出器では、一連の飽和磁場閾値を有する様々な種類の合成反強磁性的結合ナノ粒子を使用して相異なる生物学的プロセスに由来する生物分子を標識し、それにより多重化された生物学的解析、例えば「マルチカラー」遺伝子発現解析、を達成することができる。例えば、一方が100 Oeで飽和し他方が125 Oeで飽和する2つのタイプの磁性粒子を用いる「ツーカラー」遺伝子発現スキームが考えられる。そして、MagArray(商標)検出器は2つの連続する試験にて調べることができる。第1の試験は第1のタイプの磁性粒子を飽和し、電圧シグナル V1を与え、その後第2の試験が両方のタイプの磁性粒子を飽和し、電圧シグナル V2を与える。両タイプの粒子とも、これら試験で測定されるシグナルに寄与する。所定の部位の2つのタイプの粒子の数がそれぞれN1およびN2の場合、試験された電圧シグナルは以下である:
【0035】
V1 = α11 x N1 + α12 x N2
【0036】
V2 = α21 x N1 + α22 x N2
【0037】
ここで、αij (ij = 11、12、21、または22)は、較正定数である。上記式を解くことにより、両タイプの粒子およびそれらがタグ付加された2つのタイプの遺伝子を定量することができる。
【0038】
上記合成ナノ粒子は、大きなウエハーおよび標準的真空薄膜積層プロセスを用いて、大量に生産することができる。例えば、6インチの円形ウエハーを用いて、直径30 nmのナノ粒子を1ランにつきおよそ5 x 1012 粒子の速度にて生産することができ、ここで各粒子はウエハー上で60 nm x 60 nmの正方形を占めると想定される。
【0039】
高感度スピンバルブ検出器
【0040】
スピンバルブ検出器は、銅のような非磁性層により隔てられた2つの強磁性層の金属多層薄膜構造である。ピン層と呼ばれる一方の強磁性層は、その磁化が一定方向に固定されているが、フリー層と呼ばれる他方の強磁性層の磁化は、印加磁場の下で自由に回転することができる。スピンバルブの電気抵抗は、ピン層の磁化に対するフリー層の磁化の相対配向に依存する。2つの磁化が平行な場合、抵抗は最低である;逆平行の場合、抵抗は最高である。抵抗の相対変化は、磁気抵抗 (MR) 比と呼ばれる。スピンバルブのMR比は、弱い磁場、例えば100 Oeにおいて、10%以上に達しうる。それゆえ、スピンバルブは、標識としてDNA断片に連結されセンサー表面上に固定された小さい磁性粒子の検出にとって良好な感知要素である。この粒子は(DCバイアス場の下で)磁性を示すので、磁場を発生する。この磁場は、次いでフリー層の磁化の配向に影響し、スピンバルブの電気抵抗に変化をもたらしうる。
【0041】
スピンバルブ検出器の操作 (図2Aおよび2B)を以下に記載する:1) 磁性ナノ粒子がDCバイアス場 (Hb) の下でその周囲に磁場を発生する、2) この磁場がその直下のスピンバルブの抵抗に影響する、3) ACティックリング場 (Ht) を印加すると粒子のモーメントが振動し、その結果スピンバルブから振動MRシグナルが生じる;面内モードでは、磁性ナノ粒子によるスピンバルブ検出器シグナルはACティックリング場 Ht と同じ周波数 f を有するが、一方、垂直モードでは、シグナルはHt の周波数の2倍であることに注目、4) ロックイン増幅器を使用して、高いシグナル対ノイズ比を用いてそのような振動シグナルを検出する。
【0042】
スピンバルブは典型的には5-12%の磁気抵抗 (MR) 比を有し、ハードディスクドライブに使用され、約20 dBのシグナル対ノイズ比 (SNR)および約500 MHzの広帯域幅にて、ほんの数百の密に集合したCo合金ナノ粒子 (サイズは約10 nm)により作られる磁性ビットを検出する。それゆえ理論的には、より狭い帯域幅において、またはロックイン検出を用いて、約10 nmのサイズの単一のCo ナノ粒子を検出することが可能である。ノイズ帯域幅を狭めることにより、単一のナノ粒子の検出であっても十分なSNRが達成される。
【0043】
その概念の証明として、プロトタイプのスピンバルブ検出器および検出器アレイは、(スピンバルブを通過するセンス電流およびスピンバルブの厚さに対して垂直方向にそって) センサー幅を約1μmまたはそれ未満として製造された。直径11-nmのCoナノ粒子の分散物の希釈滴をそのような検出器に適用した後、1 mVを上回るシグナル振幅(最高最低振幅)が1μm 幅スピンバルブ検出器から得られることが示された (Li, G., et al., Journal of Applied Physics, Vol. 93, no 10 (2003), p. 7557)。スピンバルブ検出器の感度は、磁性タグの磁化および体積並びにスピンバルブのフリー層からの磁性タグの距離にだけでなく、スピンバルブ自体の形状およびバイアス場に依存する。本発明者らは、通常、より狭いスピンバルブがより高い感度をもたらすことを発見した。結論として、本発明における使用に適するスピンバルブ検出器および検出器アレイは、センス電流およびスピンバルブの厚さに対して垂直方向にそって、約0.01μm〜約1μmのセンサー幅を有する。
【0044】
本発明者らは、各種スピンバルブ設計のマイクロ磁性分析シュミレーションを広く行い、表2に単一のCoナノ粒子によるシグナル (いずれの前置増幅器よりも前の最高最低振幅) をスピンバルブフリー層の幅に対してまとめた。面内モードおよび垂直モードの操作の両方(図2B)を挙げる。粒子端からフリー層中央平面までの距離は、6 nmと想定する。フリー層ストリップは厚さ2 nm、長さ3μmであるが、その有効長 (リードによって覆われていない)は 1μmである。センス電流密度は、スピンバルブ検出器のエレクトロマイグレーション(electromigration)限界より低い108 A/cm2とする。検出器全体の厚さは約34 nmである。超常磁性Coナノ粒子の磁気モーメントは、Langevin関数により計算した。
【0045】
スピンバルブを幅0.2μmとし、面内モードで操作する場合、単一の直径11-nmのCo ナノ粒子を検出するのに十分なシグナルレベルが必要とされる。加えて、シグナル電圧はタグにおける磁気モーメントに比例するので、FeCo基盤磁性ナノタグを用いることにより磁性シグナル強度をさらに増強することができる。

表2:スピンバルブシグナル電圧 (最高最低振幅)とフリー層幅の対照。電圧は直径11 nmの単一のCo ナノ粒子によるものであり、その端はスピンバルブフリー層中央平面から6 nm離れている。面内モードおよび垂直モードの両方を、適当なバイアス場およびティックリング場振幅とともに挙げる。


【0046】
電磁干渉 (EMI) シグナル排除
【0047】
スピンバルブ検出は、典型的には、面内モードにて行う (Li, et al., J. Appl. Phys. Vol. 93 (10): 7557 (2003))。垂直モードは、シグナル振幅が幾分小さいものの、検出システムにおけるACティックリング場による電磁干渉 (EMI) シグナルが顕著な場合、非常に有利である。EMIシグナルは、ACティックリング場の周波数fに集中する傾向があるので、周波数2fにてロックイン検出を行えば除去できるか、あるいはかなり減少させることができる。さらに、2-ブリッジ回路(2-bridge circuit)を採用して、残りのEMIを除去することができる。
【0048】
検出器の極薄不動態化
【0049】
磁性タグによるスピンバルブ検出器からのシグナルは、スピンバルブ自体の形状およびバイアス場に加えて、磁性タグとスピンバルブのフリー層の間の距離に依存する。単一のCo粒子由来の検出器電圧シグナルは、粒子の中心からスピンバルブフリー層の中央平面までの距離が遠くなるにつれて減少する。
【0050】
磁性粒子由来のセンシング磁場は、センサーと粒子の間の距離とともに単調に減少するので、スピンバルブにおけるフリー層をピン層の上にすることが好ましい。さらに、最も重要なことは、磁性粒子とフリー層の上部表面との間の距離を、スピンバルブを保護する不動態化層の厚さも含めて、最小とすることである。しかしながら、検出器アレイの操作中、DNA溶液をセンサー表面上に流し、対応するDNA断片とハイブリダイゼーションさせる。それゆえ、センサー表面の腐食は重要な問題である。どのような検出器表面の崩壊によっても、ハイブリダイゼーション事象由来のシグナルが減少することにより、または検出器全体が破壊されることにより、感度が犠牲となりうる。
【0051】
従来技術における磁性検出スキームはこの潜在的に重大な問題を認識しており、その結果、比較的厚い不動態化層をその検出器表面に付加していた。常套的な不動態化層を用いた場合、磁性粒子の中心と検出器表面との間の距離が1000 nmより大きくなり、検出器感度が非常に制限されるであろう。高感度を保持することと、崩壊に対して十分に保護することとの間には、矛盾が生じる。MagArray(商標)検出器設計は、極薄不動態化層(10 nm未満)と非常に小さな磁性ナノ粒子タグ (直径約20 nmまたはそれ未満)を組み合わせ、それにより約30 nm未満(約10 nmの介在DNA断片の長さを含む)の粒子中心-検出器距離を達成しており、これは単一タグ検出に必要な感度を提供するのに十分な近さである。本発明の開示によれば、MagArray(商標)検出器のような検出器での使用に適する極薄不動態化層(例えばTaまたはAu) は、典型的には、厚さが約1 nm〜約10 nmであればよく、これにより約6 nm〜約30 nmの粒子中心-検出器距離が達成される。
【0052】
高感度MTJ検出器
【0053】
MTJ検出器は、非磁性スペーサーがアルミナのような薄層絶縁トンネルバリアと置き換えられていること、およびセンス電流がフィルム表面に対して垂直に流れることを除き、スピンバルブ検出器と同様に構築される。2つの強磁性電極の間の電子トンネルは、その2つの強磁性電極の相対磁化により制御され、すなわち、それらが平行の場合トンネル電流は高く、逆平行の場合低い。典型的MTJ検出器は、下部電極、トンネルバリアを含む磁性多層、および上部電極により構成される。MTJ検出器は、50%に上る磁気抵抗比と、本質的に大きいデバイス抵抗を有し、より大きなアウトプット電圧シグナルを生じる。
【0054】
常套的なMTJデバイスは、比較的厚い(0.2μmより厚い)上部電極を用いており(Parkin, S.S.S.P., et al., J. Appl. Phys. 85: 5828 (1999))、これが単一の磁性ナノ粒子から検出されるシグナルを非常に減少させるので、MagArray(商標)検出器には適さない。この問題を克服するため、本発明者らは、二層上部電極を発明した。第1の層は、金薄層 (約10 nmまたはそれ未満)であってよい。金は、DNAプローブの結合が容易なため望ましい。第2の層は、アルミニウム、銅、またはDNAプローブと結合しない他の伝導性金属であってよく、それにはパラジウム、パラジウム合金、パラジウム酸化物、白金、白金合金、白金酸化物、ルテニウム、ルテニウム合金、ルテニウム酸化物、銀、銀合金、銀酸化物、スズ、スズ合金、スズ酸化物、チタン、チタン合金、チタン酸化物、およびそれらの組み合わせが含まれる。そのMTJより弱冠小さいサイズの第2の層における開口は、リフトオフ・プロセスにより、あるいは均一な第2の層をエッチングすることにより、作成される。この設計により、ナノ粒子タグとフリー磁気層上部表面との間の距離を非常に短く、約6 nm〜約30 nmに、保つことができる。さらに、これは、非常に薄い金電極のみを用いた場合に起こり得る、上部電極内の電流集中(van de Veerdonk, R.J.M., et al., Appl. Phys. Lett., 71: 2839 (1997)) を回避することができる。
【0055】
センス電流がフィルム表面に対して垂直に流れることを除き、MTJ検出器は、スピンバルブ検出器と同様に面内モードまたは垂直モードのいずれによっても操作できる。EMI排除および極薄不動態化についての開示はMTJ検出器にもあてはまるが、MTJ検出器に有利なことに、MTJ上の金薄層の第1の上部電極はまた、電気伝導、極薄不動態化、および特異的DNAプローブ連結の3つの目的を果たす。
【0056】
同じ検出器幅および粒子-検出器距離において、MTJ検出器は、スピンバルブ検出器よりもかなり大きなシグナルを生じる。例えば、ジャンクション領域が0.2μm x 0.2μm、抵抗面積積が1 kOhm-μm2のMTJ検出器について、MR 25%、バイアス電圧250 mV、およびHb = 35 Oe、Ht = 100 Oe rmsにて操作すると、その中心がフリー層中央平面から35 nm離れた単一の直径11 nmのCoナノ粒子からの電圧シグナルは約20μVであり、同じサイズのスピンバルブ検出器について表1に示されるシグナルよりもほぼ1桁大きい。これは、スピンバルブ検出器を上回るMTJ検出器の重要な利点である。本発明によれば、本発明の実施における使用に適するMTJ検出器は、ジャンクション領域が約0.01μm2〜約10μm2、および抵抗面積積が約0.1 kOhm-μm2〜約100 kOhm-μm2でありうる。
【0057】
DNA定量およびダイナミックレンジ
【0058】
単一タグ検出は、以前からプロトタイプのMagArray(商標)検出器において実験的にも(Li, G., et al., Journal of Applied Physics, Vol. 93, no 10 (2003), p. 7557)、また理論的にも(Li, G., et al., IEEE Trans. MAG, Vol. 39, no. 5 (2003), p. 3313)示されている。しかしながら、実際の適用においては複数の粒子が検出器上に存在する場合があり、またそれらの位置は検出器表面の中央でないようである。本発明者らは、単一粒子からの電圧シグナルがその検出器表面上での横方向の位置に強く依存し、これはとりわけフリー層の磁化容易軸(easy-axis)(図2Aにおけるx軸)方向よりも磁化困難軸(hard-axis)(図2Aにおけるy軸)方向においてあてはまることを発見した。その中心がフリー層上部表面から25 nm離れている直径11 nmのCoナノ粒子の正弦波ティックリング場の下で計算した時間領域電圧シグナル(time-domain voltage signal)をそのy軸に対して測定することができる。2fシグナルはセンサーの端付近でひずみ、その端において急速に低下する。全体的検出器シグナルは検出器の端の方が大きいが、それは2つの端において位相がずれる1f成分によりほぼ構成されることに注目されたい。
【0059】
電圧シグナルの振幅に基づき磁性ナノ粒子を定量的に計数するため、各粒子がその位置にかかわらず同じシグナルを発生することが望まれる。スピンバルブ検出器は、粒子の数を正確に定量することができない場合がある。MagArray(商標)検出器は、その端付近の不均一性を取り除く検出ウィンドウを採用している。Auウィンドウを有効なジャンクションよりも十分に小さくする限りは、MTJのための二層上部電極設計により端の不均一性が取り除かれうることに注目されたい。検出器の形状およびシグナル変動に対する許容範囲に依存して、有効な検出器の領域の約50%をカバーすることが望まれうる。
【0060】
上記の検出ウィンドウにより、MagArray(商標)検出器が複数のナノ粒子 (NP) を良好に検出できるようになる。NPの平均磁場およびフリー層のコヒーレントな磁化回転が等価であるという仮定に基づいて、本発明者らは、有効検出器領域より幾分小さい長方形の領域上に均一またはランダムに分布した複数の磁性NPの検出器シグナルを計算した。例えば、4 x 0.3μm2 スピンバルブ (SV) 検出器について、均一なNPアレイの標準化シグナルに対して、実際のNP数を様々なアレイ縦横比について決定することができる。粒子数が少ないとシグナルはほぼ直線であり、粒子数が多い場合のみシグナルの直線性が失われる。より高い縦横比によって、より多くのNPがセンサーの端から離れるため、よりよいシグナル直線性が得られる。ランダムに分布したNPについて標準化シグナルの平均値および標準偏差を決定することができ、これもまた良好なシグナル直線性を示す。我々は、幅0.3μmのSVセンサー上にコートされた16-nm Fe3O4 NPの単層上で実験を行いそのモデルを検証した。
【0061】
これらの結果は、本検出器が、数NPの分解能(resolution)により、1-10個のNPを検出できるだけでなく何百ものNPを計数できることを示し、これは従来の光学マイクロアレイの検出限界をはるかに上回る。さらに、本発明者らは、小さい方の検出器が低濃度の生物分子を感知でき、一方大きい方の検出器が高濃度の生物分子を感知し計数できるように、様々なセンサー幅およびセンサー長を有する検出器のセットを多重化することができた。
【0062】
検出器に連結している核酸プローブ
【0063】
本発明のさらなる態様は、検出器に連結している核酸プローブ(例えばDNAまたはRNA)に向けられる。
【0064】
対象とするDNA断片(標的分子)に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ(結合分子)は、5’結合を介して検出器上の表面に直接連結される。この目的のため、検出器表面をガラスまたは金の薄層によりコートし、プローブDNAを連結してもよい。プローブDNAのポリ-L-リジンを介するガラス表面への連結またはチオール結合を介する金表面への連結は、生化学分野において広く行われている。あるいは、自己集合プローブDNAの単層を、検出器とプローブDNAとの間にさらなる加工層を用いずに、検出器表面上で直接調製することができる。
【0065】
標的DNAの5’末端は、磁性ナノタグにより標識される。ハイブリダイゼーション工程中に、磁性標識された標的DNAは、検出器表面上の固定化プローブDNAに特異的に連結する。検出器における磁性タグおよびフリー層の間の距離は最小に保たれることが非常に好ましく、なぜなら検出器とシグナルとの間の距離が大きすぎると磁性シグナルの強度が損なわれるからである。あるスキームでは、標的DNAを濃縮するため、およびハイブリダイゼーション工程後に磁性タグを検出器表面により近づけるため、ハイブリダイゼーション工程中に外部傾斜磁場を印加する。外部磁場は、ハイブリダイズしていないタグ付加されたDNA断片を除去するためにも使用されうる。
【0066】
アレイ構造
【0067】
本発明者らは、DNA断片の定量的検出に適するMagArray(商標)検出器の構造を設計した。基体領域を有効に利用するため、本発明者は磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)と似たようなスキームを用いたが、実際には、MagArray(商標)検出器は書き込み電流のための伝導線(conduction line)を必要としない点、およびMagArray(商標)検出器のシグナルレベルの方がより小さい点において、MagArray(商標)検出器はMRAMとは明らかに異なる。MagArray(商標)検出器におけるセルは、約1μVの小さいシグナルを確実に検出できるように、前置増幅器およびロックイン増幅器(または狭帯域フィルター)を共有する必要がある。各検出器はスイッチング・トランジスタのドレーンに接続し、かつ各セルは一行の伝導線 (ワード線)および一列の伝導線により囲まれる。個々の検出器は、対応するトランジスタをオンにし、検出器にセンス電流を流すことにより読み取ることができる。列の線における電圧変化は、前置増幅器およびロックイン増幅器により検出される。
【0068】
MagArray(商標)検出器において1024個のセルを有する典型的ブロックを設計した。各ブロックは、行デコーダ、列デコーダ、前置増幅器、電流源、およびセルのアレイにより構成される。少なくとも1つのセルの列を厚いポリマーで覆い、磁性ナノ粒子に対するその感受性を失わせて、ブリッジ回路(bridge circuit)または減算回路(subtraction circuit)において参照検出器として用いることができる。MagArray(商標)検出器は、約106 セル/cm2 (各セルにつき1検出器)の密度を有しうると推定される。
【0069】
DNAプローブは、常套的なスポッティングまたはインクジェットプリンティングにより、MagArray(商標)検出器チップ上に固定することができる。DNAプローブ(または結合分子)の各円形特徴点(circular feature)は非常に多くのセルに広がっているが、プローブはその特徴点内の各センサーの有効検出器領域にのみ結合する。対応するDNA標的を捕捉するため、各DNAプローブにつき少なくとも1つの特徴点が存在する。その後、非特異的に結合したプローブを、交差汚染しないようにして洗浄除去する。磁性タグが付加されたDNA標的サンプルとのハイブリダイゼーションの後、同じDNA特徴点内の各検出器を個々に調べ、得られた平均シグナルを用いて所定の部位においてそのDNAプローブに捕捉されたDNA標的を同定および定量する。化学的に有効なセンサー表面は高密度であるが、検出器がセルよりもかなり小さいため、それらは依然としてセル領域のほんの一部を占めるに過ぎない。
【0070】
また、MagArray(商標)検出器の化学的感度を改善するため、本発明者らは、DNAプローブおよび標的サンプルが磁性タグに対する感受性を有する検出器表面にのみ接触するように、または向かうように、マイクロ流体回路を検出器アレイ上に直接組み込んだ。ここで、各DNAプローブにつき1個の検出器(1個の特徴点にかえて)を達成して、チップ上に提供できる相異なるDNAプローブの数を最大とすることができる。有効検出器表面上にのみ選択的に積層された二酸化ケイ素や金のような表面にDNAプローブを特異的に連結するための方法は幾つか存在する。この方法は全体的な化学的感度を非常に上昇させ、それより微量の生物分子、例えば1-10個の標的DNA断片、の検出を可能とし、MagArray(商標)検出器上にスポットされるDNAプローブの量を最小限に抑え、かつ検出プロセスを迅速化する。
【0071】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含める。当業者が理解すべきは、以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能する本発明者らによって発明された技術を表し、かつ本発明の実施のための好ましいモードを構成すると考えられることである。しかしながら当業者は、本発明の開示に照らして、開示される具体的態様に対して多くの改変を行うことができ、それでも本発明の範囲から逸脱することなく同様の結果を得られることを理解する。
【実施例】
【0072】
[実施例]
実施例1:マグネタイトナノ粒子の検出
本発明にしたがい、Co、Fe、およびそれらの合金に加えて、フェライト、例えばマグネタイトおよびMn-フェライトもまた生物学的タグとして機能しうることを示すため、一連の実験を行った。図3に示すように、0.3μm幅スピンバルブセンサー上の16-nm Fe3O4 ナノ粒子 (NP)の単層は、ポリエチレンイミン (PEI)仲介自己集合法を用いてコートした(S. Sun, et al., J. Am. Chem. Soc., 124, 2884 (2002)を参照)。図3Bに示すように、マグネタイトナノ粒子に覆われたスピンバルブからの電圧シグナルは、予想どおり、センサー上に印加されたバイアス電圧にほぼ比例するが、マグネタイトナノ粒子にまったく覆われていない参照スピンバルブからのシグナルはほぼゼロであることがわかった。電圧シグナルは、Wheatstoneブリッジ回路から、ロックイン増幅器を用いて様々なブリッジ回路バイアスにて測定した。さらに、測定されたシグナルは、例えばG. X. LiおよびS. X. WangのIEEE Trans. Magn., 39(5),3313-5, (2003)に記載されるような分析モデルにより適切に説明できることが示された。
【0073】
パターン化された単層中の何百ものマグネタイトナノ粒子のスピンバルブセンサーによる検出もまた示された。前述の実験と同様にして、スピンバルブの上部表面に自己集合した約630個のマグネタイト粒子によるスピンバルブの最大抵抗変化は、約1.3Ωであることがわかった。すなわち、粒子あたりのシグナルはおよそ2 mΩであり、これはセンス電流が1 mAの場合、2μVのシグナル電圧に匹敵する。この実験の検出限界は約55 mΩであり、このことはマグネタイトナノ粒子の最小検出可能数が約30個であることを示唆する。しかしながら、磁性トンネルジャンクションのようなより感度のよいセンサー、およびFeCoのようなより高いモーメントのナノ粒子を使用すれば、ナノ粒子の検出限界をより低くできることは明らかである。結論として、この実施例から、数十の磁性ナノ粒子から単一の磁性ナノ粒子までの検出が現実的であることは非常に明白である。
【0074】
実施例2:極薄不動態化を受けたスピンバルブセンサー
4 nmの不動態化層の信頼性を、一連の受動的腐食(passive corrosion)研究を通して検討した。プロトタイプのMagArray(商標)チップを、標準的DNAマイクロアレイにおいて現在用いられている2種類のDNA溶液の1つに浸した。第1の溶液はハイブリダイゼーションバッファー (pH = 7.5)であり、0.6 M NaCl、0.06 M C6H5Na3O7 (クエン酸ナトリウム)、および0.1% SDS (ドデシル硫酸ナトリウム)の混合物からなる。その名称が示すように、この溶液は、マイクロアレイにおける実際のハイブリダイゼーション工程のための主要媒体である。もう1つの溶液、ブロッキング溶液 (pH = 7.9)は、Surmodics (Eden Prarie, MN)の特許品であり、主として試験領域の非特異的結合を除去するために使用される。このプロセスにより、標的分子がプローブと相互作用する可能性が上昇する。これら溶液に最後に添加するのは、濃度0.1 mg/mLのDNA(超音波分解したサケ精子DNA)である。
【0075】
DNA溶液暴露後のスピンバルブセンサーのパフォーマンスは、その磁気抵抗 (MR) 比、ΔR/Roを測定することにより評価した。このパラメーターを、溶液中で長時間にわたり追跡した。この実験の第1の工程は、適度な大きさ、つまり約6-7%のMR比を有する有効なスピンバルブセンサー (幅約300 nm) を設置することである。MR比は、印加磁場に対応して抵抗データを生じるプローブ配置を用いて測定した。チップを選択したDNA溶液と30分サイクルで繰り返して接触させ、その後チップを取り出し、脱イオン水で洗浄し、風乾し、MRを測定した。2時間のサイクリングの後、チップを溶液中に合計24時間放置し、そして最終的に試験した。ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出は連続的に行えるので、検出器が溶液中にある時はセンサー電流をオフにしたことに注意されたい。
【0076】
ブロッキング溶液の試験結果を図4に示す。MR値はすべて6-7%の間に入り、0時間での試験の最高の偏差は約0.15%であった。ΔR値は、0時間の値から約±1Ω外れる。同様に、ハイブリダイゼーション溶液中のチップについての結果は、ブロッキング溶液と大きな違いはない。値の分布は、MRおよびΔRのいずれもわずかに広い。MRは0時間から0.4%以下しか変化せず、ΔR散乱は4Ω内である。このように、スピンバルブセンサーは、適度なレベルのMRおよびΔRを試験中ずっと維持する。これらの結果は、極薄不動態化層を用いるMagArray(商標)設計方法を支持する。
【0077】
実施例3:合成フェリ磁性ナノ粒子
本発明者らはここに、化学的経路のかわりに物理的方法により作成され、MagArray(商標)において検出すべき標的生物分子の標識に適する、新規磁性ナノ粒子タグを開示する。このタグは、少なくとも2つの薄層強磁性層、好ましくはFexCo1-x、0.5≦x≦0.7、またはFexCo1-x基盤合金よりなる。FexCo1-xは、既知の強磁性物質の中で最高の飽和磁化 (約24.5 kGauss)を有することが知られている (Bozorth, R.M., Ferromagnetism, D. Van Nostrand Company, 1951)。これらの強磁性層は、非磁性スペーサー層、例えばRu、Cr、Auなど、またはそれらの合金、により隔てられる。図5に示すように、このスペーサー層は、得られる粒子の正味の残留磁気がゼロまたはほぼゼロとなるように、それら強磁性層が反強磁性的に結合するよう適宜加工される。ナノ粒子が生物分子と金-チオール結合または他の化学結合を介して結合するように、金キャップを反強磁性的スタックの上に付加する。ナノ粒子の端は、化学的安定性のため、Auその他の不活性薄層により不動態化することができる。当業者は、上記ナノ粒子を作成するための多くの物理的方法を想起しうる。
【0078】
実施例4:合成フェリ磁性ナノ粒子の加法作成法
図6に、加法作成法を示す。ここに示すように、図の上部から下部へ矢印の方向に、この作成法は超平滑基体上への連続薄層 (後に粒子を放出するための層)の積層に始まり、次に該放出層へのマスク層の積層が続く。最終的に、マスク層に同じ穴がパターン化される。
【0079】
次の工程において、フィルムスタックをマスク層上に積層する。フィルムスタックは、図5に示されるものと同様に、強磁性層、スペーサー層、および金キャップを含む。積層に続いて、マスク層を除去し、マスク層上に積層した望ましくないフィルムを取り除く。最後に、放出層を除去し、磁性ナノ粒子を溶液へと取り出し、その後それを磁性タグとして使用可能である。
【0080】
実施例5:検出器へのマイクロ流体チャンネルの組み込み
MagArray(商標)の化学的感度を改善するため、DNAプローブおよび標的サンプルが磁性タグに感受性のある検出器表面にのみ連結するか、または向かうように、マイクロ流体回路 (Thorsen, T., et al., Science, Vol. 298, p. 580 (2002)) を検出器アレイ上に直接組み込み、それによりDNAプローブまたはDNA標的の浪費を最小限にした。このようなシステムの概略図を図7Aおよび7Bに示す。DNAプローブは、検出器表面に特異的に連結する。図7Aにおいて、検出器は、マイクロ流体チャンネルの幅である20μmよりも幾分長く作られている。長い検出器は、比較的大量のDNAサンプルに適している。図7Bにおいて、検出器は、マイクロ流体チャンネルの幅よりも短くつくられている。短い検出器は、比較的少量のDNAサンプルにより適する。後者の場合、印加電場または傾斜磁場、および流体力学集束スキームを用いて、DNAサンプルを検出器表面に向かわせることができる。図7Bのマイクロ流体チャンネルを検出器長と同じ長さとすることもまた考えられる。
【0081】
本明細書に開示され、特許請求されるすべての組成物および/または方法および/またはプロセスおよび/または装置は、発明の開示に照らして、過度の実験なしに、製造および実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して説明したが、本明細書に記載される組成物および/または方法および/または装置および/またはプロセスに、および該方法の工程または工程の連続に、本発明の概念および範囲を逸脱することなく改変を導入できることは、当業者に明らかである。より具体的には、化学的にも物理的にも関連するある物質を本明細書に記載の物質と置換し、同じまたは類似の結果を達成できることは明らかである。当業者に明らかなこのような類似の代替物および改変は、本発明の範囲および概念にはいると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、対象とする分子を検出する方法:
少なくとも1つの磁化可能ナノ粒子に共有結合している第1の分子を提供する工程;
基体に共有結合している第2の分子を提供する工程;
該第1の分子の該第2の分子への選択的結合に適する条件下において、該第1の分子を該第2の分子と接触させ、複合体を形成させる工程;および
該複合体を検出する工程。
【請求項2】
第1の分子が第1の核酸分子を含み、第2の分子が第2の核酸分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の分子がDNAまたはRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第2の分子がDNAまたはRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第1の分子が第1のタンパク質分子を含み、第2の分子が第2のタンパク質分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1の分子が第1のペプチド分子を含み、第2の分子が第2のペプチド分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1の分子が抗原分子を含み、第2の分子が抗体分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1の分子が抗体分子を含み、第2の分子が抗原分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第1の分子が少なくとも1つの磁化可能ナノ粒子に金-チオール結合により共有結合している、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ナノ粒子が、磁場の非存在下では非磁性を示し、磁場の存在下では磁性を示す、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ナノ粒子が、常磁性粒子、超常磁性粒子、または合成フェリ磁性粒子である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ナノ粒子が貴金属表面層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ナノ粒子が金表面層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ナノ粒子の平均直径が約5 nm〜約250 nmである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
ナノ粒子の平均直径が約5 nm〜約20 nmである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
基体が高感度スピンバルブ検出器アレイまたは磁気トンネルジャンクション検出器アレイを含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
検出工程が外部傾斜磁場を印加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
検出工程がDCバイアス場およびACティックリング場を印加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
検出工程が、外部傾斜磁場を印加すること、および正味の磁気モーメントを検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
磁性ナノ粒子の検出に有用なスピンバルブ検出器アレイであって、複数の検出部位を含み、該複数の検出部位の各々が以下を含む、検出器アレイ:
第1の強磁性層;
該第1の強磁性層の表面に接触する非磁性層;
該非磁性層の表面に接触する第2の強磁性層;
該第2の強磁性層の表面に接触する不動態化層;および
該不動態化層に共有結合している結合分子;
ここで、該結合分子は、核酸、天然または合成DNA、天然または合成RNA、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、ウイルス、ポリマー、毒性化合物、医薬化合物、バイオハザード化合物、および爆発性化合物からなる群より選択される。
【請求項21】
第1の強磁性層がCo、Co合金、鉄、鉄合金、Fe-N、Fe3O4、Fe-Zr-Nb-B、Ni、Ni合金、またはそれらの混合物を含み、該強磁性層が交換バイアス層または合成強磁性層により固定されている、請求項20記載のアレイ。
【請求項22】
第2の強磁性層がCo、Co合金、鉄、鉄合金、Fe-N、Fe3O4、Fe-Zr-Nb-B、Ni、Ni合金、またはそれらの混合物を含む、請求項20記載のアレイ。
【請求項23】
不動態化層の厚さが約1 nm〜約10 nmである、請求項20記載のアレイ。
【請求項24】
不動態化層が金、タンタル、またはガラスを含み、かつ該不動態化層の上にDNA結合領域を限定する開口が存在しうる、請求項20記載のアレイ。
【請求項25】
非磁性層がルテニウム、ルテニウム合金、クロム、クロム合金、金、金合金、貴金属、貴金属合金、またはそれらの混合物を含む、請求項20記載のアレイ。
【請求項26】
行デコーダ、列デコーダ、前置増幅器、および少なくとも1つの電流源をさらに含む、請求項20記載のアレイ。
【請求項27】
マイクロ流体回路をさらに含む、請求項20記載のアレイ。
【請求項28】
複数の検出部位を含む、請求項20記載のアレイ。
【請求項29】
磁性ナノ粒子の検出に有用な磁気トンネルジャンクション (MTJ) 検出器アレイであって、複数の検出部位を含み、該複数の検出部位の各々が以下を含む、検出器アレイ:
下部電極;
該下部電極に接触する複数の磁気層;
該複数の磁気層の少なくとも1つに接触するトンネルバリア;
該トンネルバリアの上に存在する強磁性層(第2の磁気層);
該第2の磁気層に接触する金層;
該金層に接触し、かつ典型的には該金被覆MTJの一部を露出する開口を有する、導電層;および
該金層に共有結合している結合分子、
ここで、該結合分子は、核酸、天然または合成DNA、天然または合成RNA、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、ウイルス、ポリマー、毒性化合物、医薬化合物、バイオハザード化合物、および爆発性化合物からなる群より選択される。
【請求項30】
導電層が、アルミニウム、銅、パラジウム、白金、ルテニウム、銀、スズ、チタン、それらの合金、それらの酸化物、およびそれらの組み合わせを含む、請求項29記載のアレイ。
【請求項31】
金層の厚さが約1 nm〜約10 nmである、請求項29記載のアレイ。
【請求項32】
結合分子が金-チオール共有結合によって金層に共有結合している、請求項29記載のアレイ。
【請求項33】
行デコーダ、列デコーダ、前置増幅器、および少なくとも1つの電流源をさらに含む、請求項29記載のアレイ。
【請求項34】
マイクロ流体回路をさらに含む、請求項29記載のアレイ。
【請求項35】
複数の検出部位を含む、請求項29記載のアレイ。
【請求項36】
磁気抵抗 (MR) 比、ΔR/R0、が約10 %〜約50 %である、請求項29記載のアレイ。
【請求項37】
2以上の強磁性層を含み、かつ標的分子が共有結合している、反強磁性的に結合した磁性ナノ粒子であって、
該強磁性層が、FexCo1-x (x は約0.5〜約0.7)、Co、Co合金、フェライト、窒化コバルト、 酸化コバルト、Co-Pd、Co-Pt、鉄、鉄合金、Fe-Au、Fe-Cr、Fe-N、Fe3O4、Fe-Pd、Fe-Pt、Fe-Zr-Nb-B、Mn-N、Nd-Fe-B、Nd-Fe-B-Nb-Cu、Ni、Ni合金、またはそれらの混合物を含み、および
該標的分子が、核酸、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、ウイルス、ポリマー、毒性化合物、医薬化合物、バイオハザード化合物、または爆発性化合物である、
ナノ粒子。
【請求項38】
強磁性層が少なくとも1つの非磁性スペーサー層により隔てられている、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項39】
スペーサー層が、ルテニウム、ルテニウム合金、クロム、クロム合金、金、金合金、貴金属、貴金属合金、またはそれらの混合物を含む、請求項38記載のナノ粒子。
【請求項40】
少なくとも1つの常磁性層をさらに含む、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項41】
少なくとも1つの超常磁性層をさらに含む、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項42】
磁場の非存在下では非磁性を示し、磁場の存在下では磁性を示す、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項43】
金表面層またはガラス表面層をさらに含む、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項44】
平均直径が約20 nm〜約250 nmであることを特徴とする、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項45】
平均直径が約20 nm〜約50 nmであることを特徴とする、請求項37記載のナノ粒子。
【請求項46】
以下の工程を含む、反強磁性的に結合した磁性ナノ粒子の結合体を作成する方法:
金表面層またはガラス表面層を含む反強磁性的に結合した磁性ナノ粒子を提供する工程;
核酸、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、ウイルス、ポリマー、毒性化合物、医薬化合物、バイオハザード化合物、および爆発性化合物からなる群より選択される標的分子を提供する工程;および
該ナノ粒子を該標的分子と共有結合性ナノ粒子-標的分子結合体の形成に適する条件下で接触させる工程。
【請求項47】
結合体が硫黄-金共有結合により共有結合している、請求項46記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−40951(P2013−40951A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−210003(P2012−210003)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2006−540017(P2006−540017)の分割
【原出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)