説明

磁性粒子の空間分布を決める方法及び磁性粒子を投与する組成物

【課題】簡単且つ経済的な装備を用いた復元可能且つ正確なやり方で、検査対象物の検査エリアから、データ、特に撮像に適したデータが生成されることができる磁気現象を用いた撮像方法を提供できないでいた。
【解決手段】磁性粒子は、少なくとも1つのカプセルに存在するケーシング又は特に薄膜被覆を備える、特に希釈されるか、若しくは特に白血球又は赤血球、免疫細胞、腫瘍細胞又は幹細胞のような細胞に、又は原料、薬剤、抗体又は生物に結合されるパウダー形式、若しくは特に液体の先駆物質形式で、懸濁物又はエアゾールにおける検査のエリアに投入及び/又は存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の検査エリアにおける磁性粒子の空間分布を決める方法に関すると共に、磁性粒子を投与する組成物にも関する。本発明はさらに、改善された撮像特性を持つ磁性粒子の組成物、検査エリアに磁性粒子を投与する投与組成物、及びこの磁性粒子を投与する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子を造影剤として用いる撮像方法が知られている。例えばMRI(磁気共鳴撮像)において、緩和時間に影響を与えるための造影剤として、酸化鉄が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドイツ国特許出願DE 37 51 918 T2は、核磁気共鳴技術を用いて動物若しくは人間の器官又は組織の生体画像を得るための方法を開示してあり、ここで、特定の方式で調合され、超磁性流体の形式である核磁気共鳴造影剤の画像を向上させる投与量が用いられる。照射される陽子(proton)が改善された緩和動作を明示するように、この磁性造影剤は検査時の組織の磁性特性に影響を受ける。超磁性物質及び強磁性物質は、Tの低下により磁気共鳴画像を暗く見せてしまう。しかしながら、核スピントモグラフィに適した造影剤は、磁気共鳴測定の感度を効果的に増大させるために、極めて安定した溶液を必要とする。超磁性酸化鉄からなる適切な水溶液の安定度は、粒子間の磁力による凝集(clumping)により、頻繁にかなり制限される。DE 37 51 918 T2は、2価及び3価の金属塩を有する安定した超磁性流体を製造する4つの段階の方法を提案している。この方法は時間及び費用がかかり、故に標準的な検査に必ずしも適さない。この方法を用いて得られる磁性粒子が解剖学的及び生理学的なコントラストを増大させるのに使用されることができたとしても、これらコントラストがMRI技術を用いた例えば温度及びpH値のようなパラメタの取得をより正確且つ迅速にさせるのには通常は適さない。その上、核スピントモグラフィは、高い均一性を持つ非常に強い磁場の使用を必要とする。一般的に、超伝導コイルは、液体ヘリウムの冷却液と一緒に用いられる。これにより、核スピントモグラフィ方法は常に高額な機材の支出につながっている。
【0004】
Chupp及びSwanson, "Medical Imaging with Laser Polarized Noble Gases", Advances in Atomic, Molecular and Optical Physics, 45, 41 (2001)によれば、磁気共鳴(MR)及び核磁気共鳴(NMR)方法を用いて生成される信号は、レーザー照射された偏極希ガス、特に3He及び129Xeが前記検査エリアに投入される場合、数桁の大きさで増大する。Heが特に肺の撮像に適する一方、129Xeは例えば器官の撮像に用いられる。レーザー照射により偏極した希ガスの製造は、大規模な機材を必要とする。加えて、大量の偏極した希ガスを製造することは難しい。特別な処置は、このことが信号増幅効果を本質的に打ち消してしまうので、たとえ微量でも酸素により偏極希ガスが汚染されないことを補償する約束もしなければならない。
【0005】
本発明の目的は、簡単且つ経済的な装備を用いた復元可能且つ正確なやり方で、検査対象物の検査エリアから、データ、特に撮像に適したデータが生成されることができる磁気現象を用いた撮像方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検査対象物の検査エリアにおける磁性粒子の空間分布を、
a)前記検査エリアが低い磁場の強さを持つ第1の部分エリアと、高い磁場の強さを持つ第2の部分エリアとからなるような磁場の強さの空間分布を持つ磁場を生成するステップ、
b)前記検査エリアにおける2つの部分エリアの特に相対的な空間位置を変化させる、又は前記粒子の磁化が局部的に変化するように前記第1の部分エリアにおける磁場の強さを変化させるステップ、
c)この変化により影響を受ける前記検査エリアにおける磁化に依存する信号を取得するステップ、及び
d)前記検査エリアにおける磁性粒子の空間分布の変化及び/又は運動に関する情報を得るために前記信号を評価するステップ
を用いて決める方法を提供することにより実現され、ここで、前記磁性粒子は、少なくとも1つのカプセルに存在するケーシング又は特に薄膜被覆を備える、特に希釈されるか、若しくは特に白血球又は赤血球、免疫細胞、腫瘍細胞又は幹細胞のような細胞に、又は原料、薬剤、抗体又は生物に結合されるパウダー形式、若しくは特に液体の先駆物質形式で、懸濁物又はエアゾールにおける検査のエリアに投入及び/又は存在する。実施例は少なくともこれらステップb)からd)の繰り返しを含んでいると認識される。
【0007】
懸濁物内の磁性粒子は、例えば静脈内に注入するに適しているのに対し、エアゾール状の磁性粒子は、肺を撮像する又は呼吸器系を撮像するのが好ましい。パウダー形態、特に希釈されたパウダー形態の磁性粒子がこの検査エリアに直接又は懸濁物若しくはエアゾールとして投入されることができる。磁性粒子をケーシング(casing)する、又は特に薄膜被覆することは、保管中にこれら粒子の凝集(clumping)又は集塊(agglomeration)、若しくは検査のエリアへの投入を防ぐことができる。好ましくは、一時的な被覆又はケーシングが用いられる。一時的な被覆又はケーシングは、例えば検査エリアの状態に依存して部分的又は完全に溶解することができるデキストラン(dextrane)又は粘性ゲルのような多糖類から作られることができる。
【0008】
他の実施例において、磁性粒子がカプセル又は被覆物に含まれ、この形式で検査エリアに運ばれる。適切なカプセル又は被覆材料は、検査エリアにおいて、ある状態下にある、例えば特定のpH値又は温度で前記粒子を分解及び放出する材料である。加えて、超音波又は光に曝される場合、溶解するカプセル材料が選択される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による好ましい実施例は、使用される磁性粒子をインケーシング又は被覆するのに用いられる材料が電磁放射線若しくは超音波を用いて熱、化学的、生物化学的に、及び/又は機械的に分解(degrade)又は溶解することを特徴とする。インケーシング又は被覆するための材料は、多糖類、でんぷん、特にデキストリン若しくはシクロデキストリン、ワックス、油、脂、グリセリン、ジェル又はプラスチック、特に熱可塑性ポリマー若しくはそれらの混合物を有する。その上、磁性粒子は、少なくとも1つのたんぱく質、ポリペプチド、抗体及び/又は有機シランからなる少なくとも部分的な被覆又はケーシングを持っていると規定される。
【0010】
例えばデキストラン及びたんぱく質のような生物学上の分解し得る材料を用いた磁性粒子の被覆は、ドイツ国特許出願DE 37 51 918 T2に記載されている。有機ポリマーを用いた粒子の被覆も、Shen他著のJ. Magn. Magn. Mater. 1999, 194, page37 ff及びGratta他著のPhys. Med. Biol. 1995, 40, page671 ffにより開示されている。磁性粒子の被覆はEP 186 616 A1にも見られる。
【0011】
本発明の他の態様は、特に白血球又は赤血球のような細胞、免疫細胞、腫瘍細胞及び/又は幹細胞に結合される磁性粒子を検査エリアに投入すると規定する。この磁性粒子を白血球又は免疫細胞に結合することは、炎症の根源の正確な位置測定及び撮像を可能にする。特に磁性ナノ粒子である磁性粒子を血液細胞に結合することは、Grob他著、"Jahrestagung der Deutschen Pharmazeutischen Gesellschaft" Munster, 2000に記載される。これら粒子を腫瘍細胞又は抗体に結合することにより、腫瘍形成又は腫瘍若しくは転移形成の進行の非常に正確な検査を実現することができる。薬剤、移植物又は生物に結合している磁性粒子が検査エリアに運ばれる及び/又は存在するような処方形態が好ましい。このようにして、これら磁性粒子に結合された前記対象物が移送される場所を観察し、これによりルートの決定及び速度を速めることができる。磁性粒子でマーキングされる生物は、例えばバクテリア又はしらみのような虫さえも含んでいる。
【0012】
本発明の他の実施例において、磁性粒子の先駆物質が検査エリアに投入される。これは、単に固体で存在する磁性粒子が検査エリアに投入されるのが利点なのではなく、この投入が適切な溶液を用いて行われることが利点である。
【0013】
特に、検査対象物に磁性粒子の組成物を投与する方法を提供し、この検査対象物は第一鉄及び第二鉄イオンを有する第1の溶液と接し、その前後に、検査エリアにおいて磁性粒子を沈殿させるための塩基(base)を有する第2の溶液と接する。好ましい実施例は、先駆物質がFeCl及びFeClを含む第1の水溶液と、NaOHを含む第2の水溶液とを有し、これら第1及び第2の溶液が接する状態にして、磁性粒子を形成する検査エリアに投入されると規定している。
【0014】
本発明は、上述した方法に使用する磁性粒子形成キットにも関し、このキットは第一鉄及び第二鉄イオンからなる第1の水溶液を有する第1の先駆物質と、第2の基礎溶液を有する第2の先駆物質とを有する。この組成物は、前記検査エリアに広がる環境下において、磁性粒子を撮像するための良好な特性を持つ、特に以下に特定されるように、磁化曲線の8段階にわたる変化を持つ磁性粒子が形成されるように選択される。
【0015】
この投与方法の場合、対象物は磁性粒子が他の如何なるやり方でも投入することができない場所を検査することができる。例えば、これは、プラスチック材料又はセラミック材料に応用することができ、本発明による方法を用いて、例えば微細なひび割れに対し検査することができる。上述した液体の先駆物質は、上記ひび割れに浸透し、次いでこの検査対象物の内部に磁性粒子を形成することができる。この記載される投与方法は、材料における小孔(porosity)又は微細なひび割れを視覚化及び研究するためのボアホール又は他の中空空間の検査又は測定にも特に適している。
【0016】
本発明はさらに、磁性粒子の組成物を検査エリアに投与するための投与組成物にも関し、これは第1の被覆材料に1つ以上の磁性粒子を含む投与粒子を有し、この第1の被覆材料は、この検査エリアに広がる状態において容易に取り除かれる。この投与組成物の利点は、磁性粒子が凝集又は集塊するのが防止されることである。この投与組成物は、乾いた粒子パウダー形態で貯蔵されることができ、安定であり、長い貯蔵期間を持つ。前記粒子を検査エリアに投与した後、前記被覆は、例えば溶解又は分解により取り除かれ、これにより、前記磁性粒子が前記検査エリアに移動する、及び外部磁場に反応する制約を取り除く。好ましくは、前記第1の被覆材料は、検査エリアに投与した後、約20秒経つ前に少なくとも一部が取り除かれている。適切な第1の被覆材料は多糖類又はでんぷんである。
【0017】
本発明の投与組成物の特別な実施例において、投与粒子は、第1の被覆材料で被覆されるただ1つの磁性粒子を有し、この投与粒子の直径は、磁性粒子の直径の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍の大きさである。この実施例の利点は、投与粒子から開放された後の磁性粒子が容易に再集塊しないことである。
【0018】
さらに他の実施例において、投与粒子は2つ以上の磁性粒子を有し、これら2つ以上の磁性粒子は、磁性粒子の平均直径の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍の平均距離である。検査エリアに投与した後の磁性粒子は、例えば流体媒体(血流)での移送又は希釈により互いに離れて動くようであり、比較的小さい距離が選択できるのに対し、より静的な媒体において、平均直径の少なくとも10倍の距離が好ましい。
【0019】
投与粒子における磁性粒子は、第1の被覆材料とは異なる第2の被覆材料で個々に被覆されることができる。これら個々に被覆された磁性粒子が前記第1の被覆材料に埋め込まれている。この第2の被覆材料の機能は好ましくは例えば生体適合性(biocompatibility)を改善するような第1の被覆材料とは異なっている。
【0020】
その上、投与組成物における投与粒子は、第1又は第2の被覆材料とは異なる材料からなる他の外部被覆を有することが好ましい。例えば、前記投与粒子は、投与組成物の貯蔵安定度を改善するために、容易に溶解可能な第1の被覆材料と、防水性のある外部被覆材料とを有する。
【0021】
適切な液体媒体において投与組成物を分散させた直後、投与組成物が検査エリアに直接投与されることができるか、又は検査エリアに投与する前に、前記被覆を少なくとも一部取り除くために液体において投与組成物が先に分散されることができるかである。この方法において、少なくとも一部が溶解した投与組成物を含む液体は、被覆を取り除いた後、通例約20秒以内に起こるような磁性粒子の実質的な集塊及び凝集の前に、検査エリアに加えられる。
【0022】
一般的に、検査エリアは記載された投与方法が導入され得る如何なるエリアも含んでいる。この検査エリアは、呼吸器系の肺、副鼻腔(sinus)又は他の部分にあり、消化器系では内耳、膀胱、膣、乳腺、循環器系、特に心臓、肝臓、脾臓にあり、リンパ系では骨髄及び特に炎症した器官及び/又は腫瘍にあると規定される。
【0023】
本発明による方法の他の実施例は、検査エリアは、プラスチック又はセラミックで作られるボアホール又は材料を有すると規定する。
【0024】
加えて、検査エリアが存在する検査対象物は、ポリマー材料、特に熱可塑性ポリマー、ポリマーブレンド、ポリマー溶融体、微生物、植物、植物要素、有機体又は有機体の一部を有する。
【0025】
基本的に、本発明の方法は、組成、粘度、形態又はサイズに関係なく如何なる対象物も検査するのに使用することができる。例えば、流体、粘性、及び固形の検査対象物が本発明による方法を用いて分析されることができる。
【0026】
磁性粒子を好ましくはガスが充満した空間に投与するために、エアゾール粒子が用いられる。このエアゾールの投与組成物は、例えば呼吸器系に投与されるか、又は検査するのにアクセスが難しい空間に、例えば材料にある空隙若しくは孔、管状の容器、アースフォーメーション(earth formation)等に投与される。本発明は、磁性粒子の組成物を検査エリアに投与するためのエアゾールの投与組成物にも関する。ここで粒子は100μmよりも下、好ましくは10μmよりも下の直径を持ち、これら粒子は硬質磁性粒子からなる。好ましくは、磁性粒子のニール回転による磁化の反転は、10mTよりも下では起こらない。上記エアゾールの投与組成物の場合、これら粒子がエアゾール状態である間は容易に磁化され、この空隙を囲む壁部に吸収される又は接している場合、これら粒子は容易に磁化されない。磁性粒子撮像技術におけるコントラストは、容易に磁化可能なエアゾール粒子と、幾何学的回転を妨害し、外部磁場において磁化が容易に反転しない粒子との間の違いから得られる。
【0027】
本発明のさらに他の実施例は、少なくとも8μm、好ましくは少なくとも10μmのサイズである粒子を有する、小さな管を検査するための投与組成物に関し、これら粒子は、磁性粒子及び任意に被覆材料を有し、これら磁性粒子及び任意の被覆材料はこの管内においてゆっくりと分解する。これら粒子のサイズは凡そ小さな血管のサイズであるため、これら粒子はこれら小さな血管に堆積及び蓄積させる。これは、例えば腫瘍組織及び肺潅流のようなある組織における小さな血管の存在及び潅流に関する情報を提供する。好ましくは、被覆された粒子は150μmより小さいサイズ、好ましくは90μmよりも小さいサイズを持つ。好ましくは、これら磁性粒子は、ニードル形状のマルチドメイン粒子であり、この粒子は、小さな粒子の磁気ベクトルが前記ニードルの軸に沿って殆ど配向されている整列した小さな粒子から成り、そのニードル形状の粒子は管内において個々の小さな粒子に分解する。これらニードルは好ましくは例えばアルブミンで被覆され、ほぼ球形の粒子を作成する。好ましくは、粒子を分解する時間は少なくとも10分である。
【0028】
本発明による方法は、飽和していない磁性粒子が、外部磁場で影響を受けることができ、その外部磁場に対する磁性粒子の反応が検出され得る環境を用いる。磁性粒子が存在する環境に関する結論は、この方式で行われる。印加された外部磁場に対する反応又は外部磁場との相互作用、すなわち磁場の反転は、この粒子が外部磁場の磁力線の方向に自分自身を並べることを例えば機械的な影響により妨害されない場合、特に異方性の磁性粒子を用いて容易に生じることができる。検査エリアにおける磁性粒子の行動がどれだけ依存しているかにおいて、その直接の環境は、例えばその磁性粒子が状態を変える、又は前に/後ろに移動するときを正確に検出されることができる。
【0029】
本発明による方法はこれにより、未公開のドイツ国特許出願番号101 51 778.5に記載されるような装置を有効に利用する。この装置の好ましい実施例に対し、上述した特許出願が参照される。
【0030】
本発明に使用される装置は、検査エリアに空間的に不均質な磁場を生成させる。第1のサブエリアにおいて、これら粒子の磁化が外部磁場から殆ど大きく外れ、これにより飽和されないほど磁場は弱い。この第1のサブエリアは、優先的に空間的コヒーレントエリアである。しかしながら、それは点状のエリアであることも可能であるが、線分又は平面であることも可能である。第2のサブエリア(すなわち、第1のエリアの外側にある残りの検査エリア)において、磁場はかなり強く、粒子を飽和状態のままにする。磁化が殆ど全ての粒子をほぼ外部磁場の方向に並べる場合、この磁化は飽和されるので、磁場が増大する場合、そのエリアにおける磁化は、磁場が同様に増大する第1のエリアにおける磁化よりもかなり小さい。
【0031】
検査エリア内の2つのサブエリアの位置を変更することにより、この検査エリアにおける(全体の)磁化は変化する。従って、この検査エリアにおける磁化、又はこれにより影響を受ける物理パラメタが測定される場合、この検査エリアにおける磁性粒子の空間分布に関する情報が得られる。
【0032】
検査エリアにおける両方のサブエリアの空間位置を変更するか、又は第1のサブエリアの磁場の強さを変えるために、例えば時間にわたり局所化及び/又は変化する磁場が生成される。検査エリアにおける時間にわたる磁化の変化により少なくとも1つのコイルに誘導される信号が取得及び評価され、この検査エリアにおける磁性粒子の空間分布に関する情報を得るとも規定される。起こり得る最も大きな信号は、両方のサブエリアの空間位置をできるだけ素早く変化させることにより達成される。この検査エリアに磁場を生成するのに用いるコイルは、これら信号を取得するのに使用されることができる。好ましくは、少なくとも1つの分離したコイルが用いられる。
【0033】
時間にわたり変化する磁場を用いて、サブエリアの空間位置を変更する場合、これは1つのコイルに同様に周期的な信号を誘導することができる。しかしながら、この信号の取得は、検査エリアに生じる信号及び時間にわたり変化する磁場が同時に有効となるので、別々であってもよく、これにより、磁場により誘導される信号と、検査エリアの磁化の変化により誘導される信号とを区別することは不可能である。しかしながら、このことは、時間にわたり変化する磁場が検査エリアにおいて第1の周波数帯域に作用することと、第1の周波数帯域よりも高い周波数成分を含む、前記コイルから入力される信号における第2の周波数帯域が磁性粒子の空間分布に関する情報を得るために評価されることとを避けることができる。これは、第2の周波数帯域の周波数成分が磁化特性曲線の非線形性による検査エリアにおける磁化の変化により単に作成される事実を利用している。時間にわたり変化する磁場が正弦的な周期行動である場合、第1の周波数帯域は、単一の周波数成分、つまり正弦波の基本振動だけからなる。対照的に、第2の周波数帯域は、この基本振動に加え、この正弦波の基本振動の高調波(いわゆる調波)を含み、これは評価に用いられることができる。
【0034】
本発明における方法の好ましい装置は、磁場を生成する手段が勾配磁場を生成するための勾配コイル装置を含み、この装置は検査エリアの第1のサブエリアにおいてその磁場の向きを反転させ、零の通過を証明することを特徴とする。この磁場は、勾配コイルが例えば検査エリアのどちら側にも置かれ、対抗する流れを持つ2つの同じ巻き線(マクスウェルコイル)を有する場合、これら巻き線の軸上のある点に零があり、この点の両側に反対の極性で略線形に増大する。磁化が飽和されていない磁場零の点の周りのエリアに置かれるこれら粒子にとってのみである。このエリアの外側の粒子に対し、この磁化は飽和状態である。
【0035】
これにより、装置は、時間にわたり変化し、検査エリアにおける両方のサブエリアを動かすことを目的として、勾配磁場に重ねられる磁場を生成する手段を備える。勾配コイル装置により生成されるエリアはこれにより、時間にわたり変化する磁場により、検査エリア内における磁場が零の点、すなわち第1のサブエリアの周りを動く。この磁場の時間にわたる適切な変化及び配向を用いて、この磁場が零の点を検査エリア全体にわたり移動させることが可能である。
【0036】
磁場が零の点の移動から起こる磁化の変化は、適切なコイル装置により検出されることができる。検査エリアに生じる信号を検出するのに用いられるコイルは、この検査エリアに磁場を生成するのに既に使用したコイルにすることもできる。しかしながら、時間にわたり変化する磁場を作り出すコイル装置から切り離すことができるので、受信用の別個のコイルを使用することも有利である。加えて、改善された信号/ノイズ比は、1つのコイルを用いて実現されることができるが、幾つかのコイルを用いるのがよりよい。
【0037】
コイル装置に誘導される信号の振幅は、検査エリアにおいて磁場が零の点の位置の変化が速くなる、すなわち勾配磁場に重ねられる時間にわたり変化する磁場の変化が速いほど、比例的に増大する。しかしながら、検査エリアの点に磁場が零の点を移動させるのに十分な振幅、又は十分な振幅を持つ信号を生成するのに十分な大きさの変化速度を用いて、時間にわたり変化する磁場を生成することは技術的に難しい。この目的に特に適した装置は、勾配磁場に重ねられる第1及び少なくとも第2の磁場を生成する手段を有し、これにより、第1の磁場は高い振幅でゆっくりと動き、第2の磁場は低い振幅で素早く動く。これは、異なる速度及び異なる振幅を持つ2つの磁場を、好ましくは2つのコイル装置により、生成する。他の利点は、磁場の変化が人間の可聴限界より上にあるほど、これら磁場の変化が素早い(例えば>20kHz)ことである。検査エリアにおける両方の磁場は通常互いに垂直に並べられるとも規定される。これは、二次元エリア内にある無磁場の点の移動を可能にする。これは2つの磁場に垂直に並べられる組成を持つ他の磁場により、三次元エリアに拡張することができる。他の利点は、コイル装置の下流にフィルタを備える装置に本来あり、これが誘導される信号における第1の周波数帯域の信号成分をコイル装置により抑制し、この第1の周波数成分よりも高い周波数成分を含む第2の周波数帯域における信号成分が通過するのを可能にする。これは、不飽和状態から飽和状態へ磁化が遷移するエリアにおいて、磁化特性曲線が非線形性である事実を利用している。この非線形性は、例えば周波数fを用いて時間にわたり変化する正弦の磁場が非線形エリアにおいて、周波数f(基本振動)及び整数倍の周波数f(調波又は高調波)を用いて時間にわたり変化する誘導を生じさせる効果を持つ。高調波の評価は、無磁場の点を移動させるのに用いられる磁場の基本振動が評価に何ら影響を持たないことを利点とする。
【0038】
幾つかのアプリケーション、例えば粘性又は流れの測定に対し、磁性粒子の少なくとも一部が異方性の特性を持つことが効果的であることが分かっている。
【0039】
磁性粒子は、その磁場の反転が主に、ブラウン回転又はニール回転を介して実施されるモノドメイン粒子であると規定されることができる。
【0040】
本発明による方法の他の適切な実施例において、磁性粒子は、硬質又は軟質磁性のマルチドメイン粒子により表されてもよい。
【0041】
他の実施例において、前記磁性粒子は硬質磁性粒子を有する。これら硬質磁性粒子はAl−Ni、Al−Ni−Co及びFe−Co−V合金、さらにバリウムフェライト(BaO 6xFe)も有する。
【0042】
前記方法の他の態様によれば、インケーシング(encasing)又は被覆に用いられる材料は、電磁放射線又は超音波を用いて熱、化学的、生化学的に、及び/又は機械的に分解される又は溶解されると提案される。
【0043】
好ましい実施例は、磁性粒子が特に薄片(flake)又はニードル形状の超磁性粒子又は強磁性粒子を有すると規定する。
【0044】
本発明によれば、外部磁場が印加される場合に磁性粒子が飽和状態となる、特に約100mT以下の強さを持つ磁場であると規定される。無論、より大きな飽和した磁場の強さも本発明による方法に適している。
【0045】
多くのアプリケーションに適した磁場の強さは約10mT以下である。この強さは多くの組織又は器官の検査にとって既に十分な強さである。しかし、1mT以下、又は約0.1mT以下のエリアにおける磁場の強さを用いて良好な測定結果を達成することも可能である。例えば、濃度データ、温度、圧力又はpH値は、約10mT以下、約1mT以下及び約0.1mT以下の磁場を用いて高い精度且つ解像度で決められることができる。
【0046】
本発明の意味において、磁性粒子が飽和状態になる又は飽和する外部磁場は、飽和磁化が約半分実現した磁場を意味する。
【0047】
ここで適切な磁性粒子は、十分小さな磁場を用いて飽和状態に達することができる粒子である。これに必要な要件は、磁性粒子が最小サイズを持つか、又は最小の双極子モーメントを持つことである。本発明の意味における磁性粒子という用語は、磁化されることができる粒子も含んでいる。
【0048】
適切な磁性粒子は好ましくは、その磁化が本発明による方法で決められるべきボクセルのサイズに比べ小さな大きさを持つ。加えて、これら粒子の磁化は好ましくは磁場の起こり得る最も低い場の強さで飽和状態に達するべきである。これに必要とされる磁場の強さが低いほど、空間分解能の能力は高くなるか、又は検査エリアに生じている(外部)磁場が弱くすることができるかである。加えて、磁化の変化が起こり得る最も大きな出力信号を作り出すので、磁性粒子は、起こり得る最高の双極子モーメントを持つか、又は高い飽和誘導を持たなければならない。この方法が医療検査に用いられる場合、この粒子が無毒であることも重要である。
【0049】
本発明による方法の好ましい形式は、磁性粒子がニール回転により反対に磁化される、及び/又は反対の磁化がブラウン回転により生じるモノドメイン粒子であることが提案される。
【0050】
適切な磁性モノドメイン粒子は好ましくは、単一の磁性粒子(モノドメイン)だけで形成されるか、ホワイトエリアが存在しないように大きさが決められる。本発明の特に好ましい実施例において適切な粒子サイズは、20nmから約800nmの範囲にあり、ここで上限はさらに使用される材料に依存する。好ましくは、磁鉄鉱(Fe)、磁赤鉄鉱(γ−Fe)及び/又は非化学量論的な酸化磁性鉄がモノドメイン粒子として用いられる。
【0051】
一般的に、特にニール回転に基づく素早い反転した磁化が必要とされる場合、前記モノドメイン粒子が低い有効異方性を証明することが有利である。有効異方性は、形式異方性及び平均結晶異方性から生じる異方性を意味している。上述した場合において、磁化の方向の変化は、粒子を回転させる必要はない。代わりに、高い有効異方性を持つモノドメイン粒子は、外部磁場を印加したとき、ブラウン回転又は幾何学的回転により反転する磁場が実現されることを望む場合に用いられる。とりわけ、その反転する磁場がニール回転及びブラウン回転に基づいている粒子は特に粘度の測定に適している。
【0052】
本発明による方法の他の実施例は、磁性粒子が硬質又は軟質磁性のマルチドメイン粒子により表されてもよいことを提案している。これらマルチドメイン粒子は通常、複数の磁性粒子が形成され得る大きな磁性粒子である。このようなマルチドメイン粒子は、低い飽和誘導を適切に持っている。
【0053】
硬質磁性のマルチドメイン粒子は一般的に高い有効異方性を持つモノドメイン粒子と同じ磁性特性を持つ。低い飽和磁化を持つ軟質磁性のマルチドメイン粒子は、これら粒子が本発明による方法で使用する如何なる形式にも形作られることができる利点を持つ。これら粒子が非対称な外部形式を持つ場合、検査エリアにおける局部的な粘性の測定に特に適している。高い飽和磁化を持つ軟質磁性のマルチドメイン粒子は、磁化係数が小さくなるように好ましくは設計されなければならない。対称及び非対称な形式の両方がここで考慮されることができる。例えば、高い飽和磁化を持つ軟質磁性材料は、磁化することができないボール又は立方体に薄膜被覆として塗布することができる。例えば薄片又はニードル形式のような非対称な形式を持つ高い飽和磁化を持つ軟質磁性のマルチドメイン粒子は、粘性の測定にも使用することができる。
【0054】
これにより、ニール回転及びブラウン回転を介して反転した磁場が起こるモノドメイン粒子は、非対称な外部形式を持つ小さい又は大きい飽和磁化を持つ軟質磁性のマルチドメイン粒子であるように、検査エリアにおける局部的な粘性の測定に特に適している。
【0055】
上述したように、磁性粒子は非磁性の核と磁性材料の被覆とからなる上記粒子も有している。従って、これは一般的に低い有効異方性を持つ全ての磁性粒子と、高い有効異方性を持つ磁性粒子とを有する。高い保磁力Hcは、磁化を零にするために、半硬質の磁石、特に硬質磁石において必要である。適切な硬質磁性材料は、Al−Ni、Al−Ni−Co及びFe−Co−V合金、さらにバリウムフェライト(BaO 6xFe)も有する。
【0056】
一般的に、磁性粒子を投与する組成物における磁性粒子は、良好な磁性粒子画像、特に良好な解像度が所与の磁場勾配で得られるように選択される。未公開のドイツ国特許出願番号101 51778.5号において、磁性粒子撮像方法が開示されている。20から800nmのサイズを持つ磁性のモノドメイン粒子、及び磁性被覆で被覆されるガラスビートがこの方法において用いられることが一般に開示されている。しかしながら、比較的小さな磁場の勾配で良好な磁性撮像のコントラスト及び解像度を実現するために、改善された磁性粒子の組成物が非常に望ましい。発明者は改善された磁性粒子撮像特性を持つ磁性粒子を分かっている。
【0057】
好ましくは、磁性粒子を投与する組成における磁性粒子は、ステップ変化を持つ磁化曲線を有する。このステップ変化は、このステップ変化の変曲点の周りのマグニチュードデルタ(magnitude delta)の第1の場の強さのウィンドウにおける、水性懸濁物において測定されるようなこのステップ変化が、前記第1の場の強さのウィンドウより下のマグニチュードデルタの場の強さのウィンドウ及び/又はそれより上にあるマグニチュードデルタの場の強さのウィンドウにおける磁化の変化よりも少なくとも3倍高いことを特徴とする。ここで、デルタは2000μT(microtesla)よりも小さく、好ましくは1000μTよりも小さい。前記第1のデルタウィンドウにおいて磁化ステップ変化が完了する時間は、0.01秒よりも小さく、好ましくは0.005秒よりも小さく、特に好ましくは0.001秒より小さく、最も好ましくは0.0005秒よりも小さい。このような磁性流体は、磁性粒子の撮像、特に画像の良好な分解能を得るのに特に適していることが分かる。さらに好ましくは、磁性粒子組成が磁化曲線を持つことであり、ここで、1T(tesla)の外部の磁化した場で測定されるように、このステップ変化は、前記粒子組成の全磁化の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは50%である。さらに好ましくは、前記ステップ変化の変曲点の周りのマグニチュードデルタの第1の場の強さのウィンドウにおける磁化の変化は、この第1の場の強さのウィンドウよりも下にあるマグニチュードデルタの場の強さのウィンドウ又はそれよりも上にあるマグニチュードデルタの場の強さのウィンドウにおける磁化の変化よりも少なくとも4倍、好ましくは5倍高い。
【0058】
磁性粒子組成物は、磁性粒子撮像技術に使用するのに特に有用である。これら粒子は比較的低い場の強さの勾配で良好な空間分解能を示す。さらに、この磁性粒子組成物は、大きな検査エリアを検査するために比較的高い走査速度を可能にする。前記ステップ変化が好ましくは1000μTよりも下のデルタ値で起こる、例えば医療用の磁性粒子撮像におけるアプリケーションに対し、前記粒子組成物は、10から0.1T/mの磁場の強さの勾配で0.1から10mmの値よりも良好な解像度の値を持つ。本発明による磁性粒子組成物を用いた磁性粒子撮像技術の場合、極めて良好な分解能が、非常に高い磁場であるアプリケーションにおいて例えば0.1から10μm(micrometer)の範囲で得られ、例えば顕微鏡検査においてこの勾配が実現されることができる。厳密に言うと、磁場の強さはH(A/m)で表されることを確認しておく。しかしながら、本出願において、磁場の強さを言及する場合、磁場B(B-field)を表している。上述した2000μTの磁場Bは、2mT/μ=1.6kA/mの磁場Hに対応する、すなわち真空状態で2mTの磁場Bを製造する等価の磁場H(H-field)に対応する。
【0059】
磁化曲線及び必要とされるステップ変化を測定する方法は以下のようである。磁性粒子組成物のサンプルが任意に簡単な洗剤を用いて水中に懸濁している。これら磁性粒子の凝集及び/又は分散(de-agglomerate)を防ぐために、超音波処理を使用することが可能である。磁性粒子組成物の濃度は、溶解液1リットル当たり、0.01グラムの核質量よりも少ない。核質量である場合、磁性粒子組成物における磁性粒子の質量を意味している。懸濁物は高速磁力計(すなわち、外部磁場が印加される間、サンプルの磁化を測定するデバイス)に入れられる。適切な高速磁力計が専門家には知られている。この磁力計は、サンプル位置において外部磁場を同時に少なくとも2つの直交方向に生成する、すなわち所与の最大振幅及び所与の最大の変化速度よりも下の如何なる磁場も生成することを可能にする手段を備えている。この磁化は同一平面における少なくとも2つの直交方向においても測定される。
【0060】
最初に、飽和磁化が測定される。このために、約1Tの磁場がある方向に与えられ、少なくとも10秒後に磁化の大きさが測定される。次いで、前記ステップ変化を決定する測定シーケンスが始まる。このシーケンスは、20mTよりも下の外部磁場の大きさを持つ磁場ベクトルを選択することで始まる。この磁場は、多くても100秒間与えられる。次いで第2の方向が選択される。この方向は、磁場H及び磁化Mのスカラー値を規定する。この磁場は、素早く変化し、好ましくは1ミリ秒よりも小さいので、−H方向に20mTよりも下のある大きさで置かれる。次に、前記磁場は例えば線形方法で−Hから+Hに変化し、(ここではスカラー、すなわち射影された)磁化が記録される。この磁化曲線は、0.01秒よりも小さいが、1μ秒よりも長く記録されている。この磁化曲線がステップ変化を示している場合には、サイズデルタ(size delta)の第1のウィンドウは、磁化ステップ変化の変曲点に集中的に位置決めされる。同様にサイズデルタのウィンドウは、この第1のウィンドウより下及び上に位置決めされ、必要とされるステップの変化はこれらウィンドウの各々における磁化の変化を決めることにより評価される。
【0061】
所与の磁性粒子組成が必要とされるステップ変化を持っているかは、複雑なやり方で、例えば粒子の大きさ、粒子の大きさの分布、粒子の形状、ニール回転(Neel rotation)に対する減衰コントラスト、磁性材料の形式、この磁性材料組成の結晶度及び化学量論のような多くの変数に依存している。粒子組成の粒子の大きさの分布が狭いことが特に重要であることも分かっている。好ましくは、本発明による磁性粒子組成は狭い粒子の大きさの分布を持ち、ここでこれら粒子の少なくとも50重量%は、平均粒子サイズの±50%、好ましくは25%、さらに好ましくは10%の間の粒子の大きさである。好ましくは、指定されるウィンドウ内にある粒子の量は、少なくとも70wt%、好ましくは80wt%及び最も好ましくは90wt%である。特にモノドメインを用いて得られる良好な結果は、実質的に10mTより下、好ましくは5mTより下、さらに好ましくは2mTより下のニール回転を誘導するのに必要な磁場を備える低い磁気異方性を持つ。好ましくは、磁性粒子は、20から80ナノメートル、さらに好ましくは25から70ナノメートル、最も好ましくは30から60ナノメートルの平均的な粒子の大きさを持ち、これら粒子の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%が、この平均的な粒子の大きさの±10ナノメートル間に粒子の大きさを持つ。
【0062】
本発明による磁性粒子組成の他の実施例において、この磁性粒子は、0.001より下の消磁係数を持つ略ニードル形状を持つマルチドメイン粒子である。この磁性粒子組成は、このニードル形状が不利にならない非医療アプリケーションに特に有用である。さらに他の実施例において、本発明による磁性粒子組成は、磁性被膜材料で被覆された非磁性コアを有する磁性粒子を有し、前記被膜の厚さは、5から80ナノメートルであり、消磁係数は0.01より小さく、直径は300μmより下である。さらに、これら他の実施例において、上述したような小さな粒子の大きさの分布を持つことも有利である。これら実施例における磁性粒子の物理的パラメタは、良好な撮像特性を達成するために上述されたようなステップ変化の要件を満たすように好ましくは選択される。
【0063】
本発明による磁性粒子組成は、磁性粒子を最初に形成する、例えば第一鉄及び第二鉄イオンを有する溶解液を上述した水酸化ナトリウムを有する溶解液との接触による沈殿物により製造されることができる。原則的に、既知の沈澱処理が用いられる。例えば高速の粉砕機(ball mill)を用いて、バルク材料からこれら粒子を粉砕することも可能である。良好な磁性粒子組成を得るのに不可欠な次のステップは、粒子の選択及び分離である。最初のステップは、フィルタリング及び/又は遠心分離方法により、大きさを選択する処理を実行することである。次のステップは、例えば発振する勾配磁場を用いて、粒子の磁気特性に基づいて選択処理を行うことである。
【0064】
本発明は、勾配磁場において磁性粒子を用いて、ここに記載される磁性撮像方法のための多数の投与形式が用いられる驚くべき認識に基づいてあり、それによって、本方法は、分析タスク毎に特定の磁性粒子投与形式を可能にする。
【0065】
上述した及び特許請求の範囲における本発明の特徴は、様々な実施例において本発明を実施するために、個々に及び如何なる組み合わせでも使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の検査エリアにおける磁性粒子の空間分布を以下のステップ、
a)前記検査エリアが低い磁場の強さを持つ第1の部分エリアと、高い磁場の強さを持ち第2の部分エリアとからなるような磁場の強さの空間分布を持つ磁場を生成するステップ、
b)前記検査エリアにおける前記2つの部分エリアの特に相対的な空間位置を変化させる、又は前記粒子の磁化が局部的に変化させるように前記第1の部分エリアにおける前記磁場の強さを変化させるステップ、
c)この変化により影響を及ぼされる前記検査エリアにおける磁化に依存する信号を取得するステップ、及び
d)前記検査エリアにおける前記磁性粒子の空間分布の変化及び/又は運動に関する情報を得るように前記信号を評価するステップ
を用いて決める方法であり、ここで、前記磁性粒子は、少なくとも1つのカプセルに存在するケーシング又は特に薄膜被覆を備える、特に希釈されるか、若しくは特に白血球又は赤血球、免疫細胞、腫瘍細胞又は幹細胞のような細胞に、又は原料、薬剤、抗体又は生物に結合されるパウダー形式、若しくは特に液体の先駆物質形式で、懸濁物又はエアゾールにおける検査のエリアに投入及び/又は存在する方法。
【請求項2】
前記先駆形式は、FeCl及びFeClを含む第1の水溶液と、NaOHを含む第2の水溶液とを有し、前記第1及び第2の水溶液は接触し、前記検査エリアにおいて磁性粒子を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁性粒子は、超磁性粒子又は強磁性粒子を特に薄片又はニードル形式で表すことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記検査エリアは、呼吸器系の肺、静脈洞又は他の部分にあり、消化器系では、内耳、膀胱、膣、乳腺、循環系、特に心臓、肝臓、脾臓にあり、リンパ系では、骨髄及び特に炎症した器官及び/又は腫瘍にあることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記検査エリアは、プラスチック又はセラミックから作成されるボアホール又は材料を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb)からd)が少なくとも1回は繰り返されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記検査対象物は、ポリマー材料、特に熱可塑性ポリマー若しくはポリマーブレンド、ポリマー溶融体、微生物、植物、植物の構成要素、有機体、又は有機体の構成要素を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記磁性粒子の少なくとも一部は異方性の特性を持つことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記磁性粒子は、その磁場の反転がブラウン回転又はニール回転を介して実施されるモノドメイン粒子であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記磁性粒子は硬質又は軟質磁性のマルチドメイン粒子であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記磁性粒子は、硬質磁性材料を有することを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記硬質磁性材料は、Al−Ni、Al−Ni−Co及びFe−Co−V合金、さらにはバリウムフェライト(BaO 6xFe)も有することを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
インケーシング又は被覆するのに使用される前記材料は、電磁放射線若しくは超音波を用いて熱的、化学的、生化学的に、及び/又は機械的に分解又は溶解されることができることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
磁性粒子を含むカプセル化。
【請求項15】
磁性粒子の組成物を検査エリアに投与する投与組成物であり、第1の被覆材料に1つ以上の磁性粒子を含み、前記第1の被覆材料が前記検査エリアに広がる状態において容易に取り除かれる投与粒子を有する投与組成物。
【請求項16】
前記第1の被覆材料は、前記検査エリアに投与した後、20秒より前に少なくとも一部が取り除かれている請求項15に記載の投与組成物。
【請求項17】
前記第1の被覆材料は、水で溶解する材料、好ましくは多糖類又はでんぷんである請求項15又は16に記載の投与組成物。
【請求項18】
前記投与粒子は前記第1の被覆材料で被覆される唯一の磁性粒子を有し、前記投与粒子の直径は前記磁性粒子の直径の少なくとも5倍、好ましくは10倍である請求項15、16又は17に記載の投与組成物。
【請求項19】
前記投与粒子は2つ以上の磁性粒子を有し、前記2つ以上の磁性粒子は、前記磁性粒子の平均直径の少なくとも5倍、好ましくは10倍の平均直径である請求項15、16又は17に記載の投与組成物。
【請求項20】
前記磁性粒子は、前記第1の被覆材料とは異なる第2の被覆材料で個々に被覆され、前記個々に被覆された磁性粒子は前記第1の被覆材料に埋め込まれる請求項15乃至19の何れか一項に記載の投与組成物。
【請求項21】
前記投与粒子は、前記第1又は第2の被覆材料とは異なる材料からなる他の外部被覆を有する請求項15乃至20の何れか一項に記載の投与組成物。
【請求項22】
前記投与組成物は簡単に溶解可能である第1の被覆材料、及び前記投与組成物の貯蔵安定性を改善するための防水性外部被膜材料を有する請求項21に記載の投与組成物。
【請求項23】
ステップ変化を持つ磁化曲線を有し、改善された撮像特性を持つ磁性粒子の組成物において、前記ステップ変化は、前記ステップ変化の変曲点の周りのマグニチュードデルタの第1の場の強さのウィンドウにおける、水性懸濁物において測定されるようなステップ変化が前記第1の場の強さのウィンドウより下にある前記マグニチュードデルタの場の強さのウィンドウにおける磁化の変化、又は前記第1の場の強さのウィンドウより上にある前記マグニチュードデルタの場の強さのウィンドウにおける磁化の変化よりも少なくとも3倍高く、デルタは2000μTよりも小さく、前記磁化ステップ変化が前記第1のデルタウィンドウにおいて完了する時間は0.01秒よりも小さいことを特長とする磁性粒子の組成物。
【請求項24】
前記磁性粒子は請求項23に記載の磁性粒子の組成物である請求項15乃至22の何れか一項に記載の投与組成物、又は請求項1乃至13の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項9乃至15の何れか一項に記載の投与組成物は、前記被覆を少なくとも一部を取り除くために、液体中に予め分散され、続いて検査エリアに投与される、磁性粒子の組成物を投与する方法。
【請求項26】
検査対象物に磁性粒子の組成物を投与する方法において、前記検査対象物は、第一鉄イオン及び第二鉄イオンを有する第1の溶解液と接し、その前後に、前記検査エリアにおいて前記磁性粒子を沈殿させるための塩基を有する第2の溶解液と接する方法。
【請求項27】
前記第1の溶解液は塩化第一鉄水和物及び塩化第二鉄水和物を有し、前記第2の溶解液は水酸化ナトリウムを有する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第一鉄イオン及び第二鉄イオンからなる第1の水溶液を有する第1の容器、並びに第2の基礎溶液を有する第2の容器を有する、請求項26又は27に記載の方法に使用する磁性粒子形成キット。
【請求項29】
磁性粒子の組成物を検査エリアに投与するエアゾール投与組成物において、前記磁性粒子は100μmよりも小さい、好ましくは10μmよりも小さい直径であり、前記磁性粒子は硬質磁性材料から形成されるエアゾール投与組成物。
【請求項30】
前記磁性粒子のニール回転による磁化の反転は、5mTより下では起こらない請求項29に記載のエアゾール投与組成物。
【請求項31】
小さな管を調査するために投与する磁性粒子の組成物において、少なくとも8μm、好ましくは10μmから100μmのサイズを持つ粒子を有し、前記粒子は磁性粒子と任意に被覆材料とを有し、前記磁性粒子及び任意の被覆材料は前記管内においてゆっくりと分解する投与する磁性粒子の組成物。
【請求項32】
前記磁性粒子は、整列された小さな粒子から成るニードル形状のマルチドメイン粒子であり、前記小さな粒子の磁性ベクトルは前記ニードルの軸に沿ってほぼ配向され、前記ニードル形状の粒子は前記管内において個々の小さな粒子に分解する請求項31に記載の投与する磁性粒子の組成物。
【請求項33】
前記粒子を分解させる時間は少なくとも10分である請求項31に記載の投与する磁性粒子の組成物。

【公開番号】特開2011−46735(P2011−46735A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−247345(P2010−247345)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【分割の表示】特願2006−506849(P2006−506849)の分割
【原出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】