説明

磁気ギヤおよびそれを搭載した車両

【課題】この発明は、第1および第2回転体を軸方向に離間して配設された異なる軸受で片持ち支持して、ハウジングによる第1および第2回転体の支持構造を簡素化し、小型化を図るとともに、エンジンなどの出力軸を第1回転体の第1軸として兼用でき、高精度のアライメント調整を省略できる磁気ギヤを得る。
【解決手段】インナーロータ8が第1ハウジング2に保持された第1軸受3に片持ち支持された入力軸6に同軸に連結され、アウターロータ11が第2ハウジング4に保持された第2軸受5に片持ち支持された出力軸7に同軸に連結されている。そして、第1永久磁石10が支持体9の外周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配設され、第2永久磁石13が支持体9の外周面を囲繞する円筒部12の内周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配設され、磁性体コアが周方向に所定の間隔をもって環状に配列されて支持体9と円筒部12との間に挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力軸から入力されたトルクを磁気的な結合状態を利用して所定の速度比で出力軸に伝達する磁気ギヤおよびそれを搭載した車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気的な結合状態を利用する磁気ギヤは、機械式ギヤにおける潤滑損失やオイルメンテナンスの問題がなく、注目を集めている。そして、永久磁石が外周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配列された内ロータを、永久磁石が内周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配列された外ロータの内周側に所定の空隙を介して同軸に配設し、磁極片を内ロータと外ロータとの間の空隙に同心状に配設して磁気ギヤを構成することにより、機械式ギヤに匹敵するトルク密度が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
さらに、内ロータのスピンドルを複数の軸受を介してハウジングに支持させ、外ロータをスピンドルとハウジングとの間に軸受を介して回転自在に配設し、ステータを内ロータおよび外ロータの外側に配置して、磁気ギヤとモータとを一体化した従来の電気機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/125284号パンフレット(図6)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. Atallah and D. Howe, "A Novel High-Performance Magnetic Gear", IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, VOL.37, No.4, July 2001, p.2844-2846
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電気機器では、内ロータおよび外ロータが軸受により両持ち支持されているので、下記の不具合が生じる。
【0007】
まず、内ロータと外ロータとの軸方向一側は、同心状に配された2つの軸受を介してハウジングに支持されているので、ハウジングによる内ロータと外ロータとの支持構造が複雑となる。一方、内ロータの軸方向他側は、単一の軸受を介してハウジングに支持され、外ロータの軸方向他側は、単一の軸受を介して内ロータのスピンドルに支持されているので、内ロータと外ロータとの軸方向他側の軸方向長さが長くなり、小型化が図れない。
また、従来の電気機器がモータやエンジンの出力を変速する用途に適用される場合、モータやエンジンの出力軸と内ローラのスピンドルとを同軸接続する必要があり、高精度のアライメント調整が必要となる。また、モータやエンジンの出力軸と内ローラのスピンドルとをカップリングを介して接続することによりこの高精度のアライメント調整を不要とすることができるが、大型化という新たな不具合をもたらす。
【0008】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、第1回転体と第2回転体とを軸方向に離間して配設された異なる軸受で片持ち支持するようにして、ハウジングによる第1回転体および第2回転体の支持構造を簡素化し、小型化を図ることができるとともに、モータやエンジンの出力軸を第1回転体の入力軸として兼用でき、高精度のアライメント調整を省略できる磁気ギヤおよびそれを搭載した車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による磁気ギヤは、第1軸受を保持する第1ハウジングと、上記第1軸受と軸方向一側に離間して、かつ同軸に配置された第2軸受を保持する第2ハウジングと、上記第1軸受に片持ち支持された第1軸に同軸に連結されて上記第1ハウジンに回転自在に支持された第1回転体と、上記第1回転体の外周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配列されたN極対(N:正の整数)の第1永久磁石と、円筒部を有し、上記第2軸受に片持ち支持された第2軸に該円筒部が連結部を介して同軸に連結されて上記第2ハウジングに回転自在に支持され、該円筒部が上記第1回転体を囲繞するように配設された第2回転体と、上記円筒部の内周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配列されたM極対(M:正の整数)の第2永久磁石と、それぞれ柱状に作製され、長手方向を上記第1軸の軸方向と平行として周方向に互いに所定の隙間を持って環状に配列され、上記第1ハウジングに該第1軸と同軸に支持されて上記第1回転体と上記第2回転体との間に挿入されるL個(L:正の整数)の磁性体コアと、を備え、上記第1永久磁石の極対数N、上記第2永久磁石の極対数M、および上記磁性体コアの個数Lが、|M±L|=Nを満足している。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、第1永久磁石が第1回転体の外周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配設され、第2永久磁石が第1回転体の外周面を囲繞する第2回転体の円筒部の内周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配設され、磁性体コアが周方向に所定の間隔をもって環状に配列されて第1回転体と第2回転体との間に挿入され、第1永久磁石の極対数N、上記第2永久磁石の極対数M、および上記磁性体コアの個数Lが、|M±L|=Nを満足しているので、第1軸に入力されたトルクが速度比N/Mで第2軸に伝達される。
【0011】
また、第1回転体が第1ハウジングに保持された第1軸受に片持ち支持された第1軸に同軸に連結され、第2回転体が第2ハウジングに保持された第2軸受に片持ち支持された第2軸に同軸に連結されている。そこで、第1および第2ハウジングによる第1回転体および第2回転体の支持構造が簡素化され、装置の小型化を図ることができる。また、モータやエンジンの出力軸を第1回転体の第1軸として兼用できるので、高精度のアライメント調整を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る磁気ギヤの構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI矢視断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る磁気ギヤを適用したハイブリッドカーを模式的に示すシステム構成図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図である。
【図9】図8のIX−IX矢視断面図である。
【図10】図8のX−X矢視断面図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図である。
【図12】図11のXII−XII矢視断面図である。
【図13】図11のXIII−XIII矢視断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図である。
【図15】図14のXV−XV矢視断面図である。
【図16】この発明の実施の形態6に係る磁気ギヤの動作を説明する図である。
【図17】この発明の実施の形態7に係る磁気ギヤの動作を説明する図である。
【図18】この発明の実施の形態8に係る磁気ギヤの構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図、図2は図1のII−II矢視断面図、図3はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギヤの構成を模式的に示す斜視図である。
【0014】
図1乃至図3において、磁気ギヤ1は、第1軸受3が保持された第1ハウジング2と、第2軸受5が第1軸受3と軸方向に離間して第1軸受3と同軸に保持された第2ハウジング4と、第1軸受3に回転自在に片持ち支持された第1軸としての入力軸6と、第2軸受5に回転自在に片持ち支持された第2軸としての出力軸7と、円柱状の支持体9および支持体9の外周面上に周方向に極性を交互に逆向きにして配列、固着された複数の第1永久磁石10を有し、支持体9が入力軸6の軸方向一端に同軸に接続された第1回転体としてのインナーロータ8と、円筒状の支持体12および支持体12の内周面上に周方向に極性を交互に逆向きにして配列、固着された複数の第2永久磁石13を有し、支持体12が連結部としての円盤状のディスク14を介して出力軸7の軸方向他端に同軸に接続され、第2永久磁石13と第1永久磁石10との間に所定の隙間15を有して、支持体12が支持体9を囲繞するように配設された第2回転体としてのアウターロータ11と、複数の磁性体コア17がその他端を第1ハウジング2に固着されて周方向に所定のピッチで配列され、第1軸受3と同軸の環状に構成され、その一端側が隙間15内に挿入された鉄心層16と、を備えている。
【0015】
インナーロータ8の複数の第1永久磁石10は、着磁方向18が、径方向外方又は径方向内方となるように着磁配向されている。そして、複数の第1永久磁石10は、着磁方向18が周方向に交互に逆向きとなるように配列されている。また、支持体9は鉄などの磁性体で作製されている。ここでは、8極、即ち4極対の第1永久磁石10が支持体9の外周面上に周方向に等角ピッチで配列されている。
【0016】
アウターロータ11の複数の第2永久磁石13は、着磁方向18が、径方向外方又は径方向内方となるように着磁配向されている。そして、複数の第2永久磁石13は、着磁方向18が周方向に交互に逆向きとなるように配列されている。また、支持体12は鉄などの磁性体で作製されている。ここでは、44極、即ち22極対の第2永久磁石13が支持体12の内周面上に周方向に等角ピッチで配列されている。なお、ディスク14は磁気的な観点からステンレスなどの非磁性材料で作製することが好ましい。
【0017】
鉄心層16は、鉄などで柱状に作製された磁性体コア17をその長手方向を入力軸6の軸方向と平行として周方向に等角ピッチで配列されて環状に構成されている。そして、周方向に隣り合う磁性体コア17間は、空気層からなる非磁性体の空間19により磁気的に分離されている。ここでは、26個の磁性体コア17が周方向に等角ピッチで配列されている。また、第1ハウジング2はステンレスなどの非磁性体で作製され、第1ハウジング2を介しての磁性体コア17間の磁気的な短絡を防止している。
【0018】
つぎに、このように構成された磁気ギヤ1における減速動作について説明する。
まず、図2に示されるように、インナーロータ8は8極の磁界を発生する。
【0019】
そして、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6を介して入力されると、インナーロータ8が回転される。第1永久磁石10により発生する磁石の起磁力H1は、式(1)で表される。
H1=A・sin(4θ+4ωt) (1)
なお、Aは磁石磁場の強度で決まる係数、θは空間の角度、ωはインナーロータ8の回転角速度である。
鉄心層16のパーミアンスPは、式(2)で表される。
P=B・sin(26θ) (2)
なお、Bは鉄心層16と第1永久磁石10との空隙で決まる係数、θは空間の角度である。
【0020】
そして、第1永久磁石10が鉄心層16を介して対向する第2永久磁石13に対して発生する磁場B1は、起磁力H1とパーミアンスPとの積で表される。
B1=H1・P=−(AB/2){cos(30θ+4ωt)−(cos(22θ−4ωt)} (3)
インナーロータ8は、式(3)に示されるように、正相(インナーロータ8の回転方向)の30極対成分と逆相(インナーロータ8の逆回転方向)の22極対成分との磁界を発生する。
【0021】
アウターロータ11は、22極対の第2永久磁石13が装着されているので、磁場B1と結合して逆回転する。その時のアウターロータ11のスピードは、インナーロータ8の回転速度4ωtと同期するように、4/22(=1/5.5)と減速される。つまり、インナーロータ8の第1永久磁石10の極数とアウターロータ11の第2永久磁石13の極数との比で減速が行われる。
【0022】
一方、アウターロータ11の第2永久磁石13が発生する起磁力H2は式(4)で表される。
H2=C・sin(22θ−22ωt) (4)
なお、Cは磁石磁場の強度で決まる係数、θは空間の角度、ωはアウターロータ11の回転角速度である。
ここで、インナーロータ8とアウターロータ11との同期条件、ω2=(4/22)ω1から、式(4)は式(5)となる。
H2=C・sin(22θ−4ωt) (5)
【0023】
そして、第2永久磁石13が鉄心層16を介して対向する第1永久磁石10に対して発生する磁場B2は、起磁力H2とパーミアンスPとの積で表される。
B2=H2・P=−(BC/2){cos(48θ−4ωt)−(cos(−40θ+4ωt)} (6)
式(6)に示されるように、アウターロータ11は4極対成分の磁界を発生し、回転角速度がインナーロータ8と同一方向であるので、同期条件が成立し、動力が伝達される。
【0024】
このように、磁気ギヤ1は、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0025】
この実施の形態1によれば、インナーロータ8が連結される入力軸6が第1軸受3を介して第1ハウジング2に片持ち支持され、アウターロータ11が連結される出力軸7が第2軸受5を介して第2ハウジング4に片持ち支持されている。そこで、特許文献1のように2つの軸受を同心状に配した二重軸受構造が不要となり、インナーロータ8とアウターロータ11との支持構造が簡易となる。また、特許文献1にようにインナーロータ8とアウターロータ11との軸方向の一側で2つの軸受を軸方向に併設する必要がなく、磁気ギヤ1の軸方向の小型化が図られる。
【0026】
また、入力軸6と出力軸7とが、それぞれ第1軸受3と第2軸受5、即ち軸方向に離間する異なる片持ち軸受を介して、独立した第1ハウジング2と第2ハウジング4とに支持されているので、第1軸受3と第2軸受5とのアライメント誤差は第1永久磁石10と第2永久磁石13との間の隙間15により吸収される。
そこで、外部動力源と入力軸6との同軸度誤差を吸収する為のカップリング、出力軸7と出力軸7に接続される負荷との同軸度誤差を吸収するためのカップリング、さらには第1軸受3と第2軸受5とのアライメント調整を不要にできる。また、同軸度誤差に起因する第1軸受3と第2軸受5への過大な負荷をなくすことができ、効率の高い磁気ギヤを得ることができる。
【0027】
なお、上記実施の形態1では、周方向に配列された磁性体コア17間の空間19が、空気層で構成されているものとしているが、空間19は空気層に限らず非磁性体であればよく、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)でもよい。
また、上記実施の形態1では、第1ハウジングがステンレスなどの非磁性体で作製されているものとしているが、鉄心層が非磁性体を介して磁気的に絶縁されて第1ハウジングに取り付けられていれば、第1ハウジングを磁性体で作製してもよい。
【0028】
また、上記実施の形態1では、第1永久磁石が4極対(8極)、第2永久磁石が22極対(44極)、磁性体コアが26個としているが、第1および第2永久磁石の極数および磁性体コアの個数はこれに限定されるものではなく、磁気ギヤの変速比に応じて、適宜設定すればよい。すなわち、第1永久磁石の極対数をN(但し、Nは正の整数)、第2永久磁石の極対数をM(但し、Mは正の整数)、磁性体コアの個数をL(但し、Lは正の整数)としたとき、N,M,Lを、|M±L|=Nを満足するように設定すれば、入力軸に入力されたトルクを速度比N/Mで出力軸に伝達することができる。
【0029】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図、図5は図4のV−V矢視断面図、図6は図4のVI−VI矢視断面図、図7はこの発明の実施の形態2に係る磁気ギヤを適用したハイブリッドカーを模式的に示すシステム構成図である。
【0030】
図4乃至図6において、第2回転体としてのアウターロータ20は、鉄などの磁性体で作製された円筒状の支持体21、支持体21を軸方向に2分割するように支持体21の内周面に固着された連結部としての円盤状のディスク22、支持体21の内周面上の軸方向他側に周方向に極性を交互に逆向きにして等角ピッチで配列、固着された22極対の第2永久磁石13、および支持体21の内周面上の軸方向一側に周方向に極性を交互に逆向きにして等角ピッチで配列、固着された4極対の第3永久磁石23を有している。そして、アウターロータ20は、支持体21がディスク22を介して出力軸7の軸方向他端に同軸に接続され、第1永久磁石10と第2永久磁石13との間に所定の隙間15を有して、支持体21の軸方向他側が支持体9を囲繞するように配設されている。なお、ディスク22は磁気的な観点からステンレスなどの非磁性材料で作製することが好ましい。
【0031】
固定子25は、磁性鋼板の積層体であり、環状のコアバック部26a、それぞれコアバック部26aの外周面から径方向外方に延出して周方向に等角ピッチで配列された12本のティース部26b、およびそれぞれ周方向に隣り合うティース部26b間に形成される12個のスロット26cからなる固定子鉄心26と、各ティース部26bに集中巻きに巻回された12個のコイルを3相結線して構成された固定子コイル27と、を備えている。そして、固定子25は、固定子鉄心26のコアバック部26aを取付ねじ28により第2ハウジング2に締着固定されて、第3永久磁石23と固定子鉄心26との間に所定の隙間29を有して、かつ支持体21の軸方向一側の部位に囲繞されるように、第2軸受5と同軸に配設されている。そして、第3永久磁石23は、着磁方向18が、径方向外方又は径方向内方となるように着磁配向されている。固定子コイル27はアウターロータ20にトルクを発生させるトルク発生コイルとして作用する。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0032】
このように構成された磁気ギヤ1Aは、ディスク22の他側が磁気ギヤ部30を構成し、ディスク22の一側がモータ部31を構成しているモータ一体型磁気ギヤである。
そして、ディスク22の他側に構成される磁気ギヤ部30は、基本的に実施の形態1における磁気ギヤ1と同等に構成されており、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0033】
また、ディスク22の一側に構成されるモータ部31は、固定子コイル27に3相電流を通電することにより、第3永久磁石23との磁気的相互作用によりアウターロータ20に対してトルクを発生する、第3永久磁石23が8極、固定子鉄心26のスロット26cが12個の、即ち2極3スロットのアウターロータ形モータとして動作する。これにより、入力軸6に入力されトルクは、磁気ギヤ部30で増幅され、さらにモータ部31のトルクが重畳されて、出力軸7から出力される。
【0034】
ここで、本磁気ギヤ1Aがエンジンとモータとの双方を有するいわゆるハイブリッドカーに適用された場合を図7に示す。図7では、磁気ギヤ部30は、エンジン32の出力軸であるクランク軸が入力軸6と兼用として構成され、エンジントルクを増幅する。一方、モータ部31は、バッテリ33の電力がインバータ34を介して固定子コイル27に供給されて駆動される。そこで、エンジントルクが磁気ギヤ部30で増幅されつつ、モータ部31によってアシストされ、エンジン32単独の場合に比べて、高トルクを出力することができる。出力軸7から出力されたトルクは、車両の車輪軸に伝達される。
【0035】
この実施の形態2においても、インナーロータ8が連結される入力軸6が第1軸受3を介して第1ハウジング2に片持ち支持され、アウターロータ20が連結される出力軸7が第2軸受5を介して第2ハウジング4に片持ち支持されているので、上記実施の形態1と同様に、インナーロータ8とアウターロータ20との支持構造が簡易となるとともに、磁気ギヤ1Aの軸方向の小型化が図られる。
【0036】
また、入力軸6および出力軸7とが、それぞれ第1軸受3と第2軸受5、即ち軸方向に離間する異なる片持ち軸受を介して、独立した第1ハウジング2と第2ハウジング4とに支持されている。そこで、第1軸受3と第2軸受5とのアライメント誤差は、第1永久磁石10と第2永久磁石13との間の隙間15により吸収され、第1軸受3と第2軸受5とのアライメント調整を不要にできる。また、外部動力源の出力軸を入力軸6と共用でき、外部動力源の出力軸と入力軸6との同軸度誤差を吸収する為のカップリングを不要にできる。さらに、出力軸7と変速機やタイヤなどの駆動機器の軸受との取り付け誤差は、第3永久磁石23と固定子鉄心26との間の隙間29により吸収される。
【0037】
このように、入力軸6に接続される外部動力源と出力軸7に接続される負荷との間の同軸度誤差を吸収するためのカップリングを不要にできるとともに、第1軸受3と第2軸受5とのアライメント調整を不要にできる。また、同軸度誤差に起因する第1軸受3と第2軸受5への過大な負荷をなくすことができ、効率の高いモータ一体形磁気ギヤを得ることができる。
【0038】
なお、上記実施の形態2では、固定子鉄心が12個のスロットを有するものとしているが、固定子鉄心のスロットの個数はこれに限定されるものではなく、第3永久磁石の極に応じて適宜設定される。
【0039】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図、図9は図8のIX−IX矢視断面図、図10は図8のX−X矢視断面図である。
【0040】
図8乃至図10において、第2回転体としてのアウターロータ35は、鉄などの磁性体で作製された円筒状の支持体36、支持体21の内周面上の軸方向他側に周方向に極性を互いに逆向きとして等角ピッチで配列、固着された22極対の第2永久磁石13、および支持体21の内周面上の軸方向一側に、第2永久磁石13と軸方向に離間して、周方向に極性を互いに逆向きとして等角ピッチで配列、固着された4極対の第3永久磁石23を備えている。アウターロータ35は、支持体36が連結部としての円盤状のディスク37を介して出力軸7の軸方向他端に同軸に接続され、第1永久磁石10と第2永久磁石13との間に所定の隙間15を有して、支持体36の軸方向他側が支持体9を囲繞するように配設されている。なお、ディスク37は磁気的な観点からステンレスなどの非磁性材料で作製することが好ましい。
【0041】
固定子38は、磁性鋼板の積層体であり、環状のコアバック部39a、それぞれコアバック部39aの外周面から径方向外方に延出して周方向に等角ピッチで配列された12本のティース部39b、およびそれぞれ周方向に隣り合うティース部39bにより形成される12個のスロット39cからなる固定子鉄心39と、各ティース部39bに集中巻きに巻回された12個のコイルを3相結線して構成された固定子コイル40と、を備えている。そして、固定子38は、固定子鉄心39のティース部39bの先端をステンレス等からなる非磁性スペーサ41を介装させて磁性体コア17を挿通する取付ねじ28により第1ハウジング2に締着固定されて、第3永久磁石23と固定子鉄心26との間に所定の隙間29を有して、かつ支持体36の軸方向一側の部位に囲繞されるように、第2軸受5と同軸に配設されている。そして、第3永久磁石23は、着磁方向18が径方向外方又は径方向内方を向くように着磁配向されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0042】
このように構成された磁気ギヤ1Bは、支持体36の軸方向他側が磁気ギヤ部30Aを構成し、支持体36の軸方向一側がモータ部31Aを構成しているモータ一体型磁気ギヤである。
そして、支持体36の軸方向他側に構成される磁気ギヤ部30Aは、基本的に実施の形態1における磁気ギヤ1と同等に構成されており、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0043】
また、支持体36の軸方向一側に構成されるモータ部31Aは、固定子コイル27に3相電流を通電することにより、第3永久磁石23との磁気的相互作用によりアウターロータ35に対してトルクを発生する2極3スロットのアウターロータ形モータとして動作する。これにより、入力軸6に入力されトルクは、磁気ギヤ部30Aで増幅され、さらにモータ部31Aのトルクが重畳されて、出力軸7から出力される。
【0044】
そこで、本磁気ギヤ1Bがエンジンとモータとの双方を有するいわゆるハイブリッドカーに適用された場合、上記実施の形態2と同様に、エンジントルクが磁気ギヤ部30Aで増幅されつつ、モータ部31Aによってアシストされ、エンジン単独の場合に比べて、高トルクを出力することができる。
したがって、この実施の形態3においても、上記実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0045】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図、図12は図11のXII−XII矢視断面図、図13は図11のXIII−XIII矢視断面図である。
【0046】
図11乃至図13において、第1回転体としてのインナーロータ42は、鉄などの磁性体で作製された円柱状の支持体43と、支持体43の外周面上に周方向に極性を交互に逆向きにして等角ピッチで配列、固着された4極対の第1永久磁石44と、を備えている。そして、インナーロータ42は、支持体43が第1ハウジング2の第1軸受3に保持された入力軸6の軸方向一端に同軸に接続されている。そして、第1永久磁石44は、着磁方向18が径方向外方又は径方向内方を向くように着磁配向されている。
【0047】
固定子45は、磁性鋼板の積層体であり、環状のコアバック部46a、それぞれコアバック部46aの内周面から径方向内方に延出して周方向に等角ピッチで配列された12本のティース部46b、およびそれぞれ周方向に隣り合うティース部46bにより形成される12個のスロット46cからなる固定子鉄心46と、各ティース部46bに集中巻きに巻回された12個のコイルを3相結線して構成された固定子コイル47と、を備えている。そして、固定子45は、固定子鉄心46のティース部46bの先端部をステンレス等からなる非磁性スペーサ41を介装させて取付ねじ28により第1ハウジング2に締着固定されて、第1永久磁石44と固定子鉄心26との間に所定の隙間29を有して、かつ支持体36の軸方向他側の部位に囲繞するように、第1軸受3と同軸に配設されている。
【0048】
アウターロータ11は、支持体12がディスク14を介して出力軸7の軸方向他端に同軸に接続され、第2永久磁石13と第1永久磁石44との間に所定の隙間15を有して、支持体12が支持体43の軸方向他側を囲繞するように配設されている。
鉄心層48は、周方向に互いに空間19を開けて、かつ等角ピッチで環状に配列された26本の磁性体コア17をFRPなどに非磁性連結体54により一体化して作製された円筒体に構成されている。そして、鉄心層48は、非磁性スペーサ41を介して取付ねじ28により固定子鉄心46とともに第2ハウジング2に共締めされて第1軸受3と同軸に配設され、隙間15内に挿入されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0049】
このように構成された磁気ギヤ1Cは、支持体43の軸方向一側が磁気ギヤ部30Bを構成し、支持体43の軸方向他側がモータ部31Bを構成しているモータ一体型磁気ギヤである。
そして、支持体43の軸方向一側に構成される磁気ギヤ部30Bは、基本的に実施の形態1における磁気ギヤ1と同等に構成されており、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0050】
また、支持体43の軸方向他側に構成されるモータ部31Bは、固定子コイル47に3相電流を通電することにより、第3永久磁石23との磁気的相互作用によりアウターロータ11に対してトルクを発生する2極3スロットのアウターロータ形モータとして動作する。これにより、入力軸6に入力されトルクは、磁気ギヤ部30Bで増幅され、さらにモータ部31Bのトルクが重畳されて、出力軸7から出力される。
【0051】
そこで、本磁気ギヤ1Cがエンジンとモータとの双方を有するいわゆるハイブリッドカーに適用された場合、上記実施の形態2と同様に、エンジントルクが磁気ギヤ部30Bで増幅されつつ、モータ部31Bによってアシストされ、エンジン単独の場合に比べて、高トルクを出力することができる。
したがって、この実施の形態4においても、上記実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0052】
また、この実施の形態4によれば、固定子鉄心46がスロット開口を内周側とするように作製され、インナーロータ42の支持体43の外周面上に配設された第1永久磁石44の軸方向他側の部位が固定子鉄心46に所定の隙間29を確保して囲繞されるようにしているので、第1永久磁石44の軸方向他側が固定子45と磁気的相互作用する第3永久磁石として機能する。したがって、支持体43および第1永久磁石44の軸方向長さを長くするだけで、第1永久磁石44と第3永久磁石とを共用化でき、部品点数を削減でき、構成の簡素化が図られる。
【0053】
実施の形態5.
図14はこの発明の実施の形態5に係る磁気ギヤの構成を説明する縦断面図、図15は図14のXV−XV矢視断面図である。
【0054】
図14および図15において、第2回転体としてのアウターロータ49は、円筒状の支持体12、支持体12の内周面上に周方向に極性を交互に逆向きにして等角ピッチで配列、固着された22極対の第2永久磁石13、および支持体12の外周面上に周方向に極性を交互に逆向きにして等角ピッチで配列、固着された6極対の第3永久磁石50を有し、支持体12が円盤状のディスク14を介して出力軸7の軸方向他端に同軸に接続され、第1永久磁石10と第2永久磁石13との間に所定の隙間15を有して、支持体12が支持体9を囲繞するように配設されている。
【0055】
固定子51は、磁性鋼板の積層体であり、環状のコアバック部52a、それぞれコアバック部52aの内周面から径方向内方に延出して周方向に等角ピッチで配列された18本のティース部52b、それぞれ周方向に隣り合うティース部42bにより形成される18個のスロット52cからなる固定子鉄心52と、各ティース部52bに集中巻きに巻回された18個のコイルを3相結線して構成された固定子コイル53と、を備えている。そして、固定子51は、固定子鉄心52のコアバック部52aを第1ハウジング2Aの円筒状のフランジ部2aに嵌着固定されて、第3永久磁石50と固定子鉄心52との間に所定の隙間29を有して、かつ支持体12を囲繞するように、第1軸受3と同軸に配設されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0056】
このように構成された磁気ギヤ1Dは、支持体12の内径側が磁気ギヤ部30Cを構成し、支持体12の外径側がモータ部31Cを構成しているモータ一体型磁気ギヤである。
そして、支持体12の内径側に構成される磁気ギヤ部30Cは、基本的に実施の形態1における磁気ギヤ1と同等に構成されており、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0057】
また、支持体12の外径側に構成されるモータ部31Cは、固定子コイル53に3相電流を通電することにより、第3永久磁石50との磁気的相互作用によりアウターロータ49に対してトルクを発生する2極3スロットのアウターロータ形モータとして動作する。これにより、入力軸6に入力されトルクは、磁気ギヤ部30Cで増幅され、さらにモータ部31Cのトルクが重畳されて、出力軸7から出力される。
【0058】
そこで、本磁気ギヤ1Dがエンジンとモータとの双方を有するいわゆるハイブリッドカーに適用された場合、上記実施の形態2と同様に、エンジントルクが磁気ギヤ部30Cで増幅されつつ、モータ部31Cによってアシストされ、エンジン単独の場合に比べて、高トルクを出力することができる。
したがって、この実施の形態5においても、上記実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0059】
この実施の形態5によれば、第2永久磁石13と第3永久磁石50とがアウターロータ49の円筒状の支持体12の内周面と外周面とに配設されているので、第2永久磁石13と第3永久磁石50との支持部材が共用化でき、部品点数を削減でき、構成の簡素化が図られる。
【0060】
実施の形態6.
図16はこの発明の実施の形態6に係る磁気ギヤの動作を説明する図であり、図16の(a)は磁気結合状態を示し、図16の(b)は磁気結合解除状態を示している。
【0061】
この実施の形態6による磁気ギヤ1Eは、上記実施の形態1による磁気ギヤ1の構成にクラッチ機構55を備えたものである。
図16において、クラッチ機構55は、支点56周りに回動可能に配設された作動レバー57と、作動レバー57を磁気結合位置に位置させるように作動レバー57の一端を付勢するばね58と、磁気結合位置に位置する作動レバー57の他端側に当接するように出力軸7に突設された出力軸リング59と、を備えている。
【0062】
つぎに、磁気ギヤ1Eにおけるクラッチ機構55の動作について説明する。
まず、ばね58の付勢力F1が、作動レバー57の一端に作用し、作動レバー57が支点56周りに図16の(a)中時計回りに回動し、ストッパ(図示せず)に当接して停止する。このとき、出力軸7が第2永久磁石13と鉄心層16の磁性体コア17との間の磁気吸引力F2によりアウターロータ11とともに図16の(a)中左方向(軸方向他側)に移動し、出力軸リング59が作動レバー57の他端側に当接して停止する。これにより、図16の(a)に示されるように、アウターロータ11の支持体12がインナーロータ8の支持体9を囲繞し、第1永久磁石10と第2永久磁石13とが鉄心層16を介して対向する磁気結合状態となる。そこで、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0063】
ついで、力F3が作動レバー57の一端に作用すると、作動レバー57がばね58の付勢力F1および磁気吸引力F2に抗して支点56周りに図16の(a)中反時計回りに回動する。そして、作動レバー57の回動力が出力軸リング59に作用し、出力軸7が図16の(a)中右方向(軸方向一側)に移動し、ストッパ(図示せず)に当接して停止する。これにより、図16の(b)に示されるように、アウターロータ11の支持体12がインナーロータ8の支持体9および鉄心層16に対して軸方向にオフセットされ、第1永久磁石10と第2永久磁石13との磁気結合状態が解除される。そこで、入力軸6に入力された動力が出力軸7に伝達されなくなる。
【0064】
このように、この実施の形態6によれば、簡易なクラッチ機構55を装備することで、動力の伝達/非伝達を簡易に行える磁気ギヤ1Eを得ることができる。そこで、ハイブリッドカーのエンジンの動力を本磁気ギヤ1Eの入力軸に入力するようにすれば、エンジンを停止状態でモータ単独走行を行ったり、車両停止時にアイドリング状態を維持したりする際に必要となるエンジンとギヤと間に配置されるクラッチを不要とすることができ、全体システムをコンパクトに構成できる。
【0065】
実施の形態7.
図17はこの発明の実施の形態7に係る磁気ギヤの動作を説明する図であり、図17の(a)は磁気結合状態を示し、図17の(b)は磁気結合解除状態を示している。
【0066】
この実施の形態7による磁気ギヤ1Fは、上記実施の形態4による磁気ギヤ1Cの構成にクラッチ機構55を備えたものである。
【0067】
つぎに、磁気ギヤ1Fにおけるクラッチ機構55の動作について説明する。
まず、ばね58の付勢力F1が、作動レバー57の一端に作用し、作動レバー57が支点56周りに図16の(a)中時計回りに回動し、ストッパ(図示せず)に当接して停止する。このとき、出力軸7が第2永久磁石13と鉄心層16の磁性体コア17との間の磁気吸引力F2によりアウターロータ11とともに図17の(a)中左方向(軸方向他側)に移動し、出力軸リング59が作動レバー57の他端側に当接して停止する。これにより、図17の(a)に示されるように、アウターロータ11の支持体12がインナーロータ42の支持体43の軸方向一側を囲繞し、第1永久磁石44と第2永久磁石13とが鉄心層16を介して対向する磁気結合状態となる。そこで、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0068】
ついで、力F3が作動レバー57の一端に作用すると、作動レバー57がばね58の付勢力F1および磁気吸引力F2に抗して支点56周りに図17の(a)中反時計回りに回動する。そして、作動レバー57の回動力が出力軸リング59に作用し、出力軸7が図17の(a)中右方向(軸方向一側)に移動し、ストッパ(図示せず)に当接して停止する。これにより、図17の(b)に示されるように、アウターロータ11の支持体12がインナーロータ42の支持体43および鉄心層16に対して軸方向にオフセットされ、第1永久磁石10と第2永久磁石44との磁気結合状態が解除される。そこで、入力軸6に入力された動力が出力軸7に伝達されなくなる。
【0069】
このように、この実施の形態7においても、簡易なクラッチ機構55を装備することで、動力の伝達/非伝達を簡易に行える磁気ギヤ1Fを得ることができる。そこで、ハイブリッドカーのエンジンの動力を本磁気ギヤ1Fの入力軸に入力するようにすれば、エンジンを停止状態でモータ単独走行を行ったり、車両停止時にアイドリング状態を維持したりする際に必要となるエンジンとギヤと間に配置されるクラッチを不要とすることができ、全体システムをコンパクトに構成できる。
【0070】
なお、上記実施の形態6,7では、実施の形態1,4による磁気ギヤにクラッチ機構を装備するものとしているが、実施の形態3,5による磁気ギヤにクラッチ機構を装備してもよい。
【0071】
実施の形態8.
図18はこの発明の実施の形態8に係る磁気ギヤの構成を説明する斜視図である。
【0072】
図18において、鉄心層16は、26個の磁性体コア17を周方向に等角ピッチで配列して環状に構成されている。そして、環状に配列された磁性体コア17の他端がFRPなどの連結体61により連結、一体化されている。第1ハウジング2には、26個の挿入穴62が軸受3と同心状に等角ピッチで穿設されている。そして、鉄心層16は、各磁性体コア17の一端側を挿入穴62に挿通させて、軸方向に移動可能に装着されている。
クラッチ機構55Aは、支点56周りに回動可能に配設された作動レバー57と、作動レバー57を磁気結合位置に位置させるように作動レバー57の一端を付勢するばね58と、磁気結合位置に位置する作動レバー57の他端側に当接するように鉄心層16の他端から径方向外方に延設されたフランジ60と、を備えている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0073】
つぎに、このように構成された磁気ギヤ1Gにおけるクラッチ機構55Aの動作について説明する。
まず、ばね58の付勢力が、作動レバー57の一端に作用し、作動レバー57が支点56周りに図18中反時計回りに回動し、ストッパ(図示せず)に当接して停止する。このとき、鉄心層16が第1永久磁石10および第2永久磁石13と磁性体コア17との間の磁気吸引力により軸方向一端側に移動し、フランジ60が作動レバー57の他端側に当接して停止する。これにより、磁性体コア17が第1永久磁石10と第2永久磁石13との間の隙間15に挿入され、第1永久磁石10と第2永久磁石13とが鉄心層16を介して対向する磁気結合状態となる。そこで、エンジンなどの外部動力源の動力が入力軸6に入力され、速度が1/5.5倍に減速され、トルクが5.5倍に増大されて、出力軸7から出力される。
【0074】
ついで、磁気結合解除力が作動レバー57の一端に作用すると、作動レバー57がばね58の付勢力および第1永久磁石10および第2永久磁石13の磁気吸引力に抗して支点56周りに図18中時計回りに回動する。そして、作動レバー57の回動力がフランジ60に作用し、鉄心層16が軸方向他側に移動し、ストッパ(図示せず)に当接して停止する。これにより、鉄心層16が第1永久磁石10および第2永久磁石13に対して軸方向にオフセットされる。そこで、第1永久磁石10と第2永久磁石44との各基本波成分同士が鉄心層16によって変調されて成立していた磁気結合状態が失われ、かつ、第1永久磁石10と第2永久磁石44との間の磁気ギャップも大幅に拡大し、入力軸6に入力された動力が出力軸7に伝達されなくなる。
【0075】
このように、この実施の形態8においても、簡易なクラッチ機構55Aを装備することで、動力の伝達/非伝達を簡易に行える磁気ギヤ1Gを得ることができる。そこで、ハイブリッドカーのエンジンの動力を本磁気ギヤ1Gの入力軸に入力するようにすれば、エンジンを停止状態でモータ単独走行を行ったり、車両停止時にアイドリング状態を維持したりする際に必要となるエンジンとギヤと間に配置されるクラッチを不要とすることができ、全体システムをコンパクトに構成できる。
【0076】
なお、上記実施の形態8では、実施の形態1による磁気ギヤにクラッチ機構を装備するものとしているが、実施の形態2,5による磁気ギヤにクラッチ機構を装備してもよい。
また、上記各実施の形態では、高速側の第1軸を入力軸とし、低速側の第2軸を出力軸として、磁気ギヤを第1軸から第2軸に動力を伝達する減速機として動作させるものとしているが、高速側の第1軸を出力軸とし、低速側の第2軸を入力軸として、磁気ギヤを第2軸から第1軸に動力を伝達する増速機として動作させても、同様の効果を奏することはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 磁気ギヤ、2,2A 第1ハウジング、3 第1軸受、4 第2ハウジング、5 第2軸受、6 入力軸(第1軸)、7 出力軸(第2軸)、8 インナーロータ(第1回転体)、9 支持体、10 第1永久磁石、11 アウターロータ(第2回転体)、12 円筒部、13 第2永久磁石、14 ディスク(連結部)、17 磁性体コア、20 アウターロータ(第2回転体)、21 円筒部、22 ディスク(連結部)、23 第3永久磁石、26 固定子鉄心、27 固定子コイル(トルク発生トルク)、32 エンジン、35 アウターロータ(第2回転体)、36 円筒部、37 ディスク(連結部)、39 固定子鉄心、40 固定子コイル(トルク発生トルク)、42 インナーロータ(第1回転体)、43 支持体、44 第1永久磁石、46 固定子鉄心、47 固定子コイル(トルク発生トルク)、49 インナーロータ(第1回転体)、50 第3永久磁石、52 固定子鉄心、53 固定子コイル(トルク発生トルク)、55 クラッチ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸受を保持する第1ハウジングと、
上記第1軸受と軸方向一側に離間して、かつ同軸に配置された第2軸受を保持する第2ハウジングと、
上記第1軸受に片持ち支持された第1軸に同軸に連結されて上記第1ハウジンに回転自在に支持され、N極対(N:正の整数)の第1永久磁石が外周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配列された第1回転体と、
円筒部を有し、上記第2軸受に片持ち支持された第2軸に該円筒部が連結部を介して同軸に連結されて上記第2ハウジングに回転自在に支持され、該円筒部が上記第1回転体を囲繞するように配設され、M極対(M:正の整数)の第2永久磁石が該円筒部の内周面に周方向に極性を交互に逆向きにして配列された第2回転体と、
それぞれ柱状に作製され、長手方向を上記第1軸の軸方向と平行として周方向に互いに所定の隙間を持って環状に配列され、上記第1ハウジングに該第1軸と同軸に支持されて上記第1回転体と上記第2回転体との間に挿入されるL個(L:正の整数)の磁性体コアと、を備え、
上記第1永久磁石の極対数N、上記第2永久磁石の極対数M、および上記磁性体コアの個数Lが、|M±L|=Nを満足していることを特徴とする磁気ギヤ。
【請求項2】
上記連結部が上記円筒部の内周面の軸方向中央部に接続され、
上記第2回転体は、上記円筒部の内周面の軸方向他側の領域が上記第1回転体を囲繞するように配設され、
上記第2永久磁石が上記第1回転体を囲繞する上記円筒部の内周面の軸方向他側の領域に周方向に配列され、
第3永久磁石が上記円筒部の内周面の軸方向一側の領域に周方向に極性を交互に逆向きにして複数極対配列され、
固定子鉄心が上記第3永久磁石を介して上記円筒部の内周面の軸方向一側の領域に対向するように上記第2ハウジングに固着され、
上記第2回転体にトルクを発生させるトルク発生コイルが上記固定子鉄心に巻装されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ギヤ。
【請求項3】
上記連結部が上記円筒部の軸方向一端部に接続され、
上記第2回転体は、上記円筒部の内周面の軸方向他側の領域が上記第1回転体を囲繞するように配設され、
上記第2永久磁石が上記第1回転体を囲繞する上記円筒部の内周面の軸方向他側の領域に周方向に配列され、
第3永久磁石が上記円筒部の内周面の軸方向一側の領域に周方向に極性を交互に逆向きにして複数極対配列され、
固定子鉄心が上記第3永久磁石を介して上記円筒部の内周面の軸方向一側の領域に対向するように上記磁性体コアに磁気的に絶縁されて固着され、
上記第2回転体にトルクを発生させるトルク発生コイルが上記固定子鉄心に巻装されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ギヤ。
【請求項4】
上記連結部が上記円筒部の軸方向一端部に接続され、
上記第2回転体は、上記円筒部の内周面が上記第1回転体の軸方向一端側の領域を囲繞するように配設され、
上記第2永久磁石が上記第1回転体を囲繞する上記円筒部の内周面に周方向に配列され、
上記第1永久磁石が上記第1回転体の外周面に軸方向の全域に延在して周方向に配列され、
固定子鉄心が上記第1永久磁石を介して上記第1回転体の外周面の軸方向他側の領域に対向するように上記第1ハウジングに固着され、
上記第1回転体にトルクを発生させるトルク発生コイルが上記固定子鉄心に巻装されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ギヤ。
【請求項5】
上記連結部が上記円筒部の軸方向一端部に接続され、
上記第2回転体は、上記円筒部の内周面が上記第1回転体を囲繞するように配設され、
上記第2永久磁石が上記第1回転体を囲繞する上記円筒部の内周面に周方向に配列され、
第3永久磁石が上記円筒部の外周面に周方向に極性を交互に逆向きにして複数極対配列され、
固定子鉄心が上記第3永久磁石を介して上記円筒部の外周面に対向するように上記第1ハウジングに固着され、
上記第2回転体にトルクを発生させるトルク発生コイルが上記固定子鉄心に巻装されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ギヤ。
【請求項6】
上記第2回転体が、上記第2永久磁石が上記磁性体コアを介して上記第1永久磁石と対向する磁気結合位置と、上記第2永久磁石が上記磁性体コアを介して上記第1永久磁石と対向する領域から外れた磁気結合解除位置との間を軸方向に往復移動可能に構成され、
作動時、上記第2回転体を磁気結合解除位置に移動させるクラッチ機構を備えていることを特徴とする請求項1、請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の磁気ギヤ。
【請求項7】
上記磁性体コアが、上記第1永久磁石と上記第2永久磁石との間に挿入された磁気結合位置と、上記第1永久磁石と上記第2永久磁石との間から引き出された磁気結合解除位置との間を軸方向に往復移動可能に構成され、
作動時、上記磁性体コアを磁気結合解除位置に移動させるクラッチ機構を備えていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4、および請求項5のいずれか1項に記載の磁気ギヤ。
【請求項8】
上記請求項6又は請求項7に記載の磁気ギヤを搭載し、
エンジンの出力軸が上記第1軸を兼用し、上記磁気ギヤの上記第2軸からの出力トルクが車輪軸に伝達されるように構成されている車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−33166(P2011−33166A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182301(P2009−182301)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)