説明

磁気テープ装置

【課題】高湿環境下で使用したとしても、磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くことを防止し、エラーレートの上昇を抑制できる磁気テープ装置を提供する。
【解決手段】磁気ヘッドを収容した湿度制御部1と、湿度制御部1内に配され湿度制御部1内の温度及び湿度を検出する温度湿度センサー4と、湿度制御部1内の温度を上昇させることが可能なペルチェ素子11と、温度湿度センサー4で検出された湿度に基づいてペルチェ素子11を制御する制御部とを備え、制御部は、温度湿度センサー4が検出する湿度制御部1内の湿度が所定値よりも高くなった時に、湿度制御部1内の温度を上昇させるようペルチェ素子11を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種情報を記録または再生可能な磁気テープ装置に関する。特に、磁気抵抗効果型(MR)ヘッドを用いた磁気テープ装置に関する、また、コンピューターテープなどの高容量磁気テープに各種情報を記録または再生可能な磁気テープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューターに搭載されたハードディスクに記録されているデータをバックアップするものとして、磁気テープが多く用いられている。データバックアップ用の磁気テープの分野では、ハードディスクの大容量化に伴い、1巻あたり数百GB〜数TBの記憶容量を有する磁気テープが商品化されている。今後、さらなるハードディスクの大容量化に対応するため、データバックアップ用の磁気テープの高容量化は不可欠である。
【0003】
この高容量化を果たしていくためには、磁気テープの線記録密度を上げることが必須であり、そのために、磁気テープの磁性層表面は極めて平滑に仕上げられている。よって、磁性層の研磨性は低下する傾向にある。
【0004】
このような磁気テープを用いて記録再生を行う磁気テープ装置は、様々な使用環境で使用されるが、特に高湿環境下においては、磁気ヘッドのテープ摺動面の摩擦係数が高くなることで、磁気テープの摺動スピードを一定に保つことが困難になる。よって、磁気ヘッドは、磁気テープから正常に情報を読み出すことができず、エラーレートが上昇するなどの問題が発生する。
【0005】
このような問題を解決する構成が例えば特許文献1に開示されているが、同文献に開示された構成は磁気ヘッドにおけるテープ摺動面に濡れ性が良い材料をコーティングする構成であり、温度及び湿度のモニタを行っていないため、磁気ヘッドにおける湿度を一定に保つことが困難である。磁気ヘッドにおける温度及び湿度をモニタする構成が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平6−44515号公報
【特許文献2】特開昭62−146447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されているような、磁気ヘッドを備えたシリンダと湿度センサーとが配されたビデオテープレコーダーの筐体は、比較的大型であるため、筐体内の温度及び湿度にムラが生じ、湿度の制御が困難である。したがって、高湿環境下で使用した場合、磁気テープが磁気ヘッドに貼り付く現象が発生する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、高湿環境下で使用したとしても、磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くことを防止し、エラーレートの上昇を抑制できる磁気テープ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気テープ装置は、磁気テープを移送させる移送手段と、前記移送手段によって移送されている前記磁気テープに情報を書き込み、または前記磁気テープに記録されている情報を読み出すことができる磁気ヘッドとを備えた磁気テープ装置であって、前記磁気ヘッドを収容した筐体と、前記筐体内に配され、前記筐体内の温度及び湿度を検出する検出手段と、前記筐体内の温度を上昇させることが可能な加熱手段と、前記検出手段で検出された湿度に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記検出手段が検出する前記筐体内の湿度が所定値よりも高くなった時に、前記筐体内の温度を上昇させるよう前記加熱手段を制御するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁気ヘッドを収容した筐体内の相対湿度を、磁気テープ装置の設置環境における相対湿度よりも低くすることができ、高湿環境下でも磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くことを防止し、エラーレートの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の磁気テープ装置は、磁気テープを移送させる移送手段と、前記移送手段によって移送されている前記磁気テープに情報を書き込み、または前記磁気テープに記録されている情報を読み出すことができる磁気ヘッドとを備えた磁気テープ装置であって、前記磁気ヘッドを収容した筐体と、前記筐体内に配され、前記筐体内の温度及び湿度を検出する検出手段と、前記筐体内の温度を上昇させることが可能な加熱手段と、前記検出手段で検出された湿度に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記検出手段が検出する前記筐体内の湿度が所定値よりも高くなった時に、前記筐体内の温度を上昇させるよう前記加熱手段を制御するものである。このような構成とすることにより、磁気ヘッドを収容した筐体内の相対湿度を、磁気テープ装置の設置環境における相対湿度よりも低くすることができ、高湿環境下でも磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くことを防止し、エラーレートの上昇を抑えることができる。また、筐体は、磁気ヘッドを蔽う狭小な空間で構成されているので、小型の加熱手段を空間内の一部に配設するだけで空間内の温度をほぼ均一に所定の温度範囲に制御することができ、したがって、湿度も容易に制御が可能である。
【0011】
本発明の磁気テープ装置において、前記加熱手段は、ペルチェ素子で構成することができる。このような構成とすることで、ペルチェ素子に流す電流量を制御することで発熱量を制御することでき、筐体内の温度を調整することができる、また、ペルチェ素子に流す電流の向きを変えることでペルチェ素子において発熱位置と冷却位置とを簡単に入れ替えることができる。よって、磁気ヘッドを必要に応じて加熱したり冷却したりすることができる。
【0012】
本発明の磁気テープ装置において、前記加熱手段は、前記磁気ヘッドにおける磁気テープ摺動面の裏面に接合されている構成とすることができる。このような構成とすることで、磁気ヘッドの温度変化を早期に検出することができる。
【0013】
本発明の磁気テープ装置において、前記筐体の表面に形成され、当該筐体の内部と外部とを連通する空間を備えた外気導入部と、前記外気導入部の内部空間に配されたファンとを、さらに備え、前記加熱手段は、前記外気導入部の内側に配され、前記ファンは、前記加熱手段によって加熱された空気を前記筐体内に導入させる構成とすることができる。このような構成とすることにより、磁気ヘッドを収容した筐体内の相対湿度を、磁気テープ装置の設置環境における相対湿度よりも低くすることができ、高湿環境下でも磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くことを防止し、エラーレートの上昇を抑えることができる。
【0014】
(実施の形態)
〔1.第1の磁気テープ装置の構成〕
図1は、本発明の一例の磁気テープ装置の内部構成を示す概略平面図である。図2は、湿度制御部1の外観を示す斜視図であり、内部構造をわかりやすくするために湿度制御部1は破線で描画し、内部構造は実線で描画した。図3は、図2に示す湿度制御部1を磁気ヘッド2、孔部12a及び12bを通る水平面で破断した断面図である。また、図1において、便宜上、ペルチェ素子11の描画は省略し、図2及び図3に明瞭に描画した。
【0015】
本実施の形態の磁気テープ装置10は、湿度制御部1、磁気ヘッド2、アクチュエータ3、温度湿度センサー4、テープガイド6、巻き取りリール8、カートリッジ収納部9、およびペルチェ素子11を備えている。本実施の形態の磁気テープ装置は、LTO規格に準拠した磁気テープを用いることができるドライブを一例として挙げている。このようなドライブで情報を書き込む際は、磁気テープを始端から終端まで走行させながら磁気ヘッドでデータトラックを形成して情報を書き込む。次に、磁気ヘッドを磁気テープの幅方向に所定量移動させて、磁気テープを終端から始端まで走行させながら磁気ヘッドでデータトラックを形成して情報を書き込む。以降、上記動作を繰り返して、磁気テープの長手方向に平行な複数のデータトラックを形成する。
【0016】
湿度制御部1は、箱状の筐体で構成され、磁気ヘッド2やアクチュエータ3などを覆うように配されている。湿度制御部1の対向する一対の側面には、孔部12a及び12bが形成されている。孔部12a及び12bは、少なくとも磁気テープ5(磁気テープ5の端部に配されているガイドピンを含む)を挿通可能な大きさを有する。また、湿度制御部1は、磁気ヘッド2と磁気ヘッドアクチュエータ3とを蔽う狭小な空間で構成されているので、小型のペルチェ素子11を空間内の一部に配設するだけで空間内の温度をほぼ均一に所定の温度範囲に制御することができ、したがって、湿度も容易に制御が可能である。
【0017】
磁気ヘッド2は、磁気テープ5に各種情報を書き込んだり、磁気テープ5に記録されている各種情報を読み出したりすることができる。また、磁気ヘッド2には、本実施の形態では磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いたMRヘッドで構成した。
【0018】
アクチュエータ3は、磁気テープ5に各種情報を記録する際、または磁気テープ5に記録された各種情報を読み出す際に、磁気ヘッド2を磁気テープ5の幅方向に移動させることができる。
【0019】
温度湿度センサー4は、湿度制御部1の内部に配され、湿度制御部1の内部空間における温度及び湿度を検出することができる。本実施の形態では、温度湿度センサー4は、湿度制御部1の内面底部に配置したが、この位置は一例である。
【0020】
テープガイド6は、磁気テープ5が磁気テープ装置10内の所定の位置を走行可能なように、磁気テープ5を案内するものである。テープガイド6は、略円筒形状のローラを備え、ローラの円筒面に磁気テープ5が巻き回される。テープガイド6は、磁気ヘッド2の入側及び出側にそれぞれ配され、磁気ヘッド2に対する磁気テープ5の相対位置を規制している。
【0021】
巻き取りリール8は、磁気テープカートリッジ7から引き出された磁気テープ5が巻き回されるリールである。巻き取りリール8は、別途設けられたモータにより回転駆動される。巻き取りリール8を矢印Bに示す方向へ回転させることで、磁気テープ5を矢印Aに示す方向へ走行させることができ、巻き取りリール8を矢印Cに示す方向へ回転させることにより、磁気テープ5を矢印Aの反対方向へ走行させることができる。
【0022】
カートリッジ収納部9は、磁気テープカートリッジ7を収納可能な部位である。また、カートリッジ収納部9は、磁気テープカートリッジ7内に収納されているリール7aを回転駆動することができる駆動手段を備えている。
【0023】
ペルチェ素子11(加熱手段)は、湿度制御部1内に配され、複数の金属導体が接続されて構成されている。この金属導体に所定の向きの電流を流すことによって、金属導体の一方の接続部分における温度が上昇して、他方の接続部分における温度が低下する働きがある。また、電流を流す向きを反対にすることによって、一方の接続部分における温度が低下して、他方の接続部分における温度が上昇する働きがある。また、金属導体に流す電流の大きさを変えることによって、接続部分における温度を変化させることができる。本実施の形態では、ペルチェ素子11は、磁気ヘッド2における磁気テープ摺動面(ヘッドチップが配された面)に対して背面に配されている。この構成において、ペルチェ素子11に所定の向きの電流を流すことにより、磁気ヘッド2及びその周辺の温度を上昇させることができる。
【0024】
図4は、ペルチェ素子11の動作制御を行う構成のブロック図を示す。図4に示すように、制御部15は、温度湿度センサー4において検出された温度及び湿度に基づいて、ペルチェ素子11に流す電流量を制御し、磁気ヘッド2及びその周辺の温度を制御し、湿度制御部1の内部空間の湿度を制御することができるものである。本実施の形態では、制御部15は、温度湿度センサー4が湿度制御部1の内部空間の湿度が所定値よりも高くなったことを検出すれば、ペルチェ素子11に流す電流量を多くして、磁気ヘッド2及びその周辺の温度を上昇させて、湿度制御部1の内部空間の相対湿度を低下させるように制御している。
【0025】
上記構成において、磁気テープ5に各種情報を記録する際は、磁気テープカートリッジ7をカートリッジ収納部9に収納し、ローディング動作を行う。ローディング動作が完了すると、図1に示すように磁気テープ5が磁気ヘッド2及びテープガイド6に当接するテープパスが形成される。この状態で、モータなどの駆動手段により巻き取りリール8を矢印Bに示す方向へ回転させることで、磁気テープ5を矢印Aに示す方向へ走行させることができる。次に、磁気ヘッド2を通電することで、磁気テープ5における所定のデータバンドにデータトラックを形成し、情報を記録することができる。なお、磁気テープ5に書き込まれた情報を再生する動作については説明を省略する。
【0026】
このような磁気テープ装置10を高湿環境下(例えば相対湿度80%RH以上)に配置すると、磁気テープ5と磁気ヘッド2との摩擦係数が増大し、磁気テープ5が磁気ヘッド2に貼り付いてしまう可能性がある。この状態で磁気テープ5を移送させて磁気テープに記録されている情報を読み出そうとしても、磁気テープの摺動スピードが不安定になるため、正常に情報を読み出すことができず、エラーレートを上昇させてしまう。本実施の形態では、温度湿度センサー4で湿度制御部1内の温度及び湿度を監視し、制御部15(図4参照)にその情報を送っている。制御部15は、温度湿度センサー4で検出している湿度が所定値よりも高くなれば、ペルチェ素子11に対して電流を流すように制御またはペルチェ素子11に流れている電流量を多くするよう制御する。加熱手段であるペルチェ素子11は、制御部15からの制御により磁気ヘッド2全体を加熱することで、湿度制御部1の内部空間の相対湿度を下げるように構成されている。
【0027】
すなわち、ペルチェ素子11に所定の向きの電流を流すと、ペルチェ素子11のペルチェ効果により磁気ヘッド2に接する側は加熱され、その裏側(アクチュエータ3側)は冷却する。これにより、湿度制御部1は、その内部温度が外部温度よりも高くなるために、内部の相対湿度が低下する。例えば、磁気テープ装置10の設置環境の温度が25℃、湿度が80%RHにおける水蒸気量w1は、図7に示すように飽和水蒸気量が23.1(g/m3)なので、
w1=23.1×0.8
=18.48(g/m3
となる。この状態で雰囲気を25℃から35℃に上げると、35℃の飽和水蒸気量は39.6(g/m3)なので、このときの相対湿度h1は、
h1=18.48/39.6×100
=46.7(%RH)
となって、相対湿度h1を低下させることができる。
【0028】
以上のように本構成によれば、湿度制御部1内には、温度湿度センサー4が配設されており、この温度湿度センサー4において検出された温度及び湿度の情報に基づいて、ペルチェ素子11に流す電流量を制御する制御部15を設けることにより、湿度制御部1内を所望の相対湿度になるように制御することができる。
【0029】
また、湿度制御部1は、磁気ヘッド2とアクチュエータ3とを蔽う狭小な空間で構成されているので、小型のペルチェ素子11を空間内の一部に配設するだけで空間内の温度をほぼ均一に所定の温度範囲に制御することができ、したがって、湿度も容易に制御が可能である。
【0030】
〔2.第2の磁気テープ装置の構成〕
図5は、本実施の形態の磁気テープ装置における湿度制御部の構成を示す。本実施の形態では、加熱手段であるペルチェ素子21が、湿度制御部1の内側における底面1aに配設されている。ペルチェ素子21の底面は底面1aに接し、上面には磁気ヘッド2を備えたアクチュエータ3が配されている。図5において、ペルチェ素子21以外の構成は、前述の第1の磁気テープ装置の構成と同様の構成となっているため、説明は省略する。
【0031】
図5において、ペルチェ素子21に電流を流すと、ペルチェ素子21の湿度制御部1の内面側(磁気ヘッド2側)は加熱され、その裏側(底面1a側)は冷却する。これにより、湿度制御部1の内部温度は外部温度よりも高くなるために、湿度制御部1の内部の相対湿度は低下する。
【0032】
〔3.第3の磁気テープ装置の構成〕
図6は、本実施の形態の磁気テープ装置における湿度制御部の構成を示す。本実施の形態では、加熱手段であるペルチェ素子31が湿度制御部1への外気導入部13の内面に配設されている。
【0033】
外気導入部13は、湿度制御部1の外面に配され、外部と湿度制御部1内とを連通する孔部13aを有する。孔部13aの内面には、ペルチェ素子31が配されている。孔部13a内にはファン14が配されている。
【0034】
ファン14は、別途設けられたモータなどの駆動手段により回転駆動される。ファン14は、回転されることにより、湿度制御部1内の空気を孔部13aを介して外部に排出したり、外気を孔部13aを介して湿度制御部1内に導入することができる。また、ファン14は、制御部15(図4参照)により回転駆動制御される構成とすることができる。
【0035】
上記以外の構成は、前述の第1の磁気テープ装置の構成と同様の構成となっているため、説明は省略する。
【0036】
図6において、ペルチェ素子31に所定の向きの電流を流すと、ペルチェ素子31の外気導入部13の内面側は加熱され、その裏側(外気導入部13の外面)は冷却する。これにより、外気導入部13の内部の温度は、外部の温度よりも高くなる。さらに、ファン14を回転駆動して外気導入を行うことにより、外気導入部13内で加熱された空気が湿度制御部1の内部に送り込まれ、湿度制御部1内の温度は上昇する。これにより、湿度制御部1内の相対湿度は低下する。
【0037】
以上のように本実施の形態によれば、磁気ヘッド2の背面にペルチェ素子11を配し、温度湿度センサー4で検出された湿度に基づきペルチェ素子11に流す電流量を制御することで、磁気ヘッド2及びその周辺の温度を上昇させることができる。これにより、湿度制御部1の内部空間の相対湿度を低下させることができる。湿度制御部1の内部空間の相対湿度を低下させることにより、磁気ヘッド2と磁気テープ5との摩擦係数を低下させることができ、磁気ヘッド2と磁気テープ5との貼り付きを抑えることができる。よって、磁気テープ5の移送時、磁気ヘッド2に対する磁気テープ5の摺動スピードの低下を抑え、磁気テープ5のエラーレートの上昇を抑えることができる。
【0038】
また、磁気ヘッド2と温度湿度センサー4とペルチェ素子11とを湿度制御部1(筐体)に収容する構成とすることにより、温度湿度センサー4において温度及び湿度を検出する空間は、湿度制御部1内の空間のみとなるため、磁気ヘッド2及びその近傍の湿度及び温度変化を早期に検出することができる。また、湿度制御部1は比較的狭い空間であり、ペルチェ素子11への電流制御に応じて湿度が変化しやすいため、湿度の制御を容易に行うことができる。
【0039】
また、加熱手段をペルチェ素子11で構成したことにより、電流の大きさに応じて磁気ヘッド2及びその周辺の湿度及び温度を調節することができるので、簡単な構成で磁気ヘッド2及びその周辺の相対湿度を変化させることができる。
【0040】
また、ペルチェ素子11は、磁気ヘッド2における磁気テープ摺動面の裏面に接合されている構成とすることで、磁気ヘッド2及びその周辺の温度及び湿度を早期に変化させることができる。よって、高湿環境下において磁気テープ5が磁気ヘッド2に貼り付く現象を抑え、エラーレートの上昇を抑えることができる。
【0041】
また、湿度制御部1の外面に配された外気導入部13にペルチェ素子31を配し、ペルチェ素子31で加熱された空気を湿度制御部1内に導入するためのファン14を備えた。温度湿度センサー4で検出された湿度に基づきペルチェ素子31に流す電流量を制御して空気を加熱し、加熱した空気をファン14によって湿度制御部1内に導入することで、湿度制御部1の内部空間の温度を上昇させることができる。これにより、湿度制御部1の内部空間の相対湿度を低下させることができ、高湿環境下において磁気テープ5が磁気ヘッド2に貼り付く現象を抑えることができる。よって、磁気テープ5のエラーレートの上昇を抑えることができる。
【0042】
なお、本実施の形態における第3の磁気テープ装置においては、外気導入部13の内面にペルチェ素子31を配する構成としたが、略板状のペルチェ素子を4枚貼り合わせて、孔部を備えた外気導入部を形成する構成としても、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0043】
また、本実施の形態において、温度湿度センサー4は1ユニット化されているが、温度センサーと湿度センサーとを別々のユニットとしてもよい。
【0044】
また、本実施の形態において、ペルチェ素子11,21,31の配置位置は一例であり、磁気ヘッド2、磁気ヘッド2の周辺、または湿度制御部1内の温度を上昇させて湿度を低下させることができれば、本実施の形態に示す位置に限らない。
【0045】
また、本実施の形態におけるペルチェ素子11,21,31は、本発明の加熱手段の一例である。また、本実施の形態における温度湿度センサー4は、本発明の検出手段の一例である。また、本実施の形態におけるテープガイド6、巻き取りリール8などの磁気テープ5を移送させる構成は、本発明の移送手段の一例である。また、本実施の形態における湿度制御部1は、本発明の筐体の一例である。また、本実施の形態における制御部15は、本発明の制御手段の一例である。
【0046】
〔4.磁気テープ装置の実施例〕
高湿環境下におけるエラーレートの上昇の問題は、使用する磁気テープと磁気テープ装置との組み合わせにより、発生の状況は様々である。通常、湿度が20%RH未満になるとステインが発生し易くなり、湿度が80%RHを超えると磁気テープが磁気ヘッドに貼り付き易くなる。したがって、湿度制御部内の湿度は、20〜80%RHの範囲に制御することが好ましく、30〜70%RHの範囲に制御することがより好ましい。
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔4−1.実施例1〕
厚さ6μmのポリエステルフイルムの一方の主面上に、まず、カーボンブラックと針状酸化鉄粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性塗料、磁性粉末(平均粒子径60nm、保持力Hc=149.6kA/m(1880Oe))とアルミナ粉末(平均粒子径0.2μm)と結合剤樹脂とを含む磁性塗料をこの順に塗布し、乾燥処理及びカレンダ処理を行って、厚さ1.4μmの非磁性層と厚さ0.15μmの磁性層を形成した。次に、ポリエステルフイルムの他方の主面に、カーボンブラックと粒状酸化鉄粉末と結合剤樹脂とを含むカーボン塗料を塗布し、乾燥処理及びカレンダ処理を行って、厚さ0.6μmのバックコート層を形成した(ジャンボロール)。その後、ジャンボロールを1/2インチ幅に裁断してパンケーキを形成し、磁性層にサーボライターを用いてサーボ信号を記録して、LTOカートリッジ用の磁気テープを作製した。この磁気テープをLTOカートリッジに組み込み、評価用磁気テープとした。
【0049】
LTOドライブ(日本ヒューレットパッカード社製Ultrium960ドライブ)に、図5に示した湿度制御部1を組み込み、本発明の磁気テープ装置を作製した。この磁気テープ装置を、相対湿度80%RH、温度30℃の環境下で、評価用磁気テープの耐久走行試験を行った。カードリッジに組み込まれた磁気テープにおいて、約250MBの容量分の領域(約20m)にデータを書き込み、その後、書き込まれたデータ(同容量)を読み出した。このように、磁気テープに書き込まれたデータを読み出す一連の処理を1パスとし、25000パスの耐久走行試験を行った。その際、湿度制御部内の湿度が50%RH前後となるように、ペルチェ素子に流す電流量を制御しながら、耐久走行試験を行った。
【0050】
〔4−2.実施例2〕
実施例2は、耐久走行試験の開始時にはペルチェ素子に電流を流さず、磁気テープの記録容量(磁気テープに書き込み可能なデータの容量)が耐久走行試験開始時における磁気テープの記録容量の75%に低下した時点でペルチェ素子に電流を流し、その後、湿度制御部内の湿度が50%RH前後となるように電流量を制御しながら、25000パスの走行を行った。上記以外の耐久走行試験の内容は、実施例1と同様に行った。
【0051】
〔4−3.実施例3〕
実施例3は、ペルチェ素子によって湿度制御部内を冷却することによる湿度制御効果を確認するため、ペルチェ素子に電流を流さずに耐久走行試験を開始し、磁気テープの記録容量が耐久走行試験開始時の記録容量から10%以上の低下(劣化)が見られるまで待った。磁気テープの記録容量が劣化した後に、1000パス毎に、記録容量が回復するまで、ペルチェ素子に流す電流量を制御して湿度制御部内の温度を5℃づつ上げた。この耐久走行試験は、磁気テープを25000パス走行させるまで実施した。上記以外の耐久走行試験の内容は、実施例1と同様に行った。
【0052】
〔4−4.比較例1〕
耐久走行試験の開始から終了までペルチェ素子に電流を流さず、磁気テープを25000パス走行させて耐久走行試験を実施した。上記以外は、実施例1と同様に耐久走行試験を行った。
【0053】
〔4−5.走行耐久性の評価〕
磁気テープにおけるデータ記録可能領域に約250MBの容量(約20m)のデータを書き込み、その後、磁気テープに書き込んだデータを読み出す処理を1パスとして、磁気テープを25000パス走行させて耐久走行試験を行った。各パスごとに、エラーレート上昇に伴う記録容量の推移を求めた。エラーレートが上昇し、使用できる領域の容量(記録容量)の低下量で耐久性を評価した。その評価結果を(表1)および(表2)に示す。(表1)および(表2)における「容量」の欄において、記録容量の低下量が0の場合を「○」、記録容量の低下量が10%未満の場合を「△」、記録容量の低下量が10%以上の場合を「×」とした。また、(表1)および(表2)における「貼り付き異音」の欄において、磁気テープと磁気ヘッドとの貼り付きに伴う異音発生がない場合を「○」、異音発生した場合を「×」とした。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
また、記録容量の低下の様子を図8および図9に示す。図8及び(表1)に示すように、実施例1においては、25000パス全てにおいて記録容量の低下は見られなかったが、比較例1においては約15000パス以降において記録容量の低下が見られた。なお、実施例2は、記録容量が低下してからペルチェ素子に電流を流し始めているので、約15000〜16000パスにおいて記録容量の低下及び異音の発生が見られるが、ペルチェ素子によって湿度制御部内の温度が上昇した約17000パス以降は、記録容量は正常値に回復し、異音の発生も抑えられた。このように、実施例1及び2における磁気テープ装置によれば、外部の温度や湿度に関わらず、磁気ヘッド2及びその周辺すなわち湿度制御部1内の湿度を適正に保つことで、磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くのを抑えてエラーレートを向上できるとともに、磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くことによる異音の発生も抑えることができた。
【0057】
また、図9及び(表2)に示すように、湿度制御部内の湿度が高い状態(81%RH)が続くと、約14000〜15000パスあたりで磁気テープが磁気ヘッドに貼り付き、エラーレートが上昇してしまう。しかし、湿度制御部内の温度を5℃づつ上げて相対湿度を低下(約16000パス以降)させることにより、磁気テープが磁気ヘッドへ貼り付くのを抑えてエラーレートを低下させることができるとともに、磁気テープが磁気ヘッドに貼り付くことによる異音の発生も抑えることができることができた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の磁気テープ装置は、磁気テープを走行させることができるテープドライブに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態における第1の磁気テープ装置の概略構成を示す平面図
【図2】第1の磁気テープ装置における湿度制御部の構成を示す斜視図
【図3】第1の磁気テープ装置における湿度制御部の構成を示す断面図
【図4】実施の形態におけるペルチェ素子の動作制御のブロック図
【図5】第2の磁気テープ装置における湿度制御部の構成を示す斜視図
【図6】第3の磁気テープ装置における湿度制御部の構成を示す斜視図
【図7】温度と空気に含まれる飽和水蒸気量との関係を示すグラフ
【図8】耐久性試験を行った時の走行パス数と使用可能容量との関係を示すグラフ
【図9】耐久性試験を行った時の走行パス数と使用可能容量との関係を示す別のグラフ
【符号の説明】
【0060】
1 湿度制御部
2 磁気ヘッド
4 温度湿度センサー
10 磁気テープ装置
11,21,31 ペルチェ素子
14 ファン
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープを移送させる移送手段と、
前記移送手段によって移送されている前記磁気テープに情報を書き込み、または前記磁気テープに記録されている情報を読み出すことができる磁気ヘッドとを備えた磁気テープ装置であって、
前記磁気ヘッドを収容した筐体と、
前記筐体内に配され、前記筐体内の温度及び湿度を検出する検出手段と、
前記筐体内の温度を上昇させることが可能な加熱手段と、
前記検出手段で検出された湿度に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記検出手段が検出する前記筐体内の湿度が所定値よりも高くなった時に、前記筐体内の温度を上昇させるよう前記加熱手段を制御する、磁気テープ装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、ペルチェ素子で構成された、請求項1に記載の磁気テープ装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記磁気ヘッドにおける磁気テープ摺動面の裏面に接合されている、請求項1または2に記載の磁気テープ装置。
【請求項4】
前記筐体の表面に形成され、当該筐体の内部と外部とを連通する空間を備えた外気導入部と、
前記外気導入部の内部空間に配されたファンとを、さらに備え、
前記加熱手段は、前記外気導入部の内側に配され、
前記ファンは、前記加熱手段によって加熱された空気を前記筐体内に導入させる、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気テープ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−223964(P2009−223964A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68238(P2008−68238)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)