説明

磁気テープ装置

【課題】簡単な構成で磁気ヘッドの磁気テープ摺動面に付着した異物、汚れを容易に除去することができ、クリーニング性能の向上を図ることができる磁気テープ装置を提供する。
【解決手段】磁気テープ装置10を、同心軸上に配置された回転ドラム108Aおよび固定ドラム108Bからなる磁気ヘッドドラム機構108と、この磁気ヘッドドラム機構108の外周面を覆いかつヘリカル状に摺接して一定速度で走行する磁気テープと、回転ドラム108Aの下部外周面に取付けられ磁気テープの読み取り・記録を行う磁気ヘッド110と、この磁気ヘッド110のテープ摺動面をクリーニングするクリーニングローラ24を装備したヘッドクリーナー機構部20と、を備えた構成とし、このヘッドクリーナー機構部20に、クリーニングローラ24の回転速度と回転ドラムとの回転速度との相対回転速度を増加させるクリーニングローラ周速度設定機構25を装備した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気テープ装置に係り、特に、ヘリカルスキャン方式の磁気テープ装置において磁気ヘッドを容易にクリーニングできるヘッドクリーナー機構部を装備した磁気テープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転型磁気ヘッドを備えたビデオテープレコーダ(VTR)や、高密度記録を要求される他の機器、例えばデジタルオーディオテープ(DAT)、データレコーダ等のヘリカルスキャン方式の磁気テープ装置が数多く開発されている。
【0003】
上記磁気テープ装置では、磁気ヘッドの磁気テープ摺動面に異物が付着していると、磁気テープの読み取り・記録の性能が低下し、また、磁気テープの信頼性が低下することとなることから、磁気ヘッドの磁気テープ摺動面に付着した異物を除去するために磁気ヘッドのクリーニングを行うクリーニングローラ機構を設けることが多い。
【0004】
上記クリーニングローラ機構として、特許文献1に示すように、例えば、クリーニングローラの材質を変えたり、設置する数を増やしたりしているものがあるが、磁気ヘッドの回転する部位の周速度と、クリーニングローラの周速度とに差を持たせることで、充分なクリーニング効果を得ることを目的とした磁気記録再生装置が知られている。
【0005】
また、図6、図7に示すような構成のヘリカルスキャン方式の磁気テープ装置100が知られている。
この磁気テープ装置100はデータカートリッジ102を備え、このデータカートリッジ102には、磁気テープ104を供給する供給リール106と、この供給リール106から供給され磁気ヘッドドラム機構108に装着された磁気ヘッド110により、読み取り・記録された上記磁気テープ104を巻き取る巻取りリール112とが配設されている。
【0006】
磁気ヘッドドラム機構108は、同心軸上に配置された回転ドラム108Aおよび固定ドラム108Bで構成されている。図8で紙面直交方向の上方側に回転ドラム108Aが配置され、その下方に固定ドラム108Bが配置されている状態である。そして、同図が平面図なので、回転ドラム108Aおよび固定ドラム108Bは、(108A,108B)として表示されている。
磁気ヘッドドラム機構108は、データカートリッジ102の隣接位置に配設されており、上記回転ドラム108Aの外周面下部には、複数個(例えば4個)の磁気ヘッド110が周方向に均等間隔で設けられている。
【0007】
前記供給リール106から供給された磁気テープ104は、上述のように、磁気ヘッドドラム機構108の磁気ヘッド110を経由して巻取りリール112に巻き取られる。
供給リール106から巻取りリール112への磁気テープ104の送りは、供給リール106側に配置されているテンションレギュレータ114Aおよび回転ポスト115A、巻取りリール112側に配置されている回転ポスト115B、テンションレギュレータ114Bおよびガイドポスト116を経由することで、適切な緊張度を維持して行われる。
【0008】
磁気ヘッドドラム機構108の近傍には、磁気テープ104の表面に付着した異物やゴミをクリーニングするクリーニング機構部120が設けられている。このクリーニング機構部120は、図9に詳細を示すように、支持アーム122と、この支持アーム122の先端部に回転自在に装備されたクリーニングローラ124とを備えて構成されている。
【0009】
支持アーム122は、基端部に設けられた支点Pを中心にして先端部が磁気ヘッドドラム機構108に対して、矢印Aで示す方向に揺動可能となっている。
クリーニングローラ124は、必要に応じて磁気ヘッドドラム機構108側に揺動され、かつ回転している磁気ヘッド110に接触することにより、その磁気ヘッド110のクリーニングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−64026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記特許文献1に開示された装置では、回転ドラムの回転部に連れ回りするクリーニングローラの周速度を、回転ドラムの回転部の周速度との間で周速の差を生じるような構成とするため、構造が複雑である、という問題がある。
すなわち、クリーニングローラの内部構造が、回転ドラムに接触させるローラ本体を支持する支持軸に板バネを取り付けたり、上下のスリーブおよび上下のホルダを設ける等を設ける構成としなければならず、部品点数が多く、上記のように構造が複雑となり、また製作にも多くの手間がかかる。また、板バネの調整も困難である。
【0012】
また、前記図6、図7に示す従来の磁気テープ装置100では、クリーニング効果が低くなる、という問題が生じている。
すなわち、クリーニングローラ124が回転している回転ドラム108Aに押し付けられると、両者124,108の間に摩擦が生じ、その摩擦によりクリーニングローラ124が回転ドラム108Aの回転に連れ回りして回転する。また、クリーニングローラ124と回転ドラム108Aとは同一回転速度で回転していることになる。
【0013】
クリーニングローラ124は、回転ドラム108Aの表面と接触した状態でかつ同一回転速度で回転しているだけなので、両者の間には大きな摩擦力が生じることがない。この場合、クリーニングローラ124を回転ドラム108Aの表面に許容範囲内の圧力で押し付けて摩擦力を確保したとしても、稼働中に生じる磨耗粉が回転ドラム108Aの表面および磁気ヘッド110の磁気テープ摺動面に付着するため、摩擦力が減少する。
その結果、磁気ヘッド110の磁気テープ摺動面に付着した異物、汚れを除去することができず、クリーニング効果が充分に得られないものとなっている。
【0014】
そこで、上記問題点を解決するために、本発明では、簡単な構成で磁気ヘッドの磁気テープ摺動面に付着した異物、汚れを容易に除去することができ、クリーニング性能の向上を図ることができる磁気テープ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の磁気テープ装置は、同心軸上に配置された回転ドラムおよび固定ドラムからなる磁気ヘッドドラム機構と、この磁気ヘッドドラム機構の外周面を覆いかつヘリカル状に摺接して一定速度で走行する磁気テープと、前記回転ドラムの下部外周面に取付けられ前記磁気テープの読み取り・記録を行う磁気ヘッドと、この磁気ヘッドのテープ摺動面をクリーニングするクリーニングローラを装備したヘッドクリーナー機構部と、を備えた磁気テープ装置において、前記ヘッドクリーナー機構部が、前記回転ドラムの周速度に対して前記クリーニングローラの周速度を異なった周速度に設定するクリーニングローラ周速度設定機構を装備すると共に、このクリーニングローラ周速度設定機構が、前記クリーニングローラの回転方向を前記回転ドラムの回転方向と同一の方向に回転駆動するような構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の磁気テープ装置は、上記のように構成されているので、ヘッドクリーナー機構部に装備されたクリーニングローラ周速度設定機構により、クリーニングローラの回転方向を回転ドラムの回転方向と同じとすることで、クリーニングローラの周速度を回転ドラムの周速度に対して異なる周速度とすることができ、これにより、クリーニングローラと回転ドラムの下部に取付けられた磁気ヘッドのテープ摺動面との間に大きな摩擦力を生じさせることができる。その結果、簡単な構成で、クリーニングローラにより磁気ヘッドのテープ摺動面に付着した異物、汚れを容易に、かつ効果的に除去することができるようになり、クリーニング性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の磁気テープ装置の第1実施形態を示す全体平面図である。
【図2】前記第1実施形態の磁気ヘッドドラム機構とヘッドクリーニング機構部の接触状態を示す詳細平面図である。
【図3】図2におけるIII矢視図である。
【図4】前記実施形態のクリーニングローラによる磁気ヘッドのクリーニング作業の状態を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の磁気テープ装置の第2実施形態を示す全体側面図である。
【図6】従来のヘリカルスキャン方式の磁気テープ装置を示す全体平面図である。
【図7】従来の磁気テープ装置の主要部を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図1〜図4を参照して、本発明の磁気テープ装置の第1実施形態を説明する。
【0019】
図1は磁気テープ装置10の全体正面図を示し、図2は磁気テープ装置10の主要部の平面図を示し、図3は、図2におけるIII矢視図を示し、図4はクリーニング作業時の磁気ヘッドドラム機構とクリーニングローラとの関係を示す斜視図を示す。
【0020】
図1〜図4に示すように、磁気テープ装置10は、同心軸上に配置された回転ドラム108Aおよび固定ドラム108Bからなる磁気ヘッドドラム機構108と、この磁気ヘッドドラム機構108の回転ドラム108Aの下部外周面に取付けられ前記磁気テープ104の読み取り・記録を行う磁気ヘッド110と、この磁気ヘッド110のテープ摺動面をクリーニングするクリーニングローラ24および当該クリーニングローラ24を支持する支持部材である支持アーム22からなるヘッドクリーナー機構部20と、を備えて構成されている。
なお、磁気テープ装置10の磁気ヘッドドラム機構108およびヘッドクリーナー機構部20等は、図1、図2に示すように装置本体12に設けられており、支持アーム22は、装置本体12の突起部14に設けられている。
【0021】
図1で示す第1実施形態の磁気テープ装置10は、前述した図6、図7に示す従来の磁気テープ装置100における前記ヘッドクリーナー120を改良したものである。
したがって、データカートリッジ102等の各部材およびそれらの配置は、上記磁気テープ装置100と略同じであり、そのため、図1において、図6、図7の磁気テープ装置100と同一構成部材には同一符号を付し、以下には、異なる部分のみ、つまりヘッドクリーナー機構部20のみを詳細に説明する。
【0022】
本実施形態の磁気テープ装置10は、前述のように、回転する回転ドラム108Aに設けられた磁気ヘッド110をクリーニングするためのクリーニング機構部20を備えて構成されている。
クリーニング機構部20には、図2、図3に示すように、磁気ヘッドドラム機構108の回転ドラム108Aの周速度に対して、クリーニングローラ24の周速度を異なった周速度に設定するクリーニングローラ周速度設定機構25が設けられている。
このクリーニングローラ周速度設定機構25は前記支持アーム22に設けられ、クリーニングローラ24の回転方向を回転ドラム108Aの回転方向と同一回転方向に回転させるように構成されている。
【0023】
また、クリーニングローラ周速度設定機構25は、クリーニングローラ24の周速度を回転ドラム108Aの周速よりも遅く回転させるように構成されている。
すなわち、クリーニングローラ周速度設定機構25は、支持アーム22に装備されると共に回転ドラム108Aの外周面に当接し、当該回転ドラム108Aの回転に連れ回りする回転駆動伝達ローラ26と、この回転駆動伝達ローラ26の回転をクリーニングローラ24に伝達する回転駆動伝達機構28と、を備えて構成されている。
【0024】
支持アーム22は略短冊状の板部材で形成され、装置本体12の突起部14に設けられている。支持アーム22の長さ方向先端部には回転駆動伝達ローラ26およびクリーニングローラ24等が取り付けられ、長さ方向基端部には上記先端部を揺動可能に支持する揺動支点Pが設けられている。また、この揺動支点Pは、上記突起部14に立設された例えば支持ピンにより構成されている。
そして、支持アーム22は、図示しない駆動源からの駆動力により揺動支点Pを中心として、回転ドラム108A側に揺動するようになっている。
回転駆動伝達ローラ26は、例えばウレタンゴム製とされ略車のタイヤ状に形成されている。また、クリーニングローラ24は、不織布製とされ回転駆動伝達ローラ26と同様の形状に形成されている。
【0025】
上記回転駆動伝達機構28は、図3に示すように、回転駆動伝達ローラ26を支持する伝達ローラ用支持軸29に固着された第1のギア30と、この第1のギア30と噛合すると共にクリーニングローラ24を支持するクリーニングローラ用支持軸31に固着された第2のギア32とで構成されている。
【0026】
ここで、第1のギア30の外径寸法は、第2のギア32の外径寸法よりも小さく形成されており、したがって、第1のギア30の回転に対して第2のギア32の回転が遅くなる。つまり、回転駆動伝達ローラ26の回転速度に対してクリーニングローラ24の回転速度が遅くなる。
その結果、前記回転ドラム108Aに回転駆動伝達ローラ26を押し付けたとき、その回転駆動伝達ローラ26は回転ドラム108Aの回転に追従してその周速度と同一周速度で回転するが、クリーニングローラ24の回転速度は回転駆動伝達ローラ26の回転速度より遅いので、クリーニングローラ24はスリップ状態での回転となり、クリーニングローラ24と回転ドラム108Aとの間には大きな摩擦力が発生する。そのため、回転ドラム108Aに取付けられている磁気ヘッド110の表面に付着している異物、汚れを、クリーニングローラ24により効果的に除去することができる。
【0027】
次に、図3に基づいて、回転駆動伝達ローラ26、クリーニングローラ24、第1のギア30および第2のギア32の配置関係について説明する。
【0028】
支持アーム22の最先端部には、その支持アーム22の一側面と平行に、かつ接近した位置に前記回転駆動伝達ローラ26が設けられている。この回転駆動伝達ローラ26は、支持アーム22に回転ドラム108Aの外周面と平行に固着された伝達ローラ用支持軸29に回転自在に支持されている。
また、回転駆動伝達ローラ26は回転ドラム108Aに押し当てられ、当該回転ドラム108Aの回転に連れ回りするため、回転ドラム108Aの回転方向とは逆の方向に回転することになる。
この回転駆動伝達ローラ26の外側には、上記伝達ローラ用支持軸29に固着されて前記第1のギア30が配置されている。
【0029】
これに対して、クリーニングローラ24および第2のギア32は、支持アーム22の回転駆動伝達ローラ26および第1のギア30に隣接した位置で、かつ前記揺動支点P側寄りに配置されている。
すなわち、クリーニングローラ24は支持アーム22の側面から外方に延出した前記クリーニングローラ用支持軸31の先端に固着されており、このクリーニングローラ24の支持アーム22側に第2のギア32が配置され、かつクリーニングローラ用支持軸31に固着されている。また、第2のギア32と上記第1のギア30とは同列上に配置され、かつ互いが噛合するようになっている。
上記クリーニングローラ用支持軸31は、伝達ローラ用支持軸29と平行、つまり回転ドラム108Aの外周面と平行に設けられている。
【0030】
前述のように、回転駆動伝達ローラ26が回転ドラム108Aの回転方向(図2,3において矢印B方向)とは逆の方向(図2,3において矢印C方向)に回転するようになっており、第1のギア30も回転駆動伝達ローラ26と同一方向に回転するが、第2のギア32は第1のギア30と噛合するため、第1のギア30とは逆方向に回転するようになる。
第1のギア30とクリーニングローラ24とは同一支持軸29に固着されていることから、クリーニングローラ24は回転駆動伝達ローラ26と反対方向に回転することになる。すなわち、図2、図3に示すように、クリーニングローラ24は磁気ヘッドドラム機構108の回転方向と同一方向に回転する。
【0031】
クリーニングローラ24は、図3に示すように、その表面が回転ドラム108Aの外周面に設けられた磁気ヘッド110と接触できるように配置されている。上述のように、クリーニングローラ24と回転ドラム108Aとは同一方向に回転するので、クリーニングローラ24と回転ドラム108Aとが接触する際には、両者24,108Aが交差する状態で接触することになる。すなわち、クリーニングローラ24の周速度と回転ドラム108Aの周速度とが異なった周速度で接触することになる。
【0032】
次に、図4に基づいて、本実施形態のクリーニング機構部20による磁気ヘッド110のクリーニング作業を説明する。
なお、この図4では、クリーニング機構部20のクリーニングローラ24のみが記載されている。
【0033】
磁気ヘッド110のクリーニング作業が必要となった場合、まず、供給リール106から巻取りリール112への磁気テープ104の供給を停止する。
次いで、支持アーム22の支点Pを中心として支持アーム22の先端を揺動させ、回転駆動伝達ローラ26を回転ドラム108Aに押し付ける。すると、回転駆動伝達ローラ26が回転ドラム108Aに連れ回りし、その回転駆動力が第1のギア30と第2のギア32とを介してクリーニングローラ24に伝達され、その結果、クリーニングローラ24により、回転ドラム108Aに設けられている磁気テープ104の表面のクリーニング作業が行われる。
【0034】
所定のクリーニング作業が終了したら、支持アーム22の先端を揺動させてクリーニングローラ24を回転している回転ドラム108Aの外周面から離し、停止していた供給リール106から巻取りリール112への磁気テープ104の供給を再開し、所定の作業が開始される。
【0035】
以上のような第1実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)ヘッドクリーナー機構部20に装備されたクリーニングローラ周速度設定機構25により、クリーニングローラ24の回転方向と回転ドラム108Aの回転方向とを同じとし、クリーニングローラ24の周速度と回転ドラム108Aの周速度とを異なる周速度とすることができ、これにより、クリーニングローラ24と回転ドラム108Aの下部に取付けられた磁気ヘッド104のテープ摺動面との間に大きな摩擦力を生じさせることができる。その結果、簡単な構成で、クリーニングローラ24により磁気ヘッド104のテープ摺動面に付着した異物、汚れを容易に、かつ効果的に除去することができるようになり、クリーニング性能の向上を図ることができる。
【0036】
(2)第1のギア30の外径寸法が第2のギア32の外径寸法より小さくなっており、回転駆動伝達ローラ26の回転に対してクリーニングローラ24の回転が遅くなっているので、クリーニングローラ24が磁気ヘッド110のテープ摺動面と接触するとき、スリップ状態で回転する。そのため、クリーニングローラ24と回転ドラム108Aとの間には大きな摩擦力が発生し、これにより、回転ドラム108Aに取付けられている磁気ヘッド110の表面に付着している異物、汚れを、クリーニングローラ24により効果的に除去することができ、クリーニング性能の向上を図ることができる。
【0037】
(3)回転駆動伝達ローラ26は例えばウレタンゴム製とされ、回転する回転ドラム108Aに押し付けられてその回転に連れ回りし、回転ドラム108Aの回転駆動力を第1のギア30と第2のギア32とを介してクリーニングローラ24に伝達するようになっているので、クリーニングローラ24の周速度と回転ドラム108Aの周速度とを異なる周速度とするための駆動源を新たに設ける必要がなく、装置をコンパクトにすることができる。
【0038】
(4)回転駆動伝達ローラ26、第1のギア30、第2のギア32およびクリーニングローラ24が支持アーム22の先端側に装備されると共に、支持アーム22の基端部に揺動支点Pが設けられており、この揺動支点Pを中心として回転駆動伝達ローラ26等を回転ドラム108A側に揺動させ、かつ押し付けることができる。そのため、ヘッドクリーナー機構部20をコンパクトな構成とすることができ、また、簡単な動作でクリーニングローラ24を回転ドラム108Aに接触させることができる。
【0039】
次に、図5に基づいて、本発明の磁気テープ装置の第2実施形態を説明する。
本第2実施形態の磁気テープ装置40は、支持アーム22と、クリーニングローラ24と、回転駆動伝達ローラ26と、第1の円板部材46および第2の円板部材47からなる回転駆動伝達機構48とからなるヘッドクリーナー機構部42を備えて構成されている。
【0040】
本第2実施形態の磁気テープ装置40と前記第1実施形態の磁気テープ装置10とは、上記ヘッドクリーナー機構部42の回転駆動伝達機構48と、ヘッドクリーナー機構部20の回転駆動伝達機構28とが異なるのみである。したがって、図5においては、前記図3で用いられた部材、および構造と同一のものには同一符号を付し、異なる部位のみを詳細に説明する。
【0041】
図5に示すように、回転駆動伝達機構48は、前記伝達ローラ用支持軸29の先端部に回転自在に設けられた第1の円板部材46と、前記クリーニングローラ用支持軸31に回転自在に設けられ、かつ第1の円板部材46と互いの外周面同士が当接し合う第2の円板部材47とを備えて構成されている。
【0042】
第1の円板部材46と第2の円板部材47とは、それぞれが硬質ゴム等で形成されており、第1の円板部材46に対して第2の円板部材47の外径寸法が大きく形成されている。また、両者46,47は、所定の圧力で当接し合っている。
そのため、第1の円板部材46と同軸上に設けられた前記回転駆動伝達ローラ26の回転駆動を、第2の円板部材47と同軸上に設けられた前記クリーニングローラ24に伝達することができるようになっている。
そして、本第2実施形態の磁気テープ装置40では、回転駆動伝達ローラ26、クリーニングローラ24、および回転駆動伝達機構48を含みクリーニングローラ周速度設定機構45が構成されている。
【0043】
以上に説明した第2実施形態の磁気テープ装置40では、前記第1実施形態の磁気テープ装置10と略同様の作用によりクリーニング作用が行われ、また、前記(1)、(3)、(4)と同様の効果の他、次のような効果を得ることができる。
(5)第1の円板部材46の外径寸法が第2の円板部材47の外径寸法より小さくなっており、回転駆動伝達ローラ26の回転に対してクリーニングローラ24の回転が遅くなっているので、クリーニングローラ24が磁気ヘッド110のテープ摺動面と接触するとき、スリップ状態で回転する。そのため、クリーニングローラ24と回転ドラム108Aとの間には大きな摩擦力が発生し、これにより、回転ドラム108Aに取付けられている磁気ヘッド110の表面に付着している異物、汚れを、クリーニングローラ24により効果的に除去することができ、クリーニング性能の向上を図ることができる。
【0044】
(6)第1の円板部材46と第2の円板部材47とが、それぞれが硬質ゴム等で形成されているので、互いが当接し合って回転する際に発生する作業音を低く抑えることができる。
【0045】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0046】
例えば、前記第1実施形態では、クリーニングローラ周速度設定機構25が支持アーム22の先端側に配置され、最先端に回転駆動伝達ローラ26および第1のギア30、その隣接位置にクリーニングローラ24および第2のギア32が配置されているが、これらの配置は逆でもよい。
すなわち、クリーニングローラ24および第2のギア32を支持アーム22の最先端に配置し、その隣接位置に回転駆動伝達ローラ26および第1のギア30を配置してもよい。
【0047】
また、前記第1実施形態では、第1のギア30の外径寸法が第2のギア32の外径寸法よりも小さく形成されており、回転駆動伝達ローラ26の回転速度よりクリーニングローラ24の回転速度が遅くなるように構成されているが、これに限らない。
クリーニングローラ24の回転方向を回転ドラム108Aの回転方向と同一とするだけで、クリーニングローラ24の周速度を回転ドラム108Aの周速度と異なる速度とすることができるので、第1のギア30と第2のギア32とのの外径寸法を同じとしてもよい。
【0048】
また、前記第1実施形態では、回転駆動伝達ローラ26をウレタンゴム製としたが、これに限らない。回転ドラム108Aの回転を効率よく伝達できればよく、ウレタンゴムより摩擦力が高い材料、例えば硬質のスポンジで形成してもよい。このようにすれば、回転ドラム108Aの回転動力をクリーニングローラ24に、より効率よく伝達することができる。
【0049】
また、前記第1実施形態では、回転駆動伝達機構28,48を、第1のギア30と第2のギア32とで構成したが、これに限らない。第1のギア30に換えて第1のプーリを第1支持軸に取り付けると共に、第2のギア32に換えて第2のプーリを第2支持軸に取り付け、上記第1のプーリと第2のプーリとの間にタイミングベルトを架けわたす構造の回転駆動伝達機構としてもよい。
このようにすれば、タイミングベルトによる駆動力伝達なので磁気ヘッドのクリーニング作業を静かに行うことができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の磁気テープ装置は、ヘリカルスキャン方式の磁気テープ装置において磁気ヘッドのクリーニングを行なう際に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 磁気テープ装置(第1実施形態)
20 ヘッドクリーナー機構部
22 支持部材である支持アーム
24 クリーニングローラ
25 クリーニングローラ周速度設定機構
26 回転駆動伝達ローラ
28 回転駆動伝達機構
29 伝達ローラ用支持軸
30 第1のギア
31 クリーニングローラ用支持軸
32 第2のギア
40 磁気テープ装置(第2実施形態)
45 クリーニングローラ周速度設定機構
46 第1の円板部材
47 第2の円板部材
48 回転駆動伝達機構
108 磁気ヘッドドラム機構
108A 回転ドラム
108B 固定ドラム
110 磁気ヘッド
A 支持アームの揺動方向
B 回転ドラムの回転方向
C 回転駆動伝達ローラおよび第1のギアの回転方向
D クリーニングローラおよび第2のギアの回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心軸上に配置された回転ドラムおよび固定ドラムからなる磁気ヘッドドラム機構と、この磁気ヘッドドラム機構の外周面を覆いかつヘリカル状に摺接して一定速度で走行する磁気テープと、前記回転ドラムの下部外周面に取付けられ前記磁気テープの読み取り・記録を行う磁気ヘッドと、この磁気ヘッドのテープ摺動面をクリーニングするクリーニングローラを装備したヘッドクリーナー機構部と、を備えた磁気テープ装置において、
前記ヘッドクリーナー機構部が、前記回転ドラムの周速度に対して前記クリーニングローラの周速度を異なった周速度に設定するクリーニングローラ周速度設定機構を装備すると共に、このクリーニングローラ周速度設定機構が、前記クリーニングローラの回転方向を前記回転ドラムの回転方向と同一の方向に回転駆動するような構成としたことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の磁気テープ装置において、
前記クリーニングローラ周速度設定機構を、
前記クリーニングローラを支持する支持部材に装備されると共に前記回転ドラムの外周面に当接し当該回転ドラムの回転に連れ回りする回転駆動伝達ローラと、この回転駆動伝達ローラの回転を前記クリーニングローラに伝達する回転駆動伝達機構と、を備えて構成し、前記支持部材膳着たことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の磁気テープ装置において、
前記回転駆動伝達機構を、
前記回転駆動伝達ローラを支持する伝達ローラ用支持軸に固着された第1のギアと、この第1のギアと噛合すると共に前記クリーニングローラを支持するクリーニングローラ用支持軸に固着された第2のギアとで構成したことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載の磁気テープ装置において、
前記第1のギアの外径寸法を前記第2のギアの外径寸法よりも小さく形成したことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の磁気テープ装置において、
前記回転駆動伝達ローラおよび第1のギアを前記支持部材の長さ方向先端部側に配置すると共に長さ方向基端部寄りの隣接位置に前記クリーニングローラおよび第2のギアを配置し、
前記支持部材の長さ方向基端部に、装置本体に設けられ前記先端部側を揺動可能に支持する揺動支点を設け、
前記回転駆動伝達ローラを前記支持部材に接近させて配置すると共に前記第1のギアを前記回転駆動伝達ローラの外側に配置し、
前記第2のギアを前記第1のギアと同列上に配置すると共に、前記クリーニングローラを前記第2のギアを挟んで前記第1のギアの反対側に装備したことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項6】
前記請求項2に記載の磁気テープ装置において、
前記回転駆動伝達機構を、
前記回転駆動伝達ローラを支持する伝達ローラ用支持軸に固着された第1の円板部材と、この第1の円板部材と当接すると共に前記クリーニングローラを支持するクリーニングローラ用支持軸に固着された第2の円板部材とで構成したことを特徴とする磁気テープ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−192057(P2010−192057A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37030(P2009−37030)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)