磁気ディスクおよび磁気ディスク装置
【課題】記録磁性部がドット状に配列された磁気ディスクにおいて、記録層表面が、傾斜することなく高い表面平坦性を有する磁気ディスクを提供する。
【解決手段】本発明の磁気ディスクA1は、磁性体からなる複数の記録磁性部211Aが非磁性部211Bによって分離された状態でディスク周方向(X方向)およびディスク径方向(Y方向)に沿って配列された構成を有する記録領域21と、記録領域21に対しディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域22と、記録領域21に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域23とを有する記録層を備え、外周側非記録領域22は、非磁性部211Bよりも硬い材料からなるガード領域221と、非磁性部211Bと同じ材料からなる非磁性領域222とを含む。
【解決手段】本発明の磁気ディスクA1は、磁性体からなる複数の記録磁性部211Aが非磁性部211Bによって分離された状態でディスク周方向(X方向)およびディスク径方向(Y方向)に沿って配列された構成を有する記録領域21と、記録領域21に対しディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域22と、記録領域21に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域23とを有する記録層を備え、外周側非記録領域22は、非磁性部211Bよりも硬い材料からなるガード領域221と、非磁性部211Bと同じ材料からなる非磁性領域222とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドット状に配列された複数の記録磁性部を有する磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスクが知られている。コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクへのデータ記録に際しては、磁気ディスクの記録面に対して記録用の磁気ヘッドが近接配置(浮上配置)され、当該磁気ヘッドにより、記録層に対し、その保磁力より強い記録磁界が印加される。磁気ディスクに対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの記録磁界の向きを適宜反転させることにより、記録層の記録領域において、磁化方向が適宜反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に沿って形成される。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングが制御されることにより、各々に所定の長さで記録マークが形成される。このようにして、記録層において、磁化方向の変化として所定のデータが記録される。なお、磁気ディスクにおいては、一般に、当該磁気ディスクの取り扱いや製造上の便宜から、記録層における記録領域の外周側および内周側には、それぞれ非記録領域が設けられている。
【0004】
磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに好ましい媒体として、ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアなどといった磁気ディスクが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。パターンドメディアは、その記録領域において、例えば磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って規則的に配列された構成とされている。
【0005】
図8は、パターンドメディアとして構成された磁気ディスクのディスク径方向に沿った部分断面図であり、記録領域および非記録領域の境界近傍を表す。磁気ディスク50は、ディスク基板51、および記録層52および図示しない保護層を含む積層構造を有する。記録層52は、記録領域521および非記録領域522を有する。記録領域521は、複数の記録磁性部521Aと記録磁性部521A間に介在する非磁性部521Bとを有する。非記録領域522は、非磁性部521Bと同じ材料によって構成された非磁性領域である。
【0006】
図9および図10は、磁気ディスク50の製造方法を表す。図9および図10は、ディスク径方向に沿った部分断面図であり、記録領域521に対応する部分を表す。磁気ディスクの製造においては、まず、図9(a)に示すように、ディスク基板50上に磁性膜52A’およびレジスト膜61を順次形成する。磁性膜52A’は、所定の磁性材料を製膜することによって形成される。次に、図9(b)に示すように、レジスト膜61について部分的に除去することにより、所定のレジストパターン62を形成する。レジストパターン62は、上述の非磁性部521Bに対応する開口部62aを有する。レジストパターン62の形成は、例えばナノインプリント法を用いて行うことができる。この後、図9(c)に示すように、レジストパターン62をマスクとして磁性膜52A’に対して所定のエッチング処理を施すことにより、上述の記録磁性部521Aがパターン形成される。
【0007】
次に、図10(a)に示すように、レジストパターン62を除去したうえで非磁性材料52B’を堆積させる。具体的には、例えばスパッタリング法により記録磁性部521A間および記録磁性部521A上に非磁性材料52B’が堆積される。次に、図10(b)に示すように、堆積された非磁性材料52B’のうち上層側の不要部分を研磨除去し、記録磁性部521Aの頂部を露出させる。当該研磨は、非磁性材料52B’の表面に対して研磨部材を所定の加工面圧で押圧しながら行う。
【0008】
このような磁気ディスクの製造においては、非磁性材料52B’の硬さは研磨工程に要する処理時間に大きな影響を与える。非磁性材料52B’が硬いと研磨速度が遅くなり、処理時間は長くなる傾向にある。そのため、非磁性材料52B’としては、磁性膜52A’を構成する磁性材料と比べて相対的に軟らかい材料が用いられる。
【0009】
しかしながら、上記構成の磁気ディスク50においては、図11を参照して説明する以下の問題があった。図11(a)は、上述の図10(a)と同様の工程を示しており、記録領域521と非記録領域522の境界近傍に対応する部分を表す。非記録領域522に対応する部分については、堆積された非磁性材料52B’の下層側には、比較的に広い範囲において磁性材料が介在していない。このため、非磁性材料52B’は、記録領域521と非記録領域522との境界に対応する部分において、ディスク径方向に対する傾きが生じるおそれがある。この場合、後の研磨工程においても上記傾斜に対応する傾斜が残ったまま研磨される。また、非磁性領域522に対応する部分は、非磁性材料52B’よりも相対的に硬い磁性材料が当該非磁性材料52B’の下層側に介在していないため、記録領域521に対応する部分よりも非磁性材料52B’の研磨が促進され、傾斜度が大きくなる傾向にある。その結果、研磨後においては、図11(b)に示すように、記録領域521と非記録領域522の境界近傍においては、記録層52表面が傾斜することになる。この場合、記録磁性部521Aの頂部が過剰に削られると、当該記録磁性部521Aにおいては適切な磁気特性が得られないという不都合がある。また、記録層52表面が傾斜していると、磁気ヘッドの安定浮上を阻害する要因となり、好ましくない。
【0010】
【特許文献1】特開2005−71467号公報
【特許文献2】特開2003−157507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、記録磁性部がドット状に配列された磁気ディスクにおいて、記録層表面が、傾斜することなく高い表面平坦性を有する磁気ディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0013】
本発明の第1の側面によって提供される磁気ディスクは、磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備え、上記外周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域と、上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域とを含むことを要件とする。
【0014】
本発明に係る磁気ディスクにおいては、外周側非記録領域には、非磁性材料からなる非磁性領域の他に、適所にガード領域が設けられている。このような構成によれば、記録磁性部の頂部を露出させる研磨の際には、非記録領域に対応する部分においても、非磁性部よりも硬い材料からななる当該ガード領域の存在によって、非磁性領域となるべき非磁性材料の研磨が促進されることは抑制される。したがって、記録層における記録領域と外周側非記録領域との境界近傍について、その表面が傾斜することはなく、高い表面平坦性が確保される。
【0015】
好ましくは、上記ガード領域は、上記複数の記録磁性部を構成する磁性体と同じ材料からなる。このような構成によれば、ガード領域については記録磁性部と同時に形成することができる。
【0016】
好ましくは、上記ガード領域の面積と上記非磁性領域の面積とは、略同一とされている。
【0017】
好ましくは、上記内周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第2のガード領域を含む。このような構成によれば、記録層における記録領域と内周側非記録領域とに跨る部分についても高い表面平坦性が確保される。
【0018】
好ましくは、上記記録領域は、複数の上記記録磁性部を含むデータ領域と、所定の磁気パターンを有するサーボ領域とがディスク周方向に沿って交互に配置されており、上記データ領域と上記サーボ領域との間には、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第3のガード領域が形成されている。このような構成によれば、記録層における記録領域内についても高い表面平坦性が確保される。
【0019】
本発明の第2の側面によれば、磁気ディスク装置が提供される。この磁気ディスク装置は、磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置し、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域および上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域を含む外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備えた磁気ディスクと、上記磁気ディスクを回転駆動させるための駆動部と、上記磁気ディスクの上記記録領域に情報を書き込むための磁気ヘッドと、を有することを特徴としている。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明に係る磁気ディスクA1を示す平面図であり、図2は、磁気ディスクA1の部分拡大平面図であり、図3は、磁気ディスクA1の部分拡大断面図である。
【0022】
磁気ディスクA1は、図3に表れているように、ディスク基板1、記録層2および図示しない保護層を含む積層構造を有し、パターンドメディアとして構成されたものである。
【0023】
ディスク基板1は、主に磁気ディスクA1の剛性を確保するためのものであり、例えば、アルミニウム合金、またはガラスよりなる。
【0024】
記録層2は、図1ないし図3に表れているように、ユーザデータが記録されうる記録領域21と、記録領域21に対してディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域22と、記録領域21に対してディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域23とを有する。
【0025】
記録領域21は、図2に表れているように、データ領域211とサーボ領域212とを備え、これらデータ領域211およびサーボ領域212は、ディスク周方向に沿って交互に配置されている。
【0026】
サーボ領域212は、磁気ヘッド(図示略)の位置決めに用いられるものであり、磁性部212Aおよび非磁性部212Bからなる所定の磁気パターンを有する。サーボ領域212は、例えばプリアンブル、サーボマーク、アドレスマーク、および位相パターンを含み、磁気ヘッドによって所定のサーボ情報やアドレス情報を読み取り可能に構成されたものである。
【0027】
データ領域211は、磁性体からなる複数の記録磁性部211A、および非磁性体からなる非磁性部211Bを有する。複数の記録磁性部211Aは、ディスク周方向(矢印X方向)およびディスク径方向(矢印Y方向)に沿ってマトリックス状に配列されており、各記録磁性部211Aは、非磁性部211Bによってディスク径方向およびディスク周方向のいずれにおいても物理的に孤立した状態で設けられている。記録磁性部211Aにおいては、磁気ヘッドからの記録磁界の印加によって磁化方向が制御されることにより、データが記録される。
【0028】
データ領域211とサーボ領域212との間には、ディスク径方向に沿って磁性体からなるガード領域213が形成されている。ガード領域213のディスク周方向の長さは、サーボ領域212の磁性部212Aの長さよりも充分に大きくされている。これにより、ガード領域213が磁気ヘッドによって誤ってサーボ領域212の一部として読み取られることは防止される。ガード領域213は、上記した記録磁性部211Aを構成する磁性体と同じ材料からなる。なお、図2においては、磁性体からなる領域にはハッチングを付している。
【0029】
図2(a)に表れているように、外周側非記録領域22は、磁性体からなるガード領域221と、非磁性体からなる非磁性領域222とを備えている。ガード領域221および非磁性領域222は、それぞれディスク周方向に沿って所定幅で延びる同心リング状とされており、ディスク径方向に沿って交互に並ぶように形成されている。本実施形態では、ガード領域221の幅と非磁性領域222の幅とは、同程度とされている。これにより、外周側非記録領域22におけるガード領域221の面積と非磁性領域222の面積とは、略同一となっている。ガード領域221は、記録領域21の記録磁性部211Aを構成する磁性体と同じ材料からなり、非磁性領域222は、非磁性部211Bを構成する非磁性体と同じ材料からなる。
【0030】
図2(b)に表れているように、内周側非記録領域23は、磁性体からなるガード領域231と、非磁性体からなる非磁性領域232とを備えている。ガード領域231および非磁性領域232は、それぞれディスク周方向に沿って所定幅で延びる同心リング状とされており、ディスク径方向に沿って交互に並ぶように形成されている。本実施形態では、ガード領域231の幅と非磁性領域232の幅とは、同程度とされている。これにより、内周側非記録領域23におけるガード領域231の面積と非磁性領域232の面積とは、略同一となっている。ガード領域231は、記録領域21の記録磁性部211Aを構成する磁性体と同じ材料からなり、非磁性領域232は、非磁性部211Bを構成する非磁性体と同じ材料からなる。
【0031】
記録層2上に形成される上記保護層は、いわゆるヘッドタッチなどの衝撃や塵埃から記録層2を保護するために設けられる非磁性層であり、例えばDLC(ダイアモンドライクカーボン)からなる。
【0032】
以上のようなディスク基板1、記録層2、および上記保護層を含む磁気ディスクA1の積層構造中には、必要に応じて軟磁性層などの他の層が含まれてもよい。
【0033】
次に、磁気ディスクA1の製造方法の一例を図4および図5を参照して説明する。
【0034】
磁気ディスクA1は、例えばスタンパを用いたナノインプリント法を利用して製造される。ナノインプリント法においては、まず、スタンパを作製する。スタンパの作製においては、例えば基板上のレジスト膜に電子ビーム描画装置によって所定パターンを露光形成した後、当該レジスト膜に現像処理を施してレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンをマスクとして上記基板にRIEなどのドライエッチングを施して凹部を形成し、レジストパターンを除去する。これにより、所定パターンの凹部を有する基板(スタンパの原盤)が得られる。次に、当該基板に対して電鋳処理を行うことにより、Niなどの金属からなるスタンパが得られる。スタンパの表面には、上記基板の凹凸形状が転写されており、上記基板の凹部に対応する箇所において凸部が形成される。本実施形態においては、上記の方法により、磁気ディスクA1の記録磁性部211Aやガード領域221,231,213などの磁性体からなるべき部位を凹部3aとし、非磁性部211Bや非磁性領域222,232などの非磁性体からなるべき部位を凸部3bとする凹凸パターンを有するスタンパ3(図4(a)参照)が作製される。
【0035】
次に、図4(a)に示すように、ディスク基板1上に磁性膜2A’およびレジスト膜41を順次形成する。磁性膜2A’の形成は、例えばスパッタリング法により所定の磁性材料を製膜することにより行う。当該磁性材料としては、例えばCoCrPt合金が挙げられる。レジスト膜41を構成する材料としては、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。なお、図4(a)に表されたスタンパ3は、記録領域21となるべき部分と外周側非記録領域22となるべき部分の境界近傍におけるディスク径方向に沿った断面である。
【0036】
次に、レジスト膜41をガラス転移点以上の温度に加熱したうえで、図4(b)に示すように、スタンパ3を当該レジスト膜41に押圧することにより、当該スタンパ3の凹凸パターンが転写される。ここで、上述したように、磁気ディスクA1の外周側非記録領域22においては、ガード領域221と非磁性領域222の面積は略同一であるため、外周側非記録領域22となるべき部分では、ガード領域221に対応する凹部3aと非磁性領域に対応する凸部3bとが占める範囲も略同一となっている。このように凸部3bを設けておけば、スタンパ3が押し込まれることにより、当該凸部3bによって押しのけられたレジスト膜41の一部が周囲の凹部3aに入り込む。したがって、このような構成によれば、レジスト膜41に対してスタンパ3を押し込む際に、外周側非記録領域22となるべき部分から記録領域21になるべき部分にかけてバランスよく均一な押し込み深さとすることができ、後の工程で形成されるレジストパターン42の形状の安定化を図ることができる。この点については、図示しない内周側非記録領域23となるべき部分から記録領域21になるべき部分にかけても同様である。
【0037】
次に、図5(a)に示すように、レジスト残渣を例えば酸素プラズマを利用したアッシングにより除去し、磁性膜2A’表面を部分的に露出させて、レジストパターン42を形成する。次に、図5(b)に示すように、レジストパターン42をマスクとして磁性膜2A’に対して例えばドライエッチングを施すことにより、磁性膜2A’の露出部が除去される。これにより、記録磁性部211Aやガード領域221などの磁性体からなる部位がパターン形成される。
【0038】
次に、図5(c)に示すように、レジストパターン42を例えば酸素プラズマを利用したアッシングにより除去したうえで非磁性材料2B’を堆積させる。具体的には、例えばスパッタリング法により、記録磁性部211A間やガード領域221間、および記録磁性部211A上やガード領域221上に非磁性材料2B’が堆積される。当該非磁性材料2B’としては、例えばSiO2が挙げられる。
【0039】
このとき、外周側非磁性領域22となるべき部分においてガード領域221が設けられているため、当該部分における非磁性材料2B’表面の最上位は、記録領域21となるべき部分における非磁性材料2B’表面の最上位と同程度の高さとなっている。
【0040】
次に、図5(d)に示すように、堆積された非磁性材料2B’のうち上層側の不要部分を研磨除去し、記録磁性部211Aの頂部を露出させる。当該研磨の手法としては、例えばケミカルメカニカルポリッシング(CMP)を採用することができる。CMPによる研磨では、例えば、非磁性材料2B’の表面に対して定盤に張られた研磨布を所定の加工面圧で押圧しつつ、研磨布と非磁性材料2B’との間に研磨スラリを供給することにより行う。当該研磨スラリとしては、一般に、酸化セリウム砥粒を主成分とするものが用いられる。このような研磨工程を経て、記録層2が形成される。次いで、記録層2上に図示しない保護膜を形成することにより、磁気ディスクA1を得ることができる。
【0041】
本実施形態の磁気ディスクA1の製造において、非磁性材料2B’を研磨する際には、ガード領域221の存在により、非磁性材料2B’の表面については、外周側非記録領域22に対応する部分の最上位と記録領域21に対応する部分の最上位とが同程度の高さで面一状となっている。このため、当該研磨の際には、研磨部材の片当たりなどの不都合が生じることはなく、記録領域21ないし外周側非記録領域22の表面が不当に傾くことはない。したがって、記録領域21と外周側非記録領域22との境界近傍において、高い表面平坦性が確保され、磁気ディスクA1の特性劣化を防止することができる。
【0042】
また、外周側非記録領域22と記録領域21との境界部分は比較的に広い範囲に及ぶことから、ガード領域221を設けることによって広い範囲において高い表面平坦性が確保されることとなる。したがって、外周側非記録領域22にガード領域221を設けることは、磁気ディスクA1の表面平坦性を向上させるうえでは最も効果がある。本実施形態では、内周側非記録領域23および記録領域21においてもガード領域231,213が適宜設けられているため、磁気ディスクA1全体として高い表面平坦性が確保され、磁気ディスクA1の特性劣化を防止するうえでより好ましい。
【0043】
図6および図7は、本発明に係る磁気ディスクの他の例を示す。なお、図6および図7においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており適宜説明を省略する。また、図6および図7においては、磁性体からなる領域にはハッチングを付している。
【0044】
図6に示された磁気ディスクA2においては、外周側非記録領域22の態様が上記実施形態の磁気ディスクA1とは異なっている。本実施形態では、外周側非記録領域22のガード領域221はディスク径方向に沿って放射状に形成されており、ガード領域221間が非磁性領域222となっている。また、図示しないが、内周側非記録領域23のガード領域231についても、外周側非記録領域22と同様にディスク周方向に沿って放射状に形成されている。本実施形態によっても、ガード領域221,231,213の存在により、磁気ディスクA2全体として高い表面平坦性が確保される。
【0045】
図7に示された磁気ディスクA3においては、外周側非記録領域22の態様が上記実施形態の磁気ディスクA1とは異なっている。本実施形態では、外周側非記録領域22のガード領域221は格子縞状に形成されており、ガード領域221間が非磁性領域222となっている。また、図示しないが、内周側非記録領域23のガード領域231についても、外周側非記録領域22と同様に格子縞状に形成されている。本実施形態によっても、ガード領域221,231,213の存在により、磁気ディスクA3全体として高い表面平坦性が確保される。
【0046】
なお、本発明の実施形態としては、上に述べた磁気ディスクと、当該磁気ディスクを回転駆動させるための駆動部と、当該磁気ディスクの記録領域に情報を書き込むための磁気ヘッドとを有した図示しない磁気ディスク装置として構成することも可能である。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係る磁気ディスクは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る磁気ディスクの各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る磁気ディスクの一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大平面図であり、(a)は、記録領域と外周側非記録領域との境界近傍を表し、(b)は、記録領域と内周側非記録領域との境界近傍を表す。
【図3】図1に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係る磁気ディスクの製造方法における一部の工程を示す部分拡大断面図である。
【図5】図4の後に続く工程を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明に係る磁気ディスクの他の例を示す部分拡大平面図である。
【図7】本発明に係る磁気ディスクの他の例を示す部分拡大平面図である。
【図8】パターンドメディアである従来の磁気ディスクの一例を示す部分拡大断面図である。
【図9】従来の磁気ディスクの製造方法における一部の工程を示す部分拡大断面図である。
【図10】図9の後に続く工程を示す部分拡大断面図である。
【図11】従来の磁気ディスクの問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
A1,A2,A3 磁気ディスク
2 記録層
21 記録領域
22 外周側非記録領域
23 内周側非記録領域
211 データ領域
211A 記録磁性部
211B 非磁性部
212 サーボ領域
213 ガード領域(第3のガード領域)
221 ガード領域
222 非磁性領域
231 ガード領域(第2のガード領域)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドット状に配列された複数の記録磁性部を有する磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスクが知られている。コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクへのデータ記録に際しては、磁気ディスクの記録面に対して記録用の磁気ヘッドが近接配置(浮上配置)され、当該磁気ヘッドにより、記録層に対し、その保磁力より強い記録磁界が印加される。磁気ディスクに対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの記録磁界の向きを適宜反転させることにより、記録層の記録領域において、磁化方向が適宜反転する複数の記録マーク(磁区)がディスク周方向に沿って形成される。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングが制御されることにより、各々に所定の長さで記録マークが形成される。このようにして、記録層において、磁化方向の変化として所定のデータが記録される。なお、磁気ディスクにおいては、一般に、当該磁気ディスクの取り扱いや製造上の便宜から、記録層における記録領域の外周側および内周側には、それぞれ非記録領域が設けられている。
【0004】
磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに好ましい媒体として、ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアなどといった磁気ディスクが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。パターンドメディアは、その記録領域において、例えば磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って規則的に配列された構成とされている。
【0005】
図8は、パターンドメディアとして構成された磁気ディスクのディスク径方向に沿った部分断面図であり、記録領域および非記録領域の境界近傍を表す。磁気ディスク50は、ディスク基板51、および記録層52および図示しない保護層を含む積層構造を有する。記録層52は、記録領域521および非記録領域522を有する。記録領域521は、複数の記録磁性部521Aと記録磁性部521A間に介在する非磁性部521Bとを有する。非記録領域522は、非磁性部521Bと同じ材料によって構成された非磁性領域である。
【0006】
図9および図10は、磁気ディスク50の製造方法を表す。図9および図10は、ディスク径方向に沿った部分断面図であり、記録領域521に対応する部分を表す。磁気ディスクの製造においては、まず、図9(a)に示すように、ディスク基板50上に磁性膜52A’およびレジスト膜61を順次形成する。磁性膜52A’は、所定の磁性材料を製膜することによって形成される。次に、図9(b)に示すように、レジスト膜61について部分的に除去することにより、所定のレジストパターン62を形成する。レジストパターン62は、上述の非磁性部521Bに対応する開口部62aを有する。レジストパターン62の形成は、例えばナノインプリント法を用いて行うことができる。この後、図9(c)に示すように、レジストパターン62をマスクとして磁性膜52A’に対して所定のエッチング処理を施すことにより、上述の記録磁性部521Aがパターン形成される。
【0007】
次に、図10(a)に示すように、レジストパターン62を除去したうえで非磁性材料52B’を堆積させる。具体的には、例えばスパッタリング法により記録磁性部521A間および記録磁性部521A上に非磁性材料52B’が堆積される。次に、図10(b)に示すように、堆積された非磁性材料52B’のうち上層側の不要部分を研磨除去し、記録磁性部521Aの頂部を露出させる。当該研磨は、非磁性材料52B’の表面に対して研磨部材を所定の加工面圧で押圧しながら行う。
【0008】
このような磁気ディスクの製造においては、非磁性材料52B’の硬さは研磨工程に要する処理時間に大きな影響を与える。非磁性材料52B’が硬いと研磨速度が遅くなり、処理時間は長くなる傾向にある。そのため、非磁性材料52B’としては、磁性膜52A’を構成する磁性材料と比べて相対的に軟らかい材料が用いられる。
【0009】
しかしながら、上記構成の磁気ディスク50においては、図11を参照して説明する以下の問題があった。図11(a)は、上述の図10(a)と同様の工程を示しており、記録領域521と非記録領域522の境界近傍に対応する部分を表す。非記録領域522に対応する部分については、堆積された非磁性材料52B’の下層側には、比較的に広い範囲において磁性材料が介在していない。このため、非磁性材料52B’は、記録領域521と非記録領域522との境界に対応する部分において、ディスク径方向に対する傾きが生じるおそれがある。この場合、後の研磨工程においても上記傾斜に対応する傾斜が残ったまま研磨される。また、非磁性領域522に対応する部分は、非磁性材料52B’よりも相対的に硬い磁性材料が当該非磁性材料52B’の下層側に介在していないため、記録領域521に対応する部分よりも非磁性材料52B’の研磨が促進され、傾斜度が大きくなる傾向にある。その結果、研磨後においては、図11(b)に示すように、記録領域521と非記録領域522の境界近傍においては、記録層52表面が傾斜することになる。この場合、記録磁性部521Aの頂部が過剰に削られると、当該記録磁性部521Aにおいては適切な磁気特性が得られないという不都合がある。また、記録層52表面が傾斜していると、磁気ヘッドの安定浮上を阻害する要因となり、好ましくない。
【0010】
【特許文献1】特開2005−71467号公報
【特許文献2】特開2003−157507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、記録磁性部がドット状に配列された磁気ディスクにおいて、記録層表面が、傾斜することなく高い表面平坦性を有する磁気ディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0013】
本発明の第1の側面によって提供される磁気ディスクは、磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備え、上記外周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域と、上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域とを含むことを要件とする。
【0014】
本発明に係る磁気ディスクにおいては、外周側非記録領域には、非磁性材料からなる非磁性領域の他に、適所にガード領域が設けられている。このような構成によれば、記録磁性部の頂部を露出させる研磨の際には、非記録領域に対応する部分においても、非磁性部よりも硬い材料からななる当該ガード領域の存在によって、非磁性領域となるべき非磁性材料の研磨が促進されることは抑制される。したがって、記録層における記録領域と外周側非記録領域との境界近傍について、その表面が傾斜することはなく、高い表面平坦性が確保される。
【0015】
好ましくは、上記ガード領域は、上記複数の記録磁性部を構成する磁性体と同じ材料からなる。このような構成によれば、ガード領域については記録磁性部と同時に形成することができる。
【0016】
好ましくは、上記ガード領域の面積と上記非磁性領域の面積とは、略同一とされている。
【0017】
好ましくは、上記内周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第2のガード領域を含む。このような構成によれば、記録層における記録領域と内周側非記録領域とに跨る部分についても高い表面平坦性が確保される。
【0018】
好ましくは、上記記録領域は、複数の上記記録磁性部を含むデータ領域と、所定の磁気パターンを有するサーボ領域とがディスク周方向に沿って交互に配置されており、上記データ領域と上記サーボ領域との間には、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第3のガード領域が形成されている。このような構成によれば、記録層における記録領域内についても高い表面平坦性が確保される。
【0019】
本発明の第2の側面によれば、磁気ディスク装置が提供される。この磁気ディスク装置は、磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置し、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域および上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域を含む外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備えた磁気ディスクと、上記磁気ディスクを回転駆動させるための駆動部と、上記磁気ディスクの上記記録領域に情報を書き込むための磁気ヘッドと、を有することを特徴としている。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明に係る磁気ディスクA1を示す平面図であり、図2は、磁気ディスクA1の部分拡大平面図であり、図3は、磁気ディスクA1の部分拡大断面図である。
【0022】
磁気ディスクA1は、図3に表れているように、ディスク基板1、記録層2および図示しない保護層を含む積層構造を有し、パターンドメディアとして構成されたものである。
【0023】
ディスク基板1は、主に磁気ディスクA1の剛性を確保するためのものであり、例えば、アルミニウム合金、またはガラスよりなる。
【0024】
記録層2は、図1ないし図3に表れているように、ユーザデータが記録されうる記録領域21と、記録領域21に対してディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域22と、記録領域21に対してディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域23とを有する。
【0025】
記録領域21は、図2に表れているように、データ領域211とサーボ領域212とを備え、これらデータ領域211およびサーボ領域212は、ディスク周方向に沿って交互に配置されている。
【0026】
サーボ領域212は、磁気ヘッド(図示略)の位置決めに用いられるものであり、磁性部212Aおよび非磁性部212Bからなる所定の磁気パターンを有する。サーボ領域212は、例えばプリアンブル、サーボマーク、アドレスマーク、および位相パターンを含み、磁気ヘッドによって所定のサーボ情報やアドレス情報を読み取り可能に構成されたものである。
【0027】
データ領域211は、磁性体からなる複数の記録磁性部211A、および非磁性体からなる非磁性部211Bを有する。複数の記録磁性部211Aは、ディスク周方向(矢印X方向)およびディスク径方向(矢印Y方向)に沿ってマトリックス状に配列されており、各記録磁性部211Aは、非磁性部211Bによってディスク径方向およびディスク周方向のいずれにおいても物理的に孤立した状態で設けられている。記録磁性部211Aにおいては、磁気ヘッドからの記録磁界の印加によって磁化方向が制御されることにより、データが記録される。
【0028】
データ領域211とサーボ領域212との間には、ディスク径方向に沿って磁性体からなるガード領域213が形成されている。ガード領域213のディスク周方向の長さは、サーボ領域212の磁性部212Aの長さよりも充分に大きくされている。これにより、ガード領域213が磁気ヘッドによって誤ってサーボ領域212の一部として読み取られることは防止される。ガード領域213は、上記した記録磁性部211Aを構成する磁性体と同じ材料からなる。なお、図2においては、磁性体からなる領域にはハッチングを付している。
【0029】
図2(a)に表れているように、外周側非記録領域22は、磁性体からなるガード領域221と、非磁性体からなる非磁性領域222とを備えている。ガード領域221および非磁性領域222は、それぞれディスク周方向に沿って所定幅で延びる同心リング状とされており、ディスク径方向に沿って交互に並ぶように形成されている。本実施形態では、ガード領域221の幅と非磁性領域222の幅とは、同程度とされている。これにより、外周側非記録領域22におけるガード領域221の面積と非磁性領域222の面積とは、略同一となっている。ガード領域221は、記録領域21の記録磁性部211Aを構成する磁性体と同じ材料からなり、非磁性領域222は、非磁性部211Bを構成する非磁性体と同じ材料からなる。
【0030】
図2(b)に表れているように、内周側非記録領域23は、磁性体からなるガード領域231と、非磁性体からなる非磁性領域232とを備えている。ガード領域231および非磁性領域232は、それぞれディスク周方向に沿って所定幅で延びる同心リング状とされており、ディスク径方向に沿って交互に並ぶように形成されている。本実施形態では、ガード領域231の幅と非磁性領域232の幅とは、同程度とされている。これにより、内周側非記録領域23におけるガード領域231の面積と非磁性領域232の面積とは、略同一となっている。ガード領域231は、記録領域21の記録磁性部211Aを構成する磁性体と同じ材料からなり、非磁性領域232は、非磁性部211Bを構成する非磁性体と同じ材料からなる。
【0031】
記録層2上に形成される上記保護層は、いわゆるヘッドタッチなどの衝撃や塵埃から記録層2を保護するために設けられる非磁性層であり、例えばDLC(ダイアモンドライクカーボン)からなる。
【0032】
以上のようなディスク基板1、記録層2、および上記保護層を含む磁気ディスクA1の積層構造中には、必要に応じて軟磁性層などの他の層が含まれてもよい。
【0033】
次に、磁気ディスクA1の製造方法の一例を図4および図5を参照して説明する。
【0034】
磁気ディスクA1は、例えばスタンパを用いたナノインプリント法を利用して製造される。ナノインプリント法においては、まず、スタンパを作製する。スタンパの作製においては、例えば基板上のレジスト膜に電子ビーム描画装置によって所定パターンを露光形成した後、当該レジスト膜に現像処理を施してレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンをマスクとして上記基板にRIEなどのドライエッチングを施して凹部を形成し、レジストパターンを除去する。これにより、所定パターンの凹部を有する基板(スタンパの原盤)が得られる。次に、当該基板に対して電鋳処理を行うことにより、Niなどの金属からなるスタンパが得られる。スタンパの表面には、上記基板の凹凸形状が転写されており、上記基板の凹部に対応する箇所において凸部が形成される。本実施形態においては、上記の方法により、磁気ディスクA1の記録磁性部211Aやガード領域221,231,213などの磁性体からなるべき部位を凹部3aとし、非磁性部211Bや非磁性領域222,232などの非磁性体からなるべき部位を凸部3bとする凹凸パターンを有するスタンパ3(図4(a)参照)が作製される。
【0035】
次に、図4(a)に示すように、ディスク基板1上に磁性膜2A’およびレジスト膜41を順次形成する。磁性膜2A’の形成は、例えばスパッタリング法により所定の磁性材料を製膜することにより行う。当該磁性材料としては、例えばCoCrPt合金が挙げられる。レジスト膜41を構成する材料としては、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。なお、図4(a)に表されたスタンパ3は、記録領域21となるべき部分と外周側非記録領域22となるべき部分の境界近傍におけるディスク径方向に沿った断面である。
【0036】
次に、レジスト膜41をガラス転移点以上の温度に加熱したうえで、図4(b)に示すように、スタンパ3を当該レジスト膜41に押圧することにより、当該スタンパ3の凹凸パターンが転写される。ここで、上述したように、磁気ディスクA1の外周側非記録領域22においては、ガード領域221と非磁性領域222の面積は略同一であるため、外周側非記録領域22となるべき部分では、ガード領域221に対応する凹部3aと非磁性領域に対応する凸部3bとが占める範囲も略同一となっている。このように凸部3bを設けておけば、スタンパ3が押し込まれることにより、当該凸部3bによって押しのけられたレジスト膜41の一部が周囲の凹部3aに入り込む。したがって、このような構成によれば、レジスト膜41に対してスタンパ3を押し込む際に、外周側非記録領域22となるべき部分から記録領域21になるべき部分にかけてバランスよく均一な押し込み深さとすることができ、後の工程で形成されるレジストパターン42の形状の安定化を図ることができる。この点については、図示しない内周側非記録領域23となるべき部分から記録領域21になるべき部分にかけても同様である。
【0037】
次に、図5(a)に示すように、レジスト残渣を例えば酸素プラズマを利用したアッシングにより除去し、磁性膜2A’表面を部分的に露出させて、レジストパターン42を形成する。次に、図5(b)に示すように、レジストパターン42をマスクとして磁性膜2A’に対して例えばドライエッチングを施すことにより、磁性膜2A’の露出部が除去される。これにより、記録磁性部211Aやガード領域221などの磁性体からなる部位がパターン形成される。
【0038】
次に、図5(c)に示すように、レジストパターン42を例えば酸素プラズマを利用したアッシングにより除去したうえで非磁性材料2B’を堆積させる。具体的には、例えばスパッタリング法により、記録磁性部211A間やガード領域221間、および記録磁性部211A上やガード領域221上に非磁性材料2B’が堆積される。当該非磁性材料2B’としては、例えばSiO2が挙げられる。
【0039】
このとき、外周側非磁性領域22となるべき部分においてガード領域221が設けられているため、当該部分における非磁性材料2B’表面の最上位は、記録領域21となるべき部分における非磁性材料2B’表面の最上位と同程度の高さとなっている。
【0040】
次に、図5(d)に示すように、堆積された非磁性材料2B’のうち上層側の不要部分を研磨除去し、記録磁性部211Aの頂部を露出させる。当該研磨の手法としては、例えばケミカルメカニカルポリッシング(CMP)を採用することができる。CMPによる研磨では、例えば、非磁性材料2B’の表面に対して定盤に張られた研磨布を所定の加工面圧で押圧しつつ、研磨布と非磁性材料2B’との間に研磨スラリを供給することにより行う。当該研磨スラリとしては、一般に、酸化セリウム砥粒を主成分とするものが用いられる。このような研磨工程を経て、記録層2が形成される。次いで、記録層2上に図示しない保護膜を形成することにより、磁気ディスクA1を得ることができる。
【0041】
本実施形態の磁気ディスクA1の製造において、非磁性材料2B’を研磨する際には、ガード領域221の存在により、非磁性材料2B’の表面については、外周側非記録領域22に対応する部分の最上位と記録領域21に対応する部分の最上位とが同程度の高さで面一状となっている。このため、当該研磨の際には、研磨部材の片当たりなどの不都合が生じることはなく、記録領域21ないし外周側非記録領域22の表面が不当に傾くことはない。したがって、記録領域21と外周側非記録領域22との境界近傍において、高い表面平坦性が確保され、磁気ディスクA1の特性劣化を防止することができる。
【0042】
また、外周側非記録領域22と記録領域21との境界部分は比較的に広い範囲に及ぶことから、ガード領域221を設けることによって広い範囲において高い表面平坦性が確保されることとなる。したがって、外周側非記録領域22にガード領域221を設けることは、磁気ディスクA1の表面平坦性を向上させるうえでは最も効果がある。本実施形態では、内周側非記録領域23および記録領域21においてもガード領域231,213が適宜設けられているため、磁気ディスクA1全体として高い表面平坦性が確保され、磁気ディスクA1の特性劣化を防止するうえでより好ましい。
【0043】
図6および図7は、本発明に係る磁気ディスクの他の例を示す。なお、図6および図7においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており適宜説明を省略する。また、図6および図7においては、磁性体からなる領域にはハッチングを付している。
【0044】
図6に示された磁気ディスクA2においては、外周側非記録領域22の態様が上記実施形態の磁気ディスクA1とは異なっている。本実施形態では、外周側非記録領域22のガード領域221はディスク径方向に沿って放射状に形成されており、ガード領域221間が非磁性領域222となっている。また、図示しないが、内周側非記録領域23のガード領域231についても、外周側非記録領域22と同様にディスク周方向に沿って放射状に形成されている。本実施形態によっても、ガード領域221,231,213の存在により、磁気ディスクA2全体として高い表面平坦性が確保される。
【0045】
図7に示された磁気ディスクA3においては、外周側非記録領域22の態様が上記実施形態の磁気ディスクA1とは異なっている。本実施形態では、外周側非記録領域22のガード領域221は格子縞状に形成されており、ガード領域221間が非磁性領域222となっている。また、図示しないが、内周側非記録領域23のガード領域231についても、外周側非記録領域22と同様に格子縞状に形成されている。本実施形態によっても、ガード領域221,231,213の存在により、磁気ディスクA3全体として高い表面平坦性が確保される。
【0046】
なお、本発明の実施形態としては、上に述べた磁気ディスクと、当該磁気ディスクを回転駆動させるための駆動部と、当該磁気ディスクの記録領域に情報を書き込むための磁気ヘッドとを有した図示しない磁気ディスク装置として構成することも可能である。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係る磁気ディスクは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る磁気ディスクの各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る磁気ディスクの一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大平面図であり、(a)は、記録領域と外周側非記録領域との境界近傍を表し、(b)は、記録領域と内周側非記録領域との境界近傍を表す。
【図3】図1に示す磁気ディスクの部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係る磁気ディスクの製造方法における一部の工程を示す部分拡大断面図である。
【図5】図4の後に続く工程を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明に係る磁気ディスクの他の例を示す部分拡大平面図である。
【図7】本発明に係る磁気ディスクの他の例を示す部分拡大平面図である。
【図8】パターンドメディアである従来の磁気ディスクの一例を示す部分拡大断面図である。
【図9】従来の磁気ディスクの製造方法における一部の工程を示す部分拡大断面図である。
【図10】図9の後に続く工程を示す部分拡大断面図である。
【図11】従来の磁気ディスクの問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
A1,A2,A3 磁気ディスク
2 記録層
21 記録領域
22 外周側非記録領域
23 内周側非記録領域
211 データ領域
211A 記録磁性部
211B 非磁性部
212 サーボ領域
213 ガード領域(第3のガード領域)
221 ガード領域
222 非磁性領域
231 ガード領域(第2のガード領域)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備え、
上記外周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域と、上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域とを含む、磁気ディスク。
【請求項2】
上記ガード領域は、上記複数の記録磁性部を構成する磁性体と同じ材料からなる、請求項1に記載の磁気ディスク。
【請求項3】
上記ガード領域の面積と上記非磁性領域の面積とは、略同一とされている、請求項1または2に記載の磁気ディスク。
【請求項4】
上記内周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第2のガード領域を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項5】
上記記録領域は、複数の上記記録磁性部を含むデータ領域と、所定の磁気パターンを有するサーボ領域とがディスク周方向に沿って交互に配置されており、
上記データ領域と上記サーボ領域との間には、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第3のガード領域が形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項6】
磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置し、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域および上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域を含む外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備えた磁気ディスクと、
上記磁気ディスクを回転駆動させるための駆動部と、
上記磁気ディスクの上記記録領域に情報を書き込むための磁気ヘッドと、
を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項1】
磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置する外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備え、
上記外周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域と、上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域とを含む、磁気ディスク。
【請求項2】
上記ガード領域は、上記複数の記録磁性部を構成する磁性体と同じ材料からなる、請求項1に記載の磁気ディスク。
【請求項3】
上記ガード領域の面積と上記非磁性領域の面積とは、略同一とされている、請求項1または2に記載の磁気ディスク。
【請求項4】
上記内周側非記録領域は、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第2のガード領域を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項5】
上記記録領域は、複数の上記記録磁性部を含むデータ領域と、所定の磁気パターンを有するサーボ領域とがディスク周方向に沿って交互に配置されており、
上記データ領域と上記サーボ領域との間には、上記非磁性部よりも硬い材料からなる第3のガード領域が形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項6】
磁性体からなる複数の記録磁性部が非磁性部によって分離された状態でディスク周方向およびディスク径方向に沿って配列された構成を有する記録領域と、この記録領域に対しディスク径方向外方に位置し、上記非磁性部よりも硬い材料からなるガード領域および上記非磁性部と同じ材料からなる非磁性領域を含む外周側非記録領域と、上記記録領域に対しディスク径方向内方に位置する内周側非記録領域とを有する記録層を備えた磁気ディスクと、
上記磁気ディスクを回転駆動させるための駆動部と、
上記磁気ディスクの上記記録領域に情報を書き込むための磁気ヘッドと、
を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−193649(P2009−193649A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35946(P2008−35946)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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