説明

磁気ディスクおよび磁気記録再生装置

【課題】プリアンブルパターンでの同期取得または位相差型のバーストにおける位相差検出が良好に行えるビットパターンドメディア型の磁気ディスクおよびその磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の磁気ディスクは、複数のデータ領域であって各データ領域が、周方向に延在するようにそれぞれが配列された複数のトラックを有する、複数のデータ領域と、前記複数のデータ領域の間に半径方向に延在するように設けられたサーボ領域であって、それぞれが前記半径方向に延在する複数のガイドパターンと、隣接する前記ガイドパターン間に設けられ前記半径方向に沿って配列されたポストパターンと、前記隣接するガイドパターンの少なくとも一方の側に前記半径方向に沿って配列された少なくとも1列の複数のドットと、を有するサーボ領域と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ディスクおよび磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク(ハードディスクとも言う)の高密度化に対する技術潮流のなかで、磁気信号を発する磁性部領域が非磁性部によって区分けされたいわゆるディスクリートトラック型の媒体構造が提案されている。さらに、データトラック部が円周方向の溝のみならずデータビット毎に区切られたビットパターンドメディアも提案されている。また、ブロックコポリマーの自己組織化性質を用いてドットを形成しこれらドットを加工することによって得る方法も提案されている。しかし、ドットが整然と配列するように制御することは特に広いエリアの場合、困難と考えられる。この問題を解決する方法としてガイドドットを用いる方法や電子線描画によって各ドットパターンまで形成する方法が提案されている。
【0003】
自己組織化材料を用いる場合、個々のビットパターンは予め電子線描画工程やその後の工程により基板面に形成されたガイドパターン内に自己組織化能を有するジブロックコポリマー溶液を塗布し、アニール処理することによりドット状に凝集する第1の成分とそのドットを被覆する第2の成分とにミクロ層分離を起こさせ、各ドットが自己組織化して理想的には六方晶状に整列させる。その後、第1の成分と第2の成分のエッチング特性差(エッチングレート差)を用いて、第1の成分または第2の成分のいずれかをマスクとして基板加工することにより形成することができる。ここで、自己組織化材料の配列を制御するために基板上にドットの配列を制御する位置制御領域と、ドットが自己組織的に配列する自由拡散領域とが設けられていることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−79827号公報
【特許文献2】特開2001−189014号公報
【特許文献3】特許第3576056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように自己組織化材料が自己組織的に配列する範囲はガイド溝乃至位置制御領域を設けておくことによって一定の範囲で制御することが可能である。しかしながら、磁気ディスクにおいては半径位置によって円周方向の幅が異なるので、円周方向の幅の中に入ることができる自己組織化材料のドットの数が半径によって異なることになる。このように、円周方向に異なる幅のガイドパターン内では必然的に自己組織化材料の配列が一様でなくなってしまう部分が生じてしまう。このような不均一に並んだ自己組織化材料のドットを基に形成されたプリアンブル信号やバースト信号がタイミング的に不均一となり、プリアンブル部における同期信号取得や位相差型のバースト部における位相差検出などが困難となってしまう。
【0006】
本実施形態は、プリアンブルパターンでの同期取得または位相差型のバーストにおける位相差検出が良好に行えるビットパターンドメディア型の磁気ディスクおよびその磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態による磁気ディスクは、複数のデータ領域であって各データ領域が、周方向に延在するようにそれぞれが配列された複数のトラックを有する、複数のデータ領域と、前記複数のデータ領域の間に半径方向に延在するように設けられたサーボ領域であって、それぞれが前記半径方向に延在する複数のガイドパターンと、隣接する前記ガイドパターン間に設けられ前記半径方向に沿って配列されたポストパターンと、前記隣接するガイドパターンの少なくとも一方の側に前記半径方向に沿って配列された少なくとも1列の複数のドットと、を有するサーボ領域と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態による磁気ディスクの一具体例の上面図である。
【図2】図2(a)乃至図2(f)は、第1実施形態の磁気ディスクの製造工程を説明する断面図。
【図3】図3(a)乃至図3(f)は、第1実施形態の磁気ディスクの製造工程を説明する断面図。
【図4】図4(a)乃至図4(f)は、第1実施形態の磁気ディスクの製造工程を説明する断面図。
【図5】図5(a)乃至図5(c)は、レジストパターンのプリアンブル部の上面図。
【図6】第2実施形態による磁気記録再生装置を示す斜視図。
【図7】第2実施形態に係る磁気記録装置のアクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図。
【図8】図8(a)乃至図8(c)は、実施例の磁気ディスクのプリアンブル部の上面図。
【図9】図9(a)は実施例の磁気ディスクの再生信号を示す波形図、図9(b)は比較例の磁気ディスクの再生信号を示す波形図。
【図10】図10(a)乃至図10(c)は、比較例の磁気ディスクのプリアンブル部の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態による磁気ディスクについて図1乃至図5(c)を参照して説明する。本実施形態の磁気ディスクは、磁性体加工型のビットパターンド磁気記録媒体であり、例えば、図1に示すように、4個のデータ領域d1〜d4と、これらデータ領域d1〜d4の間に設けられたサーボ領域s1〜s4とを備えている。図1は第1実施形態による磁気ディスクの一具体例の上面図である。各データ領域は同心円状の複数のトラックtrを有している。すなわち、各トラックtrは円周上に延在している。なお、図1においては、位置制御のためのサーボパターンが配されたサーボ領域s1〜s4はアームの軌跡に沿った弧状に形成される。サーボパターンは、同期のためのプリアンブル部、サーボアドレスが記述されたアドレス部、位置制御のためのバースト部などの領域を含んでいる。なお、サーボ領域は、一般に回転数一定の下でその通過時間が一定になるようにサーボパターンの円周方向幅は半径に比例して増加する。また、図1に示すように、磁気ディスクは、その中心部に穴が設けられたドーナツ形状となっている。
【0011】
次に、このような磁気ディスクの製造方法を説明する。なお、磁気ディスクの製造の際には電子線描画が用いられる。図2(a)乃至図4(f)は、本実施形態の磁気ディスクの製造工程を説明する断面図である。
【0012】
まず、基板2上に感光性樹脂(以下、レジストという)4を塗布する(図2(a)参照)。レジスト4は図2(b)に示されるように電子線描画装置1を用いて電子線により露光される。このとき、後の工程で自己組織化材料のドットの配列を制御するために用いるポストパターンおよびガイドパターンの潜像を形成する。電子線描画装置はステージを1水平方向に移動させる移動機構とステージを回転させる回転機構とを有する方式の電子線描画装置を用いることドーナツ形状の磁気ディスクのパターンを形成する上で好ましい。自己組織化材料を用いる場合にはその配列を制御するためのガイド溝やポストパターンを電子線描画によって形成することができる。
【0013】
その後、レジスト4を、現像液によって現像し、レジスト原盤となるレジストパターン4aを形成する(図2(c)参照)。ここで、形成されたレジストパターン4aのプリアンブル部は、例えば図5(a)乃至図5(c)に示すようになる。図5(a)乃至図5(c)は、レジストパターン4aのプリアンブル部の上面図であり、図5(a)は内周部分を示し、図5(b)は中周部分を示し、図5(c)は外周部分を示す。ガイドパターン30はデータ領域の各トラックが延在する方向(周方向またはトラック長手方向)と交差する方向に延在している。図5(a)乃至図5(c)からわかるように、それぞれの周部分では、ガイドパターン30に挟まれた領域に複数のポストパターン32が形成されている。これらのポストパターン32は、ガイドライン30のエッジ30aの延在する方向に沿って、規則的に配置されている。そして、隣接するガイドパターン30の対向するエッジの一方からポストパターン32までの距離dは、いずれの半径位置のポストパターンでも等しくなるよう、電子線描画工程において一定のタイミングでブランキングを行う。なお、このとき、隣接するガイドパターンの一方のガイドパターン30のエッジからポストパターン32までの距離が一定であれば、他方のガイドパターン30のエッジからの距離や形状は問わない。また、隣接するガイドパターン30間の領域に形成されるポストパターン32は図5(a)乃至図5(c)に示すように内周〜外周まですべて1列に配置された構成であってもよい。また、内周部分の一部にはポストパターン32が無い範囲があってもよい。また、ポストパターン32が複数列に配置されていてもよい。
【0014】
なお、上記製造工程では、ポジ型レジストを使用した場合を記載しているが、ネガ型のレジストを用いて電子線の照射部と非照射部を反対にしたり、後の工程でパターンを反転させても構わない。なお、レジスト4を現像する前にポストベーク工程を行っても良く、現像後さらにリンス液による処理を行っても構わない。
【0015】
次に、レジスト原盤のレジストパターン4aをマスクとして基板2をエッチングすることにより、ガイドパターン原盤2aを形成する。このとき、基板2はパターンを転写するために適当なエッチングレートを有する複数の膜が形成されていて、それらの膜にレジストパターン4aを基に、パターンを転写していく工程が含まれていても良い。エッチングマスクとして用いたレジストパターン4aの残部を酸素RIE(Reactive Ion Etching)処理等により除去した後、ガイドパターン原盤2a上にスパッタ処理によりNi導電層3を形成する(図2(d)参照)。この導電層3を基に電鋳することにより、ガイドパターン原盤2aと凹凸が反転したNiのファザースタンパ5を形成する(図2(e)参照、導電層3はスタンパ5の一部となる。)。
【0016】
続いて、ファザースタンパ5からガイドパターン原盤2aを剥離した後、ファザースタンパ5を複製電鋳することによりガイドパターン原盤2aと凹凸が同じNiのマザースタンパ6を得る(図2(f)参照)。
【0017】
次に、マザースタンパ6からファザースタンパ5を剥離した後、マザースタンパ6を射出成形することにより樹脂スタンパ8を形成する(図3(a)参照)。
【0018】
次に、上面に2P(Photo Polymer)材料層9が塗布されたSi基板10を用意する。樹脂スタンパ8からマザースタンパ6を剥離した後、2P材料層9上に樹脂スタンパ8を用いてUV(Ultra Violet)インプリントする(図3(b)参照)。インプリントで押された部分のSi基板10上に残置された2P材料を酸素RIE処理することにより、Si基板10の表面を露出させる。これにより、2Pパターン9aを得る(図3(c)参照)。
【0019】
続いて、2Pパターン9aの凹部にジブロックコポリマー溶液を塗布し、アニールすることによって自己組織化させる(図3(d)参照)。そして、ドット状に凝集したエッチングレートが高い第1の成分と、そのドットを被覆するエッチングレートが低い第2の成分および2Pパターン9aとのエッチングレート差を用いて、ドットが形成された部分のパターン9bを残すように酸素RIE処理を行う(図3(e))。その後、パターン9bをマスクとしてSi基板10にCFや酸素RIE処理を行ってSi基板10を加工する。パターン9bを除去することにより、Si基板10はSiマスターモールド10aになる(図3(f))。なお、ここでSi基板10の表面にはパターンを転写するために適当なエッチングレートを有する複数の膜が形成されていて、それらの膜に自己組織化したドットパターン9bを基にパターンを転写していく工程が含まれていても良い。
【0020】
次に、Siマスターモールド10aの表面に導電膜を形成し、Ni電鋳することによりNiのファザースタンパ11を形成する(図4(a))。続いて、Siマスターモールド10aをファザースタンパ11から剥離した後、ファザースタンパ11を複製電鋳することによりNiのマザースタンパ12を得る(図4(b))。
【0021】
次に、マザースタンパ12を射出成形することにより樹脂スタンパ13を形成する(図4(c))。
【0022】
次に、基板16の上面に磁性層15が成膜された磁気ディスク基板17を用意し、この磁性層15上に2P材料14を塗布する。そして樹脂スタンパ13を用いて、2P材料14にUVインプリントすることにより、2Pパターン14aを形成する(図4(d))。続いて、樹脂スタンパ13を剥離した後、形成された2Pパターン14aをマスクとして磁性層15をイオンミリング加工する。これにより、磁性層15に磁性パターン15aが形成された磁気ディスク基板17aを得る(図4(e)、4(f))。なお、形成された磁性パターン15a上には保護膜が塗布されても良いし、溝等の凹の部分を非磁性材料で埋め込む工程を有していても構わない。
【0023】
本実施形態においてパターンを形成する基板2の形状は、特に限定されるものではないが、円盤形状のもの、例えばシリコンウエハーなどが好ましい。ここで、円盤にノッチやオリフラがあっても構わない。他に基板としては、ガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、化合物半導体基板などを用いることができる。ガラス基板には、アモルファスガラスまたは結晶化ガラスを用いることができる。アモルファスガラスとしては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスなどがある。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスなどが挙げられる。セラミック基板としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの焼結体を繊維強化したものなどを用いることができる。化合物半導体基板としては、GaAs,AlGaAsなどが挙げられる。
【0024】
磁気ディスク17aの形状はその方式上、円盤形状、特にドーナツ型形状が好ましいが、そのサイズは方式上、特に限定されるものではない。しかしながら、電子線による描画時間が過剰なものにならないよう3.5インチ以下であることが望ましい。さらにインプリント時に用いるプレス能力が過大なものにならないために、2.5インチ以下であることが望ましい。また、磁気ディスクとして使用される面が片面であっても両面であっても構わない。
【0025】
磁気ディスクの内部は、輪切り状の同心円状のトラックに区分され、そのトラックが一定角度毎に区切られたセクタを有している。そして、磁気ディスクはスピンドルモータに取り付けられて回転され、ヘッドにより各種のデジタルデータが記録、再生される。そのため円周方向にユーザーデータトラックが配される一方、位置制御のためのサーボマークが各トラックを跨ぐ方向に配される。サーボマークの中にはプリアンブル部、トラックまたはセクタ番号情報が書きこまれたアドレス部、トラックに対するヘッドの相対位置検出のためのバースト部などの領域を含む。また、これらの領域に加えてギャップ部を含んでいることもある。
【0026】
トラックピッチは記録密度向上の観点からより狭いものが要求される。
【0027】
また、露光される感光性樹脂膜の感度は通常面内で均一であるから、電子線描画装置のステージは線速度を一定に保ちながら回転することが望ましい。そして、電子線描画装置のステージと電子ビームを走査する光学系とそれらを動作させる信号については、少なくとも、ブランキングさせる地点とその信号と半径方向および回転方向の移動制御のステージ動作信号とが同期していることが必要である。
【0028】
なお、本実施形態による磁気ディスクの製造に用いられるスタンパの形状は円盤形状であっても、ドーナツ型形状であっても、その他の形状であっても構わない。スタンパの厚みは0.1mm以上2mm以下であることが望ましい。あまり薄いと強度が得られないこととなるし、必要以上に厚いと電鋳に時間を要することとなったり、膜厚差が大きくなったりするからである。スタンパのサイズは媒体より大きいことが好ましいが、そのサイズは特に限定されるものではない。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態による磁気記録再生装置を図6に示す。図6に示すように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着され、駆動装置制御部(図示せず)からの制御信号に応答するモータ(図示せず)により矢印Aの方向に回転する。本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えたものとしても良い。
【0030】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押付け圧力とヘッドスライダの媒体対向面(ABSともいう)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダの媒体対向面は、記録用媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。
【0031】
サスペンション154は、駆動コイル(図示せず)を保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた駆動コイル(図示せず)と、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。
【0032】
アクチュエータアーム155は、軸受部157の上下2箇所に設けられたボールベアリング(図示せず)によって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気記録ヘッドを記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動できる。
【0033】
図7は、本実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示しており、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリ160をディスク側から眺めた拡大斜視図である。図7に示すように、磁気ヘッドアセンブリ160は、軸受部157と、この軸受部157から延出したヘッドジンバルアセンブリ(以下、HGAと称する)158と、軸受部157からHGAと反対方向に延出しているとともにボイスコイルモータのコイル147を支持した支持フレーム146を有している。HGAは、軸受部157から延出したアクチュエータアーム155と、アクチュエータアーム155から延出したサスペンション154と、を有する。
【0034】
サスペンション154の先端には、磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。すなわち、本実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ160は、磁気ヘッドと、磁気ヘッドを一端に搭載するサスペンション154と、サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備えている。
【0035】
サスペンション154は信号の書き込み及び読み取り用のリード線(図示しない)を有し、このリード線とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気記録ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。また、図示しない電極パッドが、磁気ヘッドアセンブリ160に設けられる。
【0036】
そして、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う、図示しない信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、例えば、図6に示した磁気記録装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、電極パッドに接続され、磁気記録ヘッドと電気的に結合される。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例について説明する。
【0038】
実施例による磁気ディスクについて図2(a)乃至図5(c)、および図8を参照して説明する。
【0039】
この実施例の磁気ディスクの製造には、電子線描画装置を用いる。この電子線描画装置は、電子銃と、コンデンサレンズと、対物レンズと、ブランキング電極および偏向器を備えたZrO/W熱電界放射型の電子銃エミッターと、を有している。電子線の加速電圧は100kVである。
【0040】
一方、ポジ型電子線レジストをアニソールで希釈し、0.2μmのメンブランフィルタでろ過する。続いて、HMDS処理した6インチのシリコンウエハーである基板2に、ろ過したレジストをスピンコートする。その後、基板2を200℃で3分間プリベークする。これにより、基板2上に膜厚が0.04μmのレジスト4が形成される(図2(a)参照)。
【0041】
この基板2を上記電子線描画装置のステージの所定位置に搬送し、真空のもと、以下の条件の同心円型パターンを得るべく露光を行った(図2(b)参照)。
露光部分半径:14mm〜28mm
セクタ数/トラック:200
プリアンブルパターン数/セクタ:100
プリアンブルラインの円周方向幅:50nm(内周)〜100nm(外周)
1回転毎の送り量:5nm
線速度:1m/s(一定)
【0042】
ここで1回転する間に徐々に増加しながら偏向強度を強めて同心円を描いた。なお、プリアンブルパターンの形成には、一般に内周では、40nsec電子線を照射し、60nsec照射しないという繰り返しを行った。また、外周においては、85nsec電子線を照射し、115nsec照射しないという繰り返しを行った。しかしながら、後に自己組織化材料を整列させる際に位置制御するためのポストパターンを形成するために、14周回につき3周は、上述の場合と異なる照射パターンで電子線を照射した。この照射パターンは、電子線を照射25nsec照射後、40nsec照射しない時間を設け、その後は照射するというパターンである。このようにして電子線を照射することにより、レジスト4にポストパターン32およびガイドパターン30の潜像を形成する。その後、レジスト4を、現像液によって現像し、レジスト原盤となるレジストパターン4aを形成する(図2(c)参照)。ここで、形成されたレジストパターン4aのプリアンブル部の上面図を図5(a)乃至図5(c)に示し、断面図を図2(c)に示す。それぞれの周部分では、ガイドパターン30に挟まれた領域に複数のポストパターン32が形成される。そして、隣接するガイドパターン30の対向するエッジの一方からポストパターン32までの距離dは、いずれの半径値でも等しくなる、すなわちいずれの周でも等しくなる。
【0043】
次に、レジスト原盤のレジストパターン4aをマスクとしてエッチングを行うにことより、ガイドパターン原盤2aを形成した(図2(d)参照)。
【0044】
ガイドパターン原盤2a上にNiをスパッタして導電膜3を形成し、それを基にNi電鋳工程を経て、ガイドパターン原盤2aと凹凸が反転したNiのファザースタンパ5を得た(図2(e)参照)。スパッタはアルゴンガスを導入して圧力が1Paに調整されたチャンバー内で400WのDCパワーをかけて20秒間スパッタリングさせることにより行った。また、電鋳はスルファミン酸ニッケルメッキ液を使用し、90分間電鋳した(図2(e)参照)。電鋳膜5の厚さは300μmであった。なお、電鋳浴条件は次の通りである。
スルファミン酸ニッケル:600g/L
ホウ酸:40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム):0.15g/L
液の温度:55℃
PH:4.0
電流密度:20A/dm
【0045】
この後、レジスト残渣を酸素プラズマアッシング法で除去した。酸素プラズマアッシングは酸素ガスを100ml/minで導入し圧力が4Paの真空に調整されたチャンバー内において、100Wで20分間プラズマアッシングを行い(図示せず)、Niのファザースタンパ5を得た。
【0046】
その後、さらにファザースタンパ5を複製電鋳することによりガイドパターン原盤2aと凹凸同じNiのマザースタンパ6を得た(図2(f)参照)。
【0047】
次に、マザースタンパ6を射出成形することにより樹脂スタンパ8を得た(図3(a)参照)。
【0048】
次に樹脂スタンパ8を用いてSi基板10上に塗布されたアクリル系2P材料9にUV照射を伴うインプリントを行い(図3(b)参照)、その後残渣2P材料を酸素RIEでエッチングすることにより、2Pパターン9aを得た(図3(c)参照)。
【0049】
さらに2Pパターン9aの凹部にPS−PDMS(ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン)ジブロックコポリマー溶液を塗布する。そして、アニールすることによって自己組織化させる(図3(d)参照)。
【0050】
そして、ドット状に凝集したエッチングレートが高い第1の成分と、そのドットを被覆するエッチングレートが低い第2の成分および2Pパターン9aとのエッチングレート差を用いて、ドットが形成された部分のパターン9bを残すように酸素RIE処理を行う(図3(e))。その後、パターン9bをマスクとしてSi基板10にCFや酸素RIE処理を行ってSi基板10を加工する。パターン9bを除去することにより、Si基板10はSiマスターモールド10aになる(図3(f))。このとき形成されるドットは図8(a)乃至図8(c)に示すように、プリアンブル部のガイドライン30のエッジ30aの一辺に沿うように形成される。これは、ポストパターンが隣接するガイドライン30間の領域に、ガイドライン30の延在する方向、すなわち、ガイドライン30のエッジ30aの延在する方向に沿って、ポストパターン32が70nmピッチで規則的に配置されているためである。ドットのピッチは35nmであった。また、ガイドライン30から各ドット22の中心までの距離は約19nmで、その標準偏差は1nm以下であった。なお、ドット22の径はポストパターン32の上半円部の径(ポストパターンが円形の場合はその径)よりも大きい。これは、ポストパターン32のサイズがドット22のサイズ以上となると、ポストパターン32がドットを束縛することが困難となり、非磁性領域が増大するためである。本実施例におけるドット22の直径は30nmであったのに対し、ポストパターン32の上半円部の直径は25nmであった。また、ポストパターン32のピッチ、すなわちエッジ30aの延在する方向において隣接するポストパターン間の距離は、ドット22のピッチの2倍以上かつ8倍以下であることが好ましい。2倍未満のピッチであるとそもそもリソグラフィによるポストパターンの形成が困難であるとともに、ポストパターンの位置や大きさのばらつきによって自己組織化ドットの配列を乱れが起こり易く、あまりにポストパターン間の距離がドットピッチに対して広いと本来の目的である自己組織化ドットの配列位置制御が困難となるからである。また、ポストパターン32は非磁性体で構成されていてもよい。そして、この非磁性体は、ガラス、SiO、SOG(Spin On Glass)、Cのいずれかであってもよい。なお、図8(a)乃至図8(c)は、プリアンブル部の上面図であり、図8(a)は内周部を示し、図8(b)は中周部を示し、図8(c)は外周部を示す。
【0051】
さらにSiマスターモールド10aの表面に導電膜を形成し、Ni電鋳することによりNiのファザースタンパ11を得た(図4(a)参照)。その後、ファザースタンパ11を複製電鋳することによりNiのマザースタンパ12を得た(図4(b)参照)。
【0052】
次に、マザースタンパ12を射出成形することにより樹脂スタンパ13を得た(図4(c)参照)。
【0053】
上面に磁性層15が成膜された磁気ディスク基板17を用意する。そして、磁性層15上にアクリル系2P材料14を塗布する、続いて、樹脂スタンパ13を用いてアクリル系2P材料14にUV照射を伴うインプリントを行う(図4(d)参照)。これにより、2P材料14に2Pパターン14aが形成される。形成された2Pパターン14aをマスクとして磁性層15をイオンミリング加工する。これにより、磁性パターン15aが形成された磁気ディスク17aが得られた(図4(e)、(f)参照)。なお、磁性体パターン15a上には保護膜(図示せず)を塗布した。上述の説明からわかるように、磁性パターン15aは、図8(a)、8(b)、8(c)に示すように、ドット22およびポストパターン32に対応するドットおよびポストパターンを有することになる。
【0054】
次に、このように形成された磁気ディスク16aを図6に示すように磁気記録再生装置に組み込み、プリアンブル信号をリード幅75nmの磁気ヘッドで、半径20mmにおいて読み取ったところ、図9(a)に示すような、信号波形の形状が一定で、タイミングおよび信号強度ピークやそのピーク位置が均一な信号が得られた。
【0055】
また、プリアンブル部の他に、円周方向対して2種の角度成分からなるストライプ状の位相差型のバースト部にも図8(a)、8(b)、8(c)に示すドット22およびポストパターン32に対応するドットおよびポストパターンを有する磁性パターンを形成した磁気ディスクを形成する。そして、この磁気ディスクを磁気記録再生装置に組み込み、バースト部からの位相差型のサーボ信号を読み取った。この位相差型のサーボ信号からも良好に位置情報(位相信号)を得ることができた。
【0056】
(比較例)
実施例と同様に、但しプリアンブルパターンにおける電子線描画は14周回のうち3周を特別な照射時間にすることなく、つまり、ポストパターンを設けないように描画して、レジスト4にガイドパターン30の潜像を形成する。その後、レジスト4を、現像液によって現像し、レジスト原盤となるレジストパターンを形成する(図2(c)参照)。これ以降は、実施例と同じ工程を用いて、比較例の磁気ディスクを形成する。なお、磁性体パターン上には実施例と同様に、保護膜を塗布した。
【0057】
この比較例の磁気ディスクのプリアンブル部の上面図を図10(a)乃至図10(c)に示す。図10(a)は内周部分を示し、図10(b)は中周部分を示し、図10(c)は外周部分を示す。この比較例の磁気ディスクのプリアンブル部の内周部分および外周部分においては、実施例の場合と異なり、ドット22は、プリアンブル部のガイドライン30のエッジ30aの一辺に沿うように形成されていなかった。
【0058】
さらに比較例の磁気ディスクを図6に示す磁気記録再生装置に組み込み、プリアンブル信号をリード幅75nmのヘッドで、半径20mmにおいて読み取った。すると、図9(b)に示すように、各パターンから得られる信号波形の形状が一定でなく、信号強度ピークやそのピーク位置が不均一な信号が検出された。そのためタイミングも良好に取得できず、プリアンブルとしての同期信号を得ることができなかった。
【0059】
第1実施形態および実施例では、主にプリアンブル部について述べたが、位相差型のバーストに適用しても構わないし、ABCD型のバーストに適用しても構わない。また、クロストラック方向のパターンに適用しても、ダウントラック方向のパターンに適用しても構わない。自己組織化材料はPS−b−PDMSの他、PS‐b‐PMMA(ポリスチレン‐ブロック‐ポリメチルメタクリレート)やPS‐b‐PEO(ポリスチレン‐ブロック‐ポリエチレンオキシド)などを用いても良い。自己組織化材料を整列させるために設けたポストパターンは、ケミカルに形成され、そこにトラップされた自己組織化材料ドット自体が他の自己組織化材料を整列させるために働くようにしても良い。また、ポストパターンの大きさは半径位置やパターン種によって変えても構わない。
【0060】
以上説明したように、第1および第2実施形態ならびに実施例によれば、プリアンブルパターンでの同期取得または位相差型のバーストにおける位相差検出が良好に行えるビットパターンドメディア型の磁気ディスクを得ることができる。また、このような磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置を得ることができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 電子線描画装置の電子線放出部
2 基板
2a ガイドパターン原盤
3 導電層
4 レジスト(感光性樹脂)
4a レジストパターン
5 ファザースタンパ
6 マザースタンパ
8 樹脂スタンパ
9 2P材料層
9a 2Pパターン
9b ドットパターン
10 Si基板
10a Siマスターモールド
11 Niファザースタンパ
12 Niマザースタンパ
13 樹脂スタンパ
14 2P材料
14a 2Pパターン
15 磁性層
16 磁気ディスク基板
17 磁気ディスク基板
17a 磁気ディスク
22 ドット
30 ガイド
30a ガイドのエッジ
32 ポストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータ領域であって各データ領域が、周方向に延在するようにそれぞれが配列された複数のトラックを有する、複数のデータ領域と、
前記複数のデータ領域の間に半径方向に延在するように設けられたサーボ領域であって、それぞれが前記半径方向に延在する複数のガイドパターンと、隣接する前記ガイドパターン間に設けられ前記半径方向に沿って配列されたポストパターンと、前記隣接するガイドパターンの少なくとも一方の側に前記半径方向に沿って配列された少なくとも1列の複数のドットと、を有するサーボ領域と、
を備えていることを特徴とする磁気ディスク。
【請求項2】
前記複数のドットが配列された側のガイドパターンから前記ポストパターンまでの距離は、ディスクの半径によらず一定であることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク。
【請求項3】
前記ドットのサイズは、前記ポストパターンのサイズよりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の磁気ディスク。
【請求項4】
前記サーボ領域はプリアンブル部を有し、前記ガイドパターンおよび前記ポストパターンは前記プリアンブル部に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項5】
前記サーボ領域はバースト部を有し、前記ガイドパターンおよび前記ポストパターンは前記バースト部に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項6】
前記ポストパターンは非磁性体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気ディスク。
【請求項7】
前記非磁性体は、ガラス、SiO、SOG、Cのいずれかであることを特徴とする請求項6記載の磁気ディスク。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の磁気ディスクが搭載されたことを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−73633(P2013−73633A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209394(P2011−209394)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「超高密度ナノビット磁気記録技術(グリーンITプロジェクト)産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】