説明

磁気ディスク装置およびスライダ制御方法

【課題】磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去すること
【解決手段】HSA6は、VCM5に供給される駆動電流に応じて、軸受部4を回転中心としてスライダ2を移動する。スライダ2はHSA6の回転により矢印Aの範囲で移動し、VCM5自身も、軸受部4を回転中心として矢印Bの範囲で回転する。VCM5は内周ストッパ201又は外周ストッパ202と当たるまでの範囲で回転する。VCM5が回転することでスライダ2が所定の速度又は加速度で内周又は外周方向に移動する。VCM5が回転し、スライダ2と磁気ディスク1の記録面とが干渉しない位置で停止することでスライダ2の付着物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リードヘッド又はライトヘッドを具備するスライダの移動を制御する磁気ディスク装置およびスライダ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録媒体である磁気ディスクの高記録密度化や高トラック密度化による、磁気ディスク装置の高容量化が進行している。磁気ディスクの高記録密度化や高トラック密度化に伴って、情報のリード又はライトの制御に対して、これまで以上の精度や信頼性の向上が望まれる。
【0003】
また磁気ディスク上に塗布された潤滑油等の付着物がスライダ(ヘッド)に付着することで、スライダの浮上特性や情報のリード特性又はライト特性が変化することが知られている。つまりスライダへの付着物の付着により、高容量化された磁気ディスクに対する情報のリード又はライトの制御の精度や信頼性が悪化する。そこで、スライダに付着した付着物を除去するための手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−213356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが従来の手法では、磁気ディスクの記録面上で付着物を除去する動作が実行されていたので、除去された付着物は記録面上に落とされていた。記録面上に落とされた付着物により、磁気ディスクに対する情報のリード特性又はライト特性が悪化することがあった。
【0006】
また従来の他の手法では、スライダに埋め込まれた加熱素子が発する熱によって付着物が除去されていた。この手法は、加熱素子からの熱により付着物を溶融し、又は、付着物の粘度を下げ、磁気ディスクの回転による気流で付着物を飛ばす、又は、付着物を他の部材へ転写していた。
【0007】
従って従来は、磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去することができなかった。
そこで、本発明は上述した課題を解決するために、磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去する磁気ディスク装置およびスライダ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態は上述した課題を解決するため、情報を記録するための記録面を有する記録媒体と、前記記録媒体に対して情報のリード又はライトするためのヘッドを搭載するスライダと、前記スライダに付着した付着物を除去するために、前記スライダを所定の速度又は加速度で移動させた後、前記スライダと前記記録媒体の記録面とが干渉しない位置で前記スライダが停止するように前記スライダの移動を制御する制御部と、を具備する磁気ディスク装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る磁気ディスク装置の構成を示すブロック図。
【図2】HDDに備えられた機構構造部を概略的に説明するための概略図。
【図3】スライダに付着物が付着した状態を模式的に示す模式図。
【図4】スライダに付着した付着物を除去する動作の第1の例を説明するための概略図。
【図5】スライダに付着した付着物を除去する動作の第2の例を説明するための概略図。
【図6】スライダに付着した付着物を除去する動作の第3の例を説明するための概略図。
【図7】スライダに付着した付着物を除去する除去動作を行うタイミングを説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る磁気ディスク装置(以下、HDDとも称する)10の構成を示すブロック図である。このHDD10は、ホストシステム100と通信する電子機器である。
【0011】
本実施形態に係るHDD10は、磁気ディスク1、スライダ2、アーム3、軸受部4、VCM(ボイスコイルモータ)5、SPM(スピンドルモータ)7などからなる機構構造部を有する。スライダ2、アーム3、軸受部4、及びVCM5は、一体となってHSA(ヘッドスタックアッセンブリ)6と称される構造体を形成する。またHDD10は、モータドライバ21、ヘッドIC22、リードライトチャネルIC(以下、RDCとも称する)31、CPU41、RAM42、NVRAM43、HDC(Hard Disc Controller)50などの回路系の機能ブロックを備える。
【0012】
本実施形態に係るHDD10は、VCM5に駆動電流を供給することで、軸受部4を回転中心としてHSA6を回転させる。HSA6の回転角度は、所定範囲に制限される。スライダ2の一部には付着物が付着することがある。HDD10は、VCM5への駆動電流の供給によりHSA6を回転させ、この付着物をスライダ2から除去する。付着物は、磁気ディスク上に塗布された潤滑油等であることが多い。
【0013】
磁気ディスク1は、SPM7に固定され、このSPM7が駆動することで回転する。磁気ディスク1の少なくとも1面は磁気的に情報が記録される記録面である。
スライダ2は、磁気ディスク1の記録面に対応するようにアーム3の一端に備えられる。スライダ2は、磁気ディスク1の記録面に磁気記録された信号を読み取り、読み取った信号をヘッドIC22へ出力する。またスライダ2は、ヘッドIC22から入力されたライト信号(ライト電流)に応じて、磁気ディスク1の記録面に磁気記録する。スライダ2は、磁気ディスク1の記録面上を滑空する。
【0014】
アーム3は、一端にスライダ2を備えている。アーム3は、VCM5への駆動電流の供給に応じて、軸受部4を回転中心として回転し、スライダ2を磁気ディスク1の記録面上の半径方向に移動させる。
【0015】
軸受部4は、HDD10の筐体に固定される軸(不図示)を挿入されて、HSA6の回転中心となる。
VCM5は、モータドライバ21から供給される駆動信号(電流)に応じて駆動し、アーム3を回転させる。
HSA6は、スライダ2、アーム3、軸受部4、及びVCM5が一体となって形成された構造体である。HSA6は、VCM5への駆動電流の供給に応じて、軸受部4を回転中心として、アーム3の一端に備えられたスライダ2を移動する。HSA6の回転角度は所定範囲に制限される。
【0016】
SPM7は、モータドライバ21から供給される駆動信号(電流)に応じて駆動し、磁気ディスク1を回転させる。
モータドライバ21は、CPU41からの制御に基づいて、VCM5及びSPM7を駆動するための駆動信号をVCM5及びSPM7それぞれへ供給する。
ヘッドIC22は、スライダ2に備えられたリードヘッド(不図示)から入力された信号を増幅し、この増幅した信号をリード情報としてRDC31へ出力する。またヘッドIC22は、RDC31から入力された記録情報に応じたライト信号(ライト電流)をスライダ2に備えられたライトヘッド(不図示)へ出力する。
【0017】
RDC31は、ヘッドIC22から入力されたリード情報に所定の処理を施して復号化し、この復号化した情報を転送情報としてHDC50へ出力する。またRDC31は、HDC50から入力された記録すべき情報に所定の処理を施して符号化し、この符号化した情報を記録情報としてヘッドIC22へ出力する。RDC31は、符号化及び復号化のための所定の処理において、RAM42をワークメモリとして利用する。
【0018】
CPU41は、NVRAM43に記憶されたプログラムに従って、HDD10に備えられた各ブロックを制御する。CPU41は、VCM5及びSPM7の回転動作を制御するプロセッサである。CPU41は、プログラムの実行においてRAM42をワークメモリとして利用する。本実施形態ではCPU41は、スライダ2に付着した付着物を除去すべく、磁気ディスク1の記録面と干渉しない位置までVCM5が回転するように制御する。この制御は、所定のタイミングをトリガとして実行される。
【0019】
RAM42は、RDC31、CPU41及びHDC50のワークメモリである。RAM42には揮発性メモリであるDRAMを適用することができる。
NVRAM43は、CPU41が実行するプログラムを記憶する不揮発性メモリである。NVRAM43に記憶されるプログラムは更新可能である。
HDC50は、ホストシステム100との間で情報を送信及び受信する通信処理を実行する。HDC50は、RDC31から入力された転送情報に所定の処理を施して符号化し、この符号化した情報を送信情報としてホストシステム100へ送信する。またHDC50は、ホストシステム100から受信した受信情報に所定の処理を施して復号化し、この復号化した情報を記録すべき情報としてRDC31へ出力する。例えばHDC50は、ホストシステム100との間でSATA(Serial Advanced Technology Attachment)規格に準拠した通信処理を実行する。
【0020】
このような構成により、本実施形態に係るHDD10に備えられた複数のブロックは、スライダ2に付着した付着物を除去する。従って本実施形態に係るHDD10によれば、磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。これらの処理は、主にCPU41が複数の処理を実行することで実現される。
【0021】
次に、図2を用いて、HDD10に備えられた機構構造部を概略的に説明する。
図2は、HDD10に備えられた機構構造部を概略的に説明するための概略図である。
前述したようにHSA6は、軸受部4を回転中心として、アーム3の一端に備えられたスライダ2を移動する。スライダ2はHSA6の回転により矢印Aの範囲で移動する。スライダ2は、この範囲内の一部の範囲では磁気ディスク1の記録面上を滑空するように移動するが、他の範囲では磁気ディスク1の記録面とは干渉しない位置で移動する。
【0022】
また前述したようにVCM5は、供給される駆動電流に応じて軸受部4を回転中心として、アーム3及び、アーム3の一端に備えられたスライダ2を回転させる。またVCM5自身も、軸受部4を回転中心として矢印Bの範囲で回転する。換言すると、VCM5の移動範囲は、矢印Bで示される範囲に規制される。
【0023】
スライダ2が磁気ディスク1の内周に移動した状態では、HSA6は一点鎖線で示された位置に移動する。このときVCM5の一部が内周ストッパ201に当たることで、VCM5の移動範囲が規制される。またこのとき、スライダ2は、磁気ディスク1の内周に設けられたSPM7の位置であって、磁気ディスク1の記録面とは干渉しない位置に移動している。
【0024】
またスライダ2が磁気ディスク1の外周に移動した状態では、HSA6は点線で示された位置に移動する。このときVCM5の一部が外周ストッパ202に当たることで、VCM5の移動範囲が規制される。またこのとき、スライダ2は、磁気ディスク1の外周の位置であって、磁気ディスク1の記録面とは干渉しない位置に移動している。
【0025】
なお、スライダ2が磁気ディスク1の記録面の位置で移動している範囲では、VCM5の一部が、内周ストッパ201又は外周ストッパ202に当たることはない。
次に、図3(a),(b)を用いて、スライダ2に付着物300,310,320が付着した状態を説明する。
図3は、スライダ2に付着物300,310,320が付着した状態を模式的に示す模式図である。
図3(a)に示す模式図のように、アーム3の一端にはスライダ2が備えられている。スライダ2の複数の面のうち磁気ディスク1の記録面と対向する面はABS面と称される。ABS面に付着物300が付着すると、同じくABS面に設けられたリードヘッド(不図示)又はライトヘッド(不図示)と干渉することがある。この場合、磁気ディスク1に対する情報のリード特性又はライト特性が変化する。またABS面には、スライダ2が磁気ディスク1の記録面上で、当該記録面から所定量の浮上量で滑空するための溝構造が成形されている。ABS面に付着した付着物300により、スライダ2の浮上特性が変化することもある。
【0026】
また図3(b)に示す模式図のように、スライダ2の側面に付着物310が付着することもある。さらにスライダ2の端子面に付着物320が付着することもある。
このように付着物はスライダ2の様々な箇所に付着する可能性があるが、付着箇所には傾向がある。磁気ディスク1が回転している状態では、磁気ディスク1の記録面とスライダ2のABS面との間に、ディスク回転方向に沿った対流が発生する。またスライダ2のABS面から端子面又は側面に向かう対流も発生する。従って傾向的には、スライダ2のディスク回転方向の下流側の位置に付着物が付着する。
【0027】
次に、図4を用いて、スライダ2に付着した付着物を除去する動作の第1の例を説明する。
図4は、スライダ2に付着した付着物を除去する動作の第1の例を説明するための概略図である。
この図4に示した概略図は、スライダ2に付着した付着物を磁気ディスク1の外周側の領域に放出することで、当該付着物を除去する動作を示すものである。
この例では、スライダ2に付着した付着物を除去するために、スライダ2を磁気ディスク1の外周方向に移動する極性の駆動電流がVCM5に対して供給される。スライダ2が所定の速度又は加速度で外周方向に移動すると共に、VCM5は軸受部4を中心として磁気ディスク1に近づく方向に回転する。VCM5が所定の位置まで回転すると、VCM5の一部は外周ストッパ202に当たる。つまりVCM5の回転は、VCM5の一部が外周ストッパ202に当たる位置で停止する。
【0028】
VCM5の回転が停止すると共に、スライダ2の移動も停止する。このときスライダ2に付着していた付着物は、スライダ2が停止するまでのスライダ2の移動に係る慣性により、磁気ディスク1の外周方向への所定の速度又は加速度を維持する。換言すると、スライダ2が移動している状態でVCM5が外周ストッパ202に当たってスライダ2が停止すると、スライダ2にはこれまでとは逆向きの力が加わる。一方、付着物はスライダ2が移動していた方向の力を維持したままとなる。
【0029】
そして、スライダ2の移動に係る慣性(又は力)によって、スライダ2に固定されていない付着物は、磁気ディスク1の外周に放出される。こうしてスライダ2に付着した付着物は除去される。この動作におけるスライダ2の移動に係る速度又は加速度は、スライダ2から付着物を放出するのに充分な速度又は加速度である必要がある。
【0030】
このような動作により、スライダ2に付着した付着物は、磁気ディスク1の記録面と干渉しない領域に放出される。従って本実施形態に係るHDD10によれば、磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。
【0031】
次に、図5を用いて、スライダ2に付着した付着物を除去する動作の第2の例を説明する。
図5は、スライダ2に付着した付着物を除去する動作の第2の例を説明するための概略図である。
この図5に示した概略図は、スライダ2に付着した付着物を磁気ディスク1の内周側の領域に放出することで、当該付着物を除去する動作を示すものである。
この例では、スライダ2に付着した付着物を除去するために、スライダ2を磁気ディスク1の内周方向に移動する極性の駆動電流がVCM5に対して供給される。スライダ2が所定の速度又は加速度で内周方向に移動すると共に、VCM5は軸受部4を中心として磁気ディスク1から遠ざかる方向に回転する。VCM5が所定の位置まで回転すると、VCM5の一部は内周ストッパ201に当たる。つまりVCM5の回転は、VCM5の一部が内周ストッパ201に当たる位置で停止する。
【0032】
VCM5の回転が停止すると共に、スライダ2の移動も停止する。このときスライダ2に付着していた付着物は、スライダ2が停止するまでのスライダ2の移動に係る慣性により、磁気ディスク1の内周方向への所定の速度又は加速度を維持する。換言すると、スライダ2が移動している状態でVCM5が内周ストッパ201に当たってスライダ2が停止すると、スライダ2にはこれまでとは逆向きの力が加わる。一方、付着物はスライダ2が移動していた方向の力を維持したままとなる。
【0033】
そして、スライダ2の移動に係る慣性(又は力)によって、スライダ2に固定されていない付着物は、磁気ディスク1の内周に放出される。こうしてスライダ2に付着した付着物は除去される。この動作におけるスライダ2の移動に係る速度又は加速度は、スライダ2から付着物を放出するのに充分な速度又は加速度である必要がある。なお、VCMの一部が内周ストッパ201に当たる位置において、スライダ2の磁気ディスク1に対する位置よりも内周側は記録面でないことが一般的である。
【0034】
このような動作により、スライダ2に付着した付着物は、磁気ディスク1の記録面と干渉しない領域に放出される。従って本実施形態に係るHDD10によれば、磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。
【0035】
次に、図6を用いて、スライダ2に付着した付着物を除去する動作の第3の例を説明する。
図6は、スライダ2に付着した付着物を除去する動作の第3の例を説明するための概略図である。
この図6に示した概略図は、スライダ2に付着した付着物を磁気ディスク1の外周側の領域に放出することで、当該付着物を除去する動作を示すものである。付着物を磁気ディスク1の外周側の領域に放出する点は、図4を用いて説明した第1の例と共通であるが、付着物を除去するためのスライダ2の停止位置において第1の例とは異なる。またこの概念図では、付着物を磁気ディスク1の外周側の領域に放出する例を説明するが、磁気ディスク1の内周側の領域に放出する例に適用することも可能である。
【0036】
この例では、スライダ2に付着した付着物を除去するために、スライダ2を磁気ディスク1の外周方向に移動する極性の駆動電流がVCM5に対して供給される。スライダ2が所定の速度又は加速度で外周方向に移動すると共に、VCM5は軸受部4を中心として磁気ディスク1に近づく方向に回転する。VCM5が所定の位置まで回転すると、VCM5への駆動電流の供給が停止されて、VCM5は停止する。この位置では、VCM5の一部は外周ストッパ202に当たっていない。
【0037】
VCM5の回転が停止すると共に、スライダ2の移動も停止する。このときスライダ2に付着していた付着物は、スライダ2が停止するまでのスライダ2の移動に係る慣性により、磁気ディスク1の外周方向への所定の速度又は加速度を維持する。換言すると、スライダ2が移動している状態でVCM5が外周ストッパ202に当たる前にスライダ2が停止すると、スライダ2にはこれまでとは逆向きの力が加わる。一方、付着物はスライダ2が移動していた方向の力を維持したままとなる。
【0038】
そして、スライダ2の移動に係る慣性(又は力)によって、スライダ2に固定されていない付着物は、磁気ディスク1の外周に放出される。こうしてスライダ2に付着した付着物は除去される。この動作におけるスライダ2の移動に係る速度又は加速度は、スライダ2から付着物を放出するのに充分な速度又は加速度である必要がある。
【0039】
このような動作により、スライダ2に付着した付着物は、磁気ディスク1の記録面と干渉しない領域に放出される。従って本実施形態に係るHDD10によれば、磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。
【0040】
次に、図7を用いて、スライダ2に付着した付着物を除去する除去動作を行うタイミングを説明する。
図7は、スライダ2に付着した付着物を除去する除去動作を行うタイミングを説明するためのフローチャートである。
図7に示したフローチャートに従った処理は、図1に示したCPU41で実行されるプログラムによって実行されるものである。
まずCPU41は、現在のHDD10の状態又は、発生したイベントが、付着物の除去動作の実行条件に適合するか否かを判断する(S701)。実行条件に適合する場合(S701のYes)、除去動作を実行する(S702)。実行条件に適合しない場合(S701のNo)、除去動作を実行しない(S703)。除去動作を実行する場合、実行しない場合の何れの場合でも、この処理は終了する。すなわちこの処理は、除去動作の実行判定処理である。
【0041】
付着物の除去動作の実行条件を以下に示す。これらの実行条件は一例であって、これらに限定されるものではない。
(1)SMART情報からエラー情報を受信
この条件は、SMART情報にエラー情報が記録されていることが検出された場合である。このエラーの発生原因がスライダ2に付着物が付着したことに因ることが想定される。
【0042】
(2)スライダの浮上量異常を検知
スライダ2に備えられたリードヘッド(不図示)によって読み出されたサーボ信号や、読み出された信号のレベルなどの情報に基づいて、スライダ2の浮上量を測定することがある。この条件は、浮上量が異常値であることが検出された場合である。この浮上量の異常の発生原因がスライダ2に付着物が付着したことに因ることが想定される。浮上量の測定は、専用の処理として実行される場合、磁気ディスク1に対する情報のリード又はライトの処理中に実行される場合など様々な実施形態が適用可能である。
【0043】
(3)リードエラー又はライトエラーを検知
この条件は、磁気ディスクに対する情報のリード又はライトの処理中にリードエラー又はライトエラーが検出された場合である。このエラーの発生原因がスライダ2に付着物が付着したことに因ることが想定される。この条件の場合、除去動作は、リードエラー又はライトエラーを検出したことに伴う、リトライ処理の一部として実行されてもよい。
【0044】
(4)スライダのロード又はアンロードを実行
この条件は、スライダ2のロード又はアンロードの動作の実行前又は実行後の場合である。
(5)所定時間ごと
この条件は、CPU41によって所定時間がカウントされた場合である。CPU41は所定周波数のクロック信号に基づいて、所定時間の間隔をカウントすることが可能である。
【0045】
(6)供給される電源のオン又はオフ
この条件は、HDD10への電源のオンの後又はオフの前の場合である。
このように様々な実行条件の発生タイミング又は検出タイミングで、スライダ2に付着した付着物を除去する除去動作が行われることで、好適なタイミングで、スライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、VCM5に供給される駆動電流を制御することで、スライダ2に付着した付着物を容易に除去することが可能となる。また、スライダ2と磁気ディスク1の記録面との干渉を避けた駆動電流の制御を行うことで、磁気ディスク1の記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。さらに、スライダ2に付着物が付着したことを所定条件に基づいて検出することで、好適なタイミングで、スライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。従って本実施形態に係るHDD10によれば、磁気ディスクの記録面に影響なくスライダに付着した付着物を効果的に除去することが可能となる。
【0047】
なお本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよく、さらに、異なる実施形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0048】
1…磁気ディスク、2…スライダ、3…アーム、4…軸受部、5…VCM(ボイスコイルモータ)、6…HSA(ヘッドスタックアッセンブリ)、7…SPM(スピンドルモータ)、10…HDD、21…モータドライバ、22…ヘッドIC、31…リードライトチャネルIC(RDC)、41…CPU、42…RAM、43…NVRAM、50…HDC、100…ホストシステム、201…内周ストッパ、202…外周ストッパ、300,310,320…付着物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記録するための記録面を有する記録媒体と、
前記記録媒体に対して情報のリード又はライトするためのヘッドを搭載するスライダと、
前記スライダに付着した付着物を除去するために、前記スライダを所定の速度又は加速度で移動させた後、前記スライダと前記記録媒体の記録面とが干渉しない位置で前記スライダが停止するように前記スライダの移動を制御する制御部と、
を具備する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記スライダと前記記録面の内周とが干渉しない位置で前記スライダを停止するために前記ボイスコイルモータの回転範囲を制限する内周ストッパと、
前記スライダと前記記録面の外周とが干渉しない位置で前記スライダを停止するために前記ボイスコイルモータの回転範囲を制限する外周ストッパと、
をさらに具備し、
前記制御部は、前記内周ストッパ又は前記外周ストッパに前記ボイスコイルモータの一部を当てることで、前記スライダが停止するように前記スライダの移動を制御する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記スライダを前記記録面上から所定の浮上量をもって移動するためのヘッドスタックアッセンブリに備えられ、当該ヘッドスタックアッセンブリを所定の軸を中心として回転させるためのボイスコイルモータをさらに具備し、
前記制御部は、電流を前記ボイスコイルモータに電流を供給して前記スライダが所定の速度又は加速度で移動するように前記スライダの移動を制御する請求項2記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、SMART情報からエラー情報を受信、前記スライダの浮上量異常を検知、前記記録媒体に対する情報のリード又はライトにおいてリードエラー又はライトエラーを検知、前記スライダのロード又はアンロードを実行、所定時間ごと、又は、電源のオン又はオフ、の何れか一つを条件として、前記スライダに付着した付着物を除去するために、前記スライダを所定の速度又は加速度で移動させた後、前記スライダと前記記録媒体の記録面とが干渉しない位置で停止するように前記スライダの移動を制御する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
情報を記録するための記録面を有する記録媒体と、
前記記録媒体に対して情報のリード又はライトするためのヘッドを搭載するスライダと、
を具備する磁気ディスク装置で実行されるスライダ制御方法であって、
前記スライダに付着した付着物を除去するために、前記スライダを所定の速度又は加速度で移動
させた後、前記スライダと前記記録媒体の記録面とが干渉しない位置で停止するように前記スライダの移動を制御するスライダ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−33236(P2012−33236A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172752(P2010−172752)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)