説明

磁気ヘッドおよびその製造方法

【課題】 ギャップ部で割れにくい磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】 略コ字状の巻線窓17のスペースを有するブロック11に第一の磁性薄膜12をスパッタするか、第一の磁性薄膜12をスパッタしたガラスを熱変形させて巻線窓17を形成するかして、この脚11a、11bを非磁性体18でつなぎ、その上に磁気ギャップ14を被着し、さらに第二の磁性薄膜15を被着して磁気ヘッドを完成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は強磁性体ブロックあるいは非磁性体ブロックに被着した磁性薄膜とその磁性薄膜に被着した磁性薄膜とからなる磁気コアを有する磁気ヘッドに係り、溶着工程が不要で製造し易く、インピーダンスの小さな磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録分野において高記録密度化、高性能化、高速化、低コスト化の要請が高まり、磁気ヘッドの改良が進められている。記録密度の向上のためにトラック幅及びギャップ長を小さくするという寸法的な面からのアプローチや、磁気媒体の高保磁力化に対応した高飽和磁束密度材、高感度化に対応した高透磁率材の採用など性能的な面からのアプローチと高速性のための低インピーダンス化のアプローチ、低コストの要求に対応した生産方式の改善などがそれである。
【0003】一例として、バルク型磁気ヘッドについては、磁気媒体の改良による高保磁力化に伴い、従来から磁気ヘッドに使われていたフェライトなど強磁性金属酸化物は飽和磁束密度が低いためにフェライト単独では磁気ギャップ周辺部が飽和して高保磁力媒体に記録できず、記録を可能にするためには高い飽和磁束密度を有する金属合金の磁性薄膜を磁気ギャップ周辺部に配して、所謂メタルインギャップ(以下MIGと称す)ヘッドとして強磁性金属酸化物と金属合金の磁性薄膜との組合せで使用されている。この磁気ヘッドを図19を参照して説明すると、一対のフェライト等の磁性体ブロック310に巻線用スペースとして凹部320が形成され、この凹部320形成面側のギャップ形成面330にセンダスト等の磁性薄膜340が被着されて磁気コア半体321が形成されている。磁性薄膜340の異方性のために形成するスパッタの被着方向によってこの磁性薄膜340の磁気特性が異なり、特性の良好な部分とそうでない部分とができる。この磁気コア半体321の一対がギャップとなる非磁性薄膜350を介して突き合わされ、ボンディングガラス360で溶着一体化され磁気ヘッドが構成される。
【0004】また、高速性を重視し、低インピーダンスを追求した薄膜磁気ヘッドにおいては、図20に示すように、セラミック等の非磁性体基板420の上には磁性薄膜が被着され、下部磁気コア450を形成しており、その下部磁気コア450の先端部分には磁気ギャップ470となるSiO2等の非磁性層が被着されている。下部磁気コア450後部には磁気ポール490を取り巻いて導電材のコイル440が被着形成され端子480につながっている。導電材間の凹凸は非磁性絶縁材で埋められ平坦に整形されている。コイルの間隙に凹凸があるとその上に形成される磁性薄膜の性能を大きく劣化させるので平坦性は非常に重要である。そのコイル440上の平坦面及び磁気ポール490と磁気ギャップ470の部分には上部磁気コア460が被着され、もう一方の磁気コアを形成し、磁気ポール490で下部磁気コア450と磁気的につながり閉磁路を形成し磁気ヘッドを構成する。薄膜磁気ヘッドの上部磁気コア460、下部磁気コア450はメッキ工程で製造されるため、コア材料はメッキで形成できるパーマロイ材である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】先ずMIGヘッドについては、フェライト等強磁性金属酸化物と金属合金よりなる磁性薄膜ではその熱膨張係数が大きく異なるため、フェライトに磁性薄膜を被着したコア半体をガラスボンディングで溶着一体化する時に昇温、降温工程によって磁性薄膜のフェライトへの被着強度が弱くなったり、熱膨張係数の差による磁性薄膜にかかるストレスによって磁性薄膜の磁気特性が劣化したりして好ましくなかった。それを避けるため、低い温度で作業できる低融点ガラスが使用されているが、低融点ガラスは強度が弱いという欠点があり、一対のコア半体を低融点ガラスで溶着一体化した従来の磁気ヘッドは外力が加わった場合、構造的中心になるギャップ部のコア半体を接合しているボンディングガラスの部分あるいは磁性薄膜とフェライトの境界から割れるという問題があった。
【0006】また、MIGヘッドはフェライト等強磁性金属酸化物に磁性薄膜を被着させて磁気コア半体を形成していたため、一対のコア半体を接合した磁気ヘッドは強磁性金属酸化物のボリュームが大きいためにインピーダンスが大きく、高速性を実現するために要求される磁気ヘッドのインピーダンスとしては大き過ぎるという問題があった。
【0007】また製造工程中に、コア半体を突き合わせて溶着する時にコア半体がずれて溶着されたり、コア半体を突き合わせる時にゴミを挟み込んでギャップ長がバラついたり、巻線用溝加工の精度によっては完成した磁気ヘッドのギャップディプス寸法がばらついたりして二つのコア半体を合わせて一体化する作業のために磁気ヘッドの性能を劣化させたり、製造歩留まりを悪化させることが度々あった。
【0008】次に薄膜磁気ヘッドについて述べると、メッキ工程、蒸着工程、スパッタ工程など多くの成膜工程やその薄膜の成形加工にフォトリソグラフィ工程が必要で工程数が多くなるため製造歩留まりが悪くなるという問題があった。特にコイルを薄膜で形成することに関して、フォトリソグラフィで形成したコイルの間隙の凹凸がその上に形成する磁性薄膜(図18では上部磁気コア460)の性能を大きく劣化させるので凹凸を無くすために大きな工数を必要としていた。また、従来、平坦を出すためにポリイミド樹脂など耐熱樹脂が使われていたが、樹脂で凹凸を埋めた場合には高温になると耐熱樹脂と言えども樹脂が変形したり蒸散したりするので、被着した磁性薄膜をアニールして、磁性薄膜をさらに高透磁率化することは不可能であった。
【0009】また、薄膜磁気ヘッドの磁気コアはメッキで作られるためパーマロイ材であり、飽和磁束密度や透磁率が金属磁性薄膜材料の中では小さくオーバーライト特性がマイナス25デシベル〜マイナス26デシベルしかとれず残留ノイズによる機器性能の低下が問題になっていた。また、成膜工程やフォトリソグラフィには半導体関連設備と同様に大掛りな、高価な設備が必要なことから薄膜磁気ヘッドのコストは高くなっていた。以上のように従来のMIGヘッドや薄膜ヘッドは種々の問題を抱えており、加速度的に高まる高密度化、高性能化、低コスト化の要求を同時に満足することができない状況にあった。そこで本発明はこのような実情に鑑み提案されたものであり、以上を改善した磁気ヘッド及び磁気ヘッドの製造方法を提供するを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の課題を解決するために、第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、第一の脚の上面に形成される第一の磁性薄膜と、前記磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に連なって形成される第二の磁性薄膜と、からなる磁気ヘッドを提供する。また、一側周面を媒体摺動面とする略ロ字状の磁気コアを有する磁気ヘッドであって、この媒体摺動面を形成する磁気コア部分は磁性フェライトからなり、その他の磁気コア部分の全部又は一部は磁性薄膜からなる磁気ヘッドを提供する。
【0011】また、第一の脚と第二の脚により凹部を形成するガラスブロックと、この第一の脚の上面と第二の脚の先端部及びガラスブロックの凹部内面に連なって形成される第一の磁性薄膜と、前記ガラスブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に連なって形成される第二の磁性薄膜と、からなる磁気ヘッドを提供する。また、第一の脚と第二の脚により凹部が形成された磁性体ブロックの第一の脚の上面に第一の磁性薄膜を被着させる工程と前記凹部内面で巻線窓スペースを有して前記第一の脚と第二の脚を非磁性体でつなぐ工程と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜を被着させる工程と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に第二の磁性薄膜を形成する工程とからなる磁気ヘッドの製造方法を提供する。
【0012】また、前記第一の脚と前記第二の脚を非磁性体でつなぐ前記工程が、前記磁性体ブロックを、凹部側を下に基台に載置し、巻線窓スペースを有して該基台上に低粘度の非磁性体を展着して固化し、前記第一の脚と前記第二の脚とをつなぐ前記工程とを有する磁気ヘッドの製造方法を提供する。また、前記第一の脚と前記第二の脚を非磁性体でつなぐ前記工程が、前記基台に低融点ガラスのブロックを接合し、該低融点ガラスを所定厚みまで研磨した後に第一の脚と第二の脚とを持つ磁性体ブロックと合体させて該磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面で前記第一の脚と第二の脚とを該低融点ガラスでつなぐ工程とを有する磁気ヘッドの製造方法を提供する。
【0013】また、ガラス基板上に磁性薄膜を被着する工程と、該ガラス基板を半溶融状態になる温度に加熱し、磁性薄膜を被着したガラス基板を凸型ブロックで押し半溶融状態のガラス及び磁性薄膜をこの型に倣わせ巻線窓形状をした凹部を形成する工程と、この凹部内面で巻線窓スペースを有して前記第一の脚と第二の脚を非磁性体でつなぐ工程と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜を被着させる工程と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び第二の脚の先端部で第二の磁性薄膜とを形成する工程と、からなる磁気ヘッドの製造方法を提供する。また、第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと第一の脚の上面に形成される第一の磁性薄膜と、該磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面で前記第一の脚と第二の脚とをつなぐ非磁性体と、前記第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜から前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部上に連なって形成される磁性薄膜とからなり、該磁性薄膜が前記磁気ギャップのディプスエンドにおいてエーペックスの角度が広がる方向に延在する磁気ヘッドを提供する。
【0014】また、第一の脚と第二の脚により凹部を形成するガラスブロックと、この第一の脚上面と第二の脚先端部及びガラスブロックの凹部内面に連なって形成される第一の磁性薄膜と、前記ガラスブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜とこの非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部上に連なって形成される第二の磁性薄膜とからなり、該磁性薄膜が前記磁気ギャップのディプスエンドにおいてエーペックスの角度が広がる方向に延在する磁気ヘッドを提供する。また、第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、この磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、該非磁性体上に磁性薄膜で形成した主磁極とを有し、前記第1の脚が主磁極に対してリターンパスコアとなる垂直型磁気ヘッドを提供する。
【0015】また、記録用磁気ヘッドと再生用磁気ヘッドとが一体に形成された複合型磁気ヘッドであって、前記記録用磁気ヘッドは第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、第一の脚の上面に形成される第一の磁性薄膜と、前記磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面で前記第一の脚と第二の脚とをつなぐ非磁性体と、前記第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に連なって形成される第二の磁性薄膜とからなり、前記再生用磁気ヘッドは前記第二の磁性薄膜上に形成される第一の非磁性絶縁薄膜と、該非磁性絶縁薄膜上の第一の脚側に形成される磁気抵抗効果素子と該磁気抵抗効果素子からの引き出し導体と該磁気抵抗効果素子と該引き出し導体とを覆って形成される第二非磁性絶縁薄膜とこの非磁性絶縁薄膜の上に形成される第三の磁性薄膜及び保護層とからなる複合型磁気ヘッドを提供する。
【0016】また、垂直型磁気ヘッドと磁気抵抗効果型磁気ヘッドからなる複合型磁気ヘッドであって、第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、この磁性体ブロックの凹部内面で巻線窓のスペースを有して両脚をつなぐ非磁性体と、該非磁性体上に磁性薄膜で形成した主磁極を有し、前記第一の脚が主磁極に対してリターンパスコアとなる垂直型磁気ヘッドと、該主磁極上に絶縁膜を介して形成した磁気抵抗効果型ヘッドと保護層とからなる複合型磁気ヘッドを提供する。また、前記第一,第二,第三,主磁極の磁性薄膜の少なくとも一つがFeTaN合金からなる磁気ヘッドを提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例の磁気ヘッドの斜視図であって、フェライト等の磁性体ブロック11に第一の脚11aと第二の脚11bにより凹部が形成され、これら第一の脚11aと第二の脚11b及び凹部にはFeTaN等からなる第一の磁性薄膜12がスパッタ等の真空薄膜形成法により被着されており、膜厚は1μm〜10μmの範囲である。第一の脚11aと第二の脚11bの内面は巻き線で必要なスペースの巻線窓17を残して融点が300℃〜550℃の低融点ガラス18などで橋絡されている。また、第一の磁性薄膜12と第一・第二の脚11a・11bと橋絡された低融点ガラス18とからなるギャップ形成面16上には、第一の脚11a側において第一の磁性薄膜12の露出部及び近接する非磁性体上にギャップ材層となるSiO2など非磁性薄膜14が磁気ギャップ長に等しい厚さに被着され、この非磁性薄膜14を介してFeTaN等の第二の磁性薄膜15が被着され、略ロ字状の磁気ヘッドとしての磁路が形成される。
【0018】第一の脚11aと第二の脚11bにより凹部を形成している磁性体ブロック11の少なくとも第一の脚11aの上面19aに第一の磁性薄膜12が被着され巻線窓17のスペースを有してこの凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体18を接合し、そのうえに非磁性のギャップ材14と第二の磁性薄膜15をスパッタで被着させ磁路を形成するので、従来の磁気ヘッドの製造工程ように磁性体ブロックに金属合金からなる磁性薄膜を被着させた一対のコアー半体を高温にしてガラスボンデングで溶着一体化する工程が必要でなく加熱による磁性薄膜の被着強度の劣化や結晶変化、ストレスによる特性劣化が起こらないし、ガラスボンデング工程がないのでギャップ長の精度がギャップ材として被着した非磁性薄膜の厚さで決まるので精度が上がり、溶着時のコア半体の突合せズレもなくなるのでギャップデプスのバラツキも少なくなる。
【0019】図2は本発明の磁気ヘッドの一実施例の製作工程図であり、工程(a)に示すような略コ字状断面の溝を有するフェライト等の磁性体ブロック・バー21の上端面に所定角度で傾斜面19を砥石でもって加工する。つぎに、工程(b)に示すように溝内面にFeTaN等からなる第一の磁性薄膜12をスパッタにて被着させ、つぎに工程(c)に示すように巻線スペース相当の断面をもつカーボンロッド22を溝内部に挿入し、溶着炉にて低融点ガラス18を溶融し前記カーボンロッド22を包みこんで溝を埋め固化させる。つぎに、工程(d)に示すように磁気ギャップ形成面16迄平面研磨機にて研磨し磁性体ブロック11a,11bと第一の磁性薄膜12を露呈させる。次に、工程(e)に示すようにSiO2など非磁性薄膜14をギャップ形成面の少なくとも11a側の第一の磁性薄膜12と低融点ガラス18にかけて所定厚さに被着させ、つぎに工程(f)に示すように、FeTaN等からなる第二の磁性薄膜15を非磁性薄膜14を含む磁気ギャップ形成面16全体にスパッタで被着させる。つぎに、磁性体ブロックを一点鎖線部分まで平面研磨機で研削加工してから磁性体ブロックの長手方向に直角にダイサーにて所定トラック幅にスライスし、カーボンロッド片を抜いて巻線窓をあけ、工程(g)の如く磁気ヘッドを完成する。この場合カーボンロッド22を使ったのはガラスとの接着力が小さいので簡単に抜くことができるためであり、同様の作用をするものであれば材料を選ばない。
【0020】図3は本発明の別の実施例であり、工程(c)においてガラスやセラミックスなどの非磁性体13で溝に蓋をする形にして、低融点ガラス18などを接着材として非磁性体13を固定し巻線スペース17を確保し、平面研磨機でガラスやセラミックスを研磨して磁気ギャップ形成面16を作る方法であり、また図4も本発明の別の実施例であり、工程(c)において磁性薄膜12を被着した側を平面研磨機にて所定寸法まで研磨し、工程(d)において磁性体ブロックバー21をこのブロックバー21と熱膨張係数の略等しい材料からできた基台24にスミセラム(商品名)などの無機接着剤で仮止めし、基台24を下にして巻線窓17のスペースから算出された径のガラス棒25を開口穴に挿入し、工程(e)において溶着炉にて昇温し、溶融したガラスを基台24上に展着させ第一の脚11aと第二の脚11bとをガラス25で架橋する。次に工程(f)において基台24をダイサーにてスライスあるいは研削盤にて研削除去し、ガラス25を露出させ鏡面研磨をして磁気ギャップ形成面16を作成する。以下図2と同様な工程を経て磁気ヘッドを完成する。ここで使用した基台24の熱膨張係数をブロックバー21のそれに合わせたのは低融点ガラスでそれほど温度が上がらなくても、昇降温でのストレスでクラックが入ったり、磁性体の特性が劣化したりするのを避けるためである。また、こうした基台を使う方法では温度をあまり上げなくともよいポリシラザンなどのような常温で粘度の低い珪素系耐熱樹脂を使って架橋することも可能で、熱膨張を合わせる必要もなく磁性体の熱劣化の心配もいらないので大変有効である。磁気ヘッドが一個のコアー半体とそれに被着した磁性薄膜で構成され、体積的には一つの磁性体ブロックが磁気ヘッドのボリュームの大部分占めるため、比較的弱いギャップ形成部分に外力がかかることが少なくなり、製造工程中に割れなどの損傷が起こりにくくなる。また、ここで使ったFeTaN材は高い飽和磁束密度と高い透磁率の材料であり、その材料で作られた磁気ヘッドの特性はセンダストやパーマロイに比較して良好な特性を表わす。また、本案の製造法によればギャップ長やディプスの精度が良く、良好な特性が歩留まり良く製作できるので廉価なコストの磁気ヘッドが生産できる。
【0021】磁気ヘッドのインピーダンスを小さくするには磁路を形成している磁性体ブロックの占める割合を小さくすればよいが、単に小さくしただけでは磁路の磁気抵抗が大きくなり、再生感度あるいは記録感度が劣化することになる。図5は本発明の一実施例の磁気ヘッドの斜視図であって、一側周面を媒体摺動面とする略ロ字状の磁気コアを有する磁気ヘッドであり、媒体摺動面を形成する磁気コア部分31aは磁性フェライトからなる。融点が500〜700℃の高融点ガラスや、セラミックス前駆体ポリマを熱処理したアモルファス等の非磁性体32aと融点が300〜500℃の低融点ガラスやセラミックス前駆体ポリマを熱処理したアモルファス等の非磁性体32bがこの間にあって両者を隔離配置して略ロ字状の構体を形づくっている。この略ロ字状の構体は巻線で必要なスペースの巻線窓35を形成する。媒体摺動面を形成する磁気コア部分31aとこれに対向するフェライトからなる磁気コア部分31bと非磁性体32bとからなるギャップ形成面36上には、媒体摺動面を形成する磁気コア部分31a側において、近接する非磁性体32b上にギャップ38となるSiO2など非磁性薄膜が所定厚さに被着され、この非磁性薄膜を挟んでFeTaN、センダスト、等の第一の磁性薄膜39がスパッタ等で1〜10μm被着され媒体摺動面と垂直な磁気コア部分を形成している。また、媒体摺動面を形成する磁気コア部分31aとこれに対向するフェライトからなる磁気コア部分31bと非磁性体32aとからなる接合面37上にはFeTaN、センダスト等の第二の磁性薄膜40がやはり1〜10μmスパッタ等で被着され媒体摺動面と垂直な磁気コア部分を形成し、磁気ヘッドとしての磁気回路が形成されている。このように、略ロ字状の磁気回路の媒体摺動面には磁性フェライトが配されるため耐磨耗性が確保され、垂直な磁気コア部分には磁性薄膜が配されるため、磁気ヘッドのインピーダンスも小さくなる。しかも垂直な磁気回路は高透磁率、高飽和磁束密度の第一及び第二の磁性薄膜を被着してあるので磁気抵抗は十分小さくなり十分な出力が得られる。また、この発明は、磁気回路に配された磁性フェライト部分を非磁性体でつなぎ、磁性フェライトと非磁性体の面上全体に薄膜をスパッタし、磁性フェライトの上に薄膜を積層することで接合を行なうので広い面積で磁性フェライトと磁性薄膜の良好な接合が実現でき、接合による磁気抵抗の増加は起こらない。さらに、第一の磁性薄膜39と第二の磁性薄膜40には外部からの損傷を防ぐために保護膜41,42が被着させてある。これら種々の薄膜は媒体摺動面を形成する磁気コア部分31aの端部に夫々位置し、媒体摺動面31cを形成する。
【0022】図6は本発明の磁気ヘッドの実施例の製作工程図であり、工程(a)に示すような略コ字状断面の凹部を有する磁性体ブロック31の上端面に、所定角度で傾斜面を砥石で加工し、凹部の底にガラス棒32を配置し、炉に入れ工程(b)に示すように加熱溶解し凹部の底面を埋める。次に工程(c)に示すように凹部側を平面研磨機にて所定寸法まで研磨し、工程(d)において磁性体ブロック31をこのブロックと同じ熱膨張係数の略等しい材料からできた基台44にスミセラム(商品名)などの無機接着剤で仮止めし、基台44を下にして巻線窓35のスペースから算出された径のガラス棒32を開口穴に挿入し、工程(e)において炉にて昇温し、溶融したガラスを基台上に展着させ第一の磁性体脚と第二の磁性体脚とを非磁性体であるガラス32bで塞ぐ。次に工程(f)において一点鎖線にて磁性体ブロック31と基台44をダイサーあるいは研削盤にてスライス、研削除去し、非磁性体であるガラス32a及び32bを露出させ鏡面研磨をして磁気ギャップ形成面36と接合面37を形成する。次に、工程(g)に示すようにSiO2など非磁性薄膜38をギャップ形成面36の少なくとも第一の磁性体脚31a側の低融点ガラスなどの非磁性体32bにかけて所定厚さに被着させ、次に、工程(h)に示すようにFeTaN等からなる第一の磁性薄膜39を非磁性薄膜38を含む磁気ギャップ形成面36全体にスパッタで被着させる。次に、工程(i)に示すようにFeTaN等からなる第二の磁性薄膜40を接合面37に被着させる。次に工程(j)において第一の磁性薄膜39、第二の磁性薄膜40を覆って保護層41,42を被着し、一点鎖線の部分まで平面研磨機で研削加工して媒体摺動面31cを形成してから磁性フェライトブロック31の長手方向に直角にダイサーにて所定トラック幅にスライスし、工程(k)の如く磁気ヘッドを完成する。
【0023】図7は別の方法で夫々の脚を非磁性体で繋ぐ別の事例である。これらの事例は断面がコ字状フェライトブロックを基体として非磁性体でロ字状構体を作ったが、コ字状の非磁性体を基体にしてその側面にフェライトブロックを接合してもよく、またロ字状の非磁性体の両サイドにフェライトブロックを接合してもよい。また、磁性フェライトバーとガラスバーとを略四角形に組み立てガラスの融点近くまで昇温し押圧して熱圧着してスライスしても良い。
【0024】図8は本発明の磁気ヘッドの実施例の斜視図である。ガラス等の非磁性体ブロック51に第一の脚51aと第二の脚51bにより凹部が形成され、これら第一の脚51aと第二の脚51b及び凹部にはFeTaN等からなる第一の磁性薄膜52がスパッタ等の真空薄膜形成法により被着されており、膜厚は1μm〜10μmの範囲である。第一の脚51aと第二の脚51bの内面は巻き線で必要なスペースの巻線窓57を残して融点が300℃〜550℃の低融点ガラス58などで橋絡されている。また、第一の磁性薄膜52と第一・第二の脚51a・51bと橋絡された低融点ガラス58とからなるギャップ形成面56上には、第一の脚51a側において第一の磁性薄膜52の露出部及び近接する非磁性体上にギャップ材層となるSiO2など非磁性薄膜54が磁気ギャップ長に等しい厚さに被着され、この非磁性薄膜54を介してFeTaN等の第二の磁性薄膜65が被着され、略ロ字状の磁気ヘッドとしての磁路が形成されている。図9は本発明の磁気ヘッドの一実施例の製作工程図であり、工程(a)に示すような略コ字状断面の溝を有するガラスブロック等の非磁性体ブロック・バー51の上端面に所定角度で傾斜面59を砥石でもって加工する。つぎに、工程(b)に示すように溝内面にFeTaN等からなる第一の磁性薄膜52をスパッタにて被着させ、つぎに工程(c)において磁性薄膜52を被着した側を平面研磨機にて所定寸法まで研磨し、工程(d)において磁性体ブロックバー51をこのブロックバー51と熱膨張係数の略等しい材料からできた基台54にスミセラム(商品名)などの無機接着剤で仮止めし、基台54を下にして巻線窓57のスペースから算出された径のガラス棒55bを開口穴に挿入し、工程(e)において溶着炉にて昇温し、溶融したガラス55を基台54上に展着させ第一の脚51aと第二の脚51bとをガラス55で架橋する。次に工程(f)において基台54をダイサーにてスライスあるいは研削盤にて研削除去し、ガラス55を露出させ鏡面研磨をして磁気ギャップ形成面56を作成する。次に、工程(g)に示すようにSiO2など非磁性薄膜54をギャップ形成面の少なくとも51a側の第一の磁性薄膜52と低融点ガラス55にかけて所定厚さに被着させ、つぎに工程(h)に示すように、FeTaN等からなる第二の磁性薄膜65を非磁性薄膜54を含む磁気ギャップ形成面56全体にスパッタで被着させる。つぎに、磁性体ブロックを一点鎖線部分まで平面研磨機で研削加工してからガラスブロックの長手方向に直角にダイサーにて所定トラック幅にスライスし、工程(i)の如く磁気ヘッドを完成する。図10は本発明の磁気ヘッドの実施例であり、非磁性体71に被着して磁路を形成している第一の磁性薄膜73と非磁性体78に被着して磁路を形成している第二の磁性薄膜80は磁路断面とほぼ直角方向(図矢印方向)にスパッタされており、磁性薄膜73,80の磁気特性が磁気ヘッドとして最良になるように配置してある。スパッタされた磁性薄膜は磁気異方性があるために結晶方向によって磁気特性が異なり、本実施例で使用した磁性薄膜はスパッタする角度と磁性薄膜の透磁率の関係は図11に示すようであり、スパッタ角度が直角に近づくほど透磁率は大きくなっている。磁気ヘッドのように閉磁路を形成するものでは通常は部分部分で特性が異なり、磁気ヘッドの特性はその磁路の平均的特性になる。また、磁気異方性を最大限生かすには磁気ヘッドの特性に一番影響の大きい磁気ギャップ近傍74の特性を最良にするなどが従来行なわれていた方法である。MIGヘッドなどは磁性薄膜以外のフェライト部分も磁路として働くため影響は少なかったが非磁性体に磁性薄膜を被着したものでは磁路全域の特性が重要になってきており、磁路全域にわたって磁気特性を最良にすることが必要になっている。FeTaN合金では被着方向に直角に近い方向が透磁率の高い方向であり、本磁気ヘッドではこの方向に磁性薄膜が形成されている。
【0025】図12は本発明の製造工程を示す図であり、(a)に示すように、屈伏点500℃、軟化点550℃の高融点ガラス71のウエハーに約1mmおきに幅0.1〜0.3mm、深さ約0.5mmの磁性薄膜分断溝72をダイサー等で縞状に穿設し、のちに表面を鏡面加工し、洗浄して、(b)に示すようにスパッタ装置にて表面に4〜6ミクロン厚の磁性薄膜73であるFeTaN合金を被着させる。この時FeTaN合金薄膜の透磁率の異方性は磁性薄膜分断溝72に直角方向に透磁率が高くなるように配置する。従来ダイサーブレード等で溝加工した面はミクロ的にみると荒い面でありその上に被着された膜もある程度厚くならないと良好な特性が出にくいということがあったが、この場合は鏡面加工した表面にスパッタするため、合金薄膜の形成が安定に歪みなく行なわれるため非常に良い特性を表すという別の効果も生じている。次に、(c)に示すように、セラミックあるいはコバー等で形成した巻線窓75の形状をした押圧治具の型ブロック74を高融点ガラス71の磁性薄膜73を被着した方向から押しあてて加熱押圧する。この押圧治具の形状は角部をRにして極端な折れ曲がりがないほうが磁性薄膜73の磁気特性の変化が少ないし、アニールをした場合の効果が大きい。また、磁性薄膜73の割れなどの発生が起こらないため不都合が起こらない。この時の温度プロフィールの一例は図13のようであり、最高温度を480〜520℃とし1時間キープし、巻線窓形成を容易とすると共に磁性薄膜のアニールをすることがさらなる特性改善につながることになる。次に420〜460℃まで降温し、転移点付近の温度で50分間キープして基板の歪みを取り、降温する。次に、(d)に示すように巻線窓75の形状ができたコア半体を治具より取出し、再度スパッタ装置でこのFeTaN合金薄膜の上にAl2O3,SiO2,Cr,Cu等から一つあるいは複数を選んで保護膜(図示せず)として被着する。次に、(e)に示すように平面をだすために表面を研磨し、(f)に示すように低融点ガラス78を被着した基板77を重ねて、(g)に示すように炉内で昇温押圧して巻線窓75を残して磁性薄膜73を低融点ガラスで繋ぎ、(h)に示すように基板77を研削して、鏡面研磨をしてギャップ形成面76を形成する。次に図2に準じた工程を経て磁気ヘッド化する。
【0026】図14に示すのは磁気ヘッドの効率を上げるためにエーペックス(ディプスエンド近辺の三角の部分)をダブルエーペックスにした例の斜視図である。フェライト等の磁性体ブロック91に第一の脚91aと第二の脚91bにより凹部が形成され、これら第一の脚91aと第二の脚91b及び凹部にはFeTaN合金等からなる第一の磁性薄膜92がスパッタ等の真空薄膜形成法により1〜10μm被着されており、第一の脚91aと第二の脚91bの内面は巻き線で必要なスペースの巻線窓97を有して融点が300〜500℃の低融点ガラスなどの非磁性体98で繋がっている。この非磁性体98は巻線窓97に対して外側に凸形状になっており、この第一の磁性薄膜92と第一・第二の脚91a・91bと繋がった非磁性体98とからなるギャップ形成面96上には、第一の脚91a側において第一の磁性薄膜92の露出部及び近接する非磁性体98上に磁気ギャップとなるSiO2など非磁性薄膜94が所定厚さに被着され、この非磁性薄膜94を挟んでFeTaN合金等の第二の磁性薄膜95が前記変形した非磁性体98及び第二の脚91b先端部上に連なって被着され磁気ヘッドとしての磁路が形成されている。この第二の磁性薄膜95は巻線窓97に対して外側に凸形状になっている非磁性体98上に非磁性薄膜94を介して被着されているので磁気ギャップのディプスエンド99からエーペックス93が両側に広がったダブルエーペックスとなり磁路を形成する。ギャップディプスが大きい磁気ヘッドの場合は殆ど影響のなかったエーペックスの形状がHDDヘッドのようにギャップディプスの小さいヘッドの場合には、そのヘッドの記録再生効率に大きく影響し、エーペックスの角度が小さいと記録感度や再生感度が悪くなっていた。それは記録時には、図21に示すように発生する磁束の大部分は実線のループCをとるが点線Dのループをとる磁束が生じ、インダクタンスを増すが記録特性には寄与しない磁束が生じていると考えられる。また、再生時には、図22に示すように媒体からの大部分の磁束は実線のループAを通って出力に寄与するが一部は点線Bのループをとりエーペックスでショートループを作るのでコイルを巻いた磁路を通過することなく出力に寄与しない磁束ができて効率が落ちていると考えられる。しかるに、片方の磁路が直線のシングルエーペックスの磁気ヘッドではエーペックスの角度は最大90度近くまではひろげられるが強度や制作上の制約で通常では45度位になっている。
【0027】図15は図14の磁気ヘッドの製造工程図である。工程(a)に示すような略コ字状断面の溝を有するフェライト等の磁性体ブロック91の上端面に所定角度で傾斜面を砥石でもって加工する。つぎに、工程(b)に示すように溝内面にFeTaN合金等からなる第一の磁性薄膜92をスパッタにて被着させ、つぎに工程(c)において磁性薄膜92を被着した側を平面研磨機にて所定寸法まで研磨し、工程(d)において磁性体ブロック91をこのブロック91と熱膨張係数の略等しい材料からできた基台104にスミセラム(商品名)などの無機接着剤で仮止めし、基台104を下にして巻線窓97のスペースから算出された径のガラス棒105を開口穴に挿入し、工程(e)において溶着炉にて昇温し、溶融したガラスよりなる非磁性体98を基台104上に展着させ第一の脚91aと第二の脚91bとを非磁性体98で架橋する。次に工程(f)において基台104をダイサーにてスライスあるいは研削盤にて研削除去し、非磁性体98を露出させ鏡面研磨をして磁気ギャップ形成面96を作成する。次に、工程(g)に示すように磁気ギャップ形成面96を下にして溶着炉にて昇温しガラスの粘度を屈伏点の粘度(1010〜1011ポイズ)よりやや高くし30分〜1時間炉内に置くことで非磁性体98に適当な湾曲を与える。ここで湾曲したガラスからなる非磁性体98が他の部分に接触しないように注意する。次に、工程(h)に非磁性体98が外側に湾曲した磁気ギャップ形成面96にスパッタなどでSiO2など非磁性薄膜94をギャップ形成面の少なくとも第一の脚91a側の第一の磁性薄膜92と非磁性体98にかけて所定厚さに被着させ、つぎに工程(i)に示すように、FeTaN等からなる第二の磁性薄膜95を非磁性薄膜94を含む磁気ギャップ形成面96全体にスパッタで被着させる。そして、磁性体ブロック91を一点鎖線部分まで平面研磨機で研削加工してから磁性体ブロック91の長手方向に直角にダイサーにて所定トラック幅にスライスし、工程(j)の如く磁気ヘッドを完成する。
【0028】本案の製造法によれば第一の脚91aと第二の脚91bをつなぐ非磁性体98が屈曲点もなくスムーズに凸に湾曲しているのでそこに被着する第二の磁性薄膜95も下地に習って湾曲し磁性薄膜95の磁気特性の劣化が少ない。また、エーペックス93の形状がディプスエンド99から両方に開いたダブルエーペックスの理想的な形状になっている。本実施例では両方に45度〜50度ずつ(エーペックス角度90度〜100度)開いた時が最高の特性を示した。また、本事例では鏡面加工後に非磁性体98を熱で変形させたが、エッチングやミリング等の方法で非磁性体98とそれに繋がる第一の磁性薄膜92、第一の脚91aとを加工し磁気ギャップ形成面96が巻線窓97に対して外側に凸形状を形成する磁気ヘッドの製造方法を採用しても同じ形になり同様な効果を生む。
【0029】図16は本発明を垂直磁気ヘッドに応用した例の斜視図である。第一の脚111aと第二の脚111bにより形成された略コ字状の開口部を持つフェライト等の磁性体ブロック111に、これら第一の脚111aと第二の脚111bを巻線に必要なスペースの巻線窓112を残して300℃〜600℃のガラス113などの非磁性体で繋げ、この第二の脚111bの端部と非磁性体で形成された垂直磁気コア形成面114は鏡面に加工され、その面にはFeTaN等からなる磁性体薄膜115がスパッタ等の真空薄膜形成法により被着されている。第一の脚111a側の媒体対向面にはスパッタ時にマスキングによって、あるいはスパッタ後にミリングによって形成された所定幅の垂直磁気ヘッドの主磁極115aが0.01〜0.3μmの厚さに被着形成されている。この主磁極115aとリターンパスコアとの間隔は主磁極の材質や形状によって異なるが0.2〜10μm位の幅で形成されている。この主磁極115aに繋がって磁気抵抗が小さいIコア115が形成され、絶縁保護層118で被覆されて垂直磁気ヘッドができている。垂直型磁気ヘッドのリターンパスコアを構成する略コ字状の磁性体ブロック111の開口部で第一の脚111aと第二の脚111bの両脚を非磁性体113でつないで第二の脚端部を含む非磁性体を鏡面加工し、その面上に金属磁性薄膜で垂直型磁気ヘッドの主磁極115aをスパッタで形成するので溶着工程が無く、薄膜形成後の昇温工程もないので磁性薄膜の劣化が起こらない。
【0030】図17は本発明の他の実施例の複合ヘッドの斜視図である。垂直磁気ヘッドの部分は図13に示したものと同様なので説明は省略する。主磁極115aとそれに繋がるIコアの上面にはアルミナ膜が被着され、垂直型磁気ヘッドと絶縁されて媒体対向面直近に位置するように磁気抵抗効果素子117が形成され、リード端子(図示せず)が形成され絶縁保護層118で被覆されて複合磁気ヘッドが完成される。垂直磁気ヘッドの主磁極上にアルミナ膜を介して磁気抵抗効果素子117が被着されているが磁気抵抗効果素子117の形成面の面粗度は鏡面加工した垂直磁気コア形成面114に垂直磁気ヘッドの主磁極115aとアルミナ膜の積層だけなので当初の面粗度を継承しており、磁気抵抗効果素子117形成に必要な面粗度の50オングストローム以下は確保できている。図18は本発明の他の実施例の複合ヘッドの斜視図である。フェライト等の磁性体ブロック201に第一の脚201aと第二の脚201bにより凹部が形成され、これら第一の脚201aと第二の脚201b及び凹部にはFeTaN等からなる第一の磁性薄膜202がスパッタ等の真空薄膜形成法により1μm〜10μm被着されており、第一の脚201aと第二の脚201bの内面は巻き線で必要なスペースの巻線窓207を残して融点が300℃〜550℃の低融点ガラス208などでつながれている。また、第一の磁性薄膜202と第一・第二の脚201a・201bとつなげられた低融点ガラス208とからなるギャップ形成面206上には、第一の脚201a側において第一の磁性薄膜202の露出部及び近接する非磁性体上にギャップ材層となるSiO2など非磁性薄膜204が所定厚さに被着されており、この非磁性薄膜204を挟んでFeTaN等の第二の磁性薄膜205が被着され磁気ヘッドとしての磁路が形成されている。この磁路に巻線窓207を通してコイルが巻かれインダクティブヘッドとなる。さらに第二の磁性薄膜205上にSiO2等の非磁性絶縁薄膜210が被着されその上の所定位置にMR素子216とリード217が形成されており、さらに、SiO2等の非磁性絶縁薄膜211が被着されその上にシールドとしてFeTaN等の第三の磁性薄膜219が被着され、その上に保護層220が形成されている。
【0031】
【発明の効果】本発明の磁気ヘッドは加熱工程なしに磁性体ブロックに磁性薄膜をスパッタしたコア半体の端面部にギャップ材を介して磁性薄膜が被着され磁路を形成しているので磁気ヘッド構体の大部分が単一の磁性体ブロックということになり強度的に弱いギャップ部分に外力が集中することがなく割れ等の損傷が起こりにくい。また、溶着時にゴミを挟むこともなく、ギャップ長がギャップ材のスパッタ膜厚だけできまるので精度の高いギャップ長を得ることができる。また、この磁気ヘッドは従来のように一対のコアー半体を接合するガラスボンデング工程がないため、溶着時の突合ズレによるギャップデプスバラツキがないし、工数低減にもなりコスト低減の効果も大きい。ガラス溶着などのために高温にする必要もなく磁性体ブロックと金属合金からなる磁性薄膜の熱膨張係数の差で磁性薄膜にストレスが生じ特性劣化が起こるという問題もない。また、磁性薄膜が高温に晒されることがないので結晶変化をおこし特性劣化することもない。金属合金からなる磁性薄膜をFeTaN材にした場合は透磁率や飽和磁束密度がセンダスト、パーマロイなどに比べて大きいので記録再生特性やオーバーライト特性などのすぐれたヘッド特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気ヘッドの斜視図
【図2】 図1の磁気ヘッドの製造方法を示す工程図
【図3】 図2の変形を示す工程図
【図4】 図2の別の変形を示す工程図
【図5】 本発明の他の実施例の磁気ヘッドの斜視図
【図6】 図5の磁気ヘッドの製造方法を示す工程図
【図7】 図6の変形を示す工程図
【図8】 本発明の別の実施例の磁気ヘッドの斜視図
【図9】 図8の磁気ヘッドの製造方法を示す工程図
【図10】 本発明の更に別の実施例の磁気ヘッドの断面図
【図11】 スパッタ時の成膜角度と透磁率の関係を示す図
【図12】 図10の磁気ヘッドの製造工程図
【図13】 図12における炉の温度プロファイル
【図14】 本発明による磁気ヘッドの実施例の斜視図
【図15】 図14の磁気ヘッドの製造方法を示す工程図
【図16】 本発明による磁気ヘッドの他の実施例の斜視図
【図17】 本発明による磁気ヘッドの別の実施例の斜視図
【図18】 本発明による磁気ヘッドの更に別の実施例の斜視図
【図19】 従来のバルク型磁気ヘッドの断面図
【図20】 従来の薄膜型磁気ヘッドの斜視図
【図21】 記録時の磁束を示す図
【図22】 再生時の磁束を示す図
【符号の説明】
11,21,31,91,111,201 磁性体ブロック
11a,31a,51a,91a,111a,201a 第一の脚
11b,31b,51b,91b,111b,201b 第二の脚
12,39,52,73,92,202 第一の磁性薄膜
14,38,54,79,94,204 非磁性薄膜
15,40,65,80,95,205 第二の磁性薄膜
16,36,56,76 磁気ギャップ形成面
17,35,57,75,97,112,207 巻線窓
18,32a,32b,55,78,98,113,208 低融点ガラス
19 第一の脚先端部
19a 第一の脚の上面
19b 第二の脚の先端部
24 基台
31a,31b 磁気コア部分
31c 媒体摺動面
41,42,118,220 保護層
51,71 ガラスブロック
93 エーペックス
99 ディプスエンド
115a 主磁極
117,216磁気抵抗効果素子
219 第三の磁性薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、第一の脚の上面に形成される第一の磁性薄膜と、前記磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に連なって形成される第二の磁性薄膜と、からなる磁気ヘッド。
【請求項2】一側周面を媒体摺動面とする略ロ字状の磁気コアを有する磁気ヘッドであって、この媒体摺動面を形成する磁気コア部分は磁性フェライトからなり、その他の磁気コア部分の全部又は一部は磁性薄膜からなる磁気ヘッド。
【請求項3】第一の脚と第二の脚により凹部を形成するガラスブロックと、この第一の脚の上面と第二の脚の先端部及びガラスブロックの凹部内面に連なって形成される第一の磁性薄膜と、前記ガラスブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に連なって形成される第二の磁性薄膜と、からなる磁気ヘッド。
【請求項4】第一の脚と第二の脚により凹部が形成された磁性体ブロックの第一の脚の上面に第一の磁性薄膜を被着させる工程と前記凹部内面で巻線窓のスペースを有して前記第一の脚と第二の脚を非磁性体でつなぐ工程と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜を被着させる工程と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に第二の磁性薄膜を形成する工程とからなる請求項1記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項5】前記第一の脚と前記第二の脚を非磁性体でつなぐ前記工程が、前記磁性体ブロックを、凹部側を下に基台に載置し、巻線窓スペースを有して該基台上に低粘度の非磁性体を展着して固化し、前記第一の脚と前記第二の脚とをつなぐ前記工程とを有する請求項4記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項6】前記第一の脚と前記第二の脚を非磁性体でつなぐ前記工程が、前記基台に低融点ガラスのブロックを接合し、該低融点ガラスを所定厚みまで研磨した後に第一の脚と第二の脚とを持つ磁性体ブロックと合体させて該磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面で前記第一の脚と第二の脚とを該低融点ガラスでつなぐ工程とを有する請求項4記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項7】ガラス基板上に磁性薄膜を被着する工程と、該ガラス基板を半溶融状態になる温度に加熱し、磁性薄膜を被着したガラス基板を凸型ブロックで押し半溶融状態のガラス及び磁性薄膜をこの型に倣わせ巻線窓形状をした凹部を形成する工程と、この凹部内面で巻線窓スペースを有して前記第一の脚と第二の脚を非磁性体でつなぐ工程と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜を被着させる工程と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び第二の脚の先端部で第二の磁性薄膜とを形成する工程と、からなる請求項3記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項8】第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと第一の脚の上面に形成される第一の磁性薄膜と、該磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面で前記第一の脚と第二の脚とをつなぐ非磁性体と、前記第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜から前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部上に連なって形成される磁性薄膜とからなり、該磁性薄膜が前記磁気ギャップのディプスエンドにおいてエーペックスの角度が広がる方向に延在する請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項9】第一の脚と第二の脚により凹部を形成するガラスブロックと、この第一の脚上面と第二の脚先端部及びガラスブロックの凹部内面に連なって形成される第一の磁性薄膜と、前記ガラスブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜とこの非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部上に連なって形成される第二の磁性薄膜とからなり、該磁性薄膜が前記磁気ギャップのディプスエンドにおいてエーペックスの角度が広がる方向に延在する請求項2記載の磁気ヘッド。
【請求項10】第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、この磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面でこの脚をつなぐ非磁性体と、該非磁性体上に磁性薄膜で形成した主磁極とを有し、前記第1の脚が主磁極に対してリターンパスコアとなる垂直型磁気ヘッド。
【請求項11】記録用磁気ヘッドと再生用磁気ヘッドとが一体に形成された複合型磁気ヘッドであって、前記記録用磁気ヘッドは第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、第一の脚の上面に形成される第一の磁性薄膜と、前記磁性体ブロックに巻線窓のスペースを有して前記凹部内面で前記第一の脚と第二の脚とをつなぐ非磁性体と、前記第一の脚の先端部で磁気ギャップとなる非磁性薄膜と、この非磁性薄膜と前記非磁性体及び前記第二の脚の先端部に連なって形成される第二の磁性薄膜とからなり、前記再生用磁気ヘッドは前記第二の磁性薄膜上に形成される第一の非磁性絶縁薄膜と、該非磁性絶縁薄膜上の第一の脚側に形成される磁気抵抗効果素子と該磁気抵抗効果素子からの引き出し導体と該磁気抵抗効果素子と該引き出し導体とを覆って形成される第二非磁性絶縁薄膜とこの非磁性絶縁薄膜の上に形成される第三の磁性薄膜及び保護層とからなることを特徴とする複合型磁気ヘッド。
【請求項12】垂直型磁気ヘッドと磁気抵抗効果型磁気ヘッドからなる複合型磁気ヘッドであって、第一の脚と第二の脚により凹部を形成する磁性体ブロックと、この磁性体ブロックの凹部内面で巻線窓のスペースを有して両脚をつなぐ非磁性体と、該非磁性体上に磁性薄膜で形成した主磁極を有し、前記第一の脚が主磁極に対してリターンパスコアとなる垂直型磁気ヘッドと、該主磁極上に絶縁膜を介して形成した磁気抵抗効果型ヘッドと保護層とからなることを特徴とする複合型磁気ヘッド。
【請求項13】前記第一,第二,第三,主磁極の磁性薄膜の少なくとも一つがFeTaN合金からなる請求項1及び2及び11,12記載の磁気ヘッド。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図19】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図21】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
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