説明

磁気ヘッドクリーニング機構および磁気テープ装置

【課題】スレッディング方式の磁気テープ装置に適用可能で、クリーニング部材の駆動を省スペースで実現しながらも、クリーニング部材を不必要に押圧しすぎてしまうことなく、高精度に位置決めする。
【解決手段】クリーニング用のブラシを移動させるアームがスレッダ軌道よりも磁気ヘッド側に設けられる構成で、カム溝によりブラシの移動経路をガイドすることで、ブラシが一度スレッダ軌道に向かってから磁気ヘッド正面のクリーニング位置に移動するようにし、クリーニング位置よりも磁気ヘッドに近づかない移動経路とする。また、カム溝により移動経路をガイドされるカム溝シャフトをアームにおけるブラシの近くに設けることで、ブラシの位置決め精度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープに対して情報を読み書きする磁気ヘッドをクリーニングする磁気ヘッドクリーニング機構およびこれを備えた磁気テープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ装置は、カートリッジが装填された際に、カートリッジ内の供給リールに巻かれている未使用の磁気テープの先端を、装置内部の巻き取りリールのハブまで搬送し、これに固定する機構を備えている。
【0003】
このような機構として、スレッディング方式と称される機構が知られている。スレッディング方式では、リーダブロックを磁気テープの搬送経路に沿って供給リールまで搬送する動作や、磁気テープの先端に設置されたリーダピンをリーダブロックに係合させた後に、再び磁気テープの搬送経路に沿ってリーダブロックを巻き取りリールまで搬送する動作を、カムギヤおよびそれによって移動するスレッディングアームによって行う。以下、磁気テープの搬送経路のことをスレッダ軌道と表記する。
【0004】
また、磁気テープ装置の磁気ヘッドは、データのリード・ライト性能を保つために、定期的にクリーニングする必要がある。
【0005】
磁気ヘッドのクリーニング機構としては、クリーニング用のブラシを設置したアームを磁気テープ装置内に設け、通常時はブラシがテープの走行を妨げない場所に位置するようにしておき、クリーニング時にアームを動かしてブラシを磁気ヘッドに当接させることが考えられる。
【0006】
ここで、スレッディング方式の磁気テープ装置の場合、上述したスレッディングアームがスレッド軌道上やそれよりも磁気ヘッド側の上部又は下部を移動する。
【0007】
このため、ブラシを設置したアームやそのアームを動かす駆動源と、磁気ヘッドとの間にスレッダ軌道が位置するように配置した構成が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0008】
また、図9に示すように、ブラシ103を設置したアーム101を、スレッダ軌道109に対して磁気ヘッド105と同じ側に設けるようにすることが考えられる。
【0009】
図9に示す構成例では、不図示のスレッディングアームを移動させるカムギヤ104にブラシリンクアーム101が設置されている。ブラシリンクアーム101の両端にはピポット102とブラシ103がそれぞれ設けられており、ブラシリンクアーム101は不図示のベースに取り付けられたピポット102を軸として、時計回り、反時計回りに回転する。
【0010】
また、ブラシリンクアーム101に突起部121が形成され、カムギヤ104に突起押下部120が形成されている。このため、不図示の駆動源によりギヤ110が回転し、カムギヤ104が回転することで、突起押下部120が回転し、ブラシリンクアーム101の突起部121を押下し、ブラシリンクアーム101を時計回り、反時計回りに回転させる。
【0011】
このブラシリンクアーム101のピポット102を軸とした回転により、アーム他端の
ブラシ103が移動され、図9(a)に示す待機状態から、図9(b)のブラシ接触を経て、図9(c)のクリーニング位置へと移動する。また、カムギヤ104の回転に応じて、その逆へと移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−155683号公報
【特許文献2】特開2006−318563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1、2に開示される発明は、上述のようにブラシを設置したアームと磁気ヘッドとの間にスレッダ軌道が位置する構成であるため、スレッダ軌道を挟んで磁気ヘッドとは反対側にクリーニング用のブラシやアーム、駆動源が設置された構成となっている。このため、ブラシを磁気ヘッドに当接させるためには、クリーニング時にスレッダ軌道をまたぐようにブラシを移動させる必要があった。このため、ブラシのストロークが大きくなってしまっていた。
ブラシの移動経路は部品等を設置できないデッドスペースであるため、ストロークが小さい方が装置の小型化という点からは好ましい。
【0014】
また、ストロークの増大という問題を解消するために、スレッダ軌道よりも磁気ヘッド側にブラシを配置すると、スレッディングアームを移動させるカムギヤが存在するため、アームを移動させるための駆動源を同じ磁気ヘッド側に配置することは困難である。
【0015】
また、スレッダ軌道よりも磁気ヘッド側にブラシを配置し、スレッド軌道の反対側に駆動源を配置してブラシを移動させることは、構造上困難である。すなわち、スレッディング方式の磁気テープ装置の場合、スレッディングアームがスレッド軌道上やそれよりも磁気ヘッド側の上部又は下部を移動するため、スレッダ軌道よりも磁気ヘッド側に設置されたブラシにスレッド軌道の反対側に設置された駆動源から動力を供給する機構をスレッディングアームと干渉しないように設けることは困難である。
【0016】
このため、上述した図9に示す構成例では、スレッダ軌道109よりも磁気ヘッド105側にブラシ103を配置する構成で、カムギヤ104の回転にそのまま突起押下部120を連動させ、突起部121によりブラシリングアーム101を回転させている。
【0017】
しかし、図9(a)の待機状態で、ブラシ103は磁気ヘッド105よりもスレッダ軌道109から見て背面側に位置している。すなわち、ヘッドクリーニングを行う磁気ヘッド表面の背面側に位置している。
【0018】
そして、この図9(a)待機状態から図9(c)クリーニング位置へとブラシリングアーム101の回転によりブラシ103を移動させるため、その間の図9(b)ブラシ接触位置では、ブラシ103が図9(c)のクリーニング位置よりも近い距離で磁気ヘッドに接触しながら移動していくこととなり、結果、ブラシ103が磁気ヘッド105に押し付けられることとなっていた。このため、ブラシ103のブラシブリストルに過剰な負荷がかかってしまい、ブラシ103のブラシブリストルの寿命が短くなる虞があった。
【0019】
また、支点であるピポット102から、力点である突起押下部120と突起部121との接触部までの距離が近く、作用点であるブラシ103までの距離が遠いため、ガタが発生した場合にそのガタが大きくなる虞があり、高精度に位置決めするのが難しかった。
【0020】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、スレッディング方式の磁気テープ装置に適用可能で、クリーニング部材の駆動を省スペースで実現しながらも、クリーニング部材を不必要に押圧しすぎてしまうことなく、高精度に位置決めができ、最適なヘッドクリーニングができる磁気ヘッドクリーニング機構および磁気テープ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
かかる目的を達成するために、本発明に係る磁気ヘッドクリーニング機構は、供給リールに巻き付けられた磁気テープの先端に設置されたリーダピンをスレッディングアームにより巻き取りリールまで牽引するスレッディング方式における磁気ヘッドクリーニング機構であって、磁気テープに対して磁力によるデータの読み書きを行う磁気ヘッドと、磁気テープのスレッディングアームによる搬送経路であるスレッダ軌道よりも磁気ヘッド側に設置され、スレッディングアームを駆動するカムギヤと、クリーニング部材が設けられたアーム機構と、アーム機構を支持するベース部材と、を備え、アーム機構は、クリーニング部材が一端に設けられたクリーニング側アーム部と、クリーニング側アーム部を一端で回動可能に軸支し、他端でベース部材に回動可能に軸支される支持側アーム部と、を備え、ベース部材は、移動経路をガイドするガイド部を備え、クリーニング側アーム部は、ガイド部と係合して該ガイド部に沿って移動可能な係合部を備え、支持側アーム部は、カムギヤが所定位置まで回転した場合に該カムギヤからの押圧力により移動し、ガイド部は、クリーニング部材を、スレッダ軌道より磁気ヘッド側の待機位置からスレッダ軌道に向かい、その後、スレッダ軌道から磁気ヘッドに向かう動きにより磁気ヘッド正面の所定のクリーニング位置に到達する移動経路で移動させるよう形成されたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る磁気テープ装置は、上述した本発明に係る磁気ヘッドクリーニング機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、スレッディング方式の磁気テープ装置に適用可能で、クリーニング部材の駆動を省スペースで実現しながらも、クリーニング部材を不必要に押圧しすぎてしまうことなく、高精度に位置決めができる。このため、最適なヘッドクリーニングができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構の要部構成を示す斜視図である。
【図2】該要部構成を示す他の角度からの斜視図である。
【図3】待機状態におけるカムギヤ3周りの要部構成を示す図である。
【図4】図3からさらにカム1を取り除いた状態を示す図である。
【図5】ブラシアームASSY5の構成を示す図である。
【図6】ブラシブリストル54が磁気ヘッド4に接触した状態の要部構成を示す図である。
【図7】ブラシブリストル54が磁気ヘッド4まで移動する移動経路を説明する図である。
【図8】カムギヤ3が時計回り方向に可動域端部まで回転した状態の要部構成を示す図である。
【図9】従来の磁気ヘッドクリーニング機構の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る磁気ヘッドクリーニング機構および磁気テープ装置を適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
まず、本実施形態の概略について説明する。
本実施形態の磁気ヘッドクリーニング機構は、クリーニング用のブラシを移動させるアームがスレッダ軌道よりも磁気ヘッド側に設けられる構成で、アームを大きく分けて3つのパーツから構成し、ブラシの移動経路の自由度を高めている。また、カム溝によりブラシの移動経路をガイドすることで、ブラシが円弧状に磁気ヘッド正面のクリーニング位置に移動するようにし、クリーニング位置よりも磁気ヘッドに近づかない移動経路としている。
【0027】
さらに、カム溝により移動経路をガイドされるカム溝シャフトをアームにおけるブラシの近くに設けることで、ブラシの位置決め精度を向上させている。
【0028】
このため、ブラシブリストルを不必要に押圧して痛めてしまうことなく、かつ、高精度な位置決めができる。
【0029】
次に、本実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構について説明する。
本実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構は、スレッディング方式により、カートリッジ内の供給リールに巻かれている磁気テープの先端を、装置内部の巻き取りリールのハブまで搬送する。
【0030】
このため、磁気テープを収納するカートリッジ内で、供給リールに巻き付けられた磁気テープの先端に設置されたリーダピンを、リーダブロックで係合させてスレッディングアームにより巻き取りリールまで牽引する。
【0031】
以下に、スレッディングアームを駆動させるカムギヤ周りの、磁気ヘッドクリーニングのための構成について説明する。なお、スレッディング方式により磁気テープ先端のリーダピンを牽引する構成については、公知の構成であるため、図示および詳細な説明を省略する。
【0032】
図1、図2に、本実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構の要部概観を示す。
本実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構は、図1、図2に示すように、ベース2に、カム1と、不図示のスレッディングアームを駆動させるカムギヤ3と、ブラシを移動させるためのアーム機構であるブラシアームASSY(Assembly)5とが取り付けられ、磁気ヘッド4近傍に配置されて構成される。
【0033】
ベース2とカム1は不図示のネジにより固定され、このベース2とカム1が、本実施形態の磁気ヘッドクリーニング機構の可動部分を支持するベース部材として機能する。
【0034】
図3、図4に、本実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構が待機状態である場合の要部構成例を示す。
図3は、カムギヤ3周りの構成を、図1、図2における下方向からカムギヤ3を点線で透過させて示す。図4は、図3からさらにカム1を取り除いた状態を示す。
【0035】
本実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構では、図3、図4に示すように、カムギヤシャフト21がベース2に圧入され、カムギヤ3が時計方向、反時計方向に回動自在に取り付けられている。
【0036】
また、ブラシアームASSY5の支点となるブラシアームシャフト22が、ベース2に圧入され、ブラシアームASSY5を回動可能に軸支する。
【0037】
ベース2には、ベース2の板金を折り曲げた押圧用凹部23が形成され、後述するブラシアームASSY5の退避側スプリング56の一端を保持する。ブラシアームASSY5は、この退避側スプリング56により、図3、図4に示す待機状態の方向へと押圧される。
【0038】
カムギヤ3にはブラシアームプッシュ31が凸部として形成され、カムギヤ3が所定角度まで回転された場合に、後述するブラシアームASSY5のブラシピボット58を押圧するようになっている。
【0039】
この図3、図4の待機状態は、不図示のスレッディングアームにより磁気テープ先端のリーダピンが巻き取りリールまで牽引され、磁気ヘッド4により磁気テープの読み書きができるようになっている状態を示す。
【0040】
図5に、ブラシアームASSY5の構成を示す。
ブラシアームASSY5は、大きく分けて、支持側アーム51と、ブラシ側アーム52と、ブラシピボット(押圧力伝達部)58との3つのパーツに分けられるよう構成され、ブラシブリストル(クリーニング部材)54の移動経路の自由度を高めるようになっている。
【0041】
ブラシ側アーム52は、ブラシブリストル54が植毛されるブラシホルダ53を一端に備え、他端が支持側アーム51の端部に回動可能に軸支されている。また、ブラシホルダ53と支持側アーム51端部による軸支点との間のブラシホルダ53に比較的近い位置に凸設された枝部の先端に、カム溝シャフト521が配設される。
このカム溝シャフト521は、カム1に開設されたカム溝11の幅とほぼ同一の外径の円柱形に形成され、このことにより、カム溝11に挿入されて組み立てられた際、カム溝11に沿って移動可能となっている。
【0042】
支持側アーム51およびブラシピボット58は、ブラシアームシャフト22により、同軸で軸支される。
また、ブラシピボット58の外周にはスリーブ581がブラシアームシャフト22と同軸に回動可能に設けられ、さらにその外周に退避側スプリング56がブラシアームシャフト22と同軸に回動可能に設けられる。
【0043】
ブラシアームシャフト22先端にはネジ穴が設けられ、ネジ582がそのネジ穴に螺合される。このことにより、支持側アーム51、ブラシピボット58、スリーブ581、および退避側スプリング56が、それぞれブラシアームシャフト22により同軸で回動可能に軸支される。
【0044】
退避側スプリング56は、一端をベース2の押圧用凹部23内に保持され、他端をブラシピボット58の凸部に支承され、ブラシアームASSY5が図3、図4の待機状態となる方向にブラシピボット58を押圧する。
このため、ブラシアームASSY5は、何らかの押圧力を加えられない限り、図3、図4の待機状態とされている。
【0045】
支持側アーム51には、ピン511が圧入される。このピン511の外周には、Eリング57がワッシャ571を介してこのピン511によりピン511と同軸に回動可能に軸支される。
【0046】
Eリング57の外周部には、クリーニング側スプリング55が設けられる。クリーニング側スプリング55は、一端をブラシピボット58の凸部に支承され、他端を支持側アー
ム51の凸部に支承される。
【0047】
このことにより、カム溝シャフト521がカム溝11に沿って移動可能な位置にある場合、すなわちブラシ側アーム52が移動可能である場合、クリーニング側スプリング55の復元力は、ブラシピボット58と支持側アーム51とを連動させて一体として移動させる。
【0048】
また、カム溝シャフト521がカム溝11端部まで移動し、それ以上移動不能な位置にある場合、すなわち、ブラシ側アーム52が移動不能である場合に、ブラシピボット58が図3、図4における時計回り方向、すなわちブラシブリストル54を磁気ヘッド4正面のクリーニング位置に近づける方向に回転すると、クリーニング側スプリング55の復元力は、支持側アーム51を、カム溝シャフト521とカム溝11端部との接触部分に対して押圧する。
【0049】
図6に、上述した図3、図4の待機状態からカムギヤ3が時計回り方向に回転し、ブラシブリストル54が磁気ヘッド4に接触した状態を示す。
【0050】
カムギヤ3は、不図示の駆動源(モータなど)からの回転力を不図示のギヤ等により伝達されて回転する。
こうしてカムギヤ3が時計回り方向に所定角度まで回転すると、カムギヤ3側面に凸設されたブラシアームプッシュ31がブラシピボット58の凸部を押圧する。このことにより、ブラシピボット58が時計回り方向に回転し、クリーニング側スプリング55の復元力により支持側アーム51が連動して一体となって回転する。
【0051】
この支持側アーム51の回転により、ブラシ側アーム52も移動し、カム溝シャフト521がカム溝11に沿って移動する。図6は、こうしてカム溝シャフト521がカム溝11における移動可能な端部まで移動した状態を示す。
【0052】
カム溝11は、図6に示すように、カム1に円弧状に開設されている。このため、カム溝シャフト521がカム溝11に沿った円弧状の移動経路で移動することにより、図7に示すように、ブラシブリストル54もカム溝シャフト521の移動経路に従って円弧状に移動する。
【0053】
このように、ブラシブリストル54は、図3、図4に示す待機状態から、一度磁気ヘッド正面の方向に磁気ヘッド4から離れる位置に移動し、そこから磁気ヘッド正面の所定のクリーニング位置へと移動する円弧状の移動経路で移動する。このため、ブラシブリストル54は、磁気ヘッド正面のクリーニング位置よりも磁気ヘッドに近づいてしまうことなく、待機位置からクリーニング位置まで移動する。
【0054】
このため、待機位置からクリーニング位置まで移動するまでの移動経路途中で、ブラシブリストル54と磁気ヘッド4とが近い距離まで近づき過ぎて、ブラシブリストル54に過剰な負荷をかけてしまうということなく、ブラシブリストル54を待機位置からクリーニング位置まで移動させることができる。
【0055】
図8に、上述した図6の状態からカムギヤ3が時計回り方向にさらに回転した状態を示す。
【0056】
カムギヤ3は、上述のように不図示のスレッディングアームを駆動し、磁気テープの先端に設置されたリーダピンを巻き取りリールまで牽引する。この図8に示す状態は、リーダピンが磁気テープを収納するカートリッジ内の移動位置端部までスレッディングアーム
により移動された、収納方向の端部の状態を示す。すなわち、カムギヤ3が時計回り方向への回転可能範囲の端部まで移動した状態を示す。
【0057】
上述した図6に示す状態で、すでにカム溝シャフト521はカム溝11の移動可能範囲の端部まで移動しているため、カムギヤ3が時計回り方向にさらに回転した場合でも、ブラシ側アーム52および支持側アーム51はその状態以上に移動することはできない。このため、ブラシアームプッシュ31の押圧により、ブラシピボット58が支持側アーム51に対してオーバーランして回転し、クリーニング側スプリング55をさらに弾性変形させる。
【0058】
クリーニング側スプリング55は、この弾性変形による復元力で、支持側アーム51をカム溝シャフト521とカム溝11端部との接触部分に対して押圧する。こうしてクリーニング側スプリング55が押圧することにより、支持側アーム51とブラシ側アーム52との接続部分や、カム溝シャフト521とカム溝11端部との接触部分によるガタの発生を抑止する。
【0059】
このため、ブラシブリストル54は、ガタの発生が抑止された状態で、確実な位置決めで精度よく磁気ヘッド4正面の所定のクリーニング位置に移動される。
【0060】
また、上述のように、カムギヤ4が可動域の終点まで回動した時点で、図8に示すクリーニング位置にブラシブリストル54が配置されるため、特別な位置決め動作を必要とせず、ブラシブリストル54を所定のクリーニング位置に自動的に配置できる。
【0061】
こうしてブラシブリストル54が所定のクリーニング位置に配置されると、磁気テープ先端のリーダピンがカートリッジ内の移動位置端部までスレッディングアームにより移動された状態であるため、磁気ヘッド4はトラッキング補正のための位置を初期状態に戻すため、ブラシブリストル54に対して平行に移動する。この平行移動により、図2などに示す磁気ヘッド4の縦溝内をブラシブリストル54がクリーニングする。
磁気ヘッド4のトラッキング補正のための動作は公知のものであり、説明を省略する。
【0062】
以上のように、上述した本発明の実施形態によれば、スレッディング方式の磁気テープ装置で、ブラシブリストル54を含むブラシアームASSY5がスレッダ軌道よりも磁気ヘッド側に設けられる構成としながらも、スレッディング機構のための駆動源によるカムギヤ3の回転を利用してブラシアームASSY5を移動させることにより、クリーニング機構を省スペースで実現できる。
【0063】
また、ブラシブリストル54が、円弧状のカム溝11によるカム溝シャフト521の移動経路に従って移動するため、ブラシブリストル54の移動経路は、スレッダ軌道より磁気ヘッド側の待機位置から一度スレッダ軌道に向かい、その後、スレッダ軌道から磁気ヘッド4の正面に向かうことで、磁気ヘッド4正面の所定のクリーニング位置に到達する経路となる。このため、磁気ヘッド4に対して、ブラシブリストル54を所定のクリーニング位置よりも近い距離まで近づけ過ぎてしまうことなく、ブラシブリストル54を待機位置からクリーニング位置まで移動させることができる。
このため、ブラシブリストル54に過剰な負荷をかけてしまうということなく、ブラシブリストル54を待機位置からクリーニング位置まで移動させることができる。このため、ブラシブリストル54を不必要に痛めてしまうことなく、長寿命とすることができる。
【0064】
また、ブラシブリストル54が、ブラシホルダ53に比較的近い位置に配置されたカム溝シャフト521の移動経路に従って移動するため、支点であるブラシアームシャフト22から、移動経路をガイドするカム溝シャフト521までの距離を長くとることができ、
クリーニング位置を高精度に位置決めすることができる。
【0065】
また、ブラシブリストル54を所定のクリーニング位置まで移動させてから、ブラシピボット58をオーバーランさせてクリーニング側スプリング55を弾性変形させるため、クリーニング側スプリング55の復元力によりガタの発生を抑止し、ブラシブリストル54を確実な位置決めで精度よく所定のクリーニング位置に配置できる。
【0066】
また、スレッディング機構のための駆動源によるカムギヤ3の回転を利用してブラシアームASSY5を移動させ、かつ、トラッキング調整のための機構をそのまま利用して磁気ヘッド4のクリーニングを行うため、専用の駆動源を設けたり、クリーニングのためだけに駆動源を動かすことを不要とすることができる。さらに、クリーニング機構をカムギヤ側面部だけで省スペースに実装できる。
【0067】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0068】
例えば、磁気テープ装置に上述した実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構を備えることで、高精度かつ省スペースな磁気ヘッドクリーニングが可能な磁気テープ装置とすることができる。
この場合、磁気テープ装置は、例えば、磁気テープを収容するカートリッジをカートリッジ収納棚(マガジン)内に複数格納でき、磁気テープドライブを着脱可能に設け、マガジン、ドライブの相互間でカートリッジを移動させるアクセッサ機構を備えた構成となり、その磁気テープドライブに上述した実施形態としての磁気ヘッドクリーニング機構を備えることとなる。
【符号の説明】
【0069】
1 カム
2 ベース
21 カムギヤシャフト
22 ブラシアームシャフト
23 押圧用凹部
3 カムギヤ
31 ブラシアームプッシュ(押圧凸部の一例)
4 磁気ヘッド
5 ブラシアームASSY
51 支持側アーム
52 ブラシ側アーム
53 ブラシホルダ
54 ブラシブリストル(クリーニング部材の一例)
55 クリーニング側スプリング(クリーニング用付勢部の一例)
56 退避側スプリング56(退避用付勢部の一例)
58 ブラシピボット(押圧力伝達部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給リールに巻き付けられた磁気テープの先端に設置されたリーダピンをスレッディングアームにより巻き取りリールまで牽引するスレッディング方式における磁気ヘッドクリーニング機構であって、
前記磁気テープに対して磁力によるデータの読み書きを行う磁気ヘッドと、
前記磁気テープの前記スレッディングアームによる搬送経路であるスレッダ軌道よりも前記磁気ヘッド側に設置され、前記スレッディングアームを駆動するカムギヤと、
クリーニング部材が設けられたアーム機構と、
前記アーム機構を支持するベース部材と、を備え、
前記アーム機構は、
前記クリーニング部材が一端に設けられたクリーニング側アーム部と、
前記クリーニング側アーム部を一端で回動可能に軸支し、他端で前記ベース部材に回動可能に軸支される支持側アーム部と、を備え、
前記ベース部材は、移動経路をガイドするガイド部を備え、
前記クリーニング側アーム部は、前記ガイド部と係合して該ガイド部に沿って移動可能な係合部を備え、
前記支持側アーム部は、前記カムギヤが所定位置まで回転した場合に該カムギヤからの押圧力により移動し、
前記ガイド部は、前記クリーニング部材を、前記スレッダ軌道より前記磁気ヘッド側の待機位置から前記スレッダ軌道に向かい、その後、前記スレッダ軌道から前記磁気ヘッドに向かう動きにより前記磁気ヘッド正面の所定のクリーニング位置に到達する移動経路で移動させるよう形成されたことを特徴とする磁気ヘッドクリーニング機構。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記クリーニング部材を、前記待機位置から前記クリーニング位置まで円弧状の移動経路により移動させるよう形成されたことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドクリーニング機構。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記ベース部材に開設された円弧状のカム溝であり、
前記係合部は、前記カム溝に挿入されて該カム溝に沿って移動可能に形成されたシャフトであることを特徴とする請求項1または2記載の磁気ヘッドクリーニング機構。
【請求項4】
前記アーム機構は、
前記支持側アーム部と同軸で前記ベース部材に回動可能に軸支される押圧力伝達部と、
前記押圧力伝達部への押圧力による弾性変形の復元力で前記支持側アーム部を前記クリーニング位置の方向へ押圧するクリーニング用付勢部と、
前記支持側アーム部を弾性変形の復元力で前記待機位置への退避方向へと押圧する退避用付勢部と、を備え、
前記カムギヤは、前記スレッディングアームにより前記リーダピンが前記供給リール近傍に位置している場合に前記押圧力伝達部を押圧する押圧凸部を備え、
前記押圧力伝達部は、前記カムギヤから前記押圧凸部により押圧力を加えられると、該押圧力での前記クリーニング用付勢部による復元力で前記支持側アーム部を押圧することを特徴とする請求項3記載の磁気ヘッドクリーニング機構。
【請求項5】
前記押圧力伝達部が前記カムギヤから前記押圧凸部により押圧力を加えられた際、
前記シャフトが前記カム溝に沿って移動可能な場合、前記押圧力伝達部は前記クリーニング用付勢部の復元力により前記支持側アーム部と連動して一体として回動され、前記支持側アーム部の該回動により前記シャフトを前記カム溝に沿って移動させ、
前記シャフトが前記カム溝における移動可能な端部まで移動した場合、前記押圧力伝
達部は前記シャフトが移動可能な場合以上に前記クリーニング用付勢部を弾性変形させ、前記クリーニング用付勢部の復元力により前記支持側アーム部を、前記シャフトと前記カム溝端部との接触部分に対して押圧することを特徴とする請求項4記載の磁気ヘッドクリーニング機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気ヘッドクリーニング機構を備えたことを特徴とする磁気テープ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79381(P2012−79381A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223234(P2010−223234)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(302069930)NECエンベデッドプロダクツ株式会社 (738)