磁気共鳴イメージング装置
【課題】体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑える。
【解決手段】MRI装置100は、被検体Pが置かれるボアB内にRFパルスを印加するRFコイル13と、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部と、架台部10に冷却風を送る送風機構をさらに有する。そして、カバー部は、ボアB側の表面に形成された凹部を有し、この凹部の内壁には、送風機構から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。
【解決手段】MRI装置100は、被検体Pが置かれるボアB内にRFパルスを印加するRFコイル13と、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部と、架台部10に冷却風を送る送風機構をさらに有する。そして、カバー部は、ボアB側の表面に形成された凹部を有し、この凹部の内壁には、送風機構から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF(Radio Frequency)パルスで磁気的に励起し、この励起にともなって発生する磁気共鳴信号から被検体内を表す画像を再構成する装置である。かかるMRI装置は、静磁場内に置かれた被検体にRFパルスを印加し、そのRFパルスの影響により被検体から発せられる磁気共鳴信号を受信するRFコイルを備える。
【0003】
ここで、MRI装置は、RFコイルなどを冷却するための送風機構を備えるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。また、従来のMRI装置の中には、RFパルスによる体温上昇を抑えるため、被検体に対して冷却風を送る送風機構を備えるものもある。図12は、従来のMRI装置における送風機構を説明するための図である。図12に示すように、例えば、MRI装置は、静磁場磁石111や傾斜磁場コイル112、RFコイル113を含んだ架台部110を有する。また、架台部110の内側にはボアBが形成されており、このボアBを覆うように、略円筒状に形成されたカバー部114が設けられる。
【0004】
そして、例えば、MRI装置は、ファン191及びダクト192を送風機構として備える。ファン191が回転することで、ダクト192を介して架台部110に冷却風が送られる。架台部110に送られた冷却風は、架台部110の端部に設けられた送風口193を介して上方又は下方からボアBの中央へ送られ、ボアBを通って架台部110の反対側へ抜けるように流れる(図12に示す矢印を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、MRI装置においてボアの大口径化が進んでおり、これにともなって体格が大きい被検体を撮像する頻度が増えている。体格が大きい被検体を撮像する場合には、RFコイルと被検体との間にある空間が少なくなるため、ボア内に冷却風が通りにくくなる。この結果、送風機構による送風効果が減少してしまうという課題が生じていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能なMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、MRI装置が、被検体が置かれるボア内にRFパルスを印加するRFコイルと、前記RFコイルの内側で前記ボアを覆うように設けられたカバー部とを備え、前記カバー部は、前記ボア側の表面に形成された凹部を有し、前記凹部の内壁には、送風手段から送られる冷却風を前記RFコイル側から前記ボア側へ通風させる通風孔が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例1に係るMRI装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施例1に係るカバー部の形状を示す側面図である。
【図3】図3は、本実施例1に係るカバー部の形状を示す正面図である。
【図4】図4は、本実施例1に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔を示す図である。
【図5】図5は、本実施例1に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔の位置を示す図である。
【図6】図6は、本実施例2に係るカバー部の形状を示す側面図である。
【図7】図7は、本実施例2に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔を示す図である。
【図8】図8は、本実施例3に係るカバー部の形状を示す側面図である。
【図9】図9は、本実施例3に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔を示す図である。
【図10】図10は、実施例3に係る変形例を説明するための図(1)である。
【図11】図11は、実施例3に係る変形例を説明するための図(2)である。
【図12】図12は、従来のMRI装置における送風機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るMRI装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
まず、実施例1について説明する。図1は、本実施例1に係るMRI装置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、架台部10、傾斜磁場電源20、送信部30、受信部40、シーケンス制御部50、寝台部60、寝台制御部70、及び計算機システム80を有する。
【0013】
架台部10は、被検体Pの体内を表す磁気共鳴信号を収集する。この架台部10の内側には、診断時に被検体Pが置かれるボアBが形成されている。具体的には、架台部10は、静磁場磁石11、傾斜磁場コイル12、及びRFコイル13を有する。
【0014】
静磁場磁石11は、中空の円筒状に形成され、架台部10のボアB内に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石11としては、例えば、永久磁石や超伝導磁石などが用いられる。
【0015】
傾斜磁場コイル12は、中空の円筒状に形成され、静磁場磁石11の内側に配置される。この傾斜磁場コイル12は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルを有する。各コイルは、それぞれ後述する傾斜磁場電源20から電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とされる。
【0016】
なお、傾斜磁場コイル12によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてエコー信号(磁気共鳴信号)の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてエコー信号の周波数を変化させるために利用される。
【0017】
RFコイル13は、中空の円筒状に形成され、傾斜磁場コイル12の内側に配置される。このRFコイル13は、送信部30から高周波パルスの供給を受けて、ボア内Bに置かれた被検体PにRFパルスを印加する。また、RFコイル13は、RFパルスの影響によって被検者Pから発せられるエコー信号を受信し、受信したエコー信号を受信部40へ出力する。
【0018】
傾斜磁場電源20は、傾斜磁場コイル12に電流を供給する。送信部30は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスをRFコイル13に送信する。受信部40は、RFコイル13から出力される磁気共鳴信号をデジタル化することによって生データを生成し、生成した生データをシーケンス制御部50へ送信する。
【0019】
シーケンス制御部50は、計算機システム80から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源20、送信部30及び受信部40を駆動することによって、被検者Pのスキャンを行う。また、シーケンス制御部50は、被検者Pのスキャンを行った結果、受信部40から生データが送信されると、その生データを計算機システム80へ転送する。
【0020】
なお、ここでいうシーケンス情報とは、シーケンス制御部50が傾斜磁場コイル12に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部30がRFコイル13に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部40がエコー信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を定義した情報である。
【0021】
寝台部60は、被検者Pが載置される天板61を有し、その天板61を被検者Pとともに架台部10の開口部に挿入する。この寝台部60は、長手方向が静磁場磁石11の中心軸と平行になるように設置される。
【0022】
寝台制御部70は、計算機システム80による制御のもと、寝台部60を駆動して天板61を長手方向及び上下方向へ移動する。
【0023】
計算機システム80は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う装置であり、インタフェース部81と、入力部82と、表示部83と、記憶部84と、画像再構成部85と、制御部86とを有している。
【0024】
インタフェース部81は、シーケンス制御部50との間でやり取りされる各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部81は、シーケンス制御部50に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部50から生データを受信する。また、インタフェース部81は、生データを受信すると、受信した生データを被検者Pごとに記憶部84に記憶させる。
【0025】
入力部82は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。例えば、入力部82は、撮像条件の設定を操作者から受け付ける。この入力部82としては、例えば、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが用いられる。
【0026】
表示部83は、操作者により参照される各種画像や、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。この表示部83としては、例えば、液晶モニタやCRTモニタなどの表示デバイスが用いられる。
【0027】
記憶部84は、シーケンス制御部50から送信された生データや、後述する画像再構成部85により生成された画像データを被検者Pごとに記憶する。
【0028】
画像再構成部85は、記憶部84により記憶された生データに対して後処理すなわちフーリエ変換処理等の再構成処理を施すことによって、被検者P内を表す画像データを生成する。
【0029】
制御部86は、上述した機能部間での制御の移動や、機能部と記憶部との間のデータの受け渡しなどを行うことで、MRI装置100の全体制御を行う。この制御部86は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有し、それらを用いて各種プログラムを実行させることで、MRI装置100が有する各部を制御する。例えば、制御部86は、操作者によって設定された撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部50に送信することで各種の撮像を実行する。
【0030】
なお、図1では図示を省略したが、本実施例1に係るMRI装置100は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部と、架台部10に冷却風を送る送風機構をさらに有する。そして、カバー部は、ボアB側の表面に形成された凹部を有し、この凹部の内壁には、送風機構から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。
【0031】
以下では、本実施例1に係るカバー部の形状について具体的に説明する。図2は、本実施例1に係るカバー部14の形状を示す側面図である。また、図3は、本実施例1に係るカバー部14の形状を示す正面図である。
【0032】
図2及び3に示すように、本実施例1に係るMRI装置100は、略円筒状に形成されたカバー部14を有する。このカバー部14は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられる。そして、カバー部14は、ボアB側の表面に形成された複数の凹部14aを有する。ここで、図2に示すように、各凹部14aは、例えば、それぞれ溝状に形成され、カバー部14の長手方向に沿うように配置される。
【0033】
なお、各凹部14aは、図3に示すように、RFコイル13に設けられた複数の電装部品13aの内側を避けた位置にそれぞれ設けられる。一般的に、RFコイル13には、コンデンサーや回路などの各種の電装部品13aが取り付けられる。そして、これら電装部品13aの周辺は、電界が集中するため熱が発生しやすい。したがって、安全のために、RFコイル13が有する電装部品の周辺には、十分な空間を確保しておくのが望ましい。本実施例1では、電装部品13aの内側を避けた位置に凹部14aが設けられるので、電装部品13aの周辺に安全のための十分な空間を確保することができる。
【0034】
また、図2に示すように、MRI装置100は、ファン91及びダクト92を送風機構として有する。ファン91が回転することで、ダクト92を介して架台部10に冷却風が送られる。さらに、架台部10に送られた冷却風は、架台部10の端部からカバー部14の外側にある空間へ送られる。
【0035】
そして、各凹部14aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。図4は、本実施例1に係るカバー部14の凹部14aに設けられる通風孔14bを示す図である。また、図5は、本実施例1に係るカバー部14の凹部14aに設けられる通風孔14bの位置を示す図である。
【0036】
図4に示すように、例えば、凹部14aの対向する2つの内壁側面それぞれに通風孔14bが設けられる。すなわち、通風孔14bは、凹部14aの内側に向かって冷却風が噴出するように形成される。これにより、1つの凹部14aから噴出される冷却風の量を増やすことができる。
【0037】
そして、図5に示すように、例えば、通風孔14bは、一方の内壁側面に設けられた通風孔14bと他方の内壁側面に設けられた通風孔14bとは、凹部14aの溝に沿う方向の位置が互いにずれるようにそれぞれ配置される。これにより、冷却風が噴出する箇所が分散されるので、被検体の一部が局所的に冷却されるのを防ぐことができる。
【0038】
上述してきたように、本実施例1では、MRI装置100が、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部14を備える。そして、カバー部14は、ボアB側の表面に形成された凹部14aを有し、凹部14aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔14bが設けられる。すなわち、本実施例1では、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、カバー部14の表面に形成された凹部14aによって、ボアB内に冷却風を送るための空間が確保される。したがって、本実施例1によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になる。
【0039】
さらに、本実施例1では、凹部14aは、溝状に形成され、カバー部14の長手方向に沿うように配置される。したがって、本実施例1によれば、カバー部14の長手方向に沿って冷却風を自由に流通させることができるので、ボア内を効率よく冷却することが可能になる。
【実施例2】
【0040】
次に、実施例2について説明する。なお、本実施例2に係るMRI装置の構成は基本的には図1に示したものと同じであり、カバー部の形状のみが異なる。そこで、以下では、本実施例2に係るカバー部の形状について具体的に説明する。図6は、本実施例2に係るカバー部24の形状を示す側面図である。なお、ここでは、図2に示した各部と同様の役目を果たす部については、同一の符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、本実施例2に係るMRI装置は、略円筒状に形成されたカバー部24を有する。このカバー部24は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられる。そして、カバー部24は、ボアB側の表面に形成された複数の凹部24a及び24cを有する。
【0042】
ここで、図6に示すように、凹部24aは、例えば、それぞれ溝状に形成され、カバー部24の中央部付近に配置される。ここで、凹部24aは、カバー部24の周方向に沿うように配置される。また、各凹部24cは、例えば、それぞれ溝状に形成され、カバー部24の両端部付近に、カバー部24の長手方向に沿うように配置される。
【0043】
なお、凹部24a及び24cは、図7に示すように、RFコイル13に設けられた電装部品13aの内側を避けた位置にそれぞれ設けられる。これにより、実施例1と同様に、電装部品13aの周辺に安全のための十分な空間を確保することができる。なお、例えば、意匠的な観点からカバー部24の内側に一様に凹部を設けたい場合には、例えば、電装部品13aの内側に位置する凹部については深さを浅くすればよい。
【0044】
そして、各凹部24aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。図7は、本実施例2に係るカバー部24の凹部24a及び24cに設けられる通風孔24b及び24dを示す図である。
【0045】
図7に示すように、例えば、凹部24aの対向する2つの内壁側面及び凹部24aの上面それぞれに通風孔24bが設けられる。すなわち、通風孔24bは、凹部24aの内側に向かって冷却風が噴出するように設けられる(図7の中央付近に示す矢印を参照)。これにより、1つの凹部24aから噴出される冷却風の量を増やすことができる。
【0046】
また、図7に示すように、例えば、凹部24cにおけるカバー部24の中心側にある内壁側面に通風孔24dが設けられる。すなわち、通風孔24dは、カバー部24の両端部付近に冷却風が噴出するように形成される(図7の左側付近に示す矢印を参照)。例えば、被検体PがボアB内に挿入された場合には、腹部の周辺にある空間よりも頭部や足部の周辺にある空間のほうが広くなる。したがって、カバー部24の両端部付近に冷却風が噴出するように通風孔24dが形成されることで、冷却風が効率よく流れるようになる。
【0047】
上述してきたように、本実施例2では、MRI装置が、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部24を備える。そして、カバー部24は、ボアB側の表面に形成された凹部24aを有し、凹部24aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔24bが設けられる。すなわち、本実施例2では、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、カバー部24の表面に形成された凹部24aによって、ボアB内に冷却風を送るための空間が確保される。したがって、本実施例2によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になる。
【0048】
さらに、本実施例2では、凹部24aは、溝状に形成され、カバー部24の周方向に沿うように配置される。したがって、本実施例2によれば、カバー部24の周方向に沿って冷却風を循環させることができるので、ボアB内を均一に冷却することが可能になる。なお、本実施例2では、カバー部24に周方向に沿った1列の凹部24aのみを設ける場合について説明したが、例えば、2列以上の凹部24aを設けるようにしてもよい。
【実施例3】
【0049】
次に、実施例3について説明する。なお、本実施例3に係るMRI装置の構成も基本的には図1に示したものと同じであり、カバー部の形状のみが異なる。そこで、以下では、本実施例3に係るカバー部の形状について具体的に説明する。図8は、本実施例3に係るカバー部34の形状を示す側面図である。なお、ここでは、図2に示した各部と同様の役目を果たす部については、同一の符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0050】
図8に示すように、本実施例3に係るMRI装置は、略円筒状に形成されたカバー部34を有する。このカバー部34は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられる。そして、カバー部34は、ボアB側の表面に形成された複数の凹部34a及び34cを有する。
【0051】
ここで、図8に示すように、例えば、各凹部34aは、それぞれディンプル状に形成され、カバー部34の中央部付近に配置される。ここで、各凹部34aは、周方向に沿った4つの列をなすように配置される。また、例えば、各凹部34cは、それぞれ溝状に形成され、カバー部34の両端部付近に配置される。ここで、各凹部34cは、両端部付近それぞれにおいて、周方向に沿った2つの列をなすように配置される。
【0052】
なお、凹部34a及び34cは、図7に示すように、RFコイル13に設けられた電装部品13aの内側を避けた位置にそれぞれ設けられる。これにより、実施例1及び2と同様に、電装部品13aの周辺に安全のための十分な空間を確保することができる。
【0053】
そして、各凹部34aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。図9は、本実施例3に係るカバー部34の凹部34a及び34cに設けられる通風孔34b及び34dを示す図である。
【0054】
図9に示すように、例えば、各凹部34aにおけるカバー部34の中心側に内壁側面それぞれに通風孔34bが設けられる。すなわち、通風孔34bは、カバー部34の中央から外側に向かう方向に冷却風が流れるように設けられる(図9の中央付近に示す矢印を参照)。例えば、被検体PがボアB内に挿入された場合には、腹部の周辺にある空間が最も狭くなると想定される。したがって、カバー部34の中央から外側に向かう方向に冷却風が流れるように通風孔34bが設けられることで、空気が流れにくい空間を避けて冷却風を流通させることが可能になる。
【0055】
また、図9に示すように、例えば、複数の凹部34cのうち、カバー部34の中心側に位置する列に含まれる凹部34cでは、凹部34cにおけるカバー部34の中心側にある内壁側面に通風孔34dが設けられる。一方、複数の凹部34cのうち、カバー部34の外側にある列に含まれる凹部34cでは、凹部34cにおけるカバー部34の外側にある内壁側面に通風孔34dが設けられる。すなわち、複数の凹部34cのうち隣接する2つの凹部34cにおいて、一方の凹部34cに形成された通風孔34dと他方の凹部34cに形成された通風孔34dとがそれぞれ逆の方向に冷却風を噴出するように、各通風孔34dが設けられる(図9の左側付近に示す矢印を参照)。これにより、冷却風が噴出される方向が分散されるので、被検体の一部が局所的に冷却されるのを防ぐことができる。
【0056】
なお、ディンプル状に形成される各凹部の大きさは、それぞれに設けられる通風孔の開口径の2倍以上とするのが望ましい。
【0057】
上述してきたように、本実施例3では、MRI装置が、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部34を備える。そして、カバー部34は、ボアB側の表面に形成された凹部34a及び34cを有し、各凹部の内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔がそれぞれ設けられる。すなわち、本実施例3では、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、カバー部34の表面に形成された凹部34aによって、ボアB内に冷却風を送るための空間が確保される。したがって、本実施例3によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になる。
【0058】
さらに、本実施例3では、凹部34a及び34cは、カバー部34におけるボアB側の表面に複数配置され、それぞれディンプル状に形成される。したがって、本実施例3によれば、ボア内をより均一に冷却することが可能になる。
【0059】
次に、上記実施例3に係る変形例について説明する。図10及び11は、実施例3に係る変形例を説明するための図である。
【0060】
例えば、図10に示すように、カバー部44におけるボアB側の表面に複数の凹部44aが配置される。各凹部44aは、それぞれディンプル状に形成される。そして、各凹部44aには、ボアBに置かれた被検体Pとカバー部44との間にある空間内の広い空間に向かって冷却風が噴出するように、それぞれ通風孔44bが形成される(図10に示す矢印を参照)。この場合には、例えば、図10に示すように、被検体Pの頭部周辺又は足部周辺に向けて冷却風が噴出するように、各通風孔44bが形成される。これにより、冷却風が流れやすい箇所に集中的に冷却風を送ることができるので、ボア内をより効率よく冷却することが可能になる。
【0061】
また、例えば、図11に示すように、カバー部54の内壁側面に複数の凹部54aが配置される。各凹部54aは、それぞれディンプル状に形成される。ここで、各凹部54aは、ボアBの中央付近からボアBに置かれた被検体Pとカバー部54との間にある空間内の広い空間へ向かう曲線上に並ぶように、それぞれ配置される。また、各凹部54aには、ボアBに置かれた被検体Pとカバー部54との間にある空間内の広い空間に向かって冷却風が流れるように、それぞれ通風孔54bが形成される(図11に示す矢印を参照)。これにより、冷却風が流れやすい箇所に冷却風を導くための流路をボア内に形成することができるので、ボア内をさらに効率よく冷却することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
100 MRI装置
13 RFコイル
14 カバー部
14a 凹部
14b 通風孔
91 ファン
92 ダクト
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF(Radio Frequency)パルスで磁気的に励起し、この励起にともなって発生する磁気共鳴信号から被検体内を表す画像を再構成する装置である。かかるMRI装置は、静磁場内に置かれた被検体にRFパルスを印加し、そのRFパルスの影響により被検体から発せられる磁気共鳴信号を受信するRFコイルを備える。
【0003】
ここで、MRI装置は、RFコイルなどを冷却するための送風機構を備えるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。また、従来のMRI装置の中には、RFパルスによる体温上昇を抑えるため、被検体に対して冷却風を送る送風機構を備えるものもある。図12は、従来のMRI装置における送風機構を説明するための図である。図12に示すように、例えば、MRI装置は、静磁場磁石111や傾斜磁場コイル112、RFコイル113を含んだ架台部110を有する。また、架台部110の内側にはボアBが形成されており、このボアBを覆うように、略円筒状に形成されたカバー部114が設けられる。
【0004】
そして、例えば、MRI装置は、ファン191及びダクト192を送風機構として備える。ファン191が回転することで、ダクト192を介して架台部110に冷却風が送られる。架台部110に送られた冷却風は、架台部110の端部に設けられた送風口193を介して上方又は下方からボアBの中央へ送られ、ボアBを通って架台部110の反対側へ抜けるように流れる(図12に示す矢印を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、MRI装置においてボアの大口径化が進んでおり、これにともなって体格が大きい被検体を撮像する頻度が増えている。体格が大きい被検体を撮像する場合には、RFコイルと被検体との間にある空間が少なくなるため、ボア内に冷却風が通りにくくなる。この結果、送風機構による送風効果が減少してしまうという課題が生じていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能なMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、MRI装置が、被検体が置かれるボア内にRFパルスを印加するRFコイルと、前記RFコイルの内側で前記ボアを覆うように設けられたカバー部とを備え、前記カバー部は、前記ボア側の表面に形成された凹部を有し、前記凹部の内壁には、送風手段から送られる冷却風を前記RFコイル側から前記ボア側へ通風させる通風孔が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例1に係るMRI装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施例1に係るカバー部の形状を示す側面図である。
【図3】図3は、本実施例1に係るカバー部の形状を示す正面図である。
【図4】図4は、本実施例1に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔を示す図である。
【図5】図5は、本実施例1に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔の位置を示す図である。
【図6】図6は、本実施例2に係るカバー部の形状を示す側面図である。
【図7】図7は、本実施例2に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔を示す図である。
【図8】図8は、本実施例3に係るカバー部の形状を示す側面図である。
【図9】図9は、本実施例3に係るカバー部の凹部に設けられる通風孔を示す図である。
【図10】図10は、実施例3に係る変形例を説明するための図(1)である。
【図11】図11は、実施例3に係る変形例を説明するための図(2)である。
【図12】図12は、従来のMRI装置における送風機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るMRI装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
まず、実施例1について説明する。図1は、本実施例1に係るMRI装置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、架台部10、傾斜磁場電源20、送信部30、受信部40、シーケンス制御部50、寝台部60、寝台制御部70、及び計算機システム80を有する。
【0013】
架台部10は、被検体Pの体内を表す磁気共鳴信号を収集する。この架台部10の内側には、診断時に被検体Pが置かれるボアBが形成されている。具体的には、架台部10は、静磁場磁石11、傾斜磁場コイル12、及びRFコイル13を有する。
【0014】
静磁場磁石11は、中空の円筒状に形成され、架台部10のボアB内に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石11としては、例えば、永久磁石や超伝導磁石などが用いられる。
【0015】
傾斜磁場コイル12は、中空の円筒状に形成され、静磁場磁石11の内側に配置される。この傾斜磁場コイル12は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルを有する。各コイルは、それぞれ後述する傾斜磁場電源20から電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とされる。
【0016】
なお、傾斜磁場コイル12によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてエコー信号(磁気共鳴信号)の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてエコー信号の周波数を変化させるために利用される。
【0017】
RFコイル13は、中空の円筒状に形成され、傾斜磁場コイル12の内側に配置される。このRFコイル13は、送信部30から高周波パルスの供給を受けて、ボア内Bに置かれた被検体PにRFパルスを印加する。また、RFコイル13は、RFパルスの影響によって被検者Pから発せられるエコー信号を受信し、受信したエコー信号を受信部40へ出力する。
【0018】
傾斜磁場電源20は、傾斜磁場コイル12に電流を供給する。送信部30は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスをRFコイル13に送信する。受信部40は、RFコイル13から出力される磁気共鳴信号をデジタル化することによって生データを生成し、生成した生データをシーケンス制御部50へ送信する。
【0019】
シーケンス制御部50は、計算機システム80から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源20、送信部30及び受信部40を駆動することによって、被検者Pのスキャンを行う。また、シーケンス制御部50は、被検者Pのスキャンを行った結果、受信部40から生データが送信されると、その生データを計算機システム80へ転送する。
【0020】
なお、ここでいうシーケンス情報とは、シーケンス制御部50が傾斜磁場コイル12に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部30がRFコイル13に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部40がエコー信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を定義した情報である。
【0021】
寝台部60は、被検者Pが載置される天板61を有し、その天板61を被検者Pとともに架台部10の開口部に挿入する。この寝台部60は、長手方向が静磁場磁石11の中心軸と平行になるように設置される。
【0022】
寝台制御部70は、計算機システム80による制御のもと、寝台部60を駆動して天板61を長手方向及び上下方向へ移動する。
【0023】
計算機システム80は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う装置であり、インタフェース部81と、入力部82と、表示部83と、記憶部84と、画像再構成部85と、制御部86とを有している。
【0024】
インタフェース部81は、シーケンス制御部50との間でやり取りされる各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部81は、シーケンス制御部50に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部50から生データを受信する。また、インタフェース部81は、生データを受信すると、受信した生データを被検者Pごとに記憶部84に記憶させる。
【0025】
入力部82は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。例えば、入力部82は、撮像条件の設定を操作者から受け付ける。この入力部82としては、例えば、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが用いられる。
【0026】
表示部83は、操作者により参照される各種画像や、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。この表示部83としては、例えば、液晶モニタやCRTモニタなどの表示デバイスが用いられる。
【0027】
記憶部84は、シーケンス制御部50から送信された生データや、後述する画像再構成部85により生成された画像データを被検者Pごとに記憶する。
【0028】
画像再構成部85は、記憶部84により記憶された生データに対して後処理すなわちフーリエ変換処理等の再構成処理を施すことによって、被検者P内を表す画像データを生成する。
【0029】
制御部86は、上述した機能部間での制御の移動や、機能部と記憶部との間のデータの受け渡しなどを行うことで、MRI装置100の全体制御を行う。この制御部86は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有し、それらを用いて各種プログラムを実行させることで、MRI装置100が有する各部を制御する。例えば、制御部86は、操作者によって設定された撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部50に送信することで各種の撮像を実行する。
【0030】
なお、図1では図示を省略したが、本実施例1に係るMRI装置100は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部と、架台部10に冷却風を送る送風機構をさらに有する。そして、カバー部は、ボアB側の表面に形成された凹部を有し、この凹部の内壁には、送風機構から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。
【0031】
以下では、本実施例1に係るカバー部の形状について具体的に説明する。図2は、本実施例1に係るカバー部14の形状を示す側面図である。また、図3は、本実施例1に係るカバー部14の形状を示す正面図である。
【0032】
図2及び3に示すように、本実施例1に係るMRI装置100は、略円筒状に形成されたカバー部14を有する。このカバー部14は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられる。そして、カバー部14は、ボアB側の表面に形成された複数の凹部14aを有する。ここで、図2に示すように、各凹部14aは、例えば、それぞれ溝状に形成され、カバー部14の長手方向に沿うように配置される。
【0033】
なお、各凹部14aは、図3に示すように、RFコイル13に設けられた複数の電装部品13aの内側を避けた位置にそれぞれ設けられる。一般的に、RFコイル13には、コンデンサーや回路などの各種の電装部品13aが取り付けられる。そして、これら電装部品13aの周辺は、電界が集中するため熱が発生しやすい。したがって、安全のために、RFコイル13が有する電装部品の周辺には、十分な空間を確保しておくのが望ましい。本実施例1では、電装部品13aの内側を避けた位置に凹部14aが設けられるので、電装部品13aの周辺に安全のための十分な空間を確保することができる。
【0034】
また、図2に示すように、MRI装置100は、ファン91及びダクト92を送風機構として有する。ファン91が回転することで、ダクト92を介して架台部10に冷却風が送られる。さらに、架台部10に送られた冷却風は、架台部10の端部からカバー部14の外側にある空間へ送られる。
【0035】
そして、各凹部14aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。図4は、本実施例1に係るカバー部14の凹部14aに設けられる通風孔14bを示す図である。また、図5は、本実施例1に係るカバー部14の凹部14aに設けられる通風孔14bの位置を示す図である。
【0036】
図4に示すように、例えば、凹部14aの対向する2つの内壁側面それぞれに通風孔14bが設けられる。すなわち、通風孔14bは、凹部14aの内側に向かって冷却風が噴出するように形成される。これにより、1つの凹部14aから噴出される冷却風の量を増やすことができる。
【0037】
そして、図5に示すように、例えば、通風孔14bは、一方の内壁側面に設けられた通風孔14bと他方の内壁側面に設けられた通風孔14bとは、凹部14aの溝に沿う方向の位置が互いにずれるようにそれぞれ配置される。これにより、冷却風が噴出する箇所が分散されるので、被検体の一部が局所的に冷却されるのを防ぐことができる。
【0038】
上述してきたように、本実施例1では、MRI装置100が、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部14を備える。そして、カバー部14は、ボアB側の表面に形成された凹部14aを有し、凹部14aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔14bが設けられる。すなわち、本実施例1では、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、カバー部14の表面に形成された凹部14aによって、ボアB内に冷却風を送るための空間が確保される。したがって、本実施例1によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になる。
【0039】
さらに、本実施例1では、凹部14aは、溝状に形成され、カバー部14の長手方向に沿うように配置される。したがって、本実施例1によれば、カバー部14の長手方向に沿って冷却風を自由に流通させることができるので、ボア内を効率よく冷却することが可能になる。
【実施例2】
【0040】
次に、実施例2について説明する。なお、本実施例2に係るMRI装置の構成は基本的には図1に示したものと同じであり、カバー部の形状のみが異なる。そこで、以下では、本実施例2に係るカバー部の形状について具体的に説明する。図6は、本実施例2に係るカバー部24の形状を示す側面図である。なお、ここでは、図2に示した各部と同様の役目を果たす部については、同一の符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、本実施例2に係るMRI装置は、略円筒状に形成されたカバー部24を有する。このカバー部24は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられる。そして、カバー部24は、ボアB側の表面に形成された複数の凹部24a及び24cを有する。
【0042】
ここで、図6に示すように、凹部24aは、例えば、それぞれ溝状に形成され、カバー部24の中央部付近に配置される。ここで、凹部24aは、カバー部24の周方向に沿うように配置される。また、各凹部24cは、例えば、それぞれ溝状に形成され、カバー部24の両端部付近に、カバー部24の長手方向に沿うように配置される。
【0043】
なお、凹部24a及び24cは、図7に示すように、RFコイル13に設けられた電装部品13aの内側を避けた位置にそれぞれ設けられる。これにより、実施例1と同様に、電装部品13aの周辺に安全のための十分な空間を確保することができる。なお、例えば、意匠的な観点からカバー部24の内側に一様に凹部を設けたい場合には、例えば、電装部品13aの内側に位置する凹部については深さを浅くすればよい。
【0044】
そして、各凹部24aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。図7は、本実施例2に係るカバー部24の凹部24a及び24cに設けられる通風孔24b及び24dを示す図である。
【0045】
図7に示すように、例えば、凹部24aの対向する2つの内壁側面及び凹部24aの上面それぞれに通風孔24bが設けられる。すなわち、通風孔24bは、凹部24aの内側に向かって冷却風が噴出するように設けられる(図7の中央付近に示す矢印を参照)。これにより、1つの凹部24aから噴出される冷却風の量を増やすことができる。
【0046】
また、図7に示すように、例えば、凹部24cにおけるカバー部24の中心側にある内壁側面に通風孔24dが設けられる。すなわち、通風孔24dは、カバー部24の両端部付近に冷却風が噴出するように形成される(図7の左側付近に示す矢印を参照)。例えば、被検体PがボアB内に挿入された場合には、腹部の周辺にある空間よりも頭部や足部の周辺にある空間のほうが広くなる。したがって、カバー部24の両端部付近に冷却風が噴出するように通風孔24dが形成されることで、冷却風が効率よく流れるようになる。
【0047】
上述してきたように、本実施例2では、MRI装置が、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部24を備える。そして、カバー部24は、ボアB側の表面に形成された凹部24aを有し、凹部24aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔24bが設けられる。すなわち、本実施例2では、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、カバー部24の表面に形成された凹部24aによって、ボアB内に冷却風を送るための空間が確保される。したがって、本実施例2によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になる。
【0048】
さらに、本実施例2では、凹部24aは、溝状に形成され、カバー部24の周方向に沿うように配置される。したがって、本実施例2によれば、カバー部24の周方向に沿って冷却風を循環させることができるので、ボアB内を均一に冷却することが可能になる。なお、本実施例2では、カバー部24に周方向に沿った1列の凹部24aのみを設ける場合について説明したが、例えば、2列以上の凹部24aを設けるようにしてもよい。
【実施例3】
【0049】
次に、実施例3について説明する。なお、本実施例3に係るMRI装置の構成も基本的には図1に示したものと同じであり、カバー部の形状のみが異なる。そこで、以下では、本実施例3に係るカバー部の形状について具体的に説明する。図8は、本実施例3に係るカバー部34の形状を示す側面図である。なお、ここでは、図2に示した各部と同様の役目を果たす部については、同一の符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0050】
図8に示すように、本実施例3に係るMRI装置は、略円筒状に形成されたカバー部34を有する。このカバー部34は、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられる。そして、カバー部34は、ボアB側の表面に形成された複数の凹部34a及び34cを有する。
【0051】
ここで、図8に示すように、例えば、各凹部34aは、それぞれディンプル状に形成され、カバー部34の中央部付近に配置される。ここで、各凹部34aは、周方向に沿った4つの列をなすように配置される。また、例えば、各凹部34cは、それぞれ溝状に形成され、カバー部34の両端部付近に配置される。ここで、各凹部34cは、両端部付近それぞれにおいて、周方向に沿った2つの列をなすように配置される。
【0052】
なお、凹部34a及び34cは、図7に示すように、RFコイル13に設けられた電装部品13aの内側を避けた位置にそれぞれ設けられる。これにより、実施例1及び2と同様に、電装部品13aの周辺に安全のための十分な空間を確保することができる。
【0053】
そして、各凹部34aの内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔が設けられる。図9は、本実施例3に係るカバー部34の凹部34a及び34cに設けられる通風孔34b及び34dを示す図である。
【0054】
図9に示すように、例えば、各凹部34aにおけるカバー部34の中心側に内壁側面それぞれに通風孔34bが設けられる。すなわち、通風孔34bは、カバー部34の中央から外側に向かう方向に冷却風が流れるように設けられる(図9の中央付近に示す矢印を参照)。例えば、被検体PがボアB内に挿入された場合には、腹部の周辺にある空間が最も狭くなると想定される。したがって、カバー部34の中央から外側に向かう方向に冷却風が流れるように通風孔34bが設けられることで、空気が流れにくい空間を避けて冷却風を流通させることが可能になる。
【0055】
また、図9に示すように、例えば、複数の凹部34cのうち、カバー部34の中心側に位置する列に含まれる凹部34cでは、凹部34cにおけるカバー部34の中心側にある内壁側面に通風孔34dが設けられる。一方、複数の凹部34cのうち、カバー部34の外側にある列に含まれる凹部34cでは、凹部34cにおけるカバー部34の外側にある内壁側面に通風孔34dが設けられる。すなわち、複数の凹部34cのうち隣接する2つの凹部34cにおいて、一方の凹部34cに形成された通風孔34dと他方の凹部34cに形成された通風孔34dとがそれぞれ逆の方向に冷却風を噴出するように、各通風孔34dが設けられる(図9の左側付近に示す矢印を参照)。これにより、冷却風が噴出される方向が分散されるので、被検体の一部が局所的に冷却されるのを防ぐことができる。
【0056】
なお、ディンプル状に形成される各凹部の大きさは、それぞれに設けられる通風孔の開口径の2倍以上とするのが望ましい。
【0057】
上述してきたように、本実施例3では、MRI装置が、RFコイル13の内側でボアBを覆うように設けられたカバー部34を備える。そして、カバー部34は、ボアB側の表面に形成された凹部34a及び34cを有し、各凹部の内壁には、ダクト92を介してファン91から送られる冷却風をRFコイル13側からボアB側へ通風させる通風孔がそれぞれ設けられる。すなわち、本実施例3では、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、カバー部34の表面に形成された凹部34aによって、ボアB内に冷却風を送るための空間が確保される。したがって、本実施例3によれば、体格が大きい被検体を撮像する場合でも、送風機構による送風効果の減少を抑えることが可能になる。
【0058】
さらに、本実施例3では、凹部34a及び34cは、カバー部34におけるボアB側の表面に複数配置され、それぞれディンプル状に形成される。したがって、本実施例3によれば、ボア内をより均一に冷却することが可能になる。
【0059】
次に、上記実施例3に係る変形例について説明する。図10及び11は、実施例3に係る変形例を説明するための図である。
【0060】
例えば、図10に示すように、カバー部44におけるボアB側の表面に複数の凹部44aが配置される。各凹部44aは、それぞれディンプル状に形成される。そして、各凹部44aには、ボアBに置かれた被検体Pとカバー部44との間にある空間内の広い空間に向かって冷却風が噴出するように、それぞれ通風孔44bが形成される(図10に示す矢印を参照)。この場合には、例えば、図10に示すように、被検体Pの頭部周辺又は足部周辺に向けて冷却風が噴出するように、各通風孔44bが形成される。これにより、冷却風が流れやすい箇所に集中的に冷却風を送ることができるので、ボア内をより効率よく冷却することが可能になる。
【0061】
また、例えば、図11に示すように、カバー部54の内壁側面に複数の凹部54aが配置される。各凹部54aは、それぞれディンプル状に形成される。ここで、各凹部54aは、ボアBの中央付近からボアBに置かれた被検体Pとカバー部54との間にある空間内の広い空間へ向かう曲線上に並ぶように、それぞれ配置される。また、各凹部54aには、ボアBに置かれた被検体Pとカバー部54との間にある空間内の広い空間に向かって冷却風が流れるように、それぞれ通風孔54bが形成される(図11に示す矢印を参照)。これにより、冷却風が流れやすい箇所に冷却風を導くための流路をボア内に形成することができるので、ボア内をさらに効率よく冷却することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
100 MRI装置
13 RFコイル
14 カバー部
14a 凹部
14b 通風孔
91 ファン
92 ダクト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が置かれるボア内にRFパルスを印加するRFコイルと、
前記RFコイルの内側で前記ボアを覆うように設けられたカバー部とを備え、
前記カバー部は、前記ボア側の表面に形成された凹部を有し、
前記凹部の内壁には、送風手段から送られる冷却風を前記RFコイル側から前記ボア側へ通風させる通風孔が設けられることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記RFコイルに設けられた電装部品の内側を避けた位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記凹部は、溝状に形成され、前記カバー部の長手方向に沿うように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記カバー部は、略円筒状に形成され、
前記凹部は、溝状に形成され、前記カバー部の周方向に沿うように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記通風孔は、前記凹部の内側に向かって前記冷却風が噴出するように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記通風孔は、前記凹部の対向する2つの内壁側面それぞれに設けられ、
一方の内壁側面に設けられた通風孔と他方の内壁側面に設けられた通風孔とは、前記凹部の溝に沿う方向の位置が互いにずれるようにそれぞれ配置される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記カバー部における前記ボア側の表面に複数配置され、それぞれディンプル状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記通風孔は、前記カバー部の中央から外側に向かう方向に冷却風が流れるように形成されることを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記複数の凹部のうち隣接する2つの凹部において、一方の凹部に形成された通風孔と他方の凹部に形成された通風孔とがそれぞれ逆の方向に冷却風を噴出するように形成される請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記通風孔は、前記ボアに置かれた前記被検体と前記カバー部との間にある空間内の広い空間に向かって前記冷却風が噴出するように形成されることを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項1】
被検体が置かれるボア内にRFパルスを印加するRFコイルと、
前記RFコイルの内側で前記ボアを覆うように設けられたカバー部とを備え、
前記カバー部は、前記ボア側の表面に形成された凹部を有し、
前記凹部の内壁には、送風手段から送られる冷却風を前記RFコイル側から前記ボア側へ通風させる通風孔が設けられることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記RFコイルに設けられた電装部品の内側を避けた位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記凹部は、溝状に形成され、前記カバー部の長手方向に沿うように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記カバー部は、略円筒状に形成され、
前記凹部は、溝状に形成され、前記カバー部の周方向に沿うように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記通風孔は、前記凹部の内側に向かって前記冷却風が噴出するように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記通風孔は、前記凹部の対向する2つの内壁側面それぞれに設けられ、
一方の内壁側面に設けられた通風孔と他方の内壁側面に設けられた通風孔とは、前記凹部の溝に沿う方向の位置が互いにずれるようにそれぞれ配置される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記カバー部における前記ボア側の表面に複数配置され、それぞれディンプル状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記通風孔は、前記カバー部の中央から外側に向かう方向に冷却風が流れるように形成されることを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記複数の凹部のうち隣接する2つの凹部において、一方の凹部に形成された通風孔と他方の凹部に形成された通風孔とがそれぞれ逆の方向に冷却風を噴出するように形成される請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記通風孔は、前記ボアに置かれた前記被検体と前記カバー部との間にある空間内の広い空間に向かって前記冷却風が噴出するように形成されることを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−161093(P2011−161093A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29050(P2010−29050)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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