説明

磁気吸着表示体

【課題】 磁石の大きさに関係なく表示面積を大きくすることができ、かつ、表面と裏面の2面の異なる表示がごく簡単な操作で切り換え可能であり、表裏面の表示を切り換えるときにも磁性板上の書面等のシート体の固定状態を維持したまま表示切り換えを行うことができる磁気吸着表示体を提供する。
【解決手段】 この磁気吸着表示体1は、表示板2の片側部に、該片側部に沿って延びるマグネット3,11を固着して構成される。表示板2の両面にそれぞれ表示がなされる。マグネット3,11としては、矩形横断面を有するもの、表示板に対して傾斜面を持つもの、あるいは円柱状のものなど種々の形態のものが可能であり、さらに表示板2は透明板8で形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気吸着可能な表示体、特に、2つの表示面を簡単な操作で目視側へ選択的に露呈させることができ、かつ磁性板上に配置したシート体の固定機能を備えた磁気吸着表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性ボードやスチール机等の書面等のシート体を上から押さえるように固定するものとしてマグネット式固定具が知られており、この固定具の前面に文字、記号等の表示を付して表示機能を兼ねたものも既に存在している。例えば、矩形横断面をもつ棒状磁石の前側面および上下側面をプラスチックケース等の外装体で囲包して該マグネット式固定具の背側面つまり磁石の露出面と磁性ボードとの間にシート体を挟み付けて磁気吸着力で該シート体を固定するとともに、該固定具の前側面に文字、記号等の表示を付した構成としている。
【0003】
また、特許文献1に示すように、ケースの長手方向4側面および両端面を表示面とするために、磁石全体を完全にケース内に収容したマグネットバーも開示されている。これは、ケースの表示面を大きく確保するために、前記ケースを矩形体で比較的大形に形成し、その中に円柱状の小さな磁石を遊動自在に収容し、前記ケースを磁性ボード等の磁性板に接触させたとき、磁気的吸引力で円柱状磁石が前記ケース内で磁性板側へ転がって前記ケースが前記磁性板に吸着されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−208913号公報
【特許文献2】実用新案登録第3158747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したマグネット式固定具はいずれも、固定具に付加する表示部が磁石を囲包する外装体の部分に限られるため、表示面積を大きくとることができず、特に磁石外装体の背側部に磁石の磁着面(磁気吸着面)が露出したものは表示面が固定具の片側面(前側面)に限られる。また、特許文献2のように磁石の周囲全面を囲包するようにしたものにあっては,外装体の前側面と背側面にそれぞれ表示を付すことができる利点はあるものの、表示面積には同様に限界があり、さらに、固定具の背側面でシート体を固定している状態から表示面を変えるために前記背側面を前面側へ向けようとすると、一旦固定具を磁性ボードから外して裏返しにしなければならない。この固定具を磁性ボードから外すときに、シート体を片方の手等で押さえていなければならないといった不便がある。
【0006】
磁石を偏平な板状に形成し、この板面に表示のための塗装を施したり、偏平磁石の前面に化粧シートを貼着したものも存在するが、この場合もあまり大きな偏平磁石とすることができないため、表示面積には限界があり、また、偏平磁石の両面を表示部とした場合も、前記磁石を裏返しにする時に固定しているシート体を手で押さえていなければならない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、磁石の大きさに関係なく表示面積を大きくすることができ、かつ、表面と裏面の2面の異なる表示がごく簡単な操作で切り換え可能な磁気吸着表示体を提供するものである。
【0008】
本発明はまた、表面と裏面の表示切り換えのほかに、表示板を磁性板に垂直に保持することにより、表裏面両方の表示部を同時に目視できるようにした磁気吸着表示体を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はさらに、磁性板上に配置した書面等のシート体の固定機能を備えるとともに、表裏面の表示を切り換えるときにも、磁石部分を磁性板から外すことなく該磁性板上のシート体の固定状態を維持したまま、ごく簡単な操作で表示切り換えを行うことができる磁気吸着表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁気吸着表示体は、表示板の片側部に、該片側部に沿って延びるマグネットを固着したことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の1つの形態によれば、請求項1に記載の磁気吸着表示体において、前記マグネットは、矩形横断面を有することを特徴とする。
矩形横断面のマグネットとすることで、マグネットの3面を磁着面とすることができ、磁性板に対して表示体の向きを3つの形態に保持できる。
【0012】
本発明の他の形態によれば、請求項1に記載の磁気吸着表示体において、前記マグネットは、側部磁着面が前記表示板の板面に対して傾斜面となっていることを特徴とする。
マグネットの磁着面を傾斜面とすることで、表示板の表示面を磁性板に対して傾斜状態にすることができ、設置状況などの環境によっては表示が見やすくなる。
【0013】
本発明のさらに他の形態によれば、請求項1〜3に記載の磁気吸着表示体において、前記表示板は、透視体で形成されることを特徴とする。
表示板を透明体とすることで、磁性板上の書面も隠れることなく透明表示板を通して視認できる。
【0014】
本発明のさらに他の形態によれば、請求項4に記載の磁気吸着表示体において、前記表示板は該表示板の板面に沿って延びる表示シート挿入溝が形成され、前記挿入溝に表示シートが挿入されることを特徴とする。
シート挿入溝に表示シートを挿抜可能にすることで、表示シートの交換が可能となる。
【0015】
本発明のさらに他の形態によれば、請求項4に記載の磁気吸着表示体において、前記表示板は二重構造体で形成され、かつ該二重構造体の間に表示シートが挟持されることを特徴とする。
二重構造体の間に挿入される表示シートを挿抜可能とすることで、表示シートの交換が可能となる。
【0016】
本発明のさらに他の形態によれば、請求項1〜4に記載の磁気吸着表示体において、前記表示板はその両面に互いに異なる表示がなされることを特徴とする。
1つの磁着表示体で2つの異なる表示が可能となり、それだけ表示範囲が拡がる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マグネットの磁気吸着力により、該マグネットに固着した表示板を磁性板上に保持させることができ、かつ、この状態のまま前記マグネットの位置を中心に前記表示板を反転させることで簡単に前記表示板の前面の表示から裏面の表示へ切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気吸着表示体の斜視図である。
【図2】図1に示す実施例の側面図である。
【図3】図1に示す実施例の使用例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1の変形例およびその使用例を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例2に係る磁気吸着表示体の側面図である。
【図6】本発明の実施例3に係る磁気吸着表示体を示す図である。
【図7】本発明の実施例1に係る磁気吸着表示体の他の使用例を示す磁性板正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を、図面を参照しつつ、各種の実施例およびその変形例について使用例とともに説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図3を参照すれば、この実施例の磁気吸着表示体(以下磁着表示体とする)1は長尺矩形状の表示板2の長辺片側部に四角形横断面を成す棒状マグネット3が該片側部に沿うように固着されている。実施例1では、マグネット3は表示板2の全長にわたって延在している。マグネット3の磁極は図2のように表示板2の短辺方向にS,Nの磁極が形成されているが、必ずしもこの方向に着磁される必要はなく、表示板2の板厚方向に磁極が形成されてもよい。また、この実施例でマグネット3の厚みは表示板2の厚みと同等になっており、マグネット3の長手方向3面(前側面3a、裏側面3bおよび下側面3c)が磁気吸着面(磁着面)となっている。この実施例の場合、マグネット3の前側面3aおよび裏側面3bはそれぞれ表示板2の表面2aおよび裏面2bと同一面となっている。
【0021】
図示の例では、四角形横断面を成す棒状マグネット3は横巾3mm、縦巾(高さ)4mm、長さ200mmの押出成形した軟質マグネットとして形成されているが、その寸法および製法はこのような寸法形態に限定されるものではない。表示板2の表面2aおよび裏面2bには文字、記号、図形その他任意の表示が施される。この場合、表面2aと裏面2bで異なる表示を施すことができる。
【0022】
このような構成の磁着表示体1は、磁性ボード等の磁性板5にマグネット3の例えば裏側面3bを磁気吸着(磁着)させることで、表示板2の裏面2bが磁性板5に密着して保持される。このとき、表示板2の長辺上縁2cが上向きになって該表示板の表面2aに記載した表示が前面から目視される(図3(A))。この状態から表示板2の表示を変えるべく表示板2の裏面2bを前面側へ向けるには、マグネット3を磁性板5から取り外すことなく、表示板2の板面が磁性板5に垂直になるようにマグネット3の位置を中心にして表示板2を水平になるように90°転回させることで、マグネット3の下側面3cが磁性板5に磁着され、図3(B)の状態となる。この状態からさらに表示板2の前記上縁2cが下向きになるように該表示板2をさらに90°転回させることにより、図3(C)に示すようにマグネット3の前側面3a(図2)および表示板2の表面(前面)2a(図2)が磁性板5に吸着され、表示板2の裏面2bの表示が前面から目視される。これらの操作は片手を使ってワンタッチで容易になし得る。
【0023】
以上は磁性ボードなどの磁性板5への磁着表示体1の取り付け形態についての説明であるが、磁性板5へのマグネット3の磁気吸着を利用して磁性板5上に配置した書面(シート体)6を本発明による磁着表示体1のマグネット3によって上から押さえることにより、書面6を磁性板5に固定することができる。図3(A)〜(C)は磁性板5上の書面6の固定状態を示したものであり、本発明の磁着表示体1の表示を変えるときにも、前述の如くマグネット3は磁性板5から取り外されないので、書面6を手等で押さえている必要はなく、磁性板5への固定状態のまま、前記表示体1を図3の(A)から(C)の状態へ転回させるだけで容易に表示を変えることができる。
【0024】
(実施例1の変形例)
図4は実施例1の変形例およびその使用例を示した側面図である。図1〜図3では、表示板2の下側縁に固着されるマグネット3はその前側面3aおよび裏側面3bが表示板2の前面2aおよび裏面2bと同一面となっているが、図4の変形例では同図(A)のようにマグネット3の下側部の厚みが漸次狭くなるようにその前側面3aおよび裏側面3bが表示板2の板面に対して傾斜している。この傾斜面3a,3bを磁性板5に磁気吸着させると、図4(B)、(C)のように表示板2は磁性板5に対して傾斜した状態に保持される。この変形例の磁着表示体1の位置が目視者の目線より上方の高い位置に配置される場合(同図(B))、あるいは目視者の目線より下方の低い位置に配置される場合(同図(C))、磁着表示体1は図4(B)の矢視F、あるいは図4(C)の矢視Gの方向から目視され、それだけ表示面が見やすくなる。なお、図4(B)は表示板2の前面表示の場合、図4(C)は表示板2を下方へ転回させて裏面表示とした場合である。
【0025】
さらに図4に示す変形例では、スチール机のような水平な上面に磁着表示体を保持する場合にも有効であり、図4(D)のように机7の前に座った目視者は通常の姿勢で矢視H方向から表示板2を目視することになるため、それだけ表示面が見やすくなる。
【実施例2】
【0026】
図5は本発明の実施例2の側面図である。この実施例では、マグネット3に固着される表示板はアクリル等の透明板8で形成され、かつ板厚中央部に透明板上縁8cから板面と平行に延びる溝9を形成し、この溝9に若干厚手の紙製や樹脂製の表示シート10を挿入し、この表示シート10の表裏面にそれぞれ所望の表示を付した構成としている。表示シート10の表示面は透明板8を通して目視される。なお、透明板8にこのような表示シート挿入溝9を形成する代わりに、2枚の透明板を隙間を有して重ねた2重構造としてその下側部をマグネットに固着し、この隙間に表示紙等の表示シートを挿入するようにしてもよい。前記表示紙または前記表示シートは透明表示板に対して挿抜可能とし、必要に応じて他の表示紙や表示シートと交換できるようにしてもよい。表示紙は透明表示板を通して目視でき、実施例1のようにマグネット3を磁性板5に吸着させたまま透明表示板を下側あるいは上側へ反転させることで、表示板の表示面を変えることができる。
【0027】
(実施例2の変形例)
実施例2の変形例として、透明表示板にシート挿入溝などを設けず、透明表示板の両面に直接表示を施すようにしてもよい。この変形例では表示板を磁性板側へ倒した場合に、磁性板上の印刷物等の書面は透明表示板を通しても視認できる。透明形態としては無色透明のほか種々のカラー色を用いた有色透明、あるいは半透明等の形態とすることもできる。
【実施例3】
【0028】
図6に示す実施例3では、円柱状のマグネット11の一側部に適当な深さの表示板挿入溝12がマグネット11の全長にわたって形成され、この溝12に表示板2が挿入された構成となっている。表示板2の表裏の表示面には文字や記号、図形等の表示がなされ、図6(A)の側面図にも示すように、表示板2の先端2cを上側に、かつ磁性板5にもたせ掛けるようにして円柱状マグネット11の周側部を磁性板5に吸着させる。図6(C)は同図(A)の矢視Fからみた正面図であり、これらの図に示す如く、この状態で表示板2の表面(前面)2aが目視される。
【0029】
図6(A)の状態から表示板2を円柱状マグネット11の位置を中心にして下側へ転回(同図の矢印R)させてその先端2cを磁性板5に接当させる。これによって図6(B)のように表示板2の裏面2bは正面側に現われ、表示板2の裏面2bに記された表示が目視できる。表示板2を上向きから下向きへ転回させるときにも、マグネット11は磁性板5から離脱させる必要はないので、磁着表示体1と磁性板5との間に挟まれた書面等のシート体(図6では図示省略)はマグネット11によって固定状態に保たれる。この実施例では円柱状のマグネット11は磁性板5に対して滑ることなくころがり動作をするので、表示板2の反転操作がきわめてスムーズになされる。マグネット11の溝12に表示板2を挿抜可能とすることで、表示板2の交換も容易である。なお、表示板2の延長線上にある円柱状マグネット11の下側部を図6(A)の仮想線Tで示す箇所で切断して該下側部を平坦面にすることにより、この面を磁性板5に磁着させて表示板2を磁性板5に対して垂直に保持することも可能である。
【0030】
(他の使用例)
図3に示した使用例では直立した磁性板に長尺状のマグネットを横向き、つまり水平方向に延びるように吸着させた例を示したが、マグネットを水平以外の他の方向へ延びるように、例えば図7に示すように磁性板5に対してマグネット3を縦向き、つまり上下方向に延びるように磁性板5上に吸着することもできる。この場合、表示板2を磁性板5上で図7のA方向あるいはB方向に倒すことで、表示板2の表面2aあるいは裏面2bが磁性板5の正面から目視されるが、図7のように表示板2を磁性板5の板面に垂直に立てた状態では表示板2を同図のC方向から見ることで表示板2の裏面2bが、またD方向から見ることで表示板2の表面2aが、表示板2を何ら動かすことなく、目視することができる。磁着表示体1の位置から側方へずれた位置にいる者にとっては、表示板2の目視が容易になる利点がある。また、磁性板5上に配置するシート体(書面6)の形状によっては、このように表示体1を縦向きに設置する方がより効果的に前記シート体を固定できる場合がある。
【0031】
本発明においては、以上の各実施例、使用例以外にも種々の設置形態が可能であり、また、表示体の長さや高さ等を変えることで違った雰囲気の表示となり、これらの形態も本発明による利点となるものである。表示板に装着するマグネットの形態も種々の形状、寸法のものにすることができ、これらの形態も本発明の範囲に含まれることは明らかである。
【符号の説明】
【0032】
1 磁着表示体
2 表示板
3 マグネット
5 磁性板
6 書面
7 スチール机
8 透明板
9 表示シート挿入溝
11 円柱状マグネット
12 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示板の片側部に、該片側部に沿って延びるマグネットを固着したことを特徴とする磁気吸着表示体。
【請求項2】
前記マグネットは、矩形横断面を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気吸着表示体。
【請求項3】
前記マグネットは、側部磁着面が前記表示板の板面に対して傾斜面となっていることを特徴とする請求項1に記載の磁気吸着表示体。
【請求項4】
前記表示板は、透視体で形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気吸着表示体。
【請求項5】
前記表示板は該表示板の板面に沿って延びる表示シート挿入溝が形成され、前記挿入溝に表示シートが挿入されることを特徴とする請求項4に記載の磁気吸着表示体。
【請求項6】
前記表示板は二重構造体で形成され、かつ該二重構造体の間に表示シートが挟持されることを特徴とする請求項4に記載の磁気吸着表示体。
【請求項7】
前記表示板はその両面に互いに異なる表示がなされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の磁気吸着表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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