説明

磁気回路

【課題】冷凍機の冷却性能を長期間にわたって安定化させることが可能な磁気回路を提供する。
【解決手段】作動流体を圧縮する圧縮機10と作動流体を膨張させて冷凍作用を生じさせるコールドヘッド20とを備えた冷凍機1の磁気回路40であって、円筒形状のヨーク部41と、ヨーク部41の内周面に配置され中心軸X1方向に延在する磁石部42と、磁石部42をヨーク部41と挟持するスリーブ43と、中心軸X1方向と平行に往復動するコイル44と、磁石部42の中心軸X1方向の動作を制動する抜け止め部材45とを備えている。磁気回路40では、磁石部42の一端が段差部41aに、他端が抜け止め部材45に当接され、この抜け止め部材45がヨーク部41の一端にネジ46によって固定されている。これにより、接着剤を使わずに磁石部42をヨーク部41に固定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温を生じさせるための冷凍機における磁気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温を生じさせるための冷凍機として、スターリング冷凍機(例えば特許文献1)がある。このスターリング冷凍機は、作動流体を圧縮する圧縮機と、圧縮された作動流体が流入された後にこの作動流体を膨張させて冷凍作用を生じさせるコールドヘッドと、これらを繋ぐ案内流路とを備えている。圧縮機は、中心軸Xに沿って往復動可能な一対のピストンと、この一対のピストンを収容する固定シリンダとを備えている。
【0003】
このような冷凍機には、図6に示すように、固定シリンダ部60の外周に配置された円筒形状のヨーク部61と、ヨーク部61の内周面S(特許文献1ではヨーク部の外周面)に接着剤Gによって接着固定される断面リング状の磁石部62と、磁石部62の内周面に沿って中心軸Xと平行な方向に往復動するコイル63とを含む磁気回路64が設けられている。そして、この磁気回路64に通電することによりコイル63が移動し、コイル63に連結されたピストン65を中心軸Xに沿って往復動させ、作動流体の圧縮を行なっている。このような磁気回路は、例えばヘリウムガスといった作動流体中に配置されている。
【特許文献1】特開平09−089400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の冷凍機における磁気回路では、磁石部はヨーク部に対して接着剤で接着されていた。このため、磁気回路の接着剤に元々含まれている揮発性成分及び接着作業時の混入エアー等が時間の経過と共に徐々にアウトガスとして噴出し、流体流路又はピストン摺動面等に付着固化し、冷凍機の作動に影響を与えてしまうおそれがあった。その結果、冷却性能の低下を招いてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みて為されたものであり、冷凍機の冷凍性能を長期間にわたって安定化させることが可能な磁気回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気回路は、ピストンを動作させて作動流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部で圧縮された作動流体が流入されると共に作動流体を膨張させて冷凍作用を生じさせる冷凍部とを備えた冷凍機における磁気回路である。この磁気回路は、圧縮部および冷凍部の少なくとも一方の内部に固定して配置される筒状のヨーク部と、ヨーク部の内周面および外周面のいずれか1つの周面に密接して配置されると共に、ヨーク部の軸方向に延在し且つ断面がリング形状を有する磁石部と、磁石部の表面である周面に密接して配置され、磁石部をヨークと共に挟持する筒状のスリーブと、スリーブの表面である周面に沿って軸方向に往復動するコイルと、磁石部の軸方向における動作を制動する抜け止め部材とを備えたことを特徴としている。
【0007】
この磁気回路では、磁石部がヨーク部に接着剤で接着固定されているのではなく、抜け止め部材によって磁石部の動作が制動されている。これにより、接着剤を起因とするアウドガスを防止するようにしている。この結果、冷凍機の冷却性能を長期間にわたって安定化させることができる。なお、ここで、「断面がリング刑状」を有する磁石部とは、断面がリング状である1つの磁石だけではなく、断面が円弧状に形成された複数の磁石によって全体として略リング状の断面を形成することができる磁石部を含み、磁気回路が所定の性能を満たすかぎりは円弧状の磁石の一部が欠けていてもよい。
【0008】
また、磁石部の一端がヨークの周面に設けられた段差部に当接されると共に磁石部の他端が抜け止め部材に当接され、抜け止め部材は、段差部とは軸方向における反対側に位置するヨーク部の一端に固定部材によって固定されていることが好ましい。これにより、ヨーク部と抜け止め部材とを固定部材で固定するといった簡易な固定手段で、磁石部をヨーク部に固定させることができる。
【0009】
また、スリーブと抜け止め部材とが一体形成されていることが好ましい。これにより、部品点数をそれほど増加させずに、磁石部をヨーク部に固定させることができる。
【0010】
抜け止め部材はリング形状を有しており、抜け止め部材には、磁石部との当接箇所にガス抜き孔が形成されていることが好ましい。これにより、磁石部とスリーブとの間などに残留するガスを磁気回路の製造時点において容易に排出させることができ、このような残留ガスによる冷凍能力の劣化を防止することができる。この結果、冷凍機の冷却性能を更に長期間にわたって安定化させることができる。
【0011】
固定部材はネジであって、抜け止め部材は、ヨーク部の一端にネジ止めされていることが好ましい。この場合、簡易な構成で抜け止め部をヨーク部に固定させて、磁石部をヨーク部に固定させることができる。
【0012】
抜け止め部材及びヨーク部の少なくとも一方には、ネジ止め用のネジ孔内の残留ガスを排出させるためのガス抜き孔が形成されていることが好ましい。これにより、ネジで抜け止め部をヨーク部に固定させる際に必要とされるネジ孔の残留ガスを磁気回路の製造時点において容易に排出させることができ、ネジ孔の残留ガスによる冷凍能力の劣化を防止することができる。この結果、冷凍機の冷却性能を一層長期間にわたって安定化させることができる。
【0013】
本発明に係る磁気回路は、ヨーク部の内側に同軸状に配置されると共にコイルの進入口と反対側に形成された連結部によってヨーク部と端部同士が連結される筒状のシリンダ部を備え、磁石部はヨーク部の内周面に密接して配置されており、磁石部の表面に配置されたスリーブの内周面とシリンダ部の外周面とによってコイルが往復動する空間を画定し、スリーブの連結部側の一端には、シリンダの外周面まで突出する突部が形成されていることが好ましい。このようにすれば、コイルの挿入スペースを所定値以上に容易に保つことができる。この結果、コイルの挿脱を長期間にわたって安定的に行わせることができる。
【0014】
連結部には、裏面まで貫通する貫通孔が形成されており、スリーブの突部は、貫通孔に対応した箇所に切欠部を有することが更に好ましい。このようにすれば、コイルが挿入されることによって圧縮されたガスが容易に外部に排出されるため、コイルの動作を更に安定化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷凍機の冷却性能を長期間にわたって安定化させることが可能な磁気回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る冷凍機の全体構成を示す断面図である。この冷凍機1は、スターリングサイクルを利用したスターリング冷凍機であり、圧縮機(圧縮部)10と、コールドヘッド(冷凍部)20と、これらを接続する案内流路30とを備えている。
【0018】
図1に示すように、圧縮機10は、第1及び第2のピストン11,12でヘリウムガスといった作動流体を圧縮させるものであり、圧縮機10で圧縮された作動流体は案内流路30を通ってコールドヘッド20へ送られる。この圧縮機10は、基準となる中心軸X1方向に沿って延びる第1のピストン11と、中心軸X1方向に沿って延び第1のピストン11と対向して設けられる第2のピストン12と、第1のピストン11を収容して第1の圧縮空間S1を形成する第1のシリンダ部13と、第2のピストン12を収容して第2の圧縮空間S2を形成する第2のシリンダ部14と、第1のピストン11を中心軸X1方向に沿って往復動させるための磁気回路40と、第2のピストン12を中心軸X1方向に沿って往復動させるための磁気回路50とを備えている。
【0019】
コールドヘッド20は、作動ロッド21を介して第1及び第2のディスプレーサ22,23を第1及び第2のシリンダ部24,25内で往復動させて圧縮された作動流体を膨張させることにより冷凍作用を生じさせる多段式のコールドヘッドである。このコールドヘッド20は、第1のディスプレーサ22と第2のディスプレーサ23とを中心軸X2方向に往復動させる作動ロッド21と、作動ロッド21に連結されると共に中心軸X2方向に沿って延びる第1のディスプレーサ22と、第1のディスプレーサ22に連結されると共に中心軸X2方向に沿って延びる第2のディスプレーサ23と、第1のディスプレーサ22を収容して第1の膨張空間S3を形成する第1のシリンダ部24と、第2のディスプレーサ23を収容して第2の膨張空間S4を形成する第2のシリンダ部25と、作動ロッド21を中心軸X2方向に駆動させるための磁気回路26を有する駆動部27と、駆動部27と対をなし、駆動部27による振動を磁気回路28による駆動で抑制させる振動抑制部29とを備えている。
【0020】
このような構成を有する冷凍機1では、磁気回路40を駆動させることにより、第1のピストン11が作動流体を圧縮する方向である中央側に移動し、圧縮機10の圧縮空間S1内の作動流体を圧縮させる。同様に磁気回路50を駆動させることにより、第2のピストン12を中央側に移動し、圧縮機10の圧縮空間S2内で作動流体を圧縮させる。圧縮空間S1,S2で圧縮された作動流体は所定のタイミングで案内流路30を介してコールドヘッド20の膨張空間S3,S4に送られる。そして、膨張空間S3,S4が膨張するように、第1及び第2のディスプレーサ22,23を駆動部27側に作動ロッド21で駆動させる。膨張空間S3,S4における作動流体の膨張により、コールドヘッド20で冷凍作用が生じる。その後、膨張した作動流体は、案内流路30を介して、圧縮機10に戻される。
【0021】
ここで、第1及び第2のピストン11,12を所定量移動させる磁気回路40,50について図2〜図5に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る磁気回路の断面図であり、図3は、図2におけるIII-III線断面図であり、図4は、図2におけるIV-IV線断面図であり、図5は、図2における概略側面図である。なお、磁気回路40,50は、所定濃度のヘリウムガス中に配置されている。
【0022】
磁気回路40は、図2〜図5に示すように、円筒形状を有するヨーク部41と、ヨーク部41の内周面に密接して配置される断面円弧状の複数の磁石42a,・・・からなる断面リング形状の磁石部42と、ヨーク部41の内周面に対して磁石部42を径方向に挟持させる円筒形状のスリーブ43と、中心軸X1と平行な方向にスリーブ43の内周面に沿って往復動するコイル44と、磁石部42の中心軸X1方向の動作を制動するリング状の抜け止め部材45と、抜け止め部材45をヨーク部41の一端に固定させるネジ(固定部)46,46,46とを備えている。本実施形態では、スリーブ43と抜け止め部材45とは一体形成されており、スリーブ一体型抜け止め部材47を構成している。なお、ヨーク部41と磁石部42とスリーブ一体型抜け止め部材47とコイル44とは、中心軸X1を中心として同軸状になるように配置される。
【0023】
ヨーク部41は、円筒形状を有し、磁石部42の端面の一部を係止させるための段差部41aがその内周面に形成されている。段差部41aと中心軸X1方向における反対側に位置するヨーク部41の一端には、ネジ46をネジ止めするためのネジ孔41b,41b,41bが周方向に均等間隔となるよう120°間隔で3箇所形成されている。また、ネジ孔41b内の残留ガスを抜き出すためのガス抜き孔41cが、ヨーク部41の外周面からネジ孔41bにかけて形成されている。このような構成を有するヨーク部41は、その他端が連結部48によって第1のシリンダ部13と連結されて一体化され、本体部49を形成している。この一体化された本体部49は、圧延鋼材(SS材)やセメンジュールなどから構成される。
【0024】
なお、本体部49を構成するヨーク部41に磁石部42を挟持させるスリーブ43の内周面と、本体部49を構成する第1のシリンダ部13の外周面との間には空間S5が形成されている。空間S5には、図2に示すようにコイル44が中心軸X1と平行な方向に往復動可能な状態で進入できるようになっている。そして、連結部48には、図2及び図4に示すように、空間S5から連なる貫通孔48a,・・・が形成されており、コイル44が空間S5内に進入してきた際に、進入方向前方で圧縮されるガスが外部に排出される。
【0025】
磁石部42を構成する複数の磁石42a,・・・は、それぞれの断面は円弧状であって、中心軸X1方向に延在した円弧片から構成されており、全体でリング状を形成するようになっている。このような形状を有する各磁石42aは、その表面全体が窒化チタンコーティングされており、磁石42aの内部に含有されている粒子やガスが外部に放出されにくくなっている。このような磁石42a,・・・は、その連結部48側の一端がヨーク部41の内周面に設けられた段差部41aに端面の一部が引っかかるように当接させられている。一方、磁石42a,・・・の他端は、抜け止め部材45の裏面に、端面全体が当接させられている。その結果、磁石部42を構成する各磁石42a,・・・は、段差部41aと抜け止め部材45とによって挟持されており、中心軸X1方向の移動が制動される。また、磁石部42を構成する各磁石42a,・・・は、ヨーク部41とスリーブ43とによっても挟持されており、磁石部42は、中心軸X1の中心に向かう径方向の移動が制動される。このような2つの方向における制動により、磁石部42は、ヨーク部41と略一体となるようにヨーク部41に固定される。
【0026】
スリーブ43と抜け止め部材45とからなるスリーブ一体型抜け止め部材47は、全体がステンレスから構成されている。抜け止め部材45には、図5に示すように、周方向に均等間隔となるよう120°間隔で3箇所のネジ46用の貫通孔45a,45a,45aが形成されている。ネジ46は、この貫通孔45aを通してヨーク部41の端面に形成されたネジ孔41bにネジ止めされている。また、抜け止め部材45には、磁石部42が当接する裏面の箇所まで貫通する複数のガス抜き孔45b,・・・が形成されている。更に、図2に示すように、抜け止め部材45には、ネジ用の貫通孔45aに対して側面から貫通するガス抜き孔45c,45c,45cが形成されている。
【0027】
スリーブ43の連結部48側の一端には、第1のシリンダ部13の外周面まで内側に突出する突部43aが形成されている。そして、突部43aには、図3に示すように、貫通孔48aに対応する箇所に切欠部43bがそれぞれ形成されており、内周側が一部切欠き状である断面略リング形状を有している。コイル44は、円筒形状の本体部に導線を巻きつけて形成したものであり、図1に示した第1のピストン11に同軸状に連結されている。そして、このコイル44が空間S5内をスリーブ43の内周面に沿って中心軸X1と平行な方向に往復動すると、連結された第1のピストン11が第1のシリンダ部13内を往復動するようになっており、作動流体の圧縮が行なわれる。このようにして、磁気回路40は構成される。なお、磁気回路50は、磁気回路40と同様の構成を有する。
【0028】
次に、上記した磁気回路40,50の製造方法について説明する。
【0029】
まず、ヨーク部41と第1のシリンダ部13と連結部48とからなる本体部49を用意する。続いて、この本体部49の開口端(コイル44の進入口)から、複数の磁石42a,・・・をヨーク部41の内周面に沿って挿入し、各磁石42a,・・・の一端を段差部41aに当接させる。次に、本体部49の開口端から、スリーブ43と抜け止め部材45とが一体となったスリーブ一体型抜け止め部材47を挿入して、磁石42aの径方向の動作を制動させると共に中心軸X1方向の動作も制動させる。スリーブ一体型抜け止め部材47を挿入した後には、ヨーク部41のネジ孔41bと抜け止め部材45の貫通孔45aとの位置あわせを行い、ネジ46で両者を固定する。この固定により、磁石42a,・・・からなる磁石部42は、ヨーク部41に固定される。そして、スリーブ43の内周面と第1のシリンダ部13の外周面とで画定される空間S5に、中心軸X1と平行な方向へ往復動可能な状態でコイル44を設置する。これにより、磁気回路40が製造される。なお、磁気回路50の製造方法も同様である。この後、磁気回路40,50を圧縮機10の所定の位置に配置して、圧縮機10の内部を真空引きして残留ガス等を排出させ、所定濃度のヘリウムガスを充填する。
【0030】
以上詳述したように、本実施形態に係る磁気回路40,50では、磁石部42とヨーク部41とが接着剤による接着固定ではなく、ヨーク部41と抜け止め部材45とをネジ46で固定することにより、磁石部42をヨーク部41に固定させている。これにより、接着剤を起因とするアウドガスの発生を防止するようにしている。この結果、冷凍機1の冷却性能を長期間にわたって安定化させることができる。
【0031】
また、ヨーク部41及び抜け止め部材45には、ネジ止め用のネジ孔41bと貫通孔45a内の残留ガスを排出させるためのガス抜き孔41c,45cが形成されている。更に、抜け止め部材45には、磁石部42との当接箇所に、残留ガスを排出させるためのガス抜き孔45bも形成されている。これにより、ネジ孔41b,45a内の残留ガスや磁石部42とスリーブ43との間の残留ガスなどを磁気回路40,50の製造時点において容易に排出させることができる。この結果、これらの残留ガスによるアウトガスの発生を更に防止するようにしている。
【0032】
また、各磁石42a,・・・は、窒化チタンコーティングを施されている。これにより、磁石42a内部に存在する粒子やガスが外部に放出されにくくなっている。その結果、アウトガスの発生を一層防止するようにしている。
【0033】
また、連結部48には、空間S5から連なる貫通孔48aが形成されている。これにより、コイル44が挿入されることによって圧縮されたガスが容易に外部に排出されるため、コイル44の動作を安定化させることができる。また、スリーブ43の連結部48側の一端には、第1のシリンダ部13の外周面まで内側に突出する突部43aが形成されている。これにより、コイル44の挿入スペースを常に所定値以上に保つことができ、コイルの動作を長期間にわたって更に安定化させることができる
【0034】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、スリーブ43と抜け止め部材45とを一体とした構成としたが、スリーブと抜け止め部材とを別部材として構成するようにしてもよい。この場合は、抜け止め部材を非磁性のSUS材などから構成し、スリーブを圧延鋼材(SS材)などから構成することが好ましい。また、上記実施形態では、ヨーク部41の内周面に磁石部42を設ける構成としたが、ヨーク部を第1のシリンダの外周に周接させ、このヨーク部の外側にコイルが同軸状に配置される型式の磁気回路においては、ヨーク部の外周面に磁石部を設けた構成としてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、完全なリング状となるように磁石42a,・・・を設けたが、所定の性能を有する限りにおいては、一部の磁石がかけていてもよい。また、上記実施形態では、抜け止め部材45がリング状から形成されていたが、個々の磁石42aの中心軸X1方向の移動を制動できるものであれば、形状は特に限定されない。更に、上記実施形態で説明した磁気回路40,50の構成を、コールドヘッド20の磁気回路に適用させてもよく、また、GM冷凍機又はJT圧縮機などといったスターリング冷凍機以外の冷凍機に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】圧縮機とコールドヘッドとからなる冷凍機の構成を模式的に示す概略図である。
【図2】実施形態に係る磁気回路の断面図である。
【図3】図2におけるIII-III線断面図である。
【図4】図2におけるIV-IV線断面図である。
【図5】図2における概略側面図である。
【図6】従来の磁気回路の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…冷凍機、10…圧縮機(圧縮部)、11…第1のピストン、12…第2のピストン、13…第1のシリンダ、14…第2のシリンダ、20…コールドヘッド(冷凍部)、26,28,40,50…磁気回路、41…ヨーク部、41a…段差部、41c,45b,45c…ガス抜き孔、42…磁石部、42a…磁石、43…スリーブ、43a…突部、43b…切欠部、44…コイル、45…抜け止め部材、46…ネジ(固定部材)、47…スリーブ一体型抜け止め部材、48…連結部、48a…貫通孔、S1,S2…圧縮空間、S3,S4…膨張空間、S5…空間、中心軸…X1,X2。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを動作させて作動流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部で圧縮された前記作動流体が流入されると共に前記作動流体を膨張させて冷凍作用を生じさせる冷凍部とを備えた冷凍機における磁気回路であって、
前記圧縮部および前記冷凍部の少なくとも一方の内部に固定して配置される筒状のヨーク部と、
前記ヨーク部の内周面および外周面のいずれか1つの周面に密接して配置されると共に、前記ヨーク部の軸方向に延在し且つ断面がリング形状を有する磁石部と、
前記磁石部の表面である周面に密接して配置され、前記磁石部を前記ヨークと共に挟持する筒状のスリーブと、
前記スリーブの表面である周面に沿って前記軸方向に往復動するコイルと、
前記磁石部の前記軸方向における動作を制動する抜け止め部材と、
を備えたことを特徴とする磁気回路。
【請求項2】
前記磁石部の一端が前記ヨークの前記周面に設けられた段差部に当接されると共に前記磁石部の他端が前記抜け止め部材に当接され、前記抜け止め部材は、前記段差部とは前記軸方向における反対側に位置する前記ヨーク部の一端に固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気回路。
【請求項3】
前記スリーブと前記抜け止め部材とが一体形成されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気回路。
【請求項4】
前記抜け止め部材はリング形状を有しており、
前記抜け止め部材には、前記磁石部との当接箇所にガス抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気回路。
【請求項5】
前記固定部材はネジであって、
前記抜け止め部材は、前記ヨーク部の一端にネジ止めされていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の磁気回路。
【請求項6】
前記抜け止め部材及び前記ヨーク部の少なくとも一方には、ネジ止め用のネジ孔内の残留ガスを排出させるためのガス抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の磁気回路。
【請求項7】
前記ヨーク部の内側に同軸状に配置されると共に前記コイルの進入口と反対側に形成された連結部によって前記ヨーク部と端部同士が連結される筒状のシリンダ部を備え、
前記磁石部は前記ヨーク部の前記内周面に密接して配置されており、前記磁石部の前記表面に配置された前記スリーブの内周面と前記シリンダ部の外周面とによって前記コイルが往復動する空間を画定し、
前記スリーブの前記連結部側の一端には、前記シリンダの外周面まで突出する突部が形成されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の磁気回路。
【請求項8】
前記連結部には、裏面まで貫通する貫通孔が形成されており、
前記スリーブの前記突部は、前記貫通孔に対応した箇所に切欠部を有することを特徴とする請求項7に記載の磁気回路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気回路を有し、前記磁気回路によって前記コイルと同軸状に配置された前記ピストンを前記軸方向に移動させて前記作動流体を圧縮する前記圧縮部と、
前記圧縮部で圧縮された前記作動流体が前記圧縮部から流入されると共に前記作動流体を膨張させて冷凍作用を生じさせる前記冷凍部とを備えた冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−222312(P2009−222312A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68158(P2008−68158)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)