説明

磁気治療装置

【課題】軽量で取扱いが容易であり、不必要な熱が発生せず、患部、治療部又は健康増進のために、さらにはペット等の動物の同様な治療又は健康増進に好適な磁気治療装置を得ることを課題とする。
【解決手段】磁石のN極とS極を交互に複数配列し、これを機械的に回転運動、直線運動又は振り子運動させる磁気治療装置、磁石のN極とS極を交互に水平基板面上に環状に配置し水平基板を機械的に回転運動させる磁気治療装置及び磁石のN極とS極を交互に截頭円錐基板面上に複数配列し載頭円錐基板を機械的に回転運動させる磁気治療装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動、直線運動、振り子運動する磁場の作用によって腰痛などの痛みを和らげる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石を利用する健康器具として、小さな磁石を肩等に貼り付けてのコリを取る器具があり大量に市販されている。この場合、静止磁場から発生する磁界が人体に好影響を与えるということになるが、その影響の信憑性は定かでない。また、このような磁石をネックレスやブレスレットとして使用し、若干の揺れにより静止磁場から動磁場の動きを持たせるものもある。しかし、これ自体は静止磁場と大差なく、その効果は上記と同様である。
【0003】
これに替わるものとして、交流電磁気を利用した治療器があり、これは電磁石を利用するものである。この交流電磁気を利用した治療器は、血行促進効果があり、腰痛、筋肉痛、神経痛、不定愁訴などの慢性病、動脈硬化、高血圧症、糖尿病、脳梗塞後遺症などに有効であるという報告がなされている(例えば、非特許文献1参照)。電磁気を利用した治療器を使用し、身体に交流磁気をかけると、その部分がほんのりと温かくなり、血行が良くなることが実感でき、またサーモグラフと超音波カラードプラ血流測定装置による調査でもこのような事実が確認されている。
【0004】
この場合に使用される電磁石の大きな問題は、交流電源を使用する必要があること、鉄心、巻コイル等が必要となるため電磁石が重くなり、治療器そのものも大型化し重量物となることである。また、電磁石の場合は、コイルの抵抗発熱と鉄心の磁気損失により発熱する。この場合、発生する熱を人体患部の加温に利用できるという利点はあるが、発熱量を制限することはできず次第に機器内に蓄熱し、不必要な場合でも、これを制止できないという欠点がある。また、交流電磁気を利用した治療器では磁界と電界の両方の影響を受けるが、上記のように必然的に発生する器具からの外部からくる熱と人体の電磁界によって発生する熱の両方をコントロールしなければならないという問題がある。このようなことから、従来の交流電磁気を利用した治療器では上記蓄熱による患部加熱の治療効果も当然現われることとなり、このような加温が主になると、従来の温湿布と大差なくなるというようなことになりかねない。
【非特許文献1】「交流磁気治療」現代書林「交流磁気」取材班編著、頁39−41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軽量で取扱いが容易であり、不必要な熱が発生せず、患部、治療部又は健康増進のために、さらにはペット等の動物の同様な治療又は健康増進に好適な磁気治療装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、磁石を高速で運動又は移動させることによる移動磁界の作用により上記の問題を解決できるとの知見を得た。なお、本願発明において健用する磁石は、永久磁石又は直流電磁石を意味するものとする。
【0007】
この知見に基づき本発明は、
1.磁石のN極とS極を交互に複数配列し、これを機械的に回転運動、直線運動または振り子運動させることを特徴とする磁気治療装置
2.磁石のN極とS極を交互に水平基板面上に環状に配置し、水平基板を機械的に回転運動させることを特徴とする磁気治療装置
3.磁石のN極とS極を交互に截頭円錐基板面上に複数配列し、截頭円錐基板を機械的に回転運動させることを特徴とする磁気治療装置
4.回転対称又は回転非対称に配列することを特徴とする上記2又は3記載の磁気治療装置
5.回転基板の中心軸を偏芯させるか又は配列する磁石の重力バランスをずらすことにより基板に振動を付与することを特徴とする上記1〜4のそれぞれに記載の磁気治療装置
6.磁石のN極とS極の機械的な回転運動、直線運動又は振り子運動により振動磁界を発生させることを特徴とする上記1〜5のそれぞれに記載の磁気治療装置
7.磁石が、ゴム磁石、リング状焼結磁石、ボンド磁石、板状合金磁石、板状鉄磁石、ナノコンポジット磁石であることを特徴とする上記1〜6のそれぞれに記載の磁気治療装置
8.回転運動、直線運動又は振り子運動速度が可変であることを特徴とする上記1〜7のそれぞれに記載の磁気治療装置
9.電動モーターにより回転運動、直線運動又は振り子運動させることを特徴とする上記1〜8のそれぞれに記載の磁気治療装置
10.磁石を担持した回転基板を設け、さらに回転基板を支持する支持体を備えていることを特徴とする上記1〜9のそれぞれに記載の磁気治療装置
11.回転基板と支持体との問に、鏡面に研磨したCVDダイヤモンド膜又はポリテトラフルオロエチレンや黒鉛シート等の固体潤滑材を備えていることを特徴とする上記10記載の磁気治療装置
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気治療装置は、軽量で取扱いが容易であり、不必要な熱が発生せず、人体の患部、治療部又は健康増進のために、さらにはペット等の動物の同様な治療又は健康増進に好適な磁気治療装置を得ることができるという優れた効果を有す。また、従来の交流電磁界を発生する治療器と同等の効果を得ることができるにもかかわらず、コストを著しく低減できるという著しい効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の磁気治療装置は、例えば永久磁石のN極とS極を交互に複数配列し、これを機械的に回転運動、直線運動又は振り子運動させるものである。この場合、磁性体プレートを介して磁石のN極とS極を交互に水平基板上に環状に配置することができる。また、磁石を回転させる場合、必ずしも円盤でなくても良く、例えば截頭円錐状の基板の面上に配列することもできる。この磁気治療装置のサイズは腰サイズの大型のものから、電池式の回転髭剃り程度の小型のものまで作製できるが、上記のような截頭円錐形の基板を用いる場合は、肩こり、筋肉痛、腰痛などの患部に回転式髭剃り型の磁気治療装置を当てるだけで良い。このように、本発明の磁気治療装置は交流電源を必要とせず、乾電池でも作動できるので携帯用として持ち運びが容易であるという利点がある。
【0010】
磁石の配列は回転対称に配列しても良いが、回転非対称に配列することもできる。また、2重、3重の環状配列とすることもできる。また、硬い平板状だけの磁石だけでなく、やや厚みのあるもの、基板の形状にそって湾曲しているもの、柔軟性のあるもの、細紐状のものなど、磁気治療装置の構造又は用途に応じて適宜選択できる。また、磁石の種類にも特に制限がなく、ゴム磁石、リング状焼結磁石、ボンド磁石(樹脂と磁性粉を混合した磁石)、板状合金磁石・板状鉄磁石、ナノコンポジット磁石(急冷凝固法で作製したFe-Co-Nd-Dy-B金属ガラス粉末を過冷却液体領域で真密度のバルク材に固化成形し、これを熱処理によるナノ結晶化させたもので、120kJ/m3級の大きなエネルギー積をもった磁石)などを使用できる。
【0011】
さらに、磁石を取付けた回転基板の中心軸を偏芯させるか又は配列する磁石の重力バランスをずらすことにより基板に振動を付与することもできる。これはバイブレーターとしての役目をし、同一の回転装置を使用して磁気治療とバイブレーターとしての2重の役目をさせることができる。磁石のN極とS極の機械的な運動が激しく発生するような構造であれば、回転運動、直線運動又は振り子運動により振動磁界を発生させることができる。この中で、回転運動が最も構造を簡単にできる利点がある。通常、電動モーターにより回転運動、直線運動又は振り子運動させる。また、これらの回転運動、直線運動又は振り子運動速度を可変とすることができる。これによって、患部又は治療等に対応した運動量又は速度を調節するとすることができる。
【0012】
図1に、回転体に配置した複数の環状磁石の例を示す。この例に示すように、たとえば鉄又はNiのような磁束の通過路となる磁性体プレートを介して、回転体の円周に沿ってN極とS極が交互になるように配列したものである。この磁石の裏面はそれぞれ逆の極となり、前記磁性体プレートに固定されている構造をもつものである。また、図2には同様に磁性体プレートを介して、回転体の円周に沿ってN極とS極が交互になるように配列した他の例を示すが、この場合は外周側と内周側でそれぞれ対極となる構造を持つものである。配列する磁石には、例えば市販のゴム磁石を切断して貼り付けても良い。このように、本発明の磁気治療装置は構造が簡単で、製作が容易であり、また操作も非常に簡単であるという特徴を有している。なお、前記磁性体プレートは、磁石の磁束が磁性体プレート中に流れて磁性体プレートの下方に位置するモータ側に磁束が漏れて該モータが誤動作を起こさないようにするためのものである。
【0013】
磁石の磁極の回転によって、磁界が変化し、上記の交流電磁気を利用した治療器と同様の効果を得ることができる。本発明の磁気治療装置を身体の患部又は治療部に当てると、その部分がほんのりと温かくなり、血行が良くなることが確認できた。この磁気治療装置は人体の一部又は全部を直接利用して損傷を与えるものではなく、接近または当てることによって治療又は健康を増進させるものである。また、交流電磁界を発生する治療器と相違し、単に磁石の回転によるものなので、余分なジュール熱等の発生がないという利点を有し、また軽量かつ簡単な構造とすることができるという優れた効果を有する。
【0014】
磁性体プレートを介して磁石を担持した回転基板が薄い場合は安定した回転が得られない場合がある。また、上記のように基板に振動を付与する構造とした場合、高速回転する基板がぶれて、構造上さらに不安定になるおそれがある。図3に回転基板を支持する支持体を設けた例を示すが、図3のケース1内に、磁性体プレート8を介して磁石2を担持した回転基板3を支持するための固定された支持体4を設けることが望ましい。さらに、この支持体4と回転基板3との間に、鏡面に研磨したCVDダイヤモンド膜又はポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))や黒鉛シート等の固体潤滑材5を形成することができる。これらは、支持体側の表面に形成しても良いし、また回転基板3の裏面に形成しても良い。特に、ダイヤモンド膜は熱伝導性が極めて高いので蓄熱することがなく、また鏡面ダイヤモンド膜は潤滑性が優れているので、高速回転する回転基板を安定的に支持するのに好適である。図3において、符号6は回転軸を、符号7はモーターを示す。
【実施例】
【0015】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲における他の例、態様あるいは変形等を当然含むものである。磁石はフェライト磁石(0.3テスラ)を使用し、これを図に示すように外形7cm、内径3cmの構造であり、円周方向に8等分し、N極とS極に着磁した。この磁石を非磁性基板に取付け、同転体とし、消費電力1W、12V−0.08Wの小型モーターを使用し、薄型の磁気治療装置とした。電源には直流電源アダプター(9V−0.2A)を用いた。回転数は1420rpmとした。1時間程度の使用ではこのモーターの発熱は殆どなかった。2名の腰痛を起こした人の患部に当てたところ、30分後に腰痛が消失した。被治療者よると、患部はほんのりと温かくなって気分が爽快になる体感があったという。サーモグラフの調査でこの事実が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の磁気治療装置は、軽量小型ハンディタイプで持ち運びに便利であり、磁気治療院にわざわざ出向かなくとも家庭で簡単に使用することができ、日常生活における国民の健康増進に役立たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】回転体に配置した複数の環状磁石の例を示す概略説明図である。
【図2】回転体に配置した複数の環状磁石の、他の例を示す概略説明図である。
【図3】回転基板を支持する支持体を設けた例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ケース
2 磁石
3 回転体
4 支持体
5 ダイヤモンド膜
6 回転軸
7 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石のN極とS極を交互に複数配列し、これを機械的に回転運動、直線運動又は振り子運動させることを特徴とする磁気治療装置。
【請求項2】
磁石のN極とS極を交互に水平基板面上に環状に配置し、水平基板を機械的に回転運動させることを特徴とする磁気治療装置。
【請求項3】
磁石のN極とS極を交互に戴頭円錐基板面上に複数配列し、戴頭円錐基板を機械的に回転運動させることを特徴とする磁気治療装置。
【請求項4】
回転対称又は回転非対称に配列することを特徴とする請求項2又は3記載の磁気治療装置。
【請求項5】
回転基板の中心軸を偏心させるか又は配列する磁石の重力バランスをずらすことにより基板に振動を付与することを特徴とする請求項1〜4のそれぞれに記載の磁気治療装置。
【請求項6】
磁石のN極とS極の機械的な回転運動、直線運動又は振り子運動により振動磁界を発生させることを特徴とする請求項1〜5のそれぞれに記載の磁気治療装置。
【請求項7】
磁石が、ゴム磁石、リング状焼結磁石、ボンド磁石、板状合金磁石、板状鉄磁石であることを特徴とする請求項1〜6のそれぞれに記載の磁気治療装置。
【請求項8】
回転運動、直線運動又は振り子運動遠度が可変であることを特徴とする請求項1〜7のそれぞれに記載の磁気治療装置。
【請求項9】
電動モーターにより回転運動、直線運動又は振り子運動させることを特徴とする請求項1〜8のそれぞれに記載の磁気治療装置。
【請求項10】
磁石を担持した同転基板を設け、さらに回転基板を支持する支持体を備えていることを特徴とする請求項1〜9のそれぞれに記載の磁気治療装置。
【請求項11】
回転基板と支持体との間に、鏡面に研磨したCVDダイヤモンド膜又はポリテトラフルオロエチレンや黒鉛シート等の固体潤滑材を備えていることを特徴とする請求項10に記載の磁気治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−123(P2006−123A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−310913(P2003−310913)
【出願日】平成15年9月3日(2003.9.3)
【出願人】(598002394)
【出願人】(502333781)
【Fターム(参考)】