説明

磁気治療装身具構成体およびその製造方法

【課題】ネオジウム等の錆びやすい永久磁石(2a)を用いたとしても永久磁石(2a)が錆びたりすることがない磁気治療装身具構成体(1a)およびその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】中心部に孔(21)が穿設されたリング状をした永久磁石(2a)と、前記孔内面を含む永久磁石(2a)全体を被覆するとともに、線状材挿通孔(31)を、前記永久磁石(2a)の孔(21)の内側に有する樹脂被覆層(3)とを備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気治療装身具構成体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ネックレスや磁気ブレスレットなどの磁気治療装身具は、身体に装着することによって、血行促進や痛みの解消を図ることができるとともに、おしゃれをはかれることから、老人などだけではなく、スポーツ選手や若い人々にも盛んに用いられている。
上記のような磁気治療装身具は、従来、永久磁石が非磁性体金属製のカプセルに収容された磁気治療装身具構成体が、連結環等を用いて連結されることによって形成されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、上記のような従来の磁気治療装身具の場合、首や手首など使用者の皮膚に直接触れる部分が金属で形成されているため、金属アレルギーを有する人たちは使用できない。
【0004】
一方、ワイヤーや糸などの線状材を挿通する線状材挿通孔を備えた永久磁石の表面を線状材挿通孔の部分以外を合成樹脂材で被覆した磁気治療装身具構成体も提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
したがって、この磁気治療装身具構成体をワイヤーや糸などの線状材で連結することによって得られる磁気治療装身具の場合、上記のように、金属が使用者の皮膚に直接触れることがなくなる。
【0005】
しかしながら、後者の磁気治療装身具の場合、磁気治療装身具を身に着けたまま入浴や水泳を行なうと、水が線状材挿通孔内に入り込むため、磁石にさびが発生するという問題がある。特に磁力が強いネオジウム系磁石の場合錆びやすく大きな問題となっている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−136288号公報
【特許文献2】特開平10−199722号公報
【特許文献3】特開2005−131120号公報
【特許文献4】特開2004−41524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、ネオジウム等の錆びやすい永久磁石を用いたとしても永久磁石が錆びたりすることがない磁気治療装身具構成体およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる磁気治療装身具構成体は、中心部に孔が穿設されたリング状をした永久磁石と、前記孔内面を含む永久磁石全体を被覆するとともに、線状材挿通孔を、前記永久磁石の孔の内側に有する樹脂被覆層とを備えることを特徴としている。
【0009】
本発明にかかる磁気治療装身具構成体の製造方法は、中心部に孔が穿設された非着磁状態のリング状磁性体に、外径が前記孔に挿通可能に形成され前記磁性体のリング厚みより長く線状材挿通孔となる貫通孔を有する筒部を備え磁気治療装身具構成体の樹脂被覆層の一部を構成する合成樹脂製インサート部材を、前記筒部が磁性体の孔に挿通され、筒部の両端部が磁性体の孔より外側に出た状態にセットしてインサート部を形成したのち、このインサート部を磁気治療装身具構成体形状をした射出成形金型のキャビティ内にセットし、キャビティの前記インサート部およびインサート部材の貫通孔を除く部分に溶融樹脂を射出する工程と、この射出成形品を金型から取り出したのち、リング状磁性体を着磁させて永久磁石とする工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明において、永久磁石としては、特に限定されず、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジウム磁石等が挙げられ、ネオジウム磁石が好適である。
樹脂被覆層を形成する樹脂としては、射出成形可能であれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂等が挙げられ、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂が好適である。
【0011】
インサート部材は、射出される溶融樹脂と相溶性のある樹脂で形成されていれば、射出される溶融樹脂と異なる樹脂で形成されていても構わないが、できるだけ同じ樹脂とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる磁気治療装身具構成体は、以上のように、中心部に孔が穿設されたリング状をした永久磁石と、前記孔内面を含む永久磁石全体を被覆するとともに、線状材挿通孔を、前記永久磁石の孔の内側に有する樹脂被覆層とを備え、永久磁石が樹脂被覆層によって孔の内面側も完全に被覆されているので、風呂等に直接浸けても、永久磁石が水に曝されることが決してない。したがって、風呂等の水の浸入により永久磁石が錆びたりするといった事故を完全に防止することができる。
【0013】
また、本発明にかかる磁気治療装身具構成体の製造方法は、中心部に孔が穿設された非着磁状態のリング状磁性体に、外径が前記孔に挿通可能に形成され前記磁性体のリング厚みより長く線状材挿通孔となる貫通孔を有する筒部を備え磁気治療装身具構成体の樹脂被覆層の一部を構成する合成樹脂製インサート部材を、前記筒部が磁性体の孔に挿通され、筒部の両端部が磁性体の孔より外側に出た状態にセットしてインサート部を形成したのち、このインサート部を磁気治療装身具構成体形状をした射出成形金型のキャビティ内にセットし、キャビティの前記インサート部およびインサート部材の貫通孔を除く部分に溶融樹脂を射出する工程と、この射出成形品を金型から取り出したのち、リング状磁性体を着磁させて永久磁石とする工程とを備えるので、上記本発明の磁気治療装身具構成体を確実にかつ正確に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる磁気治療装身具構成体の1つの実施の形態をあらわしている。
【0015】
図1に示すように、この磁気治療装身具構成体1aは、永久磁石2aと、樹脂被覆層3とから構成されている。
【0016】
永久磁石2aは、ネオジウム等から形成されていて、中心部に孔21が穿設されたリング状をしている。
【0017】
樹脂被覆層3は、アクリル樹脂(たとえば、ポリメチルメタクリレート)で形成され、孔21内面を含む永久磁石2a全体を被覆するとともに、線状材挿通孔31を、孔21の内側に有している。
【0018】
つぎに、図2〜図6を用いて、上記磁気治療装身具構成体1aの製造方法の1例を工程順に説明する。
すなわち、この磁気治療装身具構成体1aの製造方法は、まず、図2に示すように、着磁により永久磁石2aとなるネオジウム等の着磁前のリング状磁性体2bと、磁気治療装身具構成体の樹脂被覆層の一部を構成する合成樹脂製インサート部材4とを用意する。
【0019】
リング状磁性体2bは、着磁されていない以外は、永久磁石2aと同様になっている。
インサート部材4は、ポリメチルメタクリレート等の透明アクリル樹脂で形成され、樹脂被覆層3の一部を構成し、リング状磁性体2bの厚みより長い筒部41と鍔状部42とを備えている。
【0020】
筒部41は、外径がリング状磁性体2bの孔21の内径とほぼ同じかすこし小径になっていて、その長さがリング状磁性体2bの厚みより長くなっていて、軸心に線状材挿通孔31を有している。
鍔状部42は、筒部41の一端から外側に向かって傘状に広がるように形成されていて、筒部41の一端側の外縁部に面取り形状の切欠42aが形成されている。
【0021】
筒部41は、鍔状部42が設けられていない他端側の外縁部に面取り形状の切欠41aが形成されている。
また、鍔状部42の筒部41の他端側の外周面には、後述するようにインサート部材4にセットされたリング状磁性体2bが筒部41から防止するリング状をした突条43が設けられている。
【0022】
突条43は、図4に示すように、筒部41の他端側から鍔状部42側に向かって徐々にその外径が大きくなる断面略三角形のテーパ状をしていて、最大外径がリング状磁性体2bの内径より少し大きくなっている。
【0023】
そして、このようにして用意されたリング状磁性体2bの孔21に、図3および図4に示すように、インサート部材4の筒部41を筒部41の他端側からリング状磁性体2bが突条43を完全に乗り越えるまで挿入し、リング状磁性体2bとインサート部材4とを一体化する。
なお、このリング状磁性体2bとインサート部材4との一体化においては、突条43が上述のように筒部41の他端側から鍔状部42側に向かって徐々にその外径が大きくなる断面略三角形のテーパ状をしているので、リング状磁性体2bが突条43を小さい力で簡単に乗り越え、しかも、一旦乗り越えたのちは、抜けが防止され、容易に離脱することがなくなる。図4において、突条43は、理解しやすくするために大きく描かれているが、実際は、抜け止めできれば、できるだけ小さい方が好ましい。
【0024】
続いて、図5に示すように、この一体化されたリング状磁性体2bとインサート部材4とを、金型5のキャビティ51内にセットしたのち、キャビティ51のリング状磁性体2bおよびインサート部材4のインサート部および貫通孔21部分を除く部分にインサート部材4と同じアクリル樹脂を射出充填して、図6に示すように、線状材挿通孔31を備えたほぼ球状をした成形体1bを得る。
そして、この成形体1bを、必要に応じてバレル研磨等により表面を研磨したのち、磁界内に入れてリング状磁性体2bを着磁させて永久磁石2aとし、図1の磁気治療装身具構成体1aを得る。
【0025】
このようにして得られた磁気治療装身具構成体1aは、永久磁石2aが完全に樹脂被覆層3によって保護されているので、線状材を通す線状材挿通孔31に水が入っても、永久磁石2aが水に曝されることがない。
【0026】
したがって、磁気ネックレスや磁気ブレスレットとして身につけた状態で風呂やプール等に入っても永久磁石2aが錆びるということがない。
また、樹脂被覆層3がインサート部材4および射出成形樹脂によって形成されているので、樹脂被覆層3を厚肉化して強度的に優れたものとすることができ、耐久性に優れたものとなる。
【0027】
さらに、インサート部材4の筒部41の一端に切欠41aを設けるとともに、鍔状部42に切欠42aを設けたので、射出成形樹脂部の一部がこの切欠41aおよび切欠42a部分に入り込んで、インサート部材4をこの切欠41aおよび切欠42aに入り込んだ部分によって係止される状態とすることができる。
【0028】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上記の実施の形態
では、樹脂被覆層が透明樹脂であったが、着色されていても構わない。
また、上記の実施の形態では、磁気治療装身具構成体がほぼ球形であったが、矩形や楕円球形状でも構わない。
さらに、上記の実施の形態では、インサート部材に鍔状部が設けられていたが、鍔状部をなくし、筒部のみでも構わない。なお、インサート部材を筒部のみの形状とする場合には、突条を2条設け、リング状磁性体をこの2条の突条によって両側から係止できるようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる磁気治療装身具構成体の1つの実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】本発明にかかる磁気治療装身具構成体の製造方法に用いるリング状磁性体とインサート部材の断面図である。
【図3】図2のリング状磁性体とインサート部材とを一体化させた状態の断面図である。
【図4】図3の突条部分の拡大図である。
【図5】図3のように一体化したリング状磁性体とインサート部材とを金型内にセットした状態をあらわす断面図である。
【図6】着磁前の成形体の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1a 磁気治療装身具構成体
1b 成形体
2a 永久磁石
2b リング状磁性体
21 孔
3 樹脂被覆層
31 線状材挿通孔
4 合成樹脂製インサート部材
41 筒部
5 射出成形金型
51 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に孔が穿設されたリング状をした永久磁石と、前記孔内面を含む永久磁石全体を被覆するとともに、線状材挿通孔を、前記永久磁石の孔の内側に有する樹脂被覆層とを備えることを特徴とする磁気治療装身具構成体。
【請求項2】
中心部に孔が穿設された非着磁状態のリング状磁性体に、外径が前記孔に挿通可能に形成され前記磁性体のリング厚みより長く線状材挿通孔となる貫通孔を有する筒部を備え磁気治療装身具構成体の樹脂被覆層の一部を構成する合成樹脂製インサート部材を、前記筒部が磁性体の孔に挿通され、筒部の両端部が磁性体の孔より外側に出た状態にセットしてインサート部を形成したのち、このインサート部を磁気治療装身具構成体形状をした射出成形金型のキャビティ内にセットし、キャビティの前記インサート部およびインサート部材の貫通孔を除く部分に溶融樹脂を射出する工程と、
この射出成形品を金型から取り出したのち、リング状磁性体を着磁させて永久磁石とする工程とを備える磁気治療装身具構成体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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